(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】半導体光検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20221118BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G01S7/4863
H01L31/10 B
(21)【出願番号】P 2018146230
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018135253
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】永野 輝昌
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520134(JP,A)
【文献】国際公開第2017/059777(WO,A1)
【文献】特開2008-311651(JP,A)
【文献】特開2015-179087(JP,A)
【文献】国際公開第2017/180277(WO,A1)
【文献】特開2015-084392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090536(US,A1)
【文献】特開2018-088488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
H01L 31/00 - 31/02
31/08 - 31/10
31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、行列状に2次元配列されている複数のセルと、を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面に配置されていると共に、前記複数のセルのそれぞれに電気的に接続されている第1配線と、
前記半導体基板の前記第1主面に配置されていると共に、前記複数のセルのそれぞれに電気的に接続されている第2配線と、
前記複数のセルのうちの互いに隣り合うセルを光学的に分離する遮光部材と、
前記遮光部材を覆っている絶縁膜と、を備え、
前記複数のセルのそれぞれは、ガイガーモードで動作する少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードを含み、
前記アバランシェフォトダイオードは、第1半導体領域と、前記第1半導体領域とは異なる導電型の第2半導体領域と、を含み、
前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域は、前記第1主面の一部を構成しており、
前記第1配線は、前記複数のセルのそれぞれに含まれる前記アバランシェフォトダイオードの前記第1半導体領域に電気的に接続されており、
前記第2配線は、前記複数のセルのそれぞれに含まれる前記アバランシェフォトダイオードの前記第2半導体領域に電気的に接続されており、
前記半導体基板には、前記半導体基板を貫通するトレンチが、前記第1主面に直交する方向から見て前記複数のセルのそれぞれを囲むように形成され、
前記遮光部材は、前記トレンチの前記第1主面での開口端と前記トレンチの前記第2主面での開口端との間で前記半導体基板の厚み方向に延在している第1部分と、前記第2主面から突出している第2部分と、を有し、
前記絶縁膜は、前記第2部分を覆っている部分を有する、
半導体光検出装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、光を反射する材料によって構成される、請求項1に記載の半導体光検出装置。
【請求項3】
前記第1主面に直交する方向から見て、前記半導体基板における前記トレンチで囲まれている各領域は、内側に位置している第1領域と、前記第1領域を囲むように前記第1領域の外側に位置している第2領域と、を有し、
前記第2主面は、前記トレンチに近づくにつれて、前記半導体基板の前記厚み方向での前記第2領域の長さが大きくなるように傾斜しているテーパ面を含む、請求項1又は請求項2に記載の半導体光検出装置。
【請求項4】
前記絶縁膜は、前記トレンチの側面に接していると共に前記第1部分を覆っている部分を有し、
前記第2部分を覆っている前記部分と前記第1部分を覆っている前記部分とが、一体に形成されている、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の半導体光検出装置。
【請求項5】
前記半導体基板を保持する保持部材と、前記保持部材と前記第2主面とを接着している接着層と、をさらに備え、
前記第2部分と前記絶縁膜のうちの前記第2部分を覆っている前記部分とは、前記接着層内に位置している、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の半導体光検出装置。
【請求項6】
前記複数のセルは、M行N列(M及びNは、2以上の整数)に2次元配列されており、
前記第1配線は、行方向に並ぶN個の前記セルをそれぞれ含むM個の第1セル群ごとに対応して設けられている複数の第1分岐配線を含み、
前記第2配線は、列方向に並ぶM個の前記セルをそれぞれ含むN個の第2セル群ごとに対応して設けられている複数の第2分岐配線を含み、
各前記第1分岐配線は、M個の前記第1セル群のうち対応する第1セル群に含まれるN個の前記セルに電気的に接続されており、
各前記第2分岐配線は、N個の前記第2セル群のうち対応する第2セル群に含まれるM個の前記セルに電気的に接続されている、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の半導体光検出装置。
【請求項7】
前記複数のセルは、M行N列(M及びNは、2以上の整数)に2次元配列されており、
前記第1配線は、複数の第1分岐配線を含み、
前記第2配線は、複数の第2分岐配線を含み、
前記複数の第1分岐配線のそれぞれと前記複数の第2分岐配線のそれぞれとは、M個の前記セルが配列されている列方向に沿って交互に設けられており、
各前記第1分岐配線は、行方向に並ぶN個の前記セルをそれぞれ含むM個の第1セル群のうち第(2×m-1)行及び第(2×m)行の第1セル群に含まれる(2×N)個の前記セルに電気的に接続されており、
各前記第2分岐配線は、M個の前記第1セル群のうち第(2×m)行及び第(2×m+1)行の
第1セル群に含まれる(2×N)個の前記セルに電気的に接続されており、
mは1以上の整数である、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の半導体光検出装置。
【請求項8】
各前記第2分岐配線は、前記複数のセルのうち対応するセルに含まれる前記アバランシェフォトダイオードの前記第2半導体領域と接続されており、
前記第2分岐配線と前記第2半導体領域との接続箇所と、前記第1半導体領域との最短距離は、前記第1半導体領域と前記トレンチとの最短距離より大きい、請求項6又は請求項7に記載の半導体光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードを各々含む複数のセルを備えた半導体光検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、アバランシェ増倍を利用したホトダイオードアレイ(半導体光検出装置)が開示されている。この半導体光検出装置では、複数のアバランシェフォトダイオードが半導体基板に形成されている。トレンチによって形成された分離部によって互いに隣り合うアバランシェフォトダイオード(セル)同士が、互いに分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、光学的なクロストークをより一層確実に抑制する半導体光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アバランシェ増倍の過程において、アバランシェフォトダイオードは、入射光とは別の副次的な光を発生させる場合がある。副次的な光が、隣接するセルに入射すると、隣接するセルが含むアバランシェフォトダイオードは、入射した副次的な光により発生したキャリアをアバランシェ増倍するおそれがある。副次的な光が隣接するセル(アバランシェフォトダイオード)に入射する現象が、光学的なクロストークと称される。
【0006】
トレンチ内に配置された遮光部材は、上述した光学的なクロストークを抑制する。たとえば、特許文献1に記載の半導体光検出装置では、遮光部材として、半導体基板よりも低い屈折率を有する低屈折率物質がトレンチ内に配置されている。低屈折率物質は、アバランシェフォトダイオードにおいてキャリア増倍時に生成されるプラズマ発光を反射する。
【0007】
本発明者らは、光学的なクロストークをより一層確実に抑制する構成について鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、遮光部材が、半導体基板から突出している部分を有している構成を見出した。以下、半導体基板から突出している部分を「突出部分」と称する。遮光部材が突出部分を有している構成は、遮光部材が突出部分を有していない構成に比して、副次的な光が隣接するセル(アバランシェフォトダイオード)に入射するのをより一層確実に抑制する。
【0008】
本発明者らは、遮光部材が突出部分を有している場合、新たな問題点が生じることも見出した。突出部分は、遮光部材の、半導体基板(トレンチ)内に位置している部分に比して、半導体基板で保護されがたい。したがって、突出部分は、半導体基板外の雰囲気環境に曝されるおそれがある。この場合、突出部分を含め遮光部材が腐食するおそれがある。遮光部材が腐食した場合、遮光部材は、光学的なクロストークを抑制しがたい。
【0009】
本発明者らは、絶縁層が突出部分を覆っている構成を見出した。この構成によれば、遮光部材が突出部分を有している場合でも、半導体基板外の雰囲気環境に曝されがたい。したがって、遮光部材が腐食しがたく、遮光部材は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0010】
本発明の一態様に係る半導体光検出装置は、互いに対向する第1主面及び第2主面と、行列状に2次元配列されている複数のセルと、を有する半導体基板と、複数のセルのそれぞれに電気的に接続されている第1配線と、複数のセルのそれぞれに電気的に接続されている第2配線と、複数のセルのうちの互いに隣り合うセルを光学的に分離する遮光部材と、遮光部材を覆っている絶縁膜と、を備えている。第1配線は、半導体基板の第1主面に配置されている。第2配線は、半導体基板の第1主面に配置されている。複数のセルのそれぞれは、ガイガーモードで動作する少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードを含んでいる。アバランシェフォトダイオードは、第1半導体領域と、第1半導体領域とは異なる導電型の第2半導体領域と、を含んでいる。第1半導体領域及び第2半導体領域は、第1主面の一部を構成している。第1配線は、複数のセルのそれぞれに含まれるアバランシェフォトダイオードの第1半導体領域に電気的に接続されている。第2配線は、複数のセルのそれぞれに含まれるアバランシェフォトダイオードの第2半導体領域に電気的に接続されている。半導体基板には、半導体基板を貫通するトレンチが、第1主面に直交する方向から見て複数のセルのそれぞれを囲むように形成されている。遮光部材は、トレンチの第1主面での開口端とトレンチの第2主面での開口端との間で半導体基板の厚み方向に延在している第1部分と、第2主面から突出している第2部分と、を有している。絶縁膜は、第2部分を覆っている部分を有している。
【0011】
本発明の一態様に係る半導体光検出装置では、遮光部材は、第1部分だけでなく、第2主面から突出している第2部分を有しているので、上述したように、本一態様は、副次的な光が隣接するセル(アバランシェフォトダイオード)に入射するのをより一層確実に抑制する。
【0012】
本一態様では、絶縁膜は、第2部分を覆っている部分を有しているので、第2部分は、半導体基板外の雰囲気環境に曝されがたい。したがって、上述したように、本一態様は、遮光部材が腐食しがたく、遮光部材は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0013】
本一態様に係る半導体光検出装置では、遮光部材は、光を反射する材料によって構成されてもよい。本構成では、半導体光検出装置に入射した光のうちの遮光部材に向かって入射した光が、遮光部材によって反射される。このため、遮光部材に向かって入射した光の一部は、アバランシェフォトダイオードに形成されているpn接合に向けて反射され得る。したがって、本構成は、遮光部材が光を吸収する材料によって構成されている場合に比して、アバランシェフォトダイオードにおいて生成される光電子の量が増え得る。その結果、半導体光検出装置の感度が向上し得る。
【0014】
本一態様に係る半導体光検出装置では、第1主面に直交する方向から見て、半導体基板におけるトレンチで囲まれている各領域は、内側に位置している第1領域と、第1領域を囲むように第1領域の外側に位置している第2領域と、を有していてもよい。第2主面は、トレンチに近づくにつれて、半導体基板の厚み方向での第2領域の長さが大きくなるように傾斜しているテーパ面を含んでもよい。本構成では、半導体光検出装置に入射した光のうちのテーパ面に向かう光の一部は、テーパ面によってアバランシェフォトダイオードのpn接合に向けて反射され得る。したがって、本構成は、第2主面全面が平坦である場合に比して、アバランシェフォトダイオードにおいて生成される光電子の量が増え得る。その結果、半導体光検出装置の感度が向上し得る。
【0015】
本一態様に係る半導体光検出装置では、絶縁膜は、トレンチの側面に接していると共に第1部分を覆っている部分を有していてもよい。第2部分を覆っている部分と第1部分を覆っている部分とが、一体に形成されていてもよい。本構成では、絶縁膜の、第1部分を覆っている部分が、半導体基板と遮光部材との間の電気的絶縁性を確保する。第2部分を覆っている部分と第1部分を覆っている部分とが一体に形成されているので、遮光部材が確実に覆われ、遮光部材の耐久性が向上する。したがって、本構成は、第2部分を覆っている部分と第1部分を覆っている部分とが別体に形成されている構成に比して、光学的なクロストークをより一層確実に抑制する。
【0016】
本一態様に係る半導体光検出装置は、半導体基板を保持する保持部材と、保持部材と第2主面とを接着している接着層と、をさらに備えていてもよい。第2部分と絶縁膜のうちの第2部分を覆っている部分とは、接着層内に位置していてもよい。本構成では、半導体基板の第2主面から突出している遮光部材の第2部分が接着層によって保持されるので、たとえば、絶縁膜のうちの第2部分を覆っている部分が半導体基板の外部に露出している場合に比して、遮光部材の保持力が向上する。
【0017】
本一態様に係る半導体光検出装置では、複数のセルは、M行N列(M及びNは、2以上の整数)に2次元配列されていてもよい。第1配線は、行方向に並ぶN個のセルをそれぞれ含むM個の第1セル群ごとに対応して設けられている複数の第1分岐配線を含んでもよい。第2配線は、列方向に並ぶM個のセルをそれぞれ含むN個の第2セル群ごとに対応して設けられている複数の第2分岐配線を含んでいてもよい。各第1分岐配線は、M個の第1セル群のうち対応する第1セル群に含まれるN個のセルに電気的に接続されていてもよい。各第2分岐配線は、N個の第2セル群のうち対応する第2セル群に含まれるM個のセルに電気的に接続されていてもよい。
【0018】
本構成では、行ごとに第1分岐配線が設けられており、列ごとに第2分岐配線が設けられているので、たとえば、複数のセルの各々を、第1配線及び第2配線それぞれを介して共通の電位に接続する場合において、各セルに対応して配線を設ける場合に比して、第1主面上の配線数が少なくなる。したがって、本構成は、各セルに含まれるアバランシェフォトダイオードに電気的に接続される第1配線及び第2配線の構成を簡素化する。
【0019】
本一態様に係る半導体光検出装置では、複数のセルは、M行N列(M及びNは、2以上の整数)に2次元配列されていてもよい。第1配線は、複数の第1分岐配線を含んでいてもよい。第2配線は、複数の第2分岐配線を含んでいてもよい。複数の第1分岐配線のそれぞれと複数の第2分岐配線のそれぞれとは、M個のセルが配列されている列方向に沿って交互に設けられていてもよい。各第1分岐配線は、行方向に並ぶN個のセルをそれぞれ含むM個の第1セル群のうち第(2×m-1)行及び第(2×m)行の第1セル群に含まれる(2×N)個のセルに電気的に接続されていてもよい。各第2分岐配線は、M個の第1セル群のうち第(2×m)行及び第(2×m+1)行の第1セル群に含まれる(2×N)個のセルに電気的に接続されていてもよい。mは1以上の整数であってもよい。
【0020】
本構成では、行ごとに第1分岐配線及び第2分岐配線が交互に設けられているので、たとえば、複数のセルの各々を、第1配線及び第2配線それぞれを介して共通の電位に接続する場合において、各セルに対応して配線を設ける場合に比して、第1主面上の配線数が少なくなる。したがって、本構成は、各セルに含まれるアバランシェフォトダイオードに電気的に接続される第1配線及び第2配線の構成を簡素化する。
【0021】
本一態様に係る半導体光検出装置では、各第2分岐配線は、複数のセルのうち対応するセルに含まれるアバランシェフォトダイオードの第2半導体領域と接続されていてもよい。第2分岐配線と第2半導体領域との接続箇所と、第1半導体領域との最短距離は、第1半導体領域とトレンチとの最短距離より大きくてもよい。本構成では、上記接続箇所と第1半導体領域との最短距離が第1半導体領域とトレンチとの最短距離以下である構成に比して、アバランシェフォトダイオードにバイアス電圧が印加される場合でも、第2分岐配線と第1半導体領域とが短絡しがたい。したがって、本構成は、第2分岐配線と第1半導体領域と間の耐圧を向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、光学的なクロストークをより一層確実に抑制する半導体光検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体光検出装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の半導体光検出装置の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1の半導体光検出装置の断面構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1の半導体光検出装置の製造過程を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1の半導体光検出装置の製造過程を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る半導体光検出装置を示す平面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る半導体光検出装置を示す平面図である。
【
図12】
図12は、アバランシェフォトダイオードの等価回路を示す図である。
【
図13】
図13は、アバランシェフォトダイオードから出力される信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
まず、
図1~
図6を参照して、第1実施形態に係る半導体光検出装置について説明する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る半導体光検出装置の概略構成図である。
図2は、
図1の半導体光検出装置の一部を示す斜視図である。
図3は、
図1の半導体基板の平面図である。
図4は、
図1の半導体基板を示す斜視図である。
図5は、
図1の半導体光検出装置の断面構成を示す図である。
図6は、
図1の半導体基板を示す平面図である。
【0027】
図1に示されるように、半導体光検出装置1は、ガラス基板2、半導体基板3、配線層4、及び回路基板5を備えている。ガラス基板2、半導体基板3、配線層4、及び回路基板5は、Z軸方向において、この順で配置されている。本実施形態では、ガラス基板2、半導体基板3、配線層4、及び回路基板5は、平面視において矩形形状を呈している。たとえば、半導体光検出装置1は、ガラス基板2に検出対象の光が入射するように配置され、入射した光である入射光を検出する。
【0028】
ガラス基板2は、光を透過する透明なガラス材によって構成されている。ガラス基板2は、互いに対向する主面2A及び主面2Bと、側面2Cとを有している。主面2Aと主面2Bとは、平坦な面である。ガラス基板2は、光学接着剤OAにより半導体基板3に接着されている。光学接着剤OAは、たとえば、光透過性を有する樹脂である。ガラス基板2は、半導体基板3に直接形成されてもよい。ガラス基板2は、半導体基板3を保持する機能を有する。たとえば、ガラス基板2は保持部材を構成し、光学接着剤OAは接着層を構成する。
【0029】
半導体基板3は、Si(シリコン)によって構成されており、導電型がP型である半導体基板である。半導体基板3は、互いに対向する主面3A及び主面3Bと、側面3Cとを有している。半導体基板3の主面3Aとガラス基板2の主面2Bとは、光学接着剤OAを介して互いに対向している。主面3Aが、半導体基板3への光入射面である。本実施形態では、入射光がガラス基板2を透過して半導体基板3に入射される。たとえば、主面3Bが第1主面である場合、主面3Aは第2主面である。半導体基板3の詳細な構成については後述する。
【0030】
配線層4は、半導体基板3と回路基板5との間に配置されている。配線層4は、半導体基板3の主面3Bに設けられている。配線層4は、半導体基板3と回路基板5との間を電気的に接続する機能を有している。配線層4の詳細な構成については後述する。
【0031】
回路基板5は、互いに対向する主面5A及び主面5Bと、側面5Cとを有している。回路基板5の主面5Aと半導体基板3の主面3Bとは、配線層4を介して互いに対向している。本実施形態では、ガラス基板2の側面2C、半導体基板3の側面3C、及び回路基板5の側面5Cは、面一とされている。換言すると、平面視において、ガラス基板2、半導体基板3、及び回路基板5それぞれの外縁は、互いに一致している。ガラス基板2、半導体基板3、及び回路基板5それぞれの外縁は、互いに一致していなくてもよい。たとえば、平面視において、回路基板5の面積が、ガラス基板2及び半導体基板3それぞれの面積よりも大きくてもよい。この場合、半導体基板3の側面3Cは、XY軸平面において、ガラス基板2の側面2C及び半導体基板3の側面3Cよりも外側に位置する。回路基板5は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を構成している。本実施形態では、半導体基板3及び回路基板5の各主面と平行な面がXY軸平面であり、各主面に直交する方向がZ軸方向である。
【0032】
図2には、半導体光検出装置1のうちの半導体基板3、配線層4、及び回路基板5が模式的に示されている。
図2では、ガラス基板2の図示が省略されており、配線層4の内部が示されている。半導体基板3は、行列状に2次元配列されている複数のセル(cell)Uを有している。換言すると、複数のセルUは、M行N列(M及びNは、2以上の整数)に2次元配列されている。セルUの数は、一例として「1024(32行×32列)」である。互いに隣り合うセルU同士の間隔Wは、たとえば10~500μm程度である。半導体基板3では、各セルUに入射された入射光に応じた信号が、各セルUから出力される。複数のセルUは、各々、1又は複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいる。以降では、複数のセルUが、各々、1つのアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいる場合を例に説明を行う。
【0033】
配線層4は、複数(本実施形態では4つ)のバンプ電極41a~41dを有している。バンプ電極41a~41dは、XY軸平面において、半導体基板3の角部及び回路基板5の角部に対応する位置に設けられている。バンプ電極41a~41dでは、Z軸方向において互いに対向する一対の側面のうちの一方の側面が、配線層4が含む電極パッドに接続されており、他方の側面が回路基板5の主面5Aに設けられた電極パッドに接続されている。換言すると、Z軸方向において、配線層4全体の長さは、バンプ電極41a~41dそれぞれの長さよりも大きい。本実施形態では、各アバランシェフォトダイオードAPDのアノードに電気的に接続されている配線層4の配線が、バンプ電極41aを介して回路基板5に電気的に接続されている。各アバランシェフォトダイオードAPDのカソードに電気的に接続されている配線層4の配線が、バンプ電極41bを介して回路基板5に電気的に接続されている。バンプ電極41c及びバンプ電極41dは、ダミー用のバンプ電極であり、半導体基板3が回路基板5に対して傾くことを防ぐ役割を有している。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、各アバランシェフォトダイオードAPDは、導電型がn型である半導体領域31と、導電型がp型である半導体領域32と、を有している。半導体領域31と半導体領域32とは、アバランシェフォトダイオードAPDのpn接合を形成する。各アバランシェフォトダイオードAPDは、導電型がp型である半導体領域33を有している。半導体領域33の不純物濃度は、半導体領域32の不純物濃度よりも高い。バイアス電圧が印加されている状態の各アバランシェフォトダイオードAPDに、入射光が入ると、各アバランシェフォトダイオードにおいて入射光に応じた信号(電流信号)が生成される。バイアス電圧は、各アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧以上である。換言すると、各アバランシェフォトダイオードAPDは、バイアス電圧が印加されているとき、ガイガーモードで動作する。たとえば、半導体領域31が第1半導体領域である場合、半導体領域32及び半導体領域33で構成される半導体領域は、第2半導体領域である。
【0035】
図5に示されるように、半導体領域32は半導体領域31(側面及び底面)を囲っており、半導体領域33は半導体領域32(外側面及び底面)を囲っている。半導体領域33は、半導体領域32を介して半導体領域31と対向している領域33aと、領域33aに接続されている領域33bと、を有している。領域33bは、X軸方向又はY軸方向から見て、領域33aと交差又は直交している。Z軸方向から見て、領域33bは枠形状を呈している。換言すると、Z軸方向から見て、領域33bは、半導体領域31、半導体領域32、及び領域33aで構成される半導体領域を囲っている。本実施形態では、領域33bは、Z軸方向から見て、矩形枠状を呈している。各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて、半導体領域31、半導体領域32、及び半導体領域33の領域33bは、半導体基板3の主面3Bを構成している。換言すると、半導体領域31、半導体領域32、及び領域33bのそれぞれは、主面3Bの一部を構成している。各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて、領域33a及び領域33b(半導体領域33)は、半導体基板3の主面3Aを構成している。本実施形態では、領域33a、半導体領域32、及び半導体領域31は、Z軸方向において、光学接着剤OA(
ガラス基板2)から、この順で配置されている。半導体領域33のZ軸方向から見た周縁は、各アバランシェフォトダイオードAPD(各セルU)の周縁を構成している。
【0036】
半導体基板3にはトレンチ34が形成されている。半導体領域33の領域33bのX軸方向又はY軸方向における外側の側面は、トレンチ34の側面を構成している。トレンチ34は、主面3A及び主面3Bに開口している。換言すると、トレンチ34は、主面3A及び主面3Bが互いに対向する方向(Z軸方向)において、半導体基板3を貫通している。Z軸方向は、半導体基板3の厚み方向でもある。トレンチ34は、複数のセルUのうちの互いに隣り合うセルU同士を物理的に分離している。具体的には、トレンチ34は、主面3Aと直交する方向(Z軸方向)から見て、複数のセルUそれぞれを囲んでいる。このため、トレンチ34によって、互いに隣り合うセルUは、互いに電気的に分離されている。トレンチ34は、Z軸方向から見て、半導体基板3に格子状に形成されている。本実施形態では、トレンチ34は、Z軸方向から見て、半導体基板3に略正方格子状に形成されている。
【0037】
半導体光検出装置1は、半導体基板3に形成されたトレンチ34に設けられている遮光部材6と、遮光部材6を覆っている絶縁膜7と、を有している。遮光部材6は、光を反射する材料によって構成されている。遮光部材6は、光を反射せずに吸収する材料によって構成されてもよい。遮光部材6を構成する材料は、たとえば、タングステンである。絶縁膜7に覆われている遮光部材6は、トレンチ34に充填されるように配置されているとともに、主面3Aからガラス基板2に向けて突出している。遮光部材6は、トレンチ34内に位置している部分6aと、半導体基板3の主面3Aから突出している部分6bと、を有している。
【0038】
遮光部材6の部分6bは、光学接着剤OA内に位置している。遮光部材6の部分6aは、Z軸方向から見て、複数のセルUのそれぞれを囲むようにトレンチ34内に位置している。遮光部材6の部分6aのZ軸方向における長さは、トレンチ34のZ軸方向における長さと略同一である。換言すると、遮光部材6の部分6aは、トレンチ34の主面3Bでの開口端と主面3Aでの開口端との間で、Z軸方向に延在している。本実施形態では、遮光部材6のZ軸方向における両端のうち主面3Bに近い一端と、主面3BとのZ軸方向における位置は、互いに略同一である。遮光部材6のZ軸方向における両端のうち主面3Bに近い一端と、主面3BとのZ軸方向における位置は、互いに異なっていてもよい。すなわち、遮光部材6の上述の一端の表面と主面3Bとが、面一とされていなくてもよい。遮光部材6の部分6aは、絶縁膜7を介してトレンチ34の内側面に対向している。遮光部材6の部分6aは、X軸方向又はY軸方向において、互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDそれぞれの半導体領域33の外側面同士の間に位置している。たとえば、部分6aが第1部分を構成する場合、部分6bは第2部分を構成する。遮光部材6は、Z軸方向から見て、トレンチ34に対応した形状を呈している。遮光部材6は、Z軸方向から見て、格子形状を呈している。本実施形態では、遮光部材6はZ軸方向から見て、略正方格子形状を呈している。
【0039】
絶縁膜7は、遮光部材6の主面3Bから露出する面を除いた表面を覆っている。具体的には、遮光部材6の部分6aの側面、及び遮光部材6の部分6bの表面は、一体に形成された絶縁膜7によって覆われている。換言すると、絶縁膜7は、遮光部材6の部分6aの側面を覆っている部分と、遮光部材6の部分6bの表面を覆っている部分と、を有している。絶縁膜7(部分6aの側面を覆っている部分)は、遮光部材6と半導体領域33との間に位置している。これにより、半導体領域33(アバランシェフォトダイオードAPD)と遮光部材6との間の絶縁が確保される。絶縁膜7のうち遮光部材6の部分6bの表面を覆っている部分は、光学接着剤OA内に位置している。換言すると、絶縁膜7のうち遮光部材6の部分6bの表面を覆っている部分は、光学接着剤OAに接触している。絶縁膜7を構成する材料は、たとえば、半導体領域33と遮光部材6との間の絶縁性、及び遮光部材6との接合性等を考慮して設定される。絶縁膜7は、たとえば、SiO2(二酸化ケイ素)によって構成されている。
【0040】
Z軸方向から見て、半導体基板3におけるトレンチ34で囲まれている各領域(アバランシェフォトダイオードAPD)は、内側に位置している第1領域と、第1領域を囲むように第1領域の外側に位置している第2領域と、を有している。本実施形態では、第1領域は、半導体領域31、半導体領域32、及び半導体領域33の領域33aで構成される半導体領域である。第2領域は、半導体領域33の領域33bで構成される半導体領域である。主面3Aは、トレンチ34に近くづくにつれてZ軸方向における第2領域(領域33b)の長さが大きくなるように傾斜しているテーパ面33cを含んでいる。各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)における主面3Aに形成されているテーパ面33cは、Z軸方向から見て、第1領域を囲んでいる。半導体領域33の領域33bは、主面3Aのうちの半導体領域33の領域33aで構成される部分からガラス基板2に向って突出している。Z軸の負方向から見て、テーパ面33cのトレンチ34に近い縁は、各アバランシェフォトダイオードAPDの周縁を構成している。
【0041】
続いて、配線層4の詳細構成の一例を説明する。配線層4は、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)にバイアス電圧を印加する配線42と、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)からの信号を出力する配線43と、絶縁層44と、を有している。
図4及び
図6では、絶縁層44の図示は省略されている。
図5では、絶縁層44の断面構成が示されており、絶縁層44のハッチングは省略されている。上述したように、互いに隣り合うセルU同士は、トレンチ34によって物理的に分離されているので、電気的に接続されていない。このため、各セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDを動作させるために、各セルUには、配線42及び配線43が物理的かつ電気的に接続されている。
【0042】
配線42は、バンプ電極41aと複数のセルUそれぞれとを、電気的に接続している。換言すると、回路基板5は、バンプ電極41a及び配線42を介して各セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDのアノード(半導体領域33)と電気的に接続されている。配線43は、バンプ電極41bと複数のセルUそれぞれとを、電気的に接続している。換言すると、回路基板5は、バンプ電極41b及び配線43を介して各セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDのカソード(半導体領域31)と電気的に接続されている。配線42及び配線43は、半導体基板3の主面3Bに設けられている。本実施形態では、配線42及び配線43は、絶縁層44を介して主面3Bと対向している。たとえば、配線42が第2配線を構成する場合、配線43は第1配線を構成する。
【0043】
配線42は、
図4及び
図6に示されるように、複数の分岐配線45と、共通配線46と、を有している。複数の分岐配線45は、列方向に並ぶ複数のセルUをそれぞれ含む複数のセル群(以下「列方向のセル群」という)に、列方向のセル群ごとに対応して設けられている。換言すると、複数の分岐配線45は、列方向に並ぶM個のセルUをそれぞれ含むN個の列方向のセル群ごとに対応して設けられている。本実施形態では、列方向は、Y軸方向であり、後述の行方向は、X軸方向である。たとえば、複数の列方向のセル群は、N個の第2セル群を構成する。
【0044】
各分岐配線45は、共通配線45aと、複数の接続配線45bとを含んでいる。各分岐配線45の共通配線45aは、対応する列に位置する列方向のセル群に含まれる複数のセルUが並ぶ方向に沿って配置されている。複数の共通配線45aは、互いに略平行に設けられている。換言すると、複数の共通配線45aは、列方向のセル群ごとに対応して、行方向に沿って配列されている。複数の接続配線45bは、共通配線45aと対応する列方向のセル群に含まれる各アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域33とを電気的に接続している。X軸方向から見て、共通配線45aと各接続配線45bとは、互いに交差している。共通配線45aと複数の接続配線45bとは、互いに同じ金属材料で構成されており、たとえば、アルミニウムによって構成されている。共通配線45aと複数の接続配線45bとは、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Pt(白金)等の金属材料で構成されてもよい。たとえば、複数の分岐配線45は、複数の第2分岐配線を構成する。
【0045】
複数の分岐配線45それぞれは、共通配線46に接続されている。具体的には、共通配線46には、複数の分岐配線45それぞれの共通配線45aが電気的に接続されている。たとえば、共通配線46は、Z軸方向から見て、各共通配線45aと交差している。共通配線46は、たとえば、半導体基板3のうちの複数のセルU全てを含むように形成された入射領域以外の領域に配置されている。入射領域は、たとえば、半導体光検出装置1において、検出対象の光が入射される範囲を示している。共通配線46は、バンプ電極41aと電気的に接続されている。たとえば、共通配線46は、複数の分岐配線45と同じ金属材料によって構成されている。
【0046】
配線43は、複数の分岐配線47と、共通配線48と、を有している。複数の分岐配線47は、行方向に並ぶ複数のセルUをそれぞれ含む複数のセル群(以下「行方向のセル群」という)に、行方向のセル群ごとに対応して設けられている。換言すると、複数の分岐配線47は、行方向に並ぶN個のセルUをそれぞれ含むM個の行方向のセル群ごとに対応して設けられている。たとえば、複数の行方向のセル群は、M個の第1セル群を構成する。
【0047】
各分岐配線47は、共通配線47a、複数のクエンチング抵抗47b、及び複数の接続配線47cを含んでいる。各分岐配線47の共通配線47aは、対応する行に位置する行方向のセル群に含まれる複数のセルUが並ぶ方向に沿って配置されている。複数の共通配線47aは、互いに略平行に設けられている。換言すると、複数の共通配線47aは、行方向のセル群ごとに対応して、列方向に沿って配列されている。複数の共通配線47aは、Z軸方向から見て、複数の共通配線45aと交差している。複数の共通配線47aは、各共通配線47aと対応する行方向のセル群に含まれる各アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域31と、クエンチング抵抗47b及び接続配線47cを介して、電気的に接続されている。Y軸方向から見て、共通配線47aと各接続配線47cとは、互いに交差している。共通配線47aと接続配線47cとは、互いに同じ金属材料で構成されており、たとえば、アルミニウムによって構成されている。共通配線47aと接続配線47cとは、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Pt(白金)等の金属材料で構成されてもよい。クエンチング抵抗47bは、Z軸方向から見て、半導体領域31の周縁に沿うように配置されている。クエンチング抵抗47bは、共通配線47a及び接続配線47cを構成する材料よりも抵抗値が高い材料で構成されており、たとえば、SiCr(シリコンクロム)によって構成されている。クエンチング抵抗47bは、ポリシリコン、NiCr(ニッケルクロム)、FeCr(フェロクロム)等の材料で構成されてもよい。たとえば、複数の分岐配線47は、複数の第1分岐配線を構成する。
【0048】
複数の分岐配線47それぞれは、共通配線48に接続されている。具体的には、共通配線48には、複数の分岐配線47それぞれの共通配線47aが電気的に接続されている。共通配線48は、Z軸方向から見て、各共通配線47aと交差している。たとえば、共通配線48と配線42の共通配線46とは、Z軸方向から見て、互いに交差するように配置されている。たとえば、共通配線48は、半導体基板3のうちの入射領域以外の領域に配置されている。共通配線48は、バンプ電極41bと電気的に接続されている。たとえば、共通配線48は、共通配線47a及び接続配線47cと同じ金属材料によって構成されている。
【0049】
配線42の共通配線45a、配線43の共通配線47a、及び配線43のクエンチング抵抗47bのZ軸方向における位置は、互いに異なっている。本実施形態では、共通配線47a、クエンチング抵抗47b、及び共通配線45aは、半導体基板3の主面3Bから、この順で配置されている。共通配線45a、共通配線47a、及びクエンチング抵抗47bのX軸方向又はY軸方向と直交する平面における断面形状は、たとえば矩形状である。配線42の接続配線45bと配線43の接続配線47cとのZ軸方向と直交する平面における断面形状は、たとえば矩形状である。一例として、共通配線45aの厚さ(Z軸方向の長さ)は600nm程度であり、共通配線47aの厚さは600nm程度であり、クエンチング抵抗47bの厚さは5nm程度である。一例として、共通配線45aとクエンチング抵抗47bとのZ軸方向における離間距離は300nm程度であり、クエンチング抵抗47bと共通配線47aとのZ軸方向における離間距離は300nm程度である。共通配線47aと半導体基板3の主面3Bとの離間距離は300nm程度である。
【0050】
絶縁層44は、配線42及び配線43を覆っている。絶縁層44は、互いに異なる電位に接続されている配線42及び配線43の間の絶縁を確保できる材料によって構成されており、たとえばSiO2(酸化シリコン)によって構成されている。絶縁層44の厚さは、一例として、2.5μm程度である。絶縁層44は、配線42及び配線43の半導体基板3及び回路基板5への接続部分を除く全てを覆っていてもよい。絶縁層44は、配線42の一部及び配線43の一部を覆っていてもよい。この場合、絶縁層44は、配線42の分岐配線45及び配線43の分岐配線47を覆っていてもよい。
【0051】
各アバランシェフォトダイオードAPDのpn接合は、受光領域を形成している。本実施形態では、半導体領域31と半導体領域32とによって、受光領域が形成されている。半導体領域32には、半導体領域32よりも不純物濃度が高い半導体領域33を介して、配線42が電気的に接続されることにより、アバランシェフォトダイオードAPDと配線42との間の接触抵抗が低減されている。配線42(接続配線45b)は、Z軸方向の正方向から見て、半導体領域33の一つの角部33dに電気的に接続されている(
図6参照)。半導体領域31の周縁は、角部33dに対応する位置に、湾曲部31aを含んでいる。湾曲部31aは、各アバランシェフォトダイオードAPDのZ軸方向から見た中心に向かって、突出するように形成されている。角部33dのうちの接続配線45bの接続箇所と半導体領域31(湾曲部31a)との距離αは、トレンチ34と半導体領域31との距離βよりも大きい。距離αは、Z軸方向から見た場合の、接続配線45bと半導体領域33との接続箇所と、半導体領域31との最短距離である。距離βは、Z軸方向から見た場合の、トレンチ34と半導体領域31との最短距離である。
【0052】
半導体光検出装置1における光検出の動作を説明すると、本実施形態の半導体光検出装置1では、複数のセルUのそれぞれに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDに配線42を介して一斉にバイアス電圧(逆バイアス電圧)が印加される。バイアス電圧が印加されているアバランシェフォトダイオードAPDに入射光(フォトン)が入射すると、半導体基板3内部において光電変換が行われて光電子が生成される。アバランシェフォトダイオードAPDのpn接合界面において、アバランシェ増倍が行われ、増倍された電子群は、配線43を介して回路基板5に流れる。電子群が回路基板5に流れることによって、アバランシェフォトダイオードAPDから光の入射に伴う信号(電流信号)が回路基板5に出力される。本実施形態では、2次元配列されている複数のセルUのうちのいずれか1又は複数個のセルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDに入射光が入射することで、当該入射光に応じた信号が回路基板5に出力される。たとえば、回路基板5ではセルU(アバランシェフォトダイオードAPD)から出力された信号に応じて、光の入射光量が計測される。
【0053】
次に、
図7、
図8、及び
図9を参照して、本実施形態に係る半導体光検出装置1の製造過程の一例を説明する。
図7の(a)~(c)及び
図8の(a)~(c)は、
図1の半導体光検出装置の製造過程を示す図である。
図9は、エッチング過程を示す図である。これらの図では、各要素の断面形状が示されており、ハッチングは省略されている。
【0054】
図7の(a)~(c)と
図8の(a)~(c)とに示される半導体光検出装置1の製造過程は、仮接合工程、研磨工程、エッチング工程、塗布工程、本接合工程、及び剥離工程を含んでいる。本実施形態の半導体光検出装置1の製造過程では、仮接合工程、研磨工程、エッチング工程、塗布工程、本接合工程、及び剥離工程は、この順に行われる。
【0055】
図7の(a)に示される仮接合工程では、まず、半導体基板3の基材となるSi(シリコン)基板8が準備される。準備されたSi基板8の一方の主面に、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)を形成する領域を囲むようにトレンチ34aが形成される。トレンチ34aが形成されるSi基板8の主面は、半導体基板3の主面3Bに対応しており、以下、Si基板8の当該主面も「主面3B」と表記する。Si基板8は、製造される半導体光検出装置1が備える半導体基板3よりも厚い基板である。トレンチ34aの深さ(長さ)は、半導体基板3に形成されるトレンチ34の長さよりも長い。主面3Bと直交する方向から見たトレンチ34aの面積は、トレンチ34の面積と同一である。たとえば、トレンチ34aが形成されたSi基板8にP型不純物及びN型不純物が添加されることにより、各アバランシェフォトダイオードAPDを構成する各半導体領域が形成される。一例として、P型不純物にはIII族元素(たとえば、B)が用いられ、N型不純物にはV族元素(たとえば、P又はAs)が用いられる。不純物の添加法として、たとえば、拡散法又はイオン注入法が用いられる。たとえば、Si基板8に各アバランシェフォトダイオードAPDを構成する各半導体領域が形成された後に、トレンチ34aが形成されてもよい。
【0056】
続いて、トレンチ34a内に、絶縁膜7で覆われている遮光部材6が、トレンチ34a内に設けられる。換言すると、主面3Bと面一な仮想面及びトレンチ34aで画定される領域内が、遮光部材6及び絶縁膜7によって埋められる。本実施形態では、遮光部材6のうちの絶縁膜7で覆われていない一側面が主面3Bから露出するように、絶縁膜7で覆われている遮光部材6がトレンチ34a内に配置される。そして、仮保持基板9が用意され、温度によって粘着力が変化する接着剤ADによって、仮保持基板9がSi基板8の主面3Bに接着される。仮保持基板9は、半導体光検出装置1の製造工程において用いられる。たとえば、仮保持基板9は、ガラス基板である。たとえば、接着剤ADは、常温において仮保持基板9とSi基板8との接着状態を維持する接着力を有しており、接着剤ADが加熱されることにより、Si基板8と仮保持基板9との接着状態が解除される。たとえば、接着剤ADは、温度によらずに仮保持基板9とSi基板8との接着状態を維持する接着力を有してもよい。この場合、接着剤ADに光(たとえばレーザ光)が照射されることにより、Si基板8と仮保持基板9との接着状態が解除されてもよい。
【0057】
続いて、
図7の(b)に示される研磨工程では、Si基板8の主面3Bと反対側の主面が研磨される。研磨工程では、Si基板8の厚さが、トレンチ34aの深さに所定の距離を加えた長さとなるように、Si基板8が研磨される。たとえば、研磨された後のSi基板8の厚さは、仮接合工程で準備されたSi基板8の厚さの約半分である。
【0058】
続いて、
図7の(c)に示されるエッチング工程では、Si基板8の主面3Bと反対側の主面がエッチングされることによって、Si基板8の厚みがさらに薄くされ、半導体基板3の主面3Aが形成される。エッチング工程では、Si基板8の厚さが、トレンチ34aの深さよりも小さくなるように、Si基板8の主面3Bと反対側の主面がエッチング液(エッチャント)によって侵食される。エッチングが行われたSi基板8の厚みによって、半導体基板3の厚み(主面3A及び主面3Bの間の長さ)が規定され、トレンチ34aの一部は存在しなくなり、主面3A及び主面3Bの間と同じ長さを有するトレンチ34が形成される。
【0059】
図9の(a)~
図9の(c)では、エッチング工程による主面3Aが形成されていく過程が示されている。
図9の(a)~
図9の(c)では、仮保持基板9の図示は省略されている。
図9の(a)に示される中間体は、
図8の(b)に示されるSi基板8が研磨された後の中間体であり、この中間体が腐食剤等のエッチング液に浸される。エッチング液に浸された後、
図9の(b)に示されるように、Si基板8の主面3Bと反対側の主面は、一面にわたって略同じ速度でエッチングが進み、Si基板8の厚さが、トレンチ
34aの深さ(遮光部材6の長さと絶縁膜7の厚さとの合計値)と略同一となるまで、Si基板8の厚さが略均一に変化する。
図9の(b)に示される状態において、遮光部材6を覆っている絶縁膜7は、エッチング液に露出しており、この状態からエッチングが進んでも、絶縁膜7はエッチング(侵食)されない。換言すると、遮光部材6及び絶縁膜7は、用意された形状に維持される。
【0060】
図9の(c)に示されるように、絶縁膜7がエッチング液に露出すると、Si基板8がエッチングされる面方位が、
図9の(b)に示される状態と異なり、異なる面方位にエッチングが進む。具体的には、Si基板8の厚み方向にエッチングされる面方位と、絶縁膜7により覆われている遮光部材6(トレンチ34a)の中心に向かってエッチングされる面方位とが生じる。遮光部材6の中心に向かう面方位では、他の面方位と比べてエッチングが進む速度(エッチング速度)が遅く、エッチングが終了した時点で形成される半導体基板3の主面3Aは、テーパ面33cを有する(
図7の(c)参照)。
【0061】
続いて、
図8の(a)で示される塗布工程では、半導体基板3の主面3Aに光学接着剤OAが塗布される。この塗布工程では、光学接着剤OAは、トレンチ34から突出している絶縁膜7の表面全てを覆うように塗布される。続いて、
図8の(b)で示されるように、半導体基板3の主面3Aに、光学接着剤OAを介してガラス基板2が接着される本接合工程が行われる。本接合工程で接着されるガラス基板2は、半導体光検出装置1の製造後にも備えられる部材であり、光学接着剤OAは、仮接合工程で用いられる接着剤ADと異なる。
【0062】
続いて、
図8の(c)に示される剥離工程では、仮保持基板9が半導体基板3の主面3Bから剥離される。たとえば、接着剤ADが加熱された後に、機械又は作業員によって仮保持基板9及び接着剤ADが取り除かれる。このように、半導体基板3にトレンチ34が形成され、トレンチ34に遮光部材6及び絶縁膜7が配置される。
【0063】
アバランシェ増倍の過程において、アバランシェフォトダイオードAPDは、入射光とは別の副次的な光を発生させる場合がある。副次的な光が、隣接するセルUに入射すると、隣接するセルUが含むアバランシェフォトダイオードAPDは、入射した副次的な光により発生するキャリアをアバランシェ増倍するおそれがある。副次的な光が隣接するセルU(アバランシェフォトダイオードAPD)に入射する現象、すなわち、光学的なクロストークが発生するおそれがある。
【0064】
本実施形態の半導体光検出装置1では、半導体基板3にはZ軸方向から見て、複数のアバランシェフォトダイオードAPDのそれぞれを囲むトレンチ34が形成されており、トレンチ34内に位置している部分6a及び主面3Aから突出している部分6bを有する遮光部材6が備えられる。遮光部材6が主面から突出する部分6bを有している構成は、遮光部材が突出する部分を有していない構成に比して、副次的な光が隣接するセルU(アバランシェフォトダイオードAPD)に入射するのをより一層確実に抑制する。したがって、遮光部材6は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0065】
遮光部材6の部分6bは、遮光部材6の、半導体基板3(トレンチ34)内に位置している部分6aに比して、半導体基板3で保護されがたい。したがって、部分6bは、半導体基板3外の雰囲気環境に曝されるおそれがある。この場合、部分6bを含め遮光部材6が腐食するおそれがある。遮光部材6が腐食した場合、遮光部材6は、光学的なクロストークを抑制しがたい。
【0066】
半導体光検出装置1では、絶縁膜7は、半導体基板3の主面3Aから突出している遮光部材6の部分6bの表面を覆っている部分を有している。遮光部材6の部分6bが、主面3Aから突出している場合でも、半導体基板3外の雰囲気環境に曝されがたい。したがって、遮光部材6が腐食しがたく、遮光部材6は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0067】
遮光部材6は、光を反射する材料によって構成されている。この構成により、半導体光検出装置1に入射した光のうちの遮光部材6に向かって入射した光が、遮光部材6によって反射される。このため、遮光部材6に向かって入射した光の一部は、アバランシェフォトダイオードAPDに形成されているpn接合に向けて反射され得る。したがって、本構成は、遮光部材6が光を吸収する材料によって構成されている場合に比して、アバランシェフォトダイオードAPDにおいて生成される光電子の量が増え得る。その結果、半導体光検出装置1での入射光の検出感度が向上し得る。
【0068】
主面3Aは、テーパ面33cを含んでいる。この構成により、半導体光検出装置1に入射した光のうちのテーパ面33cに向かう光の一部は、テーパ面33cによってアバランシェフォトダイオードAPDのpn接合に向けて反射され得る。したがって、本構成は、各アバランシェフォトダイオードAPDにおける主面3Aの全面が平坦である場合に比して、アバランシェフォトダイオードAPDにおいて生成される光電子の量が増え得る。その結果、半導体光検出装置1での入射光の検出感度が向上し得る。
【0069】
絶縁膜7は、トレンチ34の側面に接していると共に遮光部材6の部分6aを覆っている部分を有している。部分6bを覆っている部分と部分6aを覆っている部分とが、一体に形成されている。本構成では、絶縁膜7の、部分6aを覆っている部分が、半導体基板3と遮光部材6との間の電気的絶縁性を確保する。部分6aを覆っている部分と部分6bを覆っている部分とが一体に形成されているので、遮光部材6が確実に覆われ、遮光部材6の耐久性が向上する。したがって、本構成は、部分6aを覆っている部分と部分6bを覆っている部分とが別体に形成されている構成に比して、光学的なクロストークをより一層確実に抑制する。
【0070】
遮光部材6の部分6b及び絶縁膜7のうちの部分6bを覆っている部分は、光学接着剤OA内に位置している。本構成では、半導体基板3の主面3Aから突出している遮光部材6の部分6bが光学接着剤OAによって保持されるので、たとえば、絶縁膜7のうちの部分6bを覆っている部分が半導体基板3の外部に露出している場合に比して、遮光部材6の保持力が向上する。
【0071】
複数の分岐配線45は、列方向のセル群ごとに対応して設けられており、複数の分岐配線47は、行方向のセル群ごとに対応して設けられている。この構成により、複数のアバランシェフォトダイオードAPDの各々を、配線42及び配線43それぞれを介して共通の電位に接続する場合において、各セルUに対して単一の配線が設けられる場合に比して、本構成は、各セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDに電気的に接続される配線42,43を簡素化する。
【0072】
分岐配線45(接続配線45b)は、複数のセルUのうち対応するセルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域33と接続されている。接続配線45bと半導体領域33との接続箇所と、半導体領域31との最短距離は、半導体領域31とトレンチ34との最短距離より大きい。本構成では、上記接続箇所と半導体領域31との最短距離が半導体領域31とトレンチ34との最短距離以下である構成に比して、アバランシェフォトダイオードAPDにバイアス電圧が印加される場合でも、分岐配線45と半導体領域31とが短絡しがたい。したがって、本構成は、分岐配線45と半導体領域31と間の耐圧を向上する。
【0073】
たとえば、半導体基板に接続される配線の構成として、上述した特許文献1に記載の半導体光検出装置のように、半導体基板の一方の主面にバイアス電圧を印加する配線(以下「アノード配線」という)を配置し、半導体基板の他方の主面に信号を出力する配線(以下「カソード配線」という)を配置する構成も考えられる。アバランシェフォトダイオードをガイガーモードで動作させるために、ブレークダウン電圧以上のバイアス電圧を印加する必要があり、アバランシェフォトダイオードにはアノード配線を介して比較的高い電圧が印加される。
【0074】
互いに隣り合うセル同士が完全に分離されていない場合、アノード配線は各セルに物理的に接続される必要がないので、アノード配線の構成の自由度は増す。このため、アバランシェフォトダイオードのうちのアノード配線が接続される接続箇所(たとえば、P型の半導体領域の一部)とカソード配線が電気的に接続される半導体領域(たとえば、N型の半導体領域)との間の距離を確保し、それらの間での絶縁破壊の発生を抑制するように配線を構成することが可能となる。しかしながら、互いに隣り合うセル同士が完全に分離している場合、各セルに対してアノード配線及びカソード配線を物理的及び電気的に接続する必要がある。1つのセルの領域は狭いので、アノード配線とカソード配線とを一方の主面に配置すると、上述の絶縁破壊の発生が懸念される。このため、一般的には、特許文献1に記載されているように、アノード配線とカソード配線とは、それぞれ異なる主面に配置される。
【0075】
これに対して、本実施形態に係る半導体光検出装置1では、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)にバイアス電圧を印加する配線42及び各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)からの信号を出力する配線43の双方が、半導体基板3の一方の主面である主面3Bに設けられている。配線42及び配線43の双方が主面3Bに設けられることで、半導体光検出装置1は実用に適した構成となる。たとえば、半導体基板3の一方の主面に配線が構成されるので、半導体基板3の一方の主面に回路基板5との接続用の電極又は配線(たとえば、バンプ電極)を設けることで、半導体基板3と回路基板5とが電気的に接続される。これにより、半導体基板3から回路基板5に電気的に接続される電極等を含む配線の構成が簡素化される。
【0076】
次に、
図10を参照して第2実施形態に係る半導体光検出装置60について説明する。
図10は、第2実施形態に係る半導体光検出装置を示す平面図である。
図10に示される半導体光検出装置60は、半導体基板3に代えて半導体基板61を有している点、及び配線42,43に代えて配線62,63を有している点、において
図1に示される半導体光検出装置1と相違する。
図10では、配線62及び配線63をそれぞれ覆っている絶縁層の図示は省略されている。
【0077】
半導体基板61は、M行N列に2次元配列されている複数のセルUを有している。
図10に示されるように、複数のセルUのそれぞれは、1つのアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいる。複数のセルUのそれぞれは、複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいてもよい。半導体基板61は、主面61Bと、主面61Bと対向する主面と、を有している。複数のセルUのそれぞれのアバランシェフォトダイオードAPDは、導電型がN型である半導体領域64と、導電型がP型である半導体領域65と、を有している。図示は省略されているが、半導体基板61の断面構成において、半導体領域65は、半導体領域64を囲んでいる。半導体領域64及び半導体領域65は、各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて、半導体基板61の主面61Bを構成している。半導体基板61には、Z軸方向から見て、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)を囲むようにトレンチ34が形成されている。トレンチ34内には、絶縁膜7で覆われている遮光部材6が設けられている。
図10では、遮光部材6及び絶縁膜7の図示は、省略されている。絶縁膜7で覆われている遮光部材6は、半導体光検出装置1と同様に、主面61Bと対向する主面から突出している。遮光部材6のうちの主面61Bと対向する主面から突出している部分の表面は、絶縁膜7で覆われている。たとえば、半導体領域64が第1半導体領域を構成する場合、半導体領域65は第2半導体領域を構成する。
【0078】
図10に示されるように、配線62は、複数の分岐配線66と、共通配線67と、を有している。配線63は、複数の分岐配線68と、共通配線69と、を有している。
図10では、複数の分岐配線68のうちの単一の分岐配線68が示されている。複数の分岐配線66のそれぞれと、複数の分岐配線68のそれぞれとは、Y軸方向において交互に配置されている。本実施形態では、複数の分岐配線66のそれぞれは、互いに隣り合う2個の行方向のセル群ごとに対応して設けられており、複数の分岐配線68のそれぞれは、互いに隣り合う2個の行方向のセル群ごとに対応して設けられている。各分岐配線66が対応する2個の行方向のセル群は、各分岐配線68が対応する2個の行方向のセル群に対して、1行分ずれている。たとえば、各分岐配線68は、第(2×m-1)行及び第(2×m)行の行方向のセル群ごとに対応して設けられ、各分岐配線66は、第(2×m)行及び第(2×m+1)行の行方向のセル群ごとに対応して設けられている。ここで、mは、1以上の整数である。各分岐配線68が、第(2×m)行及び第(2×m+1)行の行方向のセル群ごとに対応して設けられ、各分岐配線66が、第(2×m-1)行及び第(2×m)行の行方向のセル群ごとに対応して設けられてもよい。たとえば、配線62が第2配線を構成する場合、配線63は第1配線を構成する。たとえば、分岐配線66が第2分岐配線を構成する場合、分岐配線68は第1分岐配線を構成する。
【0079】
各分岐配線66は、共通配線66aと、複数の接続配線66bとを含んでいる。各分岐配線66の共通配線66aは、Z軸方向から見て、対応する2個の行方向のセル群同士の間(トレンチ34の上方)に配置されている。各分岐配線66の複数の接続配線66bは、当該分岐配線66に対応する2個の行方向のセル群に含まれるアバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域65と、共通配線66aとの間を電気的に接続している。たとえば、1つの分岐配線66を介して、互いに隣り合う2個の行方向のセル群に含まれる(2×N)個のセルU(アバランシェフォトダイオードAPD)にバイアス電圧が印加される。分岐配線66(共通配線66a及び接続配線66b)は、たとえば、共通配線45aと同様の金属材料によって構成されている。複数の分岐配線66のそれぞれは、共通配線67に電気的に接続されている。共通配線67に、第1行のみの行方向のセル群に電気的に接続されている配線が接続されてもよく、第M行のみの行方向のセル群に電気的に接続されている配線が共通配線67に接続されてもよい。共通配線67は、バンプ電極41aに電気的に接続されている。共通配線67は、たとえば、共通配線46と同様の金属材料によって構成されている。
【0080】
各分岐配線68は、共通配線68a、複数のクエンチング抵抗68b、及び複数の接続配線68cを含んでいる。各分岐配線68の共通配線68aは、Z軸方向から見て、対応する2行分の行方向のセル群同士の間(トレンチ34の上方)に配置されている。各分岐配線68のクエンチング抵抗68bは、共通配線68aと電気的に接続されており、半導体領域64の周縁に沿って配置されている。接続配線68cは、クエンチング抵抗68bとアバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域64との間を電気的に接続している。換言すると、共通配線68aは、クエンチング抵抗68b及び接続配線68cを介して、アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域64に電気的に接続されている。たとえば、1つの分岐配線68を介して、互いに隣り合う2個の行方向のセル群に含まれるアバランシェフォトダイオードAPDからの信号が出力される。共通配線68aと接続配線68cとは、たとえば、共通配線47aと同様の金属材料によって構成されている。クエンチング抵抗68bは、たとえば、クエンチング抵抗47bと同様の材料によって構成されている。複数の分岐配線68のそれぞれは、共通配線69に電気的に接続されている。共通配線69は、バンプ電極41bに電気的に接続されている。共通配線69に、第1行のみの行方向のセル群に電気的に接続されている配線が接続されてもよく、第M行の行方向のみのセル群に電気的に接続されている配線が共通配線67に接続されてもよい。
【0081】
本実施形態では、共通配線66aと共通配線68aは、互いに略平行に配置されている。Z軸方向から見て、共通配線66aと共通配線67とは互いに交差しており、共通配線68aと共通配線69とは、互いに交差している。共通配線67と共通配線69とは、互いに略平行に配置されている。たとえば、共通配線66a及び共通配線68aのZ軸方向における位置は、互いに略同一である。
【0082】
半導体領域65は、Z軸方向から見て、矩形枠状を呈している。半導体領域65の角部65aにおいて、接続配線66bが接続されている。半導体領域64の周縁は、Z軸方向から見て、X軸方向及びY軸方向に対して傾く傾斜部64aを含んでいる。角部65aにおける接続配線66bの接続箇所と半導体領域64(傾斜部64a)との距離α1は、トレンチ34と半導体領域64との距離β1よりも大きくてもよい。距離α1は、Z軸方向から見た場合の、接続配線66bと半導体領域65との接続箇所と、半導体領域64との最短距離である。距離β1は、Z軸方向から見た場合の、トレンチ34と半導体領域64との最短距離である。
【0083】
半導体光検出装置60においても、半導体光検出装置1と同様に、遮光部材6が腐食しがたく、遮光部材6は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0084】
半導体光検出装置60では、行ごとに分岐配線66及び分岐配線68が交互に設けられているので、たとえば、複数のセルUの各々を、配線62及び配線63それぞれを介して共通の電位に接続する場合において、各セルUに対応して個別に配線を設ける場合に比して、主面61B上の配線数が少なくなる。したがって、本構成は、各セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDに電気的に接続される配線62及び配線63の構成を簡素化する。
【0085】
次に、
図11~
図13を参照して第3実施形態に係る半導体光検出装置70について説明する。
図11は、第3実施形態に係る半導体光検出装置を示す平面図である。
図12は、アバランシェフォトダイオードの等価回路を示す図である。
図13は、アバランシェフォトダイオードから出力される信号の一例を示す図である。
【0086】
半導体基板71は、n型の半導体領域72とp型の半導体領域73とを有している。半導体基板71では、半導体領域72の周縁が、傾斜部を含んでいない点を除き、半導体基板61と同様に構成されるので、各半導体領域の詳細な説明は省略する。半導体基板71には、Z軸方向から見て、各セルU(アバランシェフォトダイオードAPD)を囲むようにトレンチ34が形成されている。トレンチ34内には、絶縁膜7で覆われている遮光部材6が設けられている。
図11では、遮光部材6及び絶縁膜7の図示は、省略されている。絶縁膜7で覆われている遮光部材6は、半導体光検出装置1と同様に、主面71Bと対向する主面から突出している。遮光部材6のうちの主面71Bと対向する主面から突出している部分の表面は、絶縁膜7で覆われている。たとえば、半導体領域72が第1半導体領域を構成する場合、半導体領域73は第2半導体領域を構成する。
【0087】
容量増加部74は、共通配線47aに電気的に接続されている。容量増加部74は、共通配線47aとの接続部分を除き、Z軸方向から見てクエンチング抵抗47bの内側に位置している。容量増加部74のうちのクエンチング抵抗47bの内側に位置する部分は、XY軸平面に広がる板状であり、Z軸方向から見て矩形形状を呈している。容量増加部74は、アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域72と対向している。Z軸方向から見て、容量増加部74の大きさ(面積)は、半導体領域72よりも小さいが、たとえば、容量増加部74は、半導体領域72の半分以上の面積を有している。容量増加部74は、たとえば、金属材料によって構成されている。容量増加部74は、たとえば、アルミニウムによって構成されている。容量増加部74は、Cu(銅)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、Au(金)、Pt(白金)等の金属材料で構成されてもよい。
【0088】
図12では、アバランシェフォトダイオードAPDから配線43(クエンチング抵抗47b)を介して出力される信号の波形を再現するための等価回路が示されている。電圧Vbrは、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を示しており、電圧Vbiasは、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される電圧(バイアス電圧)を示している。抵抗Rqは、クエンチング抵抗を示しており、抵抗Rdは、アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域が有する直列抵抗成分を示しており、キャパシタCjは、アバランシェフォトダイオードAPDの半導体領域が有する静電容量成分を示している。キャパシタCqは、クエンチング抵抗とアバランシェフォトダイオードAPDとの間に存在する実効的な静電容量成分を示している。
【0089】
バイアス電圧が印加されている状態のアバランシェフォトダイオードAPDに入射光が入射することで発生する光電子(キャリア)の高周波成分に応じた信号(電流i1)は、抵抗Rq(クエンチング抵抗)ではなく、キャパシタCqを介して出力される。抵抗Rqを介して出力される信号(電流i2)の応答速度を示す時定数は、キャパシタCqを介して出力される高周波成分に応じた信号に比べて大きい。
図13では、アバランシェフォトダイオードAPDからの入射光に応じた信号の波形が、電圧値の時間変化で示されている。時間が5ns(ナノ秒)付近において、抵抗Rqを介して出力される信号とキャパシタCqを介して出力される信号とが合成された信号が観測され、時間が10ns付近において、抵抗Rqを介して出力される信号が観測されている。半導体光検出装置70では、容量増加部74が設けられることにより、キャパシタCqの容量が、容量増加部74が設けられていない場合に比べて、大きくなる。このため、キャパシタCqを介して出力される信号の振幅(たとえば、電流値又は電圧値)が比較的大きくなる。その結果、半導体光検出装置1に入射光が入射した際に、初期の段階で高い出力値を有する信号が得られる。
【0090】
半導体光検出装置70においても、半導体光検出装置1と同様に、遮光部材6が腐食しがたく、遮光部材6は、光学的なクロストークを確実に抑制する。
【0091】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0092】
たとえば、配線42,43が設けられている主面3Bが光入射面であってもよい。この場合、ガラス基板2及び回路基板5に代えて、半導体基板3を保持する保持基板が設けられてもよい。当該保持基板上に主面3Aが対向するように、保持基板に半導体基板3が設けられてもよい。当該保持基板は、光を透過しない材料で構成されてもよい。配線層4は、絶縁層44を備えていなくてもよい。絶縁層44は、光を透過する材料によって構成されてもよい。
【0093】
半導体光検出装置1において、複数のセルUそれぞれに対して、個別にバイアス電圧が印加されてもよい。換言すると、セルUごとに、当該セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDにバイアス電圧が印加されてもよい。この場合、行列状に配列されている複数のセルUのうちの特定のセルUだけにバイアス電圧が印加されてもよい。複数のセルUそれぞれに対して、個別に、バイアス電圧を印加する配線が設けられてもよい。配線42,62は、共通配線46,67を備えていなくてもよい。この場合、各分岐配線45,66を介して、1個の列方向のセル群又は2個の行方向のセル群ごとに、当該セル群に含まれるセルUにバイアス電圧が印加されてもよい。たとえば、配線42を介して、1つの列方向のセル群ごとにバイアス電圧を印加する場合、セル群ごとに異なるタイミングでバイアス電圧が印加されてもよい。
【0094】
半導体光検出装置1において、複数のセルUそれぞれからの出力が、個別に回路基板5に出力されてもよい。換言すると、セルUごとに、当該セルUに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDの出力が読み出されてもよい。この場合、各アバランシェフォトダイオードAPDの配置位置と、当該アバランシェフォトダイオードAPDからの出力とが、回路基板5において対応付けられてもよい。複数のセルUそれぞれに対して、個別に、信号を読み出す配線が設けられてもよい。配線43,63は、共通配線48,69を備えていなくてもよい。この場合、各分岐配線47,68を介して、1個又は2個の行方向のセル群ごとに、当該セル群に含まれるセルUからの信号が読み出されてもよい。
【0095】
上述した実施形態及び変形例では、アバランシェフォトダイオードAPDの一つの層構造が示されているが、アバランシェフォトダイオードAPDの層構造はこれに限定されない。たとえば、半導体領域31の導電型がP型であり、かつ、半導体領域32及び半導体領域33の導電型がN型であってもよい。たとえば、半導体領域64,72の導電型がP型であり、かつ、半導体領域65,73の導電型がN型であってもよい。たとえば、半導体領域31,64,72は、不純物濃度が互いに異なる複数の半導体領域で構成されていてもよい。半導体領域31,64,72にバイアス電圧を印加する配線が電気的に接続されていてもよく、半導体領域32,33,65,73にアバランシェフォトダイオードAPDからの信号を読み出す配線が電気的に接続されていてもよい。
【0096】
絶縁膜7のうちの遮光部材6の部分6aを覆っている部分と、遮光部材6の部分6bを覆っている部分とは、別体に形成されていてもよい。これに対し、遮光部材6の部分6aを覆っている部分と、遮光部材6の部分6bを覆っている部分とが一体に形成されている場合、上述したように、光学的なクロストークがより一層確実に抑制される。絶縁膜7は、遮光部材6を直接覆っていなくてもよい。換言すると、絶縁膜7は、遮光部材6を間接的に覆っていてもよい。たとえば、絶縁膜7と遮光部材6との間に、別の層が設けられていてもよい。遮光部材6は、導電性を有しない材料で構成されてもよい。遮光部材6が導電性を有しない材料で構成される場合、絶縁膜7は、遮光部材6の部分6aを覆っていなくてもよい。この場合、絶縁膜7は、部分6bのみを覆っていてもよい。たとえば、絶縁膜7は、遮光部材6の全表面を覆っていてもよい。言い換えると、遮光部材6のZ軸方向における一端は、半導体基板3から露出していなくてもよい。
【0097】
複数のセルUそれぞれが複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいる場合、各セルUにおいて、当該セルUに含まれる複数のアバランシェフォトダイオードAPDが行列状に配列されていてもよい。各セルUにおいて、当該セルUに含まれる複数のアバランシェフォトダイオードAPDのカソード同士及びアノード同士のそれぞれは、互いに電気的に接続されていてもよい。各セルUにおいて、当該セルUに含まれる複数のアバランシェフォトダイオードAPDそれぞれを電気的に接続していると共に、バイアス電圧を印加する配線又は信号を読み出す配線が接続されている電極が設けられていてもよい。
【0098】
分岐配線45(接続配線45b)の接続箇所と半導体領域31との距離αは、トレンチ34と半導体領域31との距離βと略同等であってもよい。これに対し、距離αが距離βより大きい場合、上述したように、分岐配線45と半導体領域31と間の耐圧が向上する。
【0099】
遮光部材6は、光を吸収する材料によって構成されてもよい。これに対し、遮光部材6が、光を反射する材料によって構成されている場合、上述したように、半導体光検出装置1での入射光の検出感度が向上し得る。
【0100】
主面3Aは、テーパ面33cを含んでいなくてもよい。すなわち、主面3Aの全体が、略平坦であってもよい。これに対し、主面3Aがテーパ面33cを含んでいる場合、上述したように、半導体光検出装置1での入射光の検出感度が向上し得る。
【符号の説明】
【0101】
1,60,70…半導体光検出装置、2…ガラス基板、3,61,71…半導体基板、3A,3B…主面、31~33,64,65,72,73…半導体領域、33c…テーパ面、34…トレンチ、42,43,62,63…配線、45,47…分岐配線、46,48…共通配線、6…遮光部材、6a,6b…部分、7…絶縁膜、U…セル、APD…アバランシェフォトダイオード。