(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び実装基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
H01G4/30 201P
H01G4/30 511
(21)【出願番号】P 2018220900
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】須賀 康友
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 翔太
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-233696(JP,A)
【文献】特開2009-049319(JP,A)
【文献】特開2017-152620(JP,A)
【文献】特開2017-147429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された内部電極と、前記第1方向に向いた主面と、前記第1方向に直交する第2方向に向いた第1側面と、前記主面及び前記第1側面の間を接続し凸状に湾曲する稜部と、を有し、前記第1方向における第1寸法が120μm以下である、セラミック素体
を具備し、
前記稜部が、
前記セラミック素体の前記第1方向に沿った断面において前記稜部の前記第1方向の寸法Raと前記第2方向の寸法RbとがRb/Ra>3.0の条件を満たす
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素体は、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に向いた第2側面をさらに有し、前記第2方向における第2寸法が、前記第1寸法の2倍以上であって前記第3方向における第3寸法以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1寸法に対するRaの比が、0.1以上0.3以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記稜部が、さらにRb/Ra<5.0の条件を満たすように湾曲する
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記稜部が、さらにRb/Ra<4.0の条件を満たすように湾曲する
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1寸法が、80μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記第1寸法が、40μm以上60μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品を実装した、
実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低背型の積層セラミック電子部品及びそれを実装した実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴って、積層セラミック電子部品の低背化が求められている。特許文献1には、例えばセラミック本体の厚さが120μm以下である積層セラミックキャパシタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、積層セラミック電子部品では、部品同士の衝突や外部からの衝撃に起因する部品の欠損を抑制するために、セラミック素体に対してバレル研磨等によって面取り加工が行われる。積層セラミック電子部品が低背型の場合、セラミック素体の表面と内部電極の距離が近いため、部品の欠損不良を確実に防止できるような面取り加工を行うことが難しかった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、欠損不良を防止できる積層セラミック電子部品及びそれを実装した実装基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体を具備する。
上記セラミック素体は、第1方向に積層された内部電極と、上記第1方向に向いた主面と、上記第1方向に直交する第2方向に向いた第1側面と、上記主面及び上記第1側面の間を接続し凸状に湾曲する稜部と、を有し、上記第1方向における第1寸法が120μm以下である。
上記稜部は、
上記セラミック素体の上記第1方向に沿った断面において、上記稜部の上記第1方向の寸法Raと上記第2方向の寸法RbとがRb/Ra>3.0の条件を満たす。
【0007】
この構成では、厚みの薄い低背型の積層セラミック電子部品において、稜部を、楕円弧に近い形状で湾曲させることができる。これにより、セラミック素体が薄い場合であっても稜部が十分に丸みを帯び、外部からの衝撃に対する稜部の欠損不良を防止できる。
【0008】
上記セラミック素体は、
上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向に向いた第2側面をさらに有し、上記第2方向における第2寸法が、上記第1寸法の2倍以上であって上記第3方向における第3寸法以下であってもよい。
これにより、積層セラミック電子部品を、さらに厚みが薄く扁平な形状で構成でき、小型化することができる。
【0009】
上記積層セラミック電子部品では、上記第1寸法に対するRaの比が、0.1以上0.3以下であってもよい。
これにより、稜部の大きさを適度に規制し、セラミック素体の表面と内部電極との距離を十分に確保することができる。これにより、積層セラミック電子部品の耐環境性を高め、信頼性を良好にすることができる。
【0010】
上記稜部が、さらにRb/Ra<5.0の条件を満たすように湾曲してもよく、さらにRb/Ra<4.0の条件を満たすように湾曲してもよい。
これにより、主面全体が丸みを帯びることを防止し、実装時に主面でなく周面が垂直方向に向くように回ってしまう不良を防止できる。
【0011】
好ましくは、上記第1寸法が、80μm以下であってもよく、さらに上記第1寸法が、40μm以上60μm以下であってもよい。
これにより、積層セラミック電子部品をさらに低背に構成することができる。
【0012】
さらに、本発明の他の実施形態に係る実装基板は、上記積層セラミック電子部品を実装していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、欠損不良を防止できる積層セラミック電子部品及びそれを実装した実装基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造装置を示す図であり、Aが側面図、Bが平面図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0016】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、2つの外部電極14と、を具備する。外部電極14はそれぞれ、セラミック素体11の表面に形成されている。
【0018】
セラミック素体11は、Y軸方向を向いた2つの第1側面11bと、X軸方向を向いた2つの第2側面11aと、Z軸方向を向いた2つの主面11cと、主面11cと第1側面11bとの間を接続する稜部11eと、を有する。側面11a,11b及び主面11cは、例えば、段差などを含まない一様な面で構成されている。
【0019】
稜部11eは、凸状に湾曲する曲面で構成される。稜部11eの詳細な構成については、後述する。
【0020】
積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向の外部電極14を含む寸法T'は、例えば150μm以下であり、低背型に構成されている。セラミック素体11のZ軸方向の高さ寸法Tは、120μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、例えば40μm以上60μm以下であってもよい。これにより、積層セラミックコンデンサ10を小型化することができる。
【0021】
セラミック素体11のX軸方向の寸法Lは、例えば0.2mm~2.0mm、Y軸方向の寸法Wは、例えば0.2mm~2.0mmである。なお、積層セラミックコンデンサ10の各寸法は、各方向に沿って最も大きい部分の寸法とする。セラミック素体11は、本実施形態において、寸法Wが寸法L以上であり、例えばY軸方向に長手を有する。
【0022】
本実施形態において、セラミック素体11のX軸方向の寸法Lは、セラミック素体11のZ軸方向における寸法Tの2倍以上であって、Y軸方向における寸法W以下である。つまり、寸法L及び寸法Wのうち、最小となる方の寸法を寸法Tの2倍以上とすることができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10を扁平な形状に構成でき、より小型化することができる。
【0023】
セラミック素体11は、容量形成部16と、カバー部17と、サイドマージン部18と、を有する。容量形成部16は、セラミック素体11のY軸及びZ軸方向における中央部に配置されている。カバー部17は容量形成部16をZ軸方向から覆い、サイドマージン部18は容量形成部16をY軸方向から覆っている。
【0024】
より詳細に、カバー部17は、容量形成部16のZ軸方向両側にそれぞれ配置されている。サイドマージン部18は、容量形成部16のY軸方向両側にそれぞれ配置されている。カバー部17及びサイドマージン部18は、主に、容量形成部16を保護するとともに、容量形成部16の周囲の絶縁性を確保する機能を有する。
【0025】
容量形成部16は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、がセラミック層15(
図3参照)を介してZ軸方向に積層されている。内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0026】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。
【0027】
図2に示すように、内部電極12,13は、2つの第2側面11aにそれぞれ形成された外部電極14と接続される。第1内部電極12は、例えばセラミック素体11の第2側面11aの一方に引き出され、一方の外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、第2側面11aの他方に引き出され、他方の外部電極14に接続されている。
【0028】
セラミック層15は、誘電体セラミックスによって形成されている。積層セラミックコンデンサ10では、内部電極12,13間の各セラミック層15の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0029】
また、上記誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム系以外にも、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などであってもよい。
【0030】
カバー部17及びサイドマージン部18も、誘電体セラミックスによって形成されている。カバー部17及びサイドマージン部18を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、容量形成部16と同様の組成系の材料を用いることより、製造効率が向上するとともに、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0031】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14の間に電圧が印加されると、容量形成部16において内部電極12,13の間の複数のセラミック層15に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14の間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0032】
[稜部11eの構成]
図4は、
図3の拡大図であり、稜部11eの構成を示す。稜部11eは、第1側面11bと主面11cとの間に形成される。
【0033】
稜部11eは、セラミック素体11のZ軸方向に沿った断面において、稜部11eのZ軸方向の寸法RaとY軸方向の寸法RbとがRb/Ra>3.0の条件を満たす。
【0034】
稜部11eのZ軸方向の寸法Raと、稜部11eのY軸方向の寸法Rbとは、第1側面11bと接しZ軸方向に延びる第1接線Laと、主面11cと接しY軸方向に延びる第2接線Lbと、を用いて、以下のように表される。
寸法Raは、第1接線Laとの接点である稜部11eの第1端部Paと、第1接線La及び第2接線Lbの交点Sとの距離とする。
寸法Rbは、第2接線Lbとの接点である稜部11eの第2端部Pbと、交点Sとの間の距離とする。
【0035】
稜部11eについての寸法Ra及び寸法Rbの測定は、Z軸方向にセラミック素体11を切断する任意の断面において測定することができる。一例として、稜部11eについてのRa及びRbの測定は、第1側面11bをX軸方向に2等分する位置においてZ軸方向にセラミック素体11を切断する断面において測定できる。
【0036】
稜部11eがこのような形状に湾曲することで、稜部11eがY軸方向に長径を有する楕円弧に近い形状で湾曲する。つまり、セラミック素体11の形状が扁平であっても、稜部11eがそれに応じて扁平な形状で湾曲する。したがって、十分に丸みを帯びた形状の稜部11eを形成でき、部品同士や外部からの衝撃によるセラミック素体11の欠損不良を防止することができる。
【0037】
さらに、Rb/Ra<5.0であるとよい。これにより、主面11c全体が丸みを帯びることを抑制でき、積層セラミックコンデンサ10の姿勢を安定させることができる。したがって、例えば、実装時に主面11cを配線基板の実装面と平行に実装しようとした場合に、積層セラミックコンデンサ10がバランスを崩して主面11cが実装面と直交するように積層セラミックコンデンサ10が立ってしまう実装不良を防止することができる。また、複数の積層セラミックコンデンサ10をZ軸方向に積載することが可能となり、運搬時や保管時における取り扱いを容易にすることができる。このような観点から、Rb/Ra<4.0であるとより好ましい。
【0038】
また、素体高さ寸法Tに対するRaの比が、0.1以上0.3以下であるとよい。これにより、丸みを帯びた稜部11eの大きさを適度に規制し、セラミック素体11の表面と内部電極12,13との距離を十分に確保することができる。したがって、積層セラミックコンデンサ10の耐湿性等の耐環境性を高め、信頼性を良好にすることができる。
【0039】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図6~9は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図5に沿って、
図6~9を適宜参照しながら説明する。
【0040】
(ステップS01:未焼成のセラミック素体作製)
ステップS01では、容量形成部16を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部17を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。そして、
図6に示すように、これらのセラミックシート101,102,103を積層し、未焼成のセラミック素体111を作製する。
【0041】
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とし、有機バインダ等を含む未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。内部電極112,113は、例えば印刷法により形成される。
【0042】
セラミックシート101,102において、内部電極112,113のY軸方向周縁には、内部電極112,113が形成されていない、サイドマージン部18に対応する領域が設けられている。第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0043】
図6に示すように、未焼成のセラミック素体111では、セラミックシート101,102が交互に積層され、そのZ軸方向上下面にカバー部17に対応する第3セラミックシート103が積層される。未焼成のセラミック素体111は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。なお、セラミックシート101,102,103の枚数は
図6に示す例に限定されない。
【0044】
内部電極112,113が形成されたセラミックシート101,102と、カバー部17に対応するセラミックシート103とで、材料の組成が異なっていてもよい。具体的には、セラミックシート103が、セラミックシート101,102よりも低い密度で構成されていてもよい。これにより、後述するバレル研磨工程において、カバー部17に対応する領域がより研磨されやすくなり、上記構成の稜部11eを形成しやすくなる。
【0045】
本ステップにより、
図7に示すような、主面111cと、第1側面111bと、第2側面111aと、稜部111eと、を有する未焼成のセラミック素体111が作製される。この段階では、セラミック素体111の稜部111eは角ばった状態である。
【0046】
なお、以上では1つのセラミック素体11に相当する未焼成のセラミック素体111について説明したが、実際には、個片化されていない大判のシートとして構成された積層シートが形成され、セラミック素体111ごとに個片化される。
【0047】
(ステップS02:バレル研磨)
ステップS02では、未焼成のセラミック素体111をバレル研磨する。
【0048】
図8は、本ステップで用いられるバレル装置200の構成例を示す図であり、
図8(A)は側面図、
図8(B)は平面図である。バレル装置200は、例えば駆動部(図示せず)に接続された回転可能な円板202と、円板202に偏心して配置された複数のバレル容器201と、を備える。バレル容器201は、例えば、角柱形状、円柱形状等で構成される。バレル容器201は、図示しない回転軸を含み、当該軸まわりに回転(自転)可能に構成されていてもよい。
【0049】
本ステップでは、バレル容器201内に、未焼成のセラミック素体111と研磨液等を投入する。円板202が回転することにより、バレル容器201に遠心力が作用する。これにより、セラミック素体111がバレル容器201の内壁等と衝突し、衝突しやすい稜部111eが削られ、凸状に湾曲した稜部111eが形成される。バレル研磨の時間は、例えば1~60分程度とすることができる。
【0050】
研磨液は特に限定されないが、例えばセラミックシート101,102,103に含まれる有機バインダ等に難溶な水を用いることができる。
【0051】
バレル容器201内には、未焼成のセラミック素体111及び研磨液の他、さらに、メディアを投入してもよい。メディアを投入することにより、セラミック素体111は、メディアとも接触しながら流動する。これにより、より効率よく研磨を行うことができる。
【0052】
メディアは、例えばアルミナやジルコニア等の金属酸化物を含む。メディアは、例えば球状に構成される。メディアが球状の場合の径は、例えば素体高さ寸法Tの0.1~0.3倍程度とすることができる。これにより、曲面を有する稜部11eを形成しやすくなる。
【0053】
本ステップにより、
図9に示すように、稜部111eが丸みを帯び、凸状の曲面が形成されたセラミック素体111が作製される。なお、このような曲面は、第1側面111bと主面111cとの間に加えて、第2側面111aと主面111cとの間にも形成されてもよい。
【0054】
(ステップS03:焼成)
ステップS03では、ステップS02で得られた未焼成の素体111を焼成することにより、
図1~4に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。焼成は例えば還元雰囲気下、あるいは、低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0055】
(ステップS04:外部電極形成工程)
ステップS04では、ステップS03で得られたセラミック素体11に外部電極14を形成する。
【0056】
ステップS04では、例えば、セラミック素体11の第2側面11aを覆うように下地膜としての導電性薄膜を形成する。導電性薄膜は、塗布された導電性ペーストを焼き付けた膜であってもよいし、スパッタ法等の薄膜形成法により形成されたものでもよい。あるいは、導電性薄膜は、導電性ペーストを焼き付けた膜と、スパッタ法等により形成された薄膜との双方を含んでいてもよい。この導電性薄膜を下地膜として、電解メッキ等のメッキ処理を行う。これにより、外部電極14が形成される。
【0057】
以上により、
図1~4に示す積層セラミックコンデンサ10が製造される。
【0058】
さらに、このような積層セラミックコンデンサ10は、外部電極14が回路基板上に半田等によって接合されてもよい。これにより、積層セラミックコンデンサ10を実装した実装基板が製造される。
【0059】
[実施例及び比較例]
本実施形態の実施例及び比較例として、上記製造方法により、素体高さ寸法及び稜部の曲面の形状を変えた積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。各サンプルのX軸方向の寸法Lは1.0mm、Y軸方向の寸法Wは0.5mmとした。これらのサンプルの素体高さ寸法Tを、表1に示す。また、各サンプルの第2側面を
図1のB-B'線に沿って(X軸方向にほぼ2等分した位置で)切断し、その断面においてRa,Rbの値を測定した。測定されたRa,Rbの値を表1に示す。
【0060】
【0061】
続いて、測定されたRa,Rbの値から、Ra/Rbを算出した。表1に示すように、実施例1~4のサンプルでは、Ra/Rbがそれぞれ3.65,3.32,3.41,3.57であり、いずれも3.0以上であった。一方、比較例1~5のサンプルでは、Ra/Rbがそれぞれ2.17,2.32,2.72,2.50,1.91であり、いずれも3.0未満であった。なお、これらの測定値及び以下に示す結果は、各実施例及び各比較例について50個のサンプルの平均値とした。
【0062】
また、測定されたRa及び素体高さ寸法Tから、素体高さ寸法Tに対するRaの比の値を算出した。表1に示すように、実施例1及び2並びに比較例1~5のサンプルでは、上記比の値がいずれも0.1以上0.3以下の値であったが、実施例3及び4のサンプルでは、上記比の値が、それぞれ0.32,0.40であり、0.3よりも大きかった。
【0063】
これらの各サンプルに対し、目視による外観検査を行い、セラミック素体の欠損不良の有無を評価した。結果を、表1に示す。
【0064】
Ra/Rbが3.0以上の実施例1~4では、いずれも製品の一部が欠ける欠損不良率は0%であった。一方で、Ra/Rbが3.0未満の比較例1~5では、それぞれ欠損不良率が80%、50%、10%、15%及び30%であり、欠損不良のサンプルが見受けられた。
【0065】
この結果から、Ra/Rbを3.0以上とすることにより、欠損不良を防止できることが確認された。
【0066】
続いて、信頼性試験として、過酷な環境下(85℃、湿度85%及び印加電圧10V)でショートの有無を検出する、耐湿試験を行った。
【0067】
その結果、素体高さ寸法Tに対するRaの比が0.1以上0.3以下である実施例1及び2並びに比較例1~5のサンプルでは、いずれもショートの発生率が0%であった。一方で、上記比が0.3よりも大きい実施例3及び4のサンプルでは、ショートの発生率がそれぞれ5%及び20%であり、過酷な環境下においてショートが発生するサンプルが見受けられた。このことから、素体高さ寸法Tに対するRaの比を0.1以上0.3以下とすることで、耐環境性が高く、信頼性の高い製品を得られることが確認された。
【0068】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0069】
凸状に湾曲する稜部11eは、第1側面11bと主面11cとの間に加え、第2側面11aと主面11cとの間の双方に形成されてもよい。
【0070】
上記実施形態では、Y軸方向がセラミック素体11の長手方向であると説明したが、これに限定されず、寸法Lが寸法Wよりも大きく、X軸方向が長手方向でもよい。
【0071】
また、内部電極12,13の引き出し方向もX軸方向に限定されない。
【0072】
ステップS02のバレル研磨は、未焼成のセラミック素体111に対して行われる態様に限定されず、例えば焼成後のセラミック素体11に対して行われてもよい。あるいは、未焼成のセラミック素体111に対して第1のバレル研磨工程が行われた後、焼成後のセラミック素体11に対して第2のバレル研磨工程が行われてもよい。
【0073】
また、上記のステップS04における処理の一部を、ステップS03の前に行ってもよい。例えば、ステップS03の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に導電性ペーストを塗布し、ステップS03において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、導電性ペーストを焼き付けて外部電極14の下地層を形成してもよい。また、脱バインダ処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0074】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明はセラミック層と内部電極とが積層された積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0075】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
11c…主面
11a…第1側面
11b…第2側面
11e…稜部
12,13…内部電極
14…外部電極