(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ケーブル付き給電コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
H01R13/533 A
(21)【出願番号】P 2018192023
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 翔子
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107658652(CN,A)
【文献】特表2018-503228(JP,A)
【文献】特開2004-207305(JP,A)
【文献】特開平04-145820(JP,A)
【文献】特開2007-280745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ケーブルと、
前記ケーブルの導体に接続して前記ハウジング内に収容される端子と、
前記端子の熱を前記ハウジング外へ搬送する流体を流通させる流体管路と、
前記端子と前記流体管路とを電気的に隔てる絶縁部材と、を備え、
前記流体管路の少なくとも一部である受熱部は、前記端子に前記絶縁部材を介して伝熱可能に接触しており、
前記流体管路は、前記受熱部を含む主管路と、前記主管路の両端にそれぞれ接続された副管路とを備え、
前記主管路の構成材料は、導電性材料であり、前記副管路の構成材料よりも熱伝導率が高く、
前記副管路の構成材料は、合成樹脂であ
り、
前記端子は、円柱状の胴部と、前記胴部から突出するコンタクト部と、を有し、
前記胴部の外周面に、前記受熱部が嵌合する嵌合溝が形成され、
前記受熱部は、直管状とされ、前記嵌合溝の内面に前記絶縁部材を介して伝熱可能に接触し、
前記嵌合溝は、前記胴部を横切る直線状に形成され、
前記嵌合溝の最大深さは、前記受熱部の外形寸法より大きく、
前記嵌合溝は、直線に沿う底面を有する、
ケーブル付き給電コネクタ。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記受熱部の外面に設けられている、請求項1に記載のケーブル付き給電コネクタ。
【請求項3】
前記絶縁部材は、絶縁性のフィルムが前記受熱部に巻き付けられて構成されている、請求項
2記載のケーブル付き給電コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル付き給電コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車のバッテリーの充電では、ケーブル付き給電コネクタを使用して、外部から接続しバッテリーを充電する方式が広く採用されている。ケーブル付き給電コネクタは、ケーブル(以下、給電ケーブル)の端末に、自動車のインレットに嵌合可能なコネクタ(以下、給電コネクタ)が設けられている。
【0003】
給電コネクタは、給電ケーブルの導体が電気的に接続された電力端子(以下、コネクタ端子、とも言う)を有する。自動車のインレットには、自動車車体内の電気配線を介してバッテリーと接続された電力端子(以下、インレット端子、とも言う)が組み込まれている。給電コネクタを自動車のインレットに嵌合したときには、コネクタ端子がインレット端子に嵌合して、給電ケーブルの導体がバッテリーに電気的に接続される。
【0004】
近年、電気自動車のバッテリー容量は増加傾向にあり、それに伴い、より大電流による充電が検討されている。コネクタ端子は、その形状を変更することなく大電流での充電に使用した場合、大電流通電によるジュール熱対策が課題となる。コネクタ端子の発熱による過剰な温度上昇は、コネクタ端子の酸化進行、抵抗値上昇を招き、コネクタ端子の寿命短縮に繋がる。例えば電気自動車(EV)に使用される急速充電用コネクタの通電時温度上昇は規格(IEC62196-124.)により上昇値が50K以下であることが定められている。
【0005】
特許文献1には、大電流通電によるジュール熱対策が講じられた給電コネクタが記載されている。特許文献1に記載された給電コネクタは、自動車側のインレット端子に嵌合する複数の電気接触子を有し、複数の電気接触子の各々は、冷媒を流すことが可能なフレームによって支持されている。電気接触子は、フレーム内を流れる冷媒によって冷却される。
【0006】
前記冷媒としては、水(例えば水道水)、不凍液等が用いられることが一般的であるが、これらの冷媒は電気絶縁性を有しないため、コネクタ端子から冷媒への漏電が起こる可能性がある。絶縁性の冷媒を用いれば漏電を防ぐことができるが、絶縁性の冷媒は高価であり、コスト面の問題が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態が解決しようとする課題は、漏電を抑制でき、かつコストを低くすることができるケーブル付き給電コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ハウジングと、ケーブルの導体に接続して前記ハウジング内に収容される端子と、前記端子の熱を前記ハウジング外へ搬送する流体を流通させる導電性の流体管路と、前記端子と前記流体管路とを電気的に隔てる絶縁部材と、を備え、前記流体管路の少なくとも一部である受熱部は、前記端子に、前記絶縁部材を介して伝熱可能に接触している給電コネクタを提供する。
【0010】
前記給電コネクタは、前記端子の外周面に、前記受熱部が嵌合する嵌合溝が形成され、前記受熱部は、前記嵌合溝の内面に、前記絶縁部材を介して伝熱可能に接触していることが好ましい。
【0011】
前記絶縁部材は、前記受熱部の外面に設けられていることが好ましい。
【0012】
前記絶縁部材は、絶縁性のフィルムが前記受熱部に巻き付けられて構成されていることが好ましい。
【0013】
前記受熱部は、直管状に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の他の態様は、前記給電コネクタの端子に、前記ケーブルの前記導体が接続されているケーブル付き給電コネクタを提供する。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、端子を、ケーブルの導体に接続してハウジング内に収容する工程と、前記端子の熱を前記ハウジング外へ搬送する流体を流通させる導電性の流体管路の少なくとも一部である受熱部に、前記端子と前記流体管路とを電気的に隔てる絶縁部材を設ける工程と、前記受熱部を、前記端子に、前記絶縁部材を介して伝熱可能に接触させる工程とを有する給電コネクタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の幾つかの実施形態によれば、漏電を抑制でき、かつコストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の給電コネクタおよびケーブル付き給電コネクタの構成図である。
【
図4】(A)
図1の給電コネクタの嵌合溝、管路受熱部および絶縁層の断面の模式図である。(B)嵌合溝、管路受熱部および絶縁層の断面を模式的に示す分解図である。
【
図8】(A)第2実施形態の給電コネクタの嵌合溝、管路受熱部および絶縁層の断面の模式図である。(B)嵌合溝、管路受熱部および絶縁層の断面を模式的に示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の幾つかの実施形態の給電コネクタ、ケーブル付き給電コネクタについて、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の給電コネクタ10A、およびケーブル付き給電コネクタ20Aの構成図である。
図2は、給電コネクタ10Aの端子12の正面図である。
図3は、端子12の側面図である。
図4(A)は、給電コネクタ10Aの嵌合溝13、管路受熱部15aおよび絶縁層14の断面の模式図である。
図4(B)は、嵌合溝13、管路受熱部15aおよび絶縁層14の断面を模式的に示す分解図である。
図5は、絶縁層14の他の例の断面の模式図である。
図6は、給電コネクタ10Aの斜視図である。
図7は、給電コネクタ10Aの分解斜視図である。
【0020】
図1に示すように、ケーブル付き給電コネクタ20Aは、給電ケーブル21(メタルケーブル、ケーブル)と、給電ケーブル21の一方端側に設けられた給電コネクタ10Aとを備える。給電ケーブル21の他方端側は、図示しない給電装置に接続される。
【0021】
ケーブル付き給電コネクタ20Aは、給電コネクタ10Aを電気自動車のインレット(車体側コネクタ)に嵌合させることで、電源と電気自動車のバッテリーとを電気的に接続し、バッテリーを充電することができる。なお、インレットには、電気自動車のバッテリーと電気的に接続された端子(以下、インレット端子、とも言う)が組み込まれている。
【0022】
給電コネクタ10Aは、ハウジング11と、端子12と、流体管路15と、絶縁層14(絶縁部材)とを備える。ハウジング11は、端子12と、流体管路15の長手方向の一部(具体的には管路受熱部15aを含む部分)とを収容している。ハウジング11はプラスチック等の電気絶縁性材料によって形成されている。
【0023】
端子12は、導体21aに接続される。端子12は、給電ケーブル21先端から引き出された電力線21bの先端に設けられている。ケーブル付き給電コネクタ20Aは、給電コネクタ10Aをインレットのハウジングに嵌合させることで、ハウジング内側のインレット端子に端子12を嵌合、接触させる。これにより、ケーブル付き給電コネクタ20Aは、給電ケーブル21の導体21aを、給電コネクタ10Aおよびインレット端子を介して電気自動車のバッテリーと電気的に接続することができる。
【0024】
図2に示すように、端子12は、胴部12aと、導体接続部12bと、コンタクト部12cとを有する。
端子12において、コンタクト部12cの先端側を前とする。コンタクト部12cの先端側とは反対の側を後とする。給電ケーブル21(
図1参照)は、給電コネクタ10Aの後端部から延出されている。
【0025】
図2および
図3に示すように、胴部12aは、コンタクト部12cの中心軸線と同軸の円柱状とすることができる。
導体接続部12bは、胴部12aの後端の周縁から後方に延出する円筒状に形成されている。
導体接続部12bには給電ケーブル21先端に露出された導体21aの先端部が挿入されている。端子12は、導体接続部12bをその内側の導体21aに圧縮、圧着、ねじ留め等によって固定して、導体21aに電気的に接続されている。導体21aの先端部は端子12の中心軸線(コンタクト部12cの中心軸線)に平行に延在する状態で端子12の導体接続部12bに固定されている。
【0026】
コンタクト部12cは、胴部12aの前面から導体接続部12bとは反対の側(前側)に突出されている。コンタクト部12cはピン状に形成されている。コンタクト部12cは、中心軸が前後方向に沿う円柱状に形成されている。本明細書では、コンタクト部12cの中心軸線を端子12の中心軸線として扱う。
【0027】
胴部12aの外周面には、嵌合溝13が形成されている。
図2に示すように、嵌合溝13の平面視形状は、直線状であってよい。嵌合溝13の平面視形状は、例えば、嵌合溝13の長さ方向の中央において、胴部12aの径方向(すなわち、嵌合溝13の深さ方向)から見た形状である。
【0028】
図4(A)および
図4(B)に示すように、嵌合溝13の底面13aの断面形状(嵌合溝13の長さ方向に直交する断面の形状)は、例えば円弧状である。嵌合溝13の深さ方向(
図3に示すD方向)は、嵌合溝13の長さ方向の中央における胴部12aの径方向と一致する。嵌合溝13は、長さ方向の中央において最も深く、中央から離れるほど浅くなる(
図6および
図7参照)。
図3に示すD1は、嵌合溝13の長さ方向の中央における嵌合溝13の深さであり、嵌合溝13の最大深さである。底面13aは、深さ方向Dに対して垂直、かつ端子12の中心軸線に対して垂直な方向に沿う。
【0029】
図4(A)に示すように、嵌合溝13の内面の少なくとも一部は、絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に接している。例えば、嵌合溝13の底面13aは、少なくとも一部(好ましくは全長)が絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に接する。嵌合溝13の前側面13bと後側面13cのいずれか一方または両方は、少なくとも一部(好ましくは全長)が絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に接することが好ましい。嵌合溝13の内面は、絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に、面的に接することが好ましい。給電コネクタ10Aでは、嵌合溝13の内面が絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に接するため、嵌合溝13の内面と管路受熱部15aの外面との間の伝熱が可能である。
【0030】
嵌合溝13の内面と絶縁層14の外面との接触部分には、伝熱グリスが設けられていてもよい。伝熱グリスは、銅、アルミニウム等の熱伝導性に優れる金属フィラーが混入されたグリスである。伝熱グリスは、端子12と絶縁層14との隙間に充てんされ、端子12から流体管路15への伝達熱量を増大させる。
【0031】
端子12(胴部12a、導体接続部12b、およびコンタクト部12c)は、例えば、良導電性金属(銅など)で形成されている。端子12を構成する金属は、銅に限らず、例えばアルミニウム等でもよい。
【0032】
図1に示すように、給電コネクタ10Aは、ハウジング11の前端部を電気自動車のインレットのハウジングに嵌合させることでインレットに嵌合される。給電コネクタ10Aのハウジング11の前端部をインレットに嵌合したときには、インレット端子が給電コネクタ10Aの端子12に嵌合、接触して電気的に接続される。この際、インレット端子は、ハウジング11の前端部内側に、前端開口部から挿入される。
給電コネクタ10Aの端子12を、以下、コネクタ端子、とも言う。インレット端子は、コネクタ端子12のピン状のコンタクト部12cが挿脱可能に挿入嵌合される筒状のコンタクト部を有する。
【0033】
流体管路15は、水等の流体(冷媒)を流通させて端子12を除熱するチューブ(冷却チューブ)である。
流体管路15は、例えば、管路受熱部15a(受熱部)を含む主管路15Aと、主管路15Aの両端にそれぞれ接続された副管路15Bとを備える。主管路15Aの構成材料は、副管路15Bの構成材料よりも熱伝導率が高い。主管路15Aの構成材料は、導電性材料、例えば金属(例えば、銅、アルミニウム等)である。副管路15Bの構成材料は、例えば、合成樹脂(例えば、ナイロン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等)である。流体管路15のうち少なくとも管路受熱部15aはハウジング11に収容されている。主管路15Aと副管路15Bは、接続部19を介して接続されている。管路受熱部15aを含む主管路15Aが金属製であると、管路受熱部15aの熱伝導性が高められるため、胴部12aから流体管路15への伝達熱量を大きくできる。なお、流体管路15は、全体が金属製であってもよい。
【0034】
図2に示すように、主管路15Aは、管路受熱部15aを有する主部16と、導入部17と、導出部18とを備える。
主部16は、ほぼ直管状(ストレート状)に形成されている。管路受熱部15aは、主部16のうち嵌合溝13に嵌合した部分である。管路受熱部15aが直管状であると、フィルム巻き付けにより絶縁層14を設けるのが容易となる。
【0035】
図4(A)に示すように、管路受熱部15aの長さ方向に直交する断面の形状は、例えば円形状である。管路受熱部15aの内部空間は、流体が流通する流体流路である。
図3に示すLは、管路受熱部15aの深さ方向Dの外形寸法である。外形寸法Lは、例えば管路受熱部15aの外径である。外形寸法Lは、嵌合溝13の最大深さD1以下であることが好ましい。そのため、少なくとも管路受熱部15aの長さ方向の中央部15b(
図2参照)は、全体(すなわち全周)が嵌合溝13に収容される。
【0036】
図2に示すように、導入部17は、給電ケーブル21側(
図1参照)から管路受熱部15aに向けて流体を導き、この流体を管路受熱部15aに導入する。導入部17は、管路受熱部15aの一端から概略、後方に延出している。
導出部18は、管路受熱部15aから給電ケーブル21側(
図1参照)に向けて流体を導く。導出部18は、管路受熱部15aの他端から概略、後方に延出している。
【0037】
流体管路15は、1つの端子12に対して1つずつ設けられる。すなわち、端子12が複数ある場合には、流体管路15は、複数の端子12のそれぞれに設けられる。
【0038】
流体管路15に流通する流体は、特に限定されず、非絶縁性の液体、例えば水(水道水)、不凍液(例えば、エチレングリコール水溶液)を使用できる。なお、流体は、絶縁性の液体(例えばフッ素系液体、シリコンオイル、超純水など)であってもよい。
【0039】
流体管路15の両端は、流体循環熱交換装置(図示略)に接続されている。流体循環熱交換装置は、流体を流体管路15へその一端から送り込むとともに、流体管路15の他端から流体を受け入れる。
流体循環熱交換装置は、熱交換部と、装置内部流路の流体を流体管路15に送り込むポンプ部とを有する。熱交換部は、水冷、空冷等により、装置内部流路から流体管路15へ送り出す流体の温度を常温(例えば5~35℃)、あるいは常温より低い温度に保つことができる。
【0040】
流体供給部および流体回収部は、給電コネクタ10Aの外側に位置する。ケーブル付き給電コネクタ20Aは、流体管路15内を流通する流体によってコネクタ端子12の熱をハウジング11外へ排出させる。流体管路15は、コネクタ端子12の熱をハウジング11外へ排出させるための除熱手段の一例である。
【0041】
図2、
図4(A)および
図4(B)に示すように、絶縁層14は、主部16の外周面であって管路受熱部15aを含む長さ範囲に、全周にわたって設けられている。絶縁層14は、端子12と流体管路15との間に設けられ、端子12と流体管路15とを電気的に隔てている。絶縁層14は、端子と流体管路とを電気的に隔てる絶縁部材の一形態である。
【0042】
絶縁層14は、絶縁性材料で構成される。絶縁性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;アルミナ、ジルコニア等のセラミックス;シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム材料;エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂のうち1または2以上を例示できる。
【0043】
絶縁層14の厚さは、例えば0.01mm以上、1mm以下が好ましい。
絶縁層14の耐電圧は、5kV以上が好ましい。耐電圧をこの範囲とすることにより、絶縁層14の絶縁性を高め、端子12から流体への漏電を抑制できる。絶縁層14の耐電圧は、例えば、11kV以下であってよい。耐電圧がこの範囲であると、絶縁層14を薄く形成でき、端子12から管路受熱部15aへの伝達熱量を大きくしやすい。
絶縁層14の熱伝導率は、0.1W/m・K以上が好ましい。熱伝導率をこの範囲とすることにより、端子12から管路受熱部15aへの伝達熱量を大きくできる。絶縁層14の熱伝導率は、例えば30W/m・K以下であってよい。熱伝導率がこの範囲であると、絶縁層14の絶縁性を高め、端子12から流体への漏電を抑制しやすくなる。
絶縁層14の熱抵抗は、170mm2・K/W以下が好ましい。熱抵抗をこの範囲とすることにより、端子12から管路受熱部15aへの伝達熱量を大きくできる。絶縁層14の熱抵抗は、例えば10mm2・K/W以上であってよい。熱抵抗がこの範囲であると、絶縁層14の絶縁性を高め、端子12から流体への漏電を抑制しやすくなる。
【0044】
図4(A)および
図4(B)に示すように、絶縁層14は、管路受熱部15aの周方向に連続的に(すなわち一体的に)形成された絶縁層14Aであってよい。
図5に示すように、絶縁層14は、絶縁性材料で構成されたフィルムを管路受熱部15aに巻き付け、両側縁部を重ね合わせて構成された絶縁層14Bであってもよい。
【0045】
図4(A)に示すように、絶縁層14の外面は、嵌合溝13の内面に当接する。例えば、絶縁層14の外面は、底面13aに、嵌合溝13の長さ方向にわたって当接する。絶縁層14の外面は、前側面13bと後側面13cのいずれか一方または両方に当接することが好ましい。
【0046】
既述のように、給電コネクタ10Aは、通電より発熱したコネクタ端子12の熱を、絶縁層14を介して、流体管路15の管路受熱部15aからその内側を流れる流体に伝達(導熱)する。給電コネクタ10Aは、流体によって、コネクタ端子12の熱を流体管路15の管路受熱部15aから搬送し、これによってコネクタ端子12の温度上昇を抑制する。
【0047】
給電コネクタ10Aを製造する方法について説明する。
図7に示すように、管路受熱部15aに絶縁層14が形成された流体管路15を用意する。絶縁層14は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アラミド樹脂などの絶縁性材料で構成されたフィルムを管路受熱部15aに巻き付けることにより形成することができる(
図5参照)。絶縁層14は、ゴム材料などの絶縁性材料で構成された筒体を管路受熱部15aに取り付けることにより形成してもよい。絶縁層14は、アルミナなどのセラミックスなどの絶縁性材料を管路受熱部15aの外面に溶射することにより形成してもよい。絶縁層14は、エポキシ樹脂などの絶縁性材料を管路受熱部15aの外面に塗布し、硬化させることにより形成してもよい。
図1に示すように、端子12の導体接続部12bに導体21aを接続する。
【0048】
図6に示すように、絶縁層14を有する管路受熱部15aを端子12の嵌合溝13に嵌合させることによって、流体管路15を端子12に取り付ける。
図4(A)に示すように、絶縁層14の外面は、嵌合溝13の内面に当接する。これにより、嵌合溝13の内面と管路受熱部15aの外面との間の伝熱が可能となる。
図1に示すように、端子12と、流体管路15の一部(管路受熱部15aを含む部分)とをハウジング11に収容する。
【0049】
給電コネクタ10Aでは、嵌合溝13の内面の少なくとも一部が、絶縁層14を介して管路受熱部15aの外面に接触しているため、嵌合溝13の内面と管路受熱部15aの外面との間の伝熱が可能である。したがって、端子12から管路受熱部15aへの伝達熱量を大きくし、端子12の冷却効率を高めることができる。
【0050】
給電コネクタ10Aでは、嵌合溝13の内面と管路受熱部15aの外面との間に絶縁層14が形成されているため、流体として、非絶縁性の液体、例えば水(水道水など)、不凍液(エチレングリコール水溶液など)等を使用しても、端子12から流体への漏電を抑制できる。給電コネクタ10Aでは、比較的安価な非絶縁性の液体を使用できるため、製造コストを抑制できる。
【0051】
給電コネクタ10Aは、管路受熱部15aの少なくとも一部が嵌合溝13に収容されているため、構造が簡略でありながら、端子12が発した熱を管路受熱部15aが効率よく吸収できる。そのため、端子12と管路受熱部15aとの間の伝達熱量を大きくできる。また、給電コネクタ10Aは、管路受熱部15aの少なくとも一部が嵌合溝13に収容されているため、冷却構造の高さ寸法を小さくできる。そのため、全体をコンパクト化することができる。
給電コネクタ10Aは、流体管路を端子の外面側に設けた構造の給電コネクタと比べて構造が簡略であり、小型化が可能である。
【0052】
給電コネクタ10Aは、管路受熱部15aに絶縁層14を設けた後に、管路受熱部15aを嵌合溝13内に配置することで組み立てできる。したがって、組み立ての容易性の点で優れている。給電コネクタ10Aは、導体接続部12bに導体21aを接続した後に、流体管路15を胴部12aに組み付けることができるため、この点でも組み立てが容易といえる。
【0053】
給電コネクタ10Aでは、流体は直接、端子12に触れないため、端子12において漏液は生じにくい。また、給電コネクタ10Aに漏液防止のためのシール構造が不要であるため、給電コネクタ10Aの構造を簡略にすることができる。
【0054】
給電コネクタ10Aは、1つの端子12に対して1つの流体管路15が設けられるため、複数の端子に対して1つの流体管路が設けられる場合と異なり、流体管路15に結露水が付着したとしても、結露水を通じた端子間の短絡は起こりにくい。そのため、流体管路15を介した端子12間の短絡事故を防ぐことができる。よって、給電コネクタ10Aの構造は、複数の端子の各々が異なる電位で使用される給電コネクタにおいて採用することができる。
【0055】
給電コネクタ10Aでは、管路受熱部15aは、絶縁層14を介して、胴部12a(詳しくは胴部12aに形成された嵌合溝13の内面)に接触している。胴部12aは、導体21aの固定のため外力が加えられる可能性がある導体接続部12bに比べて変形が少ないため、胴部12aと管路受熱部15aとの接触面積を大きく確保しやすい。したがって、端子12から流体管路15への伝達熱量を大きくできる。
【0056】
給電コネクタ10Aでは、嵌合溝13の上方に蓋(カバー)(図示略)を設けてもよい。嵌合溝13の上方に蓋(カバー)を設けることで、流体管路15が嵌合溝13から外れる不具合を防ぐことができる。
【0057】
(第2実施形態)
図8(A)は、第2実施形態の給電コネクタの嵌合溝13、管路受熱部15aおよび絶縁層114の断面の模式図である。
図8(B)は、嵌合溝13、管路受熱部15aおよび絶縁層114の断面を模式的に示す分解図である。
図8(A)および
図8(B)に示すように、この給電コネクタは、管路受熱部15aに絶縁層が設けられておらず、嵌合溝13の内面に絶縁層114が設けられている点で、第1実施形態の給電コネクタ10Aと異なる。
【0058】
図8(A)に示すように、嵌合溝13の内面の少なくとも一部は、絶縁層114を介して管路受熱部15aの外面に接している。そのため、端子12から流体への漏電を抑制し、かつ、嵌合溝13の内面と管路受熱部15aの外面との間の伝熱が可能である。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
図1~
図3に示す給電コネクタ10Aを作製した。給電コネクタ10Aについて、端子12と流体(冷媒)間の耐電圧、絶縁層14の熱伝導率、絶縁層14の熱抵抗、および発熱量を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2~10)
絶縁層14の構成材料以外は実施例1と同様にして作製した給電コネクタ10Aについて、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0061】
給電コネクタ10Aの使用条件等を以下に示す。給電ケーブル21(導体サイズ32sq)に通す電流は400Aとした。例えば、
図1の給電ケーブル21は、2本の導体21aを備えており、1本の導体21aのサイズは16sqである。通電時間は1時間とした。流体は15%(質量基準)エチレングリコール水溶液である。流体の流量は1.2L/minとした。流体管路15の構成材料は、リン脱酸銅C1220である。
【0062】
PPフィルムは、信越フィルム製「電気用フィルムR」である。PETフィルムは、東レ製「ルミラー」である。Siゴムシート1は、信越化学製「PCS-PL-30」である。Siゴムシート2は、3M製「5578H」である。アラミドフィルムは、東レ製「ミクトロン GQ」である。ポリイミドフィルムは、東レ・デュポン製「カプトンMT+」である。エポキシは、住友大阪セメント製「ジーマイナス」である。硬化性シリコンは、信越化学製「SDP-5040」である。シリコングリスは、信越化学製「G-775」である。
【0063】
(比較例1)
絶縁層がないこと以外は実施例1と同様にして作製した給電コネクタについて、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
流体管路がないこと以外は実施例1と同様にして作製した給電コネクタについて、実施例1と同様の測定を試みた。しかし、通電時間(1時間)が経過する前に発熱量が100℃に達したため、測定を中止した。
【0065】
【0066】
表1に示すように、実施例1~10では、絶縁層14の耐電圧は5kV以上であり、絶縁性は良好と判定した。実施例1~10では、発熱量を60℃以下に抑えることができた。以上より、実施例1~10では、端子と流体との絶縁性を良好にしつつ、端子の発熱を抑えることができたことが確認された。これに対し、絶縁層がない比較例1では、端子と流体との間の絶縁性を確保できなかった。流体管路がない比較例2では、端子の発熱量が大きくなった。
【0067】
実施形態の給電コネクタのコネクタ端子は、
図1等に例示した構成に限定されない。
図1および
図2等に示す給電コネクタ10Aでは、管路受熱部15aが端子12の嵌合溝13に嵌合する構造が採用されているが、端子12の構造はこれに限定されない。例えば、端子は、絶縁層が形成された管路受熱部が挿通する挿通孔を有していてもよい。前記挿通孔の内面の少なくとも一部は、前記絶縁層を介して前記管路受熱部の外面に伝熱可能に接触する。
【0068】
コネクタ端子12は、例えば、
図1等に例示したピン状のコンタクト部12cを有するコネクタ端子12に限らず、ピン状のコンタクト部12cに代えて円筒状のコンタクト(以下、雌形端子ともいう)を有する構成も採用可能である。円筒状のコンタクト部は、先端(前端)から後側に向かって延在する複数のスリットがコンタクト部の周方向に間隔をおいて形成されていてもよい。スリットにより、円筒状のコンタクト部は、個々に弾性変形可能な複数の弾性片部に分割される。そのため、円筒状のコンタクト部は、例えばケーブル付き給電コネクタをピン状のコンタクト部を有する端子が設けられたインレットに嵌合したときに、インレット側端子のピン状のコンタクト部の挿入、嵌合、それによる電気的接続を実現する。
【0069】
流体管路は、図示例の構成に限定されず、適宜、設計変更可能である。
図1に示す給電コネクタ10Aは1つの端子12を有するが、ハウジング内の端子の数は1に限らず、2以上の任意の数であってよい。
【0070】
図4(A)等に示す給電コネクタ10Aでは、絶縁層14(絶縁部材)は、管路受熱部15aに全周にわたって設けられているが、絶縁部材の構成は図示例に限定されない。絶縁部材は、端子と流体管路(受熱部)とを電気的に隔てることができればよく、例えば受熱部の全周に満たない範囲に設けられていてもよい。
図1等に示す給電コネクタ10Aは、端子12と流体管路15とを電気的に隔てる構成として絶縁層14を採用しているが、端子と流体管路とを電気的に隔てる絶縁部材の形態は層状体に限らず、任意の形態であってよい。
【符号の説明】
【0071】
10A…給電コネクタ、11…ハウジング、12…端子、13…嵌合溝、14,114…絶縁層(絶縁部材)、15…流体管路、15a…管路受熱部(受熱部)、20A…ケーブル付き給電コネクタ、21…給電ケーブル(ケーブル)、21a…導体。