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特許7178859表示ドライバ、プログラム、記憶媒体及び表示画像データの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】表示ドライバ、プログラム、記憶媒体及び表示画像データの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20221118BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G09G3/20 660Q
G09G3/20 680H
G09G3/20 622A
G09G3/20 623A
G09G3/20 641P
G09G3/20 612P
G02F1/133 505
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018192159
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020060697
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】皆木 朋夫
(72)【発明者】
【氏名】降旗 弘史
(72)【発明者】
【氏名】能勢 崇
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045851(JP,A)
【文献】特開2019-023861(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142183(WO,A1)
【文献】特開2017-142368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す表示画像データを出力する画像処理回路部と、
前記表示画像データに基づき、前記表示パネルを駆動する駆動回路部と
を備え、
前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定されている第2階調値が前記第1階調値と異なる値を含み、
前記第2画素のうちの前記挿入領域に含まれない画素に対応する前記無効画素データが前記第1階調値に設定されている
表示ドライバ。
【請求項2】
前記有効領域と前記無効領域との境界は、前記表示パネルのスキャン線に平行な線分を含む
請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項3】
前記挿入領域は、前記スキャン線に平行な方向において、前記境界に含まれる前記線分の少なくとも一部と重なっている
請求項2に記載の表示ドライバ。
【請求項4】
前記画像処理回路部は、前記境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データに前記第1階調値を設定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項5】
前記画像処理回路部は、前記挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに前記第2階調値を設定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項6】
前記第2階調値は、前記第1階調値より大きい
請求項1から5のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項7】
前記第2階調値は、最大階調値を含む
請求項1から6のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項8】
像データを外部から受信するインタフェースと、
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す表示画像データを出力する画像処理回路部と、
前記表示画像データに基づき、前記表示パネルを駆動する駆動回路部と
を備え、
前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定されている第2階調値が前記第1階調値と異なる値を含み、
前記挿入領域の画素に対応する前記無効画素データは、受信した前記画像データにおける前記挿入領域に含まれる画素に対応する画素データに設定された階調値を持つ
示ドライバ。
【請求項9】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す表示画像データを出力する画像処理回路部と、
前記表示画像データに基づき、前記表示パネルを駆動する駆動回路部と
を備え、
前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定されている第2階調値が前記第1階調値と異なる値を含み、
前記第1階調値は、最小階調値を含む
示ドライバ。
【請求項10】
さらに、画像データを外部から受信するインタフェースを備え、
前記第1階調値は、受信した前記画像データにおける前記境界領域に含まれる画素に対応する前記有効画素データに設定された第3階調値に基づき、決定される
請求項1から7のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項11】
前記第1階調値は、前記第3階調値と、所望の階調値との比により決定される
請求項10に記載の表示ドライバ。
【請求項12】
前記挿入領域には、前記表示画像データにおいて、前記有効領域に隣接し、前記無効領域に含まれる前記第2画素の少なくとも一部が含まれる
請求項1から11のいずれか1項に記載の表示ドライバ。
【請求項13】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す元画像データに基づいて、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を演算装置に実行させ、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記表示画像データを生成することは、前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データを第1階調値に設定することを含み、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記表示画像データを生成することは、前記第2画素のうちの前記挿入領域に含まれない画素に対する前記無効画素データを前記第1階調値に設定することを含む
プログラム。
【請求項14】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す元画像データに基づいて、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を演算装置に実行させ、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記表示画像データを生成することは、前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データを第1階調値に設定することを含み、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データは、前記元画像データにおける前記挿入領域に含まれる画素に対応する画素データに設定された階調値を持つ
ログラム。
【請求項15】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す元画像データに基づいて、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を演算装置に実行させ、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記表示画像データを生成することは、前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データを第1階調値に設定することを含み、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記第1階調値は、最小階調値を含む
プログラム。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項17】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を示す元画像データに基づき、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を含み、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記第2画素のうちの前記挿入領域に含まれない画素に対応する前記無効画素データが前記第1階調値に設定されている
表示画像データの生成方法。
【請求項18】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を示す元画像データに基づき、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を含み、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データは、外部から受信した画像データにおける前記挿入領域に含まれる画素に対応する画素データに設定された階調値を持つ
表示画像データの生成方法。
【請求項19】
表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、前記表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を示す元画像データに基づき、前記表示パネルを駆動するための表示画像データを生成すること
を含み、
前記表示パネルを駆動するための前記表示画像データは、
前記有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、
前記無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データと
を備え、
前記第1画素のうちの前記無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する前記有効画素データが第1階調値に設定され、
前記第2画素のうちの前記無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する前記無効画素データに設定された第2階調値が、前記第1階調値と異なる値を含み、
前記第1階調値は、最小階調値を含む
表示画像データの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示ドライバ、プログラム、記憶媒体及び表示画像データの生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OLED(organic light emitting diode)表示パネルや液晶表示パネルなどの表示パネルにおいて、画素配置領域が完全な矩形でない場合がある。例えば、画素配置領域の角部が丸められていたり、画素が設けられないノッチが設けられていたりする。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、表示ドライバは、画像処理回路部と、駆動回路部とを備える。画像処理回路部は、表示パネルの表示領域に表示される有効領域と、表示領域に表示されない無効領域とを備える表示画像を表す表示画像データを出力する。駆動回路部は、表示画像データに基づき、表示パネルを駆動する。表示画像データは、有効領域に含まれる第1画素に対応する有効画素データと、無効領域に含まれる第2画素に対応する無効画素データとを備える。第1画素のうちの無効領域に隣接する境界領域に含まれる少なくとも一部の画素に対応する有効画素データが第1階調値に設定されている。第2画素のうちの無効領域に設定された挿入領域に含まれる画素に対応する無効画素データに設定された第2階調値が、第1階調値と異なる値を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】一実施形態による表示システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態による、ホストから受信する画像データの一例を示す図である。
図3】一実施形態による、線が表示される画像データの一例を示す図である。
図4】一実施形態による、線の表示を抑制する画像データの一例を示す図である。
図5】一実施形態による、画像処理回路により得られる画像データの一例を示す図である。
図6】一実施形態による画像処理回路部の処理内容を示すフローチャートである。
図7】一実施形態による挿入領域の形状に関する一例を示す図である。
図8】一実施形態による挿入領域の形状に関する一例を示す図である。
図9】一実施形態による挿入領域の形状に関する一例を示す図である。
図10】一実施形態によるホストの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一実施形態による図1に示す表示システム1000は、表示モジュール100と、ホスト200とを備える。一実施形態では、表示モジュール100は、表示パネル1と、表示ドライバ2とを備える。表示パネル1は、例えば、OLED表示パネルなどの各画素に電力を供給する表示パネルである。一実施形態において、表示モジュール100は、ホスト200から画像データが入力され、表示パネル1に画像データを表示するように構成される。
【0006】
一実施形態による表示パネル1において、画素が設けられている表示領域は矩形ではない。表示パネル1の表示領域の角は丸められ、表示領域の一辺に沿ってノッチ11が形成されている。
【0007】
一実施形態において、表示ドライバ2は、外部のホスト200から表示パネル1に表示する画像データを取得し、画像データに応じて表示パネル1の各画素を駆動するように構成される。画像データには、各画素の階調値を記述する画素データを含む。一実施形態において、表示ドライバ2は、インタフェース21と、画像処理回路部22と、ソース駆動回路部23とを備える。インタフェース21は、ホスト200から画像データを受信し、画像処理回路部22に転送する。画像処理回路部22は、ホスト200から受信した画像データに画像処理を行う。画像処理回路部22で行う画像処理は、表示パネル1の表示領域の形状に応じた処理を含む。画像処理回路部22で行う画像処理の詳細は、後述する。ソース駆動回路部23は、画像処理回路部22における画像処理によって得られた表示画像データを受信し、表示画像データに基づき、表示パネル1の各画素を駆動する。
【0008】
一実施形態において、ホスト200は、表示パネル1に表示すべき画像を表す画像データを生成し、表示ドライバ2に提供する。一実施形態では、ホスト200が提供する画像データが表す画像は、表示パネル1の表示領域に応じた形状ではなく、図2に示すように、表示パネル1の表示領域に外接する矩形の画像であり、表示パネル1の表示領域に表示される有効領域10と無効領域12とを含む矩形の画像である。無効領域12は、画像データにおいて、対応する画素が表示パネル1に設けられていない領域を示し、表示パネル1に表示されない領域である。画像データは、有効領域10に含まれる画素に対応する有効画素データと、無効領域12に含まれる画素に対応する無効画素データとを含む。
【0009】
一実施形態において、表示ドライバ2は、表示パネル1の表示領域が矩形でなくとも、ホスト200から受信した矩形の画像データに基づき、表示パネル1に駆動信号を出力する。無効領域12は対応する画素が表示パネル1に設けられていないため表示されず、対応する画素が表示パネル1に設けられている有効領域10のみが表示される。
【0010】
一実施形態では、画像処理回路部22は、表示パネル1の表示領域の端が滑らかに見えるようにするための画像処理を行う。図3に示すように、この画像処理において、例えば、有効領域10の中の無効領域12に隣接する境界領域14に含まれる画素に対応する有効画素データに黒色などの第1階調値が設定される。一実施形態では、第1階調値は、設定し得る階調値の最小値を示す最小階調値である。一実施形態では、第1階調値は、表示パネル1において低い輝度で表示される階調値でもよい。
【0011】
画像データにおいて、境界領域14と無効領域12との全体とに含まれる画素に対応する画素データが第1階調値に設定されると、図3に示すように、スキャン線Lの延伸方向に延びる直線状の線30が表示される場合がある。この線30は、例えば、線30上の画素が表示画像データと比較して低い輝度で表示されるため、暗い線として表示される。線30は、線30上の画素が表示画像データと比較して高い輝度で表示され、明るい線として表示される場合もある。特に、無効領域12と有効領域10との境界に、スキャン線Lの延伸方向に平行な線分12aが含まれる場合に生じ得る。仮に、境界領域14と無効領域12とに含まれる画素に対応する画素データに黒色などの第1階調値が設定される場合、有効領域10に対応する有効画素データに表示画像に応じた階調値が設定されるため、スキャン線Lに接続された画素15を駆動している状態から、スキャン線LP+1に接続された画素15を駆動している状態に移る場合に、ソース線SN-3~SM+3に印加される電圧が大きく変化する。ソース線Sと、画素15に電圧VDDを供給する電源線とのカップリングにより、電源線の電圧が大きく変化し、表示パネル1に線30が表示され得る。スキャン線LP+1に接続された画素15を駆動している状態から、スキャン線Lに接続された画素15を駆動している状態に移る場合も同様に、電源線の電圧が大きく変化し、線30が表示され得る。
【0012】
この線30の表示を抑制するため、一実施形態では、画像処理回路部22は、図4、5に示すように、画像データにおいて、無効領域12に設定された挿入領域13に対応する無効画素データを、白色などの第2階調値に設定する画像処理を行う。このような画像処理は、ソース線SN+6~SM-6に印加される電圧の変化を抑制し、これにより、ソース線Sとのカップリングによる電源線の電圧の変化を低減する。この結果、線30の表示を抑制する。
【0013】
一実施形態では、挿入領域13の無効画素データに設定されている第2階調値には、境界領域14に含まれる画素の有効画素データに設定する第1階調値と異なる階調値が含まれてもよい。一実施形態では、第2階調値は、設定し得る階調値の最大値を示す最大階調値でもよい。一実施形態では、第2階調値は、線30の表示を抑制し得る所望の階調値でもよい。一実施形態では、第2階調値には、画素15の輝度が最も高くなる階調値が含まれてもよい。一実施形態では、第2階調値は、第1階調値より大きい値でもよい。
【0014】
一実施形態では、挿入領域13は、無効領域12の上辺に沿ってスキャン線Lの延伸方向に延び、上辺から下辺までの画素を含む。例えば、有効領域10と無効領域12との境界に、スキャン線Lの延伸方向に平行な線分12aが含まれている場合、挿入領域13は、スキャン線Lの延伸方向において、線分12aの少なくとも一部と重なってもよい。一実施形態では、スキャン線Lの延伸方向において、挿入領域13は、線分12aの範囲に含まれてもよい。一実施形態では、挿入領域13に、表示画像データにおいて、無効領域12の中の有効領域10に隣接する画素の少なくとも一部が含まれてもよい。
【0015】
一実施形態では、境界領域14に設定される第1階調値は、無効領域12に設定される第1階調値と異なってもよい。一実施形態では、境界領域14に設定される第1階調値は、画素の位置に応じて異なる値でもよく、ホスト200から受信した画像データにおける境界領域14に含まれる画素に対応する有効画素データに設定された階調値(第3階調値とも呼ぶ)に基づき、決定されてもよい。例えば、この第1階調値は、受信した第3階調値と、最小階調値、最大階調値などの所望の階調値とを所望の比(例えばブレンド率)に基づき混合して、決定されてもよい。一実施形態では、この第1階調値は、受信した画像データに基づき境界領域14に対応する表示パネル1の画素15が表示する輝度と、最低輝度、最高輝度などの所望の輝度とを所望の比に基づき混合して決定される輝度を表す階調値でもよい。一実施形態では、これらの比は、画素の位置に応じて異なる値でもよく、例えば、画像データの境界領域14に対応する表示パネル1の画素15に含まれる副画素を表示する画素回路の数に応じて決定されてもよい。
【0016】
一実施形態では、境界領域14の少なくとも一部の画素に対応する有効画素データ、例えば、有効領域10と無効領域12との境界がスキャン線Lに平行な線分12aに隣接する画素を除いた画素に対応する有効画素データのみに、第1階調値を設定してもよい。
【0017】
一実施形態では、画像処理回路部22は、図6に示すように、動作する。画像処理回路部22は、ステップS10において、ホスト200から画像データを取得する。一実施形態では、画像処理回路部22が取得する画像データは、無効領域12を含む。
【0018】
ステップS20において、画像処理回路部22は、表示画像データにおける無効領域12と境界領域14との位置と、これらに対応する画素データに設定する階調値とを取得する。ここで、画像処理回路部22が表示パネル1の表示領域の形状に応じて階調値を設定する画素の位置、具体的には無効領域12と境界領域14とに含まれる画素の位置を設定位置として説明する。一実施形態では、設定位置と、設定位置に対応する画素データに設定する階調値とは、互いに対応付けられて、予め画像処理回路部22に登録されている。一実施形態では、表示パネル1の表示領域の形状に応じて、境界領域14と、無効領域12との画素に対応する画素データの位置が登録されている。また、無効領域12に含まれる挿入領域13に対応する無効画素データに設定する階調値として、第2階調値が登録されている。また、挿入領域13を除く無効領域12と、境界領域14との画素に対応する画素データに設定する階調値として、第1階調値が登録されている。一実施形態では、第1階調値は、最小階調値でもよい。一実施形態では、第2階調値は、最大階調値でもよい。
【0019】
ステップS30において、画像処理回路部22は、取得した画像データと、設定位置と、設定位置の画素データに設定する階調値とに基づき、表示パネル1を駆動するための表示画像データを生成する。取得した画像データにおいて、設定位置の画素データに画像処理回路部22に登録された階調値を設定して、設定位置の画素データを変更する。
【0020】
以上のように、画像処理回路部22は、無効領域12と境界領域14とにおいて、挿入領域13では第2階調値を、それ以外では第1階調値を設定した表示画像データを生成する。表示パネル1は、生成された表示画像データに基づき、ソース駆動回路部23により駆動される。
【0021】
一実施形態において、挿入領域13は、線30の表示を抑制できれば、任意の形状を選択することができる。一実施形態では、図7に示すように、挿入領域13は、スキャン線Lに直交する方向に分離した複数の矩形、例えば長方形を含んでもよい。一実施形態では、図8に示すように、スキャン線Lが延びる方向に分離した複数の長方形を含んでもよい。一実施形態では、図9に示すように、スキャン線Lが延びる方向に分離した複数の平行四辺形を含んでもよい。一実施形態では、挿入領域13は、無効領域12と同じ領域でもよい。
【0022】
表示ドライバ2の画像処理回路部22が、挿入領域13を除く無効領域12の画素に対応する画素データに第1階調値を設定する例に限定されない。一実施形態において、ホスト200が、境界領域14と無効領域12との画素に対応する画素データに黒色などを示す第1階調値を設定してもよい。この場合、表示ドライバ2は、挿入領域13に対応する無効画素データに第2階調値を設定すればよく、挿入領域13を除く無効領域12について、無効画素データに設定されている階調値を変更しなくてもよい。
【0023】
一実施形態では、ホスト200が提供する画像データにおいて、無効領域12の画素に対応する無効画素データが、黒色を示す階調値に設定されていない場合、挿入領域13の画素に対応する無効画素データは変更しなくともよい。この場合、挿入領域13の画素に対応する無効画素データは、ホスト200から取得した画像データにおける挿入領域13の画素に対応する無効画素データに設定されている階調値を持つ。
【0024】
一実施形態において、ホスト200が、送信する画像データにおいて、図5に示すように、境界領域14の画素に対応する有効画素データに第1階調値を設定し、挿入領域13の画素に対応する無効画素データに第2階調値を設定してもよい。この場合、ホスト200は、ソフトウェア処理により表示画像データを生成する。図10に示すように、ホスト200は、インタフェース210と、演算装置220と、記憶装置230とを備える。
【0025】
一実施形態において、インタフェース210は、表示ドライバ2と演算装置220とに電気的に接続され、演算装置220が生成した画像データを表示ドライバ2に送信する。
【0026】
一実施形態において、記憶装置230は、表示画像データの生成に用いられる様々なデータを格納する。一実施形態では、画像データ変換ソフトウェア240が記憶装置230にインストールされており、記憶装置230は、画像データ変換ソフトウェア240を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。画像データ変換ソフトウェア240は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体300に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0027】
一実施形態において、演算装置220は、画像データ変換ソフトウェア240を実行して表示画像データの生成のための様々なデータ処理を行う。例えば、演算装置220は、図1に示す一実施形態における画像処理回路部22と同様の処理を行い、生成された表示画像データを表示ドライバ2に送信する。一実施形態では、演算装置220は、図6に示すように、ステップS10において、表示パネル1に表示すべき元画像データを取得する。この元画像データは、画像データ変換ソフトウェア240と異なるソフトウェアを用いて演算装置220により生成されてもよい。演算装置220は、ステップS20において、無効領域12と境界領域14との位置と、画素データに設定する階調値とを取得する。無効領域12と境界領域14との位置と、画像データに設定する階調値とは、例えば、図1に示す一実施形態と同様に、予め記憶装置230に登録されている。最後に、ステップS30において、演算装置220は、取得した画像データと、無効領域12と境界領域14との位置と、画素データに設定する階調値とに基づき、表示画像データを生成する。生成された表示画像データは、表示ドライバ2に送信される。画像データに設定する階調値としての第1階調値及び第2階調値は、上述した各実施形態に従って設定することができる。この場合、表示ドライバ2は、図6に示す処理を行うことなく、受信した表示画像データに基づき、表示パネル1の各画素を駆動してもよい。一実施形態では、表示画像データの生成は、ホスト200以外の画像生成装置で実行されてもよい。
【0028】
一実施形態では、赤色、青色、緑色の副画素を含む画素の単位での処理以外にも、副画素に応じて表示パネル1の表示領域の形状が異なる場合、副画素の単位で処理を行ってもよい。一実施形態では、挿入領域13の画素に対応する画素データに第2階調値を設定し、境界領域14の画素に対応する画素データに第1階調値を設定する以外にも、線30の表示を抑制することができれば、階調値を任意に選択してもよい。
【0029】
以上には、本開示の様々な実施形態が具体的に記載されているが、本開示に記載された技術は、様々な変更と共に実施され得る。
【符号の説明】
【0030】
1 表示パネル
2 表示ドライバ
10 有効領域
11 ノッチ
12 無効領域
12a 線分
13 挿入領域
14 境界領域
15 画素
21 インタフェース
22 画像処理回路部
23 ソース駆動回路部
30 線
100 表示モジュール
200 ホスト
210 インタフェース
220 演算装置
230 記憶装置
240 画像データ変換ソフトウェア
300 記憶媒体
1000 表示システム
L スキャン線
S ソース線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10