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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20221118BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61F13/56 100
A61F13/472
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019030949
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020130821
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 奨
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0131372(US,A1)
【文献】特開昭63-003858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体は、前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有し、
前記本体の前記幅方向の各外方に延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備えており、
少なくとも前記第1ウィングは、前記本体とは別体の第1シートが、前記本体に離脱可能に接合されることによって形成されており、
前記第2ウィングは、前記本体とは別体の第2シートが、前記本体に接合されることによって形成されており、
前記第1シートは、前記第2シートより前記本体から離脱しやすい、収性物品。
【請求項2】
前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、
前記前後方向に延びる中心線から前記第1接合部の前記幅方向の外端までの距離は、前記第2接合部の前記幅方向の外端までの距離より短い、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、
前記第1接合部の前端は前記第2接合部の前端より後方に位置するか、且つ/又は前記第1接合部の後端は、前記第2接合部の後端より前方に位置する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、
前記第1接合部の単位面積当たりの接合強度は、前記第2接合部の単位面積当たりの接合強度より小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体は、前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有し、
前記本体の前記幅方向の各外方に延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備えており、
少なくとも前記第1ウィングは、前記本体とは別体の第1シートが、前記本体に離脱可能に接合されることによって形成されており、
前記第2ウィングは、前記本体から離脱不能になっている、収性物品。
【請求項6】
前記本体は、前記表面シート側の前記幅方向の両端部に前記前後方向に沿ってサイド不織布を備えており、
前記裏面シート及び前記サイド不織布はそれぞれ、前記幅方向の外方に延出部を有しており、前記第2ウィングは、両延出部が接合されてなる、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第1ウィング及び前記第2ウィングはそれぞれ、前記裏面シート側に第1粘着部及び第2粘着部を有しており、
前記第1ウィング及び第2ウィングは、装着時に下着側に折り返され、重ね合せられ、前記第1粘着部又は前記第2粘着部によって貼り合せられている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁用パッド、パンティライナー(おりものシート)といった吸収性物品として、本体の幅方向の両外方に延出した一対のフラップ状の部分、すなわちウィングを備えたものが知られている。各ウィングは、装着時には下着側に折り返され、裏面シート側に設けられた粘着部等によって下着に貼り付けられる。これにより、吸収性物品を下着により確実に固定することができる。
【0003】
このようなウィングを備えた吸収性物品を下着から取り外す際、折り返されて貼り付けられていたウィングを下着から剥がす手間が生じるため、吸収性物品の取外し動作は、ウィングのない吸収性物品に比べて煩雑になることがあった。そこで、下着からの吸収性物品の取外しを容易にした構成が工夫されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、本体部から幅方向外側に延出し、下着に装着された状態で互いに重なり合う一対の第1ウィング及び第2ウィングを備え、第1ウィングが、前後方向に延びる引裂誘導部を備えた吸収性物品が開示されている。特許文献1に開示の構成では、吸収性物品本体を持って下着から剥がすことで引裂誘導部においてウィングが破断し、吸収性物品が下着から外れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6146783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような構成では、ウィングの破断のために比較的大きな力を要することがあり、吸収性物品を下着から容易に取り外すことができない場合がある。その一方で、破断に要する力を軽減するために引裂誘導部をより脆弱にした場合、装着動作中又は装着中にウィングが破断してしまい、吸収性物品を下着により確実に固定するというウィングの本来の機能を発揮できない可能性がある。
【0007】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、ウィング付きの吸収性物品において、ウィングの本来の機能を確保しつつ、吸収性物品の取外し動作をより容易にしたものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体を備えた吸収性物品であって、前記本体は、前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有し、前記本体の前記幅方向の各外方に延出する、対をなす第1ウィング及び第2ウィングを備えており、少なくとも前記第1ウィングは、前記本体とは別体の第1シートが、前記本体に離脱可能に接合されることによって形成されている。
【0009】
上記第一の態様によれば、少なくとも第1ウィングが、本体と別体の第1シートが本体に離脱可能に接合されている。よって、吸収性物品の取外し動作においては、ウィングを破断させることによってではなく、本体と第1シートとを引き剥がすことによってウィングを分離することができる。より具体的に述べると、収性物品を下着から取り外す際には通常、吸収性物品本体の端部を持って引っ張って下着から剥がすが、この動作は、本体を第1シートから剥がすための動作にもなり得る。よって、このような通常の吸収性物品の取外し動作によって、本体と第1シートとを容易に引き剥がすことができる。そして、第1シートが離脱した後の本体は、第2ウィングとともに下着から容易に取り外すことができる。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記第2ウィングは、前記本体とは別体の第2シートが、前記本体に接合されることによって形成されており、前記第1シートは、前記第2シートより前記本体から離脱しやすい。
【0011】
上記第二の態様によれば、第1ウィング及び第2ウィングがともに、本体とは別体のシートを接合することによって形成されるので、左右でよりバランスのとれた構成とすることができ、装着中の違和感等を軽減することができる。また、本体に用いられる資材は、ウィングの延出がない複雑でない形状に切り出すことができるので、資材を節約することができる。そして、第1シートが第2シートに比べて離脱しやすくなっていることから、吸収性物品の取外し動作時に、本体と第1シートとをより容易に引き剥がすことができ、吸収性物品を下着から容易に取り外すことができるという上述の効果を奏することができる。
【0012】
上記第三の態様では、前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、前記前後方向に延びる中心線から前記第1接合部の前記幅方向の外端までの距離は、前記第2接合部の前記幅方向の外端までの距離より短い。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、第1シート及び第2シートがそれぞれ第1接合部及び第2接合部を介して本体に接合されているので、第1シート及び第2シートが、装着動作時又は装着中に外れてしまうことをより確実に防止することができる。また、第1接合部の幅方向外端の位置が前後方向中心線により近くなっているため、吸収性物品を下着から取り外す際、本体を持って前後方向端部から剥がした場合、本体が第2ウィング側に傾きやすくなる。この傾いた状態で続けて本体を引き剥がしていくことで、第1接合部に力がかかりやすくなり、本体と第1シートとの引剥がしが容易になるため、吸収性物品の取外しが容易になるという上述の効果が向上する。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、前記第1接合部の前端は前記第2接合部の前端より後方に位置するか、且つ/又は前記第1接合部の後端は、前記第2接合部の後端より前方に位置する。
【0015】
上記第四の態様によれば、例えば、第1接合部の前端は第2接合部の前端より後方に位置していることで、本体を下着から前後方向端部から剥がした場合に、本体が第2ウィング側に傾きやすくなる。この傾いた状態で本体を続けて引き剥がしていくと、第1接合部に力がかかりやすくなり、本体と第1シートとの引剥がしが容易になるため、吸収性物品の取外しが容易になるという上述の効果が向上する。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記第1シート及び前記第2シートはそれぞれ、第1接合部及び第2接合部を介して前記本体に接合されており、前記第1接合部の単位面積当たりの接合強度は、前記第2接合部の単位面積当たりの接合強度より小さい。
【0017】
上記第五の態様によれば、本体と第1シートとの引剥がしがより容易になるため、吸収性物品の取外しが容易になるという上述の効果が向上する。また、第1接合部及び第2接合部の延在領域(平面視形状及び厚み)を同じく又はほぼ同じく構成した場合には、接合部の大きさの差によって生じ得る装着中の違和感を軽減することができる。
【0018】
本発明の第六の態様では、前記第2ウィングは、前記本体から離脱不能になっている。
【0019】
上記第六の態様によれば、吸収性物品を下着から取り外す際に、第2シートが外れてしまう可能性を低減できるので、確実に第1シートを本体から離脱させることができる。
【0020】
本発明の第七の態様では、前記本体は、前記表面シート側の前記幅方向の両端部に前記前後方向に沿ってサイド不織布を備えており、前記裏面シート及び前記サイド不織布はそれぞれ、前記幅方向の外方に延出部を有しており、前記第2ウィングは、両延出部が接合されてなる。
【0021】
上記第七の態様によれば、第2ウィングが、本体に用いられている裏面シート及びサイド不織布の延出部によって形成されているので、第2ウィングが破壊されにくい。よって、少なくともこの第2ウィングによって、吸収性物品を下着に固定するという機能を確実にすることができる。また、第2ウィングを接合部なしで構成できることで、接合材料を節約することができる。
【0022】
本発明の第八の態様では、前記第1ウィング及び前記第2ウィングはそれぞれ、前記裏面シート側に第1粘着部及び第2粘着部を有しており、前記第1ウィング及び第2ウィングは、装着時に下着側に折り返され、重ね合せられ、前記第1粘着部又は前記第2粘着部によって貼り合せられている。
【0023】
上記第八の態様によれば、第1ウィングと第2ウィングとが貼り合せられているため、両ウィングが互いを拘束でき、装着中に吸収性物品を下着に固定させるというウィングの機能を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、ウィング付きの吸収性物品において、ウィングの本来の機能を確保しつつ、吸収性物品の取外し動作をより容易にしたものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明の第1実施形態による吸収性物品を表面シート側から見た部分破断平面図である。
図1B図1Aに示す吸収性物品を裏面シート側から見た平面図である。
図1C図1AのI-I線断面図である。
図2図1Aに示す吸収性物品のウィングを折り返した状態の部分平面図である。
図3】第1実施形態による吸収性物品による吸収性物品の取外しを説明するための図である。
図4】第1実施形態による吸収性物品の変形例を示す。
図5】第1実施形態による吸収性物品の変形例を示す。
図6】第1実施形態による吸収性物品の変形例を示す。
図7】第1実施形態による吸収性物品の変形例を示す。
図8A】本発明の第2実施形態による吸収性物品を表面シート側から見た平面図である。
図8B図8AのII-II線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0027】
図1A図1Cに、本発明の一形態による吸収性物品100を示す。図1Aは、吸収性物品100を表面側(装着時に肌に対向する側)から見た部分破断平面図であり、図1Bは、吸収性物品100を裏面側(装着時に下着に対向させる側)から見た平面図である。また、図1Cは、図1AのI-I線断面である。
【0028】
図1A図1Cに示すように、吸収性物品100は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。
【0029】
(吸収性物品本体)
本体8は、前後方向D1と、前後方向D1と直交する幅方向D2とを有する。図示の例では、本体8は、前後方向D1に所定の長さと、幅方向D2に所定の幅と有し、平面視で細長形状を有しているが、本体8の形状は図示のものに限られない。本体8は例えば、同様の長さと幅とを有していてもよい。また、図示の例では、本体8の幅は略一定となっているが、前後方向D1にわたって変化していてもよい。さらに、本体8の平面視形状は、前後方向D1に延びる中心線(前後方向中心線)CLに対し略線対称になっているが、吸収性物品100の平面視形状は必ずしも線対称でなくともよい。
【0030】
吸収性物品100の全長に相当する本体8の全長は、特に限定されないが、200~420mmとすることができる。また、本体8の幅も特に限定されないが、50~110mmとすることができる。
【0031】
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0032】
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。
【0033】
裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0034】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。
【0035】
吸収体4は、形状保持等のために、クレープ紙又は不織布等からなる被包シートによって包まれていてもよい。被包シートとしては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。
【0036】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmの範囲内とすることができ、1.5~6.5mmの範囲であると好ましい。吸収体4は、前面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。
【0037】
上記吸収体4は、表面シート3及び裏面シート2からはみ出さない寸法及び形状を有している。すなわち、吸収体4全体が、表面シート3及び裏面シート2にそれぞれ覆われるようになっている。吸収体4の前方及び後方の端縁部では、裏面シート2と表面シート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体4の側方、すなわち幅方向D2の外方においては、表面シート3側の幅方向D2の両端部に前後方向D1に沿ってサイド不織布7、7が設けられている。
【0038】
サイド不織布7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。例えば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する効果又は肌触り感を高める場合は、シリコン系、パラフィン系の撥水剤等をコーティングした撥水処理不織布を用いることが好ましい。また、ウィングWにおける経血等の吸収性を高める場合には、不織布の材料として、親水処理された不織布を用いることが好ましい。不織布の種類としては、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいエアスルー不織布が好ましい。
【0039】
(ウィングの基本構造)
図1A図1Cに示すように、本形態による吸収性物品100は、平面視で本体8の幅方向D2の外方にそれぞれ延出する、対をなす第1ウィングW1及び第2ウィングW2を備えている。第1ウィングW1及び第2ウィングW2は、吸収性物品100を装着する際に、下着側に折り返して、下着に且つ/又はウィング同士で、着脱可能に接合させるように構成することができる。これにより、吸収性物品を下着に確実に固定させることができるので、装着中の吸収性物品のズレやヨレを防止することができる。
【0040】
図2に、吸収性物品100が装着された状態、すなわち第1ウィングW1及び第2ウィングW2が下着側に折り返された状態の図を示す(下着の図示は省略する)。図2は、図1Bと同様に吸収性物品100を裏面シート2側から見た部分拡大図である。本例では、第1ウィングW1及び第2ウィングW2は、下着側に折り返した時に重ね合されるように構成されている。この場合、両ウィングW1、W2は、前後方向中心線CLを中心軸とした線対称の位置に設けられ、少なくとも幅(幅方向D2の長さ)が本体8の幅の2分の1を超えることが好ましい。
【0041】
本形態においては、図1A図1C及び図2に示すように、第1ウィングW1及び第2ウィングW2がそれぞれ、裏面シート2側に第1粘着部41及び第2粘着部42を備えていてよい。そして、粘着部41及び粘着部42によって、図2に示すように、装着時には一方のウィングを下着に貼着し、他方を上記一方に貼着させることができる。図2の形態では、第2ウィングW2が第2粘着部42によって下着に直接的に固定され、第1ウィングW1が第1粘着部41によって第2ウィングW2に貼着されることによって下着に間接的に固定されているが、2つのウィングの重ね合せの順序はどちらでもよい。このように、両ウィングが重ね合され且つ貼り合せられていることで、両ウィングは互いに拘束された状態で下着に貼着され得る。そのため、装着中に吸収性物品を下着へ確実に固定させるというウィングの機能を高めることができる。
【0042】
なお、図示の例では、第1ウィングW1に設けられた第1粘着部41と第2ウィングに設けられた第2粘着部42とが平面視でほぼ同じ位置に重ねられているが、第1ウィングW1及び第2ウィングW2がそれぞれ直接的に又は間接的に下着に固定されるのであれば、第1粘着部41と第2粘着部42とは平面視で重なっていなくともよい。
【0043】
また、本形態は、ウィングとしての機能を有するのであれば、装着時に折り返された第1ウィングW1と第2ウィングW2とを重ね合わさずに、それぞれ下着に貼り付けることができる構成(後述)としてもよい。
【0044】
粘着部41、42は、粘着剤を塗布して形成される層であってよく、そのような粘着剤層が塗布されたテープとして構成されていてもよい。粘着剤としては、例えば、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組合せを主成分とするものが好適に使用される。
【0045】
スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。また、粘着付与剤及び可塑剤としては、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
【0046】
本発明の一形態によれば、少なくとも一方のウィングが、本体に含まれるシートの側方への延出部分によって形成されているのではなく、本体とは別体のシートが、本体に離脱可能に接合されることによって形成されている。以下、このような離脱可能な別体シートを用いて構成された吸収性物品の実施形態について詳説する。
【0047】
(第1実施形態)
まず、吸収性物品100(図1A図1C及び図2)を第1実施形態として説明する。吸収性物品100においては、第1ウィングW1は、本体8とは別体の第1シート21が、本体8の裏面シート2側に接合されていることによって形成されている。また、第2ウィングW2は、本体8とは別体の第2シート22が、本体8の裏面シート2側に接合されていることによって形成されている。
【0048】
図1A図1C及び図2に示すように、第1シート21及び第2シート22(合せてウィングシートと呼ぶ場合がある)の本体8への各接合は、第1接合部31及び第2接合部32を介している。各接合部の構成の詳細については後述するが、第1接合部31と第2接合部32との構成は相違させてもよいが、同じくすることもできる。
【0049】
第1シート21は、ウィング部21aと重なり部分21bとを有しており、重なり部分21bで本体8の側部(幅方向D2の外方部)に重ねられ、面で接合されている。第1接合部31は、重なり部分21b内の任意の範囲に、任意の平面視形状で形成することができる。同様に、第2シート22は、ウィング部22aと重なり部分22bとを有しており、重なり部分22bで本体8の側部に重ねられ、面で接合されている。第2接合部32は、重なり部分22b内の任意の範囲に、任意の平面視形状で形成することができる。
【0050】
第1シート21及び第2シート22の素材は特に限定されないが、樹脂製フィルム、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂製フィルム、不織布等を用いることができる。また、第1シート21は、単層のシートであってもよいし、上述の素材からなるシートが複数積層された積層シートであってもよい。第1シート21が、積層シートである場合、例えば、上述のサイド不織布7に用いられるシートを表面側に、上述の裏面シート2に用いられるシートを裏面側に配置した積層シートとしてもよい。その場合、積層シートを構成する複数のシートは、ヒートシール、超音波シール等のシールや、接着剤等によって接合されていることが好ましい。
【0051】
第1シート21及び第2シート22の構成は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。但し、第1シート21及び第2シート22が同様の構成を有していることで、特に第1シート21のウィング部21a及び第2シート22のウィング部22aが同様の平面視形状及び大きさを有していることで、左右でバランスのよい装着感を提供することができる。
【0052】
通常、ウィング付きの吸収性物品を製作する場合、用いられる資材(例えば裏面シート等用の資材)を、平板状のシートから、ウィング形成のための延出部を有する入り組んだ形状に切り出す必要がある。その場合、使用されずに破棄されるシート部分が比較的多く生じるため、資材が無駄になりやすい。しかし、上述のように本形態では、第1ウィングW1及び第2ウィングW2を、本体8からのシートの延出部としてではなく、本体8とは別体である第1シート21及び第2シート22をそれぞれ利用して構成しているので、本体8自体をシンプルな細長形状とすることができる。そのため、破棄されるシート部分の面積を小さくすることができ、資材の節約ができる。
【0053】
本形態では、少なくとも第1シート21が本体8から離脱可能に構成されている。本明細書において、「離脱可能」とは、使用者の通常生活の範囲で発揮される手の力によって、本体及びシートが損傷なく又はほとんどなくシートが本体から分離させることができることを指す。一方、「離脱不能」とは、使用者の通常生活の範囲で発揮される手の力によって、本体及びシートが損傷なく又はほとんどなくシートが本体から分離させることができないことを指す。
【0054】
第2シート22は離脱可能であってもなくてもよいが、第2シート22が離脱可能であった場合でも、第1シート21の方が第2シート22よりも離脱しやすく構成することができる。これにより、吸収性物品を下着から取り外す際、本体8と第1シート21との接合が優先的に解除され得る。また、上述のように、本体8と第1シート21とは、面で接合されているので、吸収性物品を下着から取り外す通常の動作によって容易に引き剥がすことができ、ひいてはウィング付きの吸収性物品100を下着から容易に取り外すことができる。
【0055】
本形態による吸収性物品100の取外しについて、図3の模式図を参照してより詳細に説明する。図3(a)に、吸収性物品100を下着Sに装着させた状態の斜視図を示す。図3は、装着された吸収性物品100を肌側(表面シート3側)の斜めから見た図である。図3(b)は、吸収性物品100を下着Sから取り外す動作の中間段階を示す図であり、図3(c)は、吸収性物品100が下着Sから取り外された直後の状態を示す図である。
【0056】
図3(a)に示すように、吸収性物品100が装着された状態では、第1ウィングW1及び第2ウィングW2はいずれも下着S側に折り返され、下着Sに接合されている。そして、装着された吸収性物品を取り外す際、使用者は通常、吸収性物品1の本体8の、前後方向D1のどちらかの端部を持って、下着から離す方向に引っ張ることによって下着から吸収性物品を引き剥がす。例えば、使用者は、図3(a)に矢印で示すように、吸収性物品100の本体8の前端を持って、吸収性物品100を下着Sから引き剥がすことができる。このとき、第1シート21の方が第2シート22よりも本体8から離脱しやすくなっている場合、図3(b)に示すように、第1シート21は優先的に本体8から剥がれる。
【0057】
ここで、吸収性物品100を下着Sから引き剥がすこの動作は、接合された本体8と第1シート21とを引き剥がすための動作にもなり得る。よって、使用者は、本体8とウィングとを分離させるために、過度に大きな力をかけたり、動作中に力の方向を変えたりする必要なく、通常の取外し動作によって本体8と第1シート21とを引き剥がし、第1シート21を離脱させることができる。
【0058】
第1シート21が剥がされている間、本体8と第2シート22との接合は維持され得るので、さらに本体8を引っ張って下着Sから離すことで、図3(c)に示すように、本体8とともに第2シート22も下着Sから取り外すことができる。さらに、本形態では、折り返された第1ウィングW1と第2ウィングW2とは重ね合されて接合されているので、第1シート21も、本体8と第2シート22とともに下着Sから取り外される。よって、第1シート21及び第2シート22を含む吸収性部物品100全体を、1つの動作で下着Sから取り外すことができる。
【0059】
このように、本形態による吸収性物品100は、本体8と第1シート21との引剥がしによってウィングを離脱させるように構成されており、引裂誘導部のような脆弱箇所を形成して、その脆弱箇所にてウィングを破断させるものとは異なる。吸収性物品の取外し動作においてウィング自体を破断させる方式では、脆弱箇所の構成によっては、使用者が負担に感じられるような大きな力を要したり、吸収性物品の装着動作時又は装着中に脆弱箇所にてウィングが破断してしまったりする可能性があったが、本形態によれば、そのような可能性を低減又は排除することができる。
【0060】
さらに一般に、材料の破断には比較的大きな破断音が生じることが多いため、ウィング自体を破断させる方式の吸収性物品では、吸収性物品を下着から取り外す際に比較的大きな音が発生し得る。そのため、吸収性物品を公共のトイレ等で交換する場合に、取外し動作時に周囲に気を使う使用者も多い。これに対し、本形態によれば、シート材料自体を破断させることなく吸収性物品100の取外しを可能にするので、破断音の懸念も低減又は排除することができる。
【0061】
本形態では、第1シート21は、第2シート22に比べて離脱しやすくなっているが、この離脱しやすさは、第1シート21の接合のための第1接合部31と、第2シート22の接合のための第2接合部32との構成の相違によって、相違させることができる。
【0062】
第1接合部31及び第2接合部32(合せて接合部という場合がある)は、例えば、接合材料(粘着剤又は接着剤)を塗布すること、又は接合材料の層を備えたテープを配置することによって形成することができる。
【0063】
接合材料としては、粘着部41、42で用いられるものと同様の粘着剤とすることができる。このような粘着剤を少なくとも第1接合部31に用いることで、第1シート21を本体8から離脱可能に構成することができる。
【0064】
また、接合部は、超音波シール、ヒートシール等によるシール手段を用いて形成することもできる。シール手段の出力を調整することにより、少なくとも第1シート21を本体8から離脱可能に構成することができる。
【0065】
図1A図1C及び図2に示す例では、第1接合部31は、第1シート21の重なり部分21bの領域の前端から後端にわたって前後方向D1に延びる2本の帯状部分、すなわち外側部分31a、内側部分32bとして形成されている。同様に、第2接合部32も、第2シート22の重なり部分22bの領域の前端から後端にわたって前後方向D1に延びる2本の帯状部分、すなわち外側部分32a、内側部分32bとして形成されている。
【0066】
第2接合部32においては、外側部分32aは、本体8の幅方向D2の外端に沿うように、好ましくは外側部分32aの幅方向D2の外端が本体8の幅方向D2の外端に一致するように配置されている。また、内側部分32bは、本体8の幅方向D2の内端に沿うように、好ましくは内側部分32bの幅方向D2の内端が本体8の幅方向D2の内端に一致するように配置されている。
【0067】
本例では、第1接合部31では、内側部分31bは、第2接合部32と同様に、本体8の幅方向D2の内端に沿うように、好ましくは内側部分31bの幅方向D2の内端が本体8の幅方向D2の内端に一致するように配置されている。一方、外側部分31aは、第2接合部32の外側部分32aに比べてより内側に、前後方向中心線CLに近い位置に配置されている。すなわち、図2に示すように、前後方向中心線CLから第1接合部31の外側部分31aの幅方向D2外端までの距離d1は、前後方向中心線CLから第2接合部32の外側部分32aの幅方向D2外端までの距離d2に比べて短くなっている。
【0068】
第1接合部31及び第2接合部32の配置が上述のように相違していると、例えば、吸収性物品100の下着からの取外しの際に本体8の前端を持って本体8を表面シート3側に持ち上げるように且つ後方へと引っ張った場合、本体8が第2ウィングW2側へと傾きやすくなる(図3)。
【0069】
このような動きは、より具体的には次のように説明できる。吸収性物品100の前方からの取外し動作における第1シート21及び第2シート22の離脱を独立で考えた場合、第1シート21の離脱(剥がれ)が始まる位置P1は、図2に示すように、外側部分31aの前端の幅方向D2外端付近となり得る。同様に、第2シート22の離脱(剥がれ)が始まる位置(第2シート22が離脱不能に接合されている場合には、吸収性物品の取外し動作によって最も力がかかる位置)P1は、外側部分32aの前端の幅方向D2外端付近となり得る。ここで、上述のように第1接合部31及び第2接合部32の配置が相違していることによって、第1シート21及び第2シート22の離脱が始まる位置(離脱開始位置)P1、P2が前後方向中心線CLに対して非線対称になっていることから、本体8が第1シート21から先行して剥がれていくことになる。そして、吸収性物品100の取外し動作を続けていくと、先行して剥がれた第1シート21の剥がれがますます進み、第1シート21が容易に離脱し得る。
【0070】
前後方向中心線CLから第2接合部32の外側部分32aの幅方向D2外端までの距離d2と、前後方向中心線CLから第1接合部31の外側部分31aの幅方向D2外端までの距離d1との差Δd(d2-d1)は、本体8の幅の0%超25%以下であると好ましく、0%超15%以下であるとより好ましい。Δdを上記値の範囲とすることで、吸収性物品100の前方からの取外しの際に本体8を第2ウィングW2へと傾けやすくできるという上述の機能を向上させることができるとともに、第1ウィングW1のウィングとしての機能も担保することができる。
【0071】
なお、図示の例では、各接合部は、前後方向D1に延びる帯状に2本形成されているが、接合部は、3本以上の帯状部分によって構成されていてもよい。また、接合部は、重なり部分21b又は22b全体にわたって延在していてもよいし、複数の島状の小部分によって構成されていてもよい。
【0072】
本実施形態による吸収性物品100は、本体8を作製し、第1シート21及び第2シート22を、シート形状(ウィング形状)に対応する形状を有するカッター等で切り出した後、第1シート21及び第2シート22をそれぞれ本体8の所定位置に接合させることによって製造することができる。第1シート21及び第2シート22の切出しは、これらのシートが積層シートである場合には、積層すべきシートをそれぞれ出来上がり形状に切り出した後に積層させてもよいし、積層すべきシートを積層させた後に出来上がり形状に切り出してもよい。或いは、本体8をおおよそ作製し、第1シート21及び第2シート22に切り出し可能な大きさのシートを本体8の側方にそれぞれ接合した後に、吸収性物品の出来上がり形状に対応する形状を有するカッター等で切ることができる。
【0073】
(変形例)
図4に、第1実施形態における接合部の変形例を示す。図4の例では、本体8と第2シート22との接合を形成する第2接合部32は、図1A図2に示す例と同様であるが、本体8と第1シート21との接合を形成する第1接合部31の配置が異なる。本例では、第1接合部31は、前後方向D1に沿ってそれぞれ配置された外側部分31aと内側部分31bとからなるが、外側部分31a及び内側部分31bのいずれの前端も、第2接合部32の前端より後方に位置している。
【0074】
本例においても、第1シート21及び第2シート22の離脱が始まる位置(離脱開始位置)P1、P2が前後方向中心線CLに対して非線対称になっている。そのため、吸収性物品100の取外し動作において、例えば本体8の前端を持って引っ張った場合、本体8が第1シート21から先行して剥がれ得る。そして、吸収性物品100の取外し動作を続けていくことで、先行して剥がれた第1シート21の剥がれがますます進み、第1シート21が容易に離脱し得る。
【0075】
第2接合部32の前端と第1接合部31の前端との前後方向D1の距離ΔL(図4)は、第1シート21の重なり部分21bの前後方向D1の長さに対して0%超15%以下とすると好ましい。ΔLを上記範囲とすることで、吸収性物品100の前方からの取外しの際に本体8を第2ウィングW2へと傾けやすくできるという上述の機能を向上させることができるとともに、第1ウィングW1のウィングとしての機能も担保することができる。
【0076】
図4の例では、第1接合部31の外側部分31a及び内側部分31bはいずれも、前後方向D1に連続した帯状になっておらず、前後方向D1に間欠している。そのため、第1接合部31は全体として、接合強度が小さくなっており、より本体8から剥がれやすくなっている。
【0077】
図3及び図4の例ではいずれも、第1接合部31と第2接合部32との平面視形状を相違させることによって、第1シート21の剥がれやすさを向上させている。よって、これらの例によれば、第1接合部31と第2接合部32とにおいて同じ接合材料を用いることができるという点で、製造の手間を少なくすることができる。
【0078】
図5に、第1実施形態における接合部の別の変形例を示す。図5の例では、第1接合部31及び第2接合部32の面積及び平面形状は同じであるが、第1接合部31と第2接合部32とで使用されている接合材料の種類を相違させている。例えば、第1接合部31の種類を、単位面積当たりの接合強度が、第2接合部32の単位面積当たりの接合強度より小さくなるように選択している。
【0079】
本例では、吸収性物品100の取外し動作において、第1接合部31によって接合されている第1シート21が、第2シート22よりも優先的に剥がれ始める。そのため、取外し動作を続けていくと、本体8は第2ウィングW2(第2シート22)側に傾き、第1シート21の剥がれが進行して、第1シート21が先行して剥がれることができる。
【0080】
また、第2接合部32に用いる接合材料を、第2シート22が本体8から離脱不能になるように選択することもできる。その場合には、第1シート21の剥がれが確実に先行するため、吸収性物品100の取外し動作をより円滑に行うことができる。
【0081】
図6に、第1実施形態の変形例を示す。本例では、吸収性物品100を下着に装着した状態で、折り返された第1ウィングW1及び第2ウィングW2が重ならないように構成されている。より具体的には、第1ウィングW1及び第2ウィングW2がいずれも短く、つまり第1シート21及び第2シート22がいずれも短くなっている。このような場合には、吸収性物品100の取外し動作においては、本体8と第1シート21が先行して剥がれた後に本体8をさらに引っ張ると、本体8と、本体8に接合している第2シート22とが一緒に取り去られ、第1シート21は下着に貼着されたままとなる。この場合、使用者は、第1シート21を手で取り外すことができる。
【0082】
以上説明した接合部の個々の特徴は、互いに組み合わせることができる。例えば、第1接合部31及び第2接合部32を図2に示すような平面視形状としつつ、第1接合部31及び第2接合部32に用いられる接合材料を相違させ、第1接合部31の単位面積当たりの接合強度が第2接合部32の単位面積当たりの接合強度より小さくなるように構成することもできる。
【0083】
また、第1実施形態のいずれの例においても、第1ウィングW1と第2ウィングW2との構成を入れ替えてもよい。すなわち、例えば図1Aでいえば、右側の第2ウィングW2が少なくとも離脱可能であり、且つ第2ウィングW2が第1ウィングW1より離脱しやすく構成することができる。
【0084】
さらに、図7に、第1実施形態の別の変形例を示す。本例は、第1接合部31及び第2接合部32の構成を同じくしたものである。すなわち、第1シート21及び第2シート22はいずれも離脱可能であり、その離脱しやすさが同じになっている。図1A図6を参照して説明した例では、吸収性物品100の取外し動作において、第1シート21が第2シート22よりも離脱しやすくなっていたが、本例では、第1シート21及び第2シート22の離脱しやすさが同じであるため、使用者の取外し動作の方向によって、第1シート21及び第2シート22のうちどちらのシートが離脱されるかが決められる。
【0085】
例えば、使用者が吸収性物品100の取外し動作において、図3と同様に、本体8の前端を持って下着から吸収性物品100を引き剥がした場合、意図的に又は取外し動作を行う環境や姿勢に応じて自然に、本体8を右側に、すなわち第2シート22側に傾けることがある。その場合、結果として、図3と同様に、第1シート21が優先的に剥がれて、離脱し得る。さらに、本体8を引っ張ることで、本体8及び第2シート22を下着から取り外すことができる。そして、第1シート21が第2シート22と接合されているのであれば、図3と同様に、吸収性物品100全体を下着から取り外すことができる。
【0086】
(第2実施形態)
図8Aに、第2実施形態による吸収性物品200を示す。図8Aは、吸収性物品200を表面シート3側から見た平面図である。また、図8Bに、図8AのII-II線断面図を示す。吸収性物品200においては、第1ウィングW1の構成は第1実施形態と同様であるが、第2ウィングW2が、シートの接合によって形成されていない点で第1実施形態と異なる。
【0087】
図8A及び図8Bに示すように、吸収性物品200においては、幅方向D2の一方で、サイド不織布7及び裏面シート2がそれぞれ外方に延出している。そして、これらのシートが、ヒートシール、超音波シールのシール、又は接着剤によって接合されて、第2ウィングW2を構成している。よって、本実施形態では、第2ウィングW2は離脱不能である。
【0088】
本形態においても、吸収性物品200の取外し動作、例えば図3に示すような本体8の前端を持って下着から剥がす動作において、まず第1シート21が本体8から剥がれる。よって、過度に大きな力をかけたり、動作中に力の方向を変えたりする必要なく、通常の取外し動作によって本体8と第1シート21とを引き剥がし、吸収性物品200を下着から外すことができる。
【0089】
本形態では、第2ウィングW2が離脱する虞がないため、吸収性物品200の装着動作時又は装着中に無理な力がかかっても、少なくとも第2ウィングW2のウィングとしての機能が確保される。そのため、吸収性物品200を下着に確実に固定させることができる。
【0090】
また、本形態の場合には、第2ウィングW2側に接合材料を用いる必要がない。そのため、本形態は、接合材料を節約するという観点から好ましい。
【符号の説明】
【0091】
2 裏面シート
3 表面シート
4 吸収体
7 サイド不織布
8 本体(吸収性物品本体)
21 第1シート
21a 第1シートのウィング部
21b 第1シートの重なり部
22 第2シート
22a 第2シートのウィング部
22b 第2シートの重なり部
31、31a、31b 第1接合部
32、32a、32b 第2接合部
41、42 粘着部
100、200 吸収性物品
CL 前後方向中心線
D1 第1方向(前後方向)
D2 第2方向(幅方向)
P1 第1ウィングシートの離脱開始位置
P2 第2ウィングシートの離脱開始位置
W1 第1ウィング
W2 第2ウィング
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B