(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】免震装置監視システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20221118BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20221118BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20221118BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20221118BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20221118BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20221118BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20221118BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
E01D22/00 A
E01D1/00 Z
E01D19/04 B
E04H9/02 331B
F16F15/04 P
G08C17/00 Z
G08C15/00 D
(21)【出願番号】P 2018210830
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 昌啓
(72)【発明者】
【氏名】菊本 恒史
(72)【発明者】
【氏名】福田 滋夫
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122658(JP,A)
【文献】特開2012-036913(JP,A)
【文献】特開2010-174566(JP,A)
【文献】特開2017-106878(JP,A)
【文献】特開平10-177032(JP,A)
【文献】特開2012-137339(JP,A)
【文献】特開2014-102231(JP,A)
【文献】特開2014-222204(JP,A)
【文献】特開2010-085099(JP,A)
【文献】特開平11-064098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置の健全性を監視する免震装置監視システムであって、
前記免震装置に取り付けられるセンサー装置と、
前記センサー装置とネットワークを介して通信可能に接続される監視装置と、を備え、
前記センサー装置は、
前記免震装置の変形に関する物理量を検出する検出部と、
検出結果を前記監視装置に送信する送信部と、を有し、
前記免震装置は、ゴム材と鋼板が交互に積層され上面及び下面に上側フランジ及び下側フランジが接合された積層ゴム支承体であり、
前記センサー装置は、前記免震装置における当該センサー装置が取り付けられたセンサー取付部位の水平方向の応答加速度を検出する2つの振動センサーであり、
2つの前記振動センサーは、前記積層ゴム支承体の軸方向に互いに向き合うように、前記上側フランジの下面及び前記下側フランジの上面に取り付けられ、
前記監視装置は、
2つの前記振動センサーからの検出結果を受信する受信部と、
前記検出結果
の差分に基づいて、前記免震装置の
水平方向の変形履歴を推定し、
推定した前記変形履歴に基づいて前記免震装置の健全性を評価する評価部と、を有する、
免震装置監視システム。
【請求項2】
前記免震装置の変形履歴を表示する表示部を備える、請求項1
に記載の免震装置監視システム。
【請求項3】
前記センサー装置と前記監視装置との通信を中継する中継装置を備える、請求項1
又は2に記載の免震装置監視システム。
【請求項4】
前記センサー装置は、前記中継装置と無線通信を介して接続される、請求項
3に記載の免震装置監視システム。
【請求項5】
前記センサー装置は、振動を電気に変換して発電する発電機能付きの電源部を有する、請求項
3又は4に記載の免震装置監視システム。
【請求項6】
前記センサー装置は、所定大きさ以上の振動に伴い給電を開始する電源部を有する、請求項
5に記載の免震装置監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルディング、戸建て住宅、橋梁等の建造物や機械装置の免震構造に用いられる免震装置の健全性を監視する免震装置監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時に、短周期の激しい地震動を長周期化することにより、建造物等に伝わる地震力(衝撃)を低減する免震装置が知られている。免震装置は、建造物等(以下、「上部構造物」と称する)と基礎(以下、「下部構造物」と称する)との間に介在し、免震層を構成する。免震装置は、上部構造物を支持するとともに、地震発生時に上部構造物を長周期でゆっくりと変位させるアイソレーター、及び、揺れを抑えて収束させるダンパーを含む。
【0003】
アイソレーターとしては、例えば、鋼板とゴムを交互に積層した構造を有する積層ゴム支承体がある。積層ゴム支承体は、地震発生時に、ゴム層のせん断変形に伴い水平方向に変位することにより上部構造体への振動伝達を低減する。水平変位の大きさは、地震の規模に依存するが、大地震においては数百mmに及ぶことがある。積層ゴム支承体は、大地震においても正常に機能するように、このような大変形を想定して設計、製造されている。
【0004】
積層ゴム支承体等の免震装置は、製造初期の状態が保持されていることを前提として、振動の抑制効果を発揮する。言い換えると、免震装置に水平方向又は鉛直方向の変形が経時的に生じると、健全性が損なわれ、大地震発生時に振動の抑制効果を得ることができなくなる。そこで、免震装置の長期的な健全性を評価する免震装置監視システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、東日本大震災や熊本地震など、設計時の想定を上回る長時間の地震動や非常に大きな地震動が短期間に繰り返し発生するケースが認められている。このような場合、内部的に疲労が蓄積され、免震装置(例えば、積層ゴム支承体)の健全性が損なわれている虞がある。
しかしながら、特許文献1等に開示されている従来の免震装置監視システムは、免震装置の静的な状態における水平変位量又は鉛直変位量に基づいて免震装置を評価するものであり、地震動によって免震装置が受けた変形履歴は考慮されていない。そのため、地震動によって免震装置が一時的に変形しても、地震後に元の状態に戻り、水平変位量又は鉛直変位量に変化がなければ、免震装置は健全であると誤って評価される虞がある。
大地震後には建造物等の健全性の判定が急務となるため、専門技術者が現地に赴き、免震装置の外観等を確認して健全性を評価しているが、余震が終息するまで免震装置が設置されている免震ピット内に立ち入れない場合もあり、少しでも早く免震装置の健全性を確認できる方法が要求されている。
【0007】
本発明の目的は、大地震後の免震装置の健全性を、現地に赴くことなく速やかに確認できる免震装置監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る免震装置監視システムは、
免震装置の健全性を監視する免震装置監視システムであって、
前記免震装置に取り付けられるセンサー装置と、
前記センサー装置とネットワークを介して通信可能に接続される監視装置と、を備え、
前記センサー装置は、
前記免震装置の変形に関する物理量を検出する検出部と、
検出結果を前記監視装置に送信する送信部と、を有し、
前記免震装置は、ゴム材と鋼板が交互に積層され上面及び下面に上側フランジ及び下側フランジが接合された積層ゴム支承体であり、
前記センサー装置は、前記免震装置における当該センサー装置が取り付けられたセンサー取付部位の水平方向の応答加速度を検出する2つの振動センサーであり、
2つの前記振動センサーは、前記積層ゴム支承体の軸方向に互いに向き合うように、前記上側フランジの下面及び前記下側フランジの上面に取り付けられ、
前記監視装置は、
2つの前記振動センサーからの検出結果を受信する受信部と、
前記検出結果の差分に基づいて、前記免震装置の水平方向の変形履歴を推定し、推定した前記変形履歴に基づいて前記免震装置の健全性を評価する評価部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大地震後の免震装置の健全性を、現地に赴くことなく速やかに確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る免震装置監視システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、積層ゴム支承体の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、センサー装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】
図4は、監視装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】
図5は、免震装置監視システムで実行される免震装置監視処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、免震装置の変形履歴の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る免震装置監視システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、免震建築物Aは、上部構造物としての建築物A1、下部構造物としての基礎A2との間に、免震層として免震装置40を有している。また、免震建築物Aの周囲には、地震動による最大変位を許容できる間隙をもって、擁壁A3が設けられている。
【0012】
免震装置40は、地震動が直接建築物A1に伝わらないように、建築物A1と基礎A2とを絶縁する。免震装置40は、例えば、積層ゴム支承体、すべり支承型積層ゴム等のアイソレーターと、鋼材ダンパー、鉛ダンパー等のダンパーを含んで構成される。免震装置40は、安定して建築物A1を支える支持機能、地震エネルギーを吸収して建築物A1の揺れを低減する減衰機能、及び建築物A1の水平位置を元に戻す復元機能を有する。
【0013】
免震装置監視システム1は、免震建築物Aに設けられた免震装置40の使用期間中の健全性をモニタリングするためのシステムであり、免震装置40の健全性を評価するためのデータをセンサー装置10により収集し、監視装置20で集約して管理する。免震監視システム1は、免震建築物A以外の免震建築物に設けられた免震装置の健全性も一括してモニタリングすることができる。
なお、免震建築物Aに免震装置40が複数設置されている場合、免震装置監視システム1は、全部の免震装置40の健全性をモニタリングするように構成されてもよいし、一部の免震装置40の健全性をモニタリングするように構成されてもよい。本実施の形態では、免震装置監視システム1が、免震装置40の一例である積層ゴム支承体(以下、「積層ゴム支承体40」と称する)の健全性を監視する場合について説明する。
【0014】
図2は、積層ゴム支承体40の構成を示す断面図である。
図2に示すように、積層ゴム支承体40は、積層ゴム部41及びフランジ部42を有する。
【0015】
積層ゴム部41は、ゴム状弾性板411(本体ゴム)と中間鋼板412が交互に積層され、上下両端部に連結鋼板413、414が加硫接着された構造を有する。積層ゴム部41は、例えば、四角柱状、多角柱状又は円柱状を有する柱状部材である。また、積層ゴム部41の中心には軸方向に沿う貫通孔415が設けられている。ゴム状弾性板411は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ゴムと合成樹脂との混合材料など、ゴムを主成分とする材料で形成される。なお、積層ゴム部41において、貫通孔415に対応する部分には、ゴム材又は金属プラグ(図示せず)が配置されていてもよいし、貫通孔415が形成されていなくてもよい。
【0016】
図示を省略するが、積層ゴム部41は、ゴム状弾性板411と中間鋼板412からなる積層体(符号略)の外周面を覆う、耐候性に優れた保護ゴムを有していてもよい。保護ゴムは、積層体の外周面に接着剤を塗布して貼りつけて形成してもよいし、ゴム製の自己融着テープを巻いて形成してもよい。または、保護ゴムは、ゴム状弾性板41と保護ゴム層のゴム材を同時に加硫成型することで、ゴム状弾性板411と一体化してもよい。
【0017】
フランジ部42は、上側フランジ421と下側フランジ422を有する。上側フランジ421及び下側フランジ422は、それぞれ、積層ゴム部41の上面及び下面(連結鋼板413、414)に、例えば、ボルトにより接合される。上側フランジ421及び下側フランジ422の平面形状は、例えば、矩形状、円板状、楕円状或いは多角形状等のどのような形状であってもよい。上側フランジ421の上面は建築物A1に当接し、下面の周縁部にはセンサー装置10が設置される。また、下側フランジ422の下面は基礎A2に当接し、上面の周縁部にはセンサー装置10が設置される。
【0018】
図1に示すように、免震装置監視システム1は、センサー装置10、監視装置20及び中継装置30を備える。本実施の形態では、センサー装置10と監視装置20とは、中継装置30を介して通信可能に接続されている。例えば、センサー装置10と中継装置30は、有線/無線LAN(Local Area Network)を介して接続され、中継装置30と監視装置20は、インターネットを介して接続される。
【0019】
図3は、センサー装置10のハードウェア構成を示す図である。
センサー装置10は、積層ゴム支承体40に取り付けられ、積層ゴム支承体40(積層ゴム部41)の変形を検出する。センサー装置10は、積層ゴム支承体40の軸方向(垂直方向)において異なる2箇所に取り付けられる。これにより、積層ゴム部41の変形を、相対変位から適切に検出することができる。本実施の形態では、センサー装置10は、積層ゴム支承体40の上側フランジ421及び下側フランジ422の周縁部に取り付けられる。
【0020】
図3に示すように、センサー装置10は、加速度センサー11、送信部12及び電源部13を有する。加速度センサー11及び送信部12は、電源部13からの給電を受けて動作する。センサー装置10には、汎用の振動センサーを適用することができる。
【0021】
加速度センサー11は、積層ゴム支承体40におけるセンサー装置10が取り付けられたセンサー取付部位の応答加速度を検出する。加速度センサー11は、積層ゴム支承体40の少なくとも水平方向における応答加速度を検出する。なお、加速度センサー11に代えて、ジャイロセンサー、モーションセンサー、変位センサー等、積層ゴム部41の変形に関する物理量を検出できるセンサーを適用してもよい。
【0022】
送信部12は、加速度センサー11で検出された応答加速度に基づく検出結果を、中継装置30に送信する。本実施の形態では、送信部12は、加速度センサー11で検出された応答加速度を、検出結果としてそのまま中継装置30に送信する。送信部12は、例えば、有線/無線LAN等の通信インターフェースである。また例えば、送信部12は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信用の通信インターフェースで構成されてもよい。
【0023】
電源部13は、加速度センサー11及び送信部12に給電する。
センサー装置10が有線通信型である場合は、中継装置30からセンサー装置10に対してLANケーブル等の通信線を利用して給電することができる。すなわち、電源部13は、中継装置30から受電して、センサー装置10を永続的に作動させることができる。したがって、電源部13は、加速度センサー11及び送信部12に、センサー装置10の設置直後から給電を開始してもよい。
【0024】
一方、センサー装置10が無線通信型である場合、電源部13は、通常、乾電池で構成される。この場合、通信のための配線が不要となるので、導入が容易になるが、電池寿命が問題になる。したがって、消費電力をできるだけ抑制することが好ましい。
例えば、電源部13に機械スイッチを用いて、所定大きさの地震動をトリガーとして、加速度センサー11及び送信部12への給電が開始されるように構成することで、省電力化を図ることができるとともに、地震発生時の加速度データを確実に収集することができる。
また例えば、電源部13として、振動を電気に変換して発電する発電機能付きの電源部を適用することで、センサー装置10を永続的に作動させることができ、地震発生時の加速度データを確実に収集することができる。
【0025】
監視装置20は、例えば、汎用のPCで構成され、積層ゴム支承体40の製造メーカー、ないし、免震装置の保守担当者に設置される。図示を省略するが、監視装置20は、積層ゴム支承体40だけでなく、当該製造メーカーが供給している免震装置に取り付けられたセンサー装置10から加速度データを収集し、それぞれの健全性を集約して監視する。
【0026】
監視装置20は、
図4に示すように、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)21、主記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)22及びROM(Read Only Memory)23、記憶部24、表示部25、操作入力部26、ネットワークI/F27、及び外部機器I/F28等を有する。各ユニット22~28は、システムバス29を介してCPU21に接続される。
【0027】
ROM23には、例えば、BIOS(Basic Input/Output System)、ファームウェア等の基本プログラムや、基本的な設定データが記憶される。CPU21は、記憶部24から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM22に展開し、展開したプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。本実施の形態では、CPU21は、記憶部24に記憶されている評価プログラム241を実行することにより、積層ゴム支承体40の健全性を評価する評価部として機能する。
【0028】
記憶部24は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等の補助記憶装置である。記憶部24は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc(Blu-rayは登録商標))等の光ディスク、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気ディスクを駆動して情報を読み書きするディスクドライブであってもよい。
【0029】
本実施の形態では、記憶部24は、センサー装置10から送信されてきた検出結果のデータ(ここでは、加速度データ)を記憶する。この検出結果のデータは、積層ゴム支承体40の健全性を評価する際に、必要に応じて読み出される。
【0030】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ等で構成される。表示部25は、CPU21の指示に従って、画面表示を行う。表示部25は、例えば、積層ゴム支承体40の変形履歴等を表示する。これにより、ユーザーは、積層ゴム支承体40の変形履歴を視覚的に確認することができる。
【0031】
操作入力部26は、テンキー、スタートキー等の各種操作キー、及びマウス等のポインティングデバイスを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号をCPU21に出力する。ユーザーは、操作入力部26を操作して、積層ゴム支承体40の健全性の評価開始の指示等を行うことができる。
なお、表示部25及び操作入力部26は、例えば、タッチパネル付きのフラットパネルディスプレイにより、一体的に設けられてもよい。
【0032】
ネットワークI/F27は、有線/無線LAN等の通信ネットワークを介して外部機器と通信を行うためのインターフェースである。CPU21は、ネットワークI/F27を介して、ネットワークに接続された外部機器(例えば、モデム)との間で、各種情報の送受信を行う。
【0033】
外部機器I/F28は、USB(Universal Serial Bus)等の通信バスを介して外部機器を接続するためのインターフェースである。CPU21は、外部機器I/Fに接続された外部機器との間で、各種情報の送受信を行う。
【0034】
中継装置30は、監視装置と同様に、汎用のPCで構成され、例えば、免震ピット内に設置される。なお、中継装置30は、センサー装置10と通信可能な範囲であればよく、建築物A1内に設置されてもよい。中継装置30は、センサー装置10と監視装置20との通信を中継する、いわゆるゲートウェイである。
【0035】
図5は、免震装置監視システム1で実行される免震装置監視処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、センサー装置10は、センサー取付部位の応答加速度を検出し(ステップS11)、検出結果を中継装置30に送信する(ステップS12)。センサー装置10は、例えば、加速度センサー11で検出した加速度データを検出結果として中継装置30に送信する。
【0036】
中継装置30は、例えば、有線/無線LANを介してセンサー装置10からの検出結果を受信し、インターネットを介して監視装置20に当該検出結果を送信する(ステップS13)。
このとき、中継装置30は、センサー装置10からの検出結果を、その都度、監視装置20に送信してもよいし、一時的に保存しておき、所定のタイミング(例えば、所定時間間隔)で監視装置20に送信してもよい。さらには、監視装置20からの要求に伴い、中継装置30が検出結果を送信するようにしてもよい。
【0037】
監視装置20は、中継装置30からの検出結果を受信し(ステップS14)、記憶部24に保存する(ステップS15)。
そして、監視装置20は、所定条件の成立に基づいて、積層ゴム支承体40の健全性を評価する(ステップS16)。「所定条件」とは、例えば、大地震が発生したことを示す条件であり、ユーザー操作に伴い健全性の評価が開始されてもよいし、気象庁等の気象情報提供サイトからの気象情報に基づいて、免震装置40の設置地域で大地震が発生したかを判定して健全性の評価が開始されてもよい。
【0038】
監視装置20における健全性の評価では、例えば、指定された時間帯における積層ゴム支承体40の変形履歴が表示部25に表示される。
図6Aは、2つのセンサー装置10で検出された応答加速度の差分である相対加速度の時系列変化を示し、
図6Bは、
図6Aの相対加速度の時系列変化に基づく相対変位の時系列変化を示す。
図6Bに示す相対変位の時系列変化は、例えば、
図6Aに示す相対加速度の時系列変化の2階積分により求めることができる。
【0039】
図6Bに示すように、相対変位の時系列変化を求めることで、地震動により被った最大変位や繰り返し周波数を取得することができ、積層ゴム部41の変形履歴を推定することができる。また、
図6Bにおける斜線の面積が、積層ゴム部41に内部的に蓄積される変形量(疲労)とみなすことができる。例えば、積層ゴム部41の最大変位、繰り返し周波数、又は変形量を、それぞれ所定の閾値と比較することにより、積層ゴム部41の健全性を評価することができる。
健全性が損なわれていると判定された場合には、専門技術者が現地に赴き、当該積層ゴム支承体40の保守が優先して行われる。これにより、地震後の積層ゴム支承体40の免震性能を速やかに回復することで、免震建築物Aの品質を保証することができる。
【0040】
このように、本実施の形態に係る免震装置監視システム1は、積層ゴム支承体40(免震装置)の健全性を監視する。免震装置監視システム1は、積層ゴム支承体40に取り付けられるセンサー装置10と、センサー装置10とネットワークを介して通信可能に接続される監視装置20と、を備える。
センサー装置10は、積層ゴム支承体40の変形に関する物理量(例えば、応答加速度)を検出する加速度センサー11(検出部)と、検出結果を監視装置20に送信する送信部12と、を有する。監視装置20は、センサー装置10からの検出結果を受信するネットワークI/F27(受信部)と、検出結果に基づいて、積層ゴム支承体40の変形履歴を推定し、健全性を評価する評価部(CPU21)と、を有する。
具体的には、加速度センサー11(検出部)は、積層ゴム支承体40における当該センサー装置10が取り付けられたセンサー取付部位の応答加速度を検出する。
免震装置監視システム1によれば、大地震後の積層ゴム支承体40(免震装置)の健全性を、現地に赴くことなく速やかに確認することができる。また、積層ゴム支承体40に内部的に蓄積された疲労を含めて、大地震後の積層ゴム支承体40の健全性を適正に確認することができる。
また、想定を超える変形履歴を被った際には、現地調査を必要に応じて実施することになるが、このようなケースは非常に稀と考えられる。すなわち、免震装置監視システム1により、積層ゴム支承体40の保守の省力化と、よりきめ細かな品質管理を実現することができる。
【0041】
また、免震装置監視システム1において、加速度センサー11(検出部)は、センサー取付部位の水平方向の応答加速度を検出し、評価部は、積層ゴム支承体40の水平方向の変形履歴を推定し、健全性を評価する。
これにより、地震動によって積層ゴム支承体40に主として生じる水平方向の変形に基づいて健全性が評価されるので、積層ゴム支承体40の健全性を適正に評価することができる。
【0042】
また、免震装置監視システム1において、免震装置40は、ゴム材と鋼板が交互に積層された積層ゴム支承体40であり、センサー装置10は、積層ゴム支承体40の軸方向において異なる2箇所に取り付けられ、評価部(CPU21)は、2つのセンサー装置10からの検出結果の差分に基づいて、積層ゴム支承体40の水平方向の変形履歴を推定し、健全性を評価する。
これにより、センサー取付部位間の相対変位に基づいて積層ゴム部41に生じる水平方向の変形履歴が推定されるので、積層ゴム支承体40の健全性をより適正に評価することができる。
【0043】
また、免震装置監視システム1は、積層ゴム支承体40(免震装置)の変形履歴を表示する表示部25を備える。
これにより、ユーザーは、積層ゴム支承体40の変形履歴を視覚的に確認することができる。
【0044】
また、免震装置監視システム1は、センサー装置10と監視装置20との通信を中継する中継装置を備える。
これにより、センサー装置10がインターネットを介して監視装置20と直接接続されなくてもよいので、センサー装置10として演算処理機能(CPU)のない汎用の振動センサーを利用することができる。このような汎用の振動センサーは、スマートフォンやIoT向けセンサーの普及により、比較的安価に入手することができるようになっている。
【0045】
また、免震装置監視システム1において、センサー装置10は、中継装置30と無線通信を介して接続される。
これにより、センサー装置10の取付けの自由度が高まるので、免震装置監視システム1の構築が容易になる。
【0046】
また、免震装置監視システム1において、センサー装置10は、振動を電気に変換して発電する発電機能付きの電源部13を有する。
これにより、微弱振動をエネルギー源として発電が行われるので、無線通信型のセンサー装置10を利用する場合の、電池寿命の問題を解消することができる。
【0047】
また、免震装置監視システム1において、センサー装置10は、所定大きさ以上の振動に伴い給電を開始する電源部13を有する。
これにより、健全性を評価する上で必要なときだけセンサー装置が起動し、省電力化を図ることができるので、無線通信型のセンサー装置10を利用する場合の、電池寿命の問題を解消することができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
例えば、センサー装置10は、加速度センサー11で検出された応答加速度を加工するデータ処理部を備え、送信部12は、加速度データの代わりに、検出結果として加工後の速度データ又は変位データを監視装置20に送信するようにしてもよい。
また例えば、中継装置30は、センサー装置10からの加速度データを加工して、加工後の速度データ又は変位データを監視装置20に送信するようにしてもよい。
【0050】
実施の形態では、積層ゴム支承体40にセンサー装置10を取り付けた場合について説明したが、その他の免震装置(例えば、すべり支承型積層ゴム、鉛ダンパー等)にセンサー装置を取り付けることで、これらの健全性を監視することができる。
【0051】
実施の形態では、積層ゴム支承体40の上側フランジ421及び下側フランジ422にセンサー装置10を取り付けた場合について説明したが、センサー装置10は鉛直方向に異なる2箇所に取り付けられていれば、積層ゴム部41の相対変位を検出することができる。また、センサー装置10は、1つの免震装置に対して3個以上取り付けられてもよいし、正確性は低下するが1個でも健全性を評価することができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 免震装置監視システム
10 センサー装置
11 加速度センサー(検出部)
12 送信部
13 電源部
20 監視装置
21 CPU(評価部)
22 RAM
23 ROM
24 記憶部
25 表示部
26 操作入力部
27 ネットワークI/F
28 外部機器I/F
40 積層ゴム支承体(免震装置)
A 免震建築物
A1 建築物(上部構造物)
A2 基礎(下部構造物)