(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】定量式エアゾールバルブおよびエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/52 20060101AFI20221118BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B65D83/52
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2018010628
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231851(JP,A)
【文献】実開平06-022699(JP,U)
【文献】特開平08-026355(JP,A)
【文献】特開2008-308197(JP,A)
【文献】特開2002-228116(JP,A)
【文献】実開平03-123836(JP,U)
【文献】特開2004-182284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/52
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ部と、そのバルブ部が操作されていないときに容器内と連通され、原液と液化ガスを含むエアゾール組成物を一定量貯蔵する定量室とを有し、
前記バルブ部の操作により外部と連通して定量室内の一定量のエアゾール組成物を外部に噴射する定量式エアゾールバルブであって、
前記バルブ部が、ステム収容部と、そのステム収容部内に静止位置と操作位置との間で移動可能に保持されるステムとを有し、
前記定量室が、前記ステム収容部の下部に設けられる環状の貯蔵空間を備え、
前記
貯蔵空間を囲む定量室の内面の少なくとも一部に粗面が形成されている、
定量式エアゾールバルブ。
【請求項2】
前記粗面の平均粗さが0.3~10μmである請求項1記載の定量式エアゾールバルブ。
【請求項3】
前記定量室が、前記ステム収容部の下部に設けられる下向きに配置されるカップ状の上ケースと、
上向きに配置され、前記上ケースと嵌合するカップ状の下ケースと、
それらの中心部を上下に貫通する通路筒とを備え、
上ケース、下ケースおよび通路筒によって
前記環状の貯蔵空間が形成されている請求項1または2記載の定量式エアゾールバルブ。
【請求項4】
前記上ケースがステム収容部と一体に形成されている請求項3記載の定量式エアゾールバルブ。
【請求項5】
容器と、その容器の上端の開口に取り付けられる請求項1~4のいずれかに記載の定量式エアゾールバルブとからなり、容器内に原液と液化ガスを含むエアゾール組成物が充填されているエアゾール製品。
【請求項6】
前記液化ガスの含有量がエアゾール組成物中50~99.5質量%である請求項5記載のエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定量式エアゾールバルブおよびエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上ハウジングと下ハウジングとから構成される定量室を有する定量噴射機構が開示されている。この特許文献1は、定量室の容積を大きくしたことにより定量噴射の途中で噴射状態が不安定になる、という問題を解決するため、下ハウジングの定量室の形状を袋小路状にし、上ハウジングの定量室とは狭い通路(小断面空間域)で連通させる構造を提案している。
【0003】
特許文献2には、ハウジングの側面に容量が大きい拡張ユニットの上部を取り付け、拡張ユニットの拡張室内に底部に向かって延びる細管を設けた定量噴射式のエアゾール製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-235914号公報
【文献】特開2016-150760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエアゾール製品は、上ハウジングの内部の噴射剤の冷却作用が下ハウジングの内部の噴射剤の気化作用に影響しないよう、いわば熱的に遮断しており、それにより安定した噴射状態を維持することができるとされている。しかし上ハウジングから噴出する気化ガスと下ハウジングから噴出する気化ガスが合流する地点では、流れが乱れ、ハウジング内の環状通路内で液化ガスの過剰な気化が起こるおそれがある。
【0006】
特許文献2のエアゾール製品は、拡張室(定量室)の容量が大きく、細管がディップチューブの作用を奏するので、バルブハウジングには液体状態の液化ガスが送られる。そして液化ガスはバルブハウジング内で気化するので、流れている途中で不安定になることがない。また、拡張室は容器本体の内部と連通しているので、流れがスムーズである。しかし細管や逆止弁を設けるので、構造が複雑になりがちである。
【0007】
本発明は定量室の内部で液化ガスを安定して気化させることができ、それにより、大きい定量室を用いても冷却作用による噴射状態が不安定になりにくく、構成がシンプルな定量式エアゾールバルブおよびエアゾール製品を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定量式エアゾールバルブ12は、バルブ部21と、そのバルブ部が操作されていないときに容器11内と連通され、原液Cと液化ガスLQを含むエアゾール組成物16を一定量貯蔵する定量室22とを有し、前記バルブ部21の操作により外部と連通して定量室22内の一定量のエアゾール組成物16aを外部に噴射する定量式エアゾールバルブ12であって、前記定量室22の内面の少なくとも一部に粗面Zが形成されていることを特徴としている。このような定量噴射用のエアゾールバルブ12においては、前記粗面Zの平均粗さRaが0.3~10μmであるものが好ましい。
【0009】
前記バルブ部21が、ステム収容部23と、そのステム収容部内に静止位置と操作位置との間で移動可能に保持されるステム13とを有し、前記定量室22が、前記ステム収容部23の下部に設けられる下向きに配置されるカップ状の上ケース31と、上向きに配置され、前記上ケースと嵌合するカップ状の下ケース32と、それらの中心部を上下に貫通する通路筒33とを備え、上ケース、下ケースおよび通路筒で囲まれる環状の貯蔵空間Sが形成されているものが好ましい。その場合、前記上ケース31がステム収容部23と一体に形成されているものがさらに好ましい。
【0010】
本発明のエアゾール製品10は、容器11と、その容器の上端の開口に取り付けられる前記いずれかの定量式エアゾールバルブ12とからなり、容器11内に原液Cと液化ガスLQを含むエアゾール組成物16が充填されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
定量室に収容された液化ガスは、バルブ部の操作により外部と連通すると大気圧との差圧により外部に向かって流れる。このとき液化ガスの一部が気化し、その気化熱により定量室内のエアゾール組成物が冷却されるが、粗面と触れている部位で液化ガスの気化が促進される。そのため、噴射が途中で弱まることなく安定した状態で噴射することができる。
【0012】
このように本発明の定量式エアゾールバルブでは、定量室内の気化は粗面の全体で始まるので、穏やかで安定している。そのため、容量が大きい定量室であっても気化を促進する効果が得られやすく、定量室内のエアゾール組成物は噴射途中で弱まることなく安定した状態で噴射される。また、細管や逆止弁を必要としないので、構成がシンプルである。
【0013】
このような定量式エアゾールバルブにおいて、前記粗面の平均粗さが0.3~10μmである場合は、液化ガスの気化を促進する効果が特に得られやすく、噴射がスムーズであり、広い領域での気化と相まって噴射状態が一層安定する。
【0014】
前記バルブ部が、ステム収容部と、そのステム収容部内に静止位置と操作位置との間で移動可能に保持されるステムとを有し、前記定量室が、前記ステム収容部の下部に設けられる下向きに配置されるカップ状の上ケースと、上向きに配置され、前記下ケースと嵌合するカップ状の上ケースと、それらの中心部を上下に貫通する通路筒とを備え、上ケース、下ケースおよび通路筒で囲まれる環状の貯蔵空間が形成されている場合は、粗面を広範囲に設けやすく、バルブ部内のエアゾール組成物の噴射に続き定量室内のエアゾール組成物が噴射される。とくに、前記上ケースがステム収容部と一体に形成されている場合は、部品数が少なくなるので、部品管理や組み立て作業が容易になる。
【0015】
本発明のエアゾール製品は、前述の定量式エアゾールバルブを備えているので、容量が大きい定量室であっても、液化ガスの冷却作用による噴射の不安定化を避けることができ、構成がシンプルである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の定量式エアゾールバルブを備えたエアゾール製品の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の定量式エアゾールバルブの拡大断面図である。
【
図3】
図1の定量式エアゾールバルブの噴射状態を示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の定量式エアゾールバルブの他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明の定量式エアゾールバルブのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】本発明の定量式エアゾールバルブのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図7】本発明の定量式エアゾールバルブのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すエアゾール製品10は、容器11と、その容器の上端に固着された定量式エアゾールバルブ(以下、単にエアゾールバルブという)12と、エアゾールバルブのステム13に取り付けられる押しボタン14と、エアゾールバルブ12の下端に取り付けられるディップチューブ15と、容器11内に収容されているエアゾール組成物16とからなる。エアゾール組成物16は、原液Cと、液化ガスLQおよびその気相(気化ガス)Gからなる噴射剤(加圧剤)Pとから構成されている。加圧状態の容器11内では液化ガスLQは一部が気化して気相Gとになっており、液化ガス(液相)LQは原液Cと混合されている。
【0018】
容器11はこの実施形態では金属製であり、有底円筒状の胴部17、肩部18およびビード部19からなる従来公知のものである。この容器11は、金属板からプレス成形などで一体に成形することができる。容器11は、合成樹脂製であってもよい。
【0019】
図2に示すように、エアゾールバルブ12は、容器11の上端開口にクリンプされるマウンティングカップ20と、そのマウンティングカップ20に固定され、保持されるバルブ部21と、そのバルブ部の下部に設けられる定量室22とからなる。バルブ部21は、有底筒状のステム収容部23と、そのステム収容部23内に上下動自在に収容される前述のステム13と、ステム13を常時上向きに付勢するバネ24と、ステム13の周囲に配置されるステムラバー25とを備えている。
【0020】
この実施形態では、ステム13が操作されていない状態(
図2参照)では、ステム13に形成されるステム孔13aがステムラバー25の上方に出ている。そしてステム13の段部13bの上面とステムラバー25の下面との圧接や、ステムラバー25の内周面とステム13の外周面との間の圧接によりシール作用が奏される。そのため
図3に示すように、ステム13が押し込まれたとき、ステムラバー25はほとんど変形せず、ステム13がステムラバー25の内周面を摺動し、ステム孔13aがステムラバー25の下方に位置し、ステム収容部23の内部と外部とが連通する。ただしステムラバー25の変形によりステム孔13aがステムラバー25の内周面によって直接シールされる通常の形式のバルブ機構を採用することもできる。
【0021】
前記ステムラバー25は、マウンティングカップ20とステム収容部23との間をシールする機能をも有する。容器11のビード部19とマウンティングカップ20の間は、ガスケット26によってシールされている。
【0022】
ステム収容部23の上端外周にマウンティングカップ20と係合する係合段部27が形成され、上端内周に前述のステムラバー25が載置される支持段部28が設けられ、底壁29に容器11内と連通する孔30が形成されているなど、ステム収容部23は従来のバルブハウジングに相当するものである。そしてその内部に収容されるステム13、そのステム13を上向きに付勢するバネ24などと共に、前述のバルブ部21を構成している。
【0023】
定量室22は、前記ステム収容部23と一体に形成される上ケース31と、上ケースと嵌合する下ケース32と、それらの中央部を上下に貫通する通路筒33とからなる。上ケース31は、ステム収容部23の上下方向の中間位置から半径方向外側に向かって延びる天面31aと、天面31aの外周から下に向かって延びる上周壁31bとからなり、全体として下を向いたカップ状の形状を有する。
【0024】
ステム収容部23の中間部から下方は内向きの段部23aを介して下方に延びるシール筒34が設けられている。シール筒34の内面は、ステム操作時にステム13の下端の外周と嵌合してシールするシール面34aとされている(
図3参照)。このシール筒34の上端の段部23aにはバネ24の下端を支持するバネ支持部35が設けられている。バネ24は例えば圧縮コイルバネであり、バネ支持部35とステム13の間に介在されている。他方、シール筒34の底壁29の下面から下に向かって円筒状の嵌合内筒37が突出している。この嵌合内筒37は、後述する下ケース32の嵌合外筒38と共に通路筒33を構成する。前記ステム収容部23の中間部の段部23aには、シール筒34を囲むように、定量室22内とステム収容部23内とを連通する連通孔40が形成されている。連通孔40は、複数設けるのが好ましい。
【0025】
下ケース32は、前記上ケース31の天面31aと対向する底面32aと、その底面32aの外周から上向きに延び、上ケース31の上周壁31bの内周面と嵌合する下周壁32bとを備えている。さらに底面32aの中央上面から上向きに、前述の嵌合内筒37の外周面と嵌合する嵌合外筒38が突出している。底面32aの下面中央から下向きに、ディップチューブ取付筒41が突出しており、底面32aの中心部には、容器11の内部と通路筒33の内部を連通する貫通孔42が形成されている。
【0026】
前記ステム収容部23、上ケース31および下ケース32は、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)など、従来のバルブハウジングに採用されている合成樹脂から成形することができる。ただし、ステンレス、アルミニウムなど、金属を採用することもできる。ステム13についても同様の合成樹脂成形品を採用することができる。
【0027】
上ケース31と下ケース32を組み合わせると、上ケースの天面31aと嵌合内筒37の一部、下ケース32の底面32a、下周壁32bおよび嵌合外筒38の一部により、環状の貯蔵空間Sが形成される。この貯蔵空間Sを囲む壁面のうち、下ケース32の底面32aの上面と下周壁32bの内周面と嵌合外筒の外周面(2点鎖線で示す範囲)は粗面Zにされている。このような粗面Zは、たとえば下ケース32の内面を形成する金型の表面にエッチング、切削、レーザー加工などを施して細かな凹凸を設けることにより、型による成形のときに同時に形成することができる。上ケース31の天面31aの下面や嵌合内筒37の外周面に粗面を設けることもできる。また、成形後にレーザー加工により表面に細かな溝を形成してもよい。
【0028】
粗面Zの平均粗さRaは10μm以下にするのが好ましく、とくに8μm以下がさらに好ましい。粗面Zの凹凸が粗過ぎる場合は気化が安定しにくくなる。また、平均粗さRaは0.3μm以上、とくに0.5μm以上にするのが好ましい。粗面Zの平均粗さ(凹凸)が小さすぎる場合は液化ガスLQの気化を促進する作用が低くなる。金型から成形品を抜き取るとき、成形品の撓みや抜き勾配があるので、この程度の平均粗さはとくに問題にならない。
【0029】
前述の容器11に所定量の原液Cを充填し、エアゾールバルブ12を被せ、液化ガスLQをアンダーカップ充填で充填した後、クリンプし、押しボタン14をステム13に取り付けることにより、
図1のエアゾール製品10が製造される。
【0030】
エアゾール製品10に充填される原液Cとしては、有効成分をエタノールなどのアルコールや灯油などの油性溶剤に配合した原液、有効成分を精製水などの水やアルコール水溶液などの水性溶剤に配合した原液等が挙げられる。液化ガスLQは、原液Cを微細な霧にする、霧を広範囲に拡散させる、冷却効果を付与するなどの優れた効果が得られ、液化ガスLQとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合ガスなどが挙げられる。
【0031】
このエアゾール製品10は、定量室22内のエアゾール組成物16aを安定的に噴射するために、液化ガスLQをエアゾール組成物16中に50~99.5質量%、さらには60~99質量%と多く含有することが好ましく、たとえば、殺虫剤、芳香剤、消臭剤、花粉除去剤などの空間用品、制汗剤、冷却剤、日焼け止め、ほてり止め、ボディスプレー、消炎鎮痛剤、害虫忌避剤、ヘアスプレーなどの人体用品などに用いられる。
【0032】
上記のように構成されるエアゾール製品10は、エアゾールバルブ12を操作していない状態では、
図2のように、ステム孔13aがステムラバー25よりも上部にあり、ステム13の段部13bがステムラバー25に密接しているので、ステム収容部23の内部は外気と連通せず、噴射は生じない。このとき、ステム13の下部はシール筒34の内面(シール面34a)に嵌合していないので、容器11の内部がステム収容部23の内部と連通している。そして定量室22とステム収容部23の内部には噴射剤Pの圧力により、ディップチューブ15を介して原液Cと液化ガスLQが入り込んでいる。この状態では、定量室22と容器11内とは圧力がバランスしている。したがって定量室22内でも液化ガスLQはほとんど気化しない。
【0033】
この状態から、
図3に示すようにステム13を押し下げると、ステム13の下部がシール筒34の内部に嵌入し、容器11の内部とステム収容部23の内部との連通を遮断する。同時にステム13のステム孔13aがステムラバー25の下面より下に下がり、ステム収容部23はステム13の内部、ひいては外部と連通する。そのため、ステム収容部23の内周とステム13の外周とシール筒34の上部とで囲まれる空間S1および定量室22の内部の貯蔵空間Sが外気と連通し、定量室22内も外気と連通する。それによりステム収容部23内の空間S1内のエアゾール組成物が噴出し、それに連続して定量室22内のエアゾール組成物16aが外部に噴出する。その後はステム13がシール筒34を塞いでいるため、容器11の内部からエアゾール組成物16は供給されない。それにより、ほぼステム収容部23内の空間S1内のエアゾール組成物と定量室22内の一定量のエアゾール組成物16aだけが噴射される定量噴射が達成される。
【0034】
定量室22内のエアゾール組成物16aが噴出するとき、先にステム収容部23内の空間S1内のエアゾール組成物が噴射されて定量室22内の圧力が減少するが、定量室22内の液化ガスLQは内部や途中の通路でも気化が始まる。そしてこのエアゾール製品10では、定量室22の内面に粗面Zが形成されているので、その粗面Zの全体で液化ガスLQの気化が促進される。粗面Zの近辺では、液化ガスLQの気化熱によりエアゾール組成物16a自体の温度が低下するが、液化ガスLQの気化は粗面Z全体の広い範囲で生ずるため、温度低下による気化作用の抑制や噴射の不安定化は生じない。また、気化ガス(気相G)や原液Cの流れは下から上へと一方向であるので流れがスムーズであり、乱流による過剰な気化が抑制される。それにより定量室22内のエアゾール組成物16aの噴射は安定し、ステム収容部内の空間S1内のエアゾール組成物の噴射に連続して行われる。
【0035】
ステム13の押し下げを解除すると、ステム13はバネ24の付勢作用で押し上げられ、ステム13とステムラバー25の間がシールされ、ステム13とシール筒34の間のシールが解除される(
図2参照)。それにより次のエアゾール組成物16がステム収容部23内と定量室22に供給される。
【0036】
以上に本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている範囲で種々の変形を行うことができる。たとえば
図4に示すように、定量室22の天面31aと底面32aのみに粗面Zを形成してもよい。その場合は定量室22を構成する部品の金型からの抜き出しが楽になる。また、
図5に示すように、定量室22をステム収容部23から分離して形成し、嵌合、溶着、接着などによって接合するようにしてもよい。
【0037】
さらに
図6に示すように、下ケース32に通路筒33を設け、通路筒の上部内周部をシール筒34とし、上部外周部に縦溝40aを複数本設けて連通孔40としている。また、ステム収容部23には底部や嵌合内筒を設けず、下ケース32に設けた通路筒33の上端でステム収容部23の下端開口を塞ぐようにしてもよい。なお、前記実施形態では定量室22をステム収容部23と同心状に配置している。しかし
図7に示すように、左右いずれかにずらせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 エアゾール製品
11 容器
12 (定量式)エアゾールバルブ
13 ステム
13a ステム孔
13b 段部
14 押しボタン
15 ディップチューブ
16 エアゾール組成物
16a 定量室内のエアゾール組成物
C 原液
P 噴射剤
LQ 液化ガス(液相)
G 気相
S 定量室の内部の貯蔵空間
S1 ステム収容部、ステム外周、シール筒の上部によって囲まれる空間
17 胴部
18 肩部
19 ビード部
20 マウンティングカップ
21 バルブ部
22 定量室
23 ステム収容部
24 バネ
25 ステムラバー
26 ガスケット
27 係合段部
28 支持段部
29 底壁
30 孔
31 上ケース
31a 天面
31b 上周壁
32 下ケース
32a 底面
32b 下周壁
33 通路筒
34 シール筒
35 バネ支持部
37 嵌合内筒
38 嵌合外筒
40 連通孔
40a 縦溝
41 ディップチューブ取付筒
42 貫通孔
Z 粗面