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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】建築物の架構
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
E04B1/24 F
E04B1/24 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018245625
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105807
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-320746(JP,A)
【文献】実開平01-083820(JP,U)
【文献】特開平10-292486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の一部をなす鋼管と、
前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、
前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱と、
を備え
前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されている、
建築物の架構。
【請求項2】
柱の一部をなす鋼管と、
前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、
前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱と、
を備え、
前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されており、
前記補剛柱は一組設けられ、それぞれ前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とから延びている、
建築物の架構。
【請求項3】
柱の一部をなす鋼管と、
前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、
前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱と、
を備え、
前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されており、
前記補剛柱は、前記鋼管の片面にのみ接合している、
建築物の架構。
【請求項4】
前記補剛柱は、前記鋼管の幅方向中央に連結されている、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の建築物の架構。
【請求項5】
前記補剛柱は、前記鋼管から延びて二方向に直角に向きを変える断面T字形状を有している、
請求項1ないし4のいずれか一に記載の建築物の架構。
【請求項6】
前記補剛柱は、
前記鋼管から延びる一枚のベース板と、
断面T字形状を有し、前記ベース板の端部を挟んで固定することで前記補剛柱に断面T字形状の形態を与える一対の屈曲板と、
を備える請求項に記載の建築物の架構。
【請求項7】
前記補剛柱は、前記鋼管から延びて一方向に直角に向きを変える断面L字形状を有する一対の部材であり、前記直角に向きを変える部分が互いに反対方向を向く向きで前記鋼管から延びる部分を互いに背中合わせにして前記鋼管に固定されている、
請求項1ないし4のいずれか一に記載の建築物の架構。
【請求項8】
前記柱は、前記梁との接合部に、前記鋼管を上下面に接合させるダイアフラムを備えている、
請求項1ないし7のいずれか一に記載の建築物の架構。
【請求項9】
前記柱は、前記梁との接合部に、前記鋼管を上下面に接合させるダイアフラムを備えており、
前記一組の補剛柱は、前記ダイアフラムの上下面に接合する分割構造を備えている、
請求項に記載の建築物の架構。
【請求項10】
前記柱は、前記梁との接合部に、前記鋼管を上下面に接合させるダイアフラムを備えており、
一方の前記補剛柱は、前記ダイアフラムの上下面に接合する分割構造を備えている、
請求項に記載の建築物の架構。
【請求項11】
前記柱は、前記梁との接合部に、前記鋼管を上下面に接合させるダイアフラムを備えており、
前記補剛柱は、前記鋼管から基部が延びて前記基部から二方向に直角に向きを変える断面T字形状を有しており、
前記ダイアフラムと前記基部と前記基部からT字形状に拡開する部分とに固定されたスティフナを備えている、
請求項2に記載の建築物の架構。
【請求項12】
前記柱は、前記梁との接合部に、前記鋼管を上下面に接合させるダイアフラムを備えており、
前記補剛柱は、前記鋼管から基部が延びて前記基部から二方向に直角に向きを変える断面T字形状を有しており、
前記ダイアフラムと前記基部と前記基部からT字形状に拡開する部分とに固定されたスティフナを備えている、
請求項3に記載の建築物の架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨を用いた建築物の架構に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造の架構は、鉄筋コンクリート構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造と同様に、木造の架構と比べて桁行き方向にも梁間方向にも大きなスパンを取ることができるのを特色としている。ところがスパンが大きくなればなるほど梁の剛性が下がり、梁が負担する床面積の増加によって重量も大きくなり、柱も梁も撓みやすくなる。例えば倉庫や事業用ビルなどの建築物では、桁行き方向よりも梁間方向の梁のスパンが長くなる傾向があるため、その分梁間方向に架け渡される梁の剛性が下がって重量も増し、柱がその方向に撓みやすくなってしまう。
【0003】
このような問題に対処するためには、柱、例えば角形鋼管のサイズを大きくすることが一般的である。
【0004】
その他にも特許文献1には、柱の強度を増す別の構造が開示されている。この文献に記載されている発明は、H型鋼の柱を前提としている。このため柱には、ウェブの面方向である強軸方向とこれと直交する弱軸方向とが発生する。特許文献1に記載された発明は、ウェブの真ん中に角形鋼管や丸型鋼管からなるコア柱を設けて弱軸方向の断面強度を増大させ、これによって座屈しにくい柱を得ている(文献1の段落[0008][0010][0011])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-320746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柱の剛性を増すために、例えば角形鋼管のサイズを大きくすると、その分室内側に張り出す柱の領域が増えてしまう。例えば桁行き方向よりも梁間方向のスパンが長く、梁間方向に開口が設置されるような建築物は、倉庫や事業用ビルなどの建築物で広くみられる。このような建築物の場合、剛性を上げるために柱のサイズを大きくすると、室内側に張り出す柱の領域が増え、室内空間を狭めてしまう。何らかの対処が求められるところである。
【0007】
この点特許文献1には、前述したとおり、H型鋼の弱軸方向の強度を増すようにした鉄骨柱が開示されている。ところがこの鉄骨柱は、「梁上に直接取付プレートを設置してボルト等で緊結する」構造であるため(文献1の段落[0021]参照)、柱間のスパンが長くなるにしたがい柱及び梁に生ずる撓みを抑えるような架構を構成しない。
【0008】
内側に大きく張り出すことなく、柱間のスパンが長くなるにしたがい生ずる撓みを抑え得る剛性を柱に与えたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
築物の架構の一態様は、柱の一部をなす鋼管と、前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱とを備え、前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されている。
建築物の架構の別の一態様は、柱の一部をなす鋼管と、前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱と、を備え、前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されており、前記補剛柱は一組設けられ、それぞれ前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とから延びている。
建築物の架構の別の一態様は、柱の一部をなす鋼管と、前記鋼管と鋼管との間に架け渡される梁と、前記鋼管を形成する面であって前記梁が架け渡される面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に位置して前記鋼管から延び、前記鋼管の長手方向に沿って配置されて前記柱の他の一部をなす補剛柱と、を備え、前記補剛柱は、前記柱から互いに直交する方向に延びる二つの前記梁のうち、長い方の前記梁が架け渡される前記鋼管を形成する面とその反対側にある前記鋼管を形成する面とを通る仮想面上に配置されており、前記補剛柱は、前記鋼管の片面にのみ接合している。
【発明の効果】
【0010】
剛が必要な方向と直交する方向には補剛柱を設けないため、その方向には室内側に大きく張り出すことなく、柱間のスパンが長くなるにしたがい生じる撓みを抑え得る剛性を柱に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の建築物の架構の一部の一例を示す平面図。
図2】本実施の形態の建築物の架構の一部の一例を示す側面図。
図3】補剛柱を有する柱の一態様を示す平面図。
図4】一列目の柱が有するダイアフラムの周辺構造を示す斜視図。
図5】二列目の柱が有するダイアフラムの周辺構造を示す斜視図。
図6】参考例の柱と比較して示す補剛柱を有する柱の平面図。
図7】補剛柱を有する柱の別の一態様を示す平面図。
図8】補剛柱を有する柱のさらに別の一態様を示す平面図。
図9】補剛柱を有する柱のさらに別の一態様を示す平面図。
図10】補剛柱を有する柱のさらに別の一態様を示す平面図。
図11】補剛柱を有する柱のさらに別の一態様を示す平面図。
図12】柱が有するダイアフラムの周辺構造の別の一例を示す斜視図。
図13】柱が有するダイアフラムの周辺構造のさらに別の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の建築物の架構101は、複数本の柱111を備え、これらの柱111のうちの二本の間に梁131を架け渡し、柱111に補剛柱151を設けている。架構101は、図1及び図2中の左側のスパンを、建築物に設けられる開口Oのスパンとしている。
【0014】
2中、左側は、架構101を有する建築物の正面側となる。架構101は、正面側から二列目までの柱111よりも、三列目の柱111の方を大きなサイズとしている。説明の便宜上、一列目の柱111を111A、二列目の柱111を111B、三列目の柱111を柱111Cと表記する。
【0015】
一列目及び二列目の柱111A,111Bは、鋼管112と補剛柱151とによって構成されている。鋼管112は柱111A,111Bの一部をなし、補剛柱151は柱111A,111Bの他の一部をなす。三列目の柱111Cには、補剛柱151は設けられていない。
【0016】
架構101は、図1中に示すX方向よりもY方向の方が長い構造を有している。したがってX方向は梁間方向、Y方向は桁行き方向となる。梁間方向X、桁行き方向Yとも、架構101のスパンは柱111によって決められている。架構101は、桁行き方向Yよりも梁間方向Xの梁131のスパンの方を長くしている。別の実施の形態としては、梁131のスパンは、桁行き方向Yよりも梁間方向Xを短くするようにしてもよい。
【0017】
このような構造上、梁間方向Xに延びる梁131aは、桁行き方向Yに延びる梁131bよりも剛性が下がり、負担する床面積が大きくなることから重量も増し、この梁131aを架け渡す柱111に加えるモーメントを増大させる。その結果梁131aを架け渡す柱111は撓みやすくなるため、撓みなく梁131aを支え得るだけの剛性が要求される。
【0018】
本実施の形態では、柱111に補剛柱151を設けることで、断面二次モーメントを大きくし、柱111の剛性を補剛している。
【0019】
図3に示すように、柱111の一部をなす鋼管112は、例えば冷間成形角形鋼管によって構成されている。このような鋼管112の二面には、それぞれ補剛柱151が固定されている。補剛柱151は、柱111から延びて二方向に直角に向きを変える断面T字形状を有する鋼鉄製の部材であり、前述したとおり、柱111の他の一部をなす。鋼管112から延びる部分は、補剛柱151の基部152である。この基部152は、鋼管112が有する四面のうち、スパンが長い方の梁131aが架け渡される面113aとその反対側の面113bとを通る仮想面vs(図3中、一点鎖線で示す)上に位置している。補剛柱151は一組設けられ、それぞれ鋼管112の二つの面113a,113bに溶接によって接合されている。このような構造の補剛柱151は、一例として鋼管112の全長に沿って設けられている。鋼管112と補剛柱151とは、両者の協働によって、構造物の荷重を支えるという柱111本来の機能を果たす(図2参照)。
【0020】
図1及び図2に示すように、一列目の柱111Aには、仮想面vs(図3参照)が通る面113aの側に、スパンが長い方の梁131aが連結している。スパンが短い方の梁131bは、仮想面vsと直交する柱111Aの面の側に連結している。
【0021】
図1及び図2に示すように、二列目の柱111Bには、仮想面vsが通る面113aとその反対側の面113bとに、スパンが長い方の梁131aが連結している。スパンが短い方の梁131bは、仮想面vsと直交する柱111Aの面の側に連結している。
【0022】
図1及び図2にも示されているように、柱111は、梁131との接合部に、鋼管112を上下面に接合させるダイアフラム114を備えている。ダイアフラム114の周辺構造は、一列目の柱111と二列目の柱111とでは異なる。
【0023】
図4に示すように、一列目の柱111Aは、上下の梁131の配置間隔の長さに鋼管112を分割し、分割した鋼管112をダイアフラム114の上下面に接合させている。
【0024】
柱111に設けられた一組の補剛柱151のうち、建物の背面側を向いた一方の補剛柱151も同様に分割され、ダイアフラム114の上下面に接合している。これに対して建物の正面側を向いた補剛柱151は分割されず、スパンが長い方の梁131aを連結させる柱111Aの面113aと反対側の面113bに直接接合している。これらの一組の補剛柱151は、一列目の柱111Aの幅方向中央に位置合わせされている。
【0025】
前述したように、ダイアフラム114は、梁131との接合部分に設けられている。そこでダイアフラム114には、スパンが長い方の梁131aと短い方の梁131bも接合している。
【0026】
図5に示すように、二列目の柱111Bは、上下の梁131の配置間隔の長さに鋼管112を分割し、分割した鋼管112をダイアフラム114の上下面に接合させている。柱111に設けられた一組の補剛柱151も同様に分割され、ダイアフラム114の上下面に接合している。これらの一組の補剛柱151は、一列目の柱111Aの幅方向中央に位置合わせされている。
【0027】
前述したように、ダイアフラム114は、梁131との接合部分に設けられている。そこでダイアフラム114には、スパンが長い方の梁131aと短い方の梁131bも接合している。
【0028】
図4に示す一列目の柱111A、及び図5に示す二列目の柱111Bがそれぞれ備えているダイアフラム114の周辺構造では、ダイアフラム114及び柱111の各面113a,113bに対する各部の接合は、例えば溶接による。
【0029】
このような構成において、架構101は、梁間方向Xでスパンが長くなっているため、桁行き方向Yに延びる梁131bとの比較で、梁間方向Xに延びる梁131aは重量が増大し、これを支える柱111に加わるモーメントを大きくする。このとき柱111に加わるモーメントの増大は、梁間方向Xに延びる梁131aの連結方向において発生する。これに対して架構101は、この方向に補剛柱151を備えており、剛性の増強が図られている。これによって柱111の撓みが防止され、これに伴い梁131の撓みも防止される。
【0030】
図6は、本実施の形態の補剛柱151を有する柱111を比較例と比較するための平面図である。図6中、上側に示しているのが本実施の形態の柱111であり、下側は参考例として、大柱111Dを示している。大柱111Dの採用は、柱111の剛性を増すために従来からよく用いられる手法である。
【0031】
図6に示すように、本実施の形態の柱111は、隣接する柱111との間に生ずる建築物の開口Oのスパン方向に向けて、L1だけ室内側に突出する。この突出量は、ダイアフラム114を含んだ柱111の本来的な突出量と変わりがない。柱111に付加される補剛柱151は、開口Oのスパン方向と直交する方向に設けられるからである。
【0032】
これに対して柱111の剛性を増すために大柱111Dを設けた場合、室内側への突出寸法はL2となる。寸法L2は、本実施の形態の柱111によってもたらされる室内への突出寸法L1よりも大きい。大柱111Dは、柱111を全方位的に大型化してしまうからである。
【0033】
以上より明らかなように、本実施の形態によれば、室内側に大きく張り出すことなく、柱111間のスパンが長くなるにしたがい生じる撓みを抑え得る剛性を柱111に与えることができる。
【0034】
その他本実施の形態の架構101は、つぎに示すような作用効果を有する。
【0035】
補剛柱151は、柱111の幅方向中央に連結されているので、幅方向の両側で均等に力を受けることができ、柱111の捩れなどを防止することができる。
【0036】
補剛柱151は、柱111から延びて二方向に直角に向きを変える断面T字形状を有しているので、鋼管112及び補剛柱151によって構成されている柱111全体の断面二次モーメントが大きくなることから、柱111の剛性を高めることができる。このとき柱111の剛性を増強するためには、断面二次モーメントを大きくするように、局部座屈が生じない範囲で基部152を長くすることが好ましい。
【0037】
補剛柱151は一組設けられ、それぞれ鋼管112の一面113aとその反対側の面113bとから延びているので、柱111の剛性をより増大させることが可能である。スパンが長い梁131aの荷重によってもたらされる柱111の撓みは、梁131aが連結する側の面113aに設けた補剛柱151のみならず、その反対側の面113bに設けた補剛柱151によっても抑制することができるからである。
【0038】
柱111は、梁131との接合部に、鋼管112を上下面に接合させるダイアフラム114を備えているので、柱111と梁131との接合部分の強度及び剛性を増すことができる。このとき一列目の柱111Aでは、一方の補剛柱151がダイアフラム114の上下面に接合する分割構造を備えているので、その一方の補剛柱151の強度を増すことができる。また二列目の柱111Bでは、一組の補剛柱151がダイアフラム114の上下面に接合する分割構造を備えているので、両方の補剛柱151の強度を増すことができる。
【0039】
上記実施の形態では、補剛柱151を含む柱111の一例を示したが、他の実施形態を採用してもよい。
【0040】
図7は、補剛柱151を有する柱111の別の実施の形態を示している。本例は、柱111の鋼管112として、組立角形鋼管を用いた一例である。この組立角形鋼管は、四枚の平板部材115を溶接等の手法で接合し、角形鋼管としている。
【0041】
図8は、補剛柱151を有する柱111の別の実施の形態を示している。本例は、柱111の鋼管112として、円形鋼管116を用いた一例である。
【0042】
図9は、補剛柱151を有する柱111のさらに別の実施の形態を示している。上記した各実施の形態では、断面T字形状を有する補剛柱151を用いた例を紹介したが、本例の補剛柱151は、上記仮想面vs(図3参照)に沿って柱111から延びる基部152の端部から一方向に直角に向きを変える断面L字形状を有している。本実施の形態では、このような断面L字形状の部材153を一対用意し、直角に向きを変える部分153が互いに反対方向を向く向きで、基部152を互いに背中合わせにして柱111に固定している。
【0043】
図10は、補剛柱151を有する柱111のさらに別の実施の形態を示している。本例は、全体的に比較的厚みが薄い三枚の板状部材によって補剛柱151を構成している。板状部材の一つは、柱111に接合され、上記仮想面vs(図3参照)に沿って柱111から延びる一枚のベース板154である。残りの二枚の板状部材は、断面T字形状を有し、ベース板154の端部を挟んで固定することで補剛柱151に断面T字形状の形態を与える一対の屈曲板155である。ベース板154を挟んだ一対の屈曲板155の固定は、ボルトBとナットNとの締結構造による。
【0044】
図11は、補剛柱151を有する柱111のさらに別の実施の形態を示している。本例は、鋼管112の二面それぞれに補剛柱151が固定されている点で、図3に示す柱111と共通性を有している。図3に示す柱111と相違するのは、鋼管112には、補剛柱151が固定されている二つの面113a,113bと直交する第三の面113cにも、補剛柱151が固定されている点である。この第三の面113cに固定された補剛柱151は、二つの面113a,113bにそれぞれ固定されている二つの補剛柱151と同じ部材であり、これらの二つの補剛柱151と共に柱111の他の一部をなす。
【0045】
上記各種実施の形態の柱111において、鋼管112の材料としては鉄鋼のみならず、例えばステンレス鋼なども用いることができる。
【0046】
上記実施の形態では、ダイアフラム114の周辺構造について二つの例(図4図5参照)を示したが、他の実施形態を採用してもよい。
【0047】
図12に示すように、柱111、例えば一列目の柱111Aは、上下の梁131の配置間隔の長さに鋼管112を分割し、分割した鋼管112をダイアフラム114の上下面に接合させている。
【0048】
これに対して柱111Aに設けられた一組の補剛柱151はいずれも分割されず、スパンが長い方の梁131aを連結させる柱111Aの面113aと反対側の面113bとの両面にそれぞれ直接接合している。これらの一組の補剛柱151は、一列目の柱111Aの幅方向中央に位置合わせされている。
【0049】
一組の補剛柱151は、スティフナ156によって補強されている。本実施の形態の場合、補剛柱151の基部152はあたかもH型鋼のウェブのような様相を呈し、梁131の荷重によって撓みが生ずる可能性があるため、スティフナ156はこのような基部152の撓みを防止する。スティフナ156によって、梁131aからの応力伝達が円滑になる。スティフナ156は、ダイアフラム114と基部152と基部152からT字形状に拡開する部分とに溶接によって固定されている。一つのダイアフラム114と一つの補剛柱151とに対して、四つのスティフナ156が設けられている。
【0050】
図13は、補剛柱151を有する柱111のさらに別の実施の形態を示している。本例では、スパンが長い方の梁131aを連結させる柱111Aの面113aと反対側の面113bにのみ、補剛柱151が設けられている。この面113bに単一の補剛柱151を設けるだけでも、柱111間のスパンが長くなるにしたがい生じる撓みを抑え得る剛性を柱111に与えることが可能である。
【0051】
上記各実施の形態では、スパンが長い方の梁131aが架け渡される方向にのみ補剛柱151を設けている。実施に際してはこれに限定されず、補剛柱151は、スパンが短い方の梁131bが架け渡される方向に設けてもよい。
【0052】
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
【0053】
例えば本実施の形態ではダイアフラム114を設けるが、ダイアフラム114は必ずしも必須というわけではない。ダイアフラム114を設けない場合、梁131も補剛柱151も柱111の鋼管112に直接接合される。
【0054】
柱111については、図3に示した柱111の他、図7図8図9、及び図10のそれぞれに各種の別の実施の形態を示した。これらの各種実施の形態の柱111は、一列目の柱111Aに限ることなく、二列目の柱111B、三列目の柱111Cなど、いずれの柱111にも適宜用いることができる。
【0055】
この点はダイアフラム114の周辺構造についても同様である。つまりダイアフラム114の周辺構造については、一列目の柱111Aに用いられる一つの例(図4参照)と、二列目の柱111Bについて用いられるもう一つの例(図5参照)とを示し、さらに他の実施形態を図12図13とにそれぞれ示した。これらの四つの各構造は、一列目の柱111A、二列目の柱111B、及び三列目の柱111Cなど、いずれの柱111にも適宜用いることができる。
【0056】
上記各実施の形態及び変形例は、架構の特定の例を示しているにすぎない。実施に際しては、建築物の大きさや形状などの様々な要因によって、各部は適宜変更可能である。
【0057】
その他、実施に際してはあらゆる変形や変更が許容される。
【符号の説明】
【0058】
101 架構
111 柱
111A 柱
111B 柱
111C 柱
111D 大柱
112 鋼管
113a 面
113b 反対側の面
113c 第三の面
114 ダイアフラム
131 梁
131a 梁(スパンが長い方)
131b 梁(スパンが短い方)
151 補剛柱
152 基部
153 直角に向きを変える部分
154 ベース板
155 屈曲板
156 スティフナ
B ボルト
N ナット
O 開口
vs 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13