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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】圧力センサー
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
G01L19/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017244834
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019113333
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 朝華
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】芦野 仁泰
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-37039(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064902(WO,A1)
【文献】特開2004-69564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0346045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力に応じた信号を出力するセンサー素子と、
一方側の第1主面と該第1主面に対向する他方側の第2主面とを有し、前記第1主面に前記センサー素子が搭載され、金属材料で構成されたセンサー支持部材と、
前記センサー素子に電気的に接続され、前記センサー支持部材を前記一方側から前記他方側に貫通した端子と、
前記センサー支持部材の前記第2主面を覆うと共に、前記センサー支持部材に取り付けられ、前記端子の一部を収納する貫通孔を有し、非金属材料で構成されたケースと、
前記センサー支持部材と前記ケースとの間に配置された接着剤層と、
を有する圧力センサーであって、
前記センサー支持部材の厚さ方向を軸方向とし、前記センサー支持部材および前記ケースの前記接着剤層を介して接合される部分は前記軸方向に対して傾斜した面を有し、
前記センサー支持部材および前記ケースのうち少なくとも一方の前記傾斜した面に凹部が形成され、
前記凹部に前記接着剤層の一部が入り込み、前記凹部の少なくとも前記他方側の面は、軸方向において前記センサー支持部材または前記ケースの少なくとも一方の一部に重なっていることを特徴とする圧力センサー。
【請求項2】
前記センサー支持部材の前記傾斜した面に形成された前記凹部の幅は、前記他方側から前記一方側に向かって広がっている請求項1に記載の圧力センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体、気体等の流体の圧力を検出する圧力センサーが知られている。例えば、特許文献1に記載の圧力センサーは、半導体圧力検出素子、ベース、ベースに対向して配置された受け部材、およびベースと受け部材との間に挟み込まれたダイアフラムを備え、これらがカバー内に収納されている。ここで、ベースとダイアフラムとの間には、オイルが封入される受圧空間が形成されている。半導体圧力検出素子は、受圧空間内に配置される状態でベースに備えられている。ベース、受け部材およびダイアフラムは、それぞれ金属製である。カバーは、ステンレス鋼等の金属製であり、受け部材の外周部とレーザー溶接により接合される。カバーの内部には、エポキシ系やウレタン系の樹脂が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-45172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧力センサーでは、カバーがステンレス鋼等の金属製であるため、軽量化を図ることが難しい。そこで、カバーを樹脂等の非金属製とすることが考えられる。しかし、特許文献1に記載の圧力センサーにおいて、カバーを非金属製とした場合、カバー内に充填された樹脂による接着力のみでカバーがベースに対して固定されることとなる。このような場合、当該接着力が低下すると、カバーがカバー内の樹脂および部品等と共にベースから外れてしまい、故障する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、金属製のセンサー支持部材と非金属製のカバーとを互いに高い信頼性で固定することができる圧力センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な発明は、流体の圧力に応じた信号を出力するセンサー素子と、
一方側の第1主面と該第1主面に対向する他方側の第2主面とを有し、前記第1主面に前記センサー素子が搭載され、金属材料で構成されたセンサー支持部材と、
前記センサー素子に電気的に接続され、前記センサー支持部材を前記一方側から前記他方側に貫通した端子と、
前記センサー支持部材の前記第2主面を覆うと共に、前記センサー支持部材に取り付けられ、前記端子の一部を収納する貫通孔を有し、非金属材料で構成されたケースと、
前記センサー支持部材と前記ケースとの間に配置された接着剤層と、
を有する圧力センサーであって、
前記センサー支持部材の厚さ方向を軸方向とし、前記センサー支持部材および前記ケースの前記接着剤層を介して接合される部分は前記軸方向に対して傾斜した面を有し、
前記センサー支持部材および前記ケースのうち少なくとも一方の前記傾斜した面に凹部が形成され、
前記凹部に前記接着剤層の一部が入り込み、前記凹部の少なくとも前記他方側の面は、軸方向において前記センサー支持部材または前記ケースの少なくとも一方の一部に重なっていることを特徴とする圧力センサー。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な発明によれば、接着剤層の厚い部分のケース側(他方側)に軸方向でセンサー支持部材の一部が重なっているため、接着剤層が優れたアンカー効果によりセンサー支持部材から剥がれ難くなる。そのため、金属製のセンサー支持部材と非金属製のカバーとを互いに高い信頼性で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサーの概略構成を示す縦断面図(軸線axに沿って切断した図)である。
図2図2は、センサー支持部材およびケースを示す縦断面図(図1を部分的に拡大した図)である。
図3図3は、センサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。
図6図6は、図5に示すセンサー支持部材の凹部の配置を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第4実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の圧力センサーを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサーの概略構成を示す縦断面図(軸線axに沿って切断した図)である。図2は、センサー支持部材およびケースを示す縦断面図(図1を部分的に拡大した図)である。まず、図1および図2に基づき、これらの図に示す圧力センサー1の概略を説明する。
【0011】
以下では、説明の便宜上、図1に示す軸線axを適宜用いて説明を行う。ここで、軸線axに平行な方向(図1中の上下方向)を「軸方向」、軸線axに直交する方向を「径方向」、軸線axを中心とする軸周りの方向を「周方向」と言う。また、軸方向において、後述する被取付体に近い側(取付部材2側)を「一方側」または「下側」、遠い側(取付部材2と反対側)を「他方側」または「上側」と言う。
【0012】
なお、軸線axは、圧力センサー1の中心軸であり、後述するセンサー支持部材4の中心を通り、かつ、センサー支持部材4の厚さ方向に延びる線分である。また、「上側」および「下側」は、圧力センサー1が実際に被取付体に取り付けられたときの位置関係および方向を示すものではない。
【0013】
図1に示す圧力センサー1は、図示しない被取付体に取り付けられて用いられ、被取付体からの流体の圧力を検出するセンサーである。ここで、被取付体は、特に限定されないが、例えば、自動車の自動変速機(AT)または無段変速機(CVT)に用いられる車載用のコントロールバルブである。また、流体(被計測流体)は、特に限定されず、気体および液体のいずれであってもよい。さらに、流体の種類、温度、圧力等の条件も限定されないが、例えば、被取付体が前述した車載用のコントロールバルブである場合、流体はATF(Automatic Transmission Fluid)等のオイルである。
【0014】
圧力センサー1は、図1に示すように、被取付体に着脱自在に取り付けられる取付部材2と、取付部材2にダイアフラム3を介して接合されているセンサー支持部材4と、センサー支持部材4に搭載されているセンサー素子5と、センサー支持部材4に取り付けられているケース9と、を有する。
【0015】
取付部材2は、センサー支持部材4に対して一方側(下側)に配置されており、軸方向に沿って貫通した貫通孔21を有する。貫通孔21には、下側から、被取付体からの流体が導入される。すなわち、貫通孔21は、被取付体からの流体をセンサー素子5に向かって導く流路を構成する。また、取付部材2は、軸方向に沿って配置された雄ネジ部22と、雄ネジ部22の上側の端部に設けられている頭部23と、を有する。雄ネジ部22は、被取付体に設けられた雌ネジに螺合する。頭部23は、例えば、軸方向から見たときに六角形をなしており、スパナ等の工具で挟むことが可能となっている。
【0016】
このような取付部材2を圧力センサー1が有することにより、圧力センサー1を被取付体に比較的簡単に取り付けることができる。また、圧力センサー1を被取付体から取り外してメンテナンス等を行うこともできる。また、雄ネジ部22の頭部23側の端部には、例えばゴム製のOリング14が配置されている。このOリング14により、圧力センサー1を被取付体に取り付けた状態で、圧力センサー1と被取付体との間の密封性を確保することができる。なお、取付部材2は、被取付体に取り付けることができればよく、前述した雄ネジ部22を有する形態に限定されない。
【0017】
取付部材2は、金属材料で構成されている。かかる金属材料としては、特に限定されないが、例えば、SUS304等のステンレス鋼が好適に用いられる。このような金属材料で取付部材2を構成することにより、取付部材2の耐熱性、流体に対する耐性等を高めることができる。取付部材2は、例えば、鋳造および切削により製造される。
【0018】
このような取付部材2の上側の端部には、ダイアフラム3を介してセンサー支持部材4が取り付けられている。ここで、ダイアフラム3およびセンサー支持部材4は、それぞれ、ステンレス鋼等の金属材料で構成されており、取付部材2に対して溶接により接合されている。
【0019】
このように、取付部材2、ダイアフラム3およびセンサー支持部材4のいずれもが金属材料で構成されていれば、例えば、被取付体が車載用のコントロールバルブである場合等、圧力センサー1の被計測流体が高温のオイルであっても、圧力センサー1は優れた耐久性を発揮することができる。
【0020】
ダイアフラム3は、板状またはシート状をなしており、取付部材2とセンサー支持部材4との間に配置され、前述した取付部材2の貫通孔21の他方側の開口を塞いでいる。このため、ダイアフラム3に対して下側には、前述した取付部材2の貫通孔21による第1室S1が形成されている。そして、ダイアフラム3は、第1室S1内の流体の圧力により撓み変形する。一方、ダイアフラム3に対して上側には、ダイアフラム3とセンサー支持部材4との間に、第2室S2が形成されている。第2室S2には、センサー素子5が収納されている共に、ダイアフラム3が第1室S1内の液体から受けた圧力をセンサー素子5に伝達する圧力伝達媒体が充填(収容)されている。
【0021】
このように、ダイアフラム3および圧力伝達媒体を用いて流体の圧力をセンサー素子5に伝達することにより、センサー素子5が流体に対する耐性を有していなくても、当該流体によるセンサー素子5の損傷を防止しつつ、流体の圧力を検出することができる。この圧力伝達媒体としては、液体が好適に用いられる。特に、センサー素子5への悪影響を小さくすると共に、温度変化等による圧力伝達媒体の特性変化を小さくする観点から、圧力伝達媒体には、例えば、シリコーンオイルのような液体を用いることが好ましい。シリコーンオイルは、良好な絶縁性、優れた化学的安定性および高い沸点を有するためである。なお、センサー素子5が流体に対する耐性を有する場合、ダイアフラム3および圧力伝達媒体を省略してもよい。
【0022】
また、センサー支持部材4は、軸方向を厚さ方向とする板材で構成され、例えばプレス加工により中央部が他方側(上側)に向かってドーム状となるように形成されている。センサー支持部材4は、一方側の第1主面43と、第1主面43に対向する他方側の第2主面44と、を有する。第1主面43は、ダイアフラム3との間に第2室S2を形成している。このような第1主面43の中央部には、センサー素子5が搭載されている。ここで、センサー素子5は、第1主面43に対して例えばフッ素系接着剤等の接着剤により接合されている。
【0023】
センサー素子5は、受圧に応じた信号を出力する素子である。センサー素子5は、図示しないが、例えば、ピエゾ抵抗素子が配置されているダイアフラムを有するシリコン基板と、このシリコン基板に接合されたガラス基板と、を有する。これらの基板間には、密閉された空間が形成されており、当該ダイアフラムは、当該空間内の圧力を基準として受圧により撓み変形する。そして、当該ピエゾ抵抗素子がこの撓み変形に応じた信号を出力する。なお、当該ダイアフラムの撓み変形を検出する方式は、ピエゾ抵抗素子を用いた方式に限定されず、例えば、静電容量方式等であってもよい。
【0024】
また、センサー支持部材4は、第1主面43および第2主面44に開口する複数の貫通孔45を有する。複数の貫通孔45には、それぞれ、端子6が貫通しており、貫通孔45を規定している壁面と端子6との間の隙間には、封止材7が充填されている。端子6は、リードピンであり、例えば、鉄ニッケル合金等の金属材料で構成されている。複数の端子6のうちの少なくとも2つの端子6の下側の端部は、ボンディングワイヤーを介してセンサー素子5に接続されている。また、封止材7は、例えば、硼珪酸ガラス等のガラス材料で構成され、前述した隙間を封止している。
【0025】
センサー支持部材4の第2主面44には、ケース9が取り付けられている。ここで、ケース9は、第2主面44に対して、例えばエポキシ系接着剤等の接着剤層15により接着されている。このように、センサー支持部材4とケース9とは、接着剤層15を介して接合されている。これにより、センサー支持部材4に対してケース9を固定することができる。また、センサー支持部材4とケース9との間の隙間を接着剤層15により埋めることで、ケース9内の密封性を高めることができる。
【0026】
ここで、図2に示すように、第2主面44の接着剤層15と接する部分には、周方向に沿って凹部41が設けられている。そして、接着剤層15は、凹部41に入り込んで厚さの厚い部分を有する。これにより、接着剤層15によるセンサー支持部材4とケース9との接着力をアンカー効果により高めることができる。なお、接着剤層15およびこれに関連する事項については、後に詳述する。
【0027】
図2に示すように、ケース9は、下側に開口する有底筒状のケース本体91を有する。ケース本体91は、センサー支持部材4側に開口している凹部93を備えている。また、図1に示すように、ケース9は、図示しないオス型のコネクターが挿入される凹部131と、凹部131内に突出している端子12と、を有する。端子12は、前述した端子6に電気的に接続されている。なお、端子12は、直接端子6に接続されていてもよく、回路基板等の電子部品を介して端子6に接続されていてもよい。
【0028】
このようなケース9の構成材料は、ケース9の軽量化の観点から、非金属材料であればよく、セラミックス材料等でもよいが、樹脂材料であることが好ましい。ケース9を樹脂材料で構成することにより、ケース9の軽量化を図ることができるだけでなく、ケース9の形状が複雑であっても、例えば、ケース9を射出形成により簡単かつ高精度に形成することができる。また、ケース9の接着剤層15による接着性を高めることもできる。かかる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性に優れたPPS(Polyphenylene sulfide)樹脂等が挙げられる。また、かかる樹脂材料には、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等の無機フィラー等が添加されていてもよい。
【0029】
以上、圧力センサー1の概略を説明した。この圧力センサー1は、前述したように、流体の圧力に応じた信号を出力するセンサー素子5と、センサー素子5が搭載されたセンサー支持部材4と、センサー支持部材4を一方側から他方側に貫通した端子6と、センサー支持部材4に取り付けられたケース9と、センサー支持部材4とケース9との間に配置された接着剤層15と、を有する。
【0030】
ここで、センサー支持部材4は、一方側の第1主面43と該第1主面43に対向する他方側の第2主面44とを有し、金属材料で構成されている。そして、センサー素子5は、第1主面43の中央部に搭載されている。また、端子6は、センサー支持部材4を一方側から他方側に貫通している。一方、ケース9は、センサー支持部材4の第2主面44を覆い、非金属材料で構成されている。そして、接着剤層15は、一部に他の部分より厚さが厚い部分151を有し、厚い部分151のケース9側(他方側)には、軸方向でセンサー支持部材4の一部が重なっている。これにより、接着剤層15が優れたアンカー効果によりセンサー支持部材4から剥がれ難くなる。そのため、金属製のセンサー支持部材4と非金属製のケース9とを互いに高い信頼性で固定することができる。以下、図3に基づいて、接着剤層15およびこれに関連する事項について詳述する。
【0031】
図3は、センサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。
図3に示すように、センサー支持部材4の第2主面44は、中央部分が軸方向上側に向かってドーム状となるような形状をなしている。そして、接着剤層15を介してケース9に接合される第2主面44の部分は、軸方向に対して傾斜した側面を有する。当該側面には、軸線axを含む平面で切断した断面(以下、「縦断面」と言う)における形状が略矩形をなす凹部41が設けられている。そして、凹部41内には、接着剤層15の一部が入り込んでいる。これにより、接着剤層15は、厚さt1の他の部分よりも厚い部分151(厚さt2)を有する。なお、厚さt1、t2は、接着剤層15を挟む領域(接着領域)におけるセンサー支持部材4とケース9との対向方向での接着剤層15の長さである。
【0032】
このように、センサー支持部材4は、厚い部分151の一部を収納する凹部41を有する。これにより、接着剤層15とセンサー支持部材4との接触面積を大きくすることができる。そのため、センサー支持部材4に対する接着剤層15のアンカー効果を高めることができる。なお、凹部41の縦断面形状は、図示の形状に限定されない。
【0033】
ここで、凹部41は、径方向外側に開口しており、厚い部分151の上側には、センサー支持部材4の一部が上下方向に重なっている。これにより、厚い部分151がセンサー支持部材4よりも上側に移動するのを阻止することができる。そのため、接着剤層15をセンサー支持部材4から剥がれ難くすることができる。また、径方向外側に開口した凹部41は、旋盤削り、プレス加工等の加工により容易に成形することができるという利点もある。
【0034】
凹部41(厚い部分151)は、センサー支持部材4の周方向での少なくとも一部に配置されていればよいが、当該周方向に沿って延びていることが好ましい。これにより、接着剤層とケースとの接触面積を大きくすることができる。そのため、ケースに対する接着剤層のアンカー効果を高めることができる。このアンカー効果を高める観点からすると、凹部41は、当該周方向の全域にわたって配置されていることが好ましい。なお、凹部41をセンサー支持部材4の周方向での一部に配置する場合、軸方向から見たとき直線状をなす複数の凹部41(溝)をセンサー支持部材4の側面に配置する構成とすることができる。
【0035】
厚い部分151の厚さt2、言い換えると、接着剤層15の他の部分の厚さt1と凹部41の深さとの合計は、特に限定されないが、接着剤層15の他の部分の厚さt1に対して、1.1倍以上5倍以下であることが好ましく、1.2倍以上3倍以下であることが好ましい。これにより、前述したアンカー効果を高めることができる。これに対し、厚さt2が薄すぎると、前述したアンカー効果が急激に小さくなる傾向を示す。一方、厚さt2が厚すぎても、前述したアンカー効果がそれ以上高くならず、センサー支持部材4の製造が難しくなったり、センサー支持部材4の機械的強度を低下させたりする。
【0036】
また、凹部41の軸方向での長さは、特に限定されないが、前述したアンカー効果を高める観点から、厚さt2に対して、0.1倍以上5倍以下であることが好ましく、1倍以上3倍以下であることがより好ましい。
【0037】
また、前述したアンカー効果を高める観点から、センサー支持部材4およびケース9の表面は、接着領域に粗面化されていることが好ましい。この粗面化の方法は、特に限定されないが、例えば、ブラスト処理、エッチング処理、切削等が挙げられる。
【0038】
接着剤層15の構成材料(接着剤)は、特に限定されないが、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等の硬化性(熱硬化性、光硬化性、嫌気硬化性等)接着剤を用いることが好ましく、特に、熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。すなわち、接着剤層15は、硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、接着剤層15の耐久性、接着性等を優れたものとすることができる。なお、接着剤層15には、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等の無機フィラー等が添加されていてもよい。
【0039】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。以下、図4に示す第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。なお、図4において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0040】
図4に示す圧力センサー1Aは、第1実施形態のケース9に代えて、ケース9Aを有し、センサー支持部材4とケース9Aとが接着剤層15Aを介して接合されている以外は、前述した第1実施形態と同様に構成されている。接着剤層15を介してセンサー支持部材4に接合されるケース9Aの部分は、軸方向に対して傾斜した側面である第1面と、軸方向に直交する第2面と、を有する。第1面には、縦断面が直角三角形をなす凹部94が設けられ、第2面には、縦断面が二等辺三角形をなす凹部95が設けられている。そして、凹部94、95内には、それぞれ、接着剤層15Aの一部が入り込んでいる。これにより、接着剤層15Aは、厚さt1の他の部分よりも厚い部分152(厚さt3)と、厚さt1の他の部分よりも厚い部分153(厚さt4)と、を有する。
【0041】
このように、ケース9Aは、接着剤層15Aの一部を収納する凹部94、95を有する。これにより、接着剤層15Aとケース9Aとの接触面積を大きくすることができる。そのため、ケース9Aに対する接着剤層15Aのアンカー効果を高めることができる。なお、図示の構成では、凹部94と凹部41との軸方向での位置および範囲が互いに一致しているが、これに限定されず、これらの位置が軸方向にずれていてもよいし、これらの範囲が互いに異なっていてもよい。
【0042】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、金属製のセンサー支持部材4と非金属製のケース9とを互いに高い信頼性で固定することができる。
【0043】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材とケースとの固定状態を模式的に示す縦断面図である。図6は、図5に示すセンサー支持部材の凹部の配置を示す平面図である。以下、図5および図6に示す第3実施形態について説明するが、前述した第1実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5および図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0044】
図5および図6に示す圧力センサー1Bは、第1実施形態のセンサー支持部材4に代えて、センサー支持部材4Bを有し、センサー支持部材4Bとケース9とが接着剤層15Bを介して接合されている以外は、前述した第1実施形態と同様に構成されている。接着剤層15Bを介してケース9に接合されるセンサー支持部材4Bの第2主面44の部分は、軸方向に対して傾斜した側面である第1面と、軸方向に直交する第2面と、を有する。このような第1面および第2面には、複数の凹部42が設けられている。各凹部42は、第1面と第2面とに跨って配置されている。また、図6に示すように、複数の凹部42は、周方向に並んで配置されている。そして、各凹部42内には、接着剤層15Bの一部が入り込んでいる。これにより、接着剤層15Bは、厚さt1の他の部分よりも厚い部分154(厚さt5)を有する。
【0045】
このように、センサー支持部材4Bは、厚い部分154の一部を収納する凹部42を有する。これにより、接着剤層15Bとセンサー支持部材4Bとの接触面積を大きくすることができる。そのため、センサー支持部材4Bに対する接着剤層15Bのアンカー効果を高めることができる。なお、図6では、凹部42の数が4つであるが、これに限定されず、凹部42の数が1つ以上3つ以下または5つ以上であってもよい。また、図6では、凹部42が周方向に沿って等角度間隔で配置されているが、凹部42の配置は、これに限定されない。また、凹部42の形状も図示の形状に限定されない。
【0046】
ここで、凹部42は、開口側に向けて幅が狭くなっている部分421を有する。言い換えると、凹部42の幅は、凹部42の底部に向けて幅が広がる部分を有する。これにより、接着剤層15Bの当該部分がセンサー支持部材4Bの凹部42から抜けにくくなる。そのため、センサー支持部材4Bに対する接着剤層15Bのアンカー効果を高めることができる。
【0047】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、金属製のセンサー支持部材4と非金属製のケース9Bとを互いに高い信頼性で固定することができる。
【0048】
<第4実施形態>
図7は、本発明の第4実施形態に係る圧力センサーのセンサー支持部材を模式的に示す平面図である。以下、図7に示す第4実施形態について説明するが、前述した第1実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。なお、図7において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0049】
図7に示す圧力センサー1Cは、第3実施形態のセンサー支持部材4Bに代えて、センサー支持部材4Cを有する以外は、前述した第3実施形態と同様に構成されている。センサー支持部材4Cは、第3実施形態の凹部42に代えて、凹部47を有する以外は、第3実施形態のセンサー支持部材4Bと同様である。
【0050】
凹部47は、軸方向から見たとき円形をなしており、凹部47の幅は、凹部47の底部に向けて幅が広がる部分471を有する。これにより、前述した第1実施形態の凹部42と同様の効果を奏する。なお、凹部47の形状、配置、数等は、図示の平面視形状、配置、数等に限定されない。
【0051】
以上のような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、金属製のセンサー支持部材4と非金属製のケース9とを互いに高い信頼性で固定することができる。
【0052】
以上、本発明の圧力センサーを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…圧力センサー
1A…圧力センサー
1B…圧力センサー
1C…圧力センサー
2…取付部材
3…ダイアフラム
4…センサー支持部材
4B…センサー支持部材
4C…センサー支持部材
5…センサー素子
6…端子
7…封止材
9…ケース
9A…ケース
9B…ケース
12…端子
14…Oリング
15…接着剤層
15A…接着剤層
15B…接着剤層
21…貫通孔
22…雄ネジ部
23…頭部
41…凹部
42…凹部
43…第1主面
44…第2主面
45…貫通孔
47…凹部
91…ケース本体
93…凹部
94…凹部
95…凹部
131…凹部
151…部分
152…部分
153…部分
154…部分
421…部分
471…部分
S1…第1室
S2…第2室
ax…軸線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7