(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】筆記具用熱変色性インキ組成物及びそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
C09D 11/17 20140101AFI20221118BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20221118BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20221118BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C09D11/17
B43K7/00
B43K8/02 100
B43K29/02 F
(21)【出願番号】P 2018175548
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三田 真之
(72)【発明者】
【氏名】千賀 邦行
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-059256(JP,A)
【文献】特開2017-088879(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/17
B43K 7/00
B43K 8/02
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包された可逆熱変色性顔料を用いた筆記具用インキ組成物であって、前記(イ)成分が、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であ
り、前記(イ)成分と(ロ)成分が、1:3~1:30の比率で配合される筆記具用熱変色性インキ組成物。
【化1】
〔式中、QはC(R)又はNを示し、Q1はC(R1)又はNを示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのRが結合して環を形成してもよい。R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR1が結合して環を形成してもよい。m、nは1~3の数を示す。R2、R3は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示すが、2つのR2またはR3同士が結合して環を形成してもよい。〕
【化2】
〔式中、Q2はC(R4)又はNを示し、Q3はC(R5)又はNを示す。R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR4が結合して環を形成してもよい。R5は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR5が結合して環を形成してもよい。p、qは1~3の数を示す。R6、R7は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示すが、2つのR6またはR7同士が結合して環を形成してもよい。〕
【請求項2】
前記請求項1に記載の筆記具用熱変色性インキ組成物を内蔵した筆記具。
【請求項3】
前記筆記具による筆跡を摩擦熱で変色する摩擦部材を備えてなる請求項2記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用熱変色性インキ組成物と筆記具に関する。更に詳細には、筆跡が熱変色性インキであることを容易に判別できる筆記具用熱変色性インキ組成物とそれを用いた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている摩擦熱消色性筆記具は、インキの消色温度が60℃程度に設定されており、筆跡を付属の消去部材で擦ることで摩擦熱を発生させ、60℃以上とすることで筆跡が透明化して消色状態となるものである(例えば、特許文献1、2参照)。
前記筆記具には、詰め替え用レフィルを内蔵するものが多く、レフィル販売もされているため、該レフィルは熱変色性筆記具に収容される他、従来の筆記具(非熱変色性インキを内蔵したレフィルを収容する)の外装(筆記具本体)に収容されて用いられることがある。
前述の使用方法で用いられた場合、形成された筆跡が熱変色性インキによるものか、非熱変色性インキによるものかを筆跡から判別することは難く、筆跡が60℃以上になるように、消去部材で強く擦過して色変化の有無を確認する必要があるため、手間がかかり、熱変色性インキであった場合には、確認するたびに筆跡が消えてしまうという不具合が生じるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-1573号公報
【文献】WO2017/098612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規の電子供与性呈色性有機化合物を用いることで、筆跡を消去することなく熱変色性インキであることを視覚的に容易に判別できる、利便性に富んだ筆記具用熱変色性インキ組成物と、それを用いた筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包された可逆熱変色性顔料を用いた筆記具用インキ組成物であって、前記(イ)成分が、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物であ
り、前記(イ)成分と(ロ)成分が、1:3~1:30の比率で配合される筆記具用熱変色性インキ組成物を要件とする。
【化1】
〔式中、QはC(R)又はNを示し、Q1はC(R1)又はNを示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのRが結合して環を形成してもよい。R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR1が結合して環を形成してもよい。m、nは1~3の数を示す。R2、R3は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示すが、2つのR2またはR3同士が結合して環を形成してもよい。〕
【化2】
〔式中、Q2はC(R4)又はNを示し、Q3はC(R5)又はNを示す。R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR4が結合して環を形成してもよい。R5は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基を示すが、2つのR5が結合して環を形成してもよい。p、qは1~3の数を示す。R6、R7は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示すが、2つのR6またはR7同士が結合して環を形成してもよい。〕
更には、前記筆記具用熱変色性インキ組成物を内蔵した筆記具を要件とし、前記筆記具による筆跡を摩擦熱で変色する摩擦部材を備えてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、筆跡を消去することなく、熱変色性インキであることを軽い擦過等の容易な方法で一時的に変色させることで視覚的に判別できるため、筆跡保持性に優れ、より利便性に富んだ筆記具用熱変色性インキ組成物と、それを用いた筆記具となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】従来の熱変色性インキの色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図2】本発明の熱変色性インキの色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性顔料が適用されるが、本発明では、(イ)成分が、前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が用いられる。
【0009】
前記可逆熱変色性組成物のうち、従来のものは、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物である(
図1参照)。そのため、筆跡が変色する際には、完全消色温度(t
4)前後の状態まで加熱する必要がある。
尚、本発明において、前記可逆熱変色性組成物を用いた際における「筆跡の熱消色時」とは、完全消色温度(t
4)以上となった状態をいう。
【0010】
これに対して本発明では、前記曲線に加え、温度を低温側から高温側に上昇させていくt
2~t
3の間の温度域に変色箇所が得られるため、該変色箇所で色濃度が下がる腰掛形状の曲線となる(
図2参照)。腰掛形状部分(t′
3)を高温側に越えた段階で変色し、そのまま加温しなければ腰掛形状部分の低温側に戻ることで、もとの色相に戻すことができる。そのため、完全消色しない程度の軽い擦過(摩擦)で、熱変色性インキであることを視覚的に容易に判断できる。尚、腰掛形状部分を高温側に越えた段階から更に加温した際には、従来の熱変色性組成物と同様に、筆跡を完全に消色する(t
4)ことができる。
また、前記完全消色状態(t
4)から冷却していくときにも、t
2~t
1の間の温度域に変色箇所が得られ、該変色箇所が腰掛形状の曲線となる。前記腰掛形状部分(t′
2)と、より低温側の完全着色状態(t
1)とで異なる色相を発現するものとなる。
【0011】
(イ)成分として用いられる一般式(1)や一般式(2)で表される化合物は、2個のスピロ環を有するアミノベンゾピラノキサンテン化合物であり、水素イオンの授受によって、1つのスピロ環が開環するモノカチオン型と、2つのスピロ環が開環するジカチオン型の構造をとることができる。
本発明においては、加熱によって(ロ)成分から水素イオンを授受してモノカチオン型となることで、第一の色変化が生じ、更に加熱することで、2つ目のスピロ環が開環してジカチオン型となることで、第二の色変化が生じる。
そのため、単一の化合物で二段階に色変化を生じるという、今までにない変化が視覚される興趣に富んだ筆跡が得られる。
【0012】
更に、従来から用いられる(イ)成分、即ち、色を決める成分である電子供与性呈色性有機化合物(顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物)を併用することもできる。
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物が挙げられ、そのうち、発色時に蛍光性を有するためには、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物、ジアザローダミンラクトン系化合物が用いられ、ピリジン化合物が好適に用いられる。
【0013】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシフェニル-4-イソプロポキシフェニルスルホン、4-ベンジルオキシフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4-t-ブチル-2´,4´-ジヒドロキシベンゾフェノン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記化合物を用いてマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0015】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸n-デシル、ミリスチン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p-tert-ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ-(n-ノニル)、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールトリミリステート、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0016】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2-エチルヘキシル、ベヘン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-エチルヘキシル、カプリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、カプロン酸2-メチルブチル、カプリル酸2-メチルブチル、カプリン酸2-メチルブチル、パルミチン酸1-エチルプロピル、ステアリン酸1-エチルプロピル、ベヘン酸1-エチルプロピル、ラウリン酸1-エチルヘキシル、ミリスチン酸1-エチルヘキシル、パルミチン酸1-エチルヘキシル、カプロン酸2-メチルペンチル、カプリル酸2-メチルペンチル、カプリン酸2-メチルペンチル、ラウリン酸2-メチルペンチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸2-メチルブチル、ベヘン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸1-メチルヘプチル、カプロン酸1-エチルペンチル、パルミチン酸1-エチルペンチル、ステアリン酸1-メチルプロピル、ステアリン酸1-メチルオクチル、ステアリン酸1-メチルヘキシル、ラウリン酸1,1-ジメチルプロピル、カプリン酸1-メチルペンチル、パルミチン酸2-メチルヘキシル、ステアリン酸2-メチルヘキシル、ベヘン酸2-メチルヘキシル、ラウリン酸3,7-ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7-ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7-ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7-ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7-ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7-ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12-ヒドロキシステアリン酸2-メチルペンチル、18-ブロモステアリン酸2-エチルヘキシル、2-ケトミリスチン酸イソステアリル、2-フルオロミリスチン酸2-エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0017】
更に、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0018】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデルシ、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等が挙げられる。
【0019】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0020】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0021】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N-メチルアミド、カプリル酸N-メチルアミド、カプリン酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-メチルアミド、ミリスチン酸N-メチルアミド、パルミチン酸N-メチルアミド、ステアリン酸N-メチルアミド、ベヘニン酸N-メチルアミド、オレイン酸N-メチルアミド、エルカ酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-エチルアミド、ミリスチン酸N-エチルアミド、パルミチン酸N-エチルアミド、ステアリン酸N-エチルアミド、オレイン酸N-エチルアミド、ラウリン酸N-ブチルアミド、ミリスチン酸N-ブチルアミド、パルミチン酸N-ブチルアミド、ステアリン酸N-ブチルアミド、オレイン酸N-ブチルアミド、ラウリン酸N-オクチルアミド、ミリスチン酸N-オクチルアミド、パルミチン酸N-オクチルアミド、ステアリン酸N-オクチルアミド、オレイン酸N-オクチルアミド、ラウリン酸N-ドデシルアミド、ミリスチン酸N-ドデシルアミド、パルミチン酸N-ドデシルアミド、ステアリン酸N-ドデシルアミド、オレイン酸N-ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N-メチルアミド、アジピン酸N-メチルアミド、グルタル酸N-メチルアミド、マロン酸N-メチルアミド、アゼライン酸N-メチルアミド、コハク酸N-エチルアミド、アジピン酸N-エチルアミド、グルタル酸N-エチルアミド、マロン酸N-エチルアミド、アゼライン酸N-エチルアミド、コハク酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-ブチルアミド、グルタル酸N-ブチルアミド、マロン酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-オクチルアミド、アジピン酸N-ドデシルアミド等が挙げられる。
【0022】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
〔式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X
1、X
2のいずれか一方は-(CH
2)
nOCOR
2又は-(CH
2)
nCOOR
2、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、R
2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y
1及びY
2は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1~3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R
1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR
1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化4】
〔式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。〕
前記化合物として具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0023】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
〔式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。〕
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルを例示できる。
【0024】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
〔式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。〕
前記化合物としては、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0025】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】
〔式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。〕
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0026】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化8】
〔式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。〕
前記化合物としては、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0027】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化9】
〔式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。〕
前記化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルを例示できる。
【0028】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
【化10】
〔式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数3乃至18の脂肪族アシル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。〕
前記化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。
【0029】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(9)で示される化合物を用いることもできる。
【化11】
〔式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。〕
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステルを例示できる。
【0030】
特に、前述の(ハ)成分のうち、化学構造中に芳香環を1個以上有するものが本発明においては好適である。本発明で(イ)成分として用いられる一般式(1)や一般式(2)の化合物は、(ハ)成分への溶解性が低い傾向にあるが、化学構造中に芳香環を1個以上有するものは、前記(イ)成分に対する溶解性が高いため、一般式(1)や一般式(2)の化合物との相性がよく、より好適に用いられる。
【0031】
本発明の可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分3~30、好ましくは5~20、(ハ)成分5~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
特に(イ)成分と(ロ)成分が、1:3~1:30(好ましくは5~20)の比率で配合されることで、着色状態(第1色)が高濃度で鮮明な色調となるため、第1色と第2色(第1色から加熱した後の着色状態)のコントラストがより明瞭なものとなる。
【0032】
更に、各種光安定剤を必要により添加することができる。
前記光安定剤は、(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物の光劣化を防止するために含有され、(イ)成分1質量%に対して0.3~24質量%、好ましくは0.3~16質量%の割合で含有される。又、前記光安定剤のうち、紫外線吸収剤は、太陽光等に含まれる紫外線を効果的にカットして、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する。又、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等は光による酸化反応を抑制する。
前記光安定剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
前記可逆熱変色性組成物は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散したり、或いは、マイクロカプセルに内包することによって可逆熱変色性顔料として用いられる。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましく、壁膜の比率が前記範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)である。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.01~50μm、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは0.5~20μmの範囲が実用性を満たす。
尚、平均粒子径の測定は、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合には、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、製品名:Multisizer 4e)を用いてコールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
【0034】
前記可逆熱変色性顔料の変色について説明する。
通常、可逆熱変色性顔料は
図1に示すように、消色状態からの降温により完全発色温度(t
1)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温により完全消色温度(t
4)に達すると完全に消色状態になる顔料である。
具体的に、前記可逆熱変色性顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性は、
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、t
4は完全に消色した状態に達する温度(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、t
3は消色し始める温度(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、t
2は発色し始める温度(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、t
1は完全に発色した状態に達する温度(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、t
1~t
3間の上方直線と、t
2~t
4間の下方直線と垂直距離が変色のコントラストを示す尺度であり、t
1~t
2間の縦線と、t
3~t
4間の縦線との中央値間の距離がヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
【0035】
これに対して本発明では、
図2に示すような色濃度-温度曲線で表される。
具体的には、温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、t
4は完全に消色した状態に達する温度(完全消色温度/第二変色温度)における濃度を示す点であり、t’
3は第一変色温度における濃度(第2色)を示す点であり、t
3は消色し始める温度(消色開始温度)における濃度を示す点であり、t
2は発色し始める温度(発色開始温度)における濃度を示す点であり、t’
2は第一変色温度における濃度(第2色)を示す点であり、t
1は完全に発色した状態(第1色)に達する温度(完全発色温度)における濃度を示す点である。
完全発色温度(t
1)より低温で維持された顔料(インキ)は、第1色を呈しており[この時(イ)成分はジカチオン型となっている]、昇温していき、消色開始温度(t
3)を越えると変色が開始され、第一変色温度(t’
3は)に達すると、第2色を呈する[この時(イ)成分はモノカチオン型となっている]。更に昇温していき、完全消色温度(第二変色温度t
4)に達すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して着色(2)になり、完全消色温度(t’
4)に達すると、消色状態となる。
降温により完全発色温度(t
1)に達すると、発色して第1色を呈する。
尚、非変色性の着色剤を添加することにより、着色(1)、着色(2)、着色(3)の色変化が視認され、三通りの筆跡が視認できるものとなる。
【0036】
次に、前述の可逆熱変色性顔料を含むインキ組成物について説明する。
前記可逆熱変色性顔料は、水及び/又は有機溶剤と必要により各種添加剤を含む筆記具用ビヒクル中に分散してマーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具用インキとして利用できる。
前記各種添加剤としては、樹脂、粘度調整剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、浸透剤、pH調整剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0037】
そのうち、筆記具用インキに用いられる筆記具用ビヒクルとしては、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルが挙げられる。
前記有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。
【0038】
尚、本発明のインキ組成物には、必要により染料や顔料を併用することもできる。
染料は、水性媒体に溶解可能な酸性染料、塩基性染料、直接染料が全て使用可能である。
顔料は、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料や蛍光顔料を例示できる。
更に、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、蓄光性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等を用いることもできる。
【0039】
前記筆記具用インキとしては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキを挙げることができる。
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100万乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0040】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0041】
前記高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤を用いることにより、前記高分子凝集剤による着色剤(可逆熱変色性顔料)のゆるい凝集体の分散性を向上させることができる。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0042】
更に、有機窒素硫黄化合物を含有させることにより、インキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動による着色剤の沈降をいっそう抑制させることができるため、マイクロカプセル形態である可逆熱変色性顔料の使用時に有利である。
これは、可逆熱変色性顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物として具体的には、2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-(チオシアネートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール(TCMTB)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R-150を例示できる。
尚、前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物の質量比率は1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5であり、前記範囲を満たすことにより、可逆熱変色性顔料のゆるい凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0043】
更に、筆跡の紙面への固着性や粘性を付与するために適用される水溶性樹脂を添加すると、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と有機窒素硫黄化合物を含むインキ中で前記着色剤の安定性を高める機能がいっそう向上する。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
更に、前記ポリビニルアルコールは、けん化度が70~89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールがインキが酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3~3.0質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の範囲で添加される。
【0044】
また、前記インキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0045】
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与したり、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0046】
前記インキの全質量に対し、好ましくは10~40質量%、より好ましくは10~35質量%の可逆熱変色性顔料を含有することができる。顔料の含有量が上記の範囲であることにより、望ましい発色濃度が達成でき、更にインキ流出性の低下を防止することができる。
【0047】
本発明の筆記具用熱変色性インキ組成物は、水と水溶性有機溶剤を含む水性媒体中、又は油性媒体中に、可逆熱変色性顔料とともに、必要により各種添加剤を投入、攪拌して調製される。
また、剪断減粘性を有するインキについては、水性媒体中に、可逆熱変色性顔料、各種添加剤を投入して攪拌、溶解し、更に、これとは別に調製した溶媒中に剪断減粘性付与剤を分散した分散液、或いは、剪断減粘性付与剤を直接投入し、攪拌することにより調製される。
【0048】
前記インキを収容する筆記具について説明する。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3~2.0mm、好ましくは0.3~1.6mm、より好ましくは0.3~1.0mm径程度のものが適用できる。
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
また、前記インキ組成物を出没式のボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0049】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0050】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
前記チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30~70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40~90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0051】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のチップを装着させたり、相異なる色のインキを導出させるペン先を装着させた両頭式筆記具であってもよい。
【0052】
尚、前記筆記具用インキ組成物を収容した筆記具を用いて被筆記面に筆記して得られる筆跡は、冷却具や加熱具により変色させることができる。
前記冷却具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
【0053】
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
尚、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
【0054】
尚、前記摩擦部材は、二種類以上設けることも可能である。その場合、紙面との摩擦により、一方が筆跡変色温度であるt′3からt4の範囲の摩擦熱を発し、他方が筆跡消色温度であるt4以上の摩擦熱を発するものとすることが好ましい。そうすることで、筆跡摩擦時の力加減を気にすることなく、各摩擦部材に応じて熱変色性インキであるかどうかの確認と筆跡の消色を容易且つ確実に発現できるものとなる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を記載する。尚、実施例中の部は質量部であり、平均粒子径は粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、製品名:Multisizer 4e)を用いてコールター法により等体積球相当の粒子を測定した値である。
【0056】
実施例1(
図2参照)
可逆熱変色性顔料の調製
(イ)成分として、一般式(1)のQ及びQ1が炭素原子、R及びR1が水素原子、p及びqが1、R2及びR3がノルマルブチル基である化合物1.5部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン20.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.0μm、t
1:-25℃、t
2:-14℃、t
3:37℃、t′
3:45℃、t
4:60℃であり、温度変化により紫色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0057】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製
前記可逆熱変色性顔料20部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透性付与剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコSW-WET-366〕0.55部、変性シリコーン系消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034〕0.13部、防黴剤〔ロンザジャパン(株)製、商品名:プロキセルXL-2〕0.13部、水58.86部からなる、温度変化により紫色からピンク色、さらにはピンク色から無色と二段変色する筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
【0058】
ボールペンの作成
前記インキ組成物をポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた後、前記パイプの後方より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプ後端に嵌合させ、遠心処理による脱気を行うことでボールペンレフィルを得た。
次いで、前記ボールペンレフィルを先軸胴と後軸胴からなる軸胴内に組み付け、キャップを嵌合することで熱変色性ボールペンを得た。尚、前記後軸胴の後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材が装着される。
【0059】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では紫色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、45℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は紫色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0060】
実施例2
(イ)成分として、一般式(2)のQ2及びQ3が炭素原子、R4及びR5が水素原子、p及びqが1、R6及びR7がノルマルヘキシル基である化合物3.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン20.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.0μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:37℃、t′3:45℃、t4:60℃であり、温度変化により緑色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0061】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0062】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では緑色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、45℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は緑色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0063】
実施例3
実施例2の(イ)成分を3.0部から1.5部に代え、(ロ)成分を20.0部から10.0部に代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.2μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:37℃、t′3:45℃、t4:60℃であり、温度変化により淡黒色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0064】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0065】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では淡黒色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、45℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は淡黒色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0066】
実施例4
実施例2の(ロ)成分を20.0部から10.0部に代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.2μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:37℃、t′3:45℃、t4:60℃であり、温度変化により赤紫色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0067】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0068】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では赤紫色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、45℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は赤紫色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0069】
実施例5
実施例2の(ロ)成分を20.0部から15.0部に代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.2μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:37℃、t′3:45℃、t4:60℃であり、温度変化により黒色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0070】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0071】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では黒色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、45℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は黒色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0072】
実施例6
実施例2の(ロ)成分を4,4′-(2-エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.0μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:35℃、t′3:43℃、t4:60℃であり、温度変化により黒色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0073】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0074】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では黒色の筆跡が視認され、43℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、43℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は黒色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0075】
実施例7
実施例2の(ロ)成分を4,4′-(2-メチルプロピリデン)ビスフェノールに代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.0μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:36℃、t′3:44℃、t4:60℃であり、温度変化により黒色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0076】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0077】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では黒色の筆跡が視認され、44℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、43℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は黒色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。
【0078】
実施例8
実施例2の(イ)成分を、一般式(2)のQ2及びQ3が炭素原子、R4及びR5がターシャリーブチル基、p及びqが1、R6及びR7がノルマルブチル基である化合物に代えた以外は実施例2と同様の化合物からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料を調製した。
前記可逆熱変色性顔料は、平均粒子径2.0μm、t1:-25℃、t2:-14℃、t3:37℃、t′3:45℃、t4:60℃であり、温度変化により緑色からピンク色に変色し、さらにピンク色から無色に変色する。
【0079】
筆記具用熱変色性インキ組成物の調製及びボールペンの作成
実施例1の可逆熱変色性顔料を前記可逆熱変色性顔料に置き換えた以外は同様にして筆記具用熱変色性インキ組成物を調製した。
更に、実施例1と同様の方法でボールペンを作成した。
【0080】
筆跡の変色挙動
前記ボールペンにより筆記して得られる筆跡は、室温下(25℃)では緑色の筆跡が視認され、45℃(t′3)になるとピンク色の筆跡が視認され、43℃から25℃に戻ることでピンク色の筆跡は緑色に戻ることが確認された。さらに加温して60℃(t4)になると無色になることが確認された。