(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】航空機の位置計測システム、航空機の位置計測方法及び航空機
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20221118BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221118BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20221118BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G01C21/28
B64C39/02
B64D45/00 A
G08G5/00 A
(21)【出願番号】P 2018195483
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】金田一 久美子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】奈良橋 俊之
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09250312(US,B1)
【文献】特開2004-271349(JP,A)
【文献】特開2002-330092(JP,A)
【文献】特開2001-180600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B64C 39/02
B64D 45/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機と、既知の軌道を飛行する人工衛星とを含んで構成された航空機の位置計測システムであって、
前記人工衛星に搭載され、電磁波をその到来方向へ反射させる反射手段と、
前記航空機に搭載され、電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角手段と、
前記人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得手段と、
前記衛星位置取得手段により取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角手段により計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、前記航空機の位置を算出する航空機位置算出手段と、
前記人工衛星に搭載され、光を散乱させる散乱手段と、
前記航空機に搭載され、前記散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、前記航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測手段と、
前記人工衛星または既知の地上位置に設置されたレーザー光源と、
を備え、
前記測距測角手段は、前記方位予測手段により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が前記レーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする航空機の位置計測システム。
【請求項2】
前記散乱手段が太陽光を散乱させることを特徴とする
請求項1に記載の航空機の位置計測システム。
【請求項3】
前記レーザー光源からのレーザー光を変調する変調手段を備えることを特徴とする
請求項1又は2に記載の航空機の位置計測システム。
【請求項4】
既知の軌道を飛行する人工衛星を利用して航空機の位置を計測する航空機の位置計測方法であって、
前記人工衛星には
、電磁波をその到来方向へ反射させる反射手段
と、光を散乱させる散乱手段と、が搭載され
、
前記航空機には、前記散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段が搭載され、
前記人工衛星または既知の地上位置には、レーザー光源が設置され、
前記航空機の制御手段が、
前記航空機から電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角行程と、
前記人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得行程と、
前記衛星位置取得行程で取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角行程で計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、前記航空機の位置を算出する航空機位置算出行程と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、前記航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測行程と、
を実行
し、
前記測距測角行程では、前記方位予測行程により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が前記レーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする航空機の位置計測方法。
【請求項5】
人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得手段と、
電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角手段と、
前記衛星位置取得手段により取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角手段により計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、当該航空機の位置を算出する航空機位置算出手段と、
前記人工衛星の散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、当該航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測手段と、
を備え、
前記測距測角手段は、前記方位予測手段により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が、前記人工衛星または既知の地上位置に設置されたレーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の位置を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の航空機の運用においては、GPS(Global Positioning System)を利用した自機位置計測が広く用いられている。
しかし、高度約2万kmのGPS衛星からのGPS信号は強度が弱く、ジャミングが決して難しくないうえに、偽のGPS信号による欺瞞(なりすまし)を受ける可能性もある。このような場合には、航空機が自機位置を把握できなくなり、最悪の場合には迷走や墜落に至るおそれがある。
【0003】
GPS信号などの外部信号を利用しない自機位置計測技術としては、天文航法がある。
例えば、特許文献1に記載の天文航法では、カメラ等により収集したデータを天体データベース内に記憶された位置情報と比較することで、無人機の自機位置を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した天文航法では、膨大なデータ量のデータベースを照合する処理が必要となるため、計算負荷が重くなって長い処理時間を要してしまう。また、太陽や月の利用を除き、基本的に昼間の位置計測には利用できない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、航空機の位置を、外部信号に依らずに好適に計測することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、航空機と、既知の軌道を飛行する人工衛星とを含んで構成された航空機の位置計測システムであって、
前記人工衛星に搭載され、電磁波をその到来方向へ反射させる反射手段と、
前記航空機に搭載され、電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角手段と、
前記人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得手段と、
前記衛星位置取得手段により取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角手段により計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、前記航空機の位置を算出する航空機位置算出手段と、
前記人工衛星に搭載され、光を散乱させる散乱手段と、
前記航空機に搭載され、前記散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、前記航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測手段と、
前記人工衛星または既知の地上位置に設置されたレーザー光源と、
を備え、
前記測距測角手段は、前記方位予測手段により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が前記レーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の航空機の位置計測システムにおいて、
前記散乱手段が太陽光を散乱させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の航空機の位置計測システムにおいて、
前記レーザー光源からのレーザー光を変調する変調手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、航空機の位置計測方法であって、
既知の軌道を飛行する人工衛星を利用して航空機の位置を計測する航空機の位置計測方法であって、
前記人工衛星には、電磁波をその到来方向へ反射させる反射手段と、光を散乱させる散乱手段と、が搭載され、
前記航空機には、前記散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段が搭載され、
前記人工衛星または既知の地上位置には、レーザー光源が設置され、
前記航空機の制御手段が、
前記航空機から電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角行程と、
前記人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得行程と、
前記衛星位置取得行程で取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角行程で計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、前記航空機の位置を算出する航空機位置算出行程と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、前記航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測行程と、
を実行し、
前記測距測角行程では、前記方位予測行程により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が前記レーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、航空機であって、
人工衛星の絶対位置を取得する衛星位置取得手段と、
電磁波を発射して当該航空機から見た前記人工衛星の方位及び距離を計測する測距測角手段と、
前記衛星位置取得手段により取得された前記人工衛星の絶対位置と、前記測距測角手段により計測された前記人工衛星の方位及び距離とに基づいて、当該航空機の位置を算出する航空機位置算出手段と、
前記人工衛星の散乱手段からの散乱光を捕捉する光学手段と、
前記光学手段が捕捉した前記散乱光の方向として、当該航空機から見た前記人工衛星の方位を予測する方位予測手段と、
を備え、
前記測距測角手段は、前記方位予測手段により予測された方位を含む所定の範囲に対して計測用の電磁波を発射し、
前記散乱手段が、前記人工衛星または既知の地上位置に設置されたレーザー光源からのレーザー光を散乱させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、航空機上の測距測角手段から発射された電磁波が人工衛星の反射手段によってその到来方向へ反射されることで、航空機から見た人工衛星の方位及び距離が計測される。そして、計測された人工衛星の方位及び距離と人工衛星の絶対位置とに基づいて、航空機の位置が算出される。
したがって、従来の天文航法のように重い計算処理を必要としたり利用を昼間のみに限定されたりすることなく、航空機の位置を外部信号に依らずに好適に計測することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、人工衛星上の散乱手段からの散乱光が機上の光学手段で捕捉され、この散乱光の方向として、航空機から見た人工衛星の方位が予測される。そして、この予測方位を含む所定の範囲に向けて測距測角手段から計測用の電磁波が発射される。
したがって、測距測角手段から照射する電磁波の範囲を限定して、効率的に人工衛星の方位及び距離を計測することができる。また、慣性航法装置を用いる必要なく、人工衛星の方位を取得することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、人工衛星上の散乱手段が、人工衛星または既知の地上位置に設置されたレーザー光源からのレーザー光を散乱させる。
したがって、人工衛星が太陽光を受けることができない場合であっても、散乱手段から光を散乱させて人工衛星の方位を取得することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、人工衛星上の散乱手段が太陽光を散乱させるので、人工衛星から散乱光を出すためだけの光源を設ける必要がない。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、人工衛星上の散乱手段から光を散乱させるためのレーザー光を変調することができるので、このレーザー光をキャリアとして情報を伝達することができる。
したがって、電波を使用せずに人工衛星または地上から航空機へ情報を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態における位置計測システムの模式図である。
【
図2】第1実施形態における無人機の概略の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における位置計測システムによる位置計測方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態における位置計測システムの模式図である。
【
図5】第2実施形態における無人機の概略の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第2実施形態における位置計測システムによる位置計測方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における位置計測システムの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
[第1実施形態]
<位置計測システムの構成>
まず、本発明の第1実施形態における位置計測システム100の構成について説明する。
図1は、位置計測システム100の模式図であり、
図2は、位置計測システム100における無人機10の概略の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、位置計測システム100は、無人機(無人航空機)10と、既知の軌道を飛行する人工衛星20とを含んで構成され、外部からの信号に依らずに無人機10に自機位置の情報を取得させるためのものである。
【0030】
図2に示すように、無人機10は、当該無人機10を飛行させるための飛行機構11のほか、レーザー測距測角装置13、GPS(Global Positioning System)受信機14、慣性航法装置15、記憶部18及び制御部19を備えている。
【0031】
レーザー測距測角装置13は、レーザー照射部と受光部とを備えており、レーザー照射部から照射されて測定対象に反射されたレーザー光を受光部で受光することにより、測定対象までの距離とその方位(方向)を計測できるようになっている。また、レーザー測距測角装置13ではレーザー照射部が可動式となっており、所定の角度範囲内でレーザー光を走査可能となっている。
【0032】
GPS受信機14は、無人機10の自機位置(現在位置)の情報を含むGPS信号を、GPS衛星から受信するものである。このGPS受信機14は、GPS信号の受信状況や、GPS信号から取得した無人機10の自機位置の情報を、制御部19へ出力する。
なお、GPS以外の衛星測位システムを利用してもよく、その場合にはGPS受信機14を当該システムに対応した機器に替える必要があるのは勿論である。
【0033】
慣性航法装置15は、ジャイロや加速度計により、外部からの電波に依ることなく無人機10の位置や速度等を計測可能なものである。この慣性航法装置15は、計測した無人機10の自機位置(以下、「慣性航法位置」という)の情報を制御部19へ出力する。また、慣性航法装置15は、誤差の累積を低減するために、GPS信号から取得された自機位置に基づく補正を加えて慣性航法位置を出力する。ただし、後述する位置計測を実行する場合は、GPS信号に基づく補正を行わなくともよい。
【0034】
記憶部18は、無人機10の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。本実施形態においては、記憶部18は、衛星軌道情報180を予め記憶している。
衛星軌道情報180は、人工衛星20の軌道を示す情報であり、この情報に基づいて任意の時刻における人工衛星20の位置(絶対位置)を取得することができる。
【0035】
制御部19は、無人機10の各部を中央制御する。具体的に、制御部19は、飛行機構11を駆動制御して無人機10の飛行を制御したり、レーザー測距測角装置13等の動作を制御したりする。
【0036】
一方、人工衛星20には、
図1に示すように、リフレクタ21が搭載されている。
リフレクタ21は、本実施形態ではコーナーキューブリフレクタであり、無人機10から照射されたレーザー光をその到来方向へ反射させる。
【0037】
<位置計測方法>
続いて、第1実施形態の位置計測システム100において、飛行中の無人機10が自機位置を取得する位置計測方法について説明する。
図3は、この位置計測方法の流れを示すフローチャートである。
【0038】
位置計測システム100による位置計測は、本実施形態では、GPS受信機14がジャミングや偽信号のなりすましを受けるなどしてGPS信号に含まれる位置情報の信頼性が低いと判定された場合に実行される。したがって、この場合には、慣性航法装置15による慣性航法位置の信頼性・精度も低い。
【0039】
この位置計測では、
図3に示すように、まず制御部19は、衛星軌道情報180に基づいて、人工衛星20の位置を算出する(ステップS1)。ここでは、衛星軌道情報180を用いることにより、人工衛星20の絶対位置(座標)が算出される。この算出のための時刻情報は、GPS信号に依ってもよいし、その他の時刻取得手段を用いてもよい。
【0040】
次に、制御部19は、ステップS1で算出した人工衛星20の絶対位置と、慣性航法装置15による慣性航法位置とに基づいて、無人機10から見た人工衛星20の方位を予測する(ステップS2)。上述のとおりこの時点での慣性航法位置は精度が低いため、ここで予測される方位は誤差を含んでいることが予想される。
【0041】
次に、制御部19は、ステップS2で予測した人工衛星20の方位に基づいて、レーザー測距測角装置13により人工衛星20の方位及び距離を計測する(ステップS3)。
より詳しくは、制御部19は、人工衛星20の予測方位を含む所定の範囲に対し、レーザー測距測角装置13のレーザー照射部によりレーザー光を走査させる。そして、人工衛星20のリフレクタ21により反射されてきたレーザー光をレーザー測距測角装置13の受光部で受光することにより、無人機10から見た相対的な人工衛星20の方位及び距離を取得する。
なお、レーザー光を走査させる範囲は、予想される慣性航法位置の誤差に基づいて決定してもよいし、反射光が得られなかった場合に段階的に広げて再度スキャンすることとしてもよい。
【0042】
次に、制御部19は、ステップS1で算出した人工衛星20の絶対位置と、ステップS3で取得した方位及び距離とに基づいて、無人機10の自機位置を算出する(ステップS4)。
具体的に、制御部19は、ステップS1で算出した人工衛星20の絶対位置から、ステップS3で取得した方位及び距離とは逆ベクトルの座標にある位置として、無人機10の自機位置を算出する。算出した自機位置は慣性航法装置15が出力する慣性航法位置の補正に用いられる。
これにより、例えばGPS受信機14がジャミングや偽信号のなりすましを受けるなどして慣性航法装置15による自機位置計測の信頼性が損なわれた場合であっても、好適に無人機10の自機位置を計測することができる。特に、レーザー光を遮る雲が殆ど存在しない高高度(例えば、上層雲の発生高度よりも高い高度15km(5万ft)以上)での飛行において、好適に実行することができる。
【0043】
次に、制御部19は、位置計測を終了させるか否かを判定し(ステップS5)、終了させないと判定した場合には(ステップS5;No)、上述のステップS1へ処理を移行する。
一方、例えば無人機10の目的地への到着等により位置計測を終了させると判定した場合には(ステップS5;Yes)、制御部19は、位置計測を終了させる。
【0044】
以上のように、本第1実施形態によれば、無人機10上のレーザー測距測角装置13から発射されたレーザー光が人工衛星20のリフレクタ21によってその到来方向へ反射されることで、無人機10から見た人工衛星20の方位及び距離が計測される。そして、計測された人工衛星20の方位及び距離と人工衛星20の絶対位置とに基づいて、無人機10の位置が算出される。
したがって、従来の天文航法のように重い計算処理を必要としたり利用を昼間のみに限定されたりすることなく、無人機10の位置を外部信号に依らずに好適に計測することができる。ひいては、GPS受信機14がジャミングや欺瞞(なりすまし)を受けた場合であっても、慣性航法装置15単体よりも高精度の自機位置計測を行うことができる。
【0045】
また、無人機10上の慣性航法装置15による慣性航法位置と、人工衛星20の絶対位置とに基づいて、無人機10から見た人工衛星20の方位が予測され、この予測方位を含む所定の範囲に向けてレーザー測距測角装置13から計測用のレーザー光が発射される。
したがって、レーザー測距測角装置13から照射するレーザー光の範囲を限定して、効率的に人工衛星20の方位及び距離を計測することができる。
【0046】
また、無人機10上のレーザー測距測角装置13が指向性の強いレーザー光を用いるものであるので、妨害を受けにくくすることができる。
【0047】
また、無人機10が雲の殆ど無い高高度を飛行するものであるので、機上のレーザー測距測角装置13から人工衛星20に向けたレーザー光(電磁波)が雲に遮られることなく、好適に無人機10の位置を計測することができる。
【0048】
[第2実施形態]
<位置計測システムの構成>
続いて、本発明の第2実施形態における位置計測システム200の構成について説明する。第2実施形態における位置計測システム200は、慣性航法位置を用いずに人工衛星の位置を取得する点で、上記第1実施形態における位置計測システム100と異なる。なお、上記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図4は、位置計測システム200の模式図であり、
図5は、位置計測システム200における無人機30の概略の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、位置計測システム200は、無人機(無人航空機)30と、既知の軌道を飛行する人工衛星40とを含んで構成されている。
【0050】
図5に示すように、無人機30は、飛行機構11、レーザー測距測角装置13、GPS受信機14、慣性航法装置15、記憶部18及び制御部19を、上記第1実施形態における無人機10と同様に備えるほか、光学センサ31を備えている。なお、記憶部18に格納された衛星軌道情報180は、本実施形態における人工衛星40の軌道情報を含んでいるものとする。
光学センサ31は、機外の画像情報を取得可能な撮像手段であり、後述するように、人工衛星40の散乱板41で反射された散乱光を捉えるためのものである。この光学センサ31は、その向きを変更可能なように設けられている。
【0051】
一方、人工衛星40は、
図4に示すように、上記第1実施形態と同様のリフレクタ21のほか、散乱板41を備えている。
散乱板41は、光を散乱させる反射板である。
【0052】
<位置計測方法>
続いて、第2実施形態の位置計測システム200において、飛行中の無人機30が自機位置を取得する位置計測方法について説明する。
図6は、この位置計測方法の流れを示すフローチャートである。
【0053】
位置計測システム200による位置計測は、上記第1実施形態と同様に、GPS受信機14がジャミングや偽信号のなりすましを受けるなどしてGPS信号に含まれる位置情報の信頼性、ひいては慣性航法装置15による慣性航法位置の信頼性・精度が低いと判定された場合に実行される。
【0054】
この位置計測では、
図6に示すように、まず制御部19は、光学センサ31により人工衛星40の画像を取得する(ステップT1)。
より詳しくは、制御部19は、人工衛星40の散乱板41で反射された太陽光を光学センサ31で捕捉することにより、人工衛星40の画像を取得する。散乱板41で反射される太陽光は広範囲に散乱されるため、広範囲の位置から人工衛星40を捉えることができる。
【0055】
次に、制御部19は、ステップT1で取得した画像に基づいて、人工衛星40の方位を予測する(ステップT2)。
具体的に、制御部19は、光学センサ31の向きと、取得した画像における人工衛星40(すなわち散乱光)の位置とから、この散乱光の方向として無人機30から見た人工衛星40の方位を予測する。
【0056】
次に、制御部19は、ステップT2で予測した人工衛星40の方位に基づいて、レーザー測距測角装置13により人工衛星40の方位及び距離を計測する(ステップT3)。
より詳しくは、制御部19は、人工衛星40の予測方位を含む所定の範囲に対し、レーザー測距測角装置13のレーザー照射部によりレーザー光を走査させる。そして、人工衛星40のリフレクタ21により反射されてきたレーザー光をレーザー測距測角装置13の受光部で受光することにより、無人機10から見た相対的な人工衛星40の方位及び距離を取得する。
【0057】
次に、制御部19は、ステップT3で取得した方位及び距離と、人工衛星40の絶対位置とに基づいて、無人機30の自機位置を算出する(ステップT4)。
具体的に、制御部19は、まず衛星軌道情報180を用いて人工衛星40の絶対位置(座標)を算出し、この絶対位置から、ステップT3で取得した方位及び距離とは逆ベクトルの座標にある位置として、無人機30の自機位置を算出する。算出した自機位置は慣性航法装置15が出力する慣性航法位置の補正に用いられる。
これにより、例えばGPS受信機14がジャミングや偽信号のなりすましを受けるなどして慣性航法装置15による自機位置計測の信頼性が損なわれた場合であっても、好適に無人機30の自機位置を計測することができる。特に、レーザー光を遮る雲が殆ど存在しない高高度(例えば、上層雲の発生高度よりも高い高度15km(5万ft)以上)での飛行において、好適に実行することができる。
【0058】
次に、制御部19は、位置計測を終了させるか否かを判定し(ステップT5)、終了させないと判定した場合には(ステップT5;No)、上述のステップT1へ処理を移行する。
一方、例えば無人機30の目的地への到着等により位置計測を終了させると判定した場合には(ステップT5;Yes)、制御部19は、位置計測を終了させる。
【0059】
以上のように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、無人機30上のレーザー測距測角装置13から発射されたレーザー光が人工衛星40のリフレクタ21によってその到来方向へ反射されることで、無人機30から見た人工衛星40の方位及び距離が計測される。そして、計測された人工衛星40の方位及び距離と人工衛星40の絶対位置とに基づいて、無人機30の位置が算出される。
したがって、従来の天文航法のように重い計算処理を必要としたり利用を昼間のみに限定されたりすることなく、無人機30の位置を外部信号に依らずに好適に計測することができる。ひいては、GPS受信機14がジャミングや欺瞞(なりすまし)を受けた場合であっても、慣性航法装置15単体よりも高精度の自機位置計測を行うことができる。
【0060】
また、人工衛星40上の散乱板41からの散乱光が無人機30上の光学センサ31で捕捉され、この散乱光の方向として、無人機30から見た人工衛星40の方位が予測される。そして、この予測方位を含む所定の範囲に向けてレーザー測距測角装置13から計測用のレーザー光が発射される。
したがって、上記第1実施形態と同様に、レーザー測距測角装置13から照射するレーザー光の範囲を限定して、効率的に人工衛星40の方位及び距離を計測することができる。
また、慣性航法装置15を用いる必要なく、すなわち慣性航法位置の精度に依らず、人工衛星40の方位を取得することができる。
【0061】
また、人工衛星40上の散乱板41が太陽光を散乱させるので、人工衛星40から散乱光を出すためだけの光源を設ける必要がない。
【0062】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した2つの実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
例えば、上記第2実施形態では、人工衛星40上の散乱板41が太陽光を反射させることとしたが、
図7(a)に示すように、人工衛星40にレーザー光源42を搭載し、このレーザー光源42からのレーザー光を散乱板41で散乱させることとしてもよい。
あるいは、
図7(b)に示すように、既知の地上位置にレーザー光源51を設置し、このレーザー光源51からのレーザー光を人工衛星40上の散乱板41で散乱させることとしてもよい。
このように、人工衛星40上または既知の地上位置に設けたレーザー光源を利用することにより、夜間などの人工衛星40が太陽光を受けることができない場合であっても、散乱板41から光を散乱させて人工衛星40の方位を取得することができる。
またこのとき、レーザー光源からのレーザー光を変調する変調手段(図示省略)を人工衛星40または地上に設けてもよい。これにより、人工衛星40上の散乱板41から光を散乱させるためのレーザー光を変調することができるので、このレーザー光をキャリア(搬送波)として情報(例えば人工衛星40の識別信号、軌道のゆらぎやズレの情報等)を伝達することができる。したがって、電波を使用せずに人工衛星40または地上から無人機30へ情報を伝達することができる。
【0064】
また、上記第1、第2実施形態では、レーザー光を利用したレーザー測距測角装置13により人工衛星の方位及び距離を計測することとしたが、電磁波を発射して同様の計測が行えればよい。ただし、指向性の強いレーザー光を用いることが好ましいのは、上述したとおりである。
また、レーザー測距測角装置13に代えてレーダーを無人機に搭載し、このレーダーにより人工衛星の方位及び距離を計測することとしてもよい。この場合であっても、レーダーは指向範囲のある高出力電波を用いるので、レーザー光を用いる場合と同様に妨害を受けにくくすることができる。
【0065】
また、本発明に係る航空機は、無人機(無人航空機)に限定されず、有人の航空機であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
100、200 位置計測システム
10、30 無人機
13 レーザー測距測角装置
14 GPS受信機
15 慣性航法装置
18 記憶部
180 衛星軌道情報
19 制御部
31 光学センサ
20、40 人工衛星
21 リフレクタ
41 散乱板
42 レーザー光源
51 レーザー光源(地上の)