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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
B60C11/03 C
B60C11/03 300B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018127650
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020006754
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】川喜田 明宏
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116708(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084325(WO,A1)
【文献】特開2018-027762(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156010(WO,A1)
【文献】特開2014-080112(JP,A)
【文献】特開2007-161114(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212399(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0069389(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03326841(EP,A1)
【文献】特開昭63-064802(JP,A)
【文献】特開平09-132011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368889(US,A1)
【文献】特開2016-002815(JP,A)
【文献】特開2016-088407(JP,A)
【文献】特開2015-116845(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19705156(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面部に、
タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部付近で交差するV字状を呈するとともに、タイヤ周方向に複数配置された傾斜溝と、
タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続する2ND縦溝と、
前記2ND縦溝よりタイヤ幅方向の外側に位置し、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続するショルダー縦溝と、が、形成され、
車両を前進させるタイヤの回転方向を示す明示部を備え、
前記傾斜溝は、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部側に向かうに従い漸次、前記回転方向の前側に向けて延び、
前記傾斜溝を画成する内面のうち、前記回転方向の前側に位置する前側面は、
タイヤ幅方向の内端部に前記2ND縦溝が開口した第1側面と、
前記第1側面よりタイヤ幅方向の内側に位置し、タイヤ幅方向の外端部が、前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端部より前記回転方向の後側に位置する第2側面と、
前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端縁と前記第2側面におけるタイヤ幅方向の外端縁とを連結し、タイヤ幅方向の外側を向く段差面と、を備え、
前記2ND縦溝を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面における前記第1側面との接続部分は、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成され
前記2ND縦溝は、
タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの一方の前記傾斜溝に接続された第1縦溝と、
前記第1縦溝に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの他方の前記傾斜溝に接続された第2縦溝と、
前記第1縦溝と前記第2縦溝とを接続する第1段溝と、を備える、タイヤ。
【請求項2】
前記第1縦溝は、前記第2縦溝に対して前記回転方向の前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置している、請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
トレッド踏面部に、
タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部付近で交差するV字状を呈するとともに、タイヤ周方向に複数配置された傾斜溝と、
タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続する2ND縦溝と、
前記2ND縦溝よりタイヤ幅方向の外側に位置し、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続するショルダー縦溝と、が、形成され、
車両を前進させるタイヤの回転方向を示す明示部を備え、
前記傾斜溝は、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部側に向かうに従い漸次、前記回転方向の前側に向けて延び、
前記傾斜溝を画成する内面のうち、前記回転方向の前側に位置する前側面は、
タイヤ幅方向の内端部に前記2ND縦溝が開口した第1側面と、
前記第1側面よりタイヤ幅方向の内側に位置し、タイヤ幅方向の外端部が、前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端部より前記回転方向の後側に位置する第2側面と、
前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端縁と前記第2側面におけるタイヤ幅方向の外端縁とを連結し、タイヤ幅方向の外側を向く段差面と、を備え、
前記2ND縦溝を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面における前記第1側面との接続部分は、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成され
前記ショルダー縦溝は、
タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの一方の前記傾斜溝に接続された第3縦溝と、
前記第3縦溝に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの他方の前記傾斜溝に接続された第4縦溝と、
前記第3縦溝と前記第4縦溝とを接続する第2段溝と、を備える、タイヤ。
【請求項4】
タイヤ径方向の外側から見た平面視で、前記第2側面と前記段差面とは、鋭角をなして連結されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記2ND縦溝の溝幅は、前記ショルダー縦溝の溝幅より広い、請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、トレッド踏面部に、タイヤ赤道部側からタイヤ幅方向の外側に向かうに従い漸次、タイヤ周方向の一方側に向けて延びるとともに、タイヤ周方向に間隔をあけて配置された複数の傾斜溝と、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝同士を接続するショルダー縦溝と、が形成されたタイヤが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-151786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のタイヤでは、排水性能を向上させることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、排水性能を向上させることができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るタイヤは、トレッド踏面部に、タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部付近で交差するV字状を呈するとともに、タイヤ周方向に複数配置された傾斜溝と、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続する2ND縦溝と、前記2ND縦溝よりタイヤ幅方向の外側に位置し、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝同士を接続するショルダー縦溝と、が、形成され、車両を前進させるタイヤの回転方向を示す明示部を備え、前記傾斜溝は、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部側に向かうに従い漸次、前記回転方向の前側に向けて延び、前記傾斜溝を画成する内面のうち、前記回転方向の前側に位置する前側面は、タイヤ幅方向の内端部に前記2ND縦溝が開口した第1側面と、前記第1側面よりタイヤ幅方向の内側に位置し、タイヤ幅方向の外端部が、前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端部より前記回転方向の後側に位置する第2側面と、前記第1側面におけるタイヤ幅方向の内端縁と前記第2側面におけるタイヤ幅方向の外端縁とを連結し、タイヤ幅方向の外側を向く段差面と、を備え、前記2ND縦溝を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面における前記第1側面との接続部分は、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成されている
【0007】
この発明では、傾斜溝が、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部側に向かうに従い漸次、前記回転方向の前側に向けて延びているので、ウェット路面を走行している時に、傾斜溝のうち、2ND縦溝にタイヤ幅方向の外側から連なる部分に位置する水が、タイヤ赤道部側に向けて流れ、2ND縦溝の開口部に到達する。この際、傾斜溝の前側面が、第1側面におけるタイヤ幅方向の内端縁と、この内端縁より前記回転方向の後側に位置する、第2側面におけるタイヤ幅方向の外端縁と、を連結し、かつタイヤ幅方向の外側を向く段差面を備えるので、タイヤ幅方向の外側から2ND縦溝の開口部に到達した水は、段差面に衝突することで、2ND縦溝内に円滑に導入されることとなり、排水性能を向上させることができる。
また、トレッド踏面部に、タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部付近で交差する、若しくは近接するV字状を呈する傾斜溝が形成されているので、排水性能、および雪上走行時の操縦安定性を両立させることができる。
2ND縦溝を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面における第1側面との接続部分が、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成されているので、傾斜溝内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝の開口部に到達した水を、2ND縦溝内により一層確実に導入することができる。
【0008】
ここで、タイヤ径方向の外側から見た平面視で、前記第2側面と前記段差面とは、鋭角をなして連結されてもよい。
【0009】
この場合、前記平面視で、第2側面と段差面とが、鋭角をなして連結されているので、傾斜溝内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝の開口部に到達した水を、2ND縦溝内に確実に導入することができる。
【0012】
また、前記2ND縦溝の溝幅は、前記ショルダー縦溝の溝幅より広くてもよい。
【0013】
この場合、2ND縦溝の溝幅が、ショルダー縦溝の溝幅より広いので、傾斜溝内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝の開口部に到達した水を、2ND縦溝内により一層確実に導入することができる。
また、ショルダー縦溝の溝幅が、2ND縦溝の溝幅より狭いので、旋回走行時に、ショルダー縦溝を画成する内面のうち、タイヤ幅方向で対向する側面同士を当接若しくは近接させ、陸部剛性を高めることが可能になり、旋回性能を向上させることができる。
また、2ND縦溝の溝幅が、ショルダー縦溝の溝幅より広いことから、ショルダー縦溝と比べて、タイヤ幅方向の内側に位置して、硬い雪柱が形成されやすい2ND縦溝に、雪上走行時に多くの雪を進入させることが可能になり、大きな雪柱せん断力が生じることとなり、雪上グリップ性能を向上させることができる。
【0014】
また、前記2ND縦溝は、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの一方の前記傾斜溝に接続された第1縦溝と、前記第1縦溝に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの他方の前記傾斜溝に接続された第2縦溝と、前記第1縦溝と前記第2縦溝とを接続する第1段溝と、を備えてもよい。
【0015】
この場合、2ND縦溝が、タイヤ幅方向の位置が互いに異なる第1縦溝および第2縦溝を接続する第1段溝を備えるので、雪上走行時に、2ND縦溝に進入した雪を、第1段溝に係止することで、タイヤ周方向に抜け出させず、2ND縦溝に留めておくことが可能になり、雪柱せん断力を生じさせ、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
また、ショルダー縦溝と比べて、タイヤ幅方向の内側に位置して、硬い雪柱が形成されやすい2ND縦溝が、第1段溝を備えることから、雪上グリップ性能を効果的に向上させることができる。
【0016】
また、前記第1縦溝は、前記第2縦溝に対して前記回転方向の前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置してもよい。
【0017】
この場合、第1縦溝が、第2縦溝に対して前記回転方向の前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置しているので、傾斜溝から2ND縦溝内に第2縦溝を通して進入した水は、第1段溝および第1縦溝をこの順に、タイヤ幅方向の外側に向けた逆向きの流れを生じさせずに通過する。これにより、2ND縦溝が、第1縦溝、第2縦溝および第1段溝を備えて、雪上グリップ性能が向上した反面、排水性能が低下するのを抑制することができる。
また、第2縦溝に対して前記回転方向の前側に位置する第1縦溝が、第2縦溝に対してタイヤ幅方向の内側に位置していて、タイヤ幅方向の外側に位置していないので、この2ND縦溝が画成する陸部が摩耗しやすくなるのを抑制することができる。
【0018】
また、前記ショルダー縦溝は、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの一方の前記傾斜溝に接続された第3縦溝と、前記第3縦溝に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う前記傾斜溝のうちの他方の前記傾斜溝に接続された第4縦溝と、前記第3縦溝と前記第4縦溝とを接続する第2段溝と、を備えてもよい。
【0019】
この場合、ショルダー縦溝が、タイヤ幅方向の位置が互いに異なる第3縦溝および第4縦溝を接続する第2段溝を備えるので、ショルダー縦溝が画成し、かつ2ND縦溝よりタイヤ幅方向の外側に位置する陸部に、タイヤ幅方向に尖るエッジ部分が形成されることとなり、雪上での旋回性能を向上させることができる。
また、ショルダー縦溝が第2段溝を備えることから、雪上走行時に、ショルダー縦溝に進入した雪を、第2段溝に係止することで、タイヤ周方向に抜け出させず、ショルダー縦溝に留めておくことが可能になり、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、排水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッド踏面部の平面図である。
図2図1に示すタイヤのタイヤ幅方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1および図2を参照し、本発明の一実施形態に係るタイヤ1を説明する。
タイヤ1は、例えば氷雪路面を走行する冬用タイヤ(スノータイヤ)、若しくは欧州のアウトバーンなどでの高速走行用として採用してもよい。
タイヤ1は、タイヤ径方向の外端部に位置するトレッド部15と、トレッド部15におけるタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向の内側に向けて延びる一対のサイドウォール部16と、サイドウォール部16におけるタイヤ径方向の内端部に接続されたビード部17と、を備える。ビード部17に、ビードコア17aが埋設されている。トレッド部15に、ベルト18が埋設されている。トレッド部15のうち、タイヤ径方向の外側を向く外周面が、トレッド踏面部11となっている。トレッド部15、サイドウォール部16、およびビード部17に、カーカスプライ19が一体に埋設されている。カーカスプライ19は、ビードコア17a回りに折り返されている。タイヤ1の外表面に、タイヤ1が装着された車両が前進するときのタイヤ1の回転方向Rが特定可能な例えば矢印等の図示されない明示部が形成されている。この明示部は、タイヤ1の例えばサイドウォール部16の外表面に形成される。
トレッド踏面部11に、傾斜溝12と、2ND縦溝13と、ショルダー縦溝14と、が形成されている。
【0023】
ここで、トレッド踏面部11とは、例えば、タイヤ1を「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着し、かつタイヤ1に、「JATMA Year Book」での適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧-負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧(以下、規定内圧という)を充填して最大負荷能力を負荷した状態でのトレッド部の接地面をいう。
なおトレッド踏面部11は、タイヤ1が生産または使用される地域が日本国以外の場合、その地域に適用されている産業規格(例えば、アメリカ合衆国の「TRA Year Book」、欧州の「ETRTO Standard Manual」等)に準拠した状態でのトレッド部の接地面をいう。
【0024】
傾斜溝12は、タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部CL付近で交差する、若しくは近接するV字状を呈する。なお、タイヤ赤道部CL付近とは、例えば、トレッド踏面部11において、タイヤ赤道部CLから、トレッド踏面部11のタイヤ幅方向に沿った全長(以下、トレッド幅という)Wの約10%、タイヤ幅方向に離れた位置よりタイヤ幅方向の内側に位置する領域をいう。
傾斜溝12は、タイヤ周方向に複数配置されている。傾斜溝12は、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向の全域にわたって配置されている。傾斜溝12は、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部CL側に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの前側に向けて延びている。
【0025】
傾斜溝12は、タイヤ赤道部CL側からタイヤ幅方向の一方側(図1の右側)に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの後側に向けて延びる第1傾斜溝21と、タイヤ赤道部CL側からタイヤ幅方向の他方側(図1の左側)に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの後側に向けて延びる第2傾斜溝22と、を備える。第1傾斜溝21および第2傾斜溝22はそれぞれ、トレッド踏面部11にタイヤ周方向に等間隔をあけて複数配置されている。
【0026】
第1傾斜溝21および第2傾斜溝22は、前記平面視で、前記回転方向Rの後側に突となるように湾曲している。第1傾斜溝21および第2傾斜溝22の各溝幅は、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部CL側に向かうに従い漸次、狭くなっている。
【0027】
第1傾斜溝21におけるタイヤ赤道部CL側の内端部は、タイヤ赤道部CLよりタイヤ幅方向の他方側に位置し、第2傾斜溝22におけるタイヤ赤道部CL側の内端部は、タイヤ赤道部CLよりタイヤ幅方向の一方側に位置している。これにより、前記平面視で、傾斜溝12とタイヤ赤道部CLとは交差している。第1傾斜溝21の内端部は、第2傾斜溝22の内端部より前記回転方向Rの後側に位置し、第2傾斜溝22に接続されている。前記平面視で、第1傾斜溝21と第2傾斜溝22とがなす角度は、50°以上140°以下、好ましくは70°以上110°以下とされ、図示の例では約90°となっている。
【0028】
第2傾斜溝22において、第1傾斜溝21の内端部が接続された接続部分22aに対して、タイヤ幅方向の外側に位置する外側部分22cの深さは、タイヤ赤道部CL側に位置する内側部分22d、および前記接続部分22aの各深さより深い。第2傾斜溝22の前記外側部分22cにおけるタイヤ幅方向の内端部22bの深さは、タイヤ幅方向の外側から内側に向かうに従い漸次、浅くなっている。
【0029】
タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12において、前記回転方向Rの後側に位置する傾斜溝12の第2傾斜溝22の内端部が、前記回転方向Rの前側に位置する傾斜溝12の第1傾斜溝21に接続されている。
第1傾斜溝21において、この第1傾斜溝21より前記回転方向Rの後側に位置する傾斜溝12の第2傾斜溝22の内端部が接続された接続部分21aに対して、タイヤ幅方向の外側に位置する外側部分21cの深さは、タイヤ赤道部CL側に位置する内側部分21d、および前記接続部分21aの各深さより深い。第1傾斜溝21の前記外側部分21cにおけるタイヤ幅方向の内端部21bの深さは、タイヤ幅方向の外側から内側に向かうに従い漸次、浅くなっている。前記平面視において、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおいて、前記内側部分21d、22dのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記外側部分21c、22cのタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さく、例えば約30°~45°となっている。
【0030】
2ND縦溝13は、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12同士を接続している。2ND縦溝13は、タイヤ赤道部CLをタイヤ幅方向に挟む両側に各別に配置されている。2ND縦溝13は、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおいて、タイヤ周方向で隣り合う前記外側部分21c、22c同士を接続している。2ND縦溝13は、トレッド踏面部11において、タイヤ赤道部CLから、タイヤ幅方向にトレッド幅Wの約1/4離れた位置よりタイヤ幅方向の内側に位置する部分に配置されている。
【0031】
タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13は、タイヤ幅方向の位置を互いに異ならせて配置されている。タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13それぞれにおける、同一の傾斜溝12に開口する各開口部は、タイヤ幅方向に離れている。すなわち、傾斜溝12における2ND縦溝13の開口部は、その全域にわたって、傾斜溝12を画成する内面のうち、タイヤ周方向を向く側面に対向している。タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13は、千鳥状に配置されている。
【0032】
2ND縦溝13の溝幅は、例えば3mm以上13mm以下、好ましくは4mm以上7mm以下とされ、全長にわたって同等になっている。タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13のタイヤ幅方向のずれ量は、2ND縦溝13の溝幅の1.0倍以上2.0倍以下となっている。つまり、タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13は、タイヤ幅方向で重複しない位置に配設されている。2ND縦溝13の溝幅は、傾斜溝12のうち、少なくとも2ND縦溝13との接続部分12aの溝幅以下となっている。2ND縦溝13の溝幅は、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおける前記内側部分21d、22dの溝幅より広くなっている。
【0033】
2ND縦溝13の深さは、全長にわたって同等になっている。2ND縦溝13の深さは、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおける前記外側部分21c、22cの深さより浅くなっている。2ND縦溝13の深さは、前記外側部分21c、22cの深さの0.4倍以上1.0倍以下、好ましくは0.5倍以上0.9倍以下となっている。2ND縦溝13の深さは、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおける前記内側部分21d、22dの深さと同等になっている。
【0034】
2ND縦溝13は、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12のうちの一方の傾斜溝12に接続された第1縦溝25と、第1縦溝25に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12のうちの他方の傾斜溝12に接続された第2縦溝26と、第1縦溝25と第2縦溝26とを接続する第1段溝27と、を備える。
【0035】
第1縦溝25および第2縦溝26の各長さは、互いに同等とされ、かつ第1段溝27より長くなっている。例えば、第1縦溝25および第2縦溝26の各長さは、第1段溝27の長さの2倍以上となっている。第1段溝27のタイヤ周方向の大きさは、2ND縦溝13のタイヤ周方向の大きさの0.03倍以上0.3倍以下、好ましくは0.05倍以上0.2倍以下となっている。第1縦溝25および第2縦溝26のタイヤ幅方向のずれ量は、2ND縦溝13の溝幅未満となっている。第1縦溝25および第2縦溝26のタイヤ幅方向のずれ量は、2ND縦溝13の溝幅の0.2倍以上0.8倍以下、好ましくは0.3倍以上0.7倍以下となっている。第1段溝27のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、25°以上65°以下、好ましくは30°以上60°以下となっている。
【0036】
第1縦溝25は、第2縦溝26に対して前記回転方向Rの前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置している。第1段溝27、および前記外側部分21c、22cそれぞれのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、互いに同等になっている。タイヤ周方向に千鳥状に配置された複数の2ND縦溝13のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する2ND縦溝13の第1縦溝25におけるタイヤ幅方向の内端縁、およびタイヤ幅方向の内側に位置する2ND縦溝13の第2縦溝26におけるタイヤ幅方向の外端縁それぞれのタイヤ幅方向の位置が互いに同等になっている。
【0037】
ショルダー縦溝14は、2ND縦溝13よりタイヤ幅方向の外側に位置し、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12同士を接続する。ショルダー縦溝14は、タイヤ赤道部CLをタイヤ幅方向に挟む両側に各別に配置されている。ショルダー縦溝14は、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおいて、タイヤ周方向で隣り合う前記外側部分21c、22c同士を接続している。タイヤ幅方向で隣り合うショルダー縦溝14と2ND縦溝13とのタイヤ幅方向の間隔は、タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13のタイヤ幅方向のずれ量より大きい。
【0038】
タイヤ周方向で隣り合うショルダー縦溝14は、タイヤ幅方向の位置を互いに異ならせて配置されている。タイヤ周方向で隣り合うショルダー縦溝14それぞれにおける、同一の傾斜溝12に開口する各開口部は、タイヤ幅方向に離れている。すなわち、傾斜溝12におけるショルダー縦溝14の開口部は、その全域にわたって、傾斜溝12を画成する内面のうち、タイヤ周方向を向く側面に対向している。ショルダー縦溝14は、タイヤ周方向に千鳥状に配置されている。ショルダー縦溝14の溝幅は、全長にわたって同等になっている。ショルダー縦溝14の溝幅は、2ND縦溝13の溝幅より狭くなっている。ショルダー縦溝14の深さは、全長にわたって同等になっている。
【0039】
ショルダー縦溝14は、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12のうちの一方の傾斜溝12に接続された第3縦溝31と、第3縦溝31に対して、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向の各位置を異ならせて配置され、タイヤ周方向で隣り合う傾斜溝12のうちの他方の傾斜溝12に接続された第4縦溝32と、第3縦溝31と第4縦溝32とを接続する第2段溝33と、を備える。
【0040】
第3縦溝31および第4縦溝32の各長さは、互いに同等とされ、かつ第2段溝33より長くなっている。例えば、第3縦溝31および第4縦溝32の各長さは、第2段溝33の長さの2倍以上となっている。第2段溝33のタイヤ周方向の大きさは、ショルダー縦溝14のタイヤ周方向の大きさの0.03倍以上0.3倍以下、好ましくは0.05倍以上0.2倍以下となっている。第3縦溝31および第4縦溝32のタイヤ幅方向のずれ量は、ショルダー縦溝14の溝幅以上となっている。第3縦溝31および第4縦溝32のタイヤ幅方向のずれ量は、ショルダー縦溝14の溝幅の0.2倍以上0.8倍以下、好ましくは0.3倍以上0.7倍以下となっている。第2段溝33のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、25°以上65°以下、好ましくは30°以上60°以下となっている。
【0041】
第3縦溝31は、第4縦溝32に対して前記回転方向Rの前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置している。
タイヤ周方向に千鳥状に配置された複数のショルダー縦溝14のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する外側ショルダー縦溝35は、タイヤ幅方向の内側に位置する内側ショルダー縦溝36と比べて、溝幅が狭く、かつ深さが浅くなっている。内側ショルダー縦溝36は、2ND縦溝13と比べて、溝幅が狭く、かつ深さが同等になっている。内側ショルダー縦溝36の第4縦溝32におけるタイヤ幅方向の外端縁は、外側ショルダー縦溝35の第3縦溝31におけるタイヤ幅方向の内端縁よりタイヤ幅方向の内側に位置している。
【0042】
外側ショルダー縦溝35の溝幅は、2ND縦溝13の溝幅の0.1倍以上0.6倍以下、好ましくは0.2倍以上0.5倍以下となっている。外側ショルダー縦溝35は、第1傾斜溝21および第2傾斜溝22それぞれにおける前記内側部分21d、22dと比べて、溝幅が狭く、かつ深さが浅くなっている。外側ショルダー縦溝35の溝幅は、前記内側部分21d、22dの溝幅の0.1倍以上0.8倍以下、好ましくは0.3倍以上0.6倍以下となっている。外側ショルダー縦溝35は、タイヤ赤道部CLから、タイヤ幅方向にトレッド幅Wの約1/4離れた位置よりタイヤ幅方向の外側に位置している。
外側ショルダー縦溝35は、タイヤ周方向に千鳥状に配置された複数の2ND縦溝13のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する2ND縦溝13とタイヤ幅方向で隣り合い、内側ショルダー縦溝36は、タイヤ周方向に千鳥状に配置された複数の2ND縦溝13のうち、タイヤ幅方向の内側に位置する2ND縦溝13とタイヤ幅方向で隣り合っている。
【0043】
ここで、傾斜溝12を画成する内面のうち、前記回転方向Rの前側に位置する前側面は、タイヤ幅方向の内端部に2ND縦溝13が開口した第1側面51と、第1側面51よりタイヤ幅方向の内側に位置し、タイヤ幅方向の外端部が、第1側面51におけるタイヤ幅方向の内端部より前記回転方向Rの後側に位置する第2側面52と、第1側面51におけるタイヤ幅方向の内端縁と第2側面52におけるタイヤ幅方向の外端縁とを連結し、タイヤ幅方向の外側を向く段差面53と、を備える。
【0044】
第1側面51のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、第2側面52のタイヤ幅方向に対する傾斜角度より小さくなっている。2ND縦溝13を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面54における第1側面51との接続部分55は、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成されている。タイヤ径方向の外側から見た平面視で、この接続部分55の曲率半径は、2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上10mm以下となっている。
【0045】
前記平面視で、第2側面52と段差面53とは、鋭角をなして連結されている。前記平面視で、第2側面52と段差面53とがなす角度は、25°以上80°以下、好ましくは35°以上60°以下となっている。なお、第2側面52と段差面53とは、突曲面部を介して連結されてもよい。段差面53のタイヤ周方向の大きさは、1.0mm以上6.0mm以下、好ましくは1.5mm以上4.0mm以下となっている。段差面53のタイヤ周方向の大きさは、傾斜溝12の前記接続部分12aにおける溝幅の0.5倍以上1.5倍以下、好ましくは0.8倍以上1.3倍以下となっている。段差面53は、タイヤ赤道部CLから、タイヤ幅方向にトレッド幅Wの0.05倍以上0.35倍以下、好ましくは0.1倍以上0.3倍以下離れて位置している。段差面53は、2ND縦溝13を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の内側に位置する第4側面56における前記回転方向Rの後端部に、タイヤ周方向に段差なく連なっている。
【0046】
ここで、トレッド踏面部11に、傾斜溝12、2ND縦溝13、およびショルダー縦溝14により複数の陸部41~48が区画され、各陸部41~48に複数のサイプ38a~38hが形成されている。
以下、具体的に説明する。
【0047】
タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜溝21同士の間に位置し、2ND縦溝13、および第2傾斜溝22の前記内側部分22dに区画された第1センター陸部41には、前記平面視で、第1傾斜溝21にほぼ直交する方向に延びる複数の第1サイプ38aが形成されている。
タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜溝22同士の間に位置し、2ND縦溝13、および第1傾斜溝21の前記内側部分21dに区画された第2センター陸部42には、前記平面視で、第2傾斜溝22にほぼ直交する方向に延びる複数の第2サイプ38bが形成されている。
第1センター陸部41および第2センター陸部42それぞれにおけるタイヤ幅方向の外端部で、かつ前記回転方向Rの後端部に、第2側面52と段差面53とがなす角部が位置している。
【0048】
タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜溝21同士の間に位置し、2ND縦溝13、および外側ショルダー縦溝35に区画された第1中間陸部43には、タイヤ幅方向の内側から外側に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの前側に向けて延び、前記平面視で、第1サイプ38aよりタイヤ幅方向に対する傾斜角度が小さい複数の第3サイプ38cが形成されている。
タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜溝21同士の間に位置し、2ND縦溝13、および内側ショルダー縦溝36に区画された第2中間陸部44には、前記平面視で、第1サイプ38aとほぼ平行に延びる複数の第4サイプ38dが形成されている。
【0049】
タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜溝22同士の間に位置し、2ND縦溝13、および外側ショルダー縦溝35に区画された第3中間陸部45には、タイヤ幅方向の内側から外側に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの前側に向けて延び、前記平面視で、第2サイプ38bよりタイヤ幅方向に対する傾斜角度が小さい複数の第5サイプ38eが形成されている。
タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜溝22同士の間に位置し、2ND縦溝13、および内側ショルダー縦溝36に区画された第4中間陸部46には、前記平面視で、第2サイプ38bとほぼ平行に延びる複数の第6サイプ38fが形成されている。
【0050】
トレッド踏面部11におけるタイヤ径方向の外端部において、タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜溝21同士の間に位置し、ショルダー縦溝14に区画された第1ショルダー陸部47には、第1傾斜溝21に沿って延びる複数の第7サイプ38g、および第1細溝47aが形成されている。第1細溝47aは、複数の第1ショルダー陸部47のうち、外側ショルダー縦溝35で区画された陸部では、第4縦溝32に接続され、内側ショルダー縦溝36で区画された陸部では、第2段溝33に接続されている。第1細溝47aにおけるタイヤ幅方向の内端部に底上げ部47bが形成されている。
【0051】
トレッド踏面部11におけるタイヤ径方向の外端部において、タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜溝22同士の間に位置し、ショルダー縦溝14に区画された第2ショルダー陸部48には、第2傾斜溝22に沿って延びる複数の第8サイプ38h、および第2細溝48aが形成されている。第2細溝48aは、複数の第2ショルダー陸部48のうち、外側ショルダー縦溝35で区画された陸部では、第4縦溝32に接続され、内側ショルダー縦溝36で区画された陸部では、第2段溝33に接続されている。第2細溝48aにおけるタイヤ幅方向の内端部に底上げ部48bが形成されている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ1によれば、傾斜溝12が、タイヤ幅方向の外側からタイヤ赤道部CL側に向かうに従い漸次、前記回転方向Rの前側に向けて延びているので、ウェット路面を走行している時に、傾斜溝12のうち、2ND縦溝13にタイヤ幅方向の外側から連なる部分に位置する水が、タイヤ赤道部CL側に向けて流れ、2ND縦溝13の開口部に到達する。この際、傾斜溝12の前側面が、第1側面51におけるタイヤ幅方向の内端縁と、この内端縁より前記回転方向Rの後側に位置する、第2側面52におけるタイヤ幅方向の外端縁と、を連結し、かつタイヤ幅方向の外側を向く段差面53を備えるので、タイヤ幅方向の外側から2ND縦溝13の開口部に到達した水は、段差面53に衝突することで、2ND縦溝13内に円滑に導入されることとなり、排水性能を向上させることができる。
【0053】
また、トレッド踏面部11に、タイヤ径方向の外側から見た平面視でタイヤ赤道部CL付近で交差する、若しくは近接するV字状を呈する傾斜溝12が形成されているので、排水性能、および雪上走行時の操縦安定性を両立させることができる。
また、前記平面視で、第2側面52と段差面53とが、鋭角をなして連結されているので、傾斜溝12内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝13の開口部に到達した水を、2ND縦溝13内に確実に導入することができる。
また、2ND縦溝13を画成する内面のうち、タイヤ幅方向の外側に位置する第3側面54における第1側面51との接続部分55が、タイヤ幅方向の内側に向けて突の曲面状に形成されているので、傾斜溝12内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝13の開口部に到達した水を、2ND縦溝13内により一層確実に導入することができる。
【0054】
また、2ND縦溝13の溝幅が、ショルダー縦溝14の溝幅より広いので、傾斜溝12内でタイヤ幅方向の外側から2ND縦溝13の開口部に到達した水を、2ND縦溝13内により一層確実に導入することができる。
また、ショルダー縦溝14の溝幅が、2ND縦溝13の溝幅より狭いので、旋回走行時に、ショルダー縦溝14を画成する内面のうち、タイヤ幅方向で対向する側面同士を当接若しくは近接させ、陸部剛性を高めることが可能になり、旋回性能を向上させることができる。
また、2ND縦溝13の溝幅が、ショルダー縦溝14の溝幅より広いことから、ショルダー縦溝14と比べて、タイヤ幅方向の内側に位置して、硬い雪柱が形成されやすい2ND縦溝13に、雪上走行時に多くの雪を進入させることが可能になり、大きな雪柱せん断力が生じることとなり、雪上グリップ性能を向上させることができる。
【0055】
また、2ND縦溝13が、タイヤ幅方向の位置が互いに異なる第1縦溝25および第2縦溝26を接続する第1段溝27を備えるので、雪上走行時に、2ND縦溝13に進入した雪を、第1段溝27に係止することで、タイヤ周方向に抜け出させず、2ND縦溝13に留めておくことが可能になり、雪柱せん断力を生じさせ、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
また、ショルダー縦溝14と比べて、タイヤ幅方向の内側に位置して、硬い雪柱が形成されやすい2ND縦溝13が、第1段溝27を備えることから、雪上グリップ性能を効果的に向上させることができる。
【0056】
また、第1縦溝25が、第2縦溝26に対して前記回転方向Rの前側で、かつタイヤ幅方向の内側に位置しているので、傾斜溝12から2ND縦溝13内に第2縦溝26を通して進入した水は、第1段溝27および第1縦溝25をこの順に、タイヤ幅方向の外側に向けた逆向きの流れを生じさせずに通過する。これにより、2ND縦溝13が、第1縦溝25、第2縦溝26および第1段溝27を備えて、雪上グリップ性能が向上した反面、排水性能が低下するのを抑制することができる。
【0057】
また、第2縦溝26に対して前記回転方向Rの前側に位置する第1縦溝25が、第2縦溝26に対してタイヤ幅方向の内側に位置していて、タイヤ幅方向の外側に位置していないので、この2ND縦溝13が画成する、第1センター陸部41、第2センター陸部42、第1中間陸部43、第2中間陸部44、第3中間陸部45、および第4中間陸部46が摩耗しやすくなるのを抑制することができる。
【0058】
また、ショルダー縦溝14が、タイヤ幅方向の位置が互いに異なる第3縦溝31および第4縦溝32を接続する第2段溝33を備えるので、ショルダー縦溝14が画成し、かつ2ND縦溝13よりタイヤ幅方向の外側に位置する、第1中間陸部43、第2中間陸部44、第3中間陸部45、第4中間陸部46、第1ショルダー陸部47、および第2ショルダー陸部48に、タイヤ幅方向に尖るエッジ部分が形成されることとなり、雪上での旋回性能を向上させることができる。
また、ショルダー縦溝14が第2段溝33を備えることから、雪上走行時に、ショルダー縦溝14に進入した雪を、第2段溝33に係止することで、タイヤ周方向に抜け出させず、ショルダー縦溝14に留めておくことが可能になり、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
【0059】
また、タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13が、タイヤ幅方向の位置を互いに異ならせて配置されているので、雪上走行時に、傾斜溝12における2ND縦溝13との接続部分12a、および2ND縦溝13に進入した雪を、傾斜溝12を画成する内面において、2ND縦溝13の開口部とタイヤ周方向に対向している部分に突き当てることで、タイヤ周方向に移動させずに留めておくことが可能になり、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
また、傾斜溝12のうち、少なくとも2ND縦溝13との接続部分12aの溝幅が、2ND縦溝13の溝幅以上となっているので、雪上走行時に、傾斜溝12の前記接続部分12aに多くの雪を進入させることが可能になり、雪上グリップ性能を確実に向上させることができる。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
前記実施形態では、タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13が、タイヤ幅方向の位置を互いに異ならせて配置された構成を示したが、タイヤ周方向で隣り合う2ND縦溝13を、タイヤ幅方向の位置を一致させて配置してもよい。
また、2ND縦溝13およびショルダー縦溝14は、タイヤ周方向に真直ぐ延びてもよい。
また、2ND縦溝13の第3側面54における第1側面51との接続部分55は、タイヤ周方向に真直ぐ延びてもよい。
【0062】
また、傾斜溝12は、タイヤ赤道部CLと交差せず、タイヤ赤道部CLから離れてもよく、また、第1傾斜溝21と第2傾斜溝22とを交差させなくてもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ
11 トレッド踏面部
12 傾斜溝
13 2ND縦溝
14 ショルダー縦溝
25 第1縦溝
26 第2縦溝
27 第1段溝
31 第3縦溝
32 第4縦溝
33 第2段溝
51 第1側面
52 第2側面
53 段差面
54 第3側面
55 接続部分
CL タイヤ赤道部
R 回転方向
図1
図2