(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】安定度判定装置及び安定度判定方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20221118BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221118BHJP
【FI】
G06T7/70 Z
G06T7/00 350C
(21)【出願番号】P 2018229675
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】山中 將暢
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088979(JP,A)
【文献】特開2016-147330(JP,A)
【文献】特開2015-106849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70
G06T 7/00
G06T 1/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路により供給された物体に対して作業を行うロボットシステムに設けられる安定度判定装置であって、
供給される物体毎に得られる画像から複数の物体の位置及び姿勢のうちの少なくとも一方である位置姿勢を推定し、
複数の物体毎に対応する複数の推定結果から物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を取得する指標取得部と、
前記指標取得部により取得された指標から、物体の位置姿勢の安定度を算出する安定度算出部と、
前記安定度算出部により算出された安定度を示す情報を提示する安定度提示部と
を備え、
前記指標取得部は、
画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された画像から、物体を示す領域である物体領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域抽出部により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体の位置及び再現性のある一意の方向に基づく当該物体の姿勢のうちの少なくとも一方を推定する位置姿勢推定部と、
前記位置姿勢推定部による複数の推定結果から、物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を算出する指標算出部とを有し、
前記領域抽出部は、閾値処理によって画像から前記搬送路を示す領域を抽出し、当該領域に対して領域の穴埋めを行った領域を抽出し、両領域の差分をとることで物体領域を抽出する
ことを特徴とする安定度判定装置。
【請求項2】
前記指標算出部は、物体の位置の安定度を評価するための指標として、物体毎の位置と基準位置との間の距離である乖離距離の平均値、及び、複数の物体の位置の分散のうちの少なくとも一方を算出する
ことを特徴とする請求項
1記載の安定度判定装置。
【請求項3】
前記指標算出部は、物体の姿勢の安定度を評価するための指標として、物体毎の姿勢を示す方向と基準方向との間の角度である乖離角度の平均値、及び、複数の物体の姿勢を示す方向の分散のうちの少なくとも一方を算出する
ことを特徴とする請求項
1記載の安定度判定装置。
【請求項4】
前記安定度算出部は、前記指標取得部により取得された指標に係数を乗じた多項式によって安定度を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のうちの何れか1項記載の安定度判定装置。
【請求項5】
前記安定度算出部は、機械学習を行った学習済みの学習器を用いて安定度を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のうちの何れか1項記載の安定度判定装置。
【請求項6】
搬送路により供給された物体に対して作業を行うロボットシステムに設けられる安定度判定装置による安定度判定方法であって、
指標取得部が、
供給される物体毎に得られる画像から複数の物体の位置及び姿勢のうちの少なくとも一方である位置姿勢を推定し、
複数の物体毎に対応する複数の推定結果から物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を取得するステップと、
安定度算出部が、前記指標取得部により取得された指標から、物体の位置姿勢の安定度を算出するステップと、
安定度提示部が、前記安定度算出部により算出された安定度を示す情報を提示するステップと
を有し、
前記指標取得部は、
画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された画像から、物体を示す領域である物体領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域抽出部により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体の位置及び再現性のある一意の方向に基づく当該物体の姿勢のうちの少なくとも一方を推定する位置姿勢推定部と、
前記位置姿勢推定部による複数の推定結果から、物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を算出する指標算出部とを有し、
前記領域抽出部は、閾値処理によって画像から前記搬送路を示す領域を抽出し、当該領域に対して領域の穴埋めを行った領域を抽出し、両領域の差分をとることで物体領域を抽出する
ことを特徴とする安定度判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体の位置姿勢の安定度を判定する安定度判定装置及び安定度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テンプレートマッチングという手法を用いて、画像から、対象である物体の位置(x、y)及び姿勢(θ)を推定する2次元位置姿勢推定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この2次元位置姿勢推定装置では、物体のモデル(テンプレート)を予め登録し、画像とテンプレートとの間の画像特徴の一致度を評価することで、画像上での物体の位置及び姿勢を推定する。
そして、ロボットシステムでは、2次元位置姿勢推定装置により推定された物体の位置及び姿勢に基づいて、コンベア等の搬送路により供給された物体に対して各種作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、搬送路への物体の供給は、例えば箱詰めで送られた物体を作業員が手で搬送路に移すことで行う場合が多い。この場合、物体の位置及び姿勢にバラつきが生じる。
これに対し、上記のロボットシステムでは、物体の位置及び姿勢の多少のバラつきに対してロバストな動作が可能である。一方で、徹底的な合理化を促進するためには、物体の位置姿勢の安定度を検出し、物体の位置姿勢のバラつきを可能な限り少なくすることが望ましい。なお、物体の位置姿勢とは、物体の位置及び姿勢のうちの少なくとも一方を意味する。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、物体の位置姿勢の安定度を判定可能な安定度判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る安定度判定装置は、搬送路により供給された物体に対して作業を行うロボットシステムに設けられる安定度判定装置であって、供給される物体毎に得られる画像から複数の物体の位置及び姿勢のうちの少なくとも一方である位置姿勢を推定し、複数の物体毎に対応する複数の推定結果から物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を取得する指標取得部と、指標取得部により取得された指標から、物体の位置姿勢の安定度を算出する安定度算出部と、安定度算出部により算出された安定度を示す情報を提示する安定度提示部とを備え、指標取得部は、画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された画像から、物体を示す領域である物体領域を抽出する領域抽出部と、領域抽出部により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体の位置及び再現性のある一意の方向に基づく当該物体の姿勢のうちの少なくとも一方を推定する位置姿勢推定部と、位置姿勢推定部による複数の推定結果から、物体の位置姿勢の安定度を評価するための指標を算出する指標算出部とを有し、領域抽出部は、閾値処理によって画像から搬送路を示す領域を抽出し、当該領域に対して領域の穴埋めを行った領域を抽出し、両領域の差分をとることで物体領域を抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、物体の位置姿勢の安定度を判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る安定度判定装置を備えロボットピッキングシステムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る安定度判定装置の構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る安定度判定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1における画像取得部により取得された画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5A~
図5Cは、実施の形態1における領域抽出部による動作を説明するための図である。
【
図6】
図6A、
図6Bは、実施の形態1における位置推定部及び姿勢推定部による動作を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1における位置指標算出部により算出される指標を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1における姿勢指標算出部により算出される指標を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る安定度判定装置3を備えたロボットピッキングシステムの構成例を示す図である。
安定度判定装置3は、例えば、FA(ファクトリーオートメーション)等における物体11のピッキング動作等の各種作業を行うロボットシステムに設けられる。以下では、一例として、安定度判定装置3をロボットピッキングシステムに搭載した場合を示す。
【0010】
ロボットピッキングシステムは、例えば、工場の生産ライン等に配置され、搬送路12により供給された物体11のピッキングを行う。なお、搬送路12により供給される物体11は重ならずに配置されているものとする。このロボットピッキングシステムは、
図1に示すように、ロボット1、カメラ(撮像装置)2及び安定度判定装置3を備えている。
【0011】
ロボット1は、アームの先端にエンドエフェクタ101(
図1ではハンド)を有し、このエンドエフェクタ101を用いて物体11のピッキングを行う。
【0012】
カメラ2は、例えばエンドエフェクタ101に取付けられ、撮像領域を撮像して画像を得る。このカメラ2により得られた画像を示すデータ(画像データ)は安定度判定装置3に出力される。また、カメラ2の取付け位置は、エンドエフェクタ101に限られない。
なお、カメラ2により得られる画像は、撮像領域に物体11が存在する場合に、その物体11を示す領域(物体領域)とその他の領域(背景領域)とを判別可能な画像であればよく、その形式は問わない。カメラ2は、例えば2次元画像を得てもよい。この2次元画像としては、一般的にはカラー又はモノクロの可視画像が挙げられるが、これに限らず、可視画像では上記の判別が容易ではない場合には、近赤外線画像又はマルチスペクトル画像等の特殊な2次元画像を用いてもよい。また、カメラ2は、物体11にある程度の奥行きがある場合には、距離画像を得てもよい。
【0013】
安定度判定装置3は、カメラ2により得られた複数の画像から、搬送路12により供給される物体11の位置姿勢の安定度を判定する。この安定度判定装置3は、
図2に示すように、指標取得部301、安定度算出部302及び安定度提示部303を備えている。なお、安定度判定装置3は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0014】
指標取得部301は、カメラ2により得られた複数の画像から複数の物体11の位置姿勢を推定し、推定結果から物体11の位置姿勢の安定度を評価するための指標を取得する。この指標取得部301は、
図2に示すように、画像取得部304、領域抽出部305、位置推定部306、姿勢推定部307、位置指標算出部308及び姿勢指標算出部309を有している。
【0015】
画像取得部304は、カメラ2により得られた画像を取得する。
【0016】
領域抽出部305は、画像取得部304により取得された画像から、画像処理によって物体領域を抽出する。すなわち、領域抽出部305は、上記画像から、コントラストの変化の度合いに基づいて、物体領域を抽出する。領域抽出部305による物体領域の抽出手法としては、例えば閾値処理又は背景差分法等が考えられるが、物体領域と背景領域とを判別して物体領域を抽出可能な手法であれば特に制限はない。
【0017】
位置推定部306は、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体11の位置を推定する。なお、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域は、当該物体領域、当該物体領域を凸包した領域、当該物体領域を幾何学形状で近似した領域、当該物体領域を幾何学形状で包含した最小の領域、又は、当該物体領域を幾何学形状で外接した最小の領域のうちの1つ以上の領域を含む。幾何学形状としては、矩形又は楕円等が挙げられる。また、再現性のある一意の点とは、物体11の姿勢に依存せずに一意に定まる点である。
位置推定部306は、例えば、再現性のある一意の点として領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域の図心を用い、当該図心と任意に設定した画像上の基準点との相対関係に基づいて物体11の位置を推定する。画像上の基準点としては、例えば画像の中心点が挙げられる。
【0018】
姿勢推定部307は、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の方向に基づく物体11の姿勢を推定する。
姿勢推定部307は、例えば、再現性のある一意の方向として領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域の長軸方向を用い、当該長軸方向と任意に設定した基準方向との相対関係に基づいて、物体11の姿勢を推定する。基準方向としては、例えば画像の水平方向が挙げられる。
【0019】
なお
図2では、指標取得部301が、位置推定部306及び姿勢推定部307の両方を有する場合を示した。しかしながら、これに限らず、指標取得部301は、位置推定部306及び姿勢推定部307のうちの少なくとも一方を有していればよい。
【0020】
また、位置推定部306及び姿勢推定部307は、「領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体11の位置及び再現性のある一意の方向に基づく物体11の姿勢のうちの少なくとも一方を推定する位置姿勢推定部」を構成する。
【0021】
位置指標算出部308は、位置推定部306による複数の推定結果から、物体11の位置の安定度を評価するための指標を算出する。位置指標算出部308は、上記指標として、例えば、物体11毎の乖離距離の平均値及び複数の物体11の位置の分散のうちの少なくとも一方を算出する。乖離距離は、物体11の位置と基準位置との間の距離である。基準位置としては、例えば基準となる図心(基準図心)が用いられる。
【0022】
なお、指標取得部301が位置推定部306を有していない場合には、位置指標算出部308は不要である。
【0023】
姿勢指標算出部309は、姿勢推定部307による複数の推定結果から、物体11の姿勢の安定度を評価するための指標を算出する。姿勢指標算出部309は、上記指標として、例えば、物体11毎の乖離角度の平均値及び複数の物体11の姿勢を示す方向の分散のうちの少なくとも一方を算出する。乖離角度は、物体11の姿勢を示す方向と基準方向との間の角度である。基準方向としては、例えば基準となる長軸方向(基準長軸方向)が用いられる。
【0024】
なお、指標取得部301が姿勢推定部307を有していない場合には、姿勢指標算出部309は不要である。
【0025】
また、位置指標算出部308及び姿勢指標算出部309は、「位置姿勢推定部による複数の推定結果から、物体11の位置姿勢の安定度を評価するための指標を算出する指標算出部」を構成する。
【0026】
なお、指標取得部301は、取得する指標として、物体11の位置の安定度を評価するための指標及び物体11の姿勢の安定度を評価するための指標に加え、更に別の指標を含めてもよい。例えば、指標取得部301は、取得する指標として、物体11の3次元的な向きの安定度を評価するための指標を含めてもよい。すなわち、指標取得部301は、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域が、搬送路12に物体11が正しい向きに置かれた場合での物体領域に基づく領域のサイズに対して大きく異なる場合、搬送路12に置かれた向きが異なると判定でき、その判定結果から指標を得てもよい。
【0027】
安定度算出部302は、指標取得部301により取得された指標から、搬送路12により供給される物体11の位置姿勢の安定度を算出する。
なお、安定度算出部302は、例えば、指標取得部301により取得された指標に係数を乗じた多項式によって安定度を算出する。又は、安定度算出部302は、機械学習を行った学習済みの学習器を用いて安定度を算出する。
【0028】
安定度提示部303は、安定度算出部302により算出された安定度を示す情報を、モニタ(不図示)に提示する。
【0029】
次に、
図2に示す安定度判定装置3の動作例について、
図3を参照しながら説明する。
一般的に、物体11の姿勢を表現する場合、オイラー角(α,β,γ)及び四元数(w,x,y,z)に代表されるように、ある基準からの回転量(角度)で表現する場合が多い。この場合、物体11自体はその基準を持っていないため、ユーザは、任意に基準を設定する必要がある。また、基準の設定に関しては特に制限はない。よって、姿勢推定部307は、物体領域に基づく領域から再現性のある一意の方向を導出することで、基準となるテンプレートを用いずに物体11の姿勢が表現可能である。
また、画像上で物体11の姿勢を表現する場合、主にZ軸(カメラ2の光軸方向)周りの回転量で表現する場合が多い。よって、Z軸周りに回転対称な形状を有する物体11に対しては、姿勢の表現が不可能(不必要)である。このことから、画像上での姿勢推定が必要な物体11は、形状に何らかの幾何学的特徴を有するものに限定される。そして、物体11として形状に何らかの幾何学的特徴を有するものを想定した場合、その物体領域に基づく領域の長軸方向は一意に定まる。そこで、以下では、姿勢推定部307は長軸方向を用いることで物体11の姿勢を表現する。
また、物体11の位置に関しても同様であり、位置推定部306は、物体領域に基づく領域から再現性のある一意の点を導出することで、基準となるテンプレートを用いずに物体11の位置を表現可能となる。また、物体領域に基づく領域の図心は一意に定まる特徴点であるため、以下では、位置推定部306は図心を用いることで物体11の位置を表現する。
【0030】
そして、実施の形態1に係る安定度判定装置3では、上記のように表現された物体11の位置姿勢を入力情報として用いることで、搬送路12により供給される物体11の位置姿勢の安定度を判定する。
【0031】
この実施の形態1に係る安定度判定装置3の動作例では、
図3に示すように、まず、画像取得部304は、カメラ2により得られた画像を取得する(ステップST1)。
【0032】
次いで、領域抽出部305は、画像取得部304により取得された画像から、画像処理によって物体領域を抽出する(ステップST2)。ここでは、領域抽出部305は、閾値処理によって画像から物体領域を抽出するものとする。画像取得部304により例えば
図4に示すような画像が取得されたとする。この画像には、物体11、搬送路12及びその他の背景が含まれている。実施の形態1に係る安定度判定装置3では、テンプレートを用意しないため、画像から物体領域を直接抽出することは容易ではない。そこで、領域抽出部305は、まず、例えば
図5Aに示すように、閾値処理によって画像から搬送路12を示す領域(
図5Aに示すグレーの領域)501を抽出することが望ましい。そして、領域抽出部305は、搬送路12を示す領域501と、当該領域に対してクロージング処理等で領域の穴埋めを行った領域(
図5Bに示すグレーの領域)502との差分をとることで、物体領域(
図5Cに示すグレーの領域)503が抽出可能である。
【0033】
次いで、位置推定部306は、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体11の位置を推定する(ステップST3)。ここでは、位置推定部306は、再現性のある一意の点として上記領域の図心を用い、当該図心と任意に設定した画像上の基準点との相対関係に基づいて物体11の位置を推定する。
【0034】
具体的には、位置推定部306は、まず、再現性のある一意の点として領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域の図心を導出する。ここで、上記領域を構成する点の座標が(u
i,v
i)(i,j=1,・・・,N)で表される場合、位置推定部306は、当該領域の0次モーメント及び1次モーメントを用いて、下式(1)~(4)から、当該領域の図心を導出する。なお、Nは上記領域を構成する点の個数である。また、式(1)~(4)において、m
00は上記領域の0次モーメントを表し、(m
10,m
01)は当該領域の1次モーメントを表し、(u(バー),v(バー))は当該領域の図心を表す。
【0035】
そして、位置推定部306は、導出した領域の図心及び基準点に基づいて、下式(5)から物体11の位置を推定する。なお、式(5)において、(u
0,v
0)は基準点を表し、(x,y)は物体11の位置を表す。
【0036】
また、姿勢推定部307は、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の方向に基づく物体11の姿勢を推定する(ステップST4)。ここでは、姿勢推定部307は、再現性のある一意の方向として上記領域の長軸方向を用い、当該長軸方向と任意に設定した基準方向との相対関係に基づいて物体11の姿勢を推定する。
【0037】
具体的には、基準方向が画像上の水平方向である場合、姿勢推定部307は、上記領域の2次モーメント及び当該領域の図心に基づいて、下式(6)~(9)から、長軸方向の水平方向からの回転角度を導出することで物体11の姿勢を推定する。式(6)~(9)において、(m
20,m
02,m
11)は上記領域の2次モーメントを表し、θは回転角度を表す。
【0038】
例えば、領域抽出部305が
図5Cに示すような物体領域503を抽出したとする。また、位置推定部306及び姿勢推定部307が用いる領域が、
図6Aに示すように物体領域503を包含する最小の矩形領域601であるとする。この場合、位置推定部306により導出される図心602及び姿勢推定部307により導出される長軸方向603は
図6Bに示すようになる。
【0039】
また、位置推定部306は、例えば
図5Cに示す物体領域503及び
図6Aに示す矩形領域601等のように複数の領域を用いてそれぞれに対して物体11の位置の推定を行い、それらの推定結果に基づいて物体11の位置を推定してもよい。これにより、位置推定部306は、位置推定の精度の向上を図ることができる。姿勢推定部307についても同様である。
【0040】
また上記では、位置推定部306が、上記領域の図心を導出する場合を示した。しかしながら、これに限らず、位置推定部306は、例えば上記領域の外郭の特徴点(例えば
図5Cに示す物体領域の直角部分504)を用いて、物体11の位置を推定してもよい。
また上記では、姿勢推定部307が、上記領域の長軸方向を導出する場合を示した。しかしながら、これに限らず、姿勢推定部307は、例えば、上記領域の図心と当該領域の外郭の特徴点とを結ぶ線分を用いて、物体11の姿勢を推定してもよい。
【0041】
なお、ステップST1~ST4までの処理は、カメラ2から指標取得部301に画像データが入力される度に実施される。
【0042】
次いで、位置指標算出部308は、位置推定部306による複数の推定結果から、物体11の位置の安定度を評価するための指標を算出する(ステップST5)。すなわち、位置指標算出部308は、まず、位置推定部306により推定された複数の物体11の位置(図心)を取得する。そして、
図7に示すように、位置指標算出部308は、この位置(図心)から、物体11毎の乖離距離の平均値又は複数の物体11の位置の分散等を算出する。
図7において、黒三角は位置推定部306により推定された位置を示し、黒丸は基準位置(基準図心)を示している。また
図7において、符号701はある物体11での乖離距離を示し、符号702,703は複数の物体11の位置のx軸方向及びy軸方向の分散を示している。
【0043】
ロボットシステムでは、ロボット1を撮像位置に移動して物体11の位置を自動認識した後に、その認識結果に基づいてロボット1を作業位置に移動する。この際、搬送路12により供給される物体11が、カメラ2による撮像領域内の基準位置付近に位置していれば、ロボット1が物体11を認識不能(発見不可)となる認識ミスは発生しない。よって、位置指標算出部308により算出される指標は、物体11の供給状態が良好であり安定していることを評価するための因子として技術的な意義がある。なお、カメラ2の撮像領域は光軸を中心に決まるため、基準位置として、例えばカメラ2により得られる画像の中心点(カメラ2の光軸延長上の座標)等を用いる。
【0044】
また、姿勢指標算出部309は、姿勢推定部307による複数の推定結果から、物体11の姿勢の安定度を評価するための指標を算出する(ステップST6)。すなわち、姿勢指標算出部309は、まず、姿勢推定部307により推定された複数の物体11の姿勢を示す方向を取得する。そして、
図8に示すように、姿勢指標算出部309は、この姿勢を示す方向から、物体11毎の乖離角度の平均値又は複数の物体11の姿勢を示す方向の分散等を算出する。
図8において、実線は姿勢推定部307により推定された姿勢を示す方向を示し、破線は基準方向を示している。また
図8において、符号801はある物体11での乖離角度を示し、符号802は複数の物体11の姿勢を示す方向の分散を示している。
【0045】
ロボットシステムが物体11の方向を自動認識して作業方向にロボット1を回転させる場合に、推奨方向があるとすれば、その推奨方向を基準方向として予め規定することが合理的である。推奨方向としては、例えば、照明光の都合で物体11を認識し易い方向又はロボット1の回転量が少ない方向が挙げられる。よって、姿勢指標算出部309により算出される指標は、物体11の供給状態が良好であり安定していることを評価するための因子として技術的な意義がある。
【0046】
次いで、安定度算出部302は、指標取得部301により取得された指標から、搬送路12により供給される物体11の位置姿勢の安定度を算出する(ステップST7)。
【0047】
安定度は、基本的に、物体11毎の乖離距離の平均値、複数の物体11の位置の分散、物体11毎の乖離角度の平均値及び複数の物体11の姿勢を示す方向の分散のうちの何れか1つを用いれば成り立ち、また、これらと等価な技術的な意義を有する指標を用いてもよい。
【0048】
なお、物体11毎の乖離距離の平均値、複数の物体11の位置の分散、物体11毎の乖離角度の平均値及び複数の物体11の姿勢を示す方向の分散は、数値が小さい程(0.0に近づく程)、安定度が高くなる。そこで、安定度算出部302は、例えば下式(10)又は下式(11)のような多項式を用いて安定度を算出してもよい。なお、式(10),(11)において、Xは物体11毎の乖離距離の平均値を示し、Yは複数の物体11の位置の分散を示し、Zは物体11毎の乖離角度の平均値を示し、Wは複数の物体11の姿勢を示す方向の分散を示している。また、A,B,C,Dは係数であり、A≦0.0であり、B≦0.0であり、C≦0.0であり、D≦0.0である。また、A,B,C,Dは、オペレータの経験又は実験データに基づく統計処理(回帰分析)等により決定される。
F=AX+BY+CZ+DW(10)
F=AX2+BY2+CZ2+DW2 (11)
【0049】
また、安定度としては、物体11毎の乖離距離の平均値、複数の物体11の位置の分散、物体11毎の乖離角度の平均値及び複数の物体11の姿勢を示す方向の分散以外にも、物体11の位置姿勢の安定度の評価因子として技術的な意義のある指標を取り込むことが可能である。この場合、回帰分析等で得られる多項式では不十分になるくらいに、安定度との関係が複雑になる可能性がある。よって、安定度算出部302は、ディープラーニング等のAI(人工知能)によって機械学習を行った学習済みの学習器を用いて安定度を算出してもよい。
【0050】
次いで、安定度提示部303は、安定度算出部302により算出された安定度を示す情報をモニタに提示する(ステップST8)。
【0051】
ここで、上述したように、例えば箱詰めで送られる物体11を作業員が手で搬送路12に移す作業が行なわれている場合、搬送路12に移された物体11の位置及び姿勢にバラつきが生じる。このバラつきの要因としては、例えば作業員の疲労及び熟練度が挙げられる。そして、このバラつきによってロボット1が物体11の位置及び姿勢を自動認識できない場合、生産ラインを一旦停止せざるを得ない。そこで、実施の形態1では、安定度判定装置3が物体11の位置姿勢の安定度を判定する。これにより、生産ラインの監督者は、物体11の位置姿勢の安定度から物体11を搬送路12に移す作業を行う作業員の状態を判定可能となる。そして、監督者は、例えば、物体11の位置姿勢にバラつきが生じ易い作業員に対する注意喚起又は作業員の配置変更を行う。その結果、生産ラインにおいて協働する作業員を効率よく配置可能となり、また、生産ラインが一時停止する時間を合理的に削減可能となる。
【0052】
以上のように、この実施の形態1によれば、安定度判定装置3は、複数の画像から複数の物体11の位置及び姿勢のうちの少なくとも一方である位置姿勢を推定し、推定結果から物体11の位置姿勢の安定度を評価するための指標を取得する指標取得部301と、指標取得部301により取得された指標から、物体11の位置姿勢の安定度を算出する安定度算出部302と、安定度算出部302により算出された安定度を示す情報を提示する安定度提示部303とを備えた。これにより、実施の形態1に係る安定度判定装置3は、物体11の位置姿勢の安定度を判定可能である。
【0053】
また、実施の形態1における指標取得部301は、画像を取得する画像取得部304と、画像取得部304により取得された画像から、物体11を示す領域である物体領域を抽出する領域抽出部305と、領域抽出部305により抽出された物体領域に基づく領域から、再現性のある一意の点に基づく物体11の位置及び再現性のある一意の方向に基づく当該物体11の姿勢のうちの少なくとも一方を推定する位置姿勢推定部と、位置姿勢推定部による複数の推定結果から、物体11の位置姿勢の安定度を評価するための指標を算出する指標算出部とを有する。これにより、実施の形態1における指標取得部301は、テンプレートを用いずに多様な物体11に対して画像上での位置姿勢が検出可能となり、その位置姿勢から上記指標を算出可能となる。
【0054】
なお上記では、指標取得部301は、テンプレートを用いずに物体11の位置姿勢を検出する場合を示した。しかしながら、これに限らず、指標取得部301は、テンプレートを用いて物体11の位置姿勢を検出してもよい。
【0055】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ロボット
2 カメラ(撮像装置)
3 安定度判定装置
11 物体
12 搬送路
101 エンドエフェクタ
301 指標取得部
302 安定度算出部
303 安定度提示部
304 画像取得部
305 領域抽出部
306 位置推定部
307 姿勢推定部
308 位置指標算出部
309 姿勢指標算出部