IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】粒入りコーンスープ
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20221118BHJP
【FI】
A23L23/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018205318
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020068717
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】神田 一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 舞衣
【審査官】松田 成正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04564531(US,A)
【文献】特開2007-068420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgであり、且つ前記液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16であり、
さらに、前記粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する前記液部のショ糖換算甘味成分濃度の比が1.20~1.40である、粒入りコーンスープ。
【請求項2】
前記粒入りコーンスープが、常温流通可能な容器詰め粒入りコーンスープである、請求項に記載の粒入りコーンスープ。
【請求項3】
喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgとなるように調整し、さらに、前記液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16および前記粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する前記液部のショ糖換算甘味成分濃度の比が1.20~1.40となるようにすることを特徴とする、粒入りコーンスープの製造方法。
【請求項4】
粒入りコーンスープにおいて、喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度を35~60g/Kgとし、且つ前記液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差を7~16および前記粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する前記液部のショ糖換算甘味成分濃度の比を1.20~1.40とすることを特徴とする、粒入りコーンスープの粒コーン本来の甘味を感じやすくさせる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒入りコーンスープ、その製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コーンスープは、缶やレトルトパウチなどの容器に封入された液状の形態や、湯などに溶解・分散させて喫食する粉末状あるいは顆粒状の形態などが市販され、子供から大人まで広く飲食されているものであり、特に甘味の高いものが好まれている。さらに最近では、スープの味もさることながら、食感や腹持ち、本格さなどの観点から、粒のままのコーン(以下、「粒コーン」という場合もある)が具材として入っている粒入りコーンスープがより好まれる傾向にある。
【0003】
粒入りコーンスープの美味しさには、具材である粒コーン以外の液状部分(以下、「液部」という場合もある)の美味しさに加え、粒コーン自体の美味しさや食感も非常に重要である。そのため、粒入りコーンスープにおいて、粒コーンの食感を好ましいものとするために、大粒の粒コーンを使用する技術(特許文献1)なども開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-068420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、容器詰め粒入りコーンスープは、液状のまま常温流通あるいはチルド流通させるためには、レトルト等による加熱殺菌工程を経る必要がある。そして、この加熱殺菌工程により、粒コーンは液部によって煮込まれた状態となり、粒コーンには液部の味(甘味など)が浸み込む。このような工程で製造された容器詰め粒入りコーンスープは、通常、液部と粒コーンが同時に喫食される。また、粉末状あるいは顆粒状の乾燥スープおよび乾燥粒コーンからなるインスタントスープ(即席粒入りコーンスープ)でも、同様に、液部と粒コーンが同時に喫食される。
【0006】
したがって、「粒コーンの甘味」を向上させるためには、液部の甘味を増加させれば良いとも考えられるが、粒入りコーンスープにおいては、液部の甘味を増加させるだけでは、粒コーンと液部とを同時に喫食した際に、「粒コーンの甘味」が「液部の甘味」に埋もれてしまう(粒コーン本来の甘味を感じにくくなる)という課題があった。また、レトルト殺菌工程を経る製品においては、レトルト殺菌後において、粒コーン部の甘味成分濃度が液部の甘味成分濃度よりも低下してしまい、喫食時に粒コーンの甘味をより感じにくくなるという課題もあった。
【0007】
そこで本発明は、喫食時において粒コーン本来の甘味が感じられ、液部および粒コーンのいずれもが好ましい風香味を有する粒入りコーンスープ、その製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者は、粒入りコーンスープにおいて粒コーン本来の甘味を感じさせるために、液部の甘味とのバランスに焦点をあてて数多くの実験を行った。そして、粒入りコーンスープにおいて、液部のショ糖換算甘味成分濃度を35~60g/Kgとし、且つ前記液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差を7~16とすることにより、喫食時において粒コーン本来の甘味が感じられ、液部および粒コーンのいずれもが好ましい風香味を有する粒入りコーンスープを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(5)である。
(1)液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgであり、且つこの液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16である、粒入りコーンスープ。
(2)さらに、粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する液部のショ糖換算甘味成分濃度の比が1.20~1.40である、(1)に記載の粒入りコーンスープ。
(3)粒入りコーンスープが、常温流通可能な容器詰め粒入りコーンスープである、(1)または(2)に記載の粒入りコーンスープ。
(4)喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgとなるように調整し、さらに、この液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16となるようにすることを特徴とする、粒入りコーンスープの製造方法。
(5)粒入りコーンスープにおいて、喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度を35~60g/Kgとし、且つ液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差を7~16とすることを特徴とする、粒入りコーンスープの粒コーン本来の甘味を感じやすくさせる方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、喫食時において粒コーン本来の甘味が感じられ、液部および粒コーンのいずれもが好ましい風香味を有する粒入りコーンスープを提供することができる。そして、この粒入りコーンスープは、粒コーンと液部とを同時に喫食した場合でも「粒コーンの甘味」が充分感じられ、粒コーンと液部との風香味バランスが好ましい。さらに、レトルト殺菌処理された常温流通可能な容器詰め粒入りコーンスープであっても、同様の効果が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgであり、且つ液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16である粒入りコーンスープ、ならびに、喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgとなるように調整し、さらに、この液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16となるようにする粒入りコーンスープの製造方法および粒入りコーンスープの粒コーン本来の甘味を感じやすくさせる方法である。
【0012】
ここで、本発明において「コーンスープ」とは、コーンペーストをベースにした液状のスープを意味し、とろみが付与されたコーンポタージュスープであっても良い。また、粉末状あるいは顆粒状の乾燥スープを湯、水、牛乳などに溶解および/または分散したものであっても良い。そして、本発明において「粒入りコーンスープ」とは、具材として粒コーンを含むコーンスープを意味する。
【0013】
まず、本発明の粒入りコーンスープについて詳細に説明する。
本発明の粒入りコーンスープは、その喫食時において、具材である粒コーンと液部とを含むものである。そして、この液部のショ糖換算甘味成分濃度は35~60g/Kg、好ましくは40~55g/Kgであり、且つ液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16、好ましくは10~14である。なお、本発明における「ショ糖換算甘味成分濃度」とは、以下のように算出したものを意味する。
飲料用語事典(株式会社ビバリッジジャパン社)によると、甘味成分の甘味強度を示す尺度として「甘味度」があり、これは、砂糖(ショ糖、スクロース)の甘味度を1とした場合に、砂糖以外の甘味成分の甘味強度を砂糖の甘味に対する倍率で示したものであって、前記飲料用語事典の資11によると、ブドウ糖(グルコース)は0.6~0.7、果糖(フルクトース)は1.3~1.7、麦芽糖(マルトース)は0.4である。これを踏まえ、本発明におけるショ糖換算甘味成分濃度は、ショ糖、ブドウ糖、果糖及び麦芽糖の濃度(含有量)にそれぞれの甘味度を乗じた値を合計して算出する。なお、この算出において乗じる甘味度は、前記飲料用語事典の甘味度から、ショ糖は1.0、ブドウ糖は0.65、果糖は1.5、麦芽糖は0.4とする。
【0014】
そして、前述のようなショ糖換算甘味成分濃度である液部および粒コーン部を有する粒入りコーンスープとすることにより、粒コーンと液部とを同時に喫食した場合でも粒コーン本来の甘味が液部の甘味に埋もれることなく充分感じられ、また液部の甘味もしっかり感じられ、粒コーンと液部との風香味バランスが好ましい粒入りコーンスープを得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の粒入りコーンスープは、その喫食時において、液部のショ糖換算甘味成分濃度を35~60g/kgとし且つ液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差を7~16となるようにするとともに、粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する液部のショ糖換算甘味成分濃度の比が1.20~1.40、さらには1.25~1.35となるようにすることが、粒コーンと液部との風香味バランスをより好ましくできるという点で非常に好適である。
【0016】
なお、本発明の粒入りコーンスープは、原料として、具材となる粒コーン、スープベースとなるコーンペースト、およびショ糖換算甘味成分濃度を調整するために砂糖などの甘味成分を使用するが、上記構成を満たし且つ本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、これ以外の原料として、一般的なコーンスープに配合される成分などを使用できる。例えば、水、食塩、アミノ酸などの調味料、油脂、エキス類、乳製品、乳等を主要原料とする食品、でんぷん類、増粘多糖類、香料などを使用することができ、また、これら以外の任意成分を使用してもよい。さらに、粒コーンに加えて、粒コーン以外の具材(例えばクルトンなど)を使用しても良い。
【0017】
また、粒コーンおよびコーンペーストの原料として用いられるコーンの品種は、特段限定はされないが、より好ましい甘味の粒入りコーンスープを得るという点において、スイート種(甘味種、スイートコーン)を用いるのが非常に好適である。
【0018】
本発明の粒入りコーンスープにおける粒コーンと液部との含有比率は、粒コーンと液部との風香味バランスだけでなく、食べ応えや食べやすさ、コストなどの観点から、喫食時の状態における質量比として、粒コーン:液部=1:7~37となるように設計するのが好ましく、粒コーン:液部=1:9~18とするのがより好ましい。一般的な缶入りの製品(内容量190g)で例示すると、粒コーンの量は5~25gが好ましく、10~20gがより好ましい。
【0019】
そして、本発明は、本格さや喫食の簡便性などの観点から、容器充填および密封・殺菌され且つそのまま粒入りコーンスープとして喫食できる、常温流通可能な容器詰め粒入りコーンスープであることが好ましい。常温流通可能な容器詰め粒入りコーンスープとしては、レトルト殺菌処理された缶入り製品やレトルトパウチ入り製品などが例示されるが、これに限定されるものではない。また、本発明は、加熱殺菌処理されたチルド流通用の容器詰め粒入りコーンスープであっても良い。
【0020】
さらに、本発明は、乾燥スープおよび乾燥粒コーンからなるインスタント粒入りコーンスープであっても良い。このインスタント粒入りコーンスープは、簡便性を備え且つ製品の軽量化などが可能となる。この場合、乾燥スープおよび乾燥粒コーンを湯や水、牛乳などで溶解および/または分散、復元した状態(つまり喫食時)における液部のショ糖換算甘味成分濃度および粒コーンのショ糖換算甘味成分濃度が前記した差や比率となるようにすればよい。
【0021】
次に、本発明に係る粒入りコーンスープの製造方法、ならびに粒入りコーンスープの粒コーン本来の甘味を感じやすくさせる方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明の粒入りコーンスープは、通常の粒入りコーンスープと同様の方法により製造することができる。
例えば、缶入り製品を製造する場合、コーンをすり潰してペースト状にし、ここに水、食塩、砂糖、調味料、乳製品などを加えて加熱撹拌し、必要であれば均質化処理を行ってからスチール缶などの缶容器に粒コーンとともに充填し密封(巻締め)を行う。そして、これを公知の殺菌条件、例えば127℃、40分間の条件などによりレトルト殺菌して常温流通可能な状態とすることもできる。レトルトパウチ製品も使用する容器以外は上記と同じ方法で製造できる。
【0023】
ここで、本発明においては、容器充填および殺菌後の液状粒入りコーンスープにおいて液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgとなるように液部を調整し、さらに、この液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16となるようにする。これは、液部の甘味成分配合量により調整を行うのが簡便性などの観点から好ましいが、原料コーンの品種・産地の選択や粒コーンの下処理(例えば、糖液への浸漬など)等により行っても良い。これにより、粒コーンと液部とを同時に喫食した場合においても、粒コーン本来の甘味を感じやすくさせることができる。
【0024】
また、インスタントスープを製造する場合には、コーンパウダーに食塩、砂糖、調味料、乳製品粉末などを加えて混合を行い、必要であれば造粒、乾燥を行ってから、乾燥粒コーンとともに包装容器等に充填し密封する。なお、造粒法としては、例えば、流動層造粒法、押出造粒法、撹拌造粒法、破砕造粒法、転動造粒法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明においては、乾燥スープおよび乾燥粒コーンからなるインスタント粒入りコーンスープにおいても、その喫食時における液部のショ糖換算甘味成分濃度が35~60g/Kgとなるように調整し、且つこの液部のショ糖換算甘味成分濃度と喫食時における粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16となるようにする。これも、乾燥スープの甘味成分配合量により調整を行うのが簡便性などの観点から好ましいが、原料コーンの品種・産地の選択や乾燥粒コーンの下処理(例えば、乾燥前処理として糖液への浸漬など)等により行っても良い。これにより、その喫食時において、粒コーンと液部とを同時に喫食した場合においても、粒入りコーンスープにおいて粒コーン本来の甘味を感じやすくさせることができる。
【0026】
なお、本発明に係る粒入りコーンスープの製造方法、ならびに粒入りコーンスープの粒コーン本来の甘味を感じやすくさせる方法については、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、上記以外の任意の工程を含んでも良い。
【0027】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0028】
(粒入りコーンスープ缶の調製)
下記表1の上段側に示す原料および配合量により、砂糖配合量のみが異なる7種類のコーンスープ液部を調製した。具体的には、冷凍スイートコーンをすり潰してペースト状とし、これに他の原料及び水を混合して加熱撹拌し、液部を調製した。そして、下記表1の下段側に示すように、得られた各液部175gと粒コーン(冷凍スイートコーン)15gをそれぞれスチール缶容器に充填して巻締めを行い、これを127℃、40分間の条件によってレトルト殺菌を行うことにより、サンプル1~7の粒入りコーンスープ缶(内容量190g)を調製した。
【0029】
【表1】
【実施例2】
【0030】
(粒入りコーンスープ缶の甘味成分分析)
実施例1で調製したサンプル1~7の粒入りコーンスープ缶について、液部および粒コーンに含まれる甘味成分である糖の分析を行い、それぞれのショ糖換算甘味成分濃度を算出した。
【0031】
具体的には、まず茶こしを使用して粒コーンと液部とを分離し、粒コーンは超純水100mlで3回洗浄した後、紙タオルで水分を除去した。
そして、粒コーン5gをブレンダ―容器に量り採り、50%エタノール50mlを加えて粉砕した。さらに、50%エタノールで洗いこみながら、100mLのメスフラスコに定容した。このうち5mlを2000rpmの条件により遠心分離し、上清2mlを超純水で25mlに定容した後、0.45μmセルロース系フィルターでろ過したものを、測定用試料とした。
また、液部1gを20mLメスフラスコに量り採り、50%エタノールで定容した。そして、30分間超音波により抽出した後、このうち5mlを2000rpmの条件により遠心分離し、上清2mlを超純水で10mlに定容した後、0.45μmセルロース系フィルターでろ過したものを、測定用試料とした。
【0032】
このようにして得られた各測定用試料について、下記の条件でHPLC分析に供し、粒コーンあるいは液部に含まれるショ糖、ブドウ糖、果糖および麦芽糖の濃度(g/Kg)を測定した。そして、この測定データに各糖の甘味度(ショ糖は1.0、ブドウ糖は0.65、果糖は1.5、麦芽糖は0.4)を乗じた数値を合算して、粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度あるいは液部のショ糖換算甘味成分濃度を算出した。さらに、これらのデータから、液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差、および粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度に対する液部のショ糖換算甘味成分濃度の比も算出した。得られた結果を下記表2に示した。
なお、原料の粒コーン(スープ配合前)のショ糖換算甘味成分濃度も同様に測定した結果、その値は56.7g/Kgであった。
【0033】
使用機器:Agilent1100 LC(Agilent Technologies社製)
検出器:コロナCAD検出器(Dionex社製)
カラム:Asahipak NH2P-50(4.6×250mm)(Shodex社製)
移動相A:超純水
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流速:1mL/min
グラジエントB:75%(0min)-75%(30min)-10%(45min)-10%(60min)
【0034】
【表2】
【実施例3】
【0035】
(粒入りコーンスープ缶の官能評価)
実施例1で調製したサンプル1~7の粒入りコーンスープ缶について、以下に示す評価基準を用いて官能評価を行った。具体的には、充分に訓練され官能的識別能力を備えた6名の専門パネリスト(パネリストA~F)により、粒コーンおよび液部を同時に喫食した際の「粒コーンの甘味」、「液部の甘味」および「総合評価」について、以下の評価基準に基づいて各サンプルを官能評価し、この平均値を算出した。得られた結果(各パネリストの個別データおよび平均値)を下記表3に示した。
【0036】
<「粒コーンの甘味」の評価基準>
5:とても強い甘みを感じる。
4:やや強い甘みを感じる。
3:甘みを感じる。
2:弱い甘みを感じる。
1:ほとんど甘みを感じない。
【0037】
<「液部の甘味」の評価基準>
5:とても強い甘みを感じる。
4:やや強い甘みを感じる。
3:甘みを感じる。
2:弱い甘みを感じる。
1:ほとんど甘みを感じない。
【0038】
<「総合評価」の評価基準>
5:粒入りコーンスープとしてとても美味しい。
4:粒入りコーンスープとして美味しい。
3:粒入りコーンスープとして普通。
2:粒入りコーンスープとしてやや美味しくない。
1:粒入りコーンスープとして美味しくない。
【0039】
【表3】
【0040】
この結果から、まず、粒入りコーンスープの液部のショ糖換算甘味成分濃度が30g/Kg未満、およびこの液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7未満であるサンプル1および2は、液部だけでなく、同時に喫食した粒コーンの甘味も弱く感じ、粒入りコーンスープ全体としての総合評価も好ましくないことが示された。また、サンプル7のように、粒入りコーンスープの液部のショ糖換算甘味成分濃度が60g/Kg超であると、この液部の甘味は非常に強く感じるが、同時に喫食した粒コーンの甘味は、液部の甘味が強すぎるため逆に弱く感じ、粒入りコーンスープ全体としての総合評価は好ましくないことも示された。つまり、このサンプル1、2および7は、液部と粒コーンとの風香味バランスがあまり好ましくないことが明らかとなった。
【0041】
一方、粒入りコーンスープの液部のショ糖換算甘味成分濃度を35~60g/Kgとし、且つ液部のショ糖換算甘味成分濃度と粒コーン部のショ糖換算甘味成分濃度との差が7~16となるようにしたサンプル3~6は、液部の甘味がしっかり感じられるとともに、粒コーン本来の甘味も感じられ、且つ粒コーンと液部とを同時に喫食した場合でも粒コーンの甘味が埋もれることなく充分感じられ、粒コーンと液部との風香味バランスが非常に好ましいことが明らかとなった。