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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221118BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C04B41/88 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018119481
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020004749
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 正樹
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖彦
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-205568(JP,A)
【文献】特開2014-063986(JP,A)
【文献】特開2000-332090(JP,A)
【文献】特開2004-338973(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106688067(CN,A)
【文献】特開2005-056881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C04B 41/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部材と、
前記セラミックス部材の表面側に配置され、面方向に広がる外部電極であって、一方の面が外部に露出し、他方の面が前記セラミックス部材に面する外部電極と、
を備える半導体製造装置用部品において、
前記セラミックス部材は、セラミックス材料の純度が99.8%以上であり、
前記外部電極は、導電性材料とセラミックス材料とガラスとを含み、
前記セラミックス部材の前記セラミックス材料と前記外部電極の前記導電性材料との間に前記ガラスが介在している
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置用部品において、さらに、
前記セラミックス部材の内部には、一端が前記外部電極に電気的に接続されたビアが配置されており、
前記ビアは、導電性材料とセラミックス材料とガラスとを含む、
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体製造装置用部品において、
前記外部電極におけるガラスの含有率は、10%以下である、
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【請求項4】
セラミックス部材と、
前記セラミックス部材の表面側に露出するように配置された外部電極と、
を備える半導体製造装置用部品において、
前記セラミックス部材は、セラミックス材料の純度が99.8%以上であり、
前記外部電極は、導電性材料とセラミックス材料とガラスとを含み、
前記外部電極の少なくとも一の方向に平行な断面における気孔率は、0.1%以下である、
ことを特徴とする半導体製造装置用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、半導体製造装置用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部品として、ウェハを静電引力により吸着して保持する静電チャックが知られている。静電チャックは、セラミックス部材と、ベース部材と、セラミックス部材とベース部材とを接合する接合部と、セラミックス部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の表面(以下、「吸着面」という)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
従来から、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材にチャック電極が設けられた静電チャックが知られている。この静電チャックでは、チェック電極におけるアルミナと導電性材料との含有割合が所定の割合とされている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5441020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材の表面側に、チャック電極等の導電体に電気的に接続される外部電極が露出するように配置された静電チャックでは、外部電極に、導電性材料に加えて、セラミックス部材を構成するセラミックス材料を含めることにより、セラミックス部材におけるセラミックス部分と外部電極との密着性を向上させることができる。
【0006】
しかし、本願発明者は、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材の表面側に外部電極が露出するように配置された静電チャックでは、外部電極を形成する導電性材料とセラミックス材料との間に隙間が形成されやすく、その隙間からセラミックス部材の内部に水分が浸入する、という新たな課題を見出した。この新たな課題は、セラミックス材料の純度が99.8%以上である高純度のセラミックス部材を備える静電チャックに特有の課題である。すなわち、一般に、セラミックス材料の純度が99.8%未満である低純度のセラミックス部材では、高純度のセラミックス部材とは異なり、セラミックス部材のセラミックス部分(基材)に、セラミックス材料に加えてガラス等の軟性材料が比較的に多く含まれている。このため、このような低純度のセラミックス部材では、該セラミックス部材の焼成時には、セラミックス部分に含まれている軟性材料が外部電極内部に入り込むことによって外部電極の焼結性が向上し、その結果、外部電極における導電性材料とセラミックス材料との間に隙間が形成されることが抑制されるため、上述の新たな課題が生じない。なお、セラミックス部材の内部に水分が浸入すると、例えば、水分の熱膨張によってセラミックス部材の変形や剥離等を招くおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、静電チャックに限らず、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材の表面側に外部電極が露出するように配置された半導体製造装置用部品に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、セラミックス部材と、前記セラミックス部材の表面側に露出するように配置された外部電極と、を備える半導体製造装置用部品において、前記セラミックス部材は、セラミックス材料の純度が99.8%以上であり、前記外部電極は、導電性材料とセラミックス材料とガラスとを含む。本半導体製造装置用部品では、外部電極には、ガラスが含まれているため、このガラスが外部電極を形成する導電性材料とセラミックス材料(母材または共生地)との間に介在することによって、外部電極に水分の浸入経路が形成されることが抑制される。これにより、本半導体製造装置用部品によれば、水分が外部電極を介してセラミックス部材の内部に浸入することを抑制することができる。
【0011】
(2)上記半導体製造装置用部品において、さらに、前記セラミックス部材の内部には、一端が前記外部電極に電気的に接続されたビアが配置されており、前記ビアは、導電性材料とセラミックス材料とガラスとを含む構成であってもよい。本半導体製造装置用部品では、外部電極だけでなく、該外部電極に電気的に接続されたビアもガラスを含む。これにより、ビアがガラスを含まない構成に比べて、外部電極に含まれるガラスがビア側に移動することに起因して外部電極に水分の浸入経路が形成されることを抑制することができる。
【0012】
(3)上記半導体製造装置用部品において、前記外部電極におけるガラスの含有率は、10%以下である構成であってもよい。本半導体製造装置用部品によれば、外部電極におけるガラスの含有率が10%より高い構成に比べて、外部電極からセラミックス部材のセラミックス部分へのガラスの移動に起因してセラミックス部材のセラミックス材料の純度が部分的に低下することを抑制することができる。
【0013】
(4)上記半導体製造装置用部品において、前記外部電極の少なくとも一の方向に平行な断面における気孔率は、0.1%以下である構成であってもよい。本半導体製造装置用部品によれば、外部電極の任意の断面における気孔率が0.1%より高い構成に比べて、水分が外部電極を介してセラミックス部材の内部に浸入することを、より効果的に抑制することができる。
【0014】
本明細書によって開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、静電チャックや真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッドなど、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材の表面側に外部電極が露出するように配置された半導体製造装置用部品、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成を示す説明図である。
図4図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成を示す説明図である。
図5】性能評価の結果を示す説明図である。
図6】サンプル3における電極パッド73の周辺部分の特定断面(XZ断面)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0017】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面(以下、「セラミックス側接合面S2」という)とベース部材20の上面(以下、「ベース側接合面S3」という)とが上記配列方向に対向するように配置されている。静電チャック100は、さらに、セラミックス部材10のセラミックス側接合面S2とベース部材20のベース側接合面S3との間に配置された接合部30を備える。
【0018】
セラミックス部材10は、例えば円形平面の板状部材であり、セラミックスにより形成されている。セラミックス部材10の直径は、例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは、例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10の形成材料について後で詳説する。
【0019】
セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された1つのチャック電極40が設けられている。チャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の上面(以下、「吸着面S1」という)に吸着固定される。
【0020】
また、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等の高融点の金属材料)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が設けられている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによってセラミックス部材10が温められ、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。ヒータ電極50は、例えば、セラミックス部材10の吸着面S1をできるだけ満遍なく温めるため、Z方向視で略同心円状に形成されている。
【0021】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、熱伝導率がセラミックス部材10を形成するセラミックス材料の熱伝導率より高い材料(例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等))により形成されている。ベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm程度)であり、ベース部材20の厚さは、例えば20mm~40mm程度である。
【0022】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が供給されると、ベース部材20が冷却される。上述したヒータ電極50によるセラミックス部材10の加熱と併せてベース部材20の冷却が行われると、接合部30を介したセラミックス部材10とベース部材20との間の伝熱により、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWの温度が一定に維持される。さらに、プラズマ処理中にプラズマからの入熱が生じた際には、ヒータ電極50に加える電力を調整することにより、ウェハWの温度制御が実現される。
【0023】
接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接合剤(接着剤)を含んでおり、セラミックス部材10とベース部材20とを接合している。接合部30の厚さは例えば0.1mm以上、1mm以下である。
【0024】
A-2.チャック電極40およびヒータ電極50等の構成:
図3は、図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成を示す説明図であり、図4は、図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成を示す説明図である。
【0025】
図2に示すように、ヒータ電極50は、上下方向(Z軸方向)に略垂直な第1の仮想平面L1上に配置されている。具体的には、図3に示すように、上下方向視でのヒータ電極50の形状は、例えば略円形または略螺旋状である。また、図2に示すように、チャック電極40は、上下方向に略垂直な第2の仮想平面L2上に配置されている。具体的には、図4に示すように、上下方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。なお、第1の仮想平面L1と第2の仮想平面L2とは上下方向において互いに異なる位置に位置している。本実施形態では、チャック電極40は、ヒータ電極50より上側に配置されている。
【0026】
また、静電チャック100は、チャック電極40やヒータ電極50への給電のための構成を備えている。具体的には、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の内部に至る複数の端子用孔110が形成されている。各端子用孔110は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10のセラミックス側接合面S2側に形成された凹部13とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0027】
各端子用孔110には、導電性材料により形成された略柱状の部材である給電端子74が収容されている。また、各端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部13の底面には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された電極パッド73が配置されている。給電端子74の上端部分は、ろう付け部(例えば金属ろう材)を介して電極パッド73に接合されている。電極パッド73は、上下方向(Z軸方向)に略垂直な面方向に広がる扁平状である。電極パッド73は、特許請求の範囲における外部電極に相当する。
【0028】
また、図2に示すように、ヒータ電極50の一端は、上下方向(Z軸方向)に延びるヒータ用ビア51および電極パッド73を介して、一対の給電端子74の一方に電気的に接続されている。具体的には、ヒータ用ビア51は、上下方向に延びる棒状であり、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。ヒータ用ビア51の上端は、ヒータ用ビア51の一端に電気的に接続されており、ヒータ用ビア51の下端は、電極パッド73の上面に電気的に接続されている。ヒータ電極50の他端は、ヒータ用ビア等(図示せず)を介して、該一対の給電端子74の他方(図示せず)に電気的に接続されている。
【0029】
また、チャック電極40の一端は、第1のチャック用ビア41Aと通電パッド43と第2のチャック用ビア41Bとを介して、別の一対の給電端子74の一方に電気的に接続されている。具体的には、チャック用ビア41(41A,41B)は、上下方向に延びる棒状であり、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。通電パッド43は、上下方向に略垂直な面方向に広がる扁平状であり、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。第1のチャック用ビア41Aの上端は、チャック電極40の下面に電気的に接続されており、第1のチャック用ビア41Aの下端は、通電パッド43の上面に電気的に接続されている。第2のチャック用ビア41Bの上端は、通電パッド43の下面に電気的に接続されており、第2のチャック用ビア41Bの下端は、電極パッド73の上面に電気的に接続されている。チャック電極40の他端は、チャック用ビア等(図示せず)を介して、該別の一対の給電端子74の他方(図示せず)に電気的に接続されている。チャック用ビア41およびヒータ用ビア51は、特許請求の範囲におけるビアに相当する。
【0030】
A-3.各部材の形成材料:
セラミックス部材10は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)の純度が99.8%以上である。電極パッド73とチャック用ビア41とヒータ用ビア51とは、それぞれ、上述した導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料であるアルミナを含んでいる。なお、電極パッド73に含まれる導電性材料と、チャック用ビア41やヒータ用ビア51に含まれる導電性材料とは、互いに同種の材料であってもよいし、互いに異なる種類の材料であってもよい。なお、セラミックス部材10におけるアルミナの純度(例えばwt%)は、例えば、XRD分析(X-Ray DifAnalysisraction Analysis)やXRF分析(X-Ray Fluorescence Analysis)を行う公知の装置を用いて、セラミックス部材10の表面に対する定性分析を行うことによって特定することができる。
【0031】
また、静電チャック100(セラミックス部材10)は、次の条件1を満たす。
条件1:電極パッド73は、導電性材料、アルミナに加えて、ガラス(例えばSiOおよびMgO)を含んでいる。
ガラス成分は、例えばSiOである。なお、ガラスには、ガラス成分に加えて、金属または金属酸化物(例えばMgO)を含むことが好ましい。ガラスに金属等が含まれると、後述する静電チャック100の製造段階において、ガラス成分の融点が下がるため、低い温度でも、ガラス成分が溶融して電極パッド73における導電性材料とセラミックス材料との隙間に入り込むことによって、電極パッド73に気孔が形成されることが抑制される。
【0032】
また、静電チャック100(セラミックス部材10)は、次の条件2を満たすことが好ましい。
条件2:チャック用ビア41およびヒータ用ビア51の少なくとも一方は、導電性材料、アルミナに加えて、ガラス(例えばSiOおよびMgO)を含んでいる。
【0033】
また、静電チャック100(セラミックス部材10)は、次の条件3を満たすことが好ましい。
条件3:電極パッド73におけるガラスの含有率は、10%以下である。
【0034】
また、静電チャック100(セラミックス部材10)は、次の条件4を満たすことが好ましい。
条件4:電極パッド73を含む特定断面であって、一の方向(例えば上下方向(Z軸方向))に略平行な少なくとも1つの特定断面について、電極パッド73の気孔率は、0.1%以下である。
【0035】
A-4.静電チャック100の製造方法:
次に、本実施形態における静電チャック100の製造方法の一例を説明する。はじめに、セラミックス部材10とベース部材20とを準備する。セラミックス部材10は、例えば以下の方法により作製される。すなわち、アルミナ原料とブチラール樹脂と可塑剤と溶媒とからなるスラリーをキャスティングし、乾燥させてシート化したセラミックスグリーンシートを複数作製する。このとき、スラリーにおけるアルミナ原料の含有率を99.8%以上とすることにより、アルミナの純度が99.8%以上であるセラミックスグリーンシートを作製する。
【0036】
また、チャック電極40、ヒータ電極50、電極パッド73、チャック用ビア41、ヒータ用ビア51や、その他の配線を形成するため、例えばタングステンおよびモリブデンの少なくとも一方と樹脂と溶剤とからなる金属ペーストを作製する。このとき、電極パッド73、ビア(チャック用ビア41、ヒータ用ビア51)を形成するための金属ペーストには、アルミナ原料に加えて、ガラス(例えばSiOおよびMgO)を含める。そして、セラミックスグリーンシートに対して、チャック電極40用、ヒータ電極50用および電極パッド73用の金属ペーストの塗布や、スルーホールの形成やビア用の金属ペーストの充填等の必要な加工を行う。なお、ビア用の金属ペーストにおける固形分(導電性材料、アルミナ)と、樹脂と、溶剤との割合を調整することにより、スルーホールにおける金属ペーストの充填性や導電体(例えば、チャック電極40、ヒータ電極50、電極パッド73、通電パッド43)との接続性を制御することができる。
【0037】
次に、それらのセラミックスグリーンシートを積層し、脱脂後、焼成を行うことによってセラミックス部材10を作製する。なお、ベース部材20は、公知の製造方法によって製造可能であるため、ここでは製造方法の詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する。その後、各給電端子74を各貫通孔22内に挿入し、各給電端子74の上端部を各電極パッド73に例えば金ろう材によりろう付けする。以上の製造方法により、上述した構成の静電チャック100の製造が完了する。
【0039】
A-5.本実施形態の効果:
本願発明者は、セラミックス材料(アルミナ)の純度が99.8%以上のセラミックス部材10と、セラミックス部材10の表面側に露出するように配置された電極パッド73と、を備える静電チャック100では、電極パッド73を形成する導電性材料とセラミックス材料(母材または共生地)との間に隙間が形成されやすく、その隙間からセラミックス部材10の内部に水分が浸入する、という新たな課題を見出した。セラミックス部材10の内部に水分が浸入すると、例えば、水分の熱膨張によってセラミックス部材10の変形や剥離等を招くおそれがある。例えば、上記製造方法において、セラミックス部材10の焼成後、電極パッド73を形成するためのめっき処理時のめっき液や、めっき処理後の洗浄時の洗浄水などが、電極パッド73の隙間を介してセラミックス部材10の内部に浸入することがある。その後、給電端子74を電極パッド73に接合するために炉内でろう付けする際、熱がセラミックス部材10の内部に伝達され、セラミックス部材10の内部に存在する水分が膨張することに起因してセラミックス部材10の変形等を招くことがある。
【0040】
これに対して、本実施形態の静電チャック100では、電極パッド73には、ガラスが含まれている(上述の条件1)。このため、このガラスが電極パッド73を形成する導電性材料とセラミックス材料(母材または共生地)との間に介在することによって、電極パッド73に水分の浸入経路が形成されることが抑制される。これにより、本実施形態によれば、水分が電極パッド73を介してセラミックス部材10の内部に浸入することを抑制することができる。
【0041】
また、仮に、電極パッド73に電気的に接続されたチャック用ビア41やヒータ用ビア51が、ガラスを含まない構成では、次の問題が生じる可能性がある。すなわち、例えば、セラミックス部材10の焼成時、電極パッド73に含まれていたガラス成分がチャック用ビア41等に流れ込むことによって、電極パッド73におけるガラスの含有率が低下し、その結果、電極パッド73に水分の浸入経路が形成されることを十分に抑制できないおそれある。これに対して、本実施形態では、電極パッド73だけでなく、該電極パッド73に電気的に接続されたチャック用ビア41等もガラスを含む(上述の条件2)。これにより、チャック用ビア41等がガラスを含まない構成に比べて、電極パッド73に含まれるガラスがチャック用ビア41等側に移動することに起因して電極パッド73に水分の浸入経路が形成されることを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、電極パッド73におけるガラスの含有率が10%以下である(上述の条件3)。これにより、本実施形態によれば、電極パッド73におけるガラスの含有率が10%より高い構成に比べて、電極パッド73からセラミックス部材10のセラミックス部分へのガラスの移動に起因してセラミックス部材10のセラミックス材料の純度が部分的に低下することを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、電極パッド73の気孔率は、0.1%以下である(上述の条件4)。これにより、本実施形態によれば、電極パッド73の任意の断面における気孔率が0.1%より高い構成に比べて、水分が電極パッド73を介してセラミックス部材10の内部に浸入することを、より効果的に抑制することができる。
【0044】
また、上述した製造方法では、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材10の表面側に、ガラスを含む電極パッド73が配置されたセラミックス部材10を形成し、該電極パッド73に、ろう材を介して、給電端子74を接合する。ことにより、セラミックス部材10の内部に存在する水分が膨張することに起因してセラミックス部材10の変形等を招くことを抑制することができる。
【0045】
A-6.性能評価:
外部電極が配置され、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材のサンプルを対象に、以下に説明する性能評価を行った。図5は、性能評価の結果を示す説明図であり、図6は、後述のサンプル3における外部電極(電極パッド73)の周辺部分の特定断面(XZ断面)を示す模式図である。なお、図6では、セラミックス部材のセラミックス部分11同士の間に、電極パッド73が介在している。
【0046】
本性能評価では、セラミックス部材の3つのサンプル1~3が用いられた。3つのサンプル1~3は、外部電極を構成する成分の組成比(%)が互いに異なる。サンプル1,2では、外部電極を構成する成分の組成比が互いに同じであり、タングステン(W):モリブデン(Mo):アルミナ(Al):ガラス(SiO)=20:36:44:0(%)とした。すなわち、サンプル1,2では、外部電極にガラスが含まれていない。ただし、サンプル2における外部電極を形成するための原料の粒径は、サンプル1における外部電極を形成するための原料の粒径より小さい。一方、サンプル3では、外部電極を構成する成分の組成比は、タングステン:モリブデン:アルミナ:ガラス=18:34:42:6(%)とした。すなわち、サンプル3では、外部電極にガラスが含まれている。サンプル3は、上述した実施形態と同様の製造方法により作製されたセラミックス部材10のサンプルである。
【0047】
なお、外部電極(電極パッド73)がガラスを含んでいるか否かは、例えば、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)や、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)に付属されたエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて、電極パッド73を含む特定断面であって、一の方向(例えば上下方向(Z軸方向))に略平行な少なくとも1つの特定断面に対する定量分析を行うことによって判定することができる。なお、上記実施形態の静電チャック100において、チャック用ビア41等がガラスを含んでいるか否かも、例えば、EPMAやEDSを用いて、チャック用ビア41等を含む特定断面であって、一の方向に略平行な少なくとも1つの特定断面に対する定量分析を行うことによって判定することができる。
【0048】
ここで、外部電極(電極パッド73)におけるガラスの含有率は、外部電極を含む特定断面であって、一の方向(例えば上下方向(Z軸方向))に略平行な少なくとも1つの特定断面において、外部電極に相当する部分に含まれる全材料(少なくとも導電性材料とアルミナとガラスとを含む)に対するガラスの含有割合(面積%)である。なお、外部電極におけるガラスの含有率の特定方法について、図6を用いて説明する。まずは、上下方向に略平行な、電極パッド73を含む特定断面を設定し、該特定断面における電極パッド73に相当する部分73Aで、FIB-SEM(加速電圧15kV)による元素マッピング画像(例えば3000倍)を得る(図6参照)。得られた画像における電極パッド73に相当する部分73Aで、対応する元素の面積割合を算出することにより、電極パッド73におけるガラスの含有率を特定することができる。なお、特定断面において、電極パッド73とセラミックス部材10におけるセラミックス部分11等との境界が明確でないことがある。そこで、図6に示すように、特定断面(XZ断面)で、電極パッド73を構成する導電性材料部分(図6中のMo,W部分)のうち、最も上(Z軸正方向)側の端から下方向(Z軸負方向)に第1の所定距離D1(例えば2μm)だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第1の仮想直線M1とする。また、電極パッド73を構成する導電性材料部分のうち、最も下側の端から上方向に第1の所定距離D1だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第2の仮想直線M2とする。そして、特定断面(XZ断面)において、第1の仮想直線M1と第2の仮想直線M2とによって挟まれる領域を、電極パッド73に相当する部分73Aに決定する。
【0049】
また、外部電極(電極パッド73)の気孔率は、以下の方法により特定される。上述した含有率の特定方法と同様に、FIB-SEMによるSEM画像(例えば3000倍)を得て、得られた画像における外部電極に相当する部分で、上下方向に略垂直な複数の線を所定の間隔(例えば1μmから5μm間隔)で引く。各直線上の気孔にあたる部分の長さを測定し、直線の全長に対する気孔にあたる部分の長さの合計の比を、当該線上における気孔率とする。外部電極に相当する部分に引かれた複数の直線における気孔率の平均値を算出することにより、当該外部電極における気孔率を特定する。
【0050】
また、外部電極(電極パッド73)への水分浸入の有無は、外部電極への蛍光探傷液の染み込みの有無を確認することにより判定した。
【0051】
図5に示すように、サンプル1,2では、外部電極への水分浸入が検出され、サンプル3では、外部電極への水分浸入が検出されなかった。この評価結果から、外部電極にガラスが含まれていること(上述の条件1)によって、外部電極に水分の浸入経路が形成されることが抑制されることが分かる。また、サンプル1,2では、水分の浸入経路の形成に起因して、外部電極の気孔率は、0.2%以上になっている。なお、サンプル2における外部電極の気孔率は、サンプル1における外部電極の気孔率に比べて低い。この理由は次の通りである。上述したように、サンプル2における外部電極を形成するための原料の粒径は、サンプル1における外部電極を形成するための原料の粒径より小さい。このため、サンプル2では、サンプル1に比べて、外部電極の原料の粒径が小さい分だけ、原料の表面積が大きいため、外部電極の焼結性が高いからである。一方、図6からも分かるように、サンプル3では、導電性材料(MO,W)とアルミナとの間にガラスが入り込んでおり、その結果、電極パッド73の気孔率は略ゼロになっている。以上のことから、本実施形態の静電チャック100によれば、水分が電極パッド73を介してセラミックス部材10の内部に浸入することを抑制することができることが分かる。
【0052】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、外部電極として、セラミックス部材10における吸着面S1(第1の表面)とは反対側の表面(セラミックス側接合面S2)側に形成された凹部13に設けられた電極パッド73を例示したが、これに限らず、外部電極は、セラミックス部材10のセラミックス側接合面S2上に設けられた外部電極であってもよいし、セラミックス部材10における吸着面S1およびセラミックス側接合面S2以外の表面側に設けられた外部電極であってもよい。また、外部電極は、チャック電極40やヒータ電極50以外の導電体に電気的に接続されるものでもよい。要するに、外部電極は、セラミックス部材の内部に配置された導電体に電気的に接続され、かつ、セラミックス部材の表面側に配置された電極であればよい。
【0054】
また、上記実施形態におけるヒータ電極50の個数や、各ヒータ電極50の形状、セラミックス部材10における各ヒータ電極50の配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック100は、1つのヒータ電極50を備えるが、静電チャック100が備えるヒータ電極50の個数は、2つ以上であってもよい。また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態において、静電チャック100は、ヒータ電極50を備えなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、各ビア(チャック用ビア41、ヒータ用ビア51)は、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成(ヒータ用ビア51参照)であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成 チャック用ビア41および通電パッド43参照)であってもよい。また、上記実施形態では、ビアとして、チャック用ビア41およびヒータ用ビア51を例示したが、チャック電極40やヒータ電極50以外の導電体に電気的に接続されるものでもよい。要するに、ビアは、セラミックス部材の内部に配置された導電体に電気的に接続され、かつ、外部電極に電気的に接続されたビアであればよい。
【0056】
また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、セラミックス部材10は、アルミナの純度が99.8%以上であったが、セラミックス部材10は、他のセラミックス材料(例えば窒化アルミニウム(AlN)など)の純度が99.8%以上であってもよい。また、上記実施形態において、静電チャック100は、上記条件2から条件4の少なくとも1つを満たさなくてもよい。
【0057】
本発明は、静電チャックに限らず、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品にも適用可能である。要するに、本発明は、セラミックス材料の純度が99.8%以上のセラミックス部材の表面側に外部電極が露出するように配置された半導体製造装置用部品に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10:セラミックス部材 11:セラミックス部分 13:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接合部 32:貫通孔 40:チャック電極 41(41A,41B):チャック用ビア 43:通電パッド 50:ヒータ電極 51:ヒータ用ビア 73:電極パッド 73A:電極パッドに相当する部分 74:給電端子 100:静電チャック 110:端子用孔 D1:第1の所定距離 L1:第1の仮想平面 L2:第2の仮想平面 M1:第1の仮想直線 M2:第2の仮想直線 S1:吸着面 S2:セラミックス側接合面 S3:ベース側接合面 S4:下面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6