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特許7178917プリンタ用の位置検出システムおよびプリンタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】プリンタ用の位置検出システムおよびプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019013391
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121440
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-291482(JP,A)
【文献】特開2003-211778(JP,A)
【文献】特開平07-117296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0293351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた第1位置と、前記第1位置とは異なる第2位置と、前記第1位置および前記第2位置とは異なる第3位置とに配置可能であり、前記第1位置から前記第2位置を介して前記第3位置に移動可能、または、前記第3位置から前記第2位置を介して前記第1位置に移動可能に構成された位置変更体と、
前記位置変更体の位置を検出する位置検出機構と、
を備え、
前記位置検出機構は、
前記第1位置から前記第3位置の各位置に対応した検出部を有する位置検出体と、
前記位置検出体の前記検出部を検出可能に構成され、前記検出部を検出するか否かによりONまたはOFFが検知される第1センサおよび第2センサと、
を有し、
前記位置検出体と、前記第1センサおよび前記第2センサとのうち一方は、前記位置変更体の移動に連動して移動し、他方は、位置が固定されるように構成され、
前記位置検出体の前記検出部と、前記第1センサおよび前記第2センサとは、前記位置変更体の移動に伴って相対的な位置が変化するように構成されており、
前記位置検出機構は、前記位置変更体の位置が、前記第1位置から前記第3位置の各位置と、前記第1位置および前記第2位置との間、並びに、前記第2位置および前記第3位置の間の前記第1位置から前記第3位置のいずれにも該当しない中間位置と、の何れかの位置であるか検出可能に構成され、
前記第1センサおよび第2センサのONまたはOFFを検知することにより4つの検出パターンが設定されており、4つの前記検出パターンは、前記第1位置から第3位置の各位置と前記中間位置とにそれぞれに割り当てられていることを特徴とする、プリンタの位置検出システム。
【請求項2】
制御装置を備え、
前記第1センサによる前記位置検出体の相対的な位置の検出結果である第1センサ検出結果と、前記第2センサによる前記位置検出体の相対的な位置の検出結果である第2センサ検出結果とが、予め定められたエラー検出結果となるときの前記位置検出体の相対的な位置をエラー検出位置とし、
前記第1センサ検出結果と前記第2センサ検出結果とが前記エラー検出結果であるときの位置であり、前記エラー検出位置とは異なる前記位置検出体の相対的な位置を他のエラー検出位置としたとき、
前記位置変更体が前記第1位置と前記第2位置との間の前記中間位置に配置されているとき、前記位置検出体の相対的な位置が前記エラー検出位置になるように構成されると共に、
前記位置変更体が前記第2位置と前記第3位置との間の前記中間位置に配置されているとき、前記位置検出体の相対的な位置が前記他のエラー検出位置になるように構成され、
前記制御装置は、
前記第1センサおよび前記第2センサから、前記位置検出体の位置検出に関する信号を受信するセンサ受信部と、
前記センサ受信部によって受信した信号に基づいて、前記位置検出体の相対的な位置が前記エラー検出位置または前記他のエラー検出位置の何れかであるか否かを判定する位置判定部と、
前記位置判定部によって前記位置検出体の相対的な位置が前記エラー検出位置または前記他のエラー検出位置の何れかであると判定されたとき、利用者にエラーを通知するエラー通知部と、
を備えた、請求項1に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項3】
回転軸と、
前記回転軸と共に回転するように前記回転軸に設けられ、予め定められた第1回転位置と、前記第1回転位置とは異なる第2回転位置と、前記第2回転位置を基準として前記第1回転位置に向かう方向とは反対方向に回転した位置である第3回転位置との間に回転可能であるカムと、
を備え、
前記位置変更体は、前記カムが前記第1回転位置のときに前記第1位置に配置され、前記カムが前記第2回転位置のときに前記第2位置に配置され、かつ、前記カムが前記第3回転位置のときに前記第3位置に配置されるように構成され、
前記位置検出体は、
前記回転軸に設けられた本体と、
前記回転軸の軸方向と直交し、前記本体の中心から、放射状に延びた方向である放射方向に延びた遮蔽部と、
を有し、前記回転軸と共に回転するように構成され、
前記第1センサおよび前記第2センサは、それぞれ光を発する発光部と、前記発光部と対向した受光部とを有し、前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が通過可能な位置に固定して配置され、
前記第1センサ検出結果および前記第2センサ検出結果は、それぞれの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されているか否かの検出結果であり、
前記センサ受信部は、前記第1センサおよび前記第2センサから、それぞれ前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されているか否かの検出に関する信号を受信する、請求項2に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項4】
前記エラー検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されている検出結果である、請求項3に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項5】
前記第1センサおよび前記第2センサは、それぞれ前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されているとき、予め定められた検出信号を送信し、
前記第1センサおよび前記第2センサには、それぞれ導線が接続されており、
前記第1センサおよび前記第2センサは、前記導線が断線しているとき、前記予め定められた検出信号を送信する、請求項4に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項6】
前記第1センサ検出結果と前記第2センサ検出結果とが、前記エラー検出結果とは異なる第1正常検出結果となるときの前記位置検出体の回転位置を第1検出位置とし、前記第1センサ検出結果と前記第2センサ検出結果とが、前記エラー検出結果および前記第1正常検出結果とはそれぞれ異なる第2正常検出結果となるときの前記位置検出体の回転位置を第2検出位置とし、かつ、前記第1センサ検出結果と前記第2センサ検出結果とが、前記エラー検出結果、前記第1正常検出結果および前記第2正常検出結果とはそれぞれ異なる第3正常検出結果となるときの前記位置検出体の回転位置を第3検出位置としたとき、
前記位置検出体は、前記カムが前記第1回転位置に配置されているとき、前記第1検出位置に配置され、前記カムが前記第2回転位置に配置されているとき、前記第2検出位置に配置され、かつ、前記カムが前記第3回転位置に配置されているとき、前記第3検出位置に配置されるように構成され、
前記制御装置は、前記センサ受信部によって受信した信号に基づいて、前記位置検出体の回転位置から前記位置変更体の位置を検出する位置検出部を備えた、請求項3から5までの何れか1つに記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項7】
前記第1正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されていない検出結果であり、
前記第2正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されていない検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されていない検出結果であり、
前記第3正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されていない検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記遮蔽部が配置されている検出結果である、請求項6に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項8】
前記遮蔽部は、
前記回転軸の軸方向から見たとき、前記本体から前記本体の外側に向かって延びた第1遮蔽部と、
前記第1遮蔽部と異なる位置において、前記回転軸の軸方向から見たとき、前記本体から前記本体の外側に向かって延びた第2遮蔽部と、
前記第2遮蔽部を基準として、前記第1遮蔽部とは反対側の位置において、前記回転軸の軸方向から見たとき、前記本体から前記本体の外側に向かって延びた第3遮蔽部と、
を有し、
前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部との間には、第1遮蔽空間が形成され、
前記第2遮蔽部と前記第3遮蔽部との間には、第2遮蔽空間が形成され、
前記第1正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第3遮蔽部が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第2遮蔽空間が配置されている検出結果であり、
前記第2正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第2遮蔽空間が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第1遮蔽空間が配置されている検出結果であり、
前記第3正常検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第1遮蔽空間が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第1遮蔽部が配置されている検出結果であり、
前記エラー検出結果において、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第3遮蔽部が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第2遮蔽部が配置されている検出結果、または、前記第1センサ検出結果は、前記第1センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第2遮蔽部が配置されている検出結果であり、前記第2センサ検出結果は、前記第2センサの前記発光部と前記受光部との間に前記第1遮蔽部が配置されている検出結果の何れかである、請求項6または7に記載されたプリンタ用の位置検出システム。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか1つに記載されたプリンタ用の位置検出システムと、
ガイドレールと、
前記ガイドレールに摺動可能に設けられたキャリッジと、
を備え、
前記位置変更体は、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジに対して上下方向に移動可能に構成されたインクヘッドである、プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ用の位置検出システムおよびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、媒体を支持するプラテンと、プラテンに支持された媒体に向かってインクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、を備えたプリンタが開示されている。インクヘッドは、キャリッジに搭載されており、キャリッジは、主走査方向に延びたガイドレールに係合している。
【0003】
上記プリンタは、キャリッジと共にインクヘッドが主走査方向に移動している間に、インクヘッドからインクを吐出するように構成されている。また、上記プリンタは、プラテンに支持された媒体を、副走査方向に移動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-196537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなプリンタでは、厚みが異なる媒体に対して印刷を行うことがあり得る。そこで、インクヘッドのノズル面と媒体の表面との距離を調整するために、プリンタは、インクヘッドがキャリッジに対して上下方向に移動可能な機構を備えていることがあり得る。例えば上記機構は、カムを有し、カムの回転位置に応じて、インクヘッドを、所定の第1位置と、第1位置よりも上方に位置する第2位置との2段階の位置に配置することが可能に構成されている。しかしながら、このようにカムの回転位置に応じて位置が変更されるインクヘッドなどの位置変更体は、第1位置と第2位置との間の位置などの適切ではないエラー位置に配置されることがあり得た。利用者は、インクヘッドがエラー位置に配置されている状態であっても、プリンタを利用することは可能であった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置変更体が適切な位置に配置されていない状態を検出することが可能なプリンタ用の位置検出システム、および、プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタ用の位置検出システムは、位置変更体と、位置検出機構と、を備えている。前記位置変更体は、予め定められた第1位置と、前記第1位置とは異なる第2位置と、前記第1位置および前記第2位置とは異なる第3位置とに配置可能であり、前記第1位置から前記第2位置を介して前記第3位置に移動可能、または、前記第3位置から前記第2位置を介して前記第1位置に移動可能に構成されている。前記位置検出機構は、前記位置変更体の位置を検出する。前記位置検出機構は、前記第1位置から前記第3位置の各位置に対応した検出部を有する位置検出体と、前記位置検出体の前記検出部を検出可能に構成され、前記検出部を検出するか否かによりONまたはOFFが検知される第1センサおよび第2センサと、を有している。前記位置検出体と、前記第1センサおよび前記第2センサとのうち一方は、前記位置変更体の移動に連動して移動し、他方は、位置が固定されるように構成されている。前記位置検出体の前記検出部と、前記第1センサおよび第2センサとは、前記位置変更体の移動に伴って相対的な位置が変化するように構成されている。前記位置検出機構は、前記位置変更体の位置が、前記第1位置から前記第3位置の各位置と、前記第1位置および前記第2位置との間、並びに、前記第2位置および前記第3位置の間の前記第1位置から前記第3位置のいずれにも該当しない中間位置との何れかの位置であるか検出可能に構成されている。前記第1センサおよび第2センサのONまたはOFFを検知することにより4つの検出パターンが設定されており、4つの前記検出パターンは、前記第1位置から前記第3位置の各位置と前記中間位置とにそれぞれに割り当てられていることを特徴とする。
【0008】
前記プリンタ用の位置検出システムによれば、位置検出体の検出部の位置に基づいて、第1センサおよび第2センサにおける検出パターンは4つに設定される。4つの検出パターンは、それぞれ位置変更体の第1位置、第2位置、第3位置のみならず、中間位置にも割り当てられている。中間位置は、第1位置から第3位置の何れにも該当しない位置であり、位置変更体が適切な位置に配置されていない状態を示す位置である。ここでは、位置検出体の検出部の位置に基づいて、第1センサおよび第2センサにおける検出パターンから、位置変更体が中間位置に配置されているか否かを判定することができる。したがって、位置変更体が適切な位置に配置されていない状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、位置変更体が適切な位置に配置されていない状態を検出することが可能なプリンタ用の位置検出システム、および、プリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】プリンタの内部構成を示す平面図である。
図3】キャリッジおよびインクヘッドの正面図である。
図4】キャリッジ、および、インクヘッドのノズル面を示す底面図である。
図5】キャリッジの左側面図である。
図6】キャリッジの固定部材の一部と、可動部材の一部とを示す斜視図である。
図7】キャリッジの固定部材の一部と、可動部材の一部とを示す正面図である。
図8A】回転軸の軸方向から見たときのカムの図であり、カムの回転位置が第1回転位置のときの図である。
図8B】回転軸の軸方向から見たときのカムの図であり、カムの回転位置が第2回転位置のときの図である。
図8C】回転軸の軸方向から見たときのカムの図であり、カムの回転位置が第3回転位置のときの図である。
図8D】回転軸の軸方向から見たときのカムの図であり、カムの回転位置が第1エラー回転位置のときの図である。
図8E】回転軸の軸方向から見たときのカムの図であり、カムの回転位置が第2エラー回転位置のときの図である。
図9A】インクヘッドの上下方向の位置が第1位置のときのインクヘッドを示す概念図である。
図9B】インクヘッドの上下方向の位置が第2位置のときのインクヘッドを示す概念図である。
図9C】インクヘッドの上下方向の位置が第3位置のときのインクヘッドを示す概念図である。
図9D】インクヘッドの上下方向の位置が第1エラー位置のときのインクヘッドを示す概念図である。
図9E】インクヘッドの上下方向の位置が第2エラー位置のときのインクヘッドを示す概念図である。
図10A】遮蔽部材と第1センサと第2センサとの位置関係を示す左側面図であり、遮蔽部材の回転位置が第1遮蔽位置のときの図である。
図10B】遮蔽部材と第1センサと第2センサとの位置関係を示す左側面図であり、遮蔽部材の回転位置が第2遮蔽位置のときの図である。
図10C】遮蔽部材と第1センサと第2センサとの位置関係を示す左側面図であり、遮蔽部材の回転位置が第3遮蔽位置のときの図である。
図10D】遮蔽部材と第1センサと第2センサとの位置関係を示す左側面図であり、遮蔽部材の回転位置が第1エラー遮蔽位置のときの図である。
図10E】遮蔽部材と第1センサと第2センサとの位置関係を示す左側面図であり、遮蔽部材の回転位置が第2エラー遮蔽位置のときの図である。
図11】遮蔽部材の斜視図である。
図12】第1センサおよび第2センサを示す正面図である。
図13】プリンタのブロック図である。
図14】インクヘッドの上下方向の位置を検出する手順を示すフローチャートである。
図15】対応テーブルを示す図である。
図16】変形例に係る遮蔽部材、第1センサおよび第2センサを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るプリンタ100の斜視図である。図2は、プリンタ100の内部構成を示す平面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
本実施形態に係るプリンタ100は、詳しい説明は後述するが、プリンタ用の位置検出システム40(図3参照)を備えたプリンタである。プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。ただし、プリンタ100の種類は特に限定されない。例えばプリンタ100は、いわゆるインパクト方式のプリンタであってもよいし、レーザプリンタであってもよいし、熱転写方式のプリンタであってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、媒体5に印刷を行う。ここでは、媒体5はロール状の記録紙である。しかしながら、媒体5の種類は特に限定されない。媒体5は、シート状の記録紙であってもよいし、樹脂製の媒体や、ガラス基板などの材質が硬い媒体であってもよい。また、媒体5は、厚みが比較的に厚いものであってもよいし、薄いものであってもよい。
【0015】
本実施形態では、プリンタ100は、ケーシングを有する本体10と、本体10の下面に設けられた脚11と、操作パネル12と、本体10の上部に設けられたカバー15とを備えている。操作パネル12は、例えば印刷に関する情報が表示される表示画面12aと、利用者が操作する操作ボタン12bとを有している。カバー15の下方であって、本体10の前側には、媒体5を排出するための排出口13が形成されている。排出口13の前方かつ下方の位置には、排出口13から排出された媒体5を案内するガイド14が設けられている。
【0016】
図2に示すように、プリンタ100は、ガイドレール20と、プラテン25と、媒体移動機構30と、ヘッド移動機構35とを備えている。ガイドレール20は、カバー15(図1参照)の下方に配置されている。ガイドレール20は主走査方向Yに延びている。
【0017】
プラテン25は、媒体5への印刷を行う際、媒体5を支持するものである。プラテン25には、媒体5が載置される。媒体5への印刷は、プラテン25上で行われる。本実施形態では、プラテン25は、主走査方向Yに延びており、ガイドレール20の中央部分の下方に配置されている。プラテン25は、ガイド14(図1参照)と連なっている。
【0018】
媒体移動機構30は、プラテン25に支持された媒体5を、後述のインクヘッド45(図3参照)に対して副走査方向Xに移動させる機構である。媒体移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、媒体移動機構30は、上下一対のローラ31(以下、一対のローラ31という。)と、モータ32とを有している。なお、一対のローラ31において、図2では上側のローラ31が図示されており、下側のローラ31は省略されている。一対のローラ31の数および設置位置は特に限定されない。図2では、一対のローラ31は、平面視においてプラテン25の左右両端部に設けられているが、プラテン25の左右両端部に設けられた一対のローラ31の間に、さらに1つまたは複数設けられていてもよい。本実施形態では、一対のローラ31のうち、一方のローラ31はグリットローラである。グリットローラ31には、モータ32が接続されている。モータ32が駆動することで、グリットローラ31が回転する。一対のローラ31のうち他方のローラ31は、いわゆるピンチローラである。この一対のローラ31で媒体5を挟み込み、モータ32が駆動することで、媒体5は副走査方向Xに移動する。
【0019】
ヘッド移動機構35は、プラテン25に支持された媒体5(図1参照)に対して、インクヘッド45(図3参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構35の構成は、特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構35は、プーリ36と、プーリ37と、ベルト38と、モータ39とを有している。プーリ36は、ガイドレール20の右端部分に設けられ、プーリ37は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。ベルト38は、無端状であり、プーリ36、37に巻き掛けられている。ここでは、モータ39は、プーリ36に接続されている。モータ39の駆動に伴いプーリ36が駆動することで、プーリ36、37の間においてベルト38が走行する。このことで、インクヘッド45は、主走査方向Yに移動する。
【0020】
図3は、キャリッジ50およびインクヘッド45の正面図である。図4は、キャリッジ50、および、インクヘッド45のノズル面47を示す底面図である。図5は、キャリッジ50の左側面図である。本実施形態では、図3に示すように、プリンタ100は、上述のように、位置検出システム40を備えている。位置検出システム40は、上下方向に移動することが可能なインクヘッド45が、上下方向に対して適切な位置に配置されているか否かを検出するものである。位置検出システム40は、キャリッジ50と、インクヘッド45とを備えている。
【0021】
図2に示すように、キャリッジ50はベルト38に取り付けられている。図示は省略するが、キャリッジ50は、ガイドレール20に係合している。そのため、ヘッド移動機構35によってベルト38が走行することで、キャリッジ50は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。なお、キャリッジ50の構成については後述する。
【0022】
インクヘッド45は、プラテン25に支持された媒体5(図1参照)に向かってインクを吐出する。図3に示すように、インクヘッド45は、キャリッジ50に搭載されており、キャリッジ50と共に主走査方向Yに移動する。インクヘッド45は、プラテン25(図2参照)よりも上方に配置され、キャリッジ50を介してガイドレール20に摺動自在に係合している。なお、インクヘッド45の数は特に限定されない。本実施形態では、図4に示すように、インクヘッド45の数は4つである。4つのインクヘッド45は、主走査方向Yに並んで配置されている。インクヘッド45は、インクを吐出するノズル46が形成されたノズル面47を有している。ノズル面47は、インクヘッド45の下面に位置している。
【0023】
次に、キャリッジ50の構成について詳細に説明する。キャリッジ50は、インクヘッド45を上下方向に移動させる構成を有している。本実施形態では、インクヘッド45が本発明の位置移動体の一例である。図6図7は、それぞれキャリッジ50の固定部材51の一部と、可動部材52の一部とを示す斜視図、正面図である。ここでは、キャリッジ50は、固定部材51と、固定部材51に対して上下方向に移動可能な可動部材52と、バネ53とを有している。固定部材51は、ガイドレール20(図2参照)に係合する部材であり、上下方向には移動しない部材である。固定部材51には、インクヘッド45を前方および上方から覆うカバー51aが設けられている。なお、図3において、カバー51aの一部は省略されている。固定部材51の前部には、上下方向に延びた被スライド板55が配置されている。図6に示すように、被スライド板55の左右両端には、それぞれ前方に突出した左フランジ55L、右フランジ55Rが設けられている。
【0024】
図3に示すように、可動部材52には、インクヘッド45が設けられている。可動部材52が固定部材51に対して下方に移動することで、インクヘッド45のノズル面47の位置が下方に移動する。他方、可動部材52が固定部材51に対して上方に移動することで、ノズル面47の位置が上方に移動する。可動部材52は、スライド板57と、支持板58(図4参照)とを有している。図6に示すように、スライド板57は、固定部材51の被スライド板55の前方に配置され、被スライド板55に対して上下方向にスライド移動するものである。スライド板57の上端は、被スライド板55の上端よりも下方に位置している。本実施形態では、スライド板57の左右両端部の上端には、それぞれ前方に延びた左カム支持部57L、右カム支持部57Rが設けられている。左カム支持部57Lと右カム支持部57Rとは、板状の連結部57Mによって連結されている。
【0025】
図4に示すように、支持板58は、インクヘッド45を支持するものである。支持板58は、スライド板57の下端から前方に向かって延びたものである。本実施形態では、支持板58には、嵌合孔58aが形成されている。本実施形態では、複数(ここでは4つの)の嵌合孔58aが支持板58に形成されており、4つの嵌合孔58aは、主走査方向Yに並んでいる。この嵌合孔58aにインクヘッド45が嵌め込まれた状態で、支持板58は、インクヘッド45を支持する。ここでは、図3に示すように、嵌合孔58aにインクヘッド45が嵌め込まれたとき、インクヘッド45のノズル面47は、支持板58よりも下方に位置している。
【0026】
図6に示すように、バネ53は、可動部材52に対して上向きに力を付勢するものである。ここでは、バネ53は、固定部材51の被スライド板55、および、可動部材52のスライド板57に接続されており、可動部材52を上方に引っ張るように構成されている。バネ53は、伸ばした状態で設置されている。本実施形態では、バネ53の数は2つであるが、バネ53の数は特に限定されない。
【0027】
本実施形態では、図7に示すように、位置検出システム40は、回転軸61と、左カム62と、右カム63と、位置検出機構70とを備えている。回転軸61は、主走査方向Yに延びており、固定部材51に対して回転可能に設けられている。本実施形態では、図6に示すように、回転軸61は、被スライド板55の左フランジ55Lと右フランジ55Rに架け渡されている。ここでは、図7に示すように、回転軸61の左端部は、左フランジ55Lの左方に配置されており、左フランジ55Lから左方に向かって突出している。
【0028】
図6に示すように、カム62、63は、回転軸61に設けられており、回転軸61と共に回転するものである。カム62、63は、被スライド板55の左フランジ55Lと右フランジ55Rとの間に配置されている。左カム62は、平面視において可動部材52の左カム支持部57Lと重なる位置に設けられている。左カム62は、左カム支持部57Lと接触可能である。右カム63は、回転軸61の右端部に設けられており、平面視において可動部材52の右カム支持部57Rと重なる位置に設けられている。右カム63は、右カム支持部57Rと接触可能である。
【0029】
図8A図8B図8C図8D図8Eは、それぞれ回転軸61の軸方向から見たとき(ここでは、左側面視)のカム62、63を示す図であり、カム62、63の回転位置が第1回転位置RA1、第2回転位置RA2、第3回転位置RA3、第1エラー回転位置RA4、第2エラー回転位置RA5を示す図である。本実施形態では、図8Aに示すように、カム62、63は偏心カムである。そのため、カム62、63の回転位置によって回転軸61からカム支持部57L、57Rまでの距離が変更されることで、インクヘッド45のノズル面47の上下方向の位置が変更される。なお、カム62、63の形状は同じである。そのため、以下、カム62の形状について説明する。
【0030】
カム62は、第1端面65aと、第2端面65bと、第3端面65cと、第1接続端面65dと、第2接続端面65eとを有している。図8A図8Cに示すように、第1~第3端面65a~65cは、カム62が回転することで、左カム支持部57Lと接触する。第1~第3端面65a~65cは、回転軸61の軸方向から見たとき(ここでは左側面視)において直線状である。本実施形態では、図8Aに示すように、カム62の中心C1から第1端面65aまでの長さのうち最も短い長さは、長さL1である。カム62の中心C1から第2端面65bまでの長さのうち最も短い長さは、長さL2である。長さL2は、長さL1よりも短い。カム62の中心C1から第3端面65cまでの長さのうち最も短い長さは、長さL3である。長さL3は、長さL1よりも短く、かつ、長さL2よりも短い。
【0031】
本実施形態では、カム支持部57L、57Rに接触するカム62、63の端面によって固定部材51に対する可動部材52の上下方向の位置が変更される、すなわちインクヘッド45のノズル面47の上下方向の位置が変更される。以下、インクヘッド45のノズル面47の上下方向の位置のことを、単にインクヘッド45の位置ともいう。図9A図9B図9C図9D図9Eは、それぞれインクヘッド45の上下方向の位置が第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、第1エラー位置P4、第2エラー位置P5を示す概念図である。ここでは、図9A図9Cに示すように、インクヘッド45は、予め定められた第1位置P1と、第1位置P1とは異なる第2位置P2と、第1位置P1および第2位置P2とは異なる第3位置P3とに配置可能である。インクヘッド45は、第1位置P1から第2位置P2を介して第3位置P3に移動可能であり、第3位置P3から第2位置P2を介して第1位置P1に移動可能に構成されている。すなわち、インクヘッド45の位置は、第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3の3段階で変更可能である。第1位置P1が最も低い位置であり、第3位置P3が最も高い位置であり、第2位置P2が第1位置P1と第3位置P3の間の位置である。第1位置P1から第3位置P3までの距離は特に限定されないが、例えば1mmである。
【0032】
本実施形態では、第1端面65aが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の回転位置RA1(図8A参照。以下、第1回転位置RA1という。)のとき、インクヘッド45の位置は、第1位置P1(図9A参照)となる。第2端面65bが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の回転位置RA2(図8B参照。以下、第2回転位置RA2という。)のとき、インクヘッド45の位置は、第2位置P2(図9B参照)となる。また、第3端面65cが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の回転位置RA3(図8C参照。以下、第3回転位置RA3という。)のとき、インクヘッド45の位置は、第3位置P3(図9C参照)となる。第3回転位置RA3は、第2回転位置RA2を基準として第1回転位置RA1に向かう方向とは反対方向に回転した位置である。本実施形態では、カム62、63は、第1回転位置RA1と第2回転位置RA2の間、および、第2回転位置RA2と第3回転位置RA3との間で回転可能である。
【0033】
図8D図8Eに示すように、第1、第2接続端面65d、65eは、カム62が回転することで、左カム支持部57Lと接触する。第1接続端面65dは、側面視において外側に向かって凸となるように角張っていてもよいし、湾曲していてもよい。第1接続端面65dは、第1端面65aと第2端面65bとの間に設けられ、第1端面65aおよび第2端面65bと連続している。第2接続端面65eは、側面視において外側に向かって凸となるように角張っていてもよいし、湾曲していてもよい。第2接続端面65eは、第2端面65bと第3端面65cとの間に設けられ、第2端面65bおよび第3端面65cと連続している。
【0034】
本実施形態では、図8Dに示すように、第1接続端面65dが左カム支持部57Lと接触しているようなカムの位置のとき、インクヘッド45の位置は、図9Dに示すように、第1位置P1と第2位置P2との間の位置となる。図8Eに示すように、第2接続端面65eが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の位置のとき、インクヘッド45の位置は、図9Eに示すように、第2位置P2と第3位置P3との間の位置となる。これら第1位置P1と第2位置P2との間の位置、および、第2位置P2と第3位置P3との間の位置は、第1~第3位置P1~P3とは異なるため、エラーとなる上下方向の位置であり、適切ではない位置である。ここで、第1接続端面65dが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の回転位置RA4(図8D参照。以下、第1エラー回転位置RA4という。)におけるインクヘッド45の位置を、図9Dに示すように、第1エラー位置P4という。第2接続端面65eが左カム支持部57Lと接触しているようなカム62の回転位置RA5(図8E参照。以下、第2エラー回転位置RA5という。)におけるインクヘッド45の位置を、図9Eに示すように、第2エラー位置P5という。
【0035】
次に、位置検出機構70について説明する。位置検出機構70は、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する機構である。ここでは、位置検出機構70は、インクヘッド45の位置が、第1位置P1から第3位置P3の各位置と、第1位置P1および第2位置P2との間、並びに、第2位置P2および第3位置P3の間の第1位置P1から第3位置P3のいずれにも該当しない中間位置(ここでは第1エラー位置P4および第2エラー位置P5)との何れかの位置であるか検出可能に構成されている。本実施形態では、位置検出機構70は、カム62、63の回転位置に基づいて、インクヘッド45の位置を検出する。図10A図10B図10C図10D図10Eは、それぞれ遮蔽部材71と、第1センサ81と、第2センサ82との位置関係を示す左側面図であり、それぞれ遮蔽部材71の回転位置である第1遮蔽位置RB1、第2遮蔽位置RB2、第3遮蔽位置RB3、第1エラー遮蔽位置RB4、第2エラー遮蔽位置RB5を示す図である。図11は、遮蔽部材71の斜視図である。図10Aに示すように、位置検出機構70は、遮蔽部材71と、レバー72と、第1センサ81と、第2センサ82とを備えている。
【0036】
図7に示すように、遮蔽部材71は、回転軸61に設けられており、回転軸61およびカム62、63と共に回転するものである。遮蔽部材71は、本発明の位置検出体に対応している。遮蔽部材71は、インクヘッド45の移動に伴って、第1センサ81および第2センサ82に対して相対的な位置が変化するように構成されている。ここでは、遮蔽部材71は、回転軸61の左端部に設けられており、左カム62よりも左方に配置されている。この遮蔽部材71の回転位置を2つのセンサ81、82によって検出することで、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する。
【0037】
本実施形態では、図11に示すように、遮蔽部材71は、遮蔽本体74と、遮蔽部75とを備えている。遮蔽本体74は、回転軸61に設けられる板状の部位である。遮蔽部75は、遮蔽本体74から回転軸61の軸方向(ここでは、左右方向)と直交する方向(ここでは、遮蔽本体74の中心C2(図10A参照)から放射状に延びた方向)に延びた部位である。遮蔽部75は、上記の第1位置P1から第3位置P3の各位置に対応しており、本発明の検出部の一例である。遮蔽部75は、第1遮蔽部76と、第2遮蔽部77と、第3遮蔽部78とを有している。第1~第3遮蔽部76~78は、それぞれ遮蔽本体74の中心C2から放射状に延びた方向に向かって延びており、遮蔽本体74の端部と連続した板状のものである。本実施形態では、図11において、遮蔽本体74の中心C2を軸として反時計回りに、第1遮蔽部76、第2遮蔽部77、および、第3遮蔽部78の順に並んで配置されている。ここでは、第1遮蔽部76と、第2遮蔽部77との間には、第1遮蔽空間79aが形成されている。第2遮蔽部77と第3遮蔽部78との間には、第2遮蔽空間79bが形成されている。
【0038】
レバー72は、利用者が操作するものであり、利用者がレバー72を操作することでインクヘッド45の上下方向の位置が変更される。ここでは、レバー72は、遮蔽部材71に設けられている。本実施形態では、レバー72は、第1遮蔽部76と連続しており、第1遮蔽部76から遮蔽本体74とは反対側に向かって延びている。そして、レバー72は、先端に向かうにしたがって、第1遮蔽部76とは反対側に湾曲している。本実施形態では、利用者がレバー72を下げる、または、レバー72を上げることで、遮蔽部材71が回転する。この遮蔽部材71の回転に伴い、回転軸61およびカム62、63が回転する。そして、カム62、63の回転位置に基づいて、インクヘッド45のノズル面47の高さが変更される。
【0039】
次に、第1センサ81および第2センサ82について説明する。第1センサ81および第2センサ82は、遮蔽部材71の遮蔽部75を検出可能に構成され、遮蔽部75を検出するか否かによりONまたはOFFが検知される。本実施形態では、第1センサ81および第2センサ82は、遮蔽部材71の回転位置を検出することで、インクヘッド45の上下方向の位置を検出するものである。第1センサ81および第2センサ82の種類は特に限定されないが、ここではフォトセンサである。図12は、第1センサ81および第2センサ82を示す正面図である。図12に示すように、第1センサ81と第2センサ82とは同じ構成である。第1センサ81および第2センサ82は、それぞれ光を発する発光部83aと、発光部83aと対向し、発光部83aから発せられた光を受光する受光部83bとを有している。第1センサ81および第2センサ82は、それぞれ発光部83aと、受光部83bとの間に遮蔽部75が位置しているか否かを検出することで、遮蔽部材71の回転位置を検出する。
【0040】
第1センサ81および第2センサ82の位置は固定されている。ここでは、遮蔽部75と、第1センサ81および第2センサ82とは、インクヘッド45の移動に伴って、相対的な位置が変化するように構成されている。本実施形態では、第1センサ81および第2センサ82は、回転軸61の左端部の上方において、発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部材71の遮蔽部75が通過可能な位置に配置されている。ここでは、図10Aに示すように、第1センサ81および第2センサ82は、前後に並ぶように配置されており、第1センサ81の前方に第2センサ82が配置されている。
【0041】
以下の説明において、「第1センサ81(または第2センサ82)内に位置する」とは、第1センサ81(または第2センサ82)の発光部83aと受光部83bとの間に位置することをいう。本実施形態では、インクヘッド45の位置が第1位置P1(図9A参照)のとき、すなわち、カム62、63の回転位置が第1回転位置RA1(図8A参照)のとき、図10Aに示すように、第1センサ81内には第3遮蔽部78が位置し、第2センサ82内には第2遮蔽空間79bが位置する。図10Aに示すような遮蔽部材71の回転位置を、第1遮蔽位置RB1という。第1遮蔽位置RB1は、本発明の第1検出位置の一例である。ここでは、第1遮蔽位置RB1における第1センサ81および第2センサ82のそれぞれの検出結果(具体的には、第1センサ81内に遮蔽部75が配置され、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されないときの第1センサ81および第2センサ82のそれぞれの検出結果)が、本発明の第1正常検出結果である。以下、第1センサ81の検出結果を第1センサ検出結果といい、第2センサ82の検出結果を第2センサ検出結果ともいう。
【0042】
インクヘッド45の位置が第2位置P2(図9B参照)のとき、すなわちカム62、63の回転位置が第2回転位置RA2(図8B参照)のとき、図10Bに示すように、第1センサ81内には第2遮蔽空間79bが位置し、第2センサ82内には第1遮蔽空間79aが位置する。本実施形態では、図10Bに示すような遮蔽部材71の回転位置を、第2遮蔽位置RB2という。第2遮蔽位置RB2は、本発明の第2検出位置の一例である。ここでは、第2遮蔽位置RB2における第1センサ81および第2センサ82のそれぞれの検出結果(具体的には、第1センサ81内および第2センサ82内にそれぞれ遮蔽部75が配置されないときの第1センサ検出結果および第2センサ検出結果)が、本発明の第2正常検出結果である。
【0043】
インクヘッド45の位置が第3位置P3(図9C参照)のとき、すなわちカム62、63の回転位置が第3回転位置RA3(図8C参照)のとき、図10Cに示すように、第1センサ81内には第1遮蔽空間79aが位置し、第2センサ82内には第1遮蔽部76が位置する。本実施形態では、図10Cに示すような遮蔽部材71の回転位置を、第3遮蔽位置RB3という。第3遮蔽位置RB3は、本発明の第3検出位置の一例である。ここでは、第3遮蔽位置RB3における第1センサ81および第2センサ82のそれぞれの検出結果(具体的には、第1センサ81内に遮蔽部75が配置されず、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されるときの第1センサ検出結果および第2センサ検出結果)が、本発明の第3正常検出結果である。
【0044】
また、本実施形態では、インクヘッド45の位置が第1エラー位置P4(図9D参照)のとき、すなわちカム62、63の回転位置が第1エラー回転位置RA4(図8D参照)のとき、図10Dに示すように、第1センサ81内には第3遮蔽部78が位置し、第2センサ82内には第2遮蔽部77が位置する。本実施形態では、図10Dに示すような遮蔽部材71の回転位置を、第1エラー遮蔽位置RB4という。第1エラー遮蔽位置RB4は、本発明の第1エラー検出位置の一例である。
【0045】
インクヘッド45の位置が第2エラー位置P5(図9E参照)のとき、すなわちカム62、63の回転位置が第2エラー回転位置RA5(図8E参照)のとき、第1センサ81内には第2遮蔽部77が位置し、第2センサ82内には第1遮蔽部76が位置する。図10Eに示すような遮蔽部材71の回転位置を、第2エラー遮蔽位置RB5という。第2エラー遮蔽位置RB5は、本発明の第2エラー検出位置の一例である。ここでは、第1エラー遮蔽位置RB4および第2エラー遮蔽位置RB5における第1センサ81および第2センサ82のそれぞれの検出結果(具体的には、第1センサ81内および第2センサ82内にそれぞれ遮蔽部75が配置されないときの第1センサ検出結果および第2センサ検出結果)が、本発明のエラー検出結果である。本実施形態では、上記第1正常検出結果と、上記第2正常検出結果と、上記第3正常検出結果と、上記エラー検出結果は、互いに異なる検出結果となる。
【0046】
このように、第1センサ81および第2センサ82がそれぞれ遮蔽部75に遮蔽されたか否かを検出することで、遮蔽部材71の回転位置を検出することができる。そして、遮蔽部材71の回転位置からインクヘッド45の上下方向の位置を検出することができる。
【0047】
図13は、プリンタ100のブロック図である。図13に示すように、プリンタ100は、制御装置90を備えている。制御装置90は、媒体5への印刷、および、インクヘッド45の上下方向の位置の検出に関する制御を行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、I/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置90は、本体10の内部に設けられている。ただし、制御装置90は本体10の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置90は、本体10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介して本体10と通信可能に接続されている。
【0048】
制御装置90は、操作パネル12と、媒体移動機構30のモータ32と、ヘッド移動機構35のモータ39と、インクヘッド45と、第1センサ81と、第2センサ82に電気的に接続しており、操作パネル12、モータ32、モータ39、インクヘッド45、第1センサ81および第2センサ82をそれぞれ制御する。制御装置90は、操作パネル12の表示画面12a(図1参照)に印刷に関する情報などを表示する。制御装置90は、媒体移動機構30のモータ32の駆動を制御して、グリットローラ31の回転を制御する。このことで、制御装置90は、プラテン25に支持された媒体5における副走査方向Xへの移動を制御する。制御装置90は、ヘッド移動機構35のモータ39の駆動を制御することで、プーリ36の回転、および、ベルト38(図2参照)の走行を制御する。このことで、制御装置90は、インクヘッド45の主走査方向Yへの移動を制御する。制御装置90は、インクヘッド45からインクを吐出するタイミングを制御する。制御装置90は、第1センサ81および第2センサ82の検出結果に基づいて、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する。
【0049】
本実施形態では、制御装置90は、記憶部91と、センサ受信部92と、位置検出部94と、位置判定部96と、エラー通知部98と、通知部99とを備えている。制御装置90を構成する各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置90を構成する各部の具体的な制御については後述する。
【0050】
以上、本実施形態に係るプリンタ100の構成について説明した。次に、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する手順について、図14のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
本実施形態では、第1センサ81および第2センサ82は、発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が配置されて、発光部83aから発せられた光が遮蔽されたとき、すなわちONのとき、センサ受信部92に対して「1」の信号を送信するように構成されている。他方、第1センサ81および第2センサ82において、発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽空間79a、79bの何れかが位置しているとき、すなわち遮蔽部75が位置していないとき、発光部83aから発せられた光は遮蔽されずに、受光部83bに到達し易い。このように、発光部83aからの光が遮蔽されていないとき、第1センサ81および第2センサ82は、OFFとなり、センサ受信部92に対して「0」の信号を送信するように構成されている。なお、本実施形態では、第1センサ81および第2センサ82には、導線85(図7参照)が接続されており、この導線85が断線している場合、第1センサ81および第2センサ82は、「1」の信号を送信するように構成されている。
【0052】
図15は、対応テーブルTBを示す図である。ここでは、図15に示すように、第1センサ81および第2センサ82のONまたはOFFを検知することにより4つの検出パターンが設定されている。言い換えると、2つのセンサ81、82の検出パターンの組合せは、パターンA~Dの4通りである。パターンA~Dは、インクヘッド45の第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3および中間位置(詳しくは、第1エラー位置P4および第2エラー位置P5)の何れかに割り当てられている。ここでは、パターンA~Dによって、遮蔽部材71の回転位置が、第1遮蔽位置RB1、第2遮蔽位置RB2、第3遮蔽位置RB3、および、エラー遮蔽位置(第1エラー遮蔽位置RB4と第2エラー遮蔽位置RB5の何れかのエラー遮蔽位置)のうちのどの位置かを検出することできる。
【0053】
図14のステップS101では、センサ受信部92は、第1センサ81および第2センサ82から遮蔽部材71の回転位置に関する情報を受信する。言い換えると、センサ受信部92は、第1センサ81および第2センサ82から、それぞれ発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が配置されているか否かの検出に関する信号を受信する。ここでは、制御装置90は、第1センサ81および第2センサ82に検出信号を送信する。上記検出信号を受信した第1センサ81および第2センサ82は、発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が配置されているか否かを検出する。本実施形態では、第1センサ81および第2センサ82は、発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が位置しているとき、ONであり、センサ受信部92に対して「1」の信号を送信する。他方、第1センサ81および第2センサ82は、発光部83aからの光が遮蔽されていないとき、OFFであり、センサ受信部92に対して「0」の信号を送信する。
【0054】
本実施形態では、遮蔽部材71の回転位置が第1遮蔽位置RB1(図10A参照)のとき、第1センサ81内には、第3遮蔽部78が配置され、第2センサ82内には、第2遮蔽空間79bが配置される。この場合におけるセンサ81、82の検出パターンは、図15に示すように、パターンAである。パターンAでは、第1センサ81は「1」の信号を送信し、第2センサ82は「0」の信号を送信する。
【0055】
遮蔽部材71の回転位置が第2遮蔽位置RB2(図10B参照)のとき、第1センサ81内には第2遮蔽空間79bが位置し、第2センサ82内には第1遮蔽空間79aが位置する。この場合におけるセンサ81、82の検出パターンは、パターンBである。パターンBでは、第1センサ81および第2センサ82は、それぞれ「0」の信号を送信する。また、遮蔽部材71の回転位置が第3遮蔽位置RB3(図10C参照)のとき、第1センサ81内には第1遮蔽空間79aが配置され、第2センサ82内には第1遮蔽部76が配置される。この場合におけるセンサ81、82の検出パターンは、パターンCである。パターンCでは、第1センサ81は「0」の信号を送信し、第2センサ82は「1」の信号を送信する。
【0056】
遮蔽部材71の回転位置が第1エラー遮蔽位置RB4(図10D参照)のとき、第1センサ81および第2センサ82には、それぞれ第3遮蔽部78および第2遮蔽部77が配置される。遮蔽部材71の回転位置が第2エラー遮蔽位置RB5(図10E参照)のとき、第1センサ81および第2センサ82には、それぞれ第2遮蔽部77および第1遮蔽部76が配置される。よって、遮蔽部材71の回転位置が第1エラー遮蔽位置RB4または第2エラー遮蔽位置RB5のとき、センサ81、82の検出パターンは、パターンDである。パターンDでは、第1センサ81および第2センサ82は、それぞれ「1」の信号を送信する。なお、センサ受信部92が受信した第1センサ81および第2センサ82の信号は、記憶部91に記憶される。
【0057】
センサ受信部92によって第1センサ81および第2センサ82からの信号を受信した後、図14のステップS102では、位置検出部94は、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する。ここでは、第1センサ81および第2センサ82から送信された信号に基づいて、カム62、63の回転位置を検出することができる。そして、カム62、63の回転位置から、インクヘッド45の位置を検出することができる。
【0058】
本実施形態では、記憶部91には、図15に示すような対応テーブルTBが記憶されている。この対応テーブルTBは、第1センサ81からの信号、および、第2センサ82からの信号と、カム62、63の回転位置と、インクヘッド45の上下方向の位置とが関連付けられたテーブルである。例えば、センサ81、82の検出パターンがパターンAのとき、対応テーブルTBに基づいて、カム62、63の回転位置が第1回転位置RA1であり、インクヘッド45の位置が第1位置P1であることを検出することができる。例えばセンサ81、82の検出パターンがパターンDのとき、対応テーブルTBに基づいて、カム62、63の回転位置がエラー回転位置RA4、RA5の何れかであることを検出することができる。本実施形態では、位置検出部94は、センサ受信部92によって受信された第1センサ81の信号、および、第2センサ82の信号に基づいて、対応テーブルTBを利用して、インクヘッド45の上下方向の位置を検出する。
【0059】
次に、図14のステップS103では、位置判定部96は、インクヘッド45の位置がエラー位置P4、P5であるか否かを判定する。ここでは、位置判定部96は、例えば第1センサ81の信号が「1」であるか否かを判定すると共に、第2センサ82の信号が「1」であるか否かを判定する。第1センサ81および第2センサ82の両方の信号が「1」の場合、カム62、63の回転位置がエラー回転位置RA4、RA5の何れかである。この場合、位置判定部96は、インクヘッド45の位置がエラー位置P4、P5の何れかであると判定し、次にステップS104に進む。
【0060】
ステップS104では、エラー通知部98は、利用者に対して、インクヘッド45の上下方向の位置が適切ではない旨のエラーを通知する。なお、このエラーを通知する方法は特に限定されない。例えば、エラー通知部98は、操作パネル12の表示画面12a(図1参照)に、エラーメッセージを表示してもよい。また、本体10にはLEDなどの光源(図示せず)が設けられており、エラー通知部98は、上記光源を光らせることで利用者にエラーを通知してもよい。また、本体10にはブザー(図示せず)が設けられており、エラー通知部98は、上記ブザーによって音を鳴らして利用者にエラーを通知してもよい。
【0061】
一方、ステップS103において、位置判定部96によってインクヘッド45の位置が第1エラー位置P4ではなく、かつ、第2エラー位置P5でもない判定された後の処理は、特に限定されない。例えば、ステップS105のように、通知部99は、表示画面12aに、インクヘッド45の上下方向の位置(第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3の何れかの位置)に関する情報を表示してもよい。ただし、ステップS103において、NOと判定された場合、何も処理が行われなくてもよい。
【0062】
以上、本実施形態では、遮蔽部材71の遮蔽部75の位置に基づいて、第1センサ81および第2センサ82における検出パターンは4つに設定される(図15参照)。4つの検出パターンA~Dは、それぞれインクヘッド45の第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3のみならず、中間位置(詳しくは、第1エラー位置P4および第2エラー位置P5)にも割り当てられている。第1エラー位置P4および第2エラー位置P5は、第1位置P1から第3位置P3の何れにも該当しない位置であり、インクヘッド45が適切な位置に配置されていない状態を示す位置である。ここでは、遮蔽部材71の遮蔽部75の位置に基づいて、第1センサ81および第2センサ82における検出パターンA~Dから、インクヘッド45が第1エラー位置P4および第2エラー位置P5の何れかに配置されているか否かを判定することができる。したがって、インクヘッド45が適切な位置に配置されていない状態を検出することができる。
【0063】
カム62、63の回転位置が第1回転位置RA1(図8A参照)と第2回転位置RA2(図8B参照)との間の第1エラー回転位置RA4(図8D参照)のときの遮蔽部材71の回転位置は、図10Dに示すように、第1エラー遮蔽位置RB4である。この第1エラー遮蔽位置RB4は、第1センサ81による検出結果と、第2センサ82による検出結果に基づいて検出することができる位置である。本実施形態では、図8Dに示すように、カム62、63の回転位置が第1エラー回転位置RA4のとき、インクヘッド45の上下方向の位置は、第1位置P1(図9A参照)および第2位置P2(図9B参照)とは異なる位置となり、インクヘッド45は適切な位置に配置されていない。このように、第1センサ81および第2センサ82の検出結果に基づいて検出可能な第1エラー遮蔽位置RB4と、インクヘッド45が適切に配置されていないときのインクヘッド45の位置である第1エラー位置P4とを関連付けることで、第1センサ81および第2センサ82の検出結果から、インクヘッド45が適切な位置に配置されているか否かを判定することができる。よって、インクヘッド45が適切な位置に配置されていない場合、第1センサ81および第2センサ82の検出結果から、利用者にエラーを通知することができる。
【0064】
本実施形態では、位置判定部96は、センサ受信部92によって受信した信号に基づいて、遮蔽部材71の回転位置が第1エラー遮蔽位置RB4(図10D参照)または第2エラー遮蔽位置RB5(図10E参照)の何れかであるか否かを判定する。エラー通知部98は、位置判定部96によって遮蔽部材71の回転位置が第1エラー遮蔽位置RB4または第2エラー遮蔽位置RB5の何れかであると判定されたとき、利用者にエラーを通知する。
【0065】
本実施形態では、インクヘッド45の上下方向の位置のうち、適切に配置されていない位置は、第1位置P1と第2位置P2との間の第1エラー位置P4(図9D参照)、および、第2位置P2と第3位置P3との間の第2エラー位置P5(図9E参照)の2つである。ここでは、センサ81、82によって検出することが可能な遮蔽部材71の回転位置として、2つのエラー遮蔽位置RB4、RB5が設定されている。2つのエラー遮蔽位置RB4、RB5に対応した第1センサ81および第2センサ82の検出結果は同じであり、ここでは、センサ81、82の検出パターンはパターンD(図15参照)である。本実施形態では、この2つのエラー遮蔽位置RB4、RB5と、インクヘッド45が適切に配置されていない第1エラー位置P4、第2エラー位置P5と、をそれぞれ関連付けている。よって、インクヘッド45の適切ではない位置が2つ存在している場合であっても、第1センサ81および第2センサ82の2つのセンサの検出結果から、インクヘッド45が適切な位置に配置されているか否かを判定することができる。
【0066】
本実施形態では、第1エラー遮蔽位置RB4および第2エラー遮蔽位置RB5におけるセンサ81、82の検出結果は、共に発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が配置されている検出結果である。センサ81、82は、それぞれ発光部83aと受光部83bとの間に遮蔽部75が配置されているとき、予め定められた検出信号(ここでは、「1」の信号)を送信する。また、センサ81、82は、導線85(図7参照)が断線しているとき、上記予め定められた検出信号(ここでは、「1」の信号)を送信する。このように、センサ81、82に接続された導線85が断線しているときに、センサ81、82が送信するそれぞれの信号は、遮蔽部材71の回転位置がエラー遮蔽位置RB4、RB5に配置されているときにセンサ81、82が送信するそれぞれの信号と同じである。よって、第1センサ81に接続された導線85、または、第2センサ82に接続された導線85が断線している場合であっても、利用者にエラーを通知することができる。
【0067】
本実施形態では、図15に示すように、第1遮蔽位置RB1におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第1正常検出結果)は、パターンAであり、第1センサ81内に遮蔽部75が配置され、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されていない検出結果である。第2遮蔽位置RB2におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第2正常検出結果)は、パターンBであり、第1センサ81内に遮蔽部75が配置されず、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されていない検出結果である。また、第3遮蔽位置RB3におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第3正常検出結果)は、パターンCであり、第1センサ81内に遮蔽部75が配置されず、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されている検出結果である。位置検出部94は、センサ受信部92によって受信した信号に基づいて、遮蔽部材71の回転位置からインクヘッド45の上下方向の位置を検出する。
【0068】
このように、本実施形態では、遮蔽部材71の回転位置である第1遮蔽位置RB1、第2遮蔽位置RB2、第3遮蔽位置RB3に対応した第1センサ81の検出結果と、第2センサ82の検出結果との組合せが異なる。また、遮蔽位置RB1、RB2、RB3は、それぞれカム62、63の回転位置である回転位置RA1、RA2、RA3に関連付けられている。よって、第1センサ81の検出結果と、第2センサ82の検出結果から、カム62、63の回転位置を一意的に検出することができる。したがって、第1センサ81の検出結果と、第2センサ82の検出結果から、インクヘッド45の上下方向の位置を一意的に検出することができる。
【0069】
本実施形態では、図11に示すように、遮蔽部材71の遮蔽部75は、第1遮蔽部76と、第2遮蔽部77と、第3遮蔽部78とを有している。第1遮蔽部76は、回転軸61の軸方向から見たとき、遮蔽本体74から遮蔽本体74の外側に向かって延びている。第2遮蔽部77は、第1遮蔽部76と異なる位置において、回転軸61の軸方向から見たとき、遮蔽本体74から遮蔽本体74の外側に向かって延びている。第3遮蔽部78は、第2遮蔽部77を基準として、第1遮蔽部76とは反対側の位置において、回転軸61の軸方向から見たとき、遮蔽本体74から遮蔽本体74の外側に向かって延びている。第1遮蔽部76と第2遮蔽部77との間には、第1遮蔽空間79aが形成されている。第2遮蔽部77と第3遮蔽部78との間には、第2遮蔽空間79bが形成されている。
【0070】
図10Aに示すように、第1遮蔽位置RB1におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第1正常検出結果)は、第1センサ81内に第3遮蔽部78が配置され、第2センサ82内に第2遮蔽空間79bが配置されている検出結果である。図10Bに示すように、第2遮蔽位置RB2におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第2正常検出結果)は、第1センサ81内に第2遮蔽空間79bが配置され、第2センサ82内に第1遮蔽空間79aが配置されている検出結果である。図10Cに示すように、第3遮蔽位置RB3におけるセンサ81、82の検出結果(言い換えると、第3正常検出結果)は、第1センサ81内に第1遮蔽空間79aが配置され,第2センサ82内に第1遮蔽部76が配置されている検出結果である。
【0071】
図10Dに示すように、第1エラー遮蔽位置RB4におけるセンサ81、82の検出結果は、第1センサ81内に第3遮蔽部78が配置され、第2センサ82内に第2遮蔽部77が配置されている検出結果である。図10Eに示すように、第2エラー遮蔽位置RB5におけるセンサ81、82の検出結果は、第1センサ81内に第2遮蔽部77が配置され、第2センサ82内に第1遮蔽部76が配置されている検出結果である。
【0072】
本実施形態では、図11に示すような遮蔽部材71の形状にすることで、2つのセンサ81、82を利用して、インクヘッド45の位置が、第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、または、エラー位置P4、P5の何れの位置かを一意的に検出することができる。
【0073】
本実施形態では、遮蔽部材71は、回転軸61を軸にして回転するように構成されている。ここでは、遮蔽部材71が例えば上下方向、前後方向、左右方向に移動せずに、インクヘッド45の位置に連動して、回転している。よって、遮蔽部材71が移動するスペースを確保しなくてもよいため、本発明を省スペースで実現することができる。
【0074】
<変形例>
上記実施形態では、本発明の位置検出体の一例である遮蔽部材71は、回転軸61を中心に回転するものであった。しかしながら、本発明の位置検出体は、回転するものに限定されない。図16は、変形例に係る位置検出体171、第1センサ181および第2センサ182を示す概念図である。図16に示すように、検出部175を有する位置検出体171は、上下方向に直線状に移動するものであってもよい。この場合、インクヘッド45は、図示しないリンク機構を介して位置検出体171の上下方向の移動に連動して上下方向に直線状に移動するように構成されている。そのため、インクヘッド45が第1位置P1(図9A参照)、第2位置P2(図9B参照)、第3位置P4(図9C参照)、第1エラー位置P4(図9D参照)および第2エラー位置P5(図9E参照)に配置されているとき、位置検出体171の上下方向の位置は、一意的に決定される。
【0075】
本実施形態では、第1センサ181および第2センサ182は、上下方向に並んで配置されている。ここでは、第1センサ181および第2センサ182によって、位置検出体171の上下方向の位置を検出することで、インクヘッド45の上下方向の位置を検出することができる。よって、第1センサ181および第2センサ182の検出結果から、インクヘッド45が適切な位置に配置されているか否かを判定することができる。そして、インクヘッド45が適切な位置に配置されていない場合、第1センサ181および第2センサ182の検出結果から、利用者にエラーを通知することができる。
【0076】
上記実施形態では、本発明の位置変更体はインクヘッド45であった。しかしながら、本発明の位置変更体は、インクヘッド45に限定されない。本発明の位置変更体は、上下方向に移動可能なキャリッジであってもよい。また、本発明の位置変更体は、例えば上下方向に移動可能なピンチローラであってもよい。ピンチローラは、グリットローラと共に媒体5を挟み込んで、媒体5を搬送するものである。ピンチローラは、媒体5の厚みに応じて上下方向に移動可能に構成されている。
【0077】
また、本発明の位置変更体は、インクヘッド45のように上下方向に移動するものに限定されず、回転するものであってもよい。この場合、位置変更体は、回転することによって、第1位置、第2位置、第3位置、第1位置と第2位置との間の第1エラー位置、および、第2位置と第3位置との間の第2エラー位置との間で位置変更が可能である。
【0078】
上記実施形態では、第1センサ81および第2センサ82の位置が固定され、位置検出体の一例である遮蔽部材71が、インクヘッド45の上下方向の移動に連動して移動していた。しかしながら、遮蔽部材71が固定で、第1センサ81および第2センサ82が、インクヘッド45の上下方向の移動に連動して移動するように構成されていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、第1センサ81および第2センサ82は、フォトセンサであった。しかしながら、第1センサ81および第2センサ82は、ONまたはOFFを検出できるものであればよく、例えばマイクロスイッチ(言い換えると、リミットスイッチ)であってもよい。
【0080】
上記実施形態では、インクヘッド45の上下方向の適切な位置は、第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3であり、インクヘッド45の上下方向の位置を3段階で調整することが可能であった。しかしながら、インクヘッド45は、上下方向の位置を2段階で調整することが可能なものであってもよいし、4段階以上で調整することが可能なものであってもよい。例えば、インクヘッド45の上下方向の位置を4段階で調整可能な場合、インクヘッド45の上下方向の位置は、例えば低い位置から順に第1位置、第2位置、第3位置および第4位置とすることができる。この場合、第1位置と第2位置との間の位置、第2位置と第3位置との間の位置、および、第3位置と第4位置との間の位置が、それぞれエラー位置となる。この場合、位置検出機構70は、上記4つのエラー位置を検出するように構成されているとよく、センサの数は、3つ以上であってもよい。
【0081】
上記実施形態では、インクヘッド45の位置がエラー位置P4、P5のときにおける遮蔽部材71の回転位置は、第1センサ81内および第2センサ82内に遮蔽部75が配置されるような位置であった。しかしながら、インクヘッド45の位置がエラー位置P4、P5のときにおける遮蔽部材71の回転位置は、第1センサ81内に遮蔽部75が配置され、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されていないような位置であってもよいし、第1センサ81内に遮蔽部75が配置されず、第2センサ82内に遮蔽部75が配置されているような位置であってもよい。また、インクヘッド45の位置がエラー位置P4、P5のときにおける遮蔽部材71の回転位置は、第1センサ81内および第2センサ82内にそれぞれ遮蔽部75が配置されていない位置であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、回転軸61に設けられたカム62、63の数は2つであった。しかしながら、カム62、63の数は、2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、位置検出機構70は、プリンタ100に備えられていたが、位置検出機構70は、プリンタ100以外の装置、例えば切削加工機や三次元造形装置などに備えられてもよい。この場合、位置検出機構70は、切削加工機や三次元造形装置などにおいて、カムの回転に伴って位置が変更されるような部材に対して適用されるものであるとよい。
【符号の説明】
【0084】
40 位置検出システム(プリンタ用の位置検出システム)
45 インクヘッド(位置変更体)
61 回転軸
62、63 カム
70 位置検出機構
71 遮蔽部材
81 第1センサ
82 第2センサ
90 制御装置
92 センサ受信部
94 位置検出部
96 位置判定部
98 エラー通知部
100 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16