(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】磁気記録媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/08 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
G06K7/08 040
(21)【出願番号】P 2018180045
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
【審査官】打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/085967(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163505(WO,A1)
【文献】特開2001-135034(JP,A)
【文献】特開2018-055627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気情報が記録された磁気記録媒体が投入される投入口と、
前記投入口から延在する媒体移動路と、
前記媒体移動路に配置され、前記磁気記録媒体から磁気信号を検出する第1磁気ヘッドと、
前記第1磁気ヘッドから出力されたアナログ信号に含まれる特定周波数の信号に基づいて前記磁気情報を再生する磁気情報再生部と、
前記媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させる妨害磁界発生部と、
前記第1磁気ヘッドが前記磁気信号の検出を開始するまでは前記妨害磁界発生部に第1妨害磁界を発生させ、前記第1磁気ヘッドが前記磁気信号を検出する期間中、前記妨害磁界発生部に前記第1妨害磁界と周波数スペクトルが異なる第2妨害磁界を発生させる妨害磁界制御部と、
を有
し、
前記第1妨害磁界は、前記特定周波数を含む第1周波数域、および前記特定周波数を含まない第2周波数域の双方にピークが出現する周波数スペクトルを有し、
前記第2妨害磁界は、前記特定周波数を含まない周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有することを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の磁気記録媒体処理装置において、
前記第2妨害磁界は、前記第2周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有することを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の磁気記録媒体処理装置において、
さらに、前記媒体移動路に沿って移動する前記磁気記録媒体の位置を検出するセンサを備えた媒体位置検出機構を有し、
前記妨害磁界制御部は、前記媒体位置検出機構の検出結果に基づいて、前記妨害磁界発生部が発生する妨害磁界を前記第1妨害磁界と前記第2妨害磁界とに切り換えることを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【請求項4】
請求項1から
3までの何れか一項に記載の磁気記録媒体処理装置において、
さらに、前記第1磁気ヘッドより前記媒体移動路の前記投入口側に配置された第2磁気
ヘッドと、前記第2磁気ヘッドから出力された信号に基づいて前記磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かを検出する磁気情報有無検出部と、を有し、
前記妨害磁界制御部は、前記投入口に前記磁気記録媒体が投入された際に、前記妨害磁界発生部に前記第1妨害磁界を断続的に発生させ、
前記磁気情報有無検出部は、前記第1妨害磁界の発生を休止している期間に前記第2磁気ヘッドから出力された信号に基づいて前記磁気記録媒体に前記磁気情報が記録されているか否かを検出することを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【請求項5】
請求項1から
4までの何れか一項に記載の磁気記録媒体処理装置において、
前記磁気情報再生部は、前記アナログ信号のうち、前記特定周波数の信号を選択的に通過させるフィルタを備え、前記フィルタを通過した後のアナログ信号に基づいて前記磁気情報を再生することを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【請求項6】
請求項1から
4までの何れか一項に記載の磁気記録媒体処理装置において、
前記磁気情報再生部は、前記アナログ信号をデジタル信号に変換した後に前記特定周波数の信号に対応するデジタル信号に基づいて前記磁気情報を再生するフィルタリング処理を行うことを特徴とする磁気記録媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気情報が記録された磁気記録媒体から磁気情報を再生する磁気記録媒体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体処理装置では、磁気情報が記録された磁気記録媒体が投入口から媒体移動路に沿って移動する際に磁気ヘッドによって磁気情報の再生を行い、さらには、磁気記録媒体に対して磁気情報の書込みを行う。かかる磁気記録媒体処理装置では、磁気記録媒体投入口付近にスキマーを設け、磁気情報を不正に取得する不正行為が行われることがある。このような不正行為への対策として、投入口付近に妨害磁界を発生させ、磁気情報の不正な読み取りを妨害する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の磁気記録媒体処理装置では、妨害磁界を断続的に発生させ、妨害磁界の発生が休止している期間を利用して、投入口付近に設けたプリヘッドによって、磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、媒体移動路の途中位置にスキマーを配置して、磁気情報を不正に取得する不正行為に対しては有効ではない。従って、媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させればよいが、その場合、以下の問題点がある。媒体移動路では、磁気ヘッドによって磁気記録媒体から磁気信号を検出し、磁気信号から磁気情報の再生を行うため、媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させると、磁気信号から磁気情報の再生が困難となる。一方、磁気信号から磁気情報の再生を行うのに要する時間は、磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かを検出するのに要する時間より長いため、磁気信号から磁気情報の再生を行う時間中、妨害磁界の発生を休止すると、セキュリティが低下してしまう。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、媒体移動路での磁気情報の不正な取得を抑制することができる磁気記録媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る磁気記録媒体処理装置は、磁気情報が記録された磁気記録媒体が投入される投入口と、前記投入口から延在する媒体移動路と、前記媒体移動路に配置され、前記磁気記録媒体から磁気信号を検出する第1磁気ヘッドと、前記第1磁気ヘッドから出力されたアナログ信号に含まれる特定周波数の信号に基づいて前記磁気情報を再生する磁気情報再生部と、前記媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させる妨害磁界発生部と、前記第1磁気ヘッドが前記磁気信号の検出を開始するまでは前記妨害磁界発生部に第1妨害磁界を発生させ、前記第1磁気ヘッドが前記磁気信号を検出する期間中、前記妨害磁界発生部に前記第1妨害磁界と周波数スペクトルが異なる第2妨害磁界を発生させる妨害磁界制御部と、を有し、前記第1妨害磁界は、前記特定周波数を含む第1周波数域、および前記特定周波数を含まない第2周波数域の双方にピークが出現する周波数スペクトルを有し、前記第2妨害磁界は、前記特定周波数を含まない周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、第1磁気ヘッドが磁気信号を検出する期間中も、媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させるので、媒体移動路にスキマーを配置する等の不正行為が行われても、磁気情報が不正に取得されることを防止することができる。また、妨害磁界制御部は、第1磁気ヘッドが磁気信号の検出を開始するまでは妨害磁界発生部に第1妨害磁界を発生させ、第1磁気ヘッドが磁気信号を検出する期間中、妨害磁界発生部に第1妨害磁界と周波数スペクトルが異なる第2妨害磁界を発生させるため、第1妨害磁界と第2妨害磁界とにおける周波数スペクトルの差異に対応する信号処理を行えば、磁気情報の再生を適正に行う
ことができる。かかる態様によれば、磁気情報再生部が、第1磁気ヘッドから出力されたアナログ信号に含まれる特定周波数の信号に基づいて磁気情報を再生するという構成に対応して、第1磁気ヘッドが磁気信号を検出する期間中、特定周波数を含まない周波数域の第2妨害磁界を発生させるため、磁気情報の再生を比較的容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、さらに、前記媒体移動路に沿って移動する前記磁気記録媒体の位置を検出するセンサを備えた媒体位置検出機構を有し、前記妨害磁界制御部は、前記媒体位置検出機構の検出結果に基づいて、前記妨害磁界発生部が発生する妨害磁界を前記第1妨害磁界と前記第2妨害磁界とに切り換える態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記妨害磁界制御部は、前記妨害磁界発生部に、前記第2妨害磁界として、前記第2周波数域の妨害磁界を発生させる態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、さらに、前記第1磁気ヘッドより前記媒体移動路の前記投入口側に配置された第2磁気ヘッドと、前記第2磁気ヘッドから出力された信号に基づいて前記磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かを検出する磁気情報有無検出部と、を有し、前記妨害磁界制御部は、前記投入口に前記磁気記録媒体が投入された際に、前記妨害磁界発生部に前記第1妨害磁界を断続的に発生させ、前記磁気情報有無検出部は、前記第1妨害磁界の発生を休止している期間に前記第2磁気ヘッドから出力された信号に基づいて前記磁気記録媒体に前記磁気情報が記録されているか否かを検出する態様を採用することができる。磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かの検出に要する時間は、磁気記録媒体から一部の磁気信号を取得すればよいので、磁気情報の有無の検出に要する時間より短い。従って、妨害磁界の発生を休止する期間を設けても、セキュリティの大きな低下となりにくい。それより、妨害磁界の発生を休止する期間に磁気情報の有無を検出する構成であれば、比較的簡素な回路構成で済むという利点の方が大きい。
【0012】
本発明において、前記磁気情報再生部は、前記アナログ信号のうち、前記特定周波数の信号を選択的に通過させるフィルタを備え、前記フィルタを通過した後のアナログ信号に基づいて前記磁気情報を再生する態様を採用することができる。
本発明において、前記磁気情報再生部は、前記アナログ信号をデジタル信号に変換した後に前記特定周波数の信号に対応するデジタル信号に基づいて前記磁気情報を再生するフィルタリング処理を行う態様を採用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第1磁気ヘッドが磁気信号を検出する期間中も、媒体移動路に沿って妨害磁界を発生させるので、媒体移動路にスキマーを配置する等の不正行為が行われても、磁気情報が不正に取得されることを防止することができる。また、妨害磁界制御部は、第1磁気ヘッドが磁気信号の検出を開始するまでは妨害磁界発生部に第1妨害磁界を発生させ、第1磁気ヘッドが磁気信号を検出する期間中、妨害磁界発生部に第1妨害磁界と周波数
スペクトルが異なる第2妨害磁界を発生させるため、第1妨害磁界と第2妨害磁界とにおける周波数スペクトルの差異に対応する信号処理を行えば、磁気情報の再生を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁気記録媒体処理装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁気記録媒体処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す磁気記録媒体処理装置の基本動作を示す説明図である。
【
図4】
図1に示す妨害磁界発生部から発生する妨害磁界等の説明図である。
【
図5】
図1に示す第1磁気ヘッドによって磁気記録媒体から磁気情報を再生する工程を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図1に示す第2磁気ヘッドによって磁気記録媒体に磁気情報が記録されているか否かを検出する工程を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら、本発明を適用した磁気記録媒体処理装置1の実施形態を説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体処理装置1の構成を模式的に示す説明図である。
図1に示す磁気記録媒体処理装置1は、磁気情報が記録されたカード等の磁気記録媒体2が投入口11から媒体移動路22に沿って移動する際に第1磁気ヘッド21によって磁気情報の再生等を行う。従って、第1磁気ヘッド21は、投入された磁気記録媒体2の磁気データを検知するための磁気センサを有している。本実施形態において、第1磁気ヘッド21は、磁気記録媒体2に対して磁気情報の書込みも行う。
【0017】
磁気記録媒体処理装置1は、投入口11を備えたゲート部10と、第1磁気ヘッド21を備えた装置本体20とを有している。装置本体20の内部には、投入口11から延在する媒体移動路22が形成され、第1磁気ヘッド21は媒体移動路22に面して配置されている。ゲート部10には、投入口11と、媒体移動路22のうち、投入口11側に位置する投入路12とが設けられている。装置本体20は、媒体移動路22に沿って磁気記録媒体2を搬送する搬送機構30を備えている。また、磁気記録媒体処理装置1は、媒体移動路22に沿って移動する磁気記録媒体2の位置を検出する複数のセンサ(第1センサ131、第2センサ132、第3センサ133、第4センサ134、および第5センサ135)を備えた媒体位置検出機構13を有している。上記のセンサとしては、投入された磁気記録媒体2と接触する検知部材を備えている接触式のセンサ、あるいは光学式のセンサなどが用いられる。
【0018】
ゲート部10は装置本体20の前面から前方Y1に突出している。投入口11はゲート部10の前面に設けられ、幅方向に延在する。ゲート部10は、投入口11の近傍に、媒体位置検出機構13の第1センサ131と、プリヘッドとしての第2磁気ヘッド14とを備えている。第1センサ131は、投入口11に磁気記録媒体2が投入されたことを検知する。第2磁気ヘッド14は、投入された磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かを検知するための磁気センサを有している。
【0019】
ゲート部10の内側には妨害磁界発生部40が配置されており、妨害磁界発生部40は、妨害磁界発生用のコイル41を備えている。妨害磁界発生部40は、コイル41への通
電によって妨害磁界を発生させる。本実施形態において、妨害磁界発生部40は、投入口11の外側(投入口11の前方Y1)に向けて妨害磁界を発生させるとともに、媒体移動路22に沿って妨害磁界を発生させる。
【0020】
搬送機構30は、投入口11から媒体移動路22への磁気記録媒体2の取り込み動作、および媒体移動路22から投入口11を介しての磁気記録媒体2の排出動作を行わせる。本実施形態において、搬送機構30は、磁気記録媒体2に接触して磁気記録媒体2を搬送する搬送ローラ31と、搬送ローラ31に磁気記録媒体2を押し付ける押圧ローラ32と、駆動源であるモータ33と、モータ33の回転を搬送ローラ31に伝達する駆動力伝達機構34とを備えている。搬送ローラ31は、媒体移動路22に沿って前後方向Yに所定間隔で複数配置される。複数の搬送ローラ31は各々、押圧ローラ32と媒体移動路22を挟んで対向する。駆動力伝達機構34は、搬送ローラ31の回転軸に取り付けられたプーリにベルトを架け渡した第1ベルト機構35と、第1ベルト機構35のプーリのうちの1つにモータ33の回転を伝達する第2ベルト機構36を備えている。なお、駆動力伝達機構34は、このような構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0021】
複数の搬送ローラ31は、搬送ローラ31A、31C、31Bを含む。複数の搬送ローラ31のうち、最も前方Y1に位置する搬送ローラ31Aは、媒体移動路22の前端に配置される。搬送ローラ31Aの後方Y2には、搬送ローラ31B、31Cがこの順で配置される。第1磁気ヘッド21は、搬送ローラ31B、31Cの間に配置される。なお、搬送ローラ31の数は3個以外であってもよく、その配置も
図1のような配置に限定されるものではない。また、搬送機構30として搬送ローラ以外の機構を用いることもできる。例えば、ベルト機構によって磁気記録媒体2を搬送することもできる。搬送機構30は、モータ33の回転方向および回転速度を制御することにより、磁気記録媒体2の搬送方向や搬送速度等を切り換えることができる。
【0022】
(制御系等の構成)
図2は、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体処理装置1の構成を示すブロック図である。磁気記録媒体処理装置1は、CPU等を備えた制御部50を備えており、制御部50は、予めメモリ等に格納されたプログラムに沿って所定の動作を行う。制御部50は、搬送機構30を制御する搬送制御部51と、媒体位置検出機構13の検出結果に基づいて妨害磁界発生部40での妨害磁界の発生を制御する妨害磁界制御部52とを有しており、制御部50では、媒体位置検出機構13の検出結果に基づいて、搬送制御部51および妨害磁界制御部52等が動作する。例えば、例えば、第1センサ131の出力が磁気記録媒体なしを示す信号から磁気記録媒体ありを示す信号に切り換わると、搬送制御部51は、搬送機構30のモータ33に低速回転用の回転速度での駆動を開始させて磁気記録媒体2の搬送を開始し、妨害磁界制御部52は、妨害磁界発生部40に指令し、妨害磁界を発生させる。
【0023】
また、磁気記録媒体処理装置1は、第1磁気ヘッド21の検出結果に基づいて磁気記録媒体2に記録されている磁気情報の再生を行う磁気情報再生部66と、第1磁気ヘッド21による磁気記録媒体2への磁気情報に書き込みを行う磁気情報書き込み部67とを有している。また、磁気記録媒体処理装置1は、第2磁気ヘッド14の検出結果に基づいて磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かを検出する磁気情報有無検出部68を有している。従って、本形態では、第2磁気ヘッド14および磁気情報有無検出部68によって磁気記録媒体2に磁気情報が記録されていることが検知された際、磁気記録媒体2の搬送およびコイル41への通電を開始することもできる。かかる構成によれば、第1センサ131を設ける必要がないとともに、投入された磁気記録媒体2が磁気記録媒体である場合のみ妨害磁界を発生させることができる。
【0024】
(基本動作)
図3は、
図1に示す磁気記録媒体処理装置1の基本動作を示す説明図である。
図1、
図2および
図3に示すように、本形態の磁気記録媒体処理装置1では、磁気記録媒体2の投入待ち(ステップST1)の状態で、制御部50が第1センサ131によって磁気記録媒体2の投入を検出すると、制御部50の搬送制御部51は、搬送機構30を制御し、磁気記録媒体2を装置本体20の内部に取り込む(ステップST2)。その際、制御部50は、第2磁気ヘッド14および磁気情報有無検出部68により、磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かを判定する。磁気記録媒体2に磁気情報が記録されている場合、制御部50の搬送制御部51は、搬送機構30を制御し、磁気記録媒体2をさらに装置本体20の内部に取り込む(ステップST3)。
【0025】
次に、第3センサ133が磁気記録媒体2の端を検出すると、第1磁気ヘッド21が磁気記録媒体2の磁気データを読み取り、磁気情報再生部66では、磁気情報の再生が行われる(ステップST4)。かかる動作は、第4センサ134が磁気記録媒体2の端を検出するまで行われ、第4センサ134が磁気記録媒体2の端を検出すると、第1磁気ヘッド21による磁気データの読み取りが終了する。
【0026】
続いて、第5センサ135が磁気記録媒体2の端を検出すると、制御部50の搬送制御部51は、搬送機構30を制御して、磁気記録媒体2の搬送を停止し、その後、磁気記録媒体2を投入口11に向けて搬送する排出動作を行う(ステップST5)。排出動作において、第2センサ132が磁気記録媒体2の端を検出すると、制御部50は、磁気記録媒体2が投入口11へ返却されたと判断して、磁気記録媒体2の搬送を停止させる。従って、利用者は、投入口11から突出している磁気記録媒体2の先端部分を掴んで磁気記録媒体2を抜き取ることができる。また、制御部50は、第1センサ131により磁気記録媒体2の抜き取りが完了したか否かを判定し、磁気記録媒体2の抜き取りが完了したことを検出した時点で一連の動作が終了し、再び、記録媒体待ち(ステップST1)の状態に戻る。
【0027】
(妨害磁界の構成)
図4は、
図1に示す妨害磁界発生部40から発生する妨害磁界等の説明図であり、
図4には、第1妨害磁界H1の周波数スペクトラム(a)、第2妨害磁界H2の周波数スペクトラム(b)、第1磁気ヘッド21での検出磁界の周波数スペクトラム(c)、フィルタ特性(d)、および磁気情報に対応するアナログ信号の周波数スペクトラム(e)が模式的に示されている。
図5は、
図1に示す第1磁気ヘッド21によって磁気記録媒体2から磁気情報を再生する工程を模式的に示す説明図であり、上段には妨害磁界を模式的に示し、下段には第1磁気ヘッド21を介して検出される信号を模式的に示してある。
図6は、
図2に示す磁気情報再生部66の説明図である。なお、
図4、
図5、および後述する
図7に示す妨害磁界の周波数スペクトラム等は、あくまで一例であって、
図4、
図5、および
図7に示す態様に限定されるものではない。
【0028】
本形態では、磁気記録媒体処理装置1において、
図3を参照して説明した動作を行った際、媒体移動路22にスキマーが配置されていると、磁気記録媒体2から磁気情報が不正に取得されてしまうことから、制御部50の妨害磁界制御部52は、妨害磁界発生部40を制御して、
図3に示すステップST2~ST5の期間は、以下に説明する妨害磁界を発生させる。
【0029】
本形態において、磁気情報再生部66は、第1磁気ヘッド21から出力されたアナログ信号に含まれる特定周波数の信号に基づいて磁気情報を再生する。ここで、磁気情報に対応するアナログ信号の特定周波数f0は、例えば
図4に示す周波数スペクトラム(e)において第1周波数域f1に出現する。本実施形態では、磁気記録媒体2に磁気情報がF2
Fフォーマットで記録されていることから、1kHzから4kHzまでの第1周波数域f1に2つの特定周波数f0の信号が含まれている。
【0030】
かかる構成に対応して、妨害磁界制御部52は、投入口11に磁気記録媒体2が投入されてから第1磁気ヘッド21が磁気信号の検出を開始するまでのステップST2、ST3(
図5に示す期間T11)では、妨害磁界発生部40に第1妨害磁界H1を発生させる。第1妨害磁界H1は、
図4に示す周波数スペクトラム(a)から分かるように、特定周波数f0を含む第1周波数域f1、特定周波数f0を含まない第2周波数域f2の双方にピークが出現する周波数スペクトルを有している。
【0031】
また、妨害磁界制御部52は、ステップST4において第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出する期間中(
図5に示す期間T12)、妨害磁界発生部40に、第1妨害磁界H1と周波数スペクトルが異なる第2妨害磁界H2を発生させる。本実施形態において、第2妨害磁界H2は、特定周波数f0を含まない周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有している。より具体的には、
図4に示す周波数スペクトラム(b)から分かるように、妨害磁界制御部52は、第2妨害磁界H2として、第1妨害磁界H1に含まれていた第2周波数域f2の妨害磁界を発生させる。
【0032】
従って、第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出した際、
図4に示す周波数スペクトラム(c)から分かるように、第1磁気ヘッド21は、磁気情報に対応する特定周波数f0の信号が、第2妨害磁界H2の第2周波数域f2の第2妨害磁界H2とともに検出されることになる。
【0033】
但し、磁気情報再生部66は、
図6に示すように、第1磁気ヘッド21から出力されるアナログ信号のうち、特定周波数f0の信号を選択的に通過させるフィルタ特性(
図4に示すフィルタ特性(d))を備えたフィルタ661を有しており、磁気情報再生部66は、フィルタ661を通過した後のアナログ信号(
図4に示す周波数スペクトラム(e))に基づいて磁気情報を再生する。より具体的には、磁気情報再生部66は、フィルタ661を通過した後のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ662と、A/Dコンバータ662から出力されたデジタル信号に基づいて磁気情報を復調する復調部663とを有している。従って、磁気情報再生部66は、第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出する際、第2妨害磁界H2(第2周波数域f2)が出力されている場合でも、磁気情報を再生することができる。
【0034】
本形態では、第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出した後、磁気記録媒体2を排出するまでステップST5(
図5に示す期間T13)では、妨害磁界発生部40に第1妨害磁界H1を発生させる。
【0035】
なお、第1妨害磁界H1の第2周波数域f2における周波数スペクトラムと第2妨害磁界H2の第2周波数域f2における周波数スペクトラムとが同一の態様、あるいは異なる態様のいずれであってもよい。また、第1妨害磁界H1、および第2妨害磁界H2は、時間が経過しても周波数スペクトラムや強度が同一の態様、あるいは時間の経過とともに周波数スペクトラムや強度が変化する態様のいずれであってもよい。また、磁気記録媒体2の投入の有無にかかわらず、第1妨害磁界H1を常時、発生させる態様であってもよい。
【0036】
(第2磁気ヘッド14による検出工程)
図7は、
図1に示す第2磁気ヘッド14によって磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かを検出する工程を模式的に示す説明図であり、上段には妨害磁界を模式的に示し、下段には第1磁気ヘッド21を介して検出される信号を模式的に示してある。
図7に示すように、ステップST2において、第2磁気ヘッド14によって磁気記録媒体2に
磁気情報が記録されているか否かを検出する工程において、妨害磁界制御部52は、第1妨害磁界H1を断続的に発生させる。従って、磁気情報有無検出部68は、第1妨害磁界H1が発生している期間T1、T3、T5では第2磁気ヘッド14による検出を休止し、第1妨害磁界H1の発生が休止している期間T2、T4に第2磁気ヘッド14による検出を実施する。
【0037】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気記録媒体処理装置1では、投入口11に磁気記録媒体2が投入された後、第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出する期間中も、媒体移動路22に沿って第1妨害磁界H1を発生させるので、媒体移動路22にスキマーを配置する等の不正行為が行われても、磁気情報が不正に取得されることを防止することができる。また、磁気情報再生部66が、第1磁気ヘッド21から出力されたアナログ信号に含まれる特定周波数f0の信号に基づいて磁気情報を再生するという構成に対応して、第1磁気ヘッド21が磁気信号を検出する期間中、特定周波数f0を含まない周波数域の第2妨害磁界H2を発生させるため、磁気情報の再生を適正に行うことができる。
【0038】
また、第1磁気ヘッド21より媒体移動路22の投入口11側では、第2磁気ヘッド14によって、磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かが検出される。かかる検出の際には、妨害磁界発生部40は、第1妨害磁界H1を断続的を発生させ、磁気情報有無検出部68は、第1妨害磁界H1の発生を休止している期間に第2磁気ヘッド14から出力された信号に基づいて磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かを検出する。磁気記録媒体2に磁気情報が記録されているか否かの検出に要する時間は、磁気記録媒体2から一部の磁気信号を取得すればよいので、磁気情報の有無の検出に要する時間より短い。従って、第1妨害磁界H1の発生を休止する期間を設けても、セキュリティの大きな低下となりにくい。それより、第1妨害磁界H1の発生を休止する期間に磁気情報の有無を検出する構成であれば、比較的簡素な回路構成で済むという利点の方が大きい。
【0039】
[他の実施形態]
上記実施形態では、磁気情報再生部66がフィルタ661を通過した後のアナログ信号に基づいて磁気情報を再生する態様であったが、磁気情報再生部66がソフト的にフィルタリング処理を行う態様を採用してもよい。すなわち、磁気情報再生部66は、アナログ信号をデジタル信号に変換した後に特定周波数f0の信号に対応するデジタル信号に基づいて磁気情報を再生する採用を採用してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、第2妨害磁界H2が、特定周波数f0を含まない周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有していたが、第2妨害磁界H2と第1妨害磁界H1とにおいて、周波数スペクトルが異なっていれば、第2妨害磁界H2が、特定周波数f0を含む周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有していてもよい。この場合も、第1妨害磁界H1と第2妨害磁界H2とにおける周波数スペクトルの差異に対応する信号処理を行えば、磁気情報の再生を適正に行うことができる。例えば、磁気情報再生部66において、特定周波数f0を含む第1周波数域f1に適正な閾値を設定し、第2妨害磁界H2に起因する信号を低減させれば、磁気情報の再生を適正に行うことができる。
【0041】
また、第1妨害磁界H1についても、
図4に示す第2妨害磁界H2のように、特定周波数f0を含まない周波数域にピークが出現する周波数スペクトルを有している態様であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…磁気記録媒体処理装置、2…磁気記録媒体、10…ゲート部、11…投入口、12…投入路、13…媒体位置検出機構、14…第2磁気ヘッド、21…第1磁気ヘッド、20
…装置本体、22…媒体移動路、30…搬送機構、31…搬送ローラ、40…妨害磁界発生部、41…コイル、50…制御部、51…搬送制御部、52…妨害磁界制御部、66…磁気情報再生部、68…磁気情報有無検出部、661…フィルタ、H1…第1妨害磁界、H2…第2妨害磁界、f0…特定周波数、f1…第1周波数域、f2…第2周波数域