IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スピンドルモータ 図1
  • 特許-スピンドルモータ 図2
  • 特許-スピンドルモータ 図3
  • 特許-スピンドルモータ 図4
  • 特許-スピンドルモータ 図5
  • 特許-スピンドルモータ 図6
  • 特許-スピンドルモータ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】スピンドルモータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/02 20060101AFI20221118BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20221118BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
F16C35/02 C
F16C17/10 B
H02K7/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018119878
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020002957
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】昭和 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 大吾
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108543(JP,A)
【文献】特開2005-308140(JP,A)
【文献】特開平10-078029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/02
F16C 17/10
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートに固定された軸部材と、
軸方向一端側に向かって内径が拡大する円錐内面を有して前記軸部材が挿通された貫通孔を備えるロータ部材と、
前記円錐内面と対向する円錐外面を有して前記軸部材に固定された円錐軸受部材と
前記円錐内面と前記円錐外面との少なくともいずれかに形成された動圧溝と、
前記円錐内面と前記円錐外面との隙間に充填された潤滑油と、
前記軸方向一端側で前記円錐軸受部材に当接して固定された抜け止め部材と
を備え、
前記円錐軸受部材は、前記軸部材が挿通され、前記軸方向一端側に拡径部を有する軸受貫通孔を備え、
前記軸部材は、前記軸部材の外周面に形成された周溝を備え、
前記抜け止め部材は、前記拡径部に収容され、前記抜け止め部材の下面が前記拡径部の段差面および前記周溝の下面に当接した状態おいて、前記拡径部に接着剤を充填して埋め込まれて前記軸部材に固定されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
前記抜け止め部材は、スナップリングであることを特徴とする請求項1記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記周溝の前記内壁面と前記拡径部の段差面との間に溶接部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルモータにおいては、軸ユニットの円錐軸受部材が軸部材に隙間嵌めされており、レーザ溶接により円錐軸受部材と軸部材とが固定されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-77825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードディスク駆動装置は、記憶容量の増加を図るために筐体の内部空間にヘリウム等のガスが封入され、ディスクの積層数が増加している。このハードディスク装置に、円錐軸受部材による流体動圧軸受を備えたスピンドルモータを用いる場合には、ディスクの積層数が増加するのに伴い、円錐軸受部材と軸部材との間において外部衝撃に対する耐力を向上することが必要となる。
【0005】
そこで、円錐軸受部材と軸部材とを圧入により固定することが考えられる。しかしながら、強く圧入し過ぎた場合には、円錐軸受部材が変形し、スピンドルモータの回転駆動時には振動を生ずるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、円錐軸受部材の変形を防止しつつ、円錐軸受部材と軸部材との間の締結強度を向上することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスピンドルモータは、ベースプレートに固定された軸部材と、軸方向一端側に向かって内径が拡大する円錐内面を有して前記軸部材が挿通された貫通孔を備えるロータ部材と、前記円錐内面と対向する円錐外面を有して前記軸部材に固定された円錐軸受部材と、前記円錐内面と前記円錐外面との少なくともいずれかに形成された動圧溝と、前記円錐内面と前記円錐外面との隙間に充填された潤滑油と、前記軸方向一端側で前記円錐軸受部材に当接して固定された抜け止め部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスピンドルモータによれば、円錐軸受部材の変形を防止しつつ、円錐軸受部材と軸部材との間の締結強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るハードディスク駆動装置の概略構成を示すための斜視図である。
図2図1に示すスピンドルモータの構成を概略的に示す断面図である。
図3図2に示すスピンドルモータの上側の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図4図2に示すスピンドルモータの上側の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図5図2に示すスピンドルモータの上側の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図6図2に示すスピンドルモータの上側の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図7図2に示すスピンドルモータの上側の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1が適用されたハードディスク駆動装置100の概略構成を示すための斜視図である。ハードディスク駆動装置100において、スピンドルモータ1がハウジング101の底部101aに固定又は形成されており、スピンドルモータ1は磁気ディスク102を回転可能に支持している。カバー(図示せず)とハウジング101とにより、ハードディスク駆動装置100の筐体が形成される。カバー(図示せず)とハウジング101とにより形成される内部の空間Sには、例えばヘリウム等の空気よりも軽いガスが充填されている。
【0012】
ハードディスク駆動装置100では、軸受装置103により揺動可能に支持されているスイングアーム104の先端に配置された磁気ヘッド105が、回転している磁気ディスク102上を移動する。これにより、磁気ディスク102に情報を記録し、また、磁気ディスク102に記録されている情報を読み出すことができる。
【0013】
図2は、図1に示すスピンドルモータ1の構成を概略的に示す断面図であり、図3は、図2に示すスピンドルモータ1の上側の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、説明の便宜上、図2におけるスピンドルモータ1の軸Y1の方向(以下、軸方向ともいう)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、図2におけるスピンドルモータ1の軸Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を内周側とし、他方(矢印d方向)を外周側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上下を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0014】
本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、ベースプレート11に固定された軸部材21と、軸方向一端側(上側(矢印a方向)又は下側(矢印b方向))に向かって内径が拡大する円錐内面31dを有して軸部材21が挿通された貫通孔31aを備えるロータ部材(ロータ30)と、円錐内面31dと対向する円錐外面(下側円錐外面22ab,上側円錐外面22bu)を有して軸部材21に固定された円錐軸受部材(上側円錐軸受部材22a,下側円錐軸受部材22b)とを備えている。また、スピンドルモータ1は、円錐内面31dと円錐外面(下側円錐外面22ab,上側円錐外面22bu)との少なくともいずれかに形成された動圧溝Dと、円錐内面31dと円錐外面(下側円錐外面22ab,上側円錐外面22bu)との隙間に充填された潤滑油Gと、軸方向一端側(上側(矢印a方向)又は下側(矢印b方向))で円錐軸受部材(上側円錐軸受部材22a,下側円錐軸受部材22b)に当接して固定された抜け止め部材(上側抜け止め部材23a,下側抜け止め部材23b)とを備えている。以下、スピンドルモータ1の構成について具体的に説明する。
【0015】
スピンドルモータ1は、図2に示すように、ステータ10と、軸ユニット20と、ロータ30とを有している。ステータ10は、ベースプレート11と、ベースプレート11に固定されたステータコア12とを有している。ベースプレート11には、後述する軸部材21の下部を挿通して固定するための貫通孔11aと、貫通孔11aと同心の円周壁部11bとが形成されている。また、円周壁部11bの外周面にはステータコア12が固定され、ステータコア12にはコイル13が巻回されている。
【0016】
軸ユニット20は、軸部材21と、軸部材21に挿通された上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと軸方向(矢印ab方向)において当接しており、軸部材21に固定された上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bとを有している。上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bにより上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bにおける軸方向(矢印ab方向)の移動が規制されている。軸ユニット20は、例えば、コニカル動圧軸受(流体動圧軸受)である。軸部材21は、略円筒状に形成されており、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS440Cで形成されている。軸部材21の内部には、軸部材21の下面から軸方向(矢印ab方向)に延びる軸孔21aが形成されている。
【0017】
軸部材21は、ロータ30のロータ部材31に形成された貫通孔31aに挿通されている。また、軸部材21の下部は、ベースプレート11に形成された貫通孔11aに挿入され、圧入、または圧入及び接着により固定されている。上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bは、軸部材21の周囲を取り囲むように設けられており、例えばオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303により形成されている。軸部材21、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22b、並びに上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bの具体的な構成については後述する。
【0018】
ロータ30は、ロータ部材31と、ヨーク32と、ロータマグネット33と、エンドキャップ34とを有している。ロータ部材31は、略円筒状に形成されており、例えばアルミニウム合金A6061-T6で形成されている。また、ロータ部材31には、軸部材21を挿通するための貫通孔31aと、2つの動圧溝部31bと、ヨーク取付部31cとが形成されている。ヨーク取付部31cには、ヨーク32を介してロータマグネット33が固定されている。ロータマグネット33は、永久磁石からなり、ステータコア12に対向して配置されている。
【0019】
動圧溝部31bは、貫通孔31aの外周側(矢印d方向)であって、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと対向する位置に形成されている。動圧溝部31bには、動圧を発生させるための動圧溝Dが形成されている。この動圧溝Dは、例えば、ロータ部材31において貫通孔31aの上側(矢印a方向)及び下側(矢印b方向)に設けられた円錐内面31dに電解加工を施すことにより形成することが可能である。また、円錐内面31dと、上側円錐軸受部材22aの下側(矢印b方向)の外周面である下側円錐外面22ab及び下側円錐軸受部材22bの上側(矢印a方向)の外周面である上側円錐外面22buとは、微小な隙間(図示省略)を隔てて対向している。なお、動圧溝Dは、円錐内面31dではなく、上側円錐軸受部材22aの下側円錐外面22ab及び下側円錐軸受部材22bの上側円錐外面22buに形成されていてもよく、いずれかに形成されていればよい。
【0020】
上側円錐軸受部材22aの下側円錐外面22abに対向する円錐内面31dは、ロータ部材31の貫通孔31aの上側(矢印a方向)に向かって内径が拡大している。下側円錐軸受部材22bの上側円錐外面22buに対向する円錐内面31dは、ロータ部材31の貫通孔31aの下側(矢印b方向)に向かって内径が拡大している。円錐内面31dと上側円錐軸受部材22aの下側円錐外面22ab及び下側円錐軸受部材22bの上側円錐外面22buとの間の微小な隙間には潤滑油Gが充填されている。
【0021】
エンドキャップ34は、ロータ部材31に固定される部材である。エンドキャップ34と軸部材21との間には、エンドキャップ34によってロータ部材31の回転を妨げられないように、微小な隙間が形成されている。エンドキャップ34は、接着、又は接着及び圧入によって、ロータ部材31に固定されている。
【0022】
ロータ30に固定されたロータマグネット33と、ステータ10に固定されたステータコア12とは、微小な隙間を挟んで対向している。そして、ステータ10の複数のコイル13に位相の異なる駆動電流を流すと回転磁界が発生し、この回転磁界によってロータマグネット33に回転力が発生する。これにより、ロータ30がステータ10及び軸ユニット20に対して回転する。
【0023】
また、ロータ30が軸ユニット20に対して回転すると、動圧溝部31bに設けられた動圧溝(図示省略)により、ロータ30の円錐内面31dと、軸ユニット20の上側円錐軸受部材22aの下側円錐外面22ab及び上側円錐軸受部材22aの上側円錐外面22buとを離間させる動圧が発生する。これにより、円錐内面31dと下側円錐外面22ab及び上側円錐外面22buとが非接触状態で支持される。そして、円錐内面31dと下側円錐外面22ab及び上側円錐外面22buとが非接触状態で支持されることにより、ロータ30は、軸ユニット20及び軸ユニット20が固定されたステータ10に対して自在に回転する。
【0024】
スピンドルモータ1において、軸部材21は、図3に示すように、軸部材21の外周側(矢印d方向)の面である外周面21xから内周側(矢印c方向)に凹む周溝24を有している。上側円錐軸受部材22aは、軸部材21が挿通され、軸方向一端側(上側(矢印a方向))に拡径部(段部25a)を有する軸受貫通孔25を備え、上側抜け止め部材23aは、拡径部(段部25a)に収容されている。すなわち、上側円錐軸受部材22aは、上側円錐軸受部材22aの内周側(矢印c方向)において上側円錐軸受部材22aの一方側(上側(矢印a方向))を臨む面(上面22u)から他方側(下側(矢印b方向))に凹む段部25aを有している。
【0025】
具体的に、軸部材21の周溝24は、軸部材21の上側(矢印a方向)の端部である上側端部21uにおいて、軸部材21の外周面21xから内周側(矢印c方向)に向かって円環状に凹んでいる。軸部材21の周溝24は、軸部材21の外周面21xから内周側(矢印c方向)おける所定の深さの位置に軸Y1を中心として軸方向(矢印ab方向)に沿って延びる円筒状の面である底面24tを有している。底面24tは、周溝24の内周側(矢印c方向)の境界を画成している。
【0026】
周溝24の底面24tの上側(矢印a方向)には上面24uが形成されており、周溝24の底面24tの下側(矢印b方向)には下面24bが形成されている。周溝24の上面24uは、周溝24の上側(矢印a方向)の境界を画成する面であり、周溝24の下面24bは、周溝24の下側(矢印b方向)の境界を画成する面である。
【0027】
周溝24の上面24uは、底面24tの上側(矢印a方向)の縁から外周側(矢印d方向)に半径方向(矢印cd方向)に沿って延びる軸Y1を中心とする円環状の面であり、周溝24の下面24bは、底面24tの下側(矢印b方向)の縁から外周側(矢印d方向)に半径方向(矢印cd方向)に沿って延びる軸Y1を中心とする円環状の面である。なお、周溝24の上面24uは、底面24tの上側(矢印a方向)の縁から外周側(矢印d方向)に向かうにつれて上側(矢印a方向)に傾いて延びていてもよい。
【0028】
上側円錐軸受部材22aの段部25aには、上側円錐軸受部材22aの上側(矢印a方向)の面である上面22uよりも下側(矢印b方向)において軸Y1を中心として半径方向(矢印cd方向)に沿って延びる環状の面である段差面25sが形成されている。段部25aの段差面25sは、段部25aの下側(矢印b方向)の境界を画成する面である。段部25aの段差面25sは、段差面25sの内周側(矢印c方向)の縁において上側円錐軸受部材22aの内周側(矢印c方向)の面である内周面22iと接続している。
【0029】
上側円錐軸受部材22aの上面22uと段部25aの段差面25sとの間には、外周面25xが形成されている。段部25aの外周面25xは、段部25aの外周側(矢印d方向)の境界を画成する面である。段部25aの外周面25xは、段差面25sの外周側(矢印d方向)の縁から軸方向(矢印ab方向)に沿って上側(矢印a方向)に延びる軸Y1を中心とする円筒面状の面である。
【0030】
上側抜け止め部材23aは、例えば、環の一部が切り欠かれた、軸Y1を中心として半径方向(矢印cd方向)に延びる円環状に形成されている。上側抜け止め部材23aの内周側(矢印c方向)の面である内周面23iの半径方向(矢印cd方向)における長さ(内周面23iの直径)は、軸部材21の周溝24の底面24tの半径方向(矢印cd方向)における長さ(底面24tの直径)よりも小さくなっている。上側抜け止め部材23aは、スナップリング(例えば、Cリング)である。スナップリングは、閉じていない環状部材であり、弾性変形によって元の内径より大きく開くことが可能であり、これによって元の内径よりも大きな外径の軸部材に嵌め込むことができる(元の内径に戻ろうとする弾性力によって軸部材に固定される)。すなわち、上側抜け止め部材23aは、閉じていない環状部材の内側または外側への拡縮動作に対して反発復帰するスプリング作用を有している。
【0031】
上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材23aを軸部材21に組み付けた状態において、上側抜け止め部材23aは、段部25aにおける一方側(上側(矢印a方向))を臨む面(段差面25s)と当接しており、軸部材21の周溝24内において固定されている。軸部材21の周溝24における他方側(下側(矢印b方向))を臨む面(下面24b)と段部25aにおける一方側(上側(矢印a方向))を臨む面(段差面25s)とは面一である。軸部材21の周溝24と段部25aとにより画成される空間S1には、硬化した接着剤ADが充填されている。
【0032】
具体的に、軸部材21の外周面21xの半径方向(矢印cd方向)における長さ(外周面21xの直径)は、上側円錐軸受部材22aの内周面22iの半径方向(矢印cd方向)における長さ(内周面22iの直径)よりも大きくなっており、上側円錐軸受部材22aは、軸部材21に圧入されている。軸部材21の周溝24の下面24bは、軸方向(矢印ab方向)において、段部25aの段差面25sと同じ位置に位置している。なお、軸部材21の周溝24の下面24bは、段部25aの段差面25sと異なる位置(例えば、段差面25sに対して上側(矢印a方向))に位置していてもよい。
【0033】
軸部材21の周溝24の底面24tの軸方向(矢印ab方向)における長さは、段部25aの外周面25xの軸方向(矢印ab方向)における長さと同じ長さとなっており、軸部材21の周溝24の上面24uは、軸方向(矢印ab方向)において、上側円錐軸受部材22aの上面22uと同じ位置に位置している。なお、軸部材21の周溝24の底面24tの長さは、段部25aの外周面25xの長さと異なる長さであってもよく、軸部材21の周溝24の上面24uは、上側円錐軸受部材22aの上面22uと異なる位置(例えば、上面22uに対して上側(矢印a方向))に位置していてもよい。
【0034】
上側抜け止め部材23aは、軸部材21の周溝24と段部25aとにより画成される空間S1内において軸部材21の周溝24の底面24tに固定されている。空間S1は、軸部材21の周溝24の底面24t、上面24u及び下面24b、並びに段部25aの外周面25x及び段差面25sにより画成されている、半径方向(矢印cd方向)において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の空間である。上側抜け止め部材23aの内周面23iは、軸部材21の周溝24内の底面24tに当接して軸部材21の周溝24内の底面24tを内周側(矢印c方向)に付勢している。
【0035】
上側抜け止め部材23aの下側(矢印b方向)の面である下面23abは、少なくとも段部25aの段差面25sの一部と当接している。上側抜け止め部材23aの下面23abの半径方向(矢印cd方向)における長さは、周溝24の下面24bの半径方向(矢印cd方向)における長さと段部25aの段差面25sの半径方向(矢印cd方向)における長さとの合計の長さよりも小さくなっている。
【0036】
このため、段部25aの外周面25xと上側抜け止め部材23aの外周側(矢印d方向)の面である外周面23xとの間には、半径方向(矢印cd方向)において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の隙間C1が形成されている。上側抜け止め部材23aの内周面23iの軸方向(矢印ab方向)における長さは、周溝24の底面24tの軸方向(矢印ab方向)における長さ及び段部25aの外周面25xの軸方向(矢印ab方向)における長さよりも小さくなっている。
【0037】
上側抜け止め部材23aは、拡径部(段部25a)に接着剤ADを充填して埋め込まれている。具体的に、硬化した接着剤ADは、軸方向(矢印ab方向)において、軸部材21の周溝24と段部25aとにより画成される空間S1内の段部25aの段差面25sの位置から上側円錐軸受部材22aの上面22uの位置まで充填されている。つまり、硬化した接着剤ADは、段部25aの外周面25xと上側抜け止め部材23aの外周面23xとの間の隙間C1、及び軸方向(矢印ab方向)において、上側抜け止め部材23aの上側(矢印a方向)の面である上面23uの位置から軸部材21の周溝24の上面24uまでの位置の空間に充填されており、上側抜け止め部材23aを覆っている。接着剤ADには、光硬化又は加熱硬化する樹脂剤(例えば、エポキシ系接着剤)が用いられる。
【0038】
なお、下側円錐軸受部材22b及び下側抜け止め部材23bの具体的な構成については、上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材23aと同様であるため、記載を省略する。また、軸部材21の周溝24は、上述したような上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材23aに対応した位置に形成されているのと同様に、下側円錐軸受部材22b及び下側抜け止め部材23bに対応する位置にも形成されている。また、下側円錐軸受部材22b及び下側抜け止め部材23bを軸部材21に組み付けた状態については、上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材23aを軸部材21に組み付けた状態と同様であるため、記載を省略する。
【0039】
このように、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、軸ユニット20が、軸部材21と、軸部材21に挿通された上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと軸方向(矢印ab方向)において当接しており、軸部材21に固定された上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bとを備えている。上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bにより上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bにおける軸方向(矢印ab方向)の移動が規制されている。
【0040】
このため、軸部材21に固定された上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bにより軸部材21と上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bとが固定されている。したがって、軸部材21と上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bとの間の外部衝撃に対する耐力を向上することができる。また、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bを軸部材21に強く圧入して固定する必要がないため、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bの変形を防止することができ、スピンドルモータ1の回転駆動時における上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bの変形に伴う振動を防止することができる。
【0041】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材23aを軸部材21に組み付け、下側円錐軸受部材22b及び下側抜け止め部材23bを軸部材21に組み付けた状態において、上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bが、段部25aの段差面25sと当接しており、軸部材21の周溝24内において固定されている。このため、軸部材21の周溝24が上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bに対して軸方向(矢印ab方向)におけるストッパの機能を果たすため、軸部材21と上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。
【0042】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、軸部材21の周溝24と段部25aとにより画成される空間S1に硬化した接着剤ADが充填されている。このため、硬化した接着剤ADが上側抜け止め部材23a及び下側抜け止め部材23bを覆っており、軸部材21の周溝24と段部25aとにより画成される空間S1内において充填剤の機能を果たすため、軸部材21と上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。
【0043】
上述のように、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1によれば、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bの変形を防止しつつ、上側円錐軸受部材22a及び下側円錐軸受部材22bと軸部材21との間の締結強度を向上することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0045】
例えば、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、上側抜け止め部材23aにより上側円錐軸受部材22aにおける軸方向(矢印ab方向)の移動が規制されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、例えば、図4に示すように、軸部材21の周溝24の下面24bと段部25aの段差面25sとの間に溶接部26が形成されていてもよい。
【0046】
図4は、図2に示すスピンドルモータ1の上側(矢印a方向)の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。溶接部26は、軸部材21の周溝24の下面24bと段部25aの段差面25sとの間において軸Y1を中心とする円環状に溶接されて形成されている。このように、本発明の実施の形態の変形例に係るスピンドルモータ1は、軸部材21の周溝24の下面24bと段部25aの段差面25sとの間に溶接部26が形成されている。このため、軸部材21に固定された上側抜け止め部材23a及び溶接部26により軸部材21と上側円錐軸受部材22aとが固定されているため、軸部材21と上側円錐軸受部材22aとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。また、スピンドルモータ1の下側(矢印b方向)の部分においても、上述の場合と同様に、軸部材21の周溝24と下側円錐軸受部材22bの段部との間に溶接部を形成することができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、軸部材21が、軸部材21の外周面21xから内周側(矢印c方向)に凹む周溝24を有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、例えば、図5に示すように、周溝24を有していなくてもよく、上側抜け止め部材23aの代わりに円環状に形成された上側抜け止め部材27aを有していてもよい。
【0048】
図5は、図2に示すスピンドルモータ1の上側(矢印a方向)の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。上側円錐軸受部材22aは、上側円錐軸受部材22aの内周側(矢印c方向)において上側円錐軸受部材22aの上面22uから下側(矢印b方向)に凹む段部25aを有している。上側抜け止め部材27aは、上側円錐軸受部材22aの段部25aにおける一方側(上側(矢印a方向))を臨む面(段差面25s)と当接しており、軸部材21に固定されている。上側抜け止め部材27aは、例えば、リング部材であり、軸部材21に圧入されている。軸部材21と段部25aとにより画成される空間S2には、硬化した接着剤ADが充填されている。
【0049】
具体的に、上側抜け止め部材27aは、例えば、軸Y1を中心として半径方向(矢印cd方向)に延びる円環状に形成されている。上側抜け止め部材27aの内周側(矢印c方向)の面である内周面27iの半径方向(矢印cd方向)における長さ(内周面27iの直径)は、軸部材21の外周面21xの半径方向(矢印cd方向)における長さ(軸部材21の直径)よりも小さくなっている。
【0050】
上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材27aを軸部材21に組み付けた状態において、上側抜け止め部材27aは、軸部材21と段部25aとにより画成される空間S2内において軸部材21に固定されている。空間S2は、軸部材21の外周面21x、並びに段部25aの外周面25x及び段差面25sにより画成されている、半径方向(矢印cd方向)において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の空間である。上側抜け止め部材27aの内周面27iは、軸部材21に上側円錐軸受部材22aよりも強く圧入されている。
【0051】
上側抜け止め部材27aの下側(矢印b方向)の面である下面27abは、段部25aの段差面25sの一部と当接している。上側抜け止め部材27aの下面27abの半径方向(矢印cd方向)における長さは、段部25aの段差面25sの半径方向(矢印cd方向)における長さよりも小さくなっている。このため、段部25aの外周面25xと上側抜け止め部材27aの外周側(矢印d方向)の面である外周面27xとの間には、半径方向(矢印cd方向)において所定の幅を有する軸Y1を中心とする円環状の隙間C2が形成されている。上側抜け止め部材27aの内周面27iの軸方向(矢印ab方向)における長さは、段部25aの外周面25xの軸方向(矢印ab方向)における長さよりも小さくなっている。
【0052】
硬化した接着剤ADは、段部25aの外周面25xと上側抜け止め部材27aの外周面27xとの間の隙間C2、及び軸方向(矢印ab方向)において、上側抜け止め部材27aの上側(矢印a方向)の面である上面27uの位置から上側円錐軸受部材22aの上面22uまでの位置の空間に充填されており、上側抜け止め部材27aを覆っている。
【0053】
このように、本発明の実施の形態の変形例に係るスピンドルモータ1は、上側抜け止め部材27aが、上側円錐軸受部材22aの段部25aの段差面25sと当接しており、軸部材21に固定されている。このため、軸部材21に固定された上側抜け止め部材27aにより軸部材21と上側円錐軸受部材22aとが固定されているため、軸部材21と上側円錐軸受部材22aとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。
【0054】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、軸部材21が周溝24を有しており、上側円錐軸受部材22aが段部25aを有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、例えば、図6に示すように、周溝24及び段部25aを有していなくてもよく、上側抜け止め部材23aの代わりに円環状に形成された上側抜け止め部材28aを有していてもよい。
【0055】
図6は、図2に示すスピンドルモータ1の上側(矢印a方向)の部分の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。上側抜け止め部材28aは、上側円錐軸受部材22aの上面22uと当接しており、軸部材21に固定されている。上側抜け止め部材28aは、例えば、閉じた環状部材であり、軸部材21に上側円錐軸受部材22aよりも強く圧入されている。
【0056】
具体的に、上側抜け止め部材28aは、例えば、軸Y1を中心として半径方向(矢印cd方向)に延びる円環状に形成されている。上側抜け止め部材28aの内周側(矢印c方向)の面である内周面28iの半径方向(矢印cd方向)における長さ(内周面28iの直径)は、軸部材21の外周面21xの半径方向(矢印cd方向)における長さ(軸部材21の直径)よりも小さくなっている。上側抜け止め部材28aの外周側(矢印d方向)の面である外周面28xは、上側抜け止め部材28aの上側(矢印a方向)の面である上面28uの外周側(矢印d方向)の縁から下側(矢印b方向)に向かうにつれて外周側(矢印d方向)に拡径する軸Y1を中心とする円錐筒状のテーパ面である。
【0057】
上側円錐軸受部材22a及び上側抜け止め部材28aを軸部材21に組み付けた状態において、上側抜け止め部材28aは、上側円錐軸受部材22aの上面22uの上側(矢印a方向)において軸部材21に固定されている。上側抜け止め部材28aの内周面28iは、軸部材21に圧入されている。上側抜け止め部材28aの下側(矢印b方向)の面である下面28abは、上側円錐軸受部材22aの上面22uと当接している。上側抜け止め部材28aの下面28abの半径方向(矢印cd方向)における長さは、上側円錐軸受部材22aの上面22uの半径方向(矢印cd方向)における長さと同じ長さとなっている。また、上側抜け止め部材28aの外周面28xの傾きは、上側円錐軸受部材22aの上側(矢印a方向)の外周面である上側円錐外面22auの傾きと同じ傾きになっている。このため、上側抜け止め部材28aの外周面28xは、上側円錐軸受部材22aの上側円錐外面22auと面一になっている。
【0058】
このように、本発明の実施の形態の変形例に係るスピンドルモータ1は、上側抜け止め部材28aが、上側円錐軸受部材22aの上面22uと当接しており、軸部材21に固定されている。このため、軸部材21に固定された上側抜け止め部材28aにより軸部材21と上側円錐軸受部材22aとが固定されているため、軸部材21と上側円錐軸受部材22aとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。
【0059】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、硬化した接着剤ADが、軸方向(矢印ab方向)において、空間S1内の段部25aの段差面25sの位置から上側円錐軸受部材22aの上面22uの位置まで充填されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、例えば、図7に示すように、周溝24の軸方向一端側(上側(矢印a方向))の内壁面(上面24u)と、内壁面(上面24u)と対向する上側抜け止め部材23aの表面(上面23u)との間の隙間に、接着剤ADが塗布されていればよい。
【0060】
また、本発明の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、上側抜け止め部材27a及び上側抜け止め部材28aを有している場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、上側抜け止め部材27a及び上側抜け止め部材28aと同様の機能を有する下側抜け止め部材を有していてもよい。
【0061】
このような場合であっても、上側抜け止め部材27a及び上側抜け止め部材28aと同様の機能を有する下側抜け止め部材により軸部材21と下側円錐軸受部材22bとが固定されているため、軸部材21と下側円錐軸受部材22bとの間の外部衝撃に対する耐力を更に向上することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…スピンドルモータ、10…ステータ、11…ベースプレート、11a…貫通孔、11b…円周壁部、12…ステータコア、13…コイル、20…軸ユニット、21…軸部材、21a…軸孔、21u…上側端部、21x…外周面、22a…上側円錐軸受部材、22b…下側円錐軸受部材、22ab…下側円錐外面、22au,22bu…上側円錐外面、22i…内周面、22u…上面、23a,27a,28a…上側抜け止め部材、23ab,27ab,28ab…下面、23i,27i,28i…内周面、23u,27u,28u…上面、23x,27x,28x…外周面、23b,27b,28b…下側抜け止め部材、24…周溝、24b…下面、24t…底面、24u…上面、25…軸受貫通孔、25a…段部、25s…段差面、25x…外周面、26…溶接部、30…ロータ、31…ロータ部材、31a…貫通孔、31b…動圧溝部、31c…ヨーク取付部、31d…円錐内面、32…ヨーク、33…ロータマグネット、34…エンドキャップ、100…ハードディスク駆動装置、101…ハウジング、101a…底部、102…磁気ディスク、103…軸受装置、104…スイングアーム、105…磁気ヘッド、AD…接着剤、C1,C2…隙間、D…動圧溝、G…潤滑油、S,S1,S2…空間、Y1…軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7