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特許7178841限定的位置付けグリッドを用いるターゲットの照射方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】限定的位置付けグリッドを用いるターゲットの照射方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221118BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
H01L21/30 541W
G03F7/20 504
G03F7/20 506
G03F7/20 521
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018172402
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2019071411
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】17191553.1
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】エルマー プラツグマー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュペングラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ ナエタル
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029096(JP,A)
【文献】特開2015-162513(JP,A)
【文献】特開2016-178300(JP,A)
【文献】特表2017-519356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 1/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子からなるエネルギー放射のビームをターゲットに照射する方法であって、前記ターゲットは前記ビームによる露光が行われるべき露光領域(r1)を含み、該方法は、以下のステップ:
- 前記露光領域内の固定ピクセル位置(px、px0、px1)に位置付けられる複数のパターンピクセルを規定すること、
- 前記露光領域(r1)を、所定の幅(y0)を有する複数のストライプ(s1、s2、s3)に分割すること、
- 各ストライプに対して前記ターゲット上に複数の露光位置(px0、px1)を規定すること、但し、各露光位置は複数の露光スポットの1つの位置を表し、該露光スポットは均一なサイズ及び形状を有し、各露光スポットは少なくとも1つのパターンピクセルをカバーすること、
- 前記放射に対し透過性の複数のアパーチャ(26)を有するパターン規定装置(4)を提供すること、
- 前記パターン規定装置を照明ワイドビーム(1b)によって照明すること、該照明ワイドビーム(1b)は前記アパーチャを通って前記パターン規定装置を横断し、それによって、対応する複数のビームレットからなるパターン化ビーム(pb)が形成されること、
- 前記ターゲット(16)の位置において前記パターン化ビームからパターン画像(pm)を形成すること、該パターン画像は前記複数のアパーチャの少なくとも一部の画像(b1)を含み、該画像は所望のパターンに従って前記露光スポットを順次露光すること、
- 前記ターゲット(16)と前記パターン規定装置(4)との間の相対移動を生成することにより、前記ストライプに対応する経路に従って前記ターゲット上における前記パターン画像の移動を生成すること、移動方向(sd)を横切る方向における前記パターン画像(pm)の幅は少なくともそれぞれのストライプの幅(y0)であること、
を含み、
複数の露光位置(px0、px1)を規定するステップは、前記ターゲット上のそれぞれの固定位置において規定される互いに分離された複数のクラスタ領域(L4、L9)について行われること、及び、
- 各露光位置が前記クラスタ領域(L4、L9)のうちの1つの内部にあるように前記露光位置の位置を規定すること、但し、前記クラスタ領域の各々は各露光位置(px0、px1)が同じクラスタ領域の少なくとも1つの露光位置に対して所与の隣接距離(ub;ex、ey)以内にあるように配置された複数の露光位置を含み、前記隣接距離は前記ターゲット上に生成されるアパーチャの画像のサイズよりも小さいこと、
を含み、
前記クラスタ領域は露光位置が存在しない空間によって互いに分離され、前記空間は前記露光領域内の少なくとも1つの方向に沿って前記隣接距離(ub;ex、ey)の少なくとも2倍の幅(ux、uy;vx、vy)を有すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
複数のストライプ(s1、s2 ... sn、s91、s92)が描画されること、但し、各ストライプ(s91、s92)はそれぞれのストライプ内の前記クラスタ領域に対する露光位置のグリッド位置のサブセット(G1、G2、G21、G22)に関連付けられること、異なるストライプのサブセットは、互いに異なり、及び、一緒に合わせられると、前記クラスタ領域内の前記露光位置(px0、px1)を完全にカバーするよう結合すること、
を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記クラスタ領域のそれぞれは、グリッド位置のそれぞれのサブセットに関連付けられた少なくとも2セットの露光位置を含むこと、及び、該少なくとも2セットの露光位置の各々は最小の数の露光位置を含むこと、但し、前記最小の数はすべてのクラスタ領域に対して有効であり、前記最小の数は4、5又はそれより大きいこと、
を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記少なくとも2セットの露光位置の各々について、同じサブセットのグリッド位置に関連付けられている異なるクラスタ領域の露光位置の空間的配置は、夫々のクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、同じであること、
を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスタ領域の各々は複数の数の露光位置を含むこと、但し、該複数の露光位置は全てのクラスタ領域に共通の最小の数以上であり、該最小の数は4、5又はそれ以上であること、
を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
各クラスタ領域のサイズは、前記移動方向に平行な方向及びその方向に対する横方向の両方に関し、前記ターゲット上に結像されるアパーチャの画像(b1)のサイズよりも少なくとも3/2の倍率だけより大きいこと、
を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスタ領域内の位置の配置は1つのクラスタ領域から次のクラスタ領域まで繰り返されること、
を特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記ターゲット上に同時に露光される露光位置の当該位置は、前記パターン規定装置(4)における前記アパーチャの規則的な2次元配置の投影画像に直接対応する2次元グリッドに従って配置されること、
を特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
クラスタ領域の各々について、それぞれのクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、露光位置の空間的配置は異なるクラスタ領域について同じであること、
を特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記クラスタ領域の中心位置のセットは、前記ターゲット上のアパーチャ画像の位置によって表されるいくつかの位置付けグリッドの結合体(union)であること、
を特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記クラスタ領域は所定の位置に位置付けられること、但し、該所定の位置は前記露光領域内の前記ターゲット上に規則的配置を形成し、該規則的配置は前記2次元グリッドのスーパーセットに対応すること、
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法において、
各ストライプ(s91、s92)は、前記主方向(sd)に沿って配置された少なくとも2列のクラスタ領域を含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
1つのクラスタ領域内で、前記露光位置(120~124、131~134)は規則的なグリッドに沿って配置されること、
を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
1つのクラスタ領域内で、前記露光位置(141~144)は前記移動方向(sd)に関し互いに対し斜めの角度で配置されていること、
を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
1つのクラスタ領域内で、前記露光位置のセットは規定の空間的配置で配置された一群の露光位置を含むこと、但し、該規定の空間的配置は該一群の露光位置の各々が露光されたとき、所定の形状(125、135、145)を生成するよう構成されること、
を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスタ領域は複数のラインに沿って配置されること、但し、該複数のラインは均一なオフセット(P)をなして位置付けられること、
を特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記複数のラインの前記ラインは、前記ターゲット上に予め形成されるラインパターンのライン(L)に対応すること、及び、前記クラスタ領域は規則的な間隔をなして前記ラインに沿って配置されること、
を特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、
前記隣接距離(ub、ex、ey)は、アパーチャの画像の公称サイズ(b)以下であること、
を特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、
前記露光位置は露光されるべきパターンピクセル(px)の実際パターン(ps)に応じたそれぞれの露光線量で選択的に露光されること、但し、該露光位置(px0、px1)の位置は該実際パターンに依存しないこと、
を特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、
それぞれのパターンピクセルを前記ターゲット上の露光位置に露光するために、一定のタイミングの露光ステップ(T1)が用いられること、及び、該露光ステップ(T1)の間、前記パターン画像の位置は、少なくとも主方向に沿った前記相対移動に関し前記ターゲットと共に移動され、露光ステップ(T1)と露光ステップ(T1)の間に、前記パターン画像の位置が前記ターゲットに対して変更され、前記パターン規定装置の位置に対する前記パターン画像の位置の移動を全般的に補償すること、前記露光ステップの持続時間は、前記主方向に沿った均一な前進距離(L)に対応すること、但し、該前進距離は、前記主方向に沿った同じ部分グリッド内のアパーチャ画像のサイズよりも大きいこと、
を特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、
前記クラスタ領域は、前記移動方向に平行な方向及びその方向に対する横方向の両方に沿って、露光位置が存在しない空間によって互いに分離されていること、
を特徴とする方法。
【請求項22】
請求項6に記載の方法において、
前記倍率は、前記ターゲット上に結像されるアパーチャの画像(b1)のサイズの少なくとも2倍であること、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月18日に出願された欧州特許出願第17191553.1号についてパリ条約上の優先権の利益を主張する。該欧州特許出願の全内容は引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
本発明は、荷電粒子、特に電子またはイオンで形成されるビームを用いるリソグラフィ処理方法の分野に関する。より具体的には、本発明は、荷電粒子からなるエネルギー放射のビームでターゲットを照射する方法に関し、該ターゲットは上記ビームによる露光が行われるべき露光領域を含み、該方法は、以下のステップ:
- 前記露光領域内の固定ピクセル位置に位置付けられる複数のパターンピクセルを規定すること、
- 前記露光領域を所定の幅を有する複数のストライプに分割すること(かくして、これらのストライプは、一緒に合わせられて、該露光領域をカバーする)、
- 各ストライプについて、ターゲット上に複数の露光位置を規定すること、但し、各露光位置は複数の露光スポットの1つの位置を表し、露光スポットは均一なサイズ及び形状を有すること;各露光スポットは少なくとも1つのパターンピクセルを、好ましくは(例えば、o×oピクセルの矩形内の)直接的に隣接する複数のパターンピクセルをカバーすること、
- 前記放射に対し透過性の複数のアパーチャを有するパターン規定装置を提供すること、
- 前記パターン規定装置を照明ワイドビームによって照明すること、該照明ワイドビームは前記アパーチャを通ってパターン規定装置を横断し、それによって、対応する複数のビームレットからなるパターン化ビームが形成されること、
- ターゲットの位置において前記パターン化ビームからパターン画像を形成すること、該パターン画像は複数のアパーチャの少なくとも一部の画像を含み、これらの画像は所望のパターンに従って露光スポットを順次露光すること、
- 前記ターゲットとパターン規定装置との間の相対移動を生成することにより、前記ストライプに対応する経路に従ってターゲット上に前記パターン画像の移動を生成すること、
移動方向を横切る方向における前記パターン画像の幅は少なくともそれぞれのストライプの幅であること
を含む。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの方法及びそのような方法を使用する荷電粒子マルチビーム処理装置は従来技術において既知である。とりわけ、本出願人は、荷電粒子光学系、パターン規定(PD)装置及び該装置で使用されるマルチビーム描画方法に関し本出願人名義の幾つかの特許に記載されているような荷電粒子マルチビーム装置を実現している。例えば、193nm液浸リソグラフィ用のフォトマスク、EUVリソグラフィ用のマスク及びインプリントリソグラフィ用のテンプレート(1×masks)の最先端の複合体を実現可能にする50keV電子マルチビーム描画機が実用化されており、これはeMET(electron Mask Exposure Tool)又はMBMW(multi-beam mask writer)と称され、6”(6インチ)のマスクブランク基板の露光のためのものである。更に、PML2(Projection Mask-Less Lithography)とも称されるマルチビームシステムは、シリコンウエハ基板に電子ビーム直接描画(EBDW)を適用するために実現されたものである。上記のタイプのマルチビーム処理装置は、以下においては、マルチビーム描画機、又は略してMBW、と称する。
【0003】
MBWの典型的な具体例として、本出願人は、基板における81.92μm×81.92μmの寸法のビームアレイフィールド内に512×512(=262,144)本のプログラマブルビームレットを含む20nmのトータルビームサイズを実現する50keV電子描画ツールを実現している。以下において「MBMWツール」と称される、この描画ツールに関する詳しい情報は、本出願人による米国特許第9,653,263B2号に見出すことが可能であり、その内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。このシステムでは、基板は、典型的には、電子ビーム感応性レジストで被覆された(6”×6”=152.4mm×152.4mmの面積と1”/4=6.35mmの厚みを有する)6”マスクブランクであり、更に、マルチビーム描画はレジスト被覆150mmシリコンウエハに対しても適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9,653,263B2号
【文献】米国特許第9,053,906号
【文献】米国特許第8,222,621号
【文献】米国特許第7,276,714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの適用において、基板上に生成されるべき構造は、所定の(pre-defined)セットの領域に限定される。その例には相補型(complementary)リソグラフィ(以下に詳細に説明する)が含まれるが、この場合、所定のラインパターンは、限定されたセットのグリッド位置において、又は所定の規則的グリッド上に一般的に存在するコンタクトホールの露光で、選択的に切断される。いずれのケースにおいても、(描画されるべき実際のパターンに依存して)露光される必要があり得るグリッド位置は(描画されるべき構造の設計に依存することなく)常に露光されない領域によって囲まれる。しかし、例えば本出願人の特許である米国特許第9,653,263B2号、米国特許第9,053,906号、米国特許第8,222,621号及び米国特許第7,276,714号に開示されているような従来のマルチビーム露光方法は、ターゲットの全ての部分があり得る露光のために処理されるところ、露光される必要がない領域(例えばグリッド外(off-grid)領域)の場合、これらの部分は0%の露光線量で処理されることを示唆している。このため、露光システムは構造を全く備えないかもしれない基板の部分をスキャンするという事実から、非効率的な露光操作(特に露光時間の浪費)並びに(ラスタ化データのための)データ転送帯域幅及び(ラスタ化のための)計算リソースのオーバーヘッドが潜在的に引き起こされることを本出願人は認識した。本出願人は、品質は同じままで描画時間を短縮すること又は、代替的に、描画速度は元のままで精度を高くすることを達成するために、描画方法をこれらの所定の領域に適合的に制限することを可能にするための、描画方法に対する修正を開発した。
【0006】
従って、描画方法及びそのような描画方法を実行するための荷電粒子露光ツールから出発し、本発明の目的は、構造の位置の規定について高精度を維持しかつ任意の位置ずれを補正しつつ、処理時間を短縮することを可能にする適切な適合化を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は冒頭に記載した方法によって達成される。該方法において、複数の露光位置を規定(画定)するステップはそれぞれの固定位置(fixed locations)でターゲット上に規定された互いに分離された複数のクラスタ領域に対して実行され、複数の露光位置を規定するステップは露光位置(複数)の各々がクラスタ領域(複数)のうちの1つの内部にあるように露光位置の位置を規定することを含み、前記クラスタ領域の各々は複数の露光位置を含み;露光位置は、該露光位置の各々が同じクラスタ領域内の少なくとも1つの他の露光位置に対して所与の隣接距離内にあるように配置され、前記隣接距離はターゲット上に生成されるアパーチャの画像のサイズよりも小さく、クラスタ領域(複数)は露光領域内の即ちターゲットの面内の、X方向またはY方向の一方または両方の方向のような少なくとも1つの方向に沿って前記隣接距離の少なくとも2倍の幅を有する「ドーマント(dormant)」空間即ち露光位置が存在しない空間によって互いに分離される。例えば、クラスタ領域は、上述の移動方向に平行な方向及び該方向に対する横方向の両方に沿って「ドーマント」空間によって互いに分離されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるこの解決策は、露光の対象となる唯一の領域であり、ターゲットの表面上に分散配置された複数の別個の有限の領域である、ターゲット表面上の所定の領域の存在を考慮に入れ、(関連する処理ステップにおける)露光処理をこれらの所定の領域に制限することを提供する。従って、ターゲット表面の残りの部分は露光処理から除外されたままにされる。換言すれば、(関連する処理ステップ中に実行される)全ての露光はこれらの「パッチ(patches)」又は「クラスタ領域(複数)」に制限される。この制限は、処理時間において所望の短縮をもたらすが、同時に、本発明は、限定的(限定型)位置付けグリッド(restricted placement grid)に属する公称露光位置における線量を調節することにより、精細位置決めや、例えばビームフィールドの歪みに起因し得る位置ずれの補正を可能にする。
【0009】
この革新的な方法は、ターゲット上のアパーチャ画像が相互に重なり合う状況、又は換言すれば、隣接距離がターゲット上に生成されるアパーチャの画像のサイズよりも小さいという条件下において特に有利である。一方、異なるクラスタについては、そのような重なり合い(オーバーラップ)はない。クラスタ領域は、異なるクラスタ領域のアパーチャ画像が全く重なり合わないように互いに対して距離があり、好ましくは、それらの間の有限のフリー(空の)空間によって分離されている。
【0010】
本発明のさらなる一視点において、複数のストライプを描画することにより描画方法を実行することが有利であり、但し、各ストライプは、それぞれのストライプ内のクラスタ領域に対する露光位置のグリッド位置のサブセットに関連付けられている;この場合、異なるストライプに関するサブセットは、相互に異なるが、一緒に合わせられると(まとめられると)、前記クラスタ領域に属する露光位置を完全にカバーするよう結合する(組み合わさる)と、しばしば有利である。好ましくは、各ストライプは、[前記]主方向に沿って配置される少なくとも2列のクラスタ領域を含んでもよい。
【0011】
この視点の好ましい一実施形態において、クラスタ領域の各々は、グリッド位置のそれぞれのサブセットに関連する少なくとも2セットの露光位置を含み、さらに、該少なくとも2セットの露光位置の各々は最小の数の露光位置を含み、該最小の数はすべてのクラスタ領域に対して有効であり、該最小の数は少なくとも4、好ましくは5又はそれより大きい;実際の具体化に応じて、さらに大きくなることもあり得る。前記少なくとも2セットの露光位置の各々について、同じサブセットのグリッド位置に関連付けられている異なるクラスタ領域の露光位置の空間的配置は、夫々のクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、同じである場合、さらなる単純化および計算時間の短縮が可能である。
【0012】
より一般的には、クラスタ領域の各々は複数の露光位置を含み、該複数の露光位置は、全てのクラスタ領域に共通の最小の数以上であり、該最小の数は少なくとも4、好ましくは5又はそれより大きく、より好ましくは少なくとも9であると、有利である。
【0013】
同様の一視点において、1つのクラスタ領域のサイズは、クラスタ領域(複数)を露光するために用いられるアパーチャ画像よりも大きく、しばしば相当により大きい。一般的に、各クラスタ領域のサイズは、ターゲット上に結像されるアパーチャの画像のサイズより、少なくとも3/2、好ましくは2の倍率だけより大きくてもよい。このことは、ターゲット表面の面上の一方向についてだけでなく、両方向即ち移動方向に平行な方向及び該方向に対する横方向についても当て嵌まる。
【0014】
特定の具体化および使用されるターゲットの種類に応じて、1つのクラスタ領域内で露光位置(複数)が規則的グリッドに沿って配置されると好適である。代替的に又は組み合わせにより、1つのクラスタ領域内で、露光位置(複数)は上述の移動方向に対して互いに対し斜めの角度をなして配置されてもよい。
【0015】
ターゲット上に特定の形状の構造を規定(画定)することを目的とする本発明の別の発展形態では、1つのクラスタ領域内で、露光位置のセットは、規定の空間的配置で配置された一群の露光位置を含み、前記規定の空間的配置は該一群の露光位置の各々が露光されるときに所定の形状を生成するよう構成されると好適である。
【0016】
例えば、クラスタ領域(複数)は複数の数のラインに沿って配置されてもよく、該ライン(複数)は(互いに対し)均一なオフセットをもって配置され、該ライン(複数)は好ましくはターゲット上に予め形成されたラインパターンのライン(複数)に対応する。特に、クラスタ領域(複数)は規則的な間隔で該ライン(複数)に沿って配置されてもよい。
【0017】
(1つのクラスタ領域内の隣接部(next-neighbors)間の)上記隣接距離の好適な選択としては、アパーチャの画像の公称サイズ以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の1つの通常の場合において、パターンピクセル(複数)は、従って(該パターンピクセルをカバーする)露光位置は、露光されるべき実際のパターンに応じたそれぞれの露光線量で選択的に露光される。但し、露光位置の位置は実際のパターンに依存しない。
【0019】
本発明の方法を用いるツールの好適な実現において、一定のタイミングで行われる露光ステップ(複数)中に(但し該ステップ中においてはそれぞれのパターンピクセルがターゲット上で露光される)パターン画像の位置を少なくとも主方向に沿った相対移動に関してターゲットと一緒に移動させると有利である。但し、露光ステップと露光ステップの間においてパターン画像の位置はターゲットに対して変更されて、一般的には、パターン規定装置の位置に対するパターン画像の位置の移動を補償し、前記露光ステップの持続時間は主方向に沿った均一な前進距離に対応し、該前進距離は主方向に沿った同じ部分グリッド内の(1つの)アパーチャ画像のサイズよりも大きい。
【0020】
多くの実施形態では、露光位置の位置(locations)は、同時に(即ち1つの個別の露光ステップ内で)露光されるそれらの露光位置について、ターゲット上におけるそのような露光位置の位置(locations)がパターン規定装置に設けられたアパーチャの規則的な2次元配置の投影画像に直接対応する2次元グリッドに従って配置されることを提供することによって、構造データの事前計算およびデータパスの単純化を実現できる。クラスタ領域のグリッドが(ターゲット上の表面に関する)ビームレットのグリッドと適合的(compatible)である場合、さらに単純化することが可能である。より詳細に説明すれば、クラスタ領域が所定の位置に位置付けられている場合から出発し(但し、該所定の位置は前記露光領域内のターゲット上に規則的配置を形成する)、クラスタ領域位置のこの規則的配置が、上述の2次元位置付けグリッドの(即ち、アパーチャの画像の位置の)スーパーセットに対応する場合、クラスタ領域のレイアウトと規定(画定)を単純化できる。より具体的には、異なるクラスタ領域内の位置の配置が1つのクラスタ領域から次のクラスタ領域へと繰り返され及び/又はクラスタ領域中心のセットが複数の位置付けグリッド(アパーチャの画像の位置)の結合体(または重ね合わせ)であり、これにより、各アパーチャが1つのクラスタ領域内の同じ位置を同時に描画できることを保証すると、有利である。この状況は、クラスタ領域(複数)の各々について、それぞれのクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、露光位置の空間的配置が、所望又は必要であれば、ビームレット及びクラスタ領域のピッチが一致する(congruent)ように適合させることによって、異なるクラスタ領域に対して同じであることを提供することによって、実現されることができる。
【0021】
さらに、グリッド位置のサブセットをパターンピクセルの公称位置に関して相互にばらばら(disjoint)にすると有利であり、この場合、好ましくは、グリッドのサブセットは、ターゲット上のアパーチャの画像の幅以下のピッチを有し、より好ましくは、ターゲット上のアパーチャの画像の幅に1/2keを乗算した値に等しく(但しkeは正の整数)、好ましくは、規則的なグリッドのサブセットは、オーバーサンプリング率o>1を有するオーバーサンプリングを用いる位置付けグリッドである。
【0022】
以下に、本発明をさらに説明するために、図面に示されている例示的かつ非限定的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】技術水準のリソグラフィシステムの一例の縦断面図。
図2】技術水準のパターン規定(画定)システムの一例の縦断面図。
図3】ストライプを用いたターゲットに対する基本的な描画方法。
図4】ターゲット上に結像されるアパーチャの一つの例示的配置。
図5A】露光されるべき1つの例示的パターンのピクセルマップの一例。
図5B】露光されるべき1つの例示的パターンのピクセルマップの一例。
図6A】M=2、N=2のアパーチャの配置の一例。
図6B】「ダブルグリッド(double grid)」配置におけるピクセルのオーバーサンプリングの一例。
図7A】1つのストライプの露光の一例。
図7B】グレーレベル(複数)の露光の一例。
図8A】「相補型(complementary)リソグラフィ」が実行される一次元回路構成の一例。
図8B】「相補型リソグラフィ」が実行される一次元回路構成の一例。
図9図8Bの「相補型リソグラフィ」構成による1セットの「パッチ(patches)」に対する露光位置の制限の一例。
図10図9に示す1つのパッチの一例。
図11A】1つの露光セル内のパッチの配置およびそれに関連する位置付けグリッドの配置の一例。
図11B】1つの露光セル内のパッチの配置およびそれに関連する位置付けグリッドの配置の一例。
図12】パッチを用いる別の実施形態を示す図である。
図13A】異なる位置付けグリッドに関連付けられた図12に示す1つのパッチ。
図13B】異なる位置付けグリッドに関連付けられた図12に示す1つのパッチ。
図14】異なるターゲット形状を生成するための露光位置セット(複数)の種々の例。
図15図14(B)+(E)の露光位置セットに対応する別の実施形態によるパッチの一例。
図16図14(C)+(F)の露光位置セットに対応するさらに他の実施形態によるパッチの一例。
図17】1つのパッチ内における異なる線量割り当てにより被露光構造のシフトがもたらされる様子の一例。
図18】パッチを用いるさらに他の一実施形態。
【実施例
【0024】
以下に示す本発明の例示的実施形態の詳細な説明において、本発明の基本的なコンセプト及びさらなる有利な展開が開示される。本書で説明する複数の実施形態のいくつかまたは全てを本発明の特定の応用に適すると認められるように自由に組み合わせることは当業者ならば明らかである。同様に、添付の請求の範囲は、それぞれ、そのような組み合わせが適切である限りにおいて、自由に組み合わせることができる。本書を通じて、「有利な(advantageous)」、「例示的(exemplary)」又は「好ましい(preferred)」などの用語は、本発明またはその実施形態に特に適している(が必須ではない)要素または寸法を示し、これらは、明示的に必要とされる場合を除いて、当業者によって適切とみなされる限りにおいて変更することができる。本発明は、本発明の説明の目的のために及び本発明の現時点においてのみ好適である具体化のために与えられる以下に説明する例示的実施形態に限定されない。
【0025】
リソグラフィ装置
【0026】
図1に、本発明の好ましい一実施形態を採用するのに適したリソグラフィ装置の一例の概要を示す。以下では、本発明の開示に必要とされる詳細のみを記載する;理解を容易にするために、各構成要素は図1において寸法通りには示されていない。リソグラフィ装置1の主要構成要素は、この例において図1の紙面上下方向下側に向かうリソグラフィビームlb、pbの方向の順に、照明システム3、パターン規定(画定)(PD:pattern definition)システム4、投影システム5及び基板16を有するターゲットステーション6である。装置1全体は、該装置の光軸cwに沿って荷電粒子のビームlb、pbが邪魔されない伝播を保証するために、高真空度に保持されている真空ハウジング2内に収容されている。荷電粒子光学システム3、5は、静電レンズ及び/又は磁気レンズを用いて実現されている。
【0027】
照明システム3は、例えば、電子銃7と、抽出システム8と、集光レンズシステム9とを含む。尤も、電子の代わりに、一般的に他の帯電粒子も同様に使用できることに留意すべきである。これらは、例えば、電子の他に、水素イオン又はより重いイオン、荷電原子クラスタ、または荷電分子であり得る。
【0028】
抽出システム8は、粒子を典型的には数keV、例えば5keVの定められたエネルギーに加速する。ソース7から放射された粒子は、集光レンズシステム9によって、リソグラフィビームlbとして使用される実質的にテレセントリックな幅の広い粒子ビーム50に成形される。次に、リソグラフィビームlbは、複数の開口部(アパーチャとも呼ばれる)を有する複数のプレートを含むPDシステム4を照射する。PDシステム4は、リソグラフィビームlbの経路上の特定の位置に保持されるため、リソグラフィビームlbは、複数のアパーチャ及び/又は開口部を照射し、複数のビームレットに分割される。
【0029】
これらのアパーチャ/開口部の一部は、自身を貫通して通過するビームの部分すなわちビームレット51をターゲットに到達させるという意味で入射ビームに対し透過性であるよう、「スイッチオン」されるないし「開状態(open)」にされる;他のアパーチャ/開口部は「スイッチオフ」されるないし「閉状態(closed)」にされる、即ち、対応するビームレット52はターゲットに到達できず、従って、実質的にこれらのアパーチャ/開口部はビームに対して非透過性(不透明)となる。かくして、リソグラフィビームlbは、PDシステム4から出射するパターン化ビームpbに構造化される。スイッチオンされたアパーチャのパターン-リソグラフィビームlbに対して透過性であるPDシステム4の唯一の部分-は、荷電粒子感応性レジスト17で被覆された基板16に露光されるべきパターンに応じて選択される。なお、アパーチャ/開口部の「スイッチオン/オフ」は、通常、PDシステム4のプレートの1つに設けられた適切なタイプの偏向手段によって実現される。即ち、「スイッチオフ」されたビームレット52は、(十分であるが非常に小さい角度で)その経路から偏向され、そのため、ターゲットに到達できないが、リソグラフィ装置の何れかの部分において、例えば吸収板11において専ら吸収される。
【0030】
パターン化ビームpbによって表されるパターンは、その後、光電磁気式の(electro-magneto-optical)投影システム5によって基板16上に投影され、そこでビームは「スイッチオン」されたアパーチャ及び/又は開口部の画像を形成する。投影システム5は、2つのクロスオーバーc1とc2を介して、例えば200:1の縮小を実行する。基板16は、例えば、粒子感応性レジスト層17で被覆された6”(インチ)マスクブランクまたはシリコンウエハである。基板は、チャック15によって保持され、ターゲットステーション6の基板ステージ14によって位置決めされる。
【0031】
露光されるべきパターンに関する情報は、電子パターン情報処理システム18によって実現されるデータパスによってPDシステム4に供給される。データパスの更なる詳細については、本出願人の米国特許第9,653,263B2号(「データパス(Datapath)」のセクション)に見出すことができる。
【0032】
図1に示す実施形態において、投影システム5は、好ましくは静電レンズ及び/又は電磁レンズを含み、場合によっては更なる偏向手段も含む、複数の連続的に配置される光電磁気式の投射ステージ10a、10b、10cから構成される。これらのレンズおよび手段は、それらの使用は先行技術において周知であるため、象徴的形状でのみ示されている。投影システム5は、クロスオーバーc1、c2を介する縮小イメージングを用いる。双方のステージの縮小係数(倍率)は、全体として数百倍、例えば200:1の縮小が結果として得られるように選択される。このオーダーの縮小は、PDデバイスにおける小型化という問題を軽減する点において、リソグラフィ設備には特に適している。
【0033】
投影システム5全体は、色収差および幾何収差に関してレンズ及び/又は偏向手段を大幅に補償するように構成されている。画像を全体として横方向に、すなわち光軸cwに対し直角な方向に沿ってシフトする手段として、偏向手段12a、12b及び12cが、集光レンズ[照明システム]3及び投影システム5に設けられている。偏向手段は、例えば、ソース抽出システム8の付近ないし図1に偏向手段12bで示されているような2つのクロスオーバーの内の1つの付近に、又は、図1にステージ偏向手段12cで示されているような相応のプロジェクタの最終レンズ10cの下流に位置付けられた多極(マルチポール)電極システムとして実現可能である。この装置では、多極電極配置は、ステージ運動に対する画像のシフト及び荷電粒子光学アライメントシステムと連動した結像システムの補正の両方のための偏向手段として使用される。これらの偏向手段10a、10b、10cは停止(stopping)プレート11と連動して使用されるPDシステム4の偏向アレイ手段と混同されるべきではない。というのは、後者はパターン化ビームpbの選択されたビームレットを「オン」または「オフ」にスイッチするために使用されるものであるのに対し、前者は、粒子ビームを全体として取り扱うに過ぎないからである。また、軸線方向の磁界をもたらすソレノイド13を用いてプログラマブルビームの束を回転させる可能性もある。
【0034】
図2の断面詳細図は、PDシステム4の1つの好適な実施形態を示す。このPDシステム4は、連続配置構成で積み重ねられた3つのプレート、すなわち「アパーチャアレイプレート(Aperture Array Plate)」(AAP)20と、「偏向アレイプレート(Deflection Array Plate)」(DAP)30と、「フィールド境界アレイプレート(Field-boundary Array Plate)」(FAP)40とを含む。なお、ここで留意すべきことは、用語「プレート」はそれぞれの装置の全体的な形状を表すものであって、1つのプレートが単一のプレート部品として実現されることを、通常はこれが具体化の好ましい態様であるが、必ずしも示すものではない;それでもなお、特定の実施形態では、アパーチャアレイプレートのような1つの「プレート」は、複数のサブプレートから構成されることも可能である。プレートは、Z方向(図2の紙面上下方向の軸)に沿って、或る相互距離をなして互いに対し平行に配置されることが好ましい。
【0035】
AAP20の平坦な上面は、荷電粒子集光器光学系/照明システム3に対する定められた電位界面を形成する。AAPは、例えば、肉薄の中央部分22を有する(およそ1mmの厚さの)シリコンウエハ21の方形または矩形片から作成することができる。プレートは導電性保護層23によって被覆されてよい。この導電性保護層23は(米国特許第6,858,118号に示すような)水素イオンまたはヘリウムイオンを使用する場合とりわけ有利であろう。電子または重イオン(例えばアルゴンまたはキセノン)を使用する場合、層23とバルク部分21、22との間に界面が存在しないようにするために、層23は、21および22のそれぞれの表面部分によってもたらされるシリコンから作成されてもよい。
【0036】
AAP20は、肉薄部分22を横断する開口部によって形成される複数のアパーチャ24を備える。アパーチャ24は、肉薄部分22に設けられた(1つの)アパーチャ領域内に所定の配置で配置され、かくしてアパーチャアレイ26を形成する。アパーチャアレイ26におけるアパーチャの配置は、例えば、千鳥(ジグザグ)配置又は規則的な矩形もしくは方形アレイ(図4参照)であってよい。図示の実施形態では、アパーチャ24は、層23に形成された直線的プロファイルと、開口部の下方開口25がアパーチャ24の主要部分よりも幅が広くなるようなAAP20のバルク層における「下流側拡開(ないし末広がり:retrograde)」プロファイルとを有するように構成される。直線的プロファイルおよび下流側拡開プロファイルは両方とも、反応性イオンエッチングのような技術水準の構造化技法によって形成可能である。下流側拡開プロファイルは、開口部を通過するビームのミラー荷電効果(mirror charging effects)を大きく低減させる。
【0037】
DAP30は、複数の開口部33を備えたプレートであり、開口部33の位置はAAP20におけるアパーチャ24の位置に対応し、更に、開口部33は当該開口部33を貫通通過する個別ビームレットを選択的にそれぞれの経路から偏向するよう構成された電極35、38が設けられている。DAP30は、例えば、ASIC回路を有するCMOSウエハの後処理を行うことによって形成可能である。DAP30は、例えば、方形または矩形の形状を有する1片のCMOSウエハで作成され、肉薄化されている(但し22の厚さと比較すると適切により厚くなっていてもよい)中央部分32を保持するフレームを形成する肉厚部分31を含む。中央部分32におけるアパーチャ開口部33は、24と比較して(例えば、各側部でおよそ2μmだけ)より幅が広い。CMOS電子回路34は、MEMS技法によって提供される電極35、38を制御するために設けられている。各開口部33に隣接して、「接地」電極35及び偏向電極38が設けられている。接地電極35は電気的に相互接続され、共通の接地電位に接続されると共に、荷電を防ぐための下流側拡開部分36と、CMOS回路に対する不所望なショートカット(ないし短絡)を防止するための絶縁部分37とを備える。接地電極35は、シリコンバルク部31および32と同じ電位のCMOS回路34の電極部分に接続されてもよい。
【0038】
偏向電極38は静電位が選択的に印加されるように構成されている;そのような静電位が電極38に印加されると、これによって、対応するビームレットに対し偏向を引き起こし、以って、当該ビームレットを公称経路から偏向させる電界が生成される。電極38は、同様に、荷電を回避するために下流側拡開部分39を有していてもよい。電極38の各々は、その下側(根元側)部分において、CMOS回路34内で対応するコンタクト部位に接続される。
【0039】
接地電極35の高さは、ビームレット間のクロストーク効果を抑制するために、偏向電極38の高さより大きい。
【0040】
図2に示されるDAP30を有するPDシステム4の配置は、いくつかの可能性の内の1つに過ぎない。(不図示の)変形形態では、DAPの接地電極35及び偏向電極38は、下流側ではなく寧ろ上流側に(紙面上方を向く側に)配向されてもよい。さらに、例えば埋込型の接地電極および偏向電極を有するDAP構成は当業者によって案出可能である(米国特許第8,198,601B2号のような本出願人名義の他の特許を参照)。
【0041】
FAPとして機能する第3のプレート40は、下流側で縮小を行う荷電粒子投影光学系5の第1のレンズ部分に面する(指向する)フラットな面を有し、従って、投影光学系の第1のレンズ10aに対する規定された電位界面を提供する。FAP40の肉厚部分41は、シリコンウエハの一部から作成される方形または矩形フレームであり、肉薄の中央部分42を有する。FAP40は、AAP20およびDAP30の開口部24、33に対応するが、それらと比べて幅がより大きい複数の開口部43を備える。
【0042】
PDシステム4、特にその第1のプレートであるAAP20は、幅広の荷電粒子ビーム50(本書において、「幅広の(broad)」ビームとは、ビームがAAPに形成されたアパーチャアレイの全領域をカバーするために十分に幅が広いことを意味する)によって照射され、そのため、該ビーム50は、アパーチャ24を貫通通過すると、何千ものマイクロメートルサイズのビームレット51に分割される。ビームレット51は、DAP及びFAPを妨げられることなく(何の支障もなく)横断することになる。
【0043】
記述のように、偏向電極38がCMOS電子回路によって電力供給されるときはいつでも、偏向電極と対応する接地電極との間に電界が生成されることになり、その結果、そこを通過する対応するビームレット52に対し小さいが十分な偏向がもたらされる(図2)。偏向されたビームレットは、開口部33および43それぞれが十分に幅広に作成されているため、DAP及びFAPを妨げられることなく横断することができる。尤も、偏向されたビームレット52は、サブカラムの停止プレート11においてフィルター除去される(図1)。したがって、DAPによる影響を受けないビームレットのみが基板に到達することになる。
【0044】
縮小荷電粒子光学系5の縮小率は、PDデバイス4におけるビームレットの寸法及びそれらのビームレットの相互間の距離並びにターゲットにおける構造の所望の寸法を考慮して適切に選択される。これにより、PDシステムにおいてはマイクロメートルサイズのビームレットが考慮される一方で、基板にはナノメートルサイズのビームレットが投影される。
【0045】
AAPによって形成される(影響を受けていない)ビームレット51の束は、投影荷電粒子光学系の所定の縮小率Rによって基板に投影される。それゆえ、基板において、幅BX=AX/R及びBY=AY/Rをそれぞれ有する「ビームアレイフィールド」(BAF)が投影される。ここでAX及びAYはそれぞれX方向およびY方向に沿ったアパーチャアレイフィールドのサイズを示す。基板におけるビームレット(すなわちアパーチャ画像)の公称幅は、それぞれbX=aX/R及びbY=aY/Rで与えられる。ここでaX及びaYは、夫々、DAP30のレベル(高さ)においてX方向およびY方向に沿って測定されるビームレット51のサイズを示す。従って、ターゲット上に形成される単一のアパーチャ画像のサイズは、bX×bYである。
【0046】
なお、図2に描写された個々のビームレット51、52は、2次元のX-Yアレイに配置された、一層より多くの数の、典型的には何千ものビームレットを表すことに留意すべきである。本出願人は、例えば、イオンについてR=200の縮小率を有するマルチビーム荷電粒子光学系並びに何千本もの(例えば、262,144本の)プログラマブルビームレットを有する電子マルチビームカラムを既に実現している。本出願人は、基板においておよそ82μm×82μmのBAFを有するそのようなカラムも既に実現している。これらの例は、例示の目的で述べられたものであり、限定的な例として解釈されるべきではない。
【0047】
パターンの描画
【0048】
図3を参照すると、PDシステム4によって規定されるパターン画像pmはターゲット16上に生成される。荷電粒子感応性レジスト層17によって被覆されたターゲット表面は、露光されるべき1つ以上の領域r1を含むことになる。一般的に、ターゲット上で露光されたパターン画像pmはパターン化されるべき領域r1の幅より通常は十分により小さい有限サイズy0を有する。従って、走査ストライプ露光法が使用されるが、この場合、ターゲットは、ターゲット上でビームの位置が不断に変更されるよう、入射ビーム下で移動される:ビームはターゲット表面上で効果的にスキャンされる。本発明の目的のためには、ターゲット上におけるパターン画像pmの相対運動のみが重要であることを強調しておく。この相対移動によって、パターン画像pmは、幅y0の一連のストライプs1、s2、s3、・・・sn(露光ストライプ)を形成するよう、領域r1上で移動される。完全なセットのストライプは基板表面の全領域をカバーする。走査方向sdは、一定であってもよく、或いは、ストライプごとに交互に変化されても(隣り合うストライプ間で方向が逆であっても)よい。
【0049】
図5Aは、10×18=180ピクセルのサイズの結像パターンpsの簡単な一例を示す。ここで、露光領域の幾つかのピクセルp100は100%のグレーレベル401に露光され、他の幾つかピクセルp50は完全なグレーレベルの50%のみに露光される(402参照)。残りのピクセルは0%線量403に露光される(全く露光されない)。図5Bは、50%レベルを実現する仕方を示す:各ピクセルは数回露光され、0%から100%の間のグレーレベルを有するピクセルについては、グレーレベルは、活性化されるピクセルに対応する露光回数を相応に選択することによって実現される;グレーレベルは、活性化された露光を分子、露光総数を分母とする分数である。この例では、50%レベルは、4回のうち2回を選択することにより実現される。当然ながら、本発明の現実的な応用においては、標準画像のピクセル数は一層より多くなるであろう。しかしながら、図5A及び図5Bでは、理解の容易化のため、ピクセルの数は180個のみである。なお、一般的に、さらに多くの段階のグレーレベルが0%から100%のスケール内において使用されるであろう。
【0050】
このようにして、パターン画像pm(図3)は、露光されるべき所望のパターンに応じた線量値で露光される複数のパターンピクセルpxから構成される。なお、PDシステムのアパーチャフィールドには有限の数のアパーチャしか存在しないため、同時に露光することができるのは1つのサブセットのピクセルpxのみである。スイッチオンされるアパーチャのパターンは、基板に露光されるべきパターンに応じて選択される。かくして、実際のパターンでは、すべてのピクセルが完全な線量で露光されるのではなく、ピクセルの一部は実際のパターンに応じて「スイッチオフ」されることになる;各ピクセルごとに(又は、換言すれば、該ピクセルをカバーする各ビームレットごとに)、露光線量は、ターゲット上に露光または構造化されるべきパターンに応じて、該ピクセルが「スイッチオン」されるか「スイッチオフ」されるかにより、ピクセル露光サイクル毎に変化されることができる。
【0051】
基板16が連続的に動かされる間に、ターゲット上のパターンピクセルpxに対応する同じ画像要素は、一連のアパーチャの画像によって何度もカバーされてもよい。同時に、PDシステムにおけるパターンは、PDシステムのアパーチャを介して、段階的にシフトされる。したがって、ターゲット上のある場所の1つのピクセルについて考えると、すべてのアパーチャがそのピクセルをカバーする場合にそれらのアパーチャがスイッチオンされるとすれば、その結果、最大露光線量レベル即ち100%に相当する「ホワイト」シェード(shade)が生じることになる。「ホワイト」シェードに加えて、最小露光線量レベル(「ブラック」)と最大露光線量レベル(「ホワイト」)との間に補間(内挿)されるであろうより低い線量レベル(「グレーシェード」とも称される)に従ってターゲットにおけるピクセルを露光することも可能である。グレーシェードは、例えば、1つのピクセルの描画に関与し得るアパーチャのサブセットのみをスイッチオンすることによって実現可能である;例えば、16個のアパーチャのうちの4個は25%のグレーレベルを与えることになるであろう。もう1つのアプローチは、関与するアパーチャについてブランキングされない(unblanked)露光の持続時間を低減させることである。従って、1つのアパーチャ画像の露光持続時間は、グレースケールコード、例えば、整数によって制御される。露光されるアパーチャ画像は、ゼロと、最大露光持続時間及び線量レベルに対応する所与の数のグレーシェードのうちの1つの現れである。グレースケールは、通常、1セットのグレー値、例えば、nをグレー値の数、iを整数(「グレーインデックス」、0≦i≦n)として、0,1/(n-1)...i/(n-1),..,1を定義する。尤も、一般的には、グレー値(複数)は等間隔である必要はなく、0と1の間の非減少(non-decreasing)数列を形成する。
【0052】
図4は、基本的レイアウトによるPDデバイスのアパーチャフィールドにおけるアパーチャの配置を示し、更に、以下で用いるいくつかの量及び略語を示す。濃い(黒い)シェードで示された、ターゲット上に投影されるアパーチャ画像b1の配置が示されている。主軸XおよびYは、それぞれ、ターゲット運動の進行方向(走査方向sd)及び垂直方向に対応する。各アパーチャ画像は、方向X及びYにそれぞれ沿った幅bX及びbYを有する。アパーチャはそれぞれMX個およびMY個のアパーチャを有する行および列に沿って配置され、1つの行および1つの列において隣り合うアパーチャ間のオフセットはそれぞれNX・bX及びNY・bYである。その結果、各アパーチャ画像には、NX・bX・NY・bYの面積を有する概念上のセルC1が属し、アパーチャ配置は、矩形状に配置されたMX・MY個のセルを含有する。以下では、これらのセルC1を「露光セル」と称する。ターゲット上に投影される完全なアパーチャ配置は、BX(=MX・NX・bX)×BY(=MY・NY・bY)の寸法を有する。以下の説明において、矩形グリッドの特殊なケースとして正方形グリッドを想定し、b=bX=bY、M=MX=MY、N=NX=NYと設定し、Mは整数とするが、以下のさらなる説明はすべて何ら一般化を制限するものではない。かくして、1つの「露光セル」はターゲット基板上でN・b×N・bのサイズを有する。
【0053】
隣り合う2つの露光位置間のピッチは以下においてeで表す。一般的に、距離eは、1つのアパーチャ画像の公称幅bと異なり得る。最も単純な場合では、b=eであり、これは、2×2露光セルC3の配置の例について図6Aに示されており、1つのアパーチャ画像bi0は1ピクセル(の公称位置)をカバーする。図6Bに(及び米国特許第8,222,621号及び米国特許第7,276,714号の教示に沿って)示されている他の興味深い例では、eはアパーチャ画像の幅bの分数b/oとすることができるが、ここで、o>1は整数であるのが好ましく(但し必須ではない)、オーバーサンプリング率とも称される。この場合、アパーチャ画像は、様々な露光の過程において、空間的に重なり合い、それにより、生成されるべきパターンのより高解像度の位置付け(placement)が可能になる。その後、(1つの)アパーチャの各画像は、一度に、複数のピクセル即ちo個のピクセルをカバーすることになる。ターゲットに結像されるアパーチャフィールドの全領域は(NMo)個のピクセルを含むことになる。アパーチャ画像の位置付けの観点からすれば、このオーバーサンプリングは、ターゲット領域を単にカバーするのに必要になるものとは異なる(間隔がより細かいため)いわゆる位置付けグリッド(placement grid)に対応する。
【0054】
図6Bは、「ダブルグリッド」と称される位置付けグリッドと組み合わせたo=2のオーバーサンプリングの一例を示す。即ち、o=2、N=2のパラメータを持つ露光セルC4を有するアパーチャアレイの画像である。従って、各公称位置(図6Bにおける小さな方形フィールド)上に、4つのアパーチャ画像bi1(破線)がプリントされているが、これらは、規則的(regular)グリッド上でX方向及びY方向の両方においてピッチeだけオフセットされている。アパーチャ画像のサイズは依然として同じ値bであるのに対し、位置付けグリッドのピッチeは、この場合、b/o=b/2である。従前の公称位置に対するオフセット(位置付けグリッドのオフセット)もb/2のサイズである。同時に、各ピクセルの線量及び/又はグレーシェードは、対応するピクセルをカバーするアパーチャ画像に適切なグレー値を選択することによって、適合化(低減)可能である。その結果、サイズaの領域がプリントされるが、より精細な位置付けグリッドのために、位置付け精度が向上される。図6B図6Aを直接比較することにより、アパーチャ画像の位置は、位置付けグリッド上で従前よりも2倍(一般的にはo倍)の精細度で配置される一方、アパーチャ画像自体は重なり合っていることが分かる。ここで、露光セルC4は、描画プロセス中に取り扱われるべき(No)の位置(即ち「ピクセル」)を、従って、oの倍数だけ、従前よりもより多くのピクセルを含む。これに応じて、アパーチャ画像のサイズb×bを有する領域bi1は、図6Bにおいてo=2であるオーバーサンプリング(「ダブルグリッド」とも称される)の場合、o=4ピクセルに関連付けられる。勿論、oはまた他の任意の整数値、特に4(「クワッドグリッド」、不図示)又は8を取り得る。また、パラメータoは、米国特許第9,653,263号に示されている「ダブルセンターグリッド(Double-Centered Grid)」の場合に対応して、21/2=1.414又は23/2=2.828のような1より大きい非整数値であってもよい。
【0055】
なお、連結(interlocking)グリッド(o>1)の場合、「ディザリング(dithering)」によってグレーシェードの数を増加することが可能である一方で、線量分布を均一に維持される。その理由は、グレーシェード(複数)はいずれの公称グリッドに対しても等しいからである。これは、ダブル連結グリッドでは、実現可能な有効線量レベルの数は非連結グリッドの場合より4倍より多いことを意味する。一般的にいえば、オーバーサンプリングされる露光グリッド(即ちo>1)は、何れも、X及びY方向にb/oの距離だけシフトされるo個までの公称グリッドからなる。従って、ある線量レベルから次の線量レベルへのステップはo段階のサブステップに分割することができるが、この場合、これらのo個のグリッドの1つのみの線量レベルが増大される;これは、全てのサブグリッドが公称レベルを露光するまで、他のグリッドに対し繰り返すことができる。当業者であれば分かる通り、基板におけるビーム形状は、アパーチャプレートの機械ブラー(blur)と縮小されたアパーチャ形状の畳み込みである。幅bを露光グリッド定数eの自然数倍に設定することにより、換言すればo=b/eを整数にすることにより、基板上における均一な線量分布を得ることができる。そうでない場合、線量分布は、エイリアシング(aliasing)効果のために、露光グリッドの周期性による最小値と最大値を有するであろう。多数のグレーシェードは、より優れた特徴位置付けを可能にする。従って、グレーレベルの増加は、ピクセル位置ごとのグレーシェードが特定の数に限られている場合、重要な意味を持つ。
【0056】
図7Aに、本発明に適切なピクセルの露光スキームを示す。図示されているのは一連のフレームであり、時間は(紙面)頂部(より早い)から(紙面)底部(より遅い)に進行する。本図におけるパラメータ値はo=1,N=2であり、MX=8及びMY=6の矩形ビームアレイが想定されている。ターゲットは常に(紙面)左側に動くのに対し、ビーム偏向は、図の紙面左側に示されているような鋸波関数で制御される。長さT1の各時間間隔中は、ビーム画像は(「位置付けグリッド」の位置に対応する)ターゲット上のある位置に固定されたままである。従って、ビーム画像は、位置付けグリッドシーケンスp11、p21、p31を通過するように示されている。位置付けグリッドの1サイクルは、ターゲット運動vによって、時間間隔L/v=NMb/v以内に露光される。各位置付けグリッドにおける露光の時間T1は、L=vT1=L/p=NMb/pで与えられる「露光長さ」と称される長さに対応し、ここで、pは1つのセル内の露光位置の数を表す(通常の(regular)オーバーサンプリングされたグリッドではp=No)。
【0057】
ビームレットは、ターゲットと共に1セットの画像要素の露光中に、Lの距離にわたって移動される。換言すれば、すべてのビームレットは、時間間隔T1の間、基板の表面に対して固定された位置を維持する。距離Lに沿ってターゲットと共にビームレットを移動させた後、ビームレットは即座に(極めて短時間内に)再配置されて、次の位置付けグリッドの画像要素の露光を開始する。位置付けグリッドサイクルの位置p11・・・p31を介する1つの完全なサイクルの後、シーケンスは、X方向(走査方向)に平行な縦方向オフセットL=bNMを付加して、新たに開始される。ストライプの始まりと終わりにおいては、この露光方法は連続的なカバーをもたらさないこともあり得るため、完全には充填されない長さLのマージンがあってもよい。
【0058】
なお、図7Aでは、実際のパターンに応じて個々のアパーチャを開閉するために必要な時間は無視されている。実際には、DAPの偏向装置及び偏向多極システムは、再配置及び過渡的振動のフェードアウト(減衰)後にアパーチャの状態を安定化するために、所定の安定化期間Tを必要とする。安定化期間Tは、ピクセル露光サイクルT1の(極めて)小さい一部分である。従って、完全なピクセル露光サイクルT1よりも寧ろ、専ら利用可能時間Tu=T1-Tがピクセルの露光のために使用される。時間間隔Tuは、その時間以内に適切な線量がそれぞれのピクセルに供給されることを保証するピクセル露光期間である。但し、以下においては、TはT1と比べて無視できる程小さいと仮定し、TuとT1は以下では区別しない。
【0059】
利用可能露光時間Tuは、処理可能なグレーシェードの数に対応するg個の時間枠に分割される。gの値の一例はg=16(4ビット)である。ピクセル露光は、Tu以内に使用される時間枠の合計である、所望のグレーシェードに応じて活性化される。時間Tu以内に1つのピクセルに適用される線量がg段階のグレーレベルにデジタル化されれば、一般的(general)ブランキングセルを時間Tuの間にg回リロードすることが可能である。ブランキングアレイにおける各ブランキングセルは、露光時間T1(より正確には利用可能時間Tu)の間にその個別のグレーシェードを受け取る。
【0060】
図7Bは、g=5として単純化した一例における、異なるグレーシェードを有する2つのピクセルの露光を示す。安定化期間Tの相対的サイズは著しく誇張して示されている。g=5に応じて、利用可能時間Tuの各々に5つの時間枠がある。第1ピクセルp71は、100%のグレーシェード(即ち「ブラック」)で露光され、第2ピクセルp72は60[40]%のグレーシェードで露光される。ピクセルp72では、対応するブランキング電極の2つの時間枠はグレーにシェードされた1つのピクセルを生成するが、それは、この例では60[40]%は5つのうちの2つを有するグレーシェードに対応するためであり、かくして、それらのうちの2つが、任意の順序で、スイッチオンに設定される。一方、ピクセルp71では、それぞれのブランキング電極は、5つの全ての時間枠の間、活性化され、その結果、Tuの間に適用され得る最大線量を有する黒色のピクセルが生成される。
【0061】
相補型リソグラフィ
【0062】
図8Aは、「相補型リソグラフィ(Complementary lithography)」に適したターゲット上に構造化された典型的な事前形成(preformed)パターンを表す一次元構成を示す。例えば、好適なターゲット上に、193nm(水)液浸光学リソグラフィ、層堆積およびエッチング工程を使用して製造され得る規則的なラインパターン110が提供される。ラインパターン110は、均一な「ライングリッド方向」D1に沿って延在しかつライン幅LおよびピッチPを有する複数のライン111を含む。L、Pの典型的な値は数nmであり、例えば10nmノードでL=20nm及びP=40nmである。
【0063】
このターゲット上では、図8Bに示すように、「相補型リソグラフィ」露光が実行されて、より暗い(濃い)ハッチングを有する矩形で示される、辺の長さCA及びCBを有するカット(複数)112が生成される。これらのカット112は、ライングリッド方向D1に対し斜めの又は好ましくは直角をなす方向D2―「カット方向」とも称される―に沿って配向されているが、適切なレジスト露光およびレジスト現像(development)を用いることによって生成され、その後のエッチング工程を経て、規則的なラインパターンのカットが完成される。カット112は、典型的には、図8Bに(ハッチングが付されているか又は破線の境界を有する)矩形として示された複数の「カット位置」113を規定(画定)する、基本水平ピッチCPx及び基本垂直ピッチCPyを有する規則的なグリッド上にある。換言すれば、2つのカット112の間の位置オフセットは、方向D1及びD2それぞれに沿って見て、基本水平ピッチCPx及び基本垂直ピッチCPyの倍数である。ある応用では、カットパターンは、一方または両方の軸方向にラインパターンを横切って疎らに(sparsely)位置付けられ得るが、そのため、CPx>>CA及び/又はCPy>>CBとなる。CA、CBの値は、量L及びPの寸法に対して適切に選択される。例えば10nmノードでCA=20nm及びCB=24nmである。
【0064】
以下において、本発明の様々な視点が相補型リソグラフィとの関連において説明される。しかしながら、これらの説明は、間に「ドーマント(dormant)」なフリー領域を含む周期的なパターンに位置付けられる構造(複数)が露光されるべき他の場合(例えば、コンタクトホールの露光)においても有効である。
【0065】
露光の制限
【0066】
本発明の第1の視点によれば、露光の位置は、あり得る露光の特定の領域に限定される。これは、図7Aに示すような露光セル全体を満たす伝統的アプローチ(例えば、本出願人の米国特許第9,653,263B2号参照)とは対照的である。特に、「相補型リソグラフィ」露光に関して、露光は、カット位置113に対応する領域に限定される。従って、露光手順は元のターゲット表面の一部に対してのみ行われるため、処理時間は短縮され、さらに重要なことには、描画プロセスにおいてパターンを符号化するために必要な単位面積当たりのデータ量が減少することである。これは、データレート(1秒間に送信されるデータ量、例えば技術水準の描画ツールでは120Gビット/秒)はしばしば露光プロセス中におけるパフォーマンスの主要なボトルネックの1つであるという観点からも重要な利点である。従って、本発明は、描画効率および描画速度を向上させ、結果としてより高いスループットをもたらす。
【0067】
図9は、N=16かつパターンピクセルのオーバーサンプリングなし(o=1)のビームレット配列について、図8A及びBに示すような「相補型リソグラフィ」露光に関する本発明の簡単な第1実施形態における本発明の原理を示す。図9は、寸法bX×bY=b×bの多数のパターンピクセルが規則的グリッド114に従って重ね合わされるターゲット表面上の1次元回路構造の複数の可能なカット位置113を示す。ピクセルの一部のみがカット位置113の領域と重なることは明らかである。さらに、矩形C9として示されている1つの露光セルの寸法は、cX=NX・bX及びcY=NY・bYとなっており、この特殊なケースでは、cX=cY=N・b=160nmである。露光のプロセス中に、露光セルC9は図9のX軸に沿ってシフトされ、従って、走査方向sd(図3)に沿ってトレース(trace)t1を露光する。前述の通り、露光セルはパターン画像pm(図3)の一部に過ぎず、全てのセルのトレースの合計は、全部合わせて、1つのストライプを描画する(図7A及び関連する上記の説明参照)。
【0068】
図9は、露光セルC9においてドットハッチングで示されたピクセル(複数)は全く露光されない(「ドーマントピクセル」)ことを示している。(実際のパターンに応じてカット構造が露光されるべき場合ないし露光されるとすれば)露光セルC9内において白色で示されているピクセルのみが当該カット構造を露光するために使用される。図9の特別な例では、3×3ピクセルの8つの「パッチ」L9があり、パッチL9は「ドーマントピクセル」の少なくとも1つの行または列によって互いに分離されている。ドーマントピクセル(複数)は、まとまって(共同して)、全てのパッチを包囲する連続した「周辺(environs)」領域L0を形成する。
【0069】
より一般的に言えば、本発明は、露光の候補(複数)であり、ターゲットの表面に渡って分散的に位置する複数の別個の有限領域である、ターゲット表面上の所定の領域を規定(画定)すること、及び、(関連する処理ステップにおける)露光処理をこれらの所定の領域に限定することを提供する。従って、ターゲット表面の残りの部分は、露光処理から除外される。換言すれば、(関連する処理ステップ中に実行される)何れの露光も、これらの所定の候補領域に限定され、露光はこれらの領域(その都度の適用に応じて、これらの領域の全て又は選択される幾つかの領域のみ)内でのみ行われる。本発明の意義において、これらの所定の領域は「パッチ」又は「クラスタ領域」と称される。露光されない残りの部分は「周辺(environs)」と称される。図1A及び1Bに示される「相補型リソグラフィ」の場合、これらの別個の有限領域は、矩形グリッドに沿って配置された、カット矩形(複数)の可能位置113に対応するパッチL9である。他の適用及び/又は他のタイプの処理は、一般的に任意の好適な幾何学的タイプであり得る特定のグリッドに沿って配置された、有限サイズの複数の別個の領域を形成する「パッチ」の他のタイプの配置を想定し得ることは明らかである。
【0070】
本発明は(本出願人の米国特許第7,777,201号および米国特許第8,222,621号に記載されているような)既知の描画技術と同様に位置付け(位置決め)精度および描画モード冗長性を達成しつつ、図8Bの切断(cutting)構造のような限定されたターゲット領域の疎らさ(sparsity)を利用することによって、パフォーマンスの大幅な向上を提供することは当業者には明らかであろう。
【0071】
図10は、例えば、3×3ピクセルを含む複数のパッチL9の1つを示す。ピクセルの各々について、その位置は、図10においてそれぞれドット116によって示されている露光位置によって規定される。パッチL9内の露光位置(複数)は、それぞれ隣接するピクセルの露光位置までの距離ubをなして互いに対し配置される。この例ではub=bである。図11Aから分かるように、パッチ(複数)L9は、その幅がフリー(即ち「ドーマント」)露光位置の少なくとも1つの行または列に対応するスペースu0だけ互いに対し分離されている。換言すれば、複数のパッチ(クラスタ領域)L9は、露光位置(exposure positions)の位置(locations)に関して、パッチ内の隣接距離ubの少なくとも2倍である間隔ux、uyだけ互いに対し分離されている。
【0072】
図11A及び図11Bを参照すると、本発明の好適な具体化においては、パッチのパターンピクセル(より正確には、露光位置)が、異なるストライプ露光中に露光される異なる位置付けグリッドに関連付けられる部分的な位置付けグリッドが使用される。例えば、図11Aに示す第1のストライプs91の露光中に、ハッチングが付されたパターンピクセルが露光されるが、この露光位置のセットは、第1の位置付けグリッドG1に対応する。その後、第2のストライプs92が露光され、これにより、図11Bにおいてハッチングが付されたピクセルによって示される第2の位置付けグリッドG2が実現される。従って、これら2つのストライプは、あわせて(共同して)、パッチL9の完全なセットのパターンピクセルを露光する役割を果たす。これに対し、「周辺」領域L0に属する「ドーマント」露光位置のピクセルは描画されず、従って、全く露光されない。矩形C91、C92は、それぞれ、ストライプs91、s92に対して(図9と同じ寸法の)同じ露光セルの位置を示す。本実施形態では、ストライプs91、s92は完全に重なり合うように配置されている。他の実施形態では、ストライプ(複数)は、それらの幅の半分だけ重なり合っていてもよく、パッチ及び対応する位置付けグリッドの位置は、それに応じて適合化される。
【0073】
図12及び図13A、Bは、o=2のオーバーサンプリングを用い、図8A、Bの「相補型リソグラフィ」露光と基本的に同じ単位セルをエミュレートする露光プロセスに関する本発明の他の一実施形態を示す。具体的には、本実施形態は、ビームレットスポットサイズb=20nm、NX=NY=8のアパーチャアレイプレートを用い、その結果、cX=cY=N・b=160nmのビームレットピッチ(即ち、隣接するビームレット間の位置オフセット)が生じる、図6Bについて上述したような、「ダブルグリッド」描画モードに基づいている。なお、o>1の場合、1つの露光位置は夫々複数のピクセル即ち一般的にはo個のピクセルをカバーする(1つの)対応する露光スポットの位置を規定するため、(上述の実施形態で説明したo=1の場合とは対照的に)ピクセル(複数)のコンセプトと露光位置(複数)のコンセプトは最早一致しないことに留意することは重要である。
【0074】
図12は、1つの露光セルC8内におけるパッチL4の位置及び関連するパターンピクセル位置を示す。破線の矩形bi2は、寸法cX×cYの露光セルC8に関して見出される、ターゲット上に形成されるb×bのサイズを有するビームレットスポット(即ちアパーチャ画像)の一例のサイズを示す。図12におけるドット(黒点)及び小さな白丸(これらのうちの幾つかは符号px0、px1で示されている)は、「露光位置」とも称される、ビームレットスポットの個別の(中央)位置を示す。本発明に応じ、露光位置は、互いに対し分離されかつドーマント周辺領域LVに埋め込まれている1つまたは幾つかの別個の領域即ち「パッチ」L4に限定される。破線の矩形bi2’は、小さな×印px2'が付されたドットによって示される露光位置に対応するビームレットスポット位置の他の一例を示す。
【0075】
オーバーサンプリングパラメータo>1が用いられているため、位置オフセットe(「位置付けグリッドピッチ」とも称される、ビームレットがターゲット上でとり得る隣接する露光位置間の位置オフセット)は、ビームレットスポットサイズbより小さい。オーバーサンプリングパラメータo=2の本実施形態では、位置オフセットはe=b/o=ex=ey=10nmである。図示の実施形態ではex=eyであるが、exとeyが異なる値を有するよう修正することは容易である。
【0076】
図12の構成は、CPx=80nm及びCPy=40nmに従って配置されたパッチL4のグリッドを規則的矩形グリッドにおいて具現化したものであり、各パッチは20×20nmのサイズのカット(複数)(及びアパーチャ画像(複数))の(1つの)カット位置に対応する。露光位置は、水平(紙面左右)方向および垂直(紙面上下)方向にGx=Gy=20nmまで広げられている。各パッチL4は、好ましくは、カット位置の中心位置に中心付けられる(centered)が、そこには(図12において小さな白丸で示されている)それぞれの中心露光位置px0が位置付けられ、複数の追加露光位置px1によって包囲されている。パッチ(複数)L4は、2つの軸方向の少なくとも一方において重なり合わず、露出位置が形成されていない領域(「ドーマント空間(スペース)」)によって分離されている。例えば、図12の実施形態では、これらのフリー(空の)領域は、フル(完全)グリッドにおいては露光位置として使用もされる「不使用」位置の列および行に対応する。これらのフリー領域は、一緒に合わせられると(まとめられると、ないし全体で)、周辺領域LVを表す。
【0077】
パッチL4の各々において、ピクセル位置は(隣り合うピクセルに関し)互いに対し距離ex、eyのところに配置される。パッチ(複数)L4は「ドーマント」パターンピクセルの少なくとも1つの行または列に対応する間隔だけ互いに対し分離されている。従って、パッチL4は、各パッチ内の隣接距離ex、eyの少なくとも2倍の間隔vx、vyだけ互いに対し分離される。
【0078】
図13A及び図13Bを参照すると、図12AのセルC8内の全てのパッチL4の露光位置px0、px1は、異なる位置付けグリッドG21、G22に従って露光される。位置付けグリッド(複数)は、露光手順中にターゲット上に形成されるビームレット画像位置(複数)に割り当てられる位置(複数)に関するものである。この実施形態のオーバーサンプリングo=2に応じて、各パッチL4は、それぞれがo×o=2×2=4個のパターンピクセル位置をカバーする複数のビームレット画像によって露光される。例えば、第1の位置付けグリッドG21は、図13Aに示されている5つの位置付けグリッド位置g10、g11、g12、g13、g14を含み、第2の位置付けグリッドG22は、図13Bに示されている4つの他の位置付けグリッド位置g21、...、g24を含む。(対応する露光スポット(複数)の領域(複数)を示す破線の矩形によって表されている)位置付けグリッド位置g10~g24の各々について、対応する露光位置が、図13A及び図13Bにおいて、それぞれのドット(位置g11~g24の場合)又はそれぞれの矩形の中心を示す小さな白丸(位置g10の場合)によって示されている。位置付けグリッドG21、G22の各々は、異なるストライプ中において露光され、それらのストライプは好適な態様でオーバーラップする(重なり合う)。オーバーラップストライプに基づく露光方法は、本出願人の米国特許第8,222,621号および米国特許第9,053,906号に詳細に説明されている。位置付けグリッドはパッチ(クラスタ領域)に限定された位置のみを含むので、それらは限定的位置付けグリッドを表す。
【0079】
従って、この例では、可能なバイア(via)/カット位置の中心の周りのGx=Gy=20nmの方形の領域(neighborhood)として実現されているパッチL4に露光位置を限定することにより、図12に示す限定的位置付けグリッドが(結果として)残る(得られる)。フルグリッドの状況(図6B)と比べると、露光位置の分数
しか残らない。従って、s-1=72%だけのデータ/面積(面積当たりのデータ量)の減少が達成される。
【0080】
完全にオーバーサンプリングされたグリッドのように、追加の露光位置は追加の冗長性を可能にする(オーバーラップビームレットの位置付け(位置決め)エラーは平均化される)。さらに、パッチ内の露光位置(複数)間において線量を再分配することによって、カットの位置付けおよびサイズは変更されることができるが、これは(例えばターゲット変形または投影光学系の歪みによる)既知の位置付けまたはスケールエラーの補正に役立つ。この手順の例は図17(A)~(C)に示されている。図17(A)の線量分布は、50%線量の輪郭(枠)に沿った露光および現像(development)の後、最大冗長性を有する(実線の矩形で示された)中心付けられたカットをもたらす。図17(B)及び(C)の2つの分布は、図12Aの場合において、線量の再分配の利用によりパッチ内のカットの移動(図17(B)では紙面右側への移動、図17(C)では紙面右下側への移動)が可能であることを示す。(米国特許第7,276,714号に開示されているように)上部の中心位置と下部の最大偏差との間を補間することにより、パッチ内において正確な位置決めを達成することができる。
【0081】
図17(A)及び図17(C)は、本発明の限定的位置付けグリッドも、該限定的位置付けグリッドに属する公称露光位置での線量を調節することによって、例えばビームフィールドに渡る歪みに起因する位置ずれの補正が可能であることを示す。これは、とりわけ、パッチ内の露光位置(複数)を、ターゲット上におけるビームレットスポットの重ね合わせをもたらすオーバーサンプリングパラメータo>1に対応する距離に維持することによって可能である。補正可能である最大のずれは、対応するパッチの幅または高さの分数で与えられる。図12に示す例では、両方の座標方向においてGx/2=Gy/2=10nmである。
【0082】
クラスタ構成の別の一例が図18に示す実施形態において与えられているが、これも20×20nmのカット/アパーチャ画像サイズについてのものである。図12とは対照的に、パッチ(複数)L3は、X方向(図18の(紙面)水平(左右)方向)では完全に重なり合い(オーバーラップし)、X方向に沿ったカット構造の任意に位置付けを可能にしているが、複数のストライプの周辺領域LV3によって分離されて、Y方向に沿った分離を提供している。1つのビームレットスポットのサイズは、1つのビームレットスポット位置の例示的な具体例bi3'をそれぞれ表す破線の矩形によって示されている。各露光位置px3’は小さな×印を伴ったドット(黒点)で示されている。ここでは、o=4及びex=ey=5nm即ち「クワッドグリッド」オーバーサンプリングが、より高い冗長性及びより正確な位置付け(位置決め)のために使用されている。(紙面)垂直(上下)方向においては、Gy/2=5nmまでの中心位置(例えば、bi3')からの位置ずれは補正可能であり、パッチ距離は(図12Aのように)CPy=40nmである。完全な「クワッドグリッド」と比べると、全体として、露出位置の37.5%が残っている。
【0083】
また、アパーチャ画像cX、cYのピッチは、一般に、自由に選択することができるが、「相補型露光」の場合における好適な選択は、このピッチが、露光セル内で相応する(適切な)周期性を得るために、バイア(via)/カット構造のピッチCPx、CPyの整数倍であるようなものであることに留意すべきである。他のパラメータGx、Gy、ex、eyは、描画プロセスの特定の具体化で必要とされるような所望の冗長性および最大補正可能変位を達成するよう、自由に選択することができる。
【0084】
本発明のさらなる発展形態によれば、パッチ内の露光位置は(パッチの限られた領域に限定されているような)規則的な矩形ないし方形グリッドに配置される必要はないが、総セットの(a general set of)位置に従って位置付けられることができる。尤も、規則的グリッド構造からある程度ずれることが望まれる場合や、グリッド構造がランダムなセットの(a random-like set of)位置によって完全に置き換えられてもよい場合もある。露光位置は、例えば(アパーチャ画像形状とは異なり得る)特定のバイア/カット形状を描画するよう最適化されることができる。図14は、異なるターゲット形状を生成するように最適化された様々な露光位置セットの好適な選択の例を示す。具体的には、図14(A)~(C)のフレーム(紙面左側の列)は、それぞれ、5つの露光位置のセット120~124、130~134、140~144(紙面左側の列のドット)と、各フレームにおいてシェーディング(陰影付け)によって示されているシミュレーション計算によって得られた線量プロファイルを示す。線量プロファイルを得るために、単一の露光位置についてのボケ(blurred)アパーチャ画像111(図14(G))のコピーが、複数の露光位置に(露光プロセスをシミュレートするために)0.1nmグリッドに重ねられている。なお、これらの露光位置は、夫々の割り当て線量と共に、ターゲット形状を最適に再現するように選択されたものである。図14(G)のボケアパーチャ画像111は、リソグラフィ装置の結像機能をモデル化するために、図14(H)に示されたガウス点像分布関数110との畳み込みにより得られる。図14(D)~(F)のフレーム(紙面右側の列)は、線量プロファイルの0.5レベルで得られたクリア線量(ドーズツークリア:dose-to-clear)の輪郭125、135、145を示す。これらは、破線のボックス126、136、146で示される理想的なターゲット形状に対する非常に良好な近似を表す。図14(E)及び(F)の平行四辺形形状のバイア/カットは斜めに(対角線方向に:diagonally)ラインを切断するために使用することができる。図14(A)~(C)の各々において、中心位置120、130、140は、理想的なターゲット形状の中心と一致する。4つの外側の形状補正露光位置121~124、131~134、141~144(及びそれらに割り当てられた線量)は、シミュレートされたターゲット形状125、135、145の理想的なターゲット形状126、136、146に対する忠実性を最大化するよう、位置および線量を変化させることによって得られたものである。これは、アパーチャスポットと理想的なターゲット形状126、136、146の対称性を考慮に入れて行われた。
【0085】
図15は、図14(B)及び(E)に示された矩形構造をエミュレートするよう適合化された、さらなる一実施形態による複数のピクセル位置を含むパッチL5を示す。同様に、図16は、図14(C)及び(F)に示された平行四辺形形状の構造をエミュレートするよう適合化された別の一実施形態による複数のピクセル位置を含む別のパッチL6を示す。両方の例は、ピッチCPx=CPy=80nm及びアパーチャ画像ピッチcX=cY=160nmで、15nm×30nmのサイズのバイア/カット(複数)を描画することが意図されている。各パッチについて、(太字記号で示されている)中心点位置及び形状補正位置(細字記号)は、ex=ey=10nm、Gx=Gy=20nmの(それぞれの公称位置の周りの)それぞれの方形グリッドに配置される。この配置は、線量変化による位置ずれの補正を可能にする。上述のように、補正可能な最大位置ずれは、両方の座標方向において、e=Gx/2=Gy/2=10nmである。個別パッチL5、L6は、図12Aのものに類似するが、Y方向に沿った距離が好適に(例えば2倍に)増加された(n個の)露光セルに配置されることができる。従って、1つの露光セルは、N=8及びo=2である技術水準の「完全なダブルグリッド」の(No)=256個の位置と比べて(少ない)、180個のピクセル位置に対応する4つのパッチを含み、それにも拘わらず、正確な形状表現の極めて大きな向上を可能にする。
【0086】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態及び実施例の変更・調整が可能である。更に、本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例(実施形態)の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0087】
さらに、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0088】
さらに、上記の各文献の全開示は引用をもって本書に繰り込み、本書に記載されているものとする。
【0089】
上記の実施形態及び実施例の全部又は一部は、以下の付記のようにも記載され得るが、それらに限定されない。
[付記1]荷電粒子からなるエネルギー放射のビームをターゲットに照射する方法。前記ターゲットは前記ビームによる露光が行われるべき露光領域を含む。該方法は、以下のステップ:
- 前記露光領域内の固定ピクセル位置に位置付けられる複数のパターンピクセルを規定すること、
- 前記露光領域を、所定の幅を有する複数のストライプに分割すること、
- 各ストライプに対して前記ターゲット上に複数の露光位置を規定すること、但し、各露光位置は複数の露光スポットの1つの位置(location)を表し、該露光スポットは均一なサイズ及び形状を有し、各露光スポットは少なくとも1つのパターンピクセルをカバーすること、
- 前記放射に対し透過性の複数のアパーチャを有するパターン規定装置を提供すること、
- 前記パターン規定装置を照明ワイドビームによって照明すること、該照明ワイドビームは前記アパーチャを通って前記パターン規定装置を横断し、それによって、対応する複数のビームレットからなるパターン化ビームが形成されること、
- 前記ターゲットの位置において前記パターン化ビームからパターン画像を形成すること、該パターン画像は前記複数のアパーチャの少なくとも一部の画像を含み、該画像は所望のパターンに従って前記露光スポットを順次露光すること、
- 前記ターゲットと前記パターン規定装置との間の相対移動を生成することにより、前記ストライプに対応する経路に従って前記ターゲット上における前記パターン画像の移動を生成すること、移動方向を横切る方向における前記パターン画像の幅は少なくともそれぞれのストライプの幅であること、
を含む。
複数の露光位置を規定するステップは、前記ターゲット上のそれぞれの固定位置(locations)において規定される互いに分離された複数のクラスタ領域について行われること、及び、
- 各露光位置が前記クラスタ領域のうちの1つの内部にあるように前記露光位置の位置(locations)を規定すること、但し、前記クラスタ領域の各々は各露光位置が同じクラスタ領域の少なくとも1つの露光位置に対して所与の隣接距離以内にあるように配置された複数の露光位置を含み、前記隣接距離は前記ターゲット上に生成されるアパーチャの画像のサイズよりも小さいこと、
を含む。
前記クラスタ領域は露光位置が存在しない空間によって互いに分離され、前記空間は前記露光領域内の少なくとも1つの方向に沿って前記隣接距離の少なくとも2倍の幅を有する。
[付記2]上記の方法において、複数のストライプが描画される。但し、各ストライプはそれぞれのストライプ内の前記クラスタ領域に対する露光位置のグリッド位置のサブセットに関連付けられること、異なるストライプのサブセットは、互いに異なり、及び、一緒に合わせられると、前記クラスタ領域内の前記露光位置を完全にカバーするよう結合する(組み合わさる)。
[付記3]上記の方法において、前記クラスタ領域のそれぞれは、グリッド位置のそれぞれのサブセットに関連付けられた少なくとも2セットの露光位置を含み、及び、該少なくとも2セットの露光位置の各々は最小の数の露光位置を含む。但し、前記最小の数はすべてのクラスタ領域に対して有効であり、前記最小の数は4、5又はそれより大きい。
[付記4]上記の方法において、前記少なくとも2セットの露光位置の各々について、同じサブセットのグリッド位置に関連付けられている異なるクラスタ領域の露光位置の空間的配置は、夫々のクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、同じである。
[付記5]上記の方法において、前記クラスタ領域の各々は複数の数の露光位置を含む。但し、該複数の露光位置は全てのクラスタ領域に共通の最小の数以上であり、該最小の数は4、5又はそれ以上である。
[付記6]上記の方法において、各クラスタ領域のサイズは、前記移動方向に平行な方向及びその方向に対する横方向の両方に関し、前記ターゲット上に結像されるアパーチャの画像のサイズよりも少なくとも3/2の倍率だけより大きい。
[付記7]上記の方法において、前記クラスタ領域内の位置の配置は1つのクラスタ領域から次のクラスタ領域まで繰り返される。
[付記8]上記の方法において、前記ターゲット上に同時に露光される露光位置の当該位置(locations)は、前記パターン規定装置における前記アパーチャの規則的な2次元配置の投影画像に直接対応する2次元グリッドに従って配置される。
[付記9]上記の方法において、クラスタ領域の各々について、それぞれのクラスタ領域の中心位置に対し相対的に見た場合、露光位置の空間的配置は異なるクラスタ領域について同じである。
[付記10]上記の方法において、前記クラスタ領域の中心位置のセットは、前記ターゲット上のアパーチャ画像の位置によって表されるいくつかの位置付けグリッドの結合体(union)である。
[付記11]上記の方法において、前記クラスタ領域は所定の位置に位置付けられる。但し、該所定の位置は前記露光領域内の前記ターゲット上に規則的配置を形成し、該規則的配置は前記2次元グリッドのスーパーセット(superset)に対応する。
[付記12]上記の方法において、各ストライプは、[前記]主方向[前記移動方向]に沿って配置された少なくとも2列のクラスタ領域を含む。
[付記13]上記の方法において、1つのクラスタ領域内で、前記露光位置は規則的なグリッドに沿って配置される。
[付記14]上記の方法において、1つのクラスタ領域内で、前記露光位置は前記移動方向に関し互いに対し斜めの角度で配置されている。
[付記15]上記の方法において、1つのクラスタ領域内で、前記露光位置のセットは規定の空間的配置で配置された一群の露光位置を含む。但し、該規定の空間的配置は該一群の露光位置の各々が露光されたとき、所定の形状を生成するよう構成される。
[付記16]上記の方法において、前記クラスタ領域は複数のラインに沿って配置される。但し、該複数のラインは均一なオフセットをなして位置付けられる。
[付記17]上記の方法において、前記複数のライン[の前記ライン]は、前記ターゲット上に予め形成されるラインパターンのラインに対応し、及び、前記クラスタ領域は規則的な間隔をなして前記(複数の)ラインに沿って配置される。
[付記18]上記の方法において、前記隣接距離は、アパーチャの画像の公称サイズ以下である。
[付記19]上記の方法において、前記露光位置は露光されるべきパターンピクセルの実際パターンに応じたそれぞれの露光線量で選択的に露光される。但し、該露光位置の位置は該実際パターンに依存しない。
[付記20]上記の方法において、それぞれのパターンピクセルを前記ターゲット上の露光位置に露光するために、一定のタイミングの露光ステップが用いられ、及び、該露光ステップの間、前記パターン画像の位置は、少なくとも[前記]主方向に沿った前記相対移動に関し前記ターゲットと共に移動され、露光ステップと露光ステップの間に、前記パターン画像の位置が前記ターゲットに対して変更され、前記パターン規定装置の位置に対する前記パターン画像の位置の移動を全般的に補償する。前記露光ステップの持続時間は、前記主方向に沿った均一な前進距離に対応する。但し、該前進距離は、前記主方向に沿った同じ部分グリッド内のアパーチャ画像のサイズよりも大きい。
[付記21]上記の方法において、前記クラスタ領域は、前記移動方向に平行な方向及びその方向に対する横方向の両方に沿って、露光位置が存在しない空間によって互いに分離されている。
[付記22]上記の方法において、前記倍率は、前記ターゲット上に結像されるアパーチャの画像のサイズの少なくとも2倍である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18