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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】食器用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20221118BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 1/94 20060101ALI20221118BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20221118BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/28
C11D1/22
C11D1/14
C11D1/29
C11D3/22
C11D1/94
C11D1/72
A47L15/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019050069
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020152757
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】宮島 正樹
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184516(JP,A)
【文献】特開2018-035251(JP,A)
【文献】特開2003-155499(JP,A)
【文献】特開2017-218502(JP,A)
【文献】特開2016-198765(JP,A)
【文献】特開2017-119808(JP,A)
【文献】特開2013-082846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A47L 15/00-21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記式(a1)で表されるスルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩と、
(B)成分:半極性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、
(C)成分:カチオン化セルロースと、
(D)成分:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、及び、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩から選ばれる少なくとも1種と、
を含有し、かつ、アルキルポリグリコシドを含有せず、
食器用液体洗浄剤組成物の総質量に対して、前記(A)成分の含有量は0.5~5質量%、前記(B)成分の含有量は5~15質量%、前記(C)成分の含有量は0.04~0.5質量%、前記(D)成分の含有量は5~15質量%であり、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~0.5であり、
前記(D)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.5~1.5である、食器用液体洗浄剤組成物。
【化1】
[式(a1)中、Rは、炭素数5~18のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~18のアルキル基を表す。A、Aは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基を表し、x、yは、平均繰り返し数を表し、それぞれ独立に0~6であり、Mは陽イオンを表す。]
【請求項2】
前記(A)成分/前記(D)成分で表される質量比が0.05~0.3である、請求項1に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が4~50である、請求項1又は2に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに(E)成分:下記式(e1)で表される化合物を含有し、
食器用液体洗浄剤組成物の総質量に対して、前記(E)成分の含有量は5~8質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【化2】
[式(e1)中、EOはオキシエチレン基を表す。mはEOの平均繰返し数を表し、8~12の数である。jとkはそれぞれ1~6の整数であり、6≦j+k≦12である。EOはオキシエチレン基である。]
【請求項5】
さらに(F)成分:酵素を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(F)成分が、プロテアーゼ及びアミラーゼから選ばれる1種以上である、請求項5に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
食器用液体洗浄剤組成物の総質量に対して、界面活性剤の総質量が16~35質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の生活スタイルの変化から、食器洗い行動において「手早さ」が重視されている。「手早さ」に繋がる重要な要因としては、しっかり油汚れが落ちる「洗浄力」の高さ、洗浄力の実感を与える「泡立ち」の良さ、洗浄後の「水切れ」のよさが挙げられる。「洗浄力」、「泡立ち」、「水切れ」の全てが良好であれば、「手早さ」を実感しやすい。
【0003】
特許文献1には、アニオン界面活性剤と、半極性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも一方と、カチオン化セルロースと、特定のノニオン界面活性剤とを含有する食器洗い用洗浄剤が提案されている。特許文献1に記載の発明によれば、洗浄時及びすすぎ時のヌルつきの抑制が図られている。
特許文献2には、疎水性皮膚軟化剤と特定量のプロテアーゼとを含有する食器用洗浄剤組成物が提案されている。特許文献2に記載の発明によれば、洗浄力と泡立ちとに影響を及ぼすことなく、手のスキンケア利益の付与を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-35251号公報
【文献】特表2013-536279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、すすぎが不十分な場合には、水切れ性が低下する。「すすぎが不十分」とは、すすぎ水が少ない又はすすぎ回数が少ないことを意味する。加えて、食器用液体洗浄剤組成物においては、「手早さ」の実感のさらなる向上が求められている。
そこで、本発明は、洗浄力、泡立ち及び水切れ性により優れる食器用液体洗浄剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
<1>(A)成分:下記式(a1)で表されるスルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩と、
(B)成分:半極性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種と、
(C)成分:カチオン化セルロースと、
(D)成分:前記(A)成分を除くアニオン界面活性剤と、
を含有し、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~0.5であり、
前記(D)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.5~1.5である、食器用液体洗浄剤組成物。
【化1】
[式(a1)中、Rは、炭素数5~18のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~18のアルキル基を表す。A、Aは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基を表し、x、yは、平均繰り返し数を表し、それぞれ独立に0~6であり、Mは陽イオンを表す。]
<2>前記(A)成分/前記(D)成分で表される質量比が0.05~0.3である、<1>に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<3>前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が4~50である、<1>又は<2>に記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<4>さらに(E)成分:下記式(e1)で表される化合物を含有する、<1>~<3>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【化2】
[式(e1)中、EOはオキシエチレン基を表す。mはEOの平均繰返し数を表し、8~12の数である。jとkはそれぞれ1~6の整数であり、6≦j+k≦12である。
EOはオキシエチレン基である。]
<5>さらに(F)成分:酵素を含有する、<1>~<4>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<6>界面活性剤の総質量が16~35質量%以上である、<1>~<5>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<7>アルキルポリグリコシドの含有量が5質量%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<8>前記(A)成分の含有量が、食器用液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.5~5質量%である、<1>~<7>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
<9>前記(B)成分の含有量が、食器用液体洗浄剤組成物の総質量に対して、5~20質量%である、<1>~<8>のいずれかに記載の食器用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物によれば、洗浄力、泡立ち及び水切れ性により優れる。食器用液体洗浄剤組成物を目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(食器用液体洗浄剤組成物)
本発明の食器用液体洗浄剤組成物(以下、単に液体洗浄剤組成物ということがある)は、下記(A)~(D)成分を含有する。
(A)成分:スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩。
(B)成分:半極性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種。
(C)成分:カチオン化セルロース。
(D)成分:(A)成分を除くアニオン界面活性剤。
【0009】
本発明の液体洗浄剤組成物の25℃でのpHは、6~8が好ましい。液体洗浄剤組成物の25℃でのpHが上記範囲内であれば、水切れ性をより高められる。
本発明において、液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値である。
【0010】
本発明の液体洗浄剤組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、30~400mPa・sが好ましく、100~300mPa・sがより好ましい。粘度が上記範囲内であれば、液体洗浄剤組成物を取り扱いやすい。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、下記式(a1)で表されるスルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である。
【0012】
【化3】
【0013】
[式(a1)中、Rは、炭素数5~18のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~18のアルキル基を表す。A、Aは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基を表し、x、yは、平均繰り返し数を表し、それぞれ独立に0~6であり、Mは陽イオンを表す。]
【0014】
は、炭素数5~18のアルキル基である。Rの炭素数は、6~14が好ましく、7~10がより好ましい。
は、直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。Rは、分岐鎖が好ましい。
【0015】
は、炭素数1~18のアルキル基である。Rの炭素数は、6~14が好ましく、7~10がより好ましい。
は、直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。Rは、分岐鎖が好ましい。
【0016】
、Aは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基である。A、Aは、炭素数2~3のアルキレン基が好ましい。A、Aの炭素数が2~3であると、すすぎが不十分であっても、高い水切れ性を発揮できる。
【0017】
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.5~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力及び泡立ちがより良好になり、かつ、水切れ性をより高められる。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、半極性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。液体洗浄剤組成物は、(B)成分を含有することで、水切れ性を高められる。
なお、「半極性界面活性剤」とは、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤のことであり、半極性界面活性剤が溶解する溶液又は分散する分散系のpHにより、カチオン性又はノニオン性となるものをいう。
半極性界面活性剤(以下、「(b1)成分」ともいう。)としては、例えば、アミンオキシド型界面活性剤、アミンアルキレンオキシド型界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、(b1)成分としては、アミンオキシド型界面活性剤が好ましい。
アミンオキシド型界面活性剤としては、例えばアルキルアミンオキシド、アルカノイルアミドアルキルアミンオキシド等が挙げられ、これらの中でも下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
【0019】
【化4】
【0020】
[式(b1)中、R21は、炭素数8~18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、又は、炭素数8~18の直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基であり、R22、R23はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、R24は炭素数1~4のアルキレン基である。Bは、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-又は-O-であり、rは0又は1の数である。]
【0021】
式(b1)で表される化合物としては、ラウリルジメチルアミンオキシド(n-ドデシルジメチルアミンオキシド)、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、水切れ性の向上とヌルつき抑制のバランスの観点から、ラウリルジメチルアミンオキシドが好ましい。
(b1)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0022】
両性界面活性剤(以下、「(b2)成分」ともいう。)としては、例えば、カルボン酸塩型(ベタイン型ともいう。)、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型等が挙げられる。これらの中でも、(b2)成分としては、カルボン酸塩型が好ましい。
カルボン酸塩型の両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)等が挙げられる。
(b2)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0023】
(B)成分としては、(b1)成分のみでもよいし、(b2)成分のみでもよいし、(b1)成分と(b2)成分との組み合わせでもよい。(B)成分としては、(b1)成分が好ましい。
【0024】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力及び泡立ちがより良好になり、かつ水切れ性をより高められる。
【0025】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(A/B比)は、0.05~0.5であり、0.1~0.4が好ましく、0.15~0.3がより好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、水切れ性をより高め、かつより良好な泡立ちを得られる。A/B比が上記上限値以下であれば、洗浄力をより高められる。
【0026】
<(C)成分>
(C)成分は、カチオン化セルロースである。液体洗浄剤組成物は、(C)成分を含有することで、水切れ性を高められる。
(C)成分としては、例えば、下記式(c1)で表される化合物、下記式(c2)で表される化合物、下記式(c3)で表される化合物等が挙げられる。(C)成分としては、ヒドロキシトリメチルアンモニオプロピルヒドロキシエチルセルロースクロリド、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体等のカチオン変性ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの中でも、(C)成分としては、水切れ性の向上とヌルつき抑制のバランスの観点から、式(c1)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化5】
【0028】
[式(c1)中、t、u、sは、それぞれ繰り返し数を表す数である。]
【0029】
【化6】
【0030】
[式(c2)中、v、wは、それぞれ繰り返し数を表す数である。]
【0031】
【化7】
【0032】
式(c1)で表される化合物の平均分子量は、1万~千万である。
式(c2)で表される化合物の平均分子量は、1万~百万である。
式(c3)で表される化合物の平均分子量は、1万~百万である。
平均分子量は、ゲルパーミエーション法で測定される重量平均分子量である。
【0033】
(C)成分のカチオン化度は、0.5~3.5質量%が好ましく、1.5~2.5質量%がより好ましい。カチオン化度が上記範囲内であれば、水切れ性がより高まる。
ここで、「カチオン化度」とは、(C)成分の分子中に占める、カチオン化剤に由来する窒素原子の含有率(質量%)である。即ち、カチオン化度は、(C)成分の総質量に対する窒素原子の含有率である。
(C)成分のカチオン化度は、特定された化学構造に基づいて計算される。
(C)成分における任意のモノマーの比率が不明な場合等、(C)成分の化学構造が特定されない場合には、(C)成分のカチオン化度は、実験的に求められた窒素含有率から算出される。(C)成分中の窒素含有率の測定方法としては、例えば、ケルダール法等が挙げられる。
【0034】
25℃における(C)成分の2質量%水溶液の粘度は、1000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましく、200mPa・s以下がさらに好ましい。なお、2質量%水溶液の粘度が1000mPa・sを超える場合には、1質量%水溶液の粘度を測定する。25℃における1質量%水溶液の粘度は、2000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。(C)成分の2質量%水溶液の粘度又は1質量%水溶液の粘度が上記範囲内であれば、水切れ性をより高められ、液体洗浄剤組成物の粘度をより適切にできる。
【0035】
粘度は、25℃の測定対象((C)成分の水溶液)をB型粘度計で測定した値である。粘度の測定条件は、以下の通りである。
≪測定条件≫
[ローター]
測定対象の粘度に対応するローター番号は、下記の通りである。
・測定対象の粘度が300mPa・s未満の場合:ローター番号No.2。
・測定対象の粘度が300mPa・s以上1200mPa・sの場合:ローター番号No.3。
・測定対象の粘度が1200mPa・s以上の場合:ローター番号No.4。
[ローター回転数]
60rpm。
[数値の読み取り]
ローターの回転の開始から60秒後。
【0036】
(C)成分としては、例えば、商品名「レオガードGP(カチオン化度1.8質量%、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)」、商品名「レオガードMGP(カチオン化度1.8質量%、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)」、商品名「レオガードMLP(カチオン化度0.6質量%、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)」、商品名「UCARE JR125(カチオン化度1.9質量%、ダウ・ケミカル社製)」、商品名「UCARE JR400(カチオン化度1.9質量%、ダウ・ケミカル社製)」、商品名「UCARE LR30M(カチオン化度1.0質量%、ダウ・ケミカル社製)」等が挙げられる。これらの中でも、(C)成分としては、水切れ性をより高める観点から「UCARE JR125」、「UCARE JR400」が好ましく、「UCARE JR125」がより好ましい。
(C)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0037】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.04~1質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、水切れ性をより高められる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、泡立ちをより良好にできる。
【0038】
(A)成分/(C)成分で表される質量比(A/C比)は、4~50が好ましく、8~25がより好ましい。A/C比が上記下限値以上であれば、泡立ちをより良好にでき、水切れ性をより高められる。A/C比が上記上限値以下であれば、洗浄力をより高め、水切れ性をより高められる。
【0039】
<(D)成分>
(D)成分は、(A)成分を除くアニオン界面活性剤である。(D)成分としては、従来、液体洗浄剤組成物等に用いられているアニオン界面活性剤であればよい。(D)成分としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩等が挙げられる。
アニオン界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0040】
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩としては、直鎖アルキル基の炭素数が8~16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩が好ましく、直鎖アルキル基の炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩が特に好ましい。
α-オレフィンスルホン酸又はその塩としては、炭素数10~20のα-オレフィンスルホン酸又はその塩が好ましい。
直鎖又は分岐鎖のアルキル硫酸エステル又はその塩としては、炭素数10~20のアルキル硫酸エステル又はその塩が好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩としては、例えば、下記一般式(d1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
11-O-[(PO)/(EO)]-SO 1/X・M ・・・(d1)
【0042】
[式(d1)中、R11は炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、かつ、酸素原子と結合している炭素原子は第一級炭素原子である。POはオキシプロピレン基を表し、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰り返し数を表し、0≦p<1を満たす数である。qはEOの平均繰り返し数を表し、0<q≦4を満たす数である。Mは対イオンであり、XはMの価数である。]
【0043】
11の炭素数は、8~18であり、10~14が好ましく、12~14がより好ましい。
【0044】
POの平均繰り返し数(即ち、プロピレンオキシドの平均付加モル数)は、0以上、1未満であり、0が好ましい。
EOの平均繰り返し数(即ち、エチレンオキシドの平均付加モル数)は、0超、4以下であり、1~3が好ましい。
【0045】
としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルカノールアンモニウム等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。アルカノールアンモニウムとしては、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムが挙げられる。
【0046】
(PO)/(EO)において、EOとPOはランダム付加であってもよくブロック付加であってもよく、配列状態は問わない。
【0047】
式(d1)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(2)直鎖アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(4)直鎖アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシプロピレン(0.4)ポリオキシエチレン(1.5)直鎖アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(2)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(4)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)エーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシプロピレン(0.4)ポリオキシエチレン(1.5)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)エーテル硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩としては、炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を有し、平均1~10モルのエチレンオキシ基(EO)を付加したもの、さらに平均0~6モルのプロピレンオキシ基(PO)を付加したもの(即ち、ポリオキシエチレン(プロピレン)アルケニルエーテル硫酸塩)が好ましい。
ここで、例えば「ポリオキシエチレン(1)」とは、エチレンオキシ基の平均繰返し数が1(エチレンオキシドの平均付加モル数が1)であることを意味する。
「アルキル(C12)」とは、アルキル基の炭素数が12であることを意味する。
「C12/14=75/25;天然油脂由来」とは、炭素数12の直鎖アルキル基を有する化合物と、炭素数14の直鎖アルキル基を有する化合物と、の質量比で75/25の混合物であること、及び天然油脂由来の直鎖のアルキル基であることを意味する。
【0048】
アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩としては、炭素数は10~20のアルカンスルホン酸又はその塩が挙げられ、炭素数14~17のアルカンスルホン酸又はその塩が好ましく、第2級アルカンスルホン酸又はその塩が特に好ましい。
【0049】
α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩としては、炭素数10~20のα-スルホ脂肪酸エステル塩が好ましい。
これらのアニオン界面活性剤は、市場において容易に入手することができる。また、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0050】
水切れ性のさらなる向上の観点から、(D)成分は、少なくともポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩(以下、「(d1)成分」ともいう。)を含むことが好ましく、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)エーテル硫酸エステルナトリウム塩を含むことがより好ましい。
(D)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0051】
(D)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して5~15質量%が好ましく、8~15質量%がより好ましく、8~12質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力及び泡立ちが良好になり、かつ水切れ性をより高められる。
【0052】
(A)成分/(D)成分で表される質量比(A/D比)は、0.05~0.3が好ましく、0.14~0.22がより好ましい。A/D比が上記下限値以上であれば、水切れ性をより高められる。A/D比が上記上限値以下であれば、泡立ちをより良好にできる。
【0053】
(D)成分/(B)成分で表される質量比(D/B比)は、0.5~1.5であり、0.9~1.4が好ましい。D/B比が上記下限値以上であれば、洗浄力及び泡立ちをより良好にできる。D/B比が上記上限値以下であれば、水切れ性をより高められる。
【0054】
<(E)成分>
(E)成分は、下記一般式(e1)で表される化合物である。
液体洗浄剤組成物は、(E)成分を含有することで、水切れ性のさらなる向上を図れる。
【0055】
【化8】
【0056】
[式(e1)中、EOはエチレンオキシ基を表す。mはEOの平均繰返し数を表し、8~12の数である。jとkはそれぞれ1~6の整数であり、6≦j+k≦12である。]
【0057】
mは、8~10が好ましく、9~10がより好ましい。mが、上記範囲内であれば水切れ性をより高められる。なお、ここでのmは、EOの平均繰返し数を示している。従って、式(d1)で表される化合物は、EOの繰り返し数が単一の化合物でもよいし、EOの繰返し数が異なる分子の集合体でもよい。
【0058】
jとkはそれぞれ1~6の整数であり、6≦j+k≦12である。中でも、水切れ性がより良好になることから、6≦j+k≦10が好ましく、6≦j+k≦8がより好ましく、j+k=8がさらに好ましい。
【0059】
式(e1)中のC2j+1、C2k+1としてはそれぞれ、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、直鎖のアルキル基が好ましい。C2j+1、C2k+1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適なものとして挙げられる。中でも、C2j+1、C2k+1としては、エチル基とブチル基との組合せ、プロピル基とペンチル基との組合せ(以上、いずれの組合せも一方がどちらの基であってもよい)が好ましく、プロピル基とペンチル基との組合せ(一方がどちらの基であってもよい)が特に好ましい。
【0060】
(E)成分としては、ガーベット反応による2分子縮合で得られ、β位に分岐構造を有するアルコールのエチレンオキシド付加物が特に好適なものとして挙げられる。
好適な(E)成分としては、例えば、BASF社製のポリオキシエチレンモノ(2-プロピルへプチル)エーテルが挙げられる。具体的には、Lutensol XP90(商品名、式(e1)における、j=5、k=3、m=9の化合物)、Lutensol XP100(商品名、式(e1)における、j=5、k=3、m=10の化合物)が挙げられる。
【0061】
(E)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して3~10質量%が好ましく、5~8質量%がより好ましい。(E)成分の含有量が上記下限値以上であれば、泡立ちをより良好にし、水切れ性をより高められる。(E)成分の含有量が上記上限値以下であれば、洗浄力をより高められる。
【0062】
<(F)成分>
(F)成分は、酵素である。
液体洗浄剤組成物は、(F)成分を含有することで、洗浄力をより高め、水切れ性をより高められる。
【0063】
(F)成分としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、カタラーゼ等があげられる。中でも、水切れ性をより高め、洗浄力をより高める観点から、プロテアーゼ、アミラーゼが好ましい。
【0064】
プロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼのように、分子内にセリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸を有するプロテアーゼが好ましい。
プロテアーゼ製剤としては、例えば、ノボザイムズ社から入手できる商品名Savinase16L、Savinase Ultra 16L、Savinase Ultra 16XL、Everlase 16L TypeEX、Everlase Ultra 16L、Esperase 8L、Alcalase 2.5L、Alcalase Ultra 2.5L、Liquanase 2.5L、Liquanase Ultra 2.5L、Liquanase Ultra 2.5XL、Coronase 48L、Coronase Evity 48L、Progress Uno101L;ジェネンコア社から入手できる商品名Purafect L、Purafect OX、Properase L等が挙げられる。
【0065】
アミラーゼ製剤としては、例えば、ノボザイムズ社から入手できる商品名Termamyl 300L、Termamyl Ultra 300L、Duramyl 300L、Stainzyme 12L、Stainzyme Plus 12L、AmplifyPrime;ジェネンコア社から入手できる商品名Maxamyl;天野エンザイム株式会社から入手できる商品名プルラナーゼアマノ;生化学工業株式会社から入手できる商品名DB-250等が挙げられる。
プロテアーゼ、アミラーゼを含有する場合、その安定性を高める目的でカタラーゼを含有することが好ましい。これによりアミンオキシド型界面活性剤に由来する残留過酸化水素を分解することができる。
【0066】
(F)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.01~0.5質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましく、0.2~0.3質量%がさらに好ましい。(F)成分の含有量が上記下限値以上であれば、洗浄力をより高め、水切れ性をより高められる。(F)成分の含有量が上記上限値以下であれば、液体洗浄剤組成物に析出等が生じにくい。
【0067】
<任意成分>
液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、食器用、衣料用の液体洗浄剤組成物に用いられている成分が挙げられ、例えば、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分以外の界面活性剤(任意界面活性剤)、ハイドロトロープ剤、防腐剤、pH調整剤、漂白成分、金属捕捉成分、ラジカルトラップ剤、香料等が挙げられる。
【0068】
≪任意界面活性剤≫
任意界面活性剤としては、(E)成分以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等が挙げられる。
(E)成分以外のノニオン界面活性剤(任意ノニオン)としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。任意ノニオンは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
カチオン界面活性剤としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(パルミトイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアロイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシブチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)メチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、トリ(ステアロイルオキシエチル)メチルメトサルフェート等が挙げられる。なお、「牛脂アルキル」基の炭素数は14~18である。
カチオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0069】
但し、アルキル基の炭素数が10~14アルキルポリグリコシドは、水切れ性を低下する傾向にある。このため、アルキル基の炭素数が10~14アルキルポリグリコシドの含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、含まないことが特に好ましい。
【0070】
界面活性剤の総量(総界面活性剤量)は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、16~35質量%が好ましく、20~30質量%がさらに好ましく、22~27質量%がより好ましい。総界面活性剤量が上記下限値以上であれば、洗浄力及び泡立ちにより優れる。総界面活性剤量が上記上限値以下であれば、水切れ性をより高められる。
【0071】
≪ハイドロトロープ剤≫
液体洗浄剤組成物がハイドロトロープ剤を含有することにより、主として、液体洗浄剤組成物の保存安定性(特に低温安定性)が向上して、透明外観をより安定に確保しやすくなる。
ハイドロトロープ剤としては、例えば、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、エタノール等が挙げられる。
ハイドロトロープ剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ハイドロトロープ剤において、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩は、それぞれo体、m体、p体の3異性体のいずれでもよく、これらのなかでも容易に入手が可能なことからp体が好ましく、その中でも、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸塩がより好ましい。
ハイドロトロープ剤の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して2~30質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。ハイドロトロープ剤の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力及び水切れ性を低下させることなく、その配合効果を十分に得ることができる。
【0072】
≪防腐剤≫
液体洗浄剤組成物は、防腐剤を含有することにより、液体洗浄剤組成物に微生物等が混入しても、菌の増殖を抑制できる。
防腐剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物が挙げられ、具体的には、ベンズイソチアゾリノン(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)、メチルイソチアゾリノン(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、ブチルベンズイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン等が挙げられる。
防腐剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
防腐剤の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.0002~0.01質量%(2~100質量ppm)が好ましく、0.0005~0.004質量%(5~40質量ppm)がより好ましい。防腐剤の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力及び水切れ性を低下させることなく、その配合効果を十分に得ることができる。
【0073】
≪pH調整剤≫
pH調整剤としては、例えば、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤等が挙げられる。
無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの中でも、液体洗浄剤の保存安定性が向上しやすいことから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物が好ましい。
有機アルカリ剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも液体洗浄剤の保存安定性が向上しやすいことから、モノエタノールアミンが好ましい。
なお、液体洗浄剤のpHが高すぎる場合には、pH調整剤として、例えば塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等のカルボン酸等の酸を用いてもよい。
なお、液体洗浄剤組成物に含まれる全ての成分の含有量の合計が、100質量%となるものとする。
【0074】
(製造方法)
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて(E)成分、(F)成分又は任意成分とを、水に溶解し、pH調整剤を用いて所定のpHに調整することによって製造できる。
【0075】
(使用方法)
液体洗浄剤組成物の使用方法(即ち、食器の洗浄方法)を以下に説明する。
食器を洗浄する方法としては、任意の量の液体洗浄剤組成物を洗浄具に付着させ、この洗浄具を用いて洗浄対象を擦り洗いする(擦り洗い操作)方法が挙げられる。
洗浄具に付着させる液体洗浄剤組成物の量は、例えば、1~10gである。
洗浄対象は、皿、箸、スプーン等の食器が挙げられる。また、洗浄対象は、鍋、包丁等の調理器具でもよい。本稿において、食器及び調理器具を総じて、「食器」と称する。
擦り洗い操作の後、洗浄対象をすすぎ水ですすぎ、洗浄対象に付着している液体洗浄剤組成物を洗い流す(すすぎ操作)。すすぎ操作は、例えば、流水で洗浄対象をすすぐ方法、容器等に貯留したすすぎ水に洗浄対象を浸し、次いで引き上げる方法等である。この際、本発明の液体洗浄剤組成物は、すすぎ水の量が少ない、あるいはすすぎ回数が少なくても、洗浄対象に付着した水が速やかに流下する。
【0076】
また、食器を洗浄する方法としては、液体洗浄剤組成物を水に分散して洗浄液とし、洗浄液に洗浄対象を任意の時間(浸漬時間)で浸漬する(浸漬操作)方法(浸漬法)が挙げられる。
【0077】
洗浄液の総量に対する液体洗浄剤組成物の含有量は、例えば、0.01~50質量%(即ち、2~10000倍希釈)が好ましく、0.05~20質量%がより好ましく、0.1~5質量%がさらに好ましい。
浸漬法における浸漬時間は、洗浄対象の汚れの程度等を勘案して決定され、例えば、5分間以上が好ましく、5分間~10時間がより好ましく、5分間~1時間、15分間~1時間がさらに好ましい。浸漬時間が上記下限値以上であれば、洗浄力のさらなる向上を図れる。浸漬時間が上記上限値以下であれば、食器の洗浄時間が過剰に長くなるのを防止できる。
【0078】
浸漬操作においては、必要に応じて、洗浄液内で又は洗浄液から取り出して、洗浄対象を洗浄具で擦り洗いしてもよい。洗浄具としては、例えば、スポンジ、刷子等が挙げられる。
任意の時間、洗浄対象を洗浄液に浸漬し、次いで、洗浄液から洗浄対象を取り出す。取り出した洗浄対象に対し、液体洗浄剤組成物を含有しない浄水(すすぎ水)ですすぎ、洗浄対象に付着している洗浄液及び泡を洗い流す(すすぎ操作)。すすぎ操作を経ることで、洗浄された食器を得る。この際、本発明の液体洗浄剤組成物は、すすぎ水の量が少ない、あるいはすすぎ回数が少なくても、洗浄対象に付着した水が速やかに流下する。
【0079】
以上説明した本発明の液体洗浄剤組成物においては(A)成分に対して特定比率の(D)成分と、(A)成分に対して特定比率の(C)成分と、(D)成分に対して特定比率の(B)成分とを含有するので、洗浄力、泡立ち性に優れ、かつ、不十分なすすぎでも水切れ性に優れる。このため、食器を洗浄した後、食器を水に浸漬し引き上げる「ためすすぎ」でも、少ない回数で水切れが発現する。係る理由は以下のように考えられる。
水切れ性は(C)成分と(D)成分がコンプレックス(会合体)を形成し、その会合体が食器等の洗浄対象物の表面に吸着し、(D)成分がすすぎ時に(C)成分から離脱することにより水切れ性が発現する。しかし、(C)成分と(D)成分の会合体は結合力が強いため、「ためすすぎ」のような少ない物理力では離脱しにくく、水切れ性が発現しない。一方、(A)成分と(C)成分の会合体は結合力が比較的弱く脱離が起こりやすいが、洗浄力や泡立ち性を阻害することがある。そこで、A/B比、D/B比を特定の範囲にすることで、(C)成分と(D)成分との会合体の数を相対的に減少させている。これにより、洗浄力、泡立ち性を低下させずに、(A)成分及び(D)成分を(C)成分から脱離しやすくし、洗浄力、泡立ち性が良好で、かつ優れた水切れ性が発現するものと考えられる。
さらに、(E)成分を加えるとより構造の類似性により(A)成分と(C)成分の会合体の離脱のしやすさを向上させるため、より不十分なすすぎでも水切れ性が発現すると考えられる。
また、理由は定かではないが、酵素を加えると、(C)成分と(D)成分の会合体の脱離のしやすさを向上させるためより少ないすすぎ回数でも水切れ性が発現すると考える。
【実施例
【0080】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0081】
(使用原料)
<(A)成分:スルホコハク酸ジアルキルエステル(塩)>
A-1:スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム(商品名:リパール870P、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)。式(a1)中、Rが及びRが2-エチルヘキシル基、Mがナトリウム、x=0、y=0の化合物。
【0082】
<(B)成分:半極性界面活性剤、両性界面活性剤>
B-1:n-ドデシルジメチルアミンオキシド(商品名:カデナックスDM12D-W、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)。式(b1)中、R21が炭素数12の直鎖アルキル基、R22がメチル基、R23がメチル基、r=0の化合物。
B-2:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(商品名:GENAMINOX AP、クラリアントジャパン株式会社製)。式(b1)中、R21が炭素数12の直鎖アルキル基、R22がメチル基、R23がメチル基、r=1、R24=プロピレン基の化合物。
B-3:コカミドプロピルベタイン(オバゾリンCAB-30、東邦化学工業株式会社製)。
【0083】
<(C)成分:カチオン化セルロース>
C-1:カチオン化セルロース(カチオン化度1.9質量%、商品名:UCARE JR 125、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)。
C-1:カチオン化セルロース(カチオン化度1.9質量%、商品名:UCARE JR 400、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)。
【0084】
<(D)成分:(A)成分を除くアニオン界面活性剤>
D-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(下記合成例1で合成したもの)。式(d1)中、R11が炭素数12~14の直鎖アルキル基、q=1、Mがナトリウム。
【0085】
≪合成例1≫D-1の合成
4Lオートクレーブ中に、原料アルコールとしてプロクター・アンド・ギャンブル社製の商品名CO1270アルコール(C12/C14=75%/25%,質量比)400gと、反応用触媒として水酸化カリウム触媒0.8gと、をそれぞれ仕込んだ。オートクレーブ内を窒素で置換した後、撹拌しながら昇温した。続いて、温度を180℃、圧力を0.3MPa以下に維持しつつ、エチレンオキシド91gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルのエチレンオキシドの平均付加モル数は1であった。
次に、このようにして得られたアルコールエトキシレート237gを、撹拌装置付の500mLフラスコに採り、窒素置換の後、液体無水硫酸(サルファン)96gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了の後、撹拌を1時間続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。
次いで、これを、水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりD-1を得た。
【0086】
D-2:炭素数10~14のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(テイカ株式会社製の商品名「テイカパワーL121」が水酸化ナトリウムで中和されたもの)。
D-3:炭素数14~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム(HOSTAPUR SAS 30A、クラリアントジャパン株式会社製)。
【0087】
<(E)成分:特定のノニオン界面活性剤>
E-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルへプチル)エーテル(EO10)(商品名:Lutensol XP100、BASFジャパン株式会社製)。式(E1)中、m=10、j=3、k=5の化合物。
E-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルへプチル)エーテル(EO9)(商品名:Lutensol XP90、BASFジャパン株式会社製)。式(E1)中、m=9、j=3、k=5の化合物。
【0088】
<(F)成分:酵素>
F-1:プロテアーゼ(商品名:ProgressUno、ノボザイムズジャパン株式会社製)。
F-2:アミラーゼ(商品名:Amplify Prime、ノボザイムズジャパン株式会社製)。
【0089】
<任意成分>
E’-1(任意ノニオン):アルキル基の炭素数が12~14であるアルキルポリグリコシド(商品名:GLUCOPON600CSUP、BASFジャパン株式会社製)。
エタノール(関東化学株式会社)。
p-トルエンスルホン酸(pTS-H、関東化学株式会社製)。
安息香酸Na(関東化学株式会社製)。
2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT、商品名:ネオロン M-10、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)
1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT、商品名:PROXEL XL2、アーチケミカルズ社製)。
クエン酸(クエン酸(無水)、扶桑化学株式会社製)。
酸化亜鉛(三井金属鉱業株式会社製)。
スルファミン酸(扶桑化学工業株式会社製)。
香料:特願2017-085282の表1~6に記載の香料組成物A又は香料組成物B。
pH調整剤:水酸化ナトリウム又は硫酸。
水:蒸留水。
【0090】
(評価方法)
<水切れ性>
≪洗浄対象物≫
φ18.5cm陶器皿(汚垢無し)。
≪評価方法≫
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに水道水38gと各例の液体洗浄剤組成物2gをとり、10回手で揉んだ後、洗浄対象物の陶器皿1枚の表面を10回擦り洗いした。その後、この陶器皿を25℃の水道水5Lを入れた洗い桶で30秒間浸漬し、ためすすぎをおこなった。この陶器皿をほぼ垂直にし、市販の食器かごに立てかけた。その後、目視により陶器皿を観察し、陶器皿から水が流れ落ちて30秒以内に陶器皿表面全体の100%の面積に水が付着していない状態になるかを確認した。
30秒以内に陶器皿表面全体の100%の面積に水が付着していない状態にならない場合は、25℃の水道水5Lを入れた洗い桶に再び30秒間浸漬し、上述の水切れ性評価を実施した。水切れ性の確認は最大10回までおこない、以下の評価基準にて評価した。
【0091】
≪評価基準≫
A:ためすすぎが3回以下。
B:ためすすぎが4~6回。
C:ためすすぎが7~10回。
D:10回でも30秒以内に、陶器皿表面全体に水が付着してない状態にならない。
【0092】
<洗浄力>
≪油汚れの調製≫
油汚れとして、固体脂である牛脂(和光純薬工業株式会社製)とスダンIV(関東化学株式会社製)とを混合し、着色した牛脂(着色牛脂)を調製した。着色牛脂におけるスダンIV濃度は1質量%に設定した。
【0093】
≪汚垢モデルの作製≫
前記着色牛脂1gを、縦10cm×横15cm×高さ5cmのプラスチック製の容器(商品名:ネオキーパー、岩崎工業株式会社製)内側の全面に均一になるように塗布し、これを汚垢モデルとした。
【0094】
≪洗浄試験≫
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(商品名スコッチブライト、住友スリーエム株式会社製)に、水道水38gと各例の液体洗浄剤2gとをそれぞれ採り、10回手で揉んだ後、擦り洗いを行った。具体的には、水道水と液体洗浄剤とを含んだスポンジで、上記汚垢モデルの内側底面を10回、内側面を1回、内側の四隅を5回擦った後、水道水で濯ぐ操作を施した。
【0095】
≪油汚れに対する洗浄力についての評価≫
擦り洗いの後、容器内面の油汚れの落ち具合を評価した。
かかる評価は、下記の評価基準(4段階評価)に基づいて行い、油汚れに対する洗浄力についての評価とした。
【0096】
≪評価基準≫
A:着色牛脂の汚れ残りが目視で認められず、着色牛油の残留によるヌルつきがない。
B:着色牛脂の汚れ残りが目視で認められないが、着色牛脂の残留によるヌルつきが僅かにある。
C:着色牛脂の汚れ残りが目視で認められ、着色牛脂の残留によるヌルつきがある。
D:着色牛脂の汚れ残りがかなり多く見られる。
【0097】
<泡立ち>
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム株式会社製、商品名:スコッチブライト)に、25℃水道水38gと液体洗浄剤2gとを採り、5回手で揉んだ後の状態(泡の立ち具合)を、下記の評価基準に従って評価した。
【0098】
≪評価基準≫
A:スポンジの表面全体を泡が覆い尽くしていた。
B:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の50~80%未満であった。
C:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の30~50%未満であった。
D:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の30%未満であった。
【0099】
(実施例1~26、比較例1~8)
表1~3に示す液体洗浄剤組成物1000gを下記の手順で調製した。
1Lビーカーに(A)成分、(D)成分、エタノール、pTS-H、安息香酸Na、クエン酸を入れ、マグネチックスターラー(Fine社製、「F-606N」)で攪拌した。続いて、(B)成分、(C)成分、(E)成分、他の任意成分を加え、混合した。その後、25℃でのpHが7.8になるように、必要に応じpH調整剤を適量添加した後、全体量が100質量%になるように水を入れ、さらによく攪拌し、各例の液体洗浄剤組成物を得た。
液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は、液体洗浄剤組成物を25℃に調温し、ガラス電極式pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM-30G」)を用い、ガラス電極を液体洗浄剤組成物に直接に浸漬し、1分間経過後に示すpHを測定した。測定方法は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠して行った。
なお、表中の配合量(質量%)は純分換算値である(ただし、(F)成分は製剤としての量である)。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。pH調整剤の配合量「適量」は、液体洗浄剤組成物をpH7.8にするのに必要な量である。水の配合量「バランス」は、液体洗浄剤組成物の総量を100質量%とするのに必要な量である。
各例の液体洗浄剤組成物について、水切れ性、洗浄力、泡立ち性を評価し、その結果を表中に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
表1~3に示すように、本発明を適用した実施例1~26は、水切れ性、洗浄力及び泡立ちのいずれもが、「A」~「C」であった。
(A)~(C)成分のいずれかを欠く比較例1~3、A/B比が0.03である比較例5、D/B比が1.9である比較例8は、いずれも水切れ性が「D」であった。
(D)成分を欠く比較例4、A/B比が0.85である比較例6は、洗浄力が「D」であった。
D/B比が0.4である比較例7は、泡立ちが「D」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、洗浄力、泡立ち及び水切れ性を高められることを確認できた。