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  • 特許-トンネル内仮設足場 図1
  • 特許-トンネル内仮設足場 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】トンネル内仮設足場
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20221118BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20221118BHJP
   E21D 13/04 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
E21D11/40 Z
E04G3/24 301F
E21D13/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019000913
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020111874
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-000623(JP,B1)
【文献】特開2014-077283(JP,A)
【文献】特開2016-142098(JP,A)
【文献】特開2018-044392(JP,A)
【文献】特開昭51-096141(JP,A)
【文献】米国特許第03970200(US,A)
【文献】米国特許第04051682(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントピースからなるトンネル内面の断面方向の両側それぞれ該トンネルの軸方向に向かって間隔を開けて配置された複数のブラケットからなる2列のブラケット群と、
前記各列のブラケット群の複数のブラケット上面を架渡すように前記トンネルの軸方向に向かって配置され、該複数のブラケットに固定された根太材と、
対向する前記根太材の上面に架渡されるように前記トンネルの断面方向に配置され、該根太材に固定された梁と、
前記トンネル上部に取り付けられた前記梁の中間部を支持する吊材と、
前記梁の上に敷設された足場材と、を備えたトンネル内足場であって、
前記ブラケットは、前記セグメントピース内に埋設されたインサートにボルトを介して前記覆工内面に固定され、
前記梁は前記トンネルの略中央で上下に隙間を開けて重なるように配置された梁上段材および梁下段材と、該隙間に介設され、該梁上段材と該梁下段材とを連結した高さ調整材と、からなることを特徴とするトンネル内足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事に用いられるトンネル内の仮設作業足場に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法におけるトンネル工事のうち、特に道路トンネルでは、緊急時の避難や点検を目的として、併設する上下線トンネルの一部を切開き、互いを横坑で接続するUターン路や連絡道等が施工される。これらは一般に、地中内を非開削で行われるため、薬液注入工法やパイプルーフ等の補助工法を併用して、トンネル間の止水及び支保を確保する。この場合、補助工法の施工に必要な推進装置や薬液注入装置といった設備類を仮置きする足場が必要になるが、こうした横坑は、トンネル工事区間内に所定の間隔で複数設けられるため、横坑工事に補助工法施工のための諸設備を仮置きするための仮設足場を先行して架設すると、トンネル内を走行可能な大型の仮設台車(例えば、鉄筋台車、型枠台車、床版設置台車等)を必要とする側壁や床版の設置工事の障害になり得る。
そこで従来は、このような台車が全て通過した後に、仮設足場を設置して施工を行ってきた。
特許文献1,2には、トンネル工事における移動足場が開示されているが、これらはいずれもトンネル下部に施工されたインバートもしくは枕木に設置されたレール上を走行する形態であり、前記の仮設台車との干渉は免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-48012号公報
【文献】特開2008-38364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、補助工法の施工を確保することを可能としたトンネル内仮設足場を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明のトンネル内仮設足場は、複数のセグメントピースからなるトンネル内面の断面方向の両側それぞれ該トンネルの軸方向に向かって間隔を開けて配置された複数のブラケットからなる2列のブラケット群と、前記各列のブラケット群の複数のブラケット上面を架渡すように前記トンネルの軸方向に向かって配置され、該複数のブラケットに固定された根太材と、対向する前記根太材の上面に架渡されるように前記トンネルの断面方向に配置され、該根太材に固定された梁と、前記トンネル上部に取り付けられた前記梁の中間部を支持する吊材と、前記梁の上に敷設された足場材と、を備えたトンネル内足場であって、前記ブラケットは、前記セグメントピース内に埋設されたインサートにボルトを介して前記覆工内面に固定され、前記梁は前記トンネルの略中央で上下に隙間を開けて重なるように配置された梁上段材および梁下段材と、該隙間に介設され、該梁上段材と該梁下段材とを連結した高さ調整材と、からなることを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
本発明のトンネル内仮設足場をトンネルの上部に設けたことにより、簡易な構成で、かつ比較的安価に、補助工法の施工を確保することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】薬液注入機材を載置した本発明のトンネル内仮設足場を示すトンネル断面図である。
図2】パイプルーフ設置機材を載置した本発明のトンネル内仮設足場を示すトンネル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に薬液注入機材を載置した本発明のトンネル内仮設足場を示す。
本実施形態におけるトンネル内仮設足場3は、地盤G内に構築された円形トンネルTの外殻を形成する複数のセグメントピースからなる覆工1内面の幅方向に横架するように架渡された梁材33と、梁材33の上面に敷き詰められた足場材35とによって構成され、梁材33の両端は覆工1の内面に固定されたブラケット31,31から支持され、梁材33の略中央部を覆工1の内面から吊り下ろされた吊材34に固定されている。
【0009】
ブラケット31は、複数のL形鋼材(アングル材)を組み合わせ、溶接により一体に加工されており、覆工1の内面の曲率に沿って密着する支持材と、該支持材の頂部に水平に覆工1の内面側に張出すようにその一端を固定された水平材と、該水平材の他端と該支持材の下方に固定された杖材とによってトラス形状に形成されており、山留支保工の腹起しを載置する際に用いるブラケットと同様の形態である。ブラケット31は、覆工1を形成するセグメントピース内に埋設されたインサートにボルトを介して覆工1に螺着、固定されている。
ブラケット31,31・・・は、トンネルTの軸方向に対しても、間隔を開けて配置され、ブラケット31,31・・・の上面を架渡すようにH形鋼材である側部根太材32がトンネル軸方向に載置され、固定されている。
【0010】
次に、H形鋼材からなる梁材33は、左右の側部根太材32,32上面に架渡されるように、直交方向(トンネルTの断面方向)に配置され、側部根太材32,32間に固定されている。本実施形態における梁材33は、トンネルTの略中央で、2本の梁上段材331、梁下段材332が上下方向に重なるように配置されている。梁上段材331と梁下段材332は、H形鋼材からなる高さ調整材333を介して一体に固定されている。
【0011】
次に、H形鋼材から構成される吊材34は、孤材341と上部根太材342と柱材344及び下部根太材343を具備する。孤材341は、覆工1の上部略中央にトンネルTの断面方向に覆工1の内面に沿って密着するように、不図示のセグメントに埋設されたインサートにボルトで固定されている。孤材341,341・・・は、トンネルTの軸方向に所定の間隔を開けて複数設置されており、上部根太材342がトンネルTの軸方向に、孤材341,341・・・の下面に密着するように固定されている。トンネルTの平面視で上部根太材342に重なるように、下部根太材343が梁上段材331の上面に固定されている。また、鉛直に配置された柱材344は、上部根太材342の下面及び下部根太材343の上面に固定されている。
【0012】
さらに、足場板35は、梁材33の上面に敷き詰められ足場が形成される。
足場板35は、既成品として一般に流通している鋼製の足場板を主として用いるが、端部等に生じる隙間については、必要に応じて鋼板等を加工して養生する。
【0013】
このトンネル内仮設足場構造3は、例えば、図示されるように覆工1のインバート部に形成された軌条設備2上をトンネルTの軸方向に走行する側壁型枠台車F等の大型台車の往来に干渉しないように、側壁型枠台車Fよりも高い位置に配置することで、トンネル内仮設足場3上で行われる作業と、トンネル足場構造3の下方で行われる作業を安全かつ確実に分離することが可能になる。これにより、トンネルT内で複数の作業を並行して行うことが可能になり、工事全体の工程短縮を図れる。
同図のトンネル内仮設足場3上では、間隔を開けて併設された別なトンネルとの接続工事のための止水用の薬液注入に必要な施工設備等Mを配置しながら、覆工1の内部から外部に向かって複数の薬液注入管R,R・・・を打設、注入作業をすることができる。
【0014】
図2にパイプルーフ設置機材を載置した本発明のトンネル内仮設足場を示す。図1の薬液注入と同様に、トンネル内仮設足場3上に設置したパイプルーフを設置するための推進装置等の施工設備等Mを用いて、覆工1の内部から併設された別なトンネルに向かって複数のパイプルーフP,P・・・が打設することができる。
トンネル内仮設足場3の形態は、その下方を通過する側壁型枠台車F等の大型台車の障害にならない範囲で、高さ等を変更することで、トンネル内仮設足場3上で行われる各種作業に必要な内空を確保することが可能になる。
【0015】
以上より、本実施形態に係るトンネル内仮設足場は構成が簡易であるので安価であり、係る足場の下方で行われる施工を止めることなく足場上部の補助工法の施工を可能にする。
【0016】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、セグメントはコンクリート系ではなく鋼製セグメントでも良い。この場合、縦リブ等の仮設部材への溶接やボルト固定がインサートに代替される。また、上下段に分割された梁材を適用したが、1本ものでも良い。さらにトンネル形状は円形に係わらず、矩形や馬蹄形でも良い。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0018】
G 地盤
T トンネル
F 側壁型枠台車
R 薬液注入管
P パイプルーフ
M 施工設備等
1 覆工
2 軌条設備
3 トンネル内仮設足場
31 ブラケット
32 側部根太材
33 梁材
331 梁上段材
332 梁下段材
333 高さ調整材
34 吊材
341 孤材
342 上部根太材
343 下部根太材
344 柱材
35 足場板
図1
図2