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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】めっき処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20221118BHJP
   C25D 21/18 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C25D17/00 C
C25D21/18 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018201891
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066790
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】竪谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】関口 一夫
(72)【発明者】
【氏名】新宮 信之
(72)【発明者】
【氏名】大士 政美
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-192897(JP,A)
【文献】特開昭52-111844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00- 7/12
C23C 18/00- 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留されためっき液の上澄み液がオーバフローされるオーバフロー壁を有するめっき槽と、
前記めっき液を回収すると共に回収した前記めっき液を前記めっき槽に循環供給する循環供給ユニットと
を備えためっき処理装置であって、
前記循環供給ユニットは、前記オーバフロー壁の内壁面に対向する位置であって前記上澄み液がオーバフローされる領域の下方に配置された吸引ヘッドを有し、
前記吸引ヘッドは、前記めっき槽の底部から前記オーバフロー壁の上端に至る範囲の中央よりも上方に配置されている
ことを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記循環供給ユニットが前記吸引ヘッドを複数備えていることを特徴とする請求項記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記吸引ヘッドの吸引開口が上方に向けられていることを特徴とする請求項または記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記吸引ヘッドの吸引開口が下方に向けられていることを特徴とする請求項または記載のめっき処理装置。
【請求項5】
前記吸引開口が前記オーバフロー壁の内壁面に沿って水平に長尺状に設けられていることを特徴とする請求項または記載のめっき処理装置。
【請求項6】
前記循環供給ユニットは、前記吸引ヘッドに向けて前記めっき液を吐出する吐出ヘッドを備えることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載のめっき処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の外装部品等の製造工程においては、樹脂製品に金属光沢を付与する方法として湿式めっき処理が行われている。湿式めっき処理では、周知のようにめっき液が貯留されためっき槽に対して処理対象物を一定時間浸漬することによって、処理対象物の表面に金属層を形成している。このようなめっき槽に貯留されためっき液には、長時間の使用等によって僅かならでもコンタミネーションが混入する。このようにめっき液に混入したコンタミネーションは、一般的にオーバフローによってめっき槽の外部に排出されている。例えば、特許文献1には、めっき槽からオーバフローされためっき液に混入したコンタミネーションをフィルタによって回収し、コンタミネーションが除去されためっき液を再びめっき槽に循環供給するめっき処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-100113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、めっき液のオーバフローによって全てのコンタミネーションを除去することはできない。めっき液に含有されたコンタミネーションが処理対象物に付着すると、めっき処理後の処理対象物に対して極小の突起等が発生し、製品要求が満たせずに不良品となる。つまり、めっき液をオーバフローするめっき処理装置においても、コンタミネーションの付着を原因とする一定数の不良品が発生する。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、めっき処理装置において、処理対象物へのコンタミネーションの付着を防止することで不良率の低下を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、貯留されためっき液の上澄み液がオーバフローされるオーバフロー壁を有するめっき槽と、上記めっき液を回収すると共に回収した上記めっき液を上記めっき槽に循環供給する循環供給ユニットとを備えためっき処理装置であって、上記循環供給ユニットは、上記オーバフロー壁の内壁面に対向する位置であって上記上澄み液がオーバフローされる領域の下方に配置された吸引ヘッドを有するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記吸引ヘッドが、上記めっき槽の底部から上記オーバフロー壁の上端に至る範囲の中央よりも上方に配置されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記循環供給ユニットが上記吸引ヘッドを複数備えているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記吸引ヘッドの吸引開口が上方に向けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第2または第3の発明において、上記吸引ヘッドの吸引開口が下方に向けられているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第4または第5の発明において、上記吸引開口が上記オーバフロー壁の内壁面に沿って水平に長尺状に設けられているという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記循環供給ユニットが、上記吸引ヘッドに向けて上記めっき液を吐出する吐出ヘッドを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
オーバフロー壁の内壁面近傍には、オーバフロー壁を乗り越えずにめっき槽の底部に向かう下降流が形成される。この下降流にめっき液の表層のコンタミネーションが巻き込まれると、巻き込まれたコンタミネーションがオーバフローによってめっき槽の外部に排出されずに滞留し、不良の原因となる。本発明によれば、めっき液を回収すると共に回収しためっき液をめっき槽に循環供給する循環供給ユニットを備え、循環供給ユニットは、オーバフロー壁の内壁面に対向する位置であって上澄み液がオーバフローされる領域の下方に配置された吸引ヘッドを有する。このため、本発明によれば、オーバフローされずに再びめっき槽の底部に向かおうとするコンタミネーションを吸引ヘッドによって捕捉することができる。したがって、本発明によれば、めっき処理装置において、処理対象物へのコンタミネーションの付着を防止することで不良率の低下を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
図3】(a)が本発明の第2実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す平面図であり、(b)が本発明の第2実施形態におけるめっき処理装置が備える上層吸引ヘッドを下方から見た斜視図である。
図4】本発明の第3実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す平面図である。
図5】本発明の第3実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
図6】(a)が本発明の第4実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す平面図であり、(b)が本発明の第4実施形態におけるめっき処理装置が備える上層吸引ヘッドを上方から見た斜視図である。
図7】本発明の第5実施形態におけるめっき処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
図8】本発明の第5実施形態におけるめっき処理装置の変形例の概略構成を示す縦断面図である。
図9】上層吐出ヘッドの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るめっき処理装置の一実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のめっき処理装置1の概略構成を示す平面図である。また、図2は、本実施形態のめっき処理装置1の概略構成を示す縦断面図である。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、水平面における一方向を左右方向(図1における左右方向)とし、水平面において上記左右方向に直交する方向を前後方向と称する。これらの図に示すように、本実施形態のめっき処理装置1は、めっき槽2と、電極板3(図2においては省略)と、エア攪拌ユニット4と、循環供給ユニット5とを備えている。
【0018】
めっき槽2は、めっき液Lを貯留する液槽であり、主液槽2aと、主液槽2aに隣接配置されたオーバフロー槽2bとを備えている。主液槽2aは、平面視において左右方向が長軸方向とされ、前後方向が短軸方向とされた長方形状の液槽であり、内部に電極板3、エア攪拌ユニット4の後述するエア噴出管4a、循環供給ユニット5の後述する吸引ヘッド(上層吸引ヘッド5a1及び下層吸引ヘッド5b1)及び吐出ヘッド(上層吐出ヘッド5g1及び下層吐出ヘッド5h1)等が配置されている。図2に示すように、主液槽2aの底部は、上面(すなわち主液槽2aの底面2a1)がオーバフロー槽2b側から反対側に向かうに連れて下降する傾斜面とされている。また、主液槽2aのオーバフロー槽2b側の側壁は、オーバフロー壁2a2とされている。このオーバフロー壁2a2は、主液槽2aの内部とオーバフロー槽2bの内部とを区画するための壁部である。オーバフロー槽2bの高さは、主液槽2aに貯留されためっき液Lの上澄み液のみが左側から右側に乗り越えることによってオーバフロー槽2bに流れ込むことが可能なように主液槽2aの他の側壁よりも低く設定されている。
【0019】
オーバフロー槽2bは、主液槽2aのオーバフロー壁2a2に隣接して配置されており、オーバフロー壁2a2を乗り越えてオーバフローされるめっき液Lの上澄み液を受け止める液槽である。このようなオーバフロー槽2bは、図1に示すように、平面視にて矩形状とされた主液槽2aの一辺の全域(オーバフロー壁2a2の上端縁の全域)に亘るように設けられている。
【0020】
電極板3は、主液槽2aの側壁の内壁面に沿って複数配置されており、本実施形態においては左右方向に等間隔で複数配列されている。これらの電極板3は、主液槽2aに貯留されためっき液Lに浸漬された状態とされている。これらの電極板3は、不図示の電源装置等と接続されており、電源装置から所定の電圧が印加される。
【0021】
エア攪拌ユニット4は、エア噴出管4aと、エアヘッダ管4bと、エア供給部4cとを備えている。エア噴出管4aは、図1に示すように、左右方向に沿って伸びる直線状の配管であり、内部を流れる空気を外部に噴出するための不図示の噴出口を複数備えている。図2に示すように、エア噴出管4aは、主液槽2aの底面2a1の近傍に底面2a1から一定の隙間を空けた状態で水平に配設されている。また、エア噴出管4aは、図1に示すように、前後方向に離間して互いに平行に複数(本実施形態においては4つ)設けられており、左側の端部がエアヘッダ管4bに接続されている。
【0022】
エアヘッダ管4bは、複数のエア噴出管4aの端部同士を接続する配管であり、エア供給部4cから供給される空気を複数のエア噴出管4aに分配する。エア供給部4cは、エアヘッダ管4bに対して空気を供給する装置である。
【0023】
このようなエア攪拌ユニット4では、エア供給部4cからエアヘッダ管4bに空気が供給されると、空気がエアヘッダ管4bから各々のエア噴出管4aに供給される。エア噴出管4aに供給された空気は、各々のエア噴出管4aからめっき槽2の内部に噴出され、めっき液L内に気泡となって噴出される。このように噴出された気泡によって、めっき液Lに浸漬された処理対象物の周囲が攪拌され、処理対象物に表面に付着したガス泡が処理対象物から剥離される。
【0024】
循環供給ユニット5は、めっき槽2に貯留されためっき液Lを回収すると共に、回収しためっき液Lに含まれたコンタミネーションを除去して、再びめっき槽2に供給するユニットである。つまり、循環供給ユニット5は、めっき液Lを回収すると共に回収しためっき液Lをめっき槽2に循環供給する。この循環供給ユニット5は、図1及び図2に示すように、上層回収ユニット5aと、下層回収ユニット5bと、第1フィルタ5cと、第2フィルタ5dと、第3フィルタ5eと、ポンプ5fと、上層供給ユニット5gと、下層供給ユニット5hと、外部配管5iとを備えている。
【0025】
上層回収ユニット5aは、平面視にてめっき槽2の右端側に配置されており、複数の上層吸引ヘッド5a1(吸引ヘッド)と、上層吸引ヘッダ管5a2とを備えている。上層吸引ヘッド5a1は、図2に示すように、下端に向けて拡径する筒状のヘッドであり、めっき液Lをめっき槽2の内部から吸引するための部位である。図1に示すように、上層吸引ヘッド5a1は、めっき槽2のオーバフロー壁2a2の内壁面に対向する位置であって、めっき液Lの上澄み液がオーバフロー槽2bに向けてオーバフローされる領域(図2に示すオーバフロー領域R)の下方に配置されている。また、上層吸引ヘッド5a1は、めっき槽2の底部からオーバフロー壁2a2の上端に至る範囲の中央よりも上方に配置されている。つまり、上層吸引ヘッド5a1は、めっき槽2の上層であってオーバフロー壁2a2に近接して配置されている。
【0026】
また、上層吸引ヘッド5a1は、図1に示すように、複数(本実施形態においては3つ)設けられており、前後方向に配列されている。これらの上層吸引ヘッド5a1は、ポンプ5fから供給される負圧によって、オーバフロー領域Rの下方にてめっき槽2に貯留されためっき液Lの一部を上端開口縁と比較して拡径された下端開口縁(吸引開口)から上方に向けて吸引する。
【0027】
上層吸引ヘッダ管5a2は、各々の上層吸引ヘッド5a1の上端と接続されており、またポンプ5fと外部配管5iを通じて接続されている。この上層吸引ヘッダ管5a2は、各々の上層吸引ヘッド5a1によって吸引されためっき液Lを合流してめっき槽2の外部まで案内する。
【0028】
下層回収ユニット5bは、平面視にてめっき槽2の左端側に配置されており、複数の下層吸引ヘッド5b1と、下層吸引ヘッダ管5b2とを備えている。下層吸引ヘッド5b1は、図2に示すように、下端に向けて拡径する筒状のヘッドであり、めっき液Lをめっき槽2の内部から吸引するための部位である。図2に示すように、下層吸引ヘッド5b1は、めっき槽2の底面2a1と僅かな隙間を空けて対向配置されている。つまり、下層吸引ヘッド5b1は、図2に示すように、めっき槽2の左下の隅部に配置されている。
【0029】
また、下層吸引ヘッド5b1は、図1に示すように、複数(本実施形態においては2つ)設けられており、前後方向に配列されている。これらの下層吸引ヘッド5b1は、ポンプ5fから供給される負圧によって、めっき槽2の底部にてめっき液Lの一部を上端開口と比較して拡径された下端開口縁(吸引開口)から上方に向けて吸引する。これらの下層吸引ヘッド5b1の吸引開口の直径寸法は、上層吸引ヘッド5a1の吸引開口よりも大きく設定されている。
【0030】
下層吸引ヘッダ管5b2は、各々の下層吸引ヘッド5b1の上端と接続されており、またポンプ5fと外部配管5iを通じて接続されている。この下層吸引ヘッダ管5b2は、各々の下層吸引ヘッダ管5b2によって吸引されためっき液Lを合流してめっき槽2の外部まで案内する。
【0031】
第1フィルタ5cは、外部配管5iの途中部位であって、オーバフロー槽2bとポンプ5fとの間に配置されたフィルタである。第2フィルタ5dは、外部配管5iの途中部位であって、上層回収ユニット5aの上層吸引ヘッダ管5a2とポンプ5fとの間に配置されたフィルタである。第3フィルタ5eは、外部配管5iの途中部位であって、下層回収ユニット5bの下層吸引ヘッダ管5b2とポンプ5fとの間に配置されたフィルタである。
【0032】
これらの第1フィルタ5c、第2フィルタ5d及び第3フィルタ5eは、めっき液Lに含まれたコンタミネーションをめっき液L中から除去する。つまり、第1フィルタ5cは、オーバフロー槽2bから回収しためっき液Lに含まれるコンタミネーションを捕捉する。第2フィルタ5dは、上層回収ユニット5aで回収されためっき液Lに含まれるコンタミネーションを捕捉する。第3フィルタ5eは、下層回収ユニット5bで回収されためっき液Lに含まれるコンタミネーションを捕捉する。なお、めっき液Lの回収箇所によってめっき液Lに含まれるコンタミネーションの粒径が異なることから、第1フィルタ5c、第2フィルタ5d及び第3フィルタ5eのメッシュ数はめっき液Lに含まれるコンタミネーションの粒径に応じて選択される。なお、回収しためっき液Lをフィルタ通過前に合流させ、第1フィルタ5c、第2フィルタ5d及び第3フィルタ5eのいずれかあるいは複数を省略する構成を採用することも可能である。
【0033】
ポンプ5fは、外部配管5iの途中部位であって、上層回収ユニット5a及び下層回収ユニット5bと、上層供給ユニット5g及び下層供給ユニット5hとの間に配置されている。このポンプ5fは、上層回収ユニット5a及び下層回収ユニット5bから回収されためっき液Lを昇圧して上層供給ユニット5g及び下層供給ユニット5hに供給する。
【0034】
上層供給ユニット5gは、平面視にてめっき槽2の左端側に配置されており、複数の上層吐出ヘッド5g1(吐出ヘッド)と、上層供給ヘッダ管5g2とを備えている。上層吐出ヘッド5g1は、めっき槽2の右端側に向けてポンプ5fから圧送されためっき液Lを吐出するヘッドであり、上層吸引ヘッド5a1が配置されためっき槽2の右端側に向けてめっき液Lを水平に吐出する。つまり、本実施形態において上層吐出ヘッド5g1は、上層吸引ヘッド5a1に向けてめっき液Lを吐出する。上層吐出ヘッド5g1は、図2に示すように、めっき液Lの表層部に配置されている。本実施形態においては、上層吐出ヘッド5g1は、上下方向にて、上層吸引ヘッド5a1よりも上部に配置されている。
【0035】
また、上層吐出ヘッド5g1は、図1に示すように、複数(本実施形態においては2つ)設けられており、前後方向に配列されている。
【0036】
上層供給ヘッダ管5g2は、各々の上層吐出ヘッド5g1に接続されており、またポンプ5fと外部配管5iを通じて接続されている。この上層供給ヘッダ管5g2は、各々の上層吐出ヘッド5g1にポンプ5fから供給されためっき液Lを分配して供給する。
【0037】
下層供給ユニット5hは、平面視にてめっき槽2の右端側に配置されており、複数の下層吐出ヘッド5h1と、下層供給ヘッダ管5h2とを備えている。下層吐出ヘッド5h1は、めっき槽2の左側に向けてポンプ5fから圧送されためっき液Lを吐出するヘッドであり、下層吸引ヘッド5b1が配置されためっき槽2の左端側に向けてめっき液Lを底面2a1に沿って吐出する。つまり、本実施形態において下層吐出ヘッド5h1は、下層吸引ヘッド5b1に向けてめっき液Lを吐出する。
【0038】
また、下層吐出ヘッド5h1は、図1に示すように、複数(本実施形態においては4つ)設けられており、前後方向に配列されている。前後方向に配列された4つの下層吐出ヘッド5h1のうち、前後方向の端部に配置された下層吐出ヘッド5h1は、図1に示すように、エア攪拌ユニット4のエア噴出管4aよりも主液槽2aの前後方向に対向された側壁に近接して配置されている。つまり、前後方向に配列された4つの下層吐出ヘッド5h1のうち、前後方向の端部に配置された下層吐出ヘッド5h1は、エア噴出管4aよりも主液槽2aの側壁との間にめっき液Lを吐出する。
【0039】
また、前後方向に配列された4つの下層吐出ヘッド5h1のうち、前後方向の端部を除く中央部に配置された2つの下層吐出ヘッド5h1は、前後方向の端部に配置された下層吐出ヘッド5h1よりも開口端縁(吐出開口)が下層吸引ヘッド5b1に近接して配置されている。
【0040】
下層供給ヘッダ管5h2は、各々の下層吐出ヘッド5h1に接続されており、またポンプ5fと外部配管5iを通じて接続されている。この下層供給ヘッダ管5h2は、各々の下層吐出ヘッド5h1にポンプ5fから供給されためっき液Lを分配して供給する。
【0041】
外部配管5iは、めっき槽2の外部にてめっき液Lを案内する分岐配管であり、上層回収ユニット5a及び下層回収ユニット5bと、上層供給ユニット5g及び下層供給ユニット5hとを接続している。この外部配管5iは、オーバフロー槽2bの底部と、上層回収ユニット5aの上層吸引ヘッダ管5a2と、下層回収ユニット5bの下層吸引ヘッダ管5b2とに接続されており、オーバフロー槽2b、上層回収ユニット5a及び下層回収ユニット5bで回収されためっき液Lをポンプ5fに向けて案内する。また、外部配管5iは、上層供給ユニット5gの上層供給ヘッダ管5g2と、下層供給ユニット5hの下層供給ヘッダ管5h2とに接続されており、ポンプ5fから吐出されためっき液Lを上層供給ユニット5g及び下層供給ユニット5hに向けて案内する。
【0042】
このような循環供給ユニット5は、上層回収ユニット5a及び下層回収ユニット5bによってめっき液Lをめっき槽2から回収し、回収しためっき槽2をオーバフロー槽2bで回収されためっき液Lと共にポンプ5fで昇圧して、上層供給ユニット5g及び下層供給ユニット5hによってめっき槽2に再度供給する。
【0043】
以上のような構成の本実施形態のめっき処理装置1では、ハンガに装着された複数の処理対象物がめっき槽2にてめっき液Lに浸漬され、処理対象物と電極板3とに不図示の電源装置によって通電が行われることによって、処理対象物の表面にめっき処理が施される。
【0044】
ここで、本実施形態のめっき処理装置1においては、ポンプ5fが稼働されることによって、上層供給ユニット5gの上層吐出ヘッド5g1と、下層供給ユニット5hの下層吐出ヘッド5h1とからめっき液Lが主液槽2aの内部に供給される。これによって、主液槽2aの内部には、めっき液Lの循環流が形成される。また、めっき液Lに供給されためっき液Lの上澄み液は、主液槽2aのオーバフロー壁2a2を乗り越えてオーバフロー槽2bにオーバフローされる。さらに、主液槽2aに貯留されためっき液Lは、上層吸引ヘッド5a1及び下層吸引ヘッド5b1によって吸引される。
【0045】
オーバフロー槽2bに流れ込んだめっき液Lと、上層吸引ヘッド5a1及び下層吸引ヘッド5b1によって吸引されめっき液Lとは、第1フィルタ5c、第2フィルタ5dあるいは第3フィルタ5eでコンタミネーションが捕捉された後、ポンプ5fで昇圧されて、再び、上層吐出ヘッド5g1及び下層吐出ヘッド5h1から主液槽2aの内部に供給される。
【0046】
このような本実施形態のめっき処理装置1では、オーバフロー壁2a2の内壁面近傍には、オーバフロー壁2a2を乗り越えずにめっき槽2の底部に向かう下降流が形成される。この下降流にめっき液Lの表層のコンタミネーションが巻き込まれると、巻き込まれたコンタミネーションがオーバフローによってめっき槽2の外部に排出されずに滞留し、不良の原因となる。本実施形態のめっき処理装置1によれば、めっき液Lを回収すると共に回収しためっき液Lをめっき槽2に循環供給する循環供給ユニット5を備えている。また、循環供給ユニット5は、オーバフロー壁2a2の内壁面に対向する位置であって上澄み液がオーバフローされる領域(オーバフロー領域R)の下方に配置された上層吸引ヘッド5a1を有する。このため、本実施形態のめっき処理装置1によれば、オーバフローされずに再びめっき槽2の底部に向かおうとするコンタミネーションを上層吸引ヘッド5a1によって捕捉することができる。したがって、本実施形態のめっき処理装置1によれば、処理対象物へのコンタミネーションの付着を防止することで不良率の低下を図ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のめっき処理装置1においては、上層吸引ヘッド5a1は、めっき槽2の底部からオーバフロー壁2a2の上端に至る範囲の中央よりも上方に配置されている。上述の下降流によってオーバフロー領域Rの近傍(めっき槽2の上部かつ右側)には、渦流が形成され、コンタミネーションの密度が高くなる可能性がある。このため、本実施形態のめっき処理装置1のように、上層吸引ヘッド5a1を上部に配置することによって、より効率的にコンタミネーションを回収することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のめっき処理装置1においては、循環供給ユニット5が上層吸引ヘッド5a1を複数備えている。このため、オーバフロー領域Rの下方の複数の箇所にてめっき液Lを吸引することができ、より多くのコンタミネーションを回収することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のめっき処理装置1においては、上層吸引ヘッド5a1の吸引開口が下方に向けられている。このため、オーバフロー壁2a2の内壁面に沿う下降流によってめっき槽2の底部まで到達したコンタミネーションを吸い上げて回収することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のめっき処理装置1においては、循環供給ユニット5が、上層吸引ヘッド5a1に向けてめっき液Lを吐出する上層吐出ヘッド5g1を備えている。このため、めっき槽2の内部にて上層吸引ヘッド5a1に向かうめっき液Lの流れを形成することができ、この流れに乗せてコンタミネーションをより多く上層吸引ヘッド5a1に集めることができる。したがって、本実施形態のめっき処理装置1によれば、コンタミネーションの回収率をさらに向上させることが可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図3を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0052】
図3(a)は、本実施形態のめっき処理装置1Aの概略構成を示す平面図である。また、図3(b)は、本実施形態のめっき処理装置1Aが備える上層吸引ヘッド5a3を下方から見た斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態の上層吸引ヘッド5a3は、吸引開口が平面視にて長方形状とされており、長軸方向がオーバフロー壁2a2の壁面と平行となるように設けられている。つまり、本実施形態における上層吸引ヘッド5a3は、オーバフロー壁2a2の内壁面に沿って水平に長尺状に設けられている。上層吸引ヘッド5a3の吸引開口の前後方向の幅寸法は、上記第1実施形態における3つの上層吸引ヘッド5a1の吸引開口を全て含むように設定されている。
【0053】
このような本実施形態のめっき処理装置1Aによれば、上層吸引ヘッド5a3の吸引開口をより広く確保することが可能となり、コンタミネーションの回収率をさらに向上させることが可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、本実施形態の説明においても、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0055】
図4は、本実施形態のめっき処理装置1Bの概略構成を示す平面図である。また、図5は、本実施形態のめっき処理装置1Bの概略構成を示す縦断面図である。これらの図に示すように、本実施形態のめっき処理装置1Bにおいては、吸引開口が上方に向けて配置された上層吸引ヘッド5a4を備えている。
【0056】
このような上層吸引ヘッド5a4によれば、吸引開口が上方に向けて配置されているため、オーバフロー壁2a2の内壁面に沿って下降する下降流に乗って流れるコンタミネーションを上層吸引ヘッド5a4の内部に取り込みやすくなる。特に、本実施形態の上層吸引ヘッド5a4は、上方に向かうに連れて拡径されているため、吸引開口を広く確保することができ、よりコンタミネーションを上層吸引ヘッド5a4の内部に取り込みやすくなっている。
【0057】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1あるいは第3実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0058】
図6(a)は、本実施形態のめっき処理装置1Cの概略構成を示す平面図である。また、図6(b)は、本実施形態のめっき処理装置1Cが備える上層吸引ヘッド5a5を上方から見た斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態の上層吸引ヘッド5a5は、吸引開口が平面視にて長方形状とされており、長軸方向がオーバフロー壁2a2の壁面と平行となるように設けられている。つまり、本実施形態における上層吸引ヘッド5a5は、オーバフロー壁2a2の内壁面に沿って水平に長尺状に設けられている。上層吸引ヘッド5a5の吸引開口の前後方向の幅寸法は、上記第3実施形態における3つの上層吸引ヘッド5a4の吸引開口を全て含むように設定されている。
【0059】
このような本実施形態のめっき処理装置1Cによれば、上層吸引ヘッド5a5の吸引開口をより広く確保することが可能となり、コンタミネーションの回収率をさらに向上させることが可能となる。
【0060】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0061】
図7は、本実施形態のめっき処理装置1Dの概略構成を示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態のめっき処理装置1Dは、主液槽2aの底面2a1が水平面とされている。
【0062】
このように主液槽2aの底面2a1が水平面とされることによって、上記第1実施形態におけるめっき槽2に対して高さ寸法を変更することなく、主液槽2aの容量を増加させることが可能となる。このため、本実施形態のめっき処理装置1Dによれば、より多くの対象物をめっき処理することが可能となる。
【0063】
また、例えば、図8に示すように、主液槽2aの底部の隅部において、側壁の内壁面から底面2a1に向かうに連れて下降する接続面2a3を有するようにしても良い。この接続面2a3は、図8に示す湾曲面であっても良いし、また水平面に対して傾斜した平面状の傾斜面であっても良い。
【0064】
このような接続面2a3を備えることによって、主液槽2aの底部の隅部にて、主液槽2aの内部に形成された循環流の流れ方向を緩やかに変更することができ、循環流が壁面に衝突してめっき液Lの流れが阻害されることを抑止することができる。
【0065】
さらに、下層回収ユニット5bの下層吸引ヘッド5b1が近くに配置された主液槽2aの左側の隅部では、上昇しようとする循環流から重力の影響によって離脱された粒径の大きなコンタミネーションが接続面2a3によって下層吸引ヘッド5b1に向けて案内される。このため、より確実にコンタミネーションを下層吸引ヘッド5b1によって回収することが可能となる。
【0066】
なお、下層吸引ヘッド5b1の吸引力を下層吸引ヘッド5b1の周方向の全域において高く確保するためには、下層吸引ヘッド5b1の下端縁と主液槽2aの底面2a1との距離が下層吸引ヘッド5b1の周方向において一定であることが好ましい。下層吸引ヘッド5b1の下端縁の形状を接続面2a3に沿った形に合わせることによって、上記距離を一定とすることも考えられるが、下層吸引ヘッド5b1の形状が複雑となる。このため、接続面2a3は、平面視において、下層吸引ヘッド5b1と重ならない位置に設けることが好ましい。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
上記実施形態においては、めっき槽2の内部に電極板3が配置されるめっき処理装置に対して本発明を適用した例について説明した。このため、上記実施形態のめっき処理装置は、湿式の電気めっき処理(例えば、硫酸銅めっき処理、半光沢ニッケルめっき処理、光沢ニッケルめっき処理、クロムめっき処理)を行うめっき処理装置に好適に用いることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明を、湿式の無電解めっき処理を行うめっき処理装置に適用することも可能である。
【0069】
また、上記実施形態における上層吸引ヘッド5a1、下層吸引ヘッド5b1、上層吐出ヘッド5g1及び下層吐出ヘッド5h1の数は一例であり、変更可能である。例えば、エア攪拌ユニット4のエア噴出管4aに、下層吐出ヘッド5h1から吐出しためっき液Lの流れが干渉しないように、上記第1実施形態における4つの下層吐出ヘッド5h1のうち、前後方向における両端部の2つのみを設置する構成を採用することも可能である。
【0070】
また、例えば、上層吐出ヘッド5g1の吐出開口を狭くして、上層吸引ヘッド5a1に向かう流速を高め、より上層吸引ヘッド5a1に多くのコンタミネーションが案内されるようにしても良い。このような場合、例えば、図9(a)に示すように、上層吐出ヘッド5g1の先端形状を円形状に窄む形状とすることが考えられる。また、図9(b)に示すように、上層吐出ヘッド5g1の先端形状を矩形状に窄む形状とすることも考えられる。また、図9(c)に示すように、上層吐出ヘッド5g1の先端部に円形の開口を有する絞りを設ける構成とすることも考えられる。また、図9(d)に示すように、上層吐出ヘッド5g1の先端部に半円状の開口を有する絞りを設ける構成とすることもできる。図9(d)に示す構成を採用する場合には、水圧が高くなる主液槽2aの底部側、すなわち上層吐出ヘッド5g1の下部側に対して開口が設けられるようにすることが好ましい。なお、下層吐出ヘッド5h1についても、同様に吐出開口を狭くして下層吸引ヘッド5b1に向かう流速を高めるようにしても良い。
【0071】
また、例えば、上記実施形態においては、循環供給ユニット5が下層回収ユニット5b及び下層供給ユニット5hを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、下層回収ユニット5b及び下層供給ユニット5hのいずれかあるいは両方を設置しない構成を採用することも可能である。また、循環供給ユニット5が、上記実施形態に加えて、主液槽2aの中間層にめっき液Lを吐出する吐出ヘッドを備える構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1……めっき処理装置、1A……めっき処理装置、1B……めっき処理装置、1C……めっき処理装置、1D……めっき処理装置、2……めっき槽、2a……主液槽、2a1……底面、2a2……オーバフロー壁、2a3……接続面、2b……オーバフロー槽、5……循環供給ユニット、5a……上層回収ユニット、5a1……上層吸引ヘッド(吸引ヘッド)、5a2……上層吸引ヘッダ管、5a3……上層吸引ヘッド(吸引ヘッド)、5a4……上層吸引ヘッド(吸引ヘッド)、5a5……上層吸引ヘッド(吸引ヘッド)、5b……下層回収ユニット、5b1……下層吸引ヘッド、5b2……下層吸引ヘッダ管、5g……上層供給ユニット、5g1……上層吐出ヘッド(吐出ヘッド)、5g2……上層供給ヘッダ管、5h……下層供給ユニット、5h1……下層吐出ヘッド、5h2……下層供給ヘッダ管、L……めっき液、R……オーバフロー領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9