(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】接続部材、当該接続部材を備えたポンプ用ケーシングおよび注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
A61M5/142 500
(21)【出願番号】P 2018169671
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】漆間 正行
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和樹
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131042(JP,A)
【文献】特開2014-200617(JP,A)
【文献】特表2009-525770(JP,A)
【文献】特表2002-517290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144214(US,A1)
【文献】特開2015-128480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を圧送するポンプの吸引口と吸引側チューブとの接続、および当該ポンプの吐出口と吐出側チューブとの接続をするために、当該ポンプとこれら吸引側チューブおよび吐出側チューブとの間に設けられる接続部材であって、
前記吸引口に接続される吸引側開口と、前記吐出口に接続される吐出側開口とを有し、当該吸引口と当該吸引側開口との接続、および当該吐出口と当該吐出側開口との接続がされた状態で、前記ポンプが取り付けられるポンプ取付部と、
前記吸引側チューブが接続される吸引側接続部、および前記吐出側チューブが接続される吐出側接続部を有するチューブ接続部と、
前記ポンプ取付部の前記吸引側開口と前記チューブ接続部の前記吸引側接続部との間を液体の流通可能に連通する吸引路部、および前記ポンプ取付部の前記吐出側開口と前記チューブ接続部の前記吐出側接続部との間を液体の流通可能に連通する吐出路部を有する流路形成部と
を備えており、
前記吸引路部および前記吐出路部のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する液体の圧力によって変形可能な膜部を有しており、
前記膜部が前記吸引路部および前記吐出路部の内部を流れる液体の流れの状態を前記膜部の変形によって検知するセンサに対向して配置されるように、前記流路形成部は、前記センサに対して取付可能な形状を有
し、
前記接続部材は、注入装置本体における前記センサを保持する装着部に装着されるものであり、かつ、前記膜部が前記センサに対向した状態で、前記装着部の被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する、
ことを特徴とする接続部材。
【請求項2】
前記被嵌合部は、凸部であり、
前記嵌合部は、前記吸引路部と前記吐出路部との間に形成され、前記凸部に嵌合する間隙である
請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
前記流路形成部は、
前記吸引路部と一体に形成され、前記ポンプの前記吸引口と前記ポンプ取付部の前記吸引側開口との間を液密的にシールする吸引側シール部と、
前記吐出路部と一体に形成され、前記ポンプの前記吐出口と前記ポンプ取付部の前記吐出側開口との間を液密的にシールする吐出側シール部と
を有している、
請求項1
または2に記載の接続部材。
【請求項4】
前記吸引路部の膜部および前記吸引側シール部の組合せ、ならびに前記吐出路部の膜部および前記吐出側シール部の組合せは、それぞれ、1つの管状部材を形成している、
請求項
3に記載の接続部材。
【請求項5】
前記吸引側接続部および前記吐出側接続部が筒状であり、
前記吸引側接続部の周囲を前記吸引路部の膜部が隙間をあけて覆うことにより、当該吸引側接続部と当該吸引路部の膜部との間に吸引側流路が形成され、
前記吐出側接続部の周囲を前記吐出路部の膜部が隙間をあけて覆うことにより、当該吐出側接続部と当該吐出路部の膜部との間に吐出側流路が形成されている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の接続部材。
【請求項6】
前記接続部材は、前記膜部が前記センサに対向していない状態で前記嵌合部が前記被嵌合部へ嵌合することを規制する規制部を有する、
請求項
1~4のいずれか1項に記載の接続部材。
【請求項7】
請求項
3記載の接続部材と、
前記ポンプ取付部における前記ポンプが挿入される凹部を閉じる蓋部と
を備えたポンプ用ケーシングであって、
前記吸引側シール部および前記吐出側シール部は、同じ高さであり、
前記凹部には、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部と同じ高さを有する少なくとも1個のポンプ固定部が設けられ、
前記蓋部には、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部、ならびに前記ポンプ固定部のそれぞれに向けて突出する突起が設けられている、
ポンプ用ケーシング。
【請求項8】
前記ポンプ固定部は、前記ポンプ取付部に形成された開口を通して前記凹部の内側に突出しており、
当該ポンプ固定部は、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部とともに前記吸引路部および前記吐出路部と一体に形成されている、
請求項7に記載のポンプ用ケーシング。
【請求項9】
前記ポンプは、液体圧送時に動かない不動部分を有しており、
前記吸引口および前記吐出口は、前記不動部分に配置され、
前記吸引側シール部および前記吐出側シール部、ならびに前記ポンプ固定部は、前記ポンプが前記凹部に挿入された状態で前記不動部分の一方の面に当接可能な位置に配置され、
前記蓋部の前記突起は、前記ポンプが前記凹部に挿入された状態で前記不動部分の他方の面に当接可能な位置に配置されている、
請求項7または8に記載のポンプ用ケーシング。
【請求項10】
液体を圧送するポンプと、
吸引側チューブと、
吐出側チューブと、
前記ポンプの吸引口と前記吸引側チューブとの接続、および当該ポンプの吐出口と前記吐出側チューブとの接続をするために、当該ポンプとこれら吸引側チューブおよび吐出側チューブとの間に設けられる接続部材であって、前記吸引口に接続される吸引側開口と、前記吐出口に接続される吐出側開口とを有し、当該吸引口と当該吸引側開口との接続、および当該吐出口と当該吐出側開口との接続がされた状態で、前記ポンプが取り付けられるポンプ取付部と、前記吸引側チューブが接続される吸引側接続部、および前記吐出側チューブが接続される吐出側接続部を有するチューブ接続部と、前記ポンプ取付部の前記吸引側開口と前記チューブ接続部の前記吸引側接続部との間を液体の流通可能に連通する吸引路部、および前記ポンプ取付部の前記吐出側開口と前記チューブ接続部の前記吐出側接続部との間を液体の流通可能に連通する吐出路部を有する流路形成部とを備えており、前記吸引路部および前記吐出路部のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する液体の圧力によって変形可能な膜部を有しており、前記膜部が前記吸引路部および前記吐出路部の内部を流れる液体の流れの状態を前記膜部の変形によって検知するセンサに対向して配置されるように、前記流路形成部は、前記センサに対して取付可能な形状を有する接続部材と、
前記センサを保持するとともに前記接続部材が装着される装着部を有する注入装置本体と
を備えた液体を注入対象へ注入するための注入装置であって、
前記接続部材は、前記膜部が前記センサに対向した状態で、前記装着部に設けられた被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する、
ことを特徴とする注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブとポンプとの接続をする接続部材、当該接続部材を備えたポンプ用ケーシングおよび注入装置、ならびに当該接続部材を用いた液体確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を患者へ注入する注入装置には、特許文献1に記載されているように使い捨てのポンプユニットを備えた注入装置がある。このような注入装置は、
図25に示されるように、本体102と、使い捨てのポンプユニットであるディスポ部103とを備える。
【0003】
本体102の表面には、ディスポ部103のポンプ本体103aが配置されるディスポ部配置凹部122(以下、凹部122という)と、当該凹部122の上流側および下流側にそれぞれ延びるように形成された一対のチューブ配置溝123とが形成されている。
【0004】
一対のチューブ配置溝123(以下、溝123という)には、それぞれ圧力センサ124が設けられている。各圧力センサ124は、チューブの圧力変動によって動く可動ブロック1241を有する。さらに、凹部122の上流側の溝123には、気泡センサ125が設けられている。
【0005】
ディスポ部103は、圧電素子で駆動するダイヤフラムポンプを備えたポンプ本体103aと、ポンプ本体103aの吸入口103bに接続された吸引側チューブ133と、ポンプ本体103aの吐出口103cに接続された吐出側チューブ134とを備える。
【0006】
吸引側チューブ133は、凹部122の上流側の溝123に嵌合され、さらに、正確な圧力測定のために圧力センサ124の可動ブロック1241に設けられた溝に隙間なく嵌合される。また、吸引側チューブ133は、気泡センサ125の検知部に対向して配置される。同様に、吐出側チューブ134も、凹部122の下流側の溝123に嵌合され、圧力センサ124の可動ブロック1241に設けられた溝に隙間なく嵌合される。
【0007】
吸引側チューブ133の接続口1331には、薬剤が収容された容器に接続される。吐出側チューブ134の接続口1341には、患者側チューブが接続される。
【0008】
上記のように構成された注入装置では、患者への薬液の注入を行う場合には、まず、使い捨てのディスポ部103を上記のようにして本体102に取り付けてから薬液の注入を行う。
【0009】
薬液注入中において、吸引側チューブ133が折れ曲がるなどの理由により、薬液がポンプ本体103aの上流側で流れにくい場合には、上流側の圧力センサ124により吸引側チューブ133の圧力低下を検知するとともに、気泡センサ125が気泡混入の有無を検知する。これらの検知信号を受けた注入装置の制御部は、ポンプの作動停止や警報するように注入装置内の制御をする。一方、患者側に薬液が流れにくい状況が生じて薬液がポンプ本体103aの下流側で流れにくい場合には、下流側の圧力センサ124により吐出側チューブ134の圧力上昇を検知し、その検知信号を受けた制御部はポンプの作動停止や警報のための制御をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されるような注入装置では、吸引側チューブ133および吐出側チューブ134は、本体102の溝123に嵌合されるとともに、これらチューブの拡大および収縮に基づいて正確に圧力測定するために、圧力センサ124の可動ブロック1241に設けられた溝に隙間なく嵌合される必要がある。また、吸引側チューブ133は、気泡センサ125の検知部に対向して配置される必要がある。そのため、これらのチューブ133、134は、圧力センサ124および気泡センサ125に密に接触することが可能なシリコーンゴムなどの軟質な材料などの特定の材料で形成される必要があり、かつ、これらチューブ133、134の管厚や管径が所定の誤差の範囲内で製造されなければならない。その結果、これらのチューブ133、134についての材質および寸法に制限があるという問題がある。
【0012】
また、ポンプユニット103を本体102に取り付けるときにこれらのチューブ133、134を圧力センサ124および気泡センサ125に密に接触した状態で適切に取り付ける必要があるので、チューブの装着が煩わしいという問題がある。
【0013】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、ポンプに接続される吸引側チューブおよび吐出側チューブの材質、管厚や管径などの制限を受けることなく、かつこれらのチューブの装着作業の煩わしさを解消することが可能な接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の接続部材は、液体を圧送するポンプの吸引口と吸引側チューブとの接続、および当該ポンプの吐出口と吐出側チューブとの接続をするために、当該ポンプとこれら吸引側チューブおよび吐出側チューブとの間に設けられる接続部材であって、前記吸引口に接続される吸引側開口と、前記吐出口に接続される吐出側開口とを有し、当該吸引口と当該吸引側開口との接続、および当該吐出口と当該吐出側開口との接続がされた状態で、前記ポンプが取り付けられるポンプ取付部と、前記吸引側チューブが接続される吸引側接続部、および前記吐出側チューブが接続される吐出側接続部を有するチューブ接続部と、前記ポンプ取付部の前記吸引側開口と前記チューブ接続部の前記吸引側接続部との間を液体の流通可能に連通する吸引路部、および前記ポンプ取付部の前記吐出側開口と前記チューブ接続部の前記吐出側接続部との間を液体の流通可能に連通する吐出路部を有する流路形成部とを備えており、前記吸引路部および前記吐出路部のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する液体の圧力によって変形可能な膜部を有しており、前記膜部が前記吸引路部および前記吐出路部の内部を流れる液体の流れの状態を前記膜部の変形によって検知するセンサに対向して配置されるように、前記流路形成部は、前記センサに対して取付可能な形状を有し、前記接続部材は、注入装置本体における前記センサを保持する装着部に装着されるものであり、かつ、前記膜部が前記センサに対向した状態で、前記装着部の被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する、ことを特徴とする。
【0015】
かかる構成により、チューブ接続部の吸引側接続部および吐出側接続部にそれぞれ接続される吸引側チューブおよび吐出側チューブとポンプ取付部に取り付けられるポンプの吸引口および吐出口との間は、それぞれ吸引路部および吐出路部によって液体の流通が可能になっている。吸引路部および吐出路部の少なくとも一部を構成する膜部がそれらの内部を通る液体の圧力により変形したときに、当該膜部に対向するセンサが膜部の変形によって吸引路部および吐出路部の内部を流れる液体の流れの状態を検知することが可能である。これにより、吸引側チューブおよび吐出側チューブの材質、管厚や管径などの制限を受けることなく、液体の流れの状態をセンサを用いて検知することが可能である。そのため、様々な種類のチューブを使用することが可能になる。
【0016】
また、この構成では、吸引路部および吐出路部の膜部がセンサに対して位置決めされればセンサによって液体の流れが検知可能であるので、吸引側チューブおよび吐出側チューブをセンサに対しての相対的な位置関係を考慮することなくチューブ接続部に接続することが可能であり、これらチューブの装着作業の煩わしさが解消される。
しかも、上記の構成では、接続部材は、注入装置本体における前記センサを保持する装着部に装着されるものであり、かつ、膜部がセンサに対向した状態で、前記装着部の被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する。この構成では、接続部材の嵌合部が注入装置本体におけるセンサを保持する装着部の被嵌合部に嵌合するだけで、前記膜部を前記センサに対向した位置に容易に位置決めすることが可能である。
【0017】
前記流路形成部は、前記吸引路部と一体に形成され、前記ポンプの前記吸引口と前記ポンプ取付部の前記吸引側開口との間を液密的にシールする吸引側シール部と、前記吐出路部と一体に形成され、前記ポンプの前記吐出口と前記ポンプ取付部の前記吐出側開口との間を液密的にシールする吐出側シール部とを有しているのが好ましい。
【0018】
かかる構成により、流路形成部が吸引側および吐出側においてそれぞれシール部を有しているので、ポンプの吸引口および吐出口における液体の漏れを防ぐことが可能である。
【0019】
しかも、吸引側および吐出側のそれぞれにおいて膜部とシール部とが一体形成されているので、部品点数の増加を防ぐことが可能である。
【0020】
前記吸引路部の膜部および前記吸引側シール部の組合せ、ならびに前記吐出路部の膜部および前記吐出側シール部の組合せは、それぞれ、1つの管状部材を形成しているのが好ましい。
【0021】
かかる構成により、流路形成部における吸引側および吐出側において膜部およびシール部が1つの管状部材を形成しているので、管状の吸引路部および吐出路部を形成することが可能である。これにより、吸引路部および吐出路部が簡単な構成になり、かつ、吸引路部および吐出路部における円滑な液体の流れを実現することが可能である。
【0022】
前記吸引側接続部および前記吐出側接続部が筒状であり、前記吸引側接続部の周囲を前記吸引路部の膜部が隙間をあけて覆うことにより、当該吸引側接続部と当該吸引路部の膜部との間に吸引側流路が形成され、前記吐出側接続部の周囲を前記吐出路部の膜部が隙間をあけて覆うことにより、当該吐出側接続部と当該吐出路部の膜部との間に吐出側流路が形成されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成により、吸引側チューブに接続される筒状の吸引側接続部とそれを覆う吸引路部の膜部との間に吸引側流路が形成され、かつ、吐出側チューブに接続される筒状の吐出側接続部とそれを覆う吐出路部の膜部との間に吐出側流路が形成されているので、吸引側および吐出側のいずれにおいても膜部における気泡の滞留を防ぐことが可能である。
【0026】
前記接続部材は、前記膜部が前記センサに対向していない状態で前記嵌合部が前記被嵌合部へ嵌合することを規制する規制部を有するのが好ましい。
【0027】
かかる構成により、接続部材を注入装置本体に装着するときに誤った向きに装着することを防止することが可能である。
【0028】
本発明のポンプ用ケーシングは、請求項2記載の接続部材と、前記ポンプ取付部における前記ポンプが挿入される凹部を閉じる蓋部とを備えたポンプ用ケーシングであって、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部は、同じ高さであり、前記凹部には、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部と同じ高さを有する少なくとも1個のポンプ固定部が設けられ、前記蓋部には、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部、ならびに前記ポンプ固定部のそれぞれに向けて突出する突起が設けられていることを特徴とする。
【0029】
かかる構成により、ポンプ取付部の凹部に挿入されるポンプを、吸引側シール部および吐出側シール部、ならびに少なくとも1個のポンプ固定部とそれぞれに対向する蓋部の突起とで挟んだ状態で少なくとも3か所で支持することが可能であり、その結果、ポンプの変形を防ぐことが可能である。
【0030】
前記ポンプ固定部は、前記ポンプ取付部に形成された開口を通して前記凹部の内側に突出しており、当該ポンプ固定部は、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部とともに前記吸引路部および前記吐出路部と一体に形成されているのが好ましい。
【0031】
かかる構成により、部品点数の増加を防ぐことが可能である。
【0032】
前記ポンプは、液体圧送時に動かない不動部分を有しており、前記吸引口および前記吐出口は、前記不動部分に配置され、前記吸引側シール部および前記吐出側シール部、ならびに前記ポンプ固定部は、前記ポンプが前記凹部に挿入された状態で前記不動部分の一方の面に当接可能な位置に配置され、前記蓋部の前記突起は、前記ポンプが前記凹部に挿入された状態で前記不動部分の他方の面に当接可能な位置に配置されているのが好ましい。
【0033】
かかる構成により、ポンプが凹部に挿入された状態では、ポンプの不動部分の一方の面に吸引側シール部および吐出側シール部、ならびにポンプ固定部が当接し、他方の面に蓋部の突起が当接することが可能である。これにより、ポンプの不動部分を吸引側シール部および吐出側シール部、ならびにポンプ固定部とそれぞれに対向する蓋部の突起とで挟んだ状態で少なくとも3か所で支持することが可能であり、その結果、ポンプの変形をより確実に防ぐことが可能である。
【0034】
本発明の注入装置は、液体を圧送するポンプと、吸引側チューブと、吐出側チューブと、前記ポンプの吸引口と前記吸引側チューブとの接続、および当該ポンプの吐出口と前記吐出側チューブとの接続をするために、当該ポンプとこれら吸引側チューブおよび吐出側チューブとの間に設けられる接続部材であって、前記吸引口に接続される吸引側開口と、前記吐出口に接続される吐出側開口とを有し、当該吸引口と当該吸引側開口との接続、および当該吐出口と当該吐出側開口との接続がされた状態で、前記ポンプが取り付けられるポンプ取付部と、前記吸引側チューブが接続される吸引側接続部、および前記吐出側チューブが接続される吐出側接続部を有するチューブ接続部と、前記ポンプ取付部の前記吸引側開口と前記チューブ接続部の前記吸引側接続部との間を液体の流通可能に連通する吸引路部、および前記ポンプ取付部の前記吐出側開口と前記チューブ接続部の前記吐出側接続部との間を液体の流通可能に連通する吐出路部を有する流路形成部とを備えており、前記吸引路部および前記吐出路部のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する液体の圧力によって変形可能な膜部を有しており、前記膜部が前記吸引路部および前記吐出路部の内部を流れる液体の流れの状態を前記膜部の変形によって検知するセンサに対向して配置されるように、前記流路形成部は、前記センサに対して取付可能な形状を有する接続部材と、前記センサを保持するとともに前記接続部材が装着される装着部を有する注入装置本体とを備えた液体を注入対象へ注入するための注入装置であって、前記接続部材は、前記膜部が前記センサに対向した状態で、前記装着部に設けられた被嵌合部に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする。
【0035】
かかる構成により、注入装置本体の装着部にセンサが集中して配置されているので、吸引側チューブおよび吐出側チューブをポンプに接続する接続部材を装着部に装着するだけで当該接続部材に対してセンサを装着することが可能であり、いいかえれば、接続部材に対してセンサを所定の位置に正確に配置することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明の接続部材によれば、ポンプに接続される吸引側チューブおよび吐出側チューブの材質、管厚や管径などの制限を受けることなく、かつこれらのチューブの装着作業の煩わしさを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態に係る注入装置の斜視図である。
【
図18】
図1の注入装置本体のカバーが開いた状態でポンプ装着部を正面から見た図である。
【
図19】
図18のポンプ装着部にポンプユニットが装着された状態を水平断面で示す断面説明図である。
【
図20】
図19のポンプユニットを正面からみたときの吸引路部および吐出路部と気泡センサの一対の圧電素子との位置関係を示す図である。
【
図21】
図19のポンプユニットを側面からみたときの吸引路部と気泡センサの圧電素子との位置関係を示す図である。
【
図24】
図23の一対の圧電素子および膜部付近の拡大断面図である。
【
図25】従来の注入装置の構成を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る注入装置1は、液体を注入対象へ注入するための装置であり、本実施形態では薬液を患者へ注入するための注入装置として携帯可能な構成を有している。注入装置1は、注入装置本体2と、使い捨てのポンプユニット3とを備える。
【0042】
ポンプユニット3は、
図2に示されるように、本発明の実施形態に係る接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を備えた構成を有している。具体的には、ポンプユニット3は、薬液を圧送するポンプとしてのダイヤフラムポンプ4と、当該ダイヤフラムポンプ4を収納するポンプ用ケーシング5と、吸引側チューブ6と、吐出側チューブ7と、ダイヤフラムポンプ4を注入装置本体2の電気回路に電気的に接続する電極8とを備える。
【0043】
なお、薬液を圧送するためのポンプは、上記のダイヤフラムポンプ4以外のポンプであってもよく、その場合も使い捨てできる安価なポンプが好ましい。
【0044】
ダイヤフラムポンプ4は、平坦なケーシング内部にダイヤフラムおよび当該ダイヤフラムを往復振動させる圧電素子を内蔵した脈動型のポンプであり、平坦なケーシングの下面に開口する吸引口4aおよび吐出口4bを有する。
【0045】
ポンプ用ケーシング5は、
図2~8に示されるように、ケーシング本体9と、チューブ接続部10と、蓋部11とを備える。ケーシング本体9およびチューブ接続部10は、本発明の実施形態である接続部材25を構成する。接続部材25は、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aと吸引側チューブ6との接続、および当該ポンプ4の吐出口4bと吐出側チューブ7との接続をするために、当該ポンプ4とこれら吸引側チューブ6および吐出側チューブ7との間に設けられる。
【0046】
チューブ接続部10は、ケーシング本体9の前面9a側に取り付けられている。チューブ接続部10は、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7がそれぞれ接続される構成を有する。具体的には、チューブ接続部10は、吸引側チューブ6に接続される吸引側接続部14と、吐出側チューブ7に接続される吐出側接続部15とを有している。吸引側接続部14および吐出側接続部15は、円筒形状をしており、チューブ接続部10の前面フランジ10aと一体形成されている。吸引側接続部14および吐出側接続部15は、それぞれ、前面側のチューブ接続口14a、15aと、奥端側の開口14b、15bとを有する。吸引側チューブ6および吐出側チューブ7は、それぞれチューブ接続口14a、15aに挿入されて接着剤などで固定される。
【0047】
ケーシング本体9は、
図9~17に示されるように、ポンプ取付部12と、流路形成部13とを備えている。
【0048】
ポンプ取付部12は、その上面においてダイヤフラムポンプ4が取り付けられる凹部12aを有する。ダイヤフラムポンプ4は、凹部12a内部に収納され、蓋部11をケーシング本体9に溶接や接着などを行うことによって凹部12aの内部に固定される。なお、ダイヤフラムポンプ4の固定についての詳細は、後述の(本実施形態の特徴)(7)に記載されている。凹部12aが蓋部11(
図2~6参照)によって閉じられることにより、ダイヤフラムポンプ4は外部の異物や水分などから保護される。凹部12aの底壁において、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aおよび吐出口4b(
図2参照)に対応する位置に吸引側開口12bおよび吐出側開口12cが形成されている。それらの吸引側開口12bおよび吐出側開口12cの内部には、それぞれ、流路形成部13側の後述の吸引側接続口20および吸引側シール部22、ならびに吐出側接続口21および吐出側シール部23が、上記のダイヤフラムポンプ4の吸引口4aおよび吐出口4bに対向するように配置されている。このようなポンプ取付部12の構成により、ダイヤフラム
ポンプ4の吸引口4aと吸引側開口12bとの接続、およびダイヤフラム
ポンプ4の吐出口4bと吐出側開口12cとの接続がされた状態で、ダイヤフラムポンプ4は、ポンプ取付部12の凹部12aに取り付けられる。
【0049】
ポンプ取付部12は、硬質の合成樹脂など変形しにくい材料で製造されているのが好ましい。その場合、ポンプユニット3を注入装置本体2に装着した時に流路形成部13(とくに吸引路部16および吐出路部17の膜部16a、17a)が注入装置本体2の後述の気泡センサ37および閉塞センサ38(
図18~24参照)に対向する位置に正確に位置決めすることが可能になる。
【0050】
ポンプ取付部12の形状は、注入装置本体2の後述のポンプ装着部33のうち凸部34よりも上方の空間33b(
図18~19参照)に挿入可能な形状を有している。また、ポンプ取付部12の奥側端部には、後述の規制部12dが設けられている。
【0051】
流路形成部13は、吸引路部16および吐出路部17を有する。吸引路部16は、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aとチューブ接続部10の吸引側接続部14との間を薬液の流通可能に連通する構成を有する。吐出路部17は、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bとチューブ接続部10の吐出側接続部15との間を薬液の流通可能に連通する構成を有する。
【0052】
具体的には、本実施形態の吸引路部16および吐出路部17は、それぞれ矩形筒状をしており、前面側の開口16d、17dを有しており、後面側は閉じている。
【0053】
吸引路部16および吐出路部17のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する薬液の圧力によって変形可能な膜部16a、17aを有している。本実施形態では、吸引路部16および吐出路部17は、シリコーンゴムなどの変形可能な軟質の材料で一体成形により製造されている。したがって、シリコーンゴム製の矩形筒状の吸引路部16および吐出路部17は、両側の側壁だけでなく全周の壁が変形可能な膜部16a、17aになっている。なお、吸引路部16および吐出路部17は、両側の側壁だけ変形可能な膜部16a、17aにしてもよい。
【0054】
膜部16a、17aが吸引路部16および吐出路部17の内部を流れる薬液の流れの状態を膜部16a、17aの変形によって検知するセンサ、本実施形態では気泡センサ37および閉塞センサ38(
図18~24参照)、に対向して配置されるように、流路形成部13は、これら気泡センサ37および閉塞センサ38に対向して取付可能な形状を有する。具体的には、吸引路部16および吐出路部17の側壁を構成する膜部16a、17aは、互いに離間して外部に露出している。
図18~24に示されるように、吸引路部16および吐出路部17が、それぞれ注入装置本体2のポンプ装着部33の吸引路部挿入空間35および吐出路部挿入空間36に挿入された状態では、吸引路部16の膜部16aは、気泡センサ37の一対の圧電素子37a、37bの間に配置される(
図24参照)。また、吐出路部17の側壁は、閉塞センサ38に当接しており(
図19参照)、吐出路部17の側壁は、
図7~8に示されるように膜部17aで構成されている。
【0055】
流路形成部13は、
図8~9および
図14~17に示されるように、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aと吸引路部16とを連通する吸引側接続口20と、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bと吐出路部17とを連通する吐出側接続口21とを有する。さらに、吸引側接続口20の周囲には、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aとポンプ取付部12の吸引側開口12bとの間を液密的にシールする吸引側シール部22が設けられている。また、吐出側接続口21の周囲には、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bとポンプ取付部12の吐出側開口12cとの間を液密的にシールする吐出側シール部23が設けられている。上記のように、吸引側接続口20および吸引側シール部22は、ポンプ取付部12の吸引側開口12bを通して、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aに接続される。また、吐出側接続口21および吐出側シール部23は、ポンプ取付部12の吐出側開口12cを通して、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bに接続される。
【0056】
吸引路部16の膜部16aおよび吸引側シール部22の組合せ、ならびに吐出路部17の膜部17aおよび吐出側シール部23の組合せは、それぞれ、可撓性を有する材料、例えば上記のシリコーンゴムなどの材料で一体成形されている。
【0057】
さらに、吸引路部16の膜部16aおよび吸引側シール部22の組合せ、ならびに吐出路部17の膜部17aおよび吐出側シール部23の組合せは、それぞれ、1つの管状部材(本実施形態では、矩形の筒状体)を形成している。
【0058】
上記のチューブ接続部10の円筒状の吸引側接続部14(
図2~7参照)は、矩形筒状の吸引路部16の前面側の開口16dから吸引路部16内部に挿入され、上下両側から支持部16c(
図5~6、
図10~14参照)で支持される。このように配置されることにより、吸引側接続部14の周囲を吸引路部16の膜部16aが隙間をあけて覆うことにより、当該吸引側接続部14と当該吸引路部16の膜部16aとの間に吸引側流路18(
図7~8および
図24参照)が形成される。
【0059】
吸引側流路18は、吸引路部16の連通路16bを介して吸引側接続部14の開口14bに連通している(
図7参照)。また、吸引側流路18は、上記の吸引側接続口20を介してダイヤフラムポンプ4の吸引口4aに接続されている。
【0060】
上記の吸引側接続部14と同様に、円筒状の吐出側接続部15は、矩形形状の吐出路部17の前面側の開口17dから吐出路部17内部に挿入され、上下両側から支持部17c(
図10および
図13~14参照)で支持される。このように配置されることにより、吐出側接続部15の周囲を吐出路部17の膜部17aが隙間をあけて覆うことにより、当該吐出側接続部15と当該吐出路部17の膜部17aとの間に吐出側流路19(
図7~8参照)が形成される。
【0061】
吐出側流路19は、吐出路部17の連通路17bを介して吐出側接続部15の開口15bに連通している(
図7参照)。また、吐出側流路19は、上記の吐出側接続口21を介してダイヤフラムポンプ4の吐出口4bに接続されている。
【0062】
したがって、本実施形態のポンプユニット3では、吸引側チューブ6から吸引された薬液は、吸引側接続部14の開口14b、吸引路部16の連通路16b、吸引側流路18、吸引側接続口20を順に流れて、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aから当該ポンプ4の内部に導入される。
【0063】
また、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bから吐出された薬液は、吐出側接続口21、吐出側流路19、吐出路部17の連通路17b、吐出側接続部15の開口15bを順に流れて、吐出側チューブ7から吐出される。
【0064】
流路形成部13は、
図7~8に示されるように、吸引路部16と吐出路部17との間において、ポンプ用ケーシング5が装着される注入装置本体2に形成された被嵌合部である凸部34(
図18~20および
図22参照)に嵌合する嵌合部として間隙13aを有する。いいかえれば、流路形成部13を含むケーシング本体9で形成される接続部材25(
図2参照)は、膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向した状態で、これらのセンサ37、38を保持する注入装置本体2の凸部34(被嵌合部)に嵌合する間隙13a(嵌合部)を有する。
【0065】
また、ポンプ取付部12は、流路形成部13の膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向していない状態で上記の間隙13a(嵌合部)が上記の凸部34(被嵌合部)へ嵌合することを規制する規制部12dを有する。規制部12dは、ポンプ取付部12の奥側端部において、上記の間隙13aの上方を塞ぐ形状をしている。規制部12dは、ポンプ用ケーシング5が天地逆で注入装置本体2のポンプ装着部33に装着されようとしたときには、凸部34に当たることにより、流路形成部13の膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向していない状態での上記の間隙13aが上記の凸部34へ嵌合することを規制する。
【0066】
なお、ポンプ用ケーシング5が正しい向きにポンプ装着部33に装着されるときには、ポンプ取付部12の規制部12dは、凸部34の上方の空間33bに挿入されるので、膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向した状態での上記の間隙13aが上記の凸部34へ嵌合することが可能である。
【0067】
注入装置本体2は、
図18~19に示されるように、本体ケース31と、カバー32と、ポンプ装着部33と、凸部34と、気泡センサ37と、閉塞センサ38とを有する。
【0068】
ポンプ装着部33は、本体ケース31の内部に形成され、ポンプユニット3のポンプ用ケーシング5が装着される空間部である。ポンプ装着部33の入口は、カバー32によって開閉自在に閉じられる。ポンプ装着部33の底壁33a(
図18参照)には、凸部34(被嵌合部)が底壁33aから上方に突出するように配置されている。ポンプ装着部33における凸部34の両側には、上記の吸引路部挿入空間35および吐出路部挿入空間36が形成され、これらの空間35、36には、吸引路部16および吐出路部17が離間して個別に収容される。
【0069】
気泡センサ37は、
図18~24に示されるように、互いに離間して配置された一対の圧電素子37a、37bと、リード線37cと、基板37dとを有する。気泡センサ37の一対の圧電素子37a、37bは、ポンプ装着部33に配置されている。具体的には、一方の圧電素子37bは、凸部34の内部に収容されている。他方の圧電素子37aは、吸引路部16が挿入される吸引路部挿入空間35を介して凸部34に対向している位置に配置されている。
【0070】
一対の圧電素子37a、37bは、それぞれ基板37dおよびリード線37cを介して注入装置本体2の電気回路に電気的に接続されている。一対の圧電素子37a、37bは、一方が超音波からなる入力波を発信する発信部、他方が吸引路部16を通過した超音波を受信する受信部として機能する。一対の圧電素子37a、37b間で伝えられる超音波は、これらの素子間の空気密度によって強度等が変動する。したがって、薬液が流れなくなった吸引路部16の膜部16aが凹むことにより、膜部16aとこれら圧電素子37a、37bとの間に空隙が生じたときには、一対の圧電素子37a、37bを有する気泡センサ37は、伝搬される超音波の強度等の変化によって、吸引路部16に薬液が流れなくなっていることを検知することが可能である。
【0071】
閉塞センサ38は、
図18~19に示されるように、吐出路部17が挿入される吐出路部挿入空間36を介して凸部34に対向している位置に配置されている。閉塞センサ38は、吐出路部17の側壁を構成する膜部17a(
図7~8参照)に当接することが可能な位置に配置されている。
【0072】
すなわち、上記のポンプ装着部33は、気泡センサ37および閉塞センサ38を保持するとともに接続部材25(ケーシング本体9およびチューブ接続部10を組み合せたもの)が装着される本発明の「装着部」として機能する。
【0073】
以上のように構成された注入装置1では、本実施形態の接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を用いることにより、以下のように薬液の存在を確認する薬液確認方法を実行することが可能である。
【0074】
まず、薬液を患者へ注入する前の準備工程として、ポンプ用ケーシング5のポンプ取付部12にダイヤフラムポンプ4を取り付け、かつ、チューブ接続部10の吸引側接続部14および吐出側接続部15にそれぞれに吸引側チューブ6および吐出側チューブ7を取り付けることにより、ポンプユニット3を組み立てる。ついで、組み立てられたポンプユニット3を注入装置本体2へ取り付けることにより、接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を、空気の存在を検出するための気泡センサ37が吸引路部16の膜部16aに対向する位置になるように配置して準備する。具体的には、気泡センサ37の一対の圧電素子37a、37bと膜部16aが対向するように、吸引路部16をポンプ装着部33の吸引路部挿入空間35に挿入する。それとともに、閉塞センサ38と吐出路部17の膜部17aとが当接するように、吐出路部17をポンプ装着部33の吐出路部挿入空間36に挿入する。
【0075】
ついで、吸引側チューブ6に薬液容器を接続し、吐出側チューブ7に患者側チューブを接続した後、注入装置1を用いて、患者へ薬液の注入を行う。このとき、注入装置1では、ダイヤフラムポンプ4がポンプ用ケーシング5の接続部材25を介して吸引側チューブ6から吐出側チューブ7へ薬液を圧送する。その状態で、吸引側チューブ6が折れ曲がるなどの理由によって吸引路部16の内部に薬液が無くなったときに、膜部16aが凹むことによって生じる膜部16aと気泡センサ37との間隙の空気を気泡センサ37で検出することによって、薬液が無いことを検知する。この検知信号に基づいて、注入装置本体2の内部の制御部は、ダイヤフラムポンプ4の作動を停止したり、警報を発する制御を行う。
【0076】
また、患者側で薬液が流れにくい状況が発生して患者側ライン(すなわち、吐出路部17の下流側の経路)で閉塞が生じると、吐出路部17の膜部17aが膨張し、閉塞センサ38は膜部17aの圧力が上昇したことを検知する。この検知信号に基づいて、注入装置本体2の内部の制御部は、ダイヤフラムポンプ4の作動を停止したり、警報を発する制御を行う。
【0077】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の接続部材25は、ポンプ用ケーシング5に含まれている。この接続部材25は、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7がそれぞれ接続されるチューブ接続部10とは別に、流路形成部13を備えている。流路形成部13は、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aと吸引側チューブ6が接続されるチューブ接続部10の吸引側接続部14との間を薬液の流通可能に連通する吸引路部16、およびダイヤフラムポンプ4の吐出口4bと吐出側チューブ7が接続されるチューブ接続部10の吐出側接続部15との間を薬液の流通可能に連通する吐出路部17を有している。吸引路部16および吐出路部17のそれぞれにおける少なくとも一部は、それらの内部を流通する薬液の圧力によって変形可能な膜部16a、17aを有している。これらの膜部16a、17aが吸引路部16および吐出路部17の内部を流れる薬液の流れの状態を膜部16a、17aの変形によって検知する気泡センサ37および閉塞センサ38に対向して配置されるように、流路形成部13は、気泡センサ37および閉塞センサ38に対して取付可能な形状を有する。
【0078】
以上の構成では、チューブ接続部10の吸引側接続部14および吐出側接続部15にそれぞれ接続される吸引側チューブ6および吐出側チューブ7とポンプ取付部12に取り付けられるダイヤフラムポンプ4の吸引口4aおよび吐出口4bとの間は、それぞれ吸引路部16および吐出路部17によって薬液の流通が可能になっている。吸引路部16および吐出路部17の少なくとも一部を構成する膜部16a、17aがそれらの内部を通る薬液の圧力により変形したときに、当該膜部16a、17aに対向する気泡センサ37および閉塞センサ38が膜部16a、17aの変形によって吸引路部16および吐出路部17の内部を流れる薬液の流れの状態を検知することが可能である。これにより、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7の材質、管厚や管径などの制限を受けることなく、薬液の流れの状態を気泡センサ37および閉塞センサ38を用いて検知することが可能である。そのため、様々な種類のチューブを使用することが可能になる。したがって、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7として、変形しにくい材料または管厚のチューブを用いることが可能になり、チューブの折れ曲がりを抑制することが可能になる。
【0079】
また、この構成では、吸引路部16および吐出路部17の膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対して位置決めされれば気泡センサ37および閉塞センサ38によって薬液の流れの状態が検知可能であるので、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7を気泡センサ37および閉塞センサ38に対しての相対的な位置関係を考慮することなくチューブ接続部10に接続することが可能であり、これらチューブの装着作業の煩わしさが解消される。
【0080】
(2)
また、本実施形態の接続部材25では、流路形成部13は、吸引路部16と一体に形成され、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aとポンプ取付部12の吸引側開口12bとの間を液密的にシールする吸引側シール部22と、吐出路部17と一体に形成され、ダイヤフラムポンプ4の吐出口4bとポンプ取付部12の吐出側開口12cとの間を液密的にシールする吐出側シール部23とを有している。
【0081】
このような構成により、流路形成部13が吸引側および吐出側においてそれぞれシール部22、23を有しているので、ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aおよび吐出口4bにおける薬液の漏れを防ぐことが可能である。
【0082】
しかも、吸引側および吐出側のそれぞれにおいて膜部16a、17aとシール部22、23とが可撓性を有する材料(例えばシリコーンゴムなど)で一体形成されているので、部品点数の増加を防ぐことが可能である。
【0083】
(3)
さらに、本実施形態の接続部材25では、吸引路部16の膜部16aおよび吸引側シール部22の組合せ、ならびに吐出路部17の膜部17aおよび吐出側シール部23の組合せは、それぞれ、1つの管状部材を形成している。そのため、管状の吸引路部16および吐出路部17を形成することが可能である。これにより、吸引路部16および吐出路部17が簡単な構成になり、かつ、吸引路部16および吐出路部17における円滑な薬液の流れを実現することが可能である。
【0084】
(4)
さらに、本実施形態の接続部材25では、チューブ接続部10は、吸引側チューブ6に接続される筒状の吸引側接続部14と、吐出側チューブ7に接続される筒状の吐出側接続部15とを有している。吸引側接続部14とそれを覆う吸引路部16の膜部16aとの間に吸引側流路18が形成されている。吐出側接続部15とそれを覆う吐出路部17の膜部17aとの間に吐出側流路19が形成されている。そのため、吸引側および吐出側のいずれにおいても膜部16a、17aにおける気泡の滞留を防ぐことが可能である。
【0085】
(5)
上記実施形態の接続部材25は、膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向した状態で、これらセンサ37、38を保持する注入装置本体2の凸部34(被嵌合部)に嵌合する間隙13a(嵌合部)を有する。
【0086】
かかる構成により、接続部材25の間隙13a(嵌合部)が注入装置本体2の凸部34(被嵌合部)に嵌合するだけで、膜部16a、17aを上記のセンサ37、38に対向した位置に容易に位置決めすることが可能である。
【0087】
(6)
さらに、本実施形態の接続部材25は、膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向していない状態で間隙13a(嵌合部)が凸部34(被嵌合部)へ嵌合することを規制する規制部12dを有する。そのため、ポンプ用ケーシング5(とくにそれに含まれる接続部材25)を注入装置本体2に装着するときに誤った向きに装着することを防止することが可能である。具体的には、ポンプ用ケーシング5を天地逆にポンプ装着部33(
図18~19参照)に装着しようとしても、凸部34がケーシング本体9のポンプ取付部12の奥側端部に設けられた規制部12d(
図8~9参照)に干渉して当該ケーシング5の誤装着を確実に防止することができる。
【0088】
(7)
本実施形態のポンプ用ケーシング5は、
図2~3、
図9、および
図15~17に示されるように、上記の接続部材25と、ポンプ取付部12におけるダイヤフラムポンプ4が挿入される矩形形状の凹部12aを閉じる蓋部11とを備えている。なお、凹部12aは、本発明では矩形形状に限定されるものではなく、矩形形状以外の形状でもよい。
【0089】
吸引側シール部22および吐出側シール部23は、同じ高さであり、凹部12aの一方の対角線上に配置されている。なお、吸引側シール部22および吐出側シール部23は、本発明では凹部12aの一方の対角線上に配置されていることに限定されるものではなく、他の配置でもよい。
【0090】
凹部12aの他方の対角線上には、吸引側シール部22および吐出側シール部23と同じ高さを有する一対のポンプ固定部26、27が設けられている。なお、本発明では少なくとも1個のポンプ固定部が設けられていればよく、さらに凹部12aの他方の対角線上に配置されることに限定されない。
【0091】
これらの吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに一対のポンプ固定部26、27は、
図9および
図15に示されるように、正方形をなすように配置されている。
【0092】
蓋部11には、
図3に示されるように、吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに一対のポンプ固定部26、27のそれぞれに向けて突出する突起11aが設けられている。すなわち、突起11aは、上記の各シール部22、23ならびに一対のポンプ固定部26、27に対応する位置において、蓋部11の下面から下方に突出している。
【0093】
ポンプ用ケーシング5が上記の構成を有することにより、ポンプ取付部12の凹部12aに挿入されるダイヤフラムポンプ4を、吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに少なくとも1個(本実施形態では一対)のポンプ固定部26、27とそれぞれに対向する蓋部11の突起11aとで挟んだ状態で少なくとも3か所で支持することが可能である(本実施形態では、ダイヤフラムポンプ4を上下方向から4点で支持することが可能である)。その結果、ダイヤフラムポンプ4の変形を防ぐことが可能である。
【0094】
(8)
本実施形態のポンプ用ケーシング5では、
図9および
図15~17に示されるように、ポンプ固定部26、27は、ポンプ取付部12に形成された開口12e、12fを通して凹部12aの内側に突出している。これらのポンプ固定部26、27は、吸引側シール部22および吐出側シール部23とともに吸引路部16および吐出路部17と(シリコーンゴムなどによって)一体に形成されている。かかる構成により、部品点数の増加を防ぐことが可能である。
【0095】
(9)
本実施形態では、
図2に示されるように、ダイヤフラムポンプ4は、液体圧送時に動かない不動部分4c(具体的には、フレーム部分)と、動く部分4d(具体的には、上下に膨張および収縮をするダイヤフラム部分)とを有している。ダイヤフラムポンプ4の吸引口4aおよび吐出口4bは、不動部分4cに配置されている。一方、ポンプ用ケーシング5では、
図9および
図15に示されるように、吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびにポンプ固定部26、27は、ダイヤフラムポンプ4がポンプ取付部12の凹部12aに挿入された状態で不動部分4cの一方の面(本実施形態では下面)に当接可能な位置に配置されている。さらに、蓋部11の突起11aは、
図3に示されるように、ダイヤフラムポンプ4が前記凹部12aに挿入された状態で不動部分4cの他方の面(本実施形態では上面)に当接可能な位置に配置されている。
【0096】
かかる構成により、ダイヤフラムポンプ4が凹部12aに挿入された状態では、ダイヤフラムポンプ4の不動部分4cの一方の面(下面)に吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに一対のポンプ固定部26、27が当接し、他方の面(上面)に蓋部11の突起11aが当接することが可能である。これにより、ダイヤフラムポンプ4の不動部分4cを吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに一対のポンプ固定部26、27とそれぞれに対向する蓋部の突起とで挟んだ状態で少なくとも3か所(本実施形態では4か所)で支持することが可能である。その結果、ダイヤフラムポンプ4の変形をより確実に防ぐことが可能である。
【0097】
とくに本実施形態では、吸引側シール部22および吐出側シール部23、ならびに一対のポンプ固定部26、27は、正方形をなすように2つの対角線上に配置されているので、正方形形状のダイヤフラムポンプ4の不動部分4cの四角を安定して支持することが可能である。
【0098】
(10)
本実施形態の注入装置1は、薬液を圧送するダイヤフラムポンプ4と、吸引側チューブ6と、吐出側チューブ7と、上記実施形態の接続部材25を含むポンプ用ケーシング5と、ポンプ用ケーシング5が装着されるポンプ装着部33(装着部)を有する注入装置本体2とを備えている。接続部材25は、膜部16a、17aが気泡センサ37および閉塞センサ38に対向した状態で、これらセンサ37、38を保持する注入装置本体2の凸部34(被嵌合部)に嵌合する間隙13a(嵌合部)を有する。
【0099】
このような注入装置1の構成では、注入装置本体2のポンプ装着部33(装着部)に気泡センサ37および閉塞センサ38が集中して配置されているので、吸引側チューブ6および吐出側チューブ7をダイヤフラムポンプ4に接続する接続部材25を含むポンプ用ケーシング5をポンプ装着部33に装着するだけで当該接続部材25に対して気泡センサ37および閉塞センサ38を装着することが可能であり、いいかえれば、接続部材25に対して気泡センサ37および閉塞センサ38を所定の位置に正確に配置することが可能である。
【0100】
なお、上記の実施形態では、吸引路部16および吐出路部17の内部を流れる薬液(液体)の流れの状態を膜部16a、17aの変形によって検知するセンサの一例として、気泡センサ37および閉塞センサ38を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、吸引路部16および吐出路部17の膜部16a、17aの変形によって液体の流れの状態を検知するセンサであれば他の種類のセンサであってもよい。
【0101】
(11)
本実施形態の接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を用いた薬液確認方法では、2つの工程(a)、(b)すなわち、
(a)ポンプ取付部12にダイヤフラムポンプ4を取り付け、かつ、チューブ接続部10の吸引側接続部14および吐出側接続部15にそれぞれに吸引側チューブ6および吐出側チューブ7を取り付けた状態で、接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を空気の存在を検出するための気泡センサ37が吸引路部16の膜部16aに対向する位置になるように配置して準備する工程と、
(b)ダイヤフラムポンプ4が接続部材25を含むポンプ用ケーシング5を介して吸引側チューブ6から吐出側チューブ7へ薬液を圧送した状態で、吸引路部16の内部に薬液が無くなったときに、膜部16aが凹むことによって生じる膜部16aと気泡センサ37との間隙の空気を気泡センサ37で検出することによって、薬液が無いことを検知する工程とを有する。
【0102】
このような液体確認方法では、空気の存在を検出するための気泡センサ37などのセンサを用いて膜部16aと気泡センサ37との間隙の空気を検出することによって吸引路部16の内部を流れる薬液が無くなったことを簡易にかつ正確に検知することが可能であり、圧力センサや流量センサなどの高価なセンサが不要になる。
【符号の説明】
【0103】
1 注入装置
2 注入装置本体
3 ポンプユニット
4 ダイヤフラムポンプ(ポンプ)
4c 不動部分
5 ポンプ用ケーシング
6 吸引側チューブ
7 吐出側チューブ
10 チューブ接続部
11 蓋部
11a 突起
12 ポンプ取付部
12a 凹部
13 流路形成部
13a 間隙(嵌合部)
14 吸引側接続部
15 吐出側接続部
16 吸引路部
16a 膜部
17 吐出路部
17a 膜部
18 吸引側流路
19 吐出側流路
22 吸引側シール部
23 吐出側シール部
25 接続部材
26、27 ポンプ固定部
33 ポンプ装着部(装着部)
34 凸部
37 気泡センサ(センサ)
38 閉塞センサ(センサ)