(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/18 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
B61D17/18
(21)【出願番号】P 2018198519
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】横川 浩大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 宏次
(72)【発明者】
【氏名】園田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴洋
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-111318(JP,A)
【文献】特開2003-020038(JP,A)
【文献】特開2006-069410(JP,A)
【文献】特開2010-083213(JP,A)
【文献】特開2009-132210(JP,A)
【文献】特開2017-100637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の壁を構成する内装パネルと、
前記車室の側壁に設けられた荷棚と、を備え、
前記内装パネルは、前記荷棚の上方で天井及び側壁を構成する側天井パネルと、前記荷棚の下方で側壁を構成する腰パネルと、前記車室の妻壁を構成する内妻仕切パネルと、を含み、
前記荷棚と前記側天井パネルとは、前記車室内に荷物収納部を形成し、
前記側天井パネル、前記腰パネル、及び前記内妻仕切パネルの少なくとも一部には、エンボス加工が施されて
おり、
前記エンボス加工が施された領域は、平面視でひし形のエンボス形状をなしている、鉄道車両。
【請求項2】
前記ひし形のエンボス形状の各辺の長さは、3.0mm~5.0mmであり、凹凸の深さは、0.4mm~0.6mmである、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
車室内の壁を構成する内装パネルと、
前記車室の側壁に設けられた荷棚と、
前記車室の長手方向に配列された複数の座席と、を備え、
前記内装パネルは、前記荷棚の上方で天井及び側壁を構成する側天井パネルと、前記荷棚の下方で側壁を構成する腰パネルと、前記車室の妻壁を構成する内妻仕切パネルと、を含み、
前記荷棚と前記側天井パネルとは、前記車室内に荷物収納部を形成し、
前記側天井パネル、前記腰パネル、及び前記内妻仕切パネルの少なくとも一部には、エンボス加工が施されており、
前記エンボス加工が施された領域は、前記長手方向において、前記座席の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られている、鉄道車両。
【請求項4】
前記側天井パネルは、前記車室の天井側に設けられたパネル天井面と、前記車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、
前記エンボス加工は、前記パネル天井面と前記パネル側面との境界部分に沿って施されている、請求項1
~3のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記側天井パネルは、前記車室の天井側に設けられたパネル天井面と、前記車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、
前記エンボス加工は、前記パネル天井面に施されている、請求項1
~4のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記側天井パネルは、前記車室の天井側に設けられたパネル天井面と、前記車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、
前記エンボス加工は、前記パネル側面に施されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記エンボス加工が施された領域には、表面塗装が施されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両において、車室の壁が内装パネルで形成された構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、屋根構体及び側構体上に内装パネルを配置することで、車室の壁が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両では、乗客の荷物が車室の壁などに当たることで、壁などにキズや凹みが発生してしまうことが考えられる。例えば空港と都市部を結ぶような空港連絡用の鉄道車両、或いは離れた都市間を結ぶ長距離用の鉄道車両などでは、乗客がキャリーバッグ等の大型の荷物を所持していることが多く、かかる大型の荷物による側壁のキズや凹みの問題が発生し易いと考えられる。側壁のキズや凹みは、鉄道車両の劣化に繋がるため、メンテナンスの費用等を考慮すると、簡単な構成でキズや凹みの発生を抑制する、又はキズ及び凹みを目立ちにくくする技術が必要となっている。
【0005】
本発明は、簡単な構成で車室の壁のキズ及び凹みの発生を抑制できる、又はキズ及び凹みを目立ちにくい鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る鉄道車両は、車室内の壁を構成する内装パネルと、車室の側壁に設けられた荷棚と、を備え、内装パネルは、荷棚の上方で天井及び側壁を構成する側天井パネルと、荷棚の下方で側壁を構成する腰パネルと、車室の妻壁を構成する内妻仕切パネルと、を含み、荷棚と側天井パネルとは、車室内に荷物収納部を形成し、側天井パネル、腰パネル、及び内妻仕切パネルの少なくとも一部には、エンボス加工が施されている。
【0007】
この鉄道車両では、荷物収納部を構成する側天井パネル、腰パネル、及び内妻仕切パネルの少なくとも一部にエンボス加工が施されている。荷物収納部においては、鉄道車両を利用する乗客の荷物が収納されるが、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が車室の壁などに当たることが考えられる。乗客が荷物を持って着席する際には、車室の壁を構成する腰パネル及び内妻仕切パネルに荷物が当たることが考えられる。したがって、荷物収納部を構成する側天井パネル、腰パネル、及び内妻仕切パネルは、荷物の収納の際或いは取り出しの際、又は、乗客が着席する際に荷物が当たり易く、キズや凹みが発生し易い部分である。したがって、これらの部分をエンボス加工によって強化することにより、簡単な構成で効率的に車室の壁のキズ及び凹みの発生を抑制できる。
【0008】
側天井パネルは、車室の天井側に設けられたパネル天井面と、車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、エンボス加工は、パネル天井面とパネル側面との境界部分に沿って施されていてもよい。パネル天井面は、パネル側面に対して角度をもって配置される。このため、パネル天井面とパネル側面との境界部分は、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル天井面とパネル側面との境界部分にエンボス加工を施すことにより、荷物収納部のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0009】
側天井パネルは、車室の天井側に設けられたパネル天井面と、車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、エンボス加工は、パネル天井面に施されていてもよい。パネル天井面もまた、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル天井面にエンボス加工を施すことにより、荷物収納部のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0010】
側天井パネルは、車室の天井側に設けられたパネル天井面と、車室の側壁側に設けられたパネル側面と、を含み、エンボス加工は、パネル側面に施されていてもよい。パネル側面もまた、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル側面にエンボス加工を施すことにより、荷物収納部のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0011】
エンボス加工が施された領域は、平面視でひし形のエンボス形状をなしていてもよい。ひし形のエンボス形状を採用することで、乗客の荷物が当たることによる車室の壁のキズ又は凹みを特に目立ちにくくすることが可能となる。
【0012】
ひし形のエンボス形状の各辺の長さは、3.0mm~5.0mmであり、凹凸の深さは、0.4mm~0.6mmであってもよい。この場合、乗客の荷物が当たることによる車室の壁のキズ又は凹みを更に目立ちにくくすることができる。
【0013】
エンボス加工が施された領域には、表面塗装が施されていてもよい。この場合、乗客の荷物による車室の壁のキズ又は凹みを更に目立ちにくくすることができる。
【0014】
車室の長手方向に配列された複数の座席を更に備え、エンボス加工が施された領域は、長手方向において、座席の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られていてもよい。この場合、エンボス加工が施された領域の区切りを目印として、自身の座席に対応する荷物置場を乗客に認識させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で車室の壁のキズ及び凹みの発生を抑制できる鉄道車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る鉄道車両の概略側面図である。
【
図5】
図2に示した荷物収納部分の一例を示す図である。
【
図6】
図3に示した荷物収納部分におけるエンボス加工の一例を示す図である。
【
図7】
図3に示した荷物収納部分におけるエンボス加工の他の例を示す図である。
【
図8】
図3に示した荷物収納部分におけるエンボス加工の他の例を示す図である。
【
図9】
図3に示した荷物収納部分におけるエンボス加工の他の例を示す図である。
【
図10】
図2に示した荷物収納部分の他の例を示す概略図である。
【
図11】
図2に示した荷物収納部分の他の例を示す概略図である。
【
図12】本実施形態においてエンボス加工を施した領域の平面図である。
【
図13】本実施形態においてエンボス加工を施した領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、鉄道車両の一例を示す概略側面図である。鉄道車両1は、台枠2と、一対の側構体3と、屋根構体4と、一対の妻構体5とを備えている。これらの各構体が相互に接合されることにより、鉄道車両1は、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0019】
台枠2は、車両の床部を構成する構造体として鉄道車両1の底部に配置されている。台枠2の下側には、鉄道車両1を支持する一対の台車(図示しない)が設置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側壁及び妻壁を構成する構体として、台枠2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。
【0020】
側構体3には、鉄道車両1の長手方向において両端側に、乗客らが乗り降りするための複数のドア部6が設けられている。ドア部6,6間には、複数の窓部7が設けられている。窓部7の上方には、行き先を表示する行先表示部9が設けられている。ドア部6は、デッキスペース(図示しない)に通じている。デッキスペースは、後述する貫通部8及び車室12に通じている。
【0021】
妻構体5には、乗客らが車両間を行き来するための貫通部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として鉄道車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体4には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー及びパンタグラフ(図示しない)などが設置されている。
【0022】
次に、
図2から
図4を参照して、鉄道車両1の内部の構成について詳細に説明する。
図2及び
図3は、
図1に示した鉄道車両1を妻構体5に平行な面で切断した概略断面図である。
図2は鉄道車両1の内部から後方を見た図であり、
図3は鉄道車両1の内部から前方を見た図である。
図4は、
図1に示した鉄道車両1の側構体3に平行な面で切断した概略部分断面図である。
【0023】
鉄道車両1は、一対の側構体3及び屋根構体4を覆う内装パネル10、並びに、内部において台枠2を覆う床構造11を有している。内装パネル10及び床構造11は、鉄道車両1の内部に車室12を形成している。内装パネル10は、車室12内の壁(天井、側壁、及び妻壁)を構成する。内装パネル10は、一対の腰パネル13、一対の側パネル14、一対の内妻仕切パネル15、一対の内妻仕切パネル16、一対の側天井パネル17、及び中央天井パネル18を含んでいる。一対の腰パネル13、一対の側パネル14、及び、一対の側天井パネル17の一部は、一対の側構体3を覆っている。一対の側天井パネル17の一部、及び中央天井パネル18は、屋根構体4を覆っている。
【0024】
一対の腰パネル13は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向している。各腰パネル13は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において湾曲しており、側構体3に沿って、鉄道車両1の長手方向に延在している。各腰パネル13は、窓部7よりも下部に配置されており、後述する荷棚31の下方で車室12の側壁を構成する。各腰パネル13は、窓部7側から鉄道車両1の幅方向に延在するテーブル13aを形成している。各側パネル14は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向しており、複数の窓部7の間及び窓部7よりも上部に配置されており、後述する荷棚31の下方で車室12の側壁を構成する。
【0025】
本実施形態では、腰パネル13と側パネル14との境界は、複数の窓部7の下端に接するように構成されている。しかし、各側パネル14が窓部7よりも下部に延在し、腰パネル13と側パネル14との境界が窓部7の下方において窓部7から離間して構成されてもよい。この場合、テーブル13aは、腰パネル13ではなく、側パネル14によって形成される。
【0026】
一対の内妻仕切パネル15,16は、鉄道車両1の前方と後方の双方において妻構体5と平行に配置されており、デッキスペースと車室12とを仕切っている。内妻仕切パネル15と内妻仕切パネル16は、鉄道車両1の幅方向に並んで配置されている。鉄道車両1の幅方向における幅は、内妻仕切パネル15よりも内妻仕切パネル16の方が大きい。内妻仕切パネル15と内妻仕切パネル16との間には、貫通部8に通じるドア部19が内妻仕切パネル15,16と平行に設けられている。一対の内妻仕切パネル15,16及びドア部19は、車室12の妻壁を構成する。
【0027】
一対の側天井パネル17は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向している。各側天井パネル17は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において側構体3及び屋根構体4に沿って湾曲しており、側構体3及び屋根構体4に沿って鉄道車両1の長手方向に延在している。各側天井パネル17は、後述する荷棚31の上方で車室12の天井及び側壁を構成する。中央天井パネル18は、一対の側天井パネル17の間に配置されている。中央天井パネル18は、屋根構体4に沿って、鉄道車両1の長手方向に延在している。中央天井パネル18は、後述する荷棚31の上方で車室12の天井を構成する。
【0028】
鉄道車両1は、車室12の床に設けられた複数の座席20を有している。複数の座席20は例えば2つ又は3つの座席20を1セットとしており、複数のセットが車室12の側壁に沿って鉄道車両1の長手方向に配列されている。1セットの座席20は、車室12の側壁から鉄道車両1の幅方向に並んで配置されている。車室12の幅方向における一方側の1セットの座席20と、他方側の1セットの座席20との間には、通路が配置されている。鉄道車両1の長手方向から見た場合に、一方側の1セットの座席20は、内妻仕切パネル15と重なる位置に配置されており、他方側の1セットの座席20は、内妻仕切パネル16と重なる位置に配置されている。
【0029】
各座席20は、座部21と、背ズリ部22と、肘掛部23と、脚部24とを有している。各座席20において座部21及び背ズリ部22は、座席20に座った乗客が鉄道車両1の長手方向を向くように配置されている。1セットの座席20は、複数の肘掛部23を有している。複数の肘掛部23は、天井側から見て、車室12の側壁と座部21との間、2つの座部21の間、及び車室12の通路と座部21との間に配置されている。脚部24は、車室の床と座部21とを連結し、座部21を支持している。
【0030】
鉄道車両1は、車室12内に荷物収納部30を備えている。荷物収納部30は、複数の座席20よりも車室12の天井側に設けられている。荷物収納部30は、車室12の天井及び側壁を構成する側天井パネル17(内装パネル10)と、側壁に設けられた荷棚31とを含んで構成されている。
【0031】
荷棚31は、車室12の側壁から鉄道車両1の幅方向に突出して、鉄道車両1の長手方向に延在している。荷棚31は、車室12の天井側に位置して荷物を載置する載置面32と、車室12の床側に位置する底面33とを有する。載置面32は、荷物のずれや落下を防止するため、例えば車室12の側壁側から中央側に向かって僅かに昇り傾斜となっている。荷棚31の高さ方向の幅は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において、側壁側から先端側に向かって徐々に狭まっている。
【0032】
次に、
図5から
図10を参照して、荷物収納部30の構成について詳細に説明する。
【0033】
図5は、車室12の通路側から見た荷物収納部30及びその周辺を示す図である。荷物収納部30を構成する側天井パネル17は、上述したように断面において湾曲しており、
図5に示されているように、車室12の天井側に設けられたパネル天井面34と、車室12の側壁側に設けられたパネル側面35とを含んでいる。パネル天井面34とパネル側面35とは、鉄道車両1の長手方向に平行に延在する境界部分αで互いに接続されている。境界部分αは、車室12の天井側と側壁側との境界である。パネル天井面34とパネル側面35とは、一体に成形されていてもよいし、別々に成形されてもよい。
【0034】
パネル天井面34の縁34aは、中央天井パネル18に接続されており、パネル側面35の縁35aは、載置面32に接続されている。パネル天井面34の縁34aとパネル側面35の縁35aとは、鉄道車両1の長手方向において互いに平行に延在している。
【0035】
荷物収納部30を構成する側天井パネル17(内装パネル10)の少なくとも一部には、エンボス加工が施されている。本実施形態では、
図6に示されているように、エンボス加工が施された領域R1は、中央天井パネル18側のパネル天井面34の縁34aから載置面32側のパネル側面35の縁35aまで連続して設けられており、鉄道車両1の長手方向に延在している。エンボス加工が施された領域R1には、表面塗装が施されている。ここで表面塗装に用いられる塗料は、白色又は乳白色等の明度が高いもの又は透明が好ましい。
【0036】
エンボス加工が施された領域R1は、鉄道車両1の長手方向において、座席20の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られている。換言すれば、エンボス加工が施された領域R1は、鉄道車両1の長手方向において、座席20の各々の位置に対応して複数の区画に分けられている。互いに隣り合う領域R1の間には、間隙Vが設けられている。1区画の領域R1は、1セットの座席20の上方に設けられている。エンボス加工は、鉄道車両1の長手方向において、側天井パネル17の全面に施されていてもよい。
【0037】
図7から
図9は、荷物収納部30におけるエンボス加工の他の例を示している。
図7に示されている構成では、エンボス加工は、パネル天井面34とパネル側面35との境界部分αに施されている。より詳細には、エンボス加工が施された領域R1は、境界部分α上及びその周辺に設けられており、パネル天井面34の縁34aの周辺、及び、パネル側面35の縁35aの周辺には設けられていない。
【0038】
図8に示されている構成では、エンボス加工は、パネル天井面34に施されており、パネル側面35には施されていない。
図8に示されている構成では、エンボス加工が施された領域R1は、中央天井パネル18側のパネル天井面34の縁34aから境界部分αまで連続して設けられている。
図8に示されているようにエンボス加工をパネル天井面34に施しつつ、縁34aの周辺及び境界部分αの周辺の少なくとも一方においてエンボス加工を施さない構成が用いられてもよい。
【0039】
図9に示されている構成では、エンボス加工は、パネル側面35に施されており、パネル天井面34には施されていない。
図9に示されている構成では、エンボス加工が施された領域R1は、境界部分αから載置面32側のパネル側面35の縁35aまで連続して設けられている。
図9に示されているようにエンボス加工をパネル側面35に施しつつ、縁35aの周辺及び境界部分αの周辺の少なくとも一方においてエンボス加工を施さない構成が用いられてもよい。上述した複数の構成を組み合わせた構成が用いられてもよい。
【0040】
図10は、荷物収納部30の他の例を示している。
図10に示されている構成では、側天井パネル17のパネル天井面34及びパネル側面35は、平面である。パネル天井面34は、パネル側面35との境界部分αから屋根構体4側に僅かに傾斜している。パネル側面35は、境界部分αから側構体3側に僅かに傾斜している。
【0041】
図10に示した荷物収納部30のような構成において、エンボス加工が施された領域R1は、
図6から
図9を参照して説明した構成及びそれに付属して説明した構成のいずれであってもよい。
図10に示した構成では、
図6に示した構成と同様に、エンボス加工が施された領域R1は、中央天井パネル18側のパネル天井面34の縁34aから載置面32側のパネル側面35の縁35aまで連続して設けられており、鉄道車両1の長手方向に延在している。エンボス加工が施された領域R1は、鉄道車両1の長手方向において、座席20の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られている。
【0042】
図11は、荷物収納部30の更に他の例を示している。
図11に示されている構成では、
図10に示されている構成と同様に、側天井パネル17のパネル天井面34及びパネル側面35は、平面である。パネル天井面34は、パネル側面35との境界部分αから屋根構体4側に僅かに傾斜している。パネル側面35は、境界部分αから側構体3側に僅かに傾斜している。
図11に示されている構成では、パネル天井面34とパネル側面35との境界部分αに、乗客が荷棚31上の荷物を確認するためのミラー部36が設けられている。ミラー部36は、車室12側に凸の形状を有しており、鉄道車両1の長手方向に延在している。
【0043】
図11に示した荷物収納部30のような構成において、エンボス加工が施された領域R1は、
図6、
図8、及び
図9を参照して説明した構成及びそれに付属して説明した構成のいずれであってもよい。エンボス加工が施された領域R1は、鉄道車両1の長手方向において、座席20の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られている。
【0044】
図12は、エンボス加工が施された領域の拡大平面図である。
図13は、エンボス加工が施された領域の拡大断面図である。エンボス形状は、四角錐形状を有しており、平面視でひし形である。エンボス加工が施された領域を上から見た場合、
図12に示されているように、同じ大きさの複数のひし形が互いに隣接して配列されている。ここで、「同じ大きさ」には、製造誤差の範囲で異なる大きさとなっているものも含む。当該ひし形のエンボス形状の各辺の長さLは、3.0mm~5.0mmであることが好ましく、より好ましくは4.0mmである。また、各ひし形において2つの対角線の長さが等しい、すなわち、エンボス形状が正方形であることがより好ましい。
【0045】
図13に示されているように、エンボス形状は同じ高さの凹凸を有している。ここで、「同じ高さ」には、製造誤差の範囲で異なる高さとなっているものも含む。エンボス形状の凹凸の深さDは、0.4mm~0.6mmであることが好ましく、より好ましくは0.5mmである。
【0046】
次に、
図3及び
図4を参照して、腰パネル13及び内妻仕切パネル15,16の構成について詳細に説明する。腰パネル13及び内妻仕切パネル15,16の少なくとも一部には、エンボス加工が施されている。腰パネル13及び内妻仕切パネル15,16に施されたエンボス加工のエンボス形状は、側天井パネル17に施されたエンボス加工と同様である。
【0047】
本実施形態では、内妻仕切パネル15,16においてエンボス加工が施された領域R2は、鉄道車両1の長手方向から見て、座席20の背ズリ部22の上面よりも下に設けられている。エンボス加工が施された領域R2は、内妻仕切パネル15,16の全面に設けられていてもよいし、座部21の座面よりも下に設けられてもよいし、脚部24と同様の高さに設けられてもよい。内妻仕切パネル15,16においてエンボス加工が施された領域R2には、表面塗装が施されている。ここで表面塗装に用いられる塗料は、白色又は乳白色等の明度が高いもの又は透明が好ましい。
【0048】
本実施形態では、腰パネル13においてエンボス加工が施された領域R3は、腰パネル13の全面に設けられている。エンボス加工が施された領域R3は、座部21の座面よりも下に設けられてもよいし、脚部24と同様の高さに設けられてもよい。腰パネル13においてエンボス加工が施された領域R3には、表面塗装が施されている。ここで表面塗装に用いられる塗料は、白色又は乳白色等の明度が高いもの又は透明が好ましい。
【0049】
以上説明したように、鉄道車両1では、荷物収納部30を構成する側天井パネル17、腰パネル13、及び内妻仕切パネル15,16の少なくとも一部にエンボス加工が施されている。荷物収納部30においては、鉄道車両1を利用する乗客の荷物が収納されるが、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が車室12の壁などに当たることが考えられる。乗客が荷物を持って着席する際には、車室12の壁を構成する腰パネル13及び内妻仕切パネル15,16に荷物が当たることが考えられる。したがって、荷物収納部30を構成する側天井パネル17、腰パネル13、及び内妻仕切パネル15,16は、荷物の収納の際或いは取り出しの際、又は乗客が着席する際に荷物が当たり易く、キズや凹みが発生し易い部分である。したがって、これらの部分をエンボス加工によって強化することにより、簡単な構成で効率的に車室12の壁のキズ及び凹みの発生を抑制できる。
【0050】
側天井パネル17は、車室12の天井側に設けられたパネル天井面34と、車室12の側壁側に設けられたパネル側面35と、を含み、エンボス加工は、パネル天井面34とパネル側面35との境界部分αに沿って施されている。パネル天井面34は、パネル側面35に対して角度をもって配置される。このため、パネル天井面34とパネル側面35との境界部分αは、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル天井面34とパネル側面35との境界部分αにエンボス加工を施すことにより、荷物収納部30のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0051】
側天井パネル17は、車室12の天井側に設けられたパネル天井面34と、車室12の側壁側に設けられたパネル側面35と、を含み、エンボス加工は、パネル天井面34に施されている。パネル天井面34もまた、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル天井面34にエンボス加工を施すことにより、荷物収納部30のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0052】
側天井パネル17は、車室12の天井側に設けられたパネル天井面34と、車室12の側壁側に設けられたパネル側面35と、を含み、エンボス加工は、パネル側面35に施されている。パネル側面35もまた、荷物の収納の際或いは取り出しの際に荷物が特に当たり易い部分となる。したがって、パネル側面35にエンボス加工を施すことにより、荷物収納部30のキズ又は凹みの発生を一層効果的に抑制できる。
【0053】
エンボス加工が施された領域R1,R2,R3は、平面視でひし形のエンボス形状をなしている。ひし形のエンボス形状を採用することで、乗客の荷物が当たることによる車室12の壁のキズ又は凹みを特に目立ちにくくすることが可能となる。
【0054】
ひし形のエンボス形状の各辺の長さは、3.0mm~5.0mmであり、凹凸の深さは、0.4mm~0.6mmである。このため、乗客の荷物が当たることによる車室12の壁のキズ又は凹みを更に目立ちにくくすることができる。各ひし形において2つの対角線の長さが等しい場合、キズ又は凹みは更に目立ちにくい。ひし形のエンボス形状の各辺の長さが4.0mmの場合、キズ又は凹みは更に目立ちにくい。凹凸の深さが0.5mmの場合、キズ又は凹みは更に目立ちにくい。
【0055】
エンボス加工が施された領域R1,R2,R3には、表面塗装が施されている。このため、乗客の荷物による車室12の壁のキズ又は凹みを更に目立ちにくくすることができる。
【0056】
車室12の長手方向に配列された複数の座席20を更に備え、エンボス加工が施された領域R1,R2,R3は、長手方向において、座席20の各々の位置に対応して複数の箇所で区切られている。このため、エンボス加工が施された領域の区切りを目印として、自身の座席20に対応する荷物置場を乗客に認識させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…鉄道車両、10…内装パネル、12…車室、13…腰パネル、15,16…内妻仕切パネル、20…座席、30…荷物収納部、31…荷棚、34…パネル天井面、35…パネル側面、α…境界部分、R1,R2,R3…領域。