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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】作業機械のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20221118BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018184086
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051200
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 健二郎
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233353(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
E02F 9/20-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に搭載され、前記作業機械の位置を特定するための信号を受信する受信機と、
前記受信機が受信した信号から、前記受信機の位置を取得するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記受信機の位置から前記作業機械に含まれる較正点の位置を算出することで、前記較正点の算出位置を取得し、
前記較正点の実位置を取得し、
所定の基準方位に対する前記作業機械の進行方向の方位角を取得し、
前記方位角の反対回りに前記実位置を座標変換することで、変換された実位置を取得し、
前記方位角の反対回りに前記算出位置を座標変換することで、変換された算出位置を取得し、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置とを比較することで、前記作業機械に含まれる基準点の位置を較正するための較正データを生成する、
システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記較正点の前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出し、
前記差分により前記較正データを生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
所定時間の間に、複数回取得された前記受信機の位置から代表値を求め、
前記代表値から前記較正点の前記算出位置を取得する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出し、
前記作業機械のピッチ角を取得し、
前記ピッチ角に基づいて前記差分を補正することで、前記較正データを生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出し、
前記作業機械のロール角を取得し、
前記ロール角に基づいて前記差分を補正することで、前記較正データを生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業機械は、
前記受信機が取り付けられた車体と、
前記車体に対して可動的に取り付けられた作業機と、
を含み、
前記基準点と前記較正点とは、前記作業機に含まれる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサに接続された入力装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記入力装置を介して、前記較正点の前記実位置を取得する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
プロセッサによって実行される方法であって、
作業機械に搭載された受信機が受信した前記作業機械の位置を特定するための信号から、前記受信機の位置を取得することと、
前記受信機の位置から前記作業機械に含まれる較正点の位置を算出することで、前記較正点の算出位置を取得することと、
前記較正点の実位置を取得することと、
所定の基準方位に対する前記作業機械の進行方向の方位角を取得することと、
前記方位角の反対回りに前記実位置を座標変換することで、変換された実位置を取得することと、
前記方位角の反対回りに前記算出位置を座標変換することで、変換された算出位置を取得することと、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置とを比較することで、前記作業機械に含まれる基準点の位置を較正するための較正データを生成すること、
を備える方法。
【請求項9】
前記較正データを生成することは、
前記較正点の前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出することと、
前記差分により前記較正データを生成すること、
を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記較正点の前記算出位置を取得することは、
所定時間の間に、複数回取得された前記受信機の位置から代表値を求めることと、
前記代表値から前記算出位置を取得すること、
を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記較正データを生成することは、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出し、
前記作業機械のピッチ角を取得し、
前記ピッチ角に基づいて前記差分を補正することで、前記較正データを生成すること、
を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記較正データを生成することは、
前記変換された実位置と前記変換された算出位置との差分を算出することと、
前記作業機械のロール角を取得することと、
前記ロール角に基づいて前記差分を補正することで、前記較正データを生成すること、
を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記作業機械は、
前記受信機が取り付けられた車体と、
前記車体に対して可動的に取り付けられた作業機と、
を含み、
前記と前記較正点とは、前記作業機に含まれる、
請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記較正点の前記実位置を取得することは、入力装置を介して前記実位置を取得することを含む、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、作業機械に含まれる基準点の位置を検出して、取得された基準点の位置に基づいて作業機械を制御するものがある。例えば、特許文献1に記載の作業車両では、コントローラは、GNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機が受信した信号により、受信機の位置を算出する。コントローラは、受信機の位置からブレードの刃先位置を算出する。コントローラは、算出された刃先位置が所望の軌跡に従って動作するように、ブレードを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-16973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した作業機械では、コントローラは、受信機の位置から基準点の位置を算出するためのデータを記憶している。データは、例えば、作業機械に設定された原点の位置、原点から受信機までの距離、ブレードを支えるリフトフレームの原点からの距離、リフトフレームの寸法、ブレードの寸法などの多くのデータを含む。コントローラは、これらのデータを用いて、受信機の位置からブレードの刃先位置を算出する。
【0005】
しかしながら、上記のデータに誤差がある場合には、算出された刃先位置が実位置と一致しせず、ブレードの刃先位置を精度良く算出することは困難である。
【0006】
そのため、作業機械に含まれる基準点の位置検出を精度良く行うために、以下のような作業が行われる。例えば、受信機、原点、基準点などの作業機械の複数の部分にミラーが取り付けられる。次に、人が、トータルステーション等の計測装置を用いて、これらの部分の位置を計測する。そして、計測された複数の位置の座標を人がコンピュータに入力し、コンピュータが演算を行うことで、上述したデータが較正される。
【0007】
上記のような較正作業には多くの工数がかかり煩雑である。本発明の目的は、少ない工数で平易に作業機械に含まれる基準点の位置検出を精度良く行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るシステムは、受信機とプロセッサとを含む。受信機は、作業機械に搭載され、作業機械の位置を特定するための信号を受信する。プロセッサは、以下の処理を行うようにプログラムされている。プロセッサは、受信機が受信した信号から、受信機の位置を取得する。プロセッサは、受信機の位置から作業機械に含まれる較正点の位置を算出することで、較正点の算出位置を取得する。プロセッサは、較正点の実位置を取得する。プロセッサは、較正点の実位置と算出位置とを比較することで、作業機械に含まれる基準点の位置を較正するための較正データを生成する。
【0009】
第2の態様に係る方法は、プロセッサによって実行される方法である。当該方法は以下の処理を含む。第1の処理は、作業機械に搭載された受信機が受信した作業機械の位置を特定するための信号から、受信機の位置を取得することである。第2の処理は、受信機の位置から作業機械に含まれる較正点の位置を算出することで、較正点の算出位置を取得することである。第3の処理は、較正点の実位置を取得することである。第4の処理は、較正点の実位置と算出位置とを比較することで作業機械に含まれる基準点の位置を較正するための較正データを生成することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、プロセッサが作業機械に含まれる較正点の実位置と算出位置とを比較することで、作業機械に含まれる基準点の位置を較正するための較正データを生成する。そのため、少ない工数で平易に作業機械に含まれる基準点の位置検出を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業機械の構成を示す模式図である。
図4】基準点の位置を算出するための処理を示すフローチャートである。
図5】作業機械の方位角を示す図である。
図6】基準点の位置検出を較正するための処理を示すフローチャートである。
図7】基準点の実位置を入力するための操作画面の一例を示す図である。
図8】基準点の変換された実位置と変換された算出位置とを示す図である。
図9】算出位置のピッチ角とロール角とによる補正を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0013】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを含む。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を含む。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0014】
作業機13は、車体11に対して可動的に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19とを含む。リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Ax1を中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。
【0015】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Ax1を中心として上下に回転する。
【0016】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0017】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0018】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0019】
制御システム3は、操作装置41と、入力装置42と、ディスプレイ43と、コントローラ26と、制御弁27と、記憶装置28とを備える。操作装置41と、入力装置42と、ディスプレイ43と、制御弁27と、記憶装置28とは、コントローラ26と有線或いは無線により接続されている。
【0020】
操作装置41は、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置41は、運転室14に配置されている。操作装置41は、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置41は、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0021】
入力装置42及びディスプレイ43は、例えばタッチパネル式の表示入力装置である。ディスプレイ43は、例えば、LCD、或いはOLEDである。ただし、ディスプレイ43は、他の種類の表示装置であってもよい。入力装置42及びディスプレイ43は、互いに別の装置であってもよい。例えば、入力装置42は、スイッチ等の入力装置であってもよい。入力装置42は、オペレータによる操作を示す操作信号をコントローラ26に出力する。
【0022】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)と26aとメモリ26bとを含む。メモリ26bは、例えばRAMなどの揮発性メモリ、或いはROMなどの不揮発性メモリを含んでもよい。コントローラ26は、操作装置41から操作信号を取得する。
【0023】
記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサによって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0024】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。
【0025】
コントローラ26は、上述した操作装置41の操作に応じて、エンジン22、油圧ポンプ23、動力伝達装置24、及び制御弁27を制御する。例えば、コントローラ26は、操作装置41の操作に応じてブレード18が動作するように、制御弁27を制御する。これにより、リフトシリンダ19が、操作装置41の操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0026】
制御システム3は、位置検出装置31を備えている。位置検出装置31は、作業機械1の位置を測定する。位置検出装置31は、GNSSレシーバ32と、IMU(Inertial Measurement Unit)33とを含む。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。例えばGNSSレシーバ32のアンテナは、運転室14上に配置される。ただし、GNSSレシーバ32のアンテナは他の位置に配置されてもよい。
【0027】
GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりGNSSレシーバ32の位置を算出する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32の位置を示すレシーバ位置データを、GNSSレシーバ32から取得する。レシーバ位置データは、GNSSレシーバ32のグローバル座標で表される。
【0028】
IMU33は、車体傾斜角データを生成する。車体傾斜角データは、作業機械1の前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および作業機械1の横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データを取得する。
【0029】
制御システム3は、作業機センサ29を含む。作業機センサ29は、作業機13の姿勢を検出して、作業機13の姿勢を示す作業機姿勢データを取得する。例えば、作業機センサ29は、リフトシリンダ19のストロークセンサである。図3は、作業機械1の構成を示す模式図である。図3に示すように、姿勢センサは、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。
【0030】
なお、図3では、作業機13の基本姿勢が二点鎖線で示されている。作業機13の基本姿勢は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の基本姿勢からの角度である。
【0031】
コントローラ26は、レシーバ位置データと、車体傾斜角データと、作業機姿勢データとから、作業機械1に含まれる基準点PBの位置を算出する。基準点PBの位置は、基準点PBのグローバル座標系の座標で表される。基準点PBは、ブレード18に含まれる。詳細には、基準点PBは、ブレード18の刃先の車幅方向における中心である。ただし、基準点PBは他の位置であってもよい。
【0032】
コントローラ26は、基準点PBに基づいて作業機械1を制御する。例えば、コントローラ26は、基準点PBが所定の軌跡に従って移動するように、作業機13を制御する。
【0033】
図4は、基準点PBの位置を算出するためにコントローラ26によって実行される処理を示すフローチャートである。図4に示すようにステップS101では、コントローラ26は、レシーバ位置データを取得する。ここでは、上述したように、GNSSレシーバ32がGNSSの衛星から測位信号を受信し、コントローラ26は、GNSSレシーバ32からレシーバ位置データを取得する。
【0034】
ステップS102では、コントローラ26は、車体傾斜角データを取得する。ここでは、上述したように、IMU33が車体11のピッチ角とロール角とを検出し、コントローラ26は、IMU33から車体傾斜角データを取得する。
【0035】
ステップS103では、コントローラ26は、作業機姿勢データを取得する。ここでは、上述したように、作業機センサ29がリフトシリンダ長Lを検出し、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。
【0036】
ステップS104では、コントローラ26は、作業機械1の方位角φを取得する。図5に示すように、方位角φは、グローバル座標系における所定の基準方位に対する作業機械1の進行方向の角度を示す。本実施形態では、所定の基準方位は真北であり、反時計回りを正とする。ただし、基準方位は、真北に限らず他の方角であってもよい。コントローラ26は、GNSSレシーバ32が検出したGNSSレシーバ32の位置の変化から、作業機械1の方位角φを算出する。
【0037】
ステップS105では、コントローラ26は、レシーバ位置データから基準点の位置を算出する。詳細には、コントローラ26は、車体寸法データと、上述した作業機姿勢データ、車体傾斜角データ、及び作業機械1の方位角φとを用いて、GNSSレシーバ32の位置から基準点PBの位置を算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32の位置に対する作業機13の位置を示す。
【0038】
例えば、車体寸法データは、車体11に設定されたローカル座標系の車体原点OVehicleの位置を含む。車体寸法データは、車体原点OVehicleからGNSSレシーバ32までの距離、車体原点OVehicleからリフトフレーム17までの距離、リフトフレーム17の寸法、ブレード18の寸法、ブレード18における基準点PBの位置などを含む。
【0039】
次に、基準点PBの位置検出の較正処理について説明する。図6は、基準点PBの位置検出を較正するために、コントローラ26によって実行される処理を示すフローチャートである。コントローラ26は、作業機械1に含まれる所定の較正点の位置を算出することで、較正点の算出位置を取得し、較正点の実位置と算出位置とを比較することで、基準点PBの位置を較正するための較正データを生成する。較正点は、作業機13が動作しても基準点PBに対する位置が変化しない部分であることが好ましい。例えば、較正点は、ブレード18に含まれる。本実施形態において、較正点は、基準点PBである。すなわち、コントローラ26は、基準点PBの実位置と算出位置とを比較することで、基準点PBの位置を較正するための較正データを生成する。
【0040】
図6に示すように、ステップS201で、コントローラ26は、基準点PBの実位置PB_Refを取得する。ここでは、コントローラ26は、入力装置42を介して、基準点PBの実位置PB_Refを取得する。詳細には、オペレータが基準点PBの実位置PB_Refを示す座標を入力装置42を操作して入力することで、コントローラ26は基準点PBの実位置PB_Refを取得する。
【0041】
図7は、基準点PBの実位置PB_Refを入力するための操作画面50の一例を示す図である。コントローラ26は、操作画面50をディスプレイ43に表示させる。図7に示すように、操作画面50は、基準点PBの実位置PB_Refの座標を入力するための入力欄51-53を含む。入力欄51-53は、経度の入力欄51と、緯度の入力欄52と、標高の入力欄53とを含む。
【0042】
オペレータは、トータルステーション或いはGNSSローバーなどの計測装置を用いて、基準点PBの実位置PB_Refを計測する。そして、基準点PBの実位置PB_Refを示す座標を操作画面50の入力欄51-53に入力する。コントローラ26は、入力欄51-53に入力された座標を、基準点PBの実位置PB_Refとして取得する。基準点PBの実位置PB_Refは、グローバル座標系の座標(NB_Ref, EB_Ref, EleB_Ref)で示される。
【0043】
ステップS202では、コントローラ26は、基準点PBの算出位置を取得する。コントローラ26は、上述した図4に示す処理によって、GNSSレシーバ32ーの位置から基準点PBの位置を算出することで、基準点PBの算出位置PB_Calcを取得する。基準点PBの算出位置PB_Calcは、グローバル座標系の座標(NB_Calc, EB_Calc, EleB_Calc)で示される。
【0044】
詳細には、コントローラ26は、較正処理の開始後、所定時間の間に、複数回取得されたGNSSレシーバ32ーの位置から代表値を求め、代表値から基準点PBの算出位置PB_Calcを取得する。
【0045】
所定時間は、予め設定された値であり、記憶装置28に保存されている。所定時間は、例えば10分程度である。ただし、所定時間は10分に限らず、10分より短い、或いは10分より長くてもよい。代表値は、例えばGNSSレシーバ32ーの位置の平均値である。ただし、代表値は、平均値に限らず、中央値などの他の値であってもよい。
【0046】
上述したように、GNSSレシーバ32ーの位置と、基準点PBの実位置PB_Refと、基準点PBの算出位置PB_Calcとは、グローバル座標系の座標で示される。本実施形態において、グローバル座標系は地球を基準とする座標系である。言い換えれば、グローバル座標系は地球に固定された座標系である。詳細には、GNSSレシーバ32ーの位置と、基準点PBの実位置PB_Refと、基準点PBの算出位置PB_Calcとは、平面直角座標系の座標で示される。ただし、グローバル座標系は、平面直角座標系に限らず、他の座標系であってもよい。また、ローカル座標系は、車体11を基準とする座標系である。言い換えれば、ローカル座標系は、車体11に固定された座標系である。
【0047】
ステップS203では、コントローラ26は、基準点PBの変換された実位置P’B_Refを取得する。詳細には、図8に示すように、コントローラ26は、グローバル座標系の所定の原点OGlobalを中心として、作業機械1の方位角φの反対回りに実位置PB_Refを座標変換することで、変換された実位置P’B_Refを取得する。変換された実位置P’B_Refの座標(N’B_Ref, E’B_Ref, EleB_Ref)は以下の式(1)で示される。
E'B_Ref = EB_Ref*cosφ - NB_Ref*sinφ (1)
N'B_Ref = EB_Ref *sinφ + NB_Ref *cosφ
【0048】
ステップS204では、コントローラ26は、基準点PBの変換された算出位置P’B_Calcを取得する。詳細には、図8に示すように、コントローラ26は、グローバル座標系の所定の原点OGlobalを中心として、作業機械1の方位角φの反対回りに算出位置PB_Calcを座標変換することで、変換された算出位置P’B_Calcを取得する。変換された算出位置P’B_Calcの座標(N’B_Calc, E’B_Calc, EleB_Calc)は以下の式(2)で示される。
E'B_Calc = EB_Calc*cosφ - NB_Calc*sinφ (2)
N'B_Calc = EB_Calc*sinφ + NB_Calc*cosφ
【0049】
ステップS205では、コントローラ26は、基準点PBの実位置PB_Refと算出位置PB_Calcとの差分を算出する。ここでは、コントローラ26は、基準点PBの変換された実位置P’B_Refと変換された算出位置P’B_Calcとの差分(ΔX, ΔY, ΔZ)を算出する。差分(ΔX, ΔY, ΔZ)は、以下の式(3)で示される。
ΔX=N'B_Calc- N'B_Ref
ΔY=-(E'B_Calc- E'B_Ref) (3)
ΔZ =EleB_Calc- EleB_Ref
【0050】
ステップS206では、コントローラ26は、較正データを生成する。図9Aに示すように、コントローラ26は、ステップS205で取得した基準点PBの実位置PB_Refと算出位置PB_Calcとの差分をピッチ角θで補正することで、較正データを生成する。また、図9Bに示すように、コントローラ26は、基準点PBの実位置PB_Refと算出位置PB_Calcとの差分をロール角ψで補正することで、較正データを生成する。較正データ(ΔXFinal, ΔYFinal, ΔZFinal)は、以下の式(4)で示される。
ΔXFinal=ΔX/cosθ (4)
ΔYFinal=ΔY/cosψ
ΔZFinal=ΔZ*(cosθ*cosψ)
【0051】
コントローラ26は、生成した較正データを記憶装置28に保存する。なお、較正処理の完了時に、コントローラ26は、較正データ(ΔXFinal, ΔYFinal, ΔZFinal)をディスプレイ43に表示させてもよい。
【0052】
以上説明した、本実施形態に係る作業機械1の制御システム3によれば、基準点PBの実位置PB_Refと算出位置PB_Calcとを比較することで、算出位置PB_Calcを較正するための較正データを生成する。そのため、少ない工数で平易に作業機械に含まれる基準点PBの位置検出を精度良く行うことができる。
【0053】
コントローラ26は、車体寸法データを較正データによって補正してもよい。例えば、コントローラ26は、車体原点OVehicleからGNSSレシーバ32までの距離を較正データによって補正してもよい。コントローラ26は、補正された車体寸法データを用いて、基準点PBの算出位置PB_Calcを算出してもよい。或いは、コントローラ26は、当初の車体寸法データによって算出された基準点PBの位置を較正データによって補正することで、基準点PBの位置を決定してもよい。
【0054】
コントローラ26は、GNSSレシーバ32が所定時間内に検出したGNSSレシーバ32の位置の代表値を算出し、代表値から基準点PBの位置を算出する。そのため、GNSSレシーバ32の測定誤差の影響を抑えて、精度よく基準点PBの位置を算出することができる。
【0055】
コントローラ26は、変換された実位置P’B_Refと変換された算出位置P’B_Calcとの差分から較正データを生成する。そのため、コントローラ26は、車体11に固定されたローカル座標系に合わせた較正データを得ることができる。
【0056】
コントローラ26は、ピッチ角θに基づいて差分を補正することで、較正データを生成する。それにより、車体11のピッチ角θによる影響を抑えて、精度よく基準点PBの位置を算出することができる。
【0057】
コントローラ26は、ロール角ψに基づいて差分を補正することで、較正データを生成する。それにより、車体11のロール角ψによる影響を抑えて、精度よく基準点PBの位置を算出することができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の機械であってもよい。
【0060】
作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0061】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを含んでもよい。上述した処理は、複数のコントローラ26に分散して実行されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されるリモートコントローラ26と、作業機械1に搭載される車載コントローラ26とを含んでもよい。リモートコントローラ26と車載コントローラ26とは無線により通信可能であってもよい。上述した較正の処理は、リモートコントローラ26によって実行されてもよい。
【0062】
操作装置41と、入力装置42と、ディスプレイ43とは、作業機械1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業機械1から省略されてもよい。或いは、操作装置41と、入力装置42と、ディスプレイ43 とが作業機械1から省略されてもよい。操作装置41と入力装置42による操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業機械1が操作されてもよい。
【0063】
基準点PBは、ブレード18の車幅方向における中心に限らず、ブレード18の他の部分であってもよい。例えば、基準点PBは、ブレード18の刃先の左方の端部、或いは右方の端部であってもよい。或いは、基準点PBは、ブレード18に限らず、作業機13に含まれる他の部分であってもよい。或いは、基準点PBは、車体11に含まれる部分であってもよい。
【0064】
入力装置42は、無線或いは有線により、外部の機器からのデータが入力される入力ポートであってもよい。或いは、入力装置42は、記録媒体が接続され、記録媒体からのデータが入力される入力ポートであってもよい。コントローラ26は、このような入力装置42を介してデータを受信することで、基準点PBの実位置PB_Refを取得してもよい。
【0065】
或いは、コントローラ26は、他の手段によって基準点PBの実位置PB_Refを取得してもよい。例えば、既知点に基準点PBが配置されることで、コントローラ26は、既知点の座標を基準点PBの実位置PB_Refとして取得してもよい。
【0066】
上記の実施形態では、基準点PBの位置の検出を較正するための較正点は、基準点PBと同じ位置である。しかし、較正点は、基準点PBと異なる位置であってもよい。例えば、ブレード18の両端が、それぞれ第1の較正点、第2の較正点として検出されてもよい。第1の較正点の算出位置と実位置との差分、及び、第2の較正点の算出位置と実位置との差分の平均から較正データが生成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、少ない工数で平易に作業機械に含まれる基準点の位置検出を精度良く行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 作業機械
11 車体
13 作業機
26 コントローラ
32 GNSSレシーバ
42 入力装置
PB 基準点
PB_Ref 基準点の実位置
PB_Calc 基準点の算出位置
図1
図2
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図9