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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】選定装置、選定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20221118BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20221118BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20221118BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20221118BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221118BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20221118BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20221118BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALN20221118BHJP
【FI】
H01M10/42 Z
B60L58/16
G06Q10/00 400
H01M10/54
H01M50/249
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019063137
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166928
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 幸児
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-141464(JP,A)
【文献】特開2009-244166(JP,A)
【文献】特開2012-29451(JP,A)
【文献】特開2012-155981(JP,A)
【文献】特開2013-120640(JP,A)
【文献】特開2017-152333(JP,A)
【文献】特開2018-156768(JP,A)
【文献】特開2019-46644(JP,A)
【文献】特開2020-113507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0239592(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0055421(US,A1)
【文献】国際公開第2015/012144(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/16
G06Q 10/00
H01M 10/42
H01M 10/54
H01M 10/60
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得する取得部と、
前記再利用部品の利用用途に基づいて、前記再利用部品を含むリユースバッテリの寿命を予測する予測部と、
前記使用状態及び前記リユースバッテリの寿命に基づいて、前記再利用部品を選定する選定部と、
を備える選定装置。
【請求項2】
前記再利用部品は、再利用前に、車両に搭載されたバッテリ部材である、
請求項1に記載の選定装置。
【請求項3】
前記再利用前の使用状態は、前記車両で計測される、
請求項2に記載の選定装置。
【請求項4】
前記バッテリ部材は、バッテリ及び前記バッテリの付属部品のうち少なくとも一方である、
請求項2または3に記載の選定装置。
【請求項5】
前記付属部品は、冷却ファン、電流センサ、電圧センサ、温度センサ、バッテリ演算装置、コンタクタ、コンバータ、及びヒューズのうち少なくとも一つである、
請求項4に記載の選定装置。
【請求項6】
前記選定部は、機械学習によって得られたモデルに前記再利用部品の再利用後の使用状態の情報を入力することで、前記再利用部品を選定する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の選定装置。
【請求項7】
機械学習によって前記モデルを生成する生成部
を更に備える、請求項6に記載の選定装置。
【請求項8】
コンピュータが、
再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得し、
前記再利用部品の利用用途に基づいて、前記再利用部品を含むリユースバッテリの寿命を予測し、
前記使用状態及び前記リユースバッテリの寿命に基づいて、前記再利用部品を選定する、
選定方法。
【請求項9】
コンピュータに、
再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得させ、
前記再利用部品の利用用途に基づいて、前記再利用部品を含むリユースバッテリの寿命を予測させ、
前記使用状態及び前記リユースバッテリの寿命に基づいて、前記再利用部品を選定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選定装置、選定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に搭載されるバッテリは、使用により劣化するが、劣化状態によって、車載用として再利用可能なものと、車載用としては性能が不十分なものとが存在する。車載用としての性能は十分に発揮できなくても、他の用途では十分に使用可能となることがある。そこで、車載用のバッテリが劣化した後、他の製品に搭載することによって劣化したバッテリを再利用するバッテリの再利用が考えられている。また、バッテリを再利用するにあたり、バッテリの再利用の可否を判定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリを再利用するにあたり、その可否を判定されることはあるが、バッテリが他の製品に再利用される際に、バッテリがどの程度の性能を発揮するかについての指標は示されていない。このため、バッテリを再利用する者は、どのようなバッテリを選定すればよいか判断が難しかった。このような問題は、バッテリ以外の再利用部品の全般に当てはまるものである。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、再利用部品を選定させやすくすることができる選定装置、選定方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る選定装置、選定方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る選定装置は、再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得する取得部と、前記使用状態に基づいて、前記利用用途に適した前記再利用部品を選定する選定部と、を備えるものである。
【0007】
(2):(1)において、前記再利用部品は、再利用前に、車両に搭載されたバッテリ部材である。
【0008】
(3):(2)において、前記再利用前の使用状態は、前記車両で計測されるものである。
【0009】
(4):(2)または(3)において、前記バッテリ部材は、バッテリ及び前記バッテリの付属部品のうち少なくとも一方である。
【0010】
(5):(4)において、前記付属部品は、冷却ファン、電流センサ、電圧センサ、温度センサ、バッテリ演算装置、コンタクタ、コンバータ、及びヒューズのうち少なくとも一つである。
【0011】
(6):(1)から(5)のいずれかにおいて、前記選定部は、機械学習によって得られたモデルに前記再利用部品の再利用後の使用状態の情報を入力することで、前記再利用部品を選定するものである。
【0012】
(7):(6)において、機械学習によって前記モデルを生成する生成部を更に備える、ものである。
【0013】
(8):この発明の一態様に係る選定方法は、コンピュータが、再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得し、前記使用状態に基づいて、前記利用用途に適した前記再利用部品を選定するものである。
【0014】
(9):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、再利用部品の再利用前の使用状態及び前記再利用部品の利用用途の情報を取得させ、前記使用状態に基づいて、前記利用用途に適した前記再利用部品を選定させるものである。
【発明の効果】
【0015】
(1)~(9)によれば、再利用部品を選定させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の選定装置400を利用したバッテリ選定システム1の全体構成の一例を示す図である。
図2】実施形態の選定装置400を利用したバッテリ選定システム1の一例を示すブロック図である。
図3】車両10の構成の一例を示す図である。
図4】バッテリ使用状態収集データ162の一例を示す図である。
図5】電流値の時間変化を示すグラフである。
図6】リユースバッテリ使用状態収集データ262の一例を示す図である。
図7】バッテリ使用状態データ472の一例を示す図である。
図8】リユースバッテリ使用状態データ474の一例を示す図である。
図9】選定結果データ480の一例を示す図である。
図10】選定装置400において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】選定装置400において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】選定装置400において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】選定装置400において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】寿命予測モデル476の生成工程の一例を示す図である。
図15】バッテリ選定モデル478の生成工程の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の選定装置、選定方法、及びプログラムの実施形態について説明する。以下の説明において、車両10は電気自動車であるものとするが、車両10は、走行用の電力を供給するバッテリ(二次電池)を搭載した車両であればよく、ハイブリッド自動車や燃料電池車両であってもよい。
【0018】
[全体構成]
図1は、実施形態の選定装置400を利用したバッテリ選定システム1の全体構成の一例を示す図、図2は、実施形態の選定装置400を利用したバッテリ選定システム1の一例を示すブロック図である。図1に示す車両10に搭載されたバッテリ部材100は、長期間使用すると、例えば使用に応じて劣化する。バッテリ部材100が劣化して故障すると、例えば修理等を行うが、更に劣化が進むと、例えばバッテリ120の充電容量が低下して車載用としての機能を十分に発揮できなくなる。
【0019】
そこで、劣化したバッテリ部材100は、求められる性能、例えば充電容量が車両10よりも低くて済むバッテリ部材100を再利用する対象品となる再利用製品50などにリユースバッテリ部材200として搭載して再利用される。言い換えると、リユースバッテリ部材200は、再利用前に、車両に搭載されたバッテリ部材100である。バッテリ選定システム1は、複数の車両10のそれぞれに搭載されたバッテリ部材100を再利用した複数のリユースバッテリ部材200のうち、再利用製品に搭載するのに適切なリユースバッテリ部材200を選定するシステムである。バッテリ選定システム1は、リユースバッテリ部材200を選定するにあたり、リユースバッテリ部材200についての寿命を予測する。
【0020】
バッテリ部材100は、バッテリ120と付属部品140を備えており、例えば、バッテリ120及び付属部品140の少なくとも一方が車両10に搭載するバッテリ部材100としての機能を十分に発揮できなくなったときに、バッテリ部材100はリユースバッテリ部材200として再利用される。
【0021】
なお、再利用製品50においても、リユースバッテリ部材200が劣化して故障した場合、例えば修理等を行うが再利用製品50に搭載されたリユースバッテリ部材200の劣化がさらに進み、リユースバッテリ部材200が再利用製品50に求められる性能を十分に発揮できなくなったときには、例えば、廃棄バッテリ部材300として廃棄の対象となる。廃棄の対象となったバッテリについても、例えば、利用可能なセルなどが残っている場合のセルやレアメタルなどは、リサイクル品として使用してもよい。再利用製品50としては、例えば、邸宅や充電ステーション等に定置される定置式のバッテリ部材、ロボット、フォークリフト、ゴルフ場等で利用されるカート等が挙げられる。以下の説明において、例えばバッテリ部材100の劣化等という場合には、バッテリ120または付属部品140の劣化等と同等の場合を意味する。例えばリユースバッテリ部材200の劣化、寿命等という場合には、リユースバッテリ220またはリユース付属部品240の劣化、寿命等と同等の場合を意味する。
【0022】
図1及び図2に示すように、バッテリ選定システム1は、車両10と、再利用製品50と、選定装置400と、を備える。選定装置400は、再利用製品50に搭載されるリユースバッテリ部材200の寿命を予測する。選定装置400は、予測した寿命に基づいて、再利用製品50に搭載するリユースバッテリ部材200を選定する。
【0023】
車両10と選定装置400とは、ネットワークNWを介して通信する。同様に、再利用製品50と選定装置400とは、ネットワークNWを介して通信する。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局などを含む。
【0024】
[車両10]
図3は、車両10の構成の一例を示す図である。図3に示すように、車両10には、例えば、モータ12と、駆動輪14と、ブレーキ装置16と、車両センサ20と、PCU(Power Control Unit)30と、充電口70と、充電コンバータ72と、バッテリ部材100と、車両記憶装置160と、通信装置180とを備える。
【0025】
モータ12は、例えば、三相交流電動機である。モータ12のロータは、駆動輪14に連結される。モータ12は、供給される電力を用いて動力を駆動輪14に出力する。また、モータ12は、車両の減速時に車両の運動エネルギーを用いて発電する。
【0026】
ブレーキ装置16は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータとを備える。ブレーキ装置16は、ブレーキペダルの操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置16は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0027】
車両センサ20は、アクセル開度センサと、車速センサと、ブレーキ踏量センサと、を備える。アクセル開度センサは、運転者による加速指示を受け付けるアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作量を検出し、アクセル開度として制御部36に出力する。車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両の速度(車速)を導出し、制御部36に出力する。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作量を検出し、ブレーキ踏量として制御部36に出力する。
【0028】
PCU30は、例えば、変換器32と、VCU(Voltage Control Unit)34と、制御部36と、ラジエータ38とを備える。なお、これらの構成要素をPCU30として一まとまりの構成としたのは、あくまで一例であり、これらの構成要素は分散的に配置されても構わない。
【0029】
変換器32は、例えば、AC-DC変換器である。変換器32の直流側端子は、直流リンクDLに接続されている。直流リンクDLには、VCU34を介してバッテリ120が接続されている。変換器32は、モータ12により発電された交流を直流に変換して直流リンクDLに出力する。
【0030】
VCU34は、例えば、DC―DCコンバータである。VCU34は、バッテリ120から供給される電力を昇圧して直流リンクDLに出力する。
【0031】
制御部36は、例えば、モータ制御部と、ブレーキ制御部と、バッテリ・VCU制御部と、を備える。モータ制御部、ブレーキ制御部、及びバッテリ・VCU制御部は、それぞれ別体の制御装置、例えば、モータECU(Electronic Control Unit)、ブレーキECU、バッテリ・VCUECUといった制御装置に置き換えられてもよい。
【0032】
モータ制御部は、車両センサ20の出力に基づいて、モータ12を制御する。ブレーキ制御部は、車両センサ20の出力に基づいて、ブレーキ装置16を制御する。VCU34は、バッテリ・VCU制御からの指示に応じて、直流リンクDLの電圧を上昇させる。
【0033】
低圧バッテリ40は、例えば、主に車両制御や補機作動等のために電気を供給するためのバッテリである。低圧バッテリ40の規定電圧は、バッテリ120の規定電圧より低い電圧である。コンプレッサ42は、例えば車両10に設けられた空調装置に圧縮空気を供給するデバイスである。コンプレッサ42は、バッテリ120に接続され、バッテリ120により供給される電気で作動する。
【0034】
充電口70は、車両10の車体外部に向けて設けられている。充電口70は、充電ケーブル520を介して充電器500に接続される。充電ケーブル520は、第1プラグ522と第2プラグ524を備える。第1プラグ522は、充電器500に接続され、第2プラグ524は、充電口70に接続される。充電器500から供給される電気は、充電ケーブル520を介して充電口70に供給される。
【0035】
充電ケーブル520は、電力ケーブルに付設された信号ケーブルを含む。信号ケーブルは、車両10と充電器500の間の通信を仲介する。したがって、第1プラグ522と第2プラグ524のそれぞれには、電力コネクタと信号コネクタが設けられている。
【0036】
充電コンバータ72は、バッテリ120と充電口70の間に設けられる。充電コンバータ72は、充電口70を介して充電器500から導入される電流、例えば交流電流を直流電流に変換する。充電コンバータ72は、変換した直流電流をバッテリ120に対して出力する。
【0037】
バッテリ部材100は、図2に示すように、バッテリ120と、付属部品140とを備える。付属部品140は、図3に示す冷却ファン141、電流センサ142、電圧センサ143、温度センサ144、バッテリECU145、コンタクタ146、コンバータ147、及びヒューズ148の総称である。バッテリ部材100は、インテリジェントパワーユニット(以下、IPU)150を備える。IPU150には、バッテリ120、冷却ファン141、電流センサ142、電圧センサ143、温度センサ144、バッテリECU145、コンタクタ146、及びヒューズ148が含まれる。IPU150は、図示しないケース部材を備えており、ケース部材の中にIPU150の各部材が収容される。バッテリECU145は、本発明のバッテリ演算装置の一例である。
【0038】
バッテリ120は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリ120には、車両10の外部の充電器500から導入される電力を蓄え、車両10の走行のための放電を行う。冷却ファン141は、バッテリECU145により出力される制御信号に基づいて羽根部材を回転させる。冷却ファン141は、羽根部材を回転させることにより、IPU150のケース内の各デバイスを冷却する。
【0039】
電流センサ142は、バッテリ120とVCU34との間に設けられ、バッテリ120により供給される電気の電流値を検出する。電流センサ142は、検出した電流値をバッテリECU145に出力する。電圧センサ143は、バッテリ120に設けられ、バッテリ120により供給される電気の電圧を検出する。電圧センサ143は、検出した電圧をバッテリECU145に出力する。温度センサ144は、例えばバッテリ120に取り付けられ、バッテリ120の温度を検出する。温度センサ144は、検出したバッテリ120の温度をバッテリECU145に出力する。
【0040】
バッテリECU145は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性記憶媒体を有する記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0041】
バッテリECU145は、電流センサ142、電圧センサ143、及び温度センサ144により出力される各情報やその他の情報に基づいて、冷却ファン141の動作制御やコンタクタ146の開閉制御等を行う。バッテリECU145は、計時機能を備えており、現在時刻やバッテリ部材100が車両10に搭載されてからの時間を計測する。バッテリECU145は、電流センサ142、電圧センサ143、及び温度センサ144により出力される各情報や計時機能により計測した時間等に基づいて、バッテリ120のSOC(State Of Charge)やSOH(State Of Health)を算出する。バッテリECU145は、算出したSOCやSOHの情報を、必要に応じて車両記憶装置160に格納したり、通信装置180に出力したりする。バッテリ120は、計時機能による計時結果に基づいて、バッテリ120の稼働時間及びバッテリ120を車両10に搭載してから経過した年数(以下、経過年数)を算出して収集する。バッテリ120は、収集した稼働時間及び経過年数を車両記憶装置160に格納する。
【0042】
バッテリECU145は、電流センサ142により出力されるバッテリ120の電流、電圧センサ143により出力されるバッテリ120の電圧、及び温度センサ144により出力されるバッテリ120の温度等の各情報を監視するとともに収集する。バッテリECU145は、収集したこれらの情報を、リユースバッテリ部材200の再利用前の使用状態である、図2に示すバッテリ使用状態収集データ162として、車両記憶装置160に格納する。
【0043】
図4は、バッテリ使用状態収集データ162の一例を示す図である。図4に示すように、バッテリ使用状態収集データ162は、車両ID、バッテリID、使用開始年月日、バッテリ交換の有無、劣化要素、バッテリSOH、故障発生年月日の項目を含む。車両IDは、複数の車両を個々に識別するために車両毎に付された番号であり、バッテリIDは、複数のバッテリを個々に識別するためにバッテリ毎に付された番号である。
【0044】
使用開始年月日は、バッテリ120を含むバッテリ部材100を車両10に搭載してバッテリ部材100の使用を開始した年月日である。バッテリ交換の有無は、車両10において、バッテリ部材100の交換(修理)を行ったか否かを示し、交換を行っている場合には、交換の回数を示す項目である。劣化要素は、バッテリ部材100におけるバッテリ120及び付属部品140を劣化させる要素を示す項目である。
【0045】
バッテリ部材100を劣化させる劣化要素となる事項は種々あり、例えば、バッテリ120の温度、充放電深度、電圧値、電流値、稼働時間、バッテリ部材100の使用の経過年数といった事項などがある。例えば、バッテリ120の温度が高いとき、充放電深度が深いとき、電圧値や電流値が大きいとき、バッテリ部材100の稼働時間や経過年数が長いときに、それぞれバッテリ120や付属部品140の劣化度が大きくなる。劣化要素としては、例えば、これらの事項の1つまたは2つ以上をバッテリ120と付属部品140ごとにまとめて、それぞれ「ア」「イ」「ウ」としている。なお、バッテリ部材100の劣化状態は、例えば、稼働時間中の要素と車両生涯の要素との2つの観点でまとめるようにしてもよい。バッテリ部材100の劣化状態は、例えば下記(1)でまとめて表してもよい。
バッテリ部材100の劣化状態=f(温度、充放電深度、電圧値、電流値、稼働時間、経過年数)・・・(1)
【0046】
例えば、稼働時間中の要素と車両生涯の要素との2つの観点でまとめる例として、電流値を用いて説明する。図5は、電流値の時間変化を示すグラフである。図5に示す第1ラインL1は、電流の測定値の時間変化を示し、第2ラインL2は、平均電流の時間変化を示す。平均電流は、積算電流を稼働時間で除することで求められる。
【0047】
第1ラインL1に示す電流の変化では、測定値使用上限UL1を超えないことが多く、この間は、バッテリ120の劣化は小さい状態である。また、時刻t1付近において、電流値が測定値使用上限UL1を超えており、この間は、バッテリ120の劣化が大きくなる。バッテリECU145は、例えば、電流値が測定値使用上限UL1を超えた時間(累積超過時間)及び最大電流値を記録し、例えば、累積超過時間及び最大電流値に基づいて、バッテリ120の劣化要素の大小を特定する。
【0048】
第2ラインL2に示す平均電流は、時間の経過に伴って平均値使用上限UL2に向かって増加する。バッテリECU145は、例えば、平均電流が平均値使用上限UL2を超えたかによってバッテリ120の劣化要素の大小を特定し、例えば、平均値使用上限UL2を超えた場合には、バッテリ120の劣化要素の大とする。平均値使用上限は、積算電流を総時間で除することで求められる。総時間とは、バッテリ120の稼働時間と放置時間の和である。
【0049】
バッテリSOHは、バッテリ120を車両10から取り外したときのバッテリ120のSOHを示す項目である。故障発生年月日は、バッテリ120に故障が発生した年月日である。この実施形態では、車両10に搭載されたバッテリ120に故障が発生した場合には、そのバッテリ120を交換するものとしている。バッテリ120を交換するタイミングとしては、バッテリ120の故障が発生したタイミングと、故障は発生しないが、交換のためにバッテリ120を車両から取り外したタイミングである。故障は発生しないが、交換のためにバッテリ120を車両から取り外した場合には、故障発生年月日は「なし」となる。
【0050】
バッテリECU145は、バッテリ120に故障が発生するか、故障が発生していないバッテリ120が車両10から取り外されたときに監視している各データとバッテリ120の故障とを紐づけてデータベース化する。こうして、バッテリECU145は、図4に示すバッテリ使用状態収集データ162を生成し、通信装置180に出力する。
【0051】
バッテリECU145は、劣化要素の劣化パターンとバッテリ部材100の交換の実行を対応付けて、特異劣化パターンを抽出して、バッテリ部材100の使用状態としてもよい。例えば、1つの車両10が同じ劣化要素のパターンが出現したときにバッテリ部材100を交換している場合には、その劣化要素のパターンを特異劣化パターンとして抽出するようにしてもよい。
【0052】
コンタクタ146は、バッテリ120とVCU34との間に設けられたデバイスである。コンタクタ146は、バッテリ120から過剰な電流が供給されることを防止する。コンバータ147は、低圧バッテリ40に対してバッテリ120の電気を供給するため、バッテリ120により供給された電気を降圧する。ヒューズ148は、バッテリ120とVCU34との間に設けられ、短絡時におけるバッテリ120から過剰な電流が供給されることを防止する。
【0053】
車両記憶装置160は、例えば、バッテリECU145に含まれる例えば、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置により実現される。車両記憶装置160は、例えば、バッテリECU145により収集、算出されたバッテリ120の電流、電圧、温度、SOH等の各種の情報をバッテリ使用状態収集データ162として記憶する。
【0054】
通信装置180は、セルラー網やWi-Fi網を接続するための無線モジュールを含む。通信装置180は、例えば、バッテリ部材100により出力される電流値、電圧値、温度やバッテリ120のSOHなどのバッテリ使用状態収集データ162を、図1に示すネットワークNWを介して、選定装置400に送信する。
【0055】
[再利用製品50]
図2に示すように、再利用製品50は、例えば、リユースバッテリ部材200と、再利用製品記憶装置260とを備える。リユースバッテリ部材200は、バッテリ部材100を再利用したものであり、リユースバッテリ220と、リユース付属部品240とを備える。リユースバッテリ220は、バッテリ120と同様の構成を有するが、バッテリ120が劣化したものである。リユース付属部品240は、バッテリ部材100におけるリユース付属部品240のうち、再利用製品に適したデバイスが選択されたものである。例えば、再利用製品であるロボットに、低圧バッテリが設けられていない場合、リユース付属部品240には、電流センサ、電圧センサ、温度センサ等は設けられるが、コンバータは設けられない。
【0056】
リユースバッテリ部材200に含まれる各デバイスは、バッテリ部材100に含まれる各デバイスと同様にして作動する。このため、リユースバッテリ部材200に含まれるバッテリECUは、電流センサ、電圧センサ、及び温度センサ等の各センサにより出力されるリユースバッテリ220の電流、電圧、温度等の各情報を監視するとともに収集し、リユースバッテリ部材200の再利用後の使用状態を示すデータであるリユースバッテリ使用状態収集データ262として再利用製品記憶装置260に格納する。バッテリECUは、バッテリ部材100のバッテリECU145と同様に、リユースバッテリ220のSOCやSOHを算出し、リユースバッテリ部材200の稼働時間及び経過年数を収集して再利用製品記憶装置260に格納する。
【0057】
再利用製品記憶装置260は、例えば、リユースバッテリ部材200に含まれるHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置により実現される。再利用製品記憶装置260は、例えば、リユースバッテリ部材200のバッテリECUにより収集、算出されたリユースバッテリ220の電流、電圧、温度、SOH等の各種の情報をリユースバッテリ使用状態収集データ262として記憶する。
【0058】
図6は、リユースバッテリ使用状態収集データ262の一例を示す図である。図6に示すように、リユースバッテリ使用状態収集データ262は、利用用途(以下、用途)、バッテリID、リユース年月日、劣化要素、バッテリSOH、故障年月日の各要素を含む。このうち、バッテリID、劣化要素、バッテリSOH、及び故障年月日の項目は、バッテリ使用状態収集データ162と同様の事項を示す。
【0059】
用途の項目は、再利用製品50によって定められる。例えば、再利用製品50がロボットである場合には、用途が「ロボット」となり、再利用製品50がフォークリフトである場合には用途が「フォークリフト」となる。リユース年月日は、リユースバッテリ220を再利用製品50に搭載した年月日である。
【0060】
リユースバッテリ部材200に含まれるバッテリECUは、リユースバッテリ部材200の劣化状態を取得する。リユースバッテリ部材200の劣化状態は、例えば、稼働時間中の要素と車両生涯の要素との2つの観点でまとめるようにしてもよい。リユースバッテリ部材200の劣化状態は、例えば下記(2)式でまとめて表してもよい。
リユースバッテリ220の劣化状態=f(使用環境(付属部品温度、負荷)、稼働時間、経過年数) ・・・(2)
【0061】
上記の要素のうち、付属部品温度及び負荷は、リユース付属部品240としての電流センサ、電圧センサ、温度センサの検出結果に基づいて、各リユース付属部品240について演算することなどにより求める。また、稼働時間及び経過年数は、リユースバッテリ部材200の稼働時間及び経過年数に基づいて求める。
【0062】
再利用製品50は、例えば、セルラー網やWi-Fi網を接続するための無線モジュールを含む再利用製品通信装置を備える。リユースバッテリ部材200に含まれるバッテリECUは、リユースバッテリ220に故障が発生するか、故障が発生していないリユースバッテリ220が再利用製品50から取り外されたときに、監視している各データとリユースバッテリ220の故障とを紐づけてデータベース化する。こうして、バッテリECUは、図6に示すリユースバッテリ使用状態収集データ262を生成し、再利用製品通信装置に送信する。再利用製品通信装置は、リユースバッテリ部材200により出力される電流値、電圧値、温度やリユースバッテリ220のSOHなどのリユースバッテリ使用状態収集データ262を、図1に示すネットワークNWを介して、選定装置400に送信する。
【0063】
選定装置400は、バッテリIDによってバッテリ部材100及びリユースバッテリ部材200を管理する。このため、選定装置400では、バッテリ部材100について、車載時から再利用時までの一連の劣化状態を管理することができる。したがって、再利用製品50においても、バッテリ部材100(リユースバッテリ部材200)の劣化状態を適切に管理することができる。
【0064】
[選定装置400]
図2に示すように、選定装置400は、例えば、通信部410と、取得部420と、生成部430と、予測部440と、選定モデル生成部450と、選定部460と、記憶部470とを備える。取得部420、生成部430、及び予測部440は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。記憶部470は、前述した記憶装置により実現される。選定装置400は、車両10及び再利用製品50により送信される情報に基づいて、バッテリ部材及びリユースバッテリ部材200を管理し、リユースバッテリ部材200の寿命を予測する。
【0065】
通信部410は、取得部420の指示に従い、セルラー網やWi-Fi網を接続するための無線モジュールを含む。通信部410は、車両10により送信されるバッテリ使用状態収集データ162、及び再利用製品50により送信されるリユースバッテリ使用状態収集データ262を受信する。
【0066】
通信部410は、複数の車両10及び複数の再利用製品50との間で通信可能とされており、通信部410は、複数(多数)の車両10及び再利用製品50により送信されるバッテリ使用状態収集データ162及びリユースバッテリ使用状態収集データ262を受信する。このため、選定装置400は、大量のバッテリ使用状態収集データ162及びリユースバッテリ使用状態収集データ262を受信する。
【0067】
取得部420は、車両10により送信されるバッテリ使用状態収集データ162、及び再利用製品50により送信されるリユースバッテリ使用状態収集データ262を、通信部410に受信させて取得する。取得部420は、取得したバッテリ使用状態収集データ162及びリユースバッテリ使用状態収集データ262を記憶部470に格納する。
【0068】
取得部420は、複数の車両10により送信される複数のバッテリ使用状態収集データ162を集計して、バッテリ使用状態データ472を生成して取得する。図7は、バッテリ使用状態データ472の一例を示す図である。バッテリ使用状態データ472は、複数の車両10により送信されたバッテリ使用状態収集データ162を通信部410が受信した順に並べたデータである。
【0069】
取得部420は、複数の再利用製品50により送信される複数のリユースバッテリ使用状態収集データ262を集計して、リユースバッテリ使用状態データ474を生成して取得する。図8は、リユースバッテリ使用状態データ474の一例を示す図である。リユースバッテリ使用状態データ474は、複数の再利用製品50により送信されたリユースバッテリ使用状態収集データ262を通信部410が受信した順に並べたデータである。
【0070】
生成部430は、通信部410により受信され、記憶部470に記憶されたバッテリ使用状態データ472及びリユースバッテリ使用状態データ474を学習データ及び教師データとした機械学習を行い、寿命予測モデル476を生成する。生成部430は、バッテリ使用状態データ472及びリユースバッテリ使用状態データ474より取得されるデータを入力データ、リユースバッテリ部材200の寿命を出力データとして、複数の車両10及び再利用製品50のニューラルネットワークモデルを寿命予測モデル476として生成する。
【0071】
生成部430は、ニューラルネットワークモデルの入力データをバッテリ部材100の使用状態、バッテリ部材100の交換有無、バッテリ部材100の利用期間、リユースバッテリ部材200の用途、リユースバッテリ部材200の使用状態、リユースバッテリ部材200の寿命とし、出力データを、リユースバッテリ部材200の寿命をとして寿命予測モデル476を生成する。生成部430は、生成した寿命予測モデル476を記憶部470に格納する。生成部430は、実施形態において入力層に入力されるデータを一部に限定して寿命予測モデル476を生成してもよい。特に、生成部430は、使用状態を一部の項目に限定して寿命予測モデル476を生成してもよい。生成部430は、入力層に入力されるデータごとに分類した寿命予測モデル476を生成してもよい。例えば、生成部430は、リユースバッテリ部材200の用途(再利用製品50の種類)ごとに寿命予測モデル476を生成してもよい。生成部430は、劣化要素とバッテリ120のSOHとを紐づけて寿命予測モデル476を生成してもよい。
【0072】
予測部440は、例えばバッテリ部材100が車両10より取り外された場合や再利用製品製造業者により寿命予測要請があった場合に、再利用時におけるバッテリ部材100を再利用してリユースバッテリ部材200とした場合の寿命を予測する。寿命予測要請は、例えば、予測対象となるバッテリ部材100(リユースバッテリ部材200となる前のバッテリ部材100)を特定して行われてもよいし、選定装置400が管理する全てまたは一部のバッテリ部材100を予測対象として行われてもよい。予測部440は、寿命予測モデル476を用いることなく、寿命予測モデル476の入力層に入力された各データに基づくルールベースによって、リユースバッテリ部材200の寿命予測を行ってもよい。
【0073】
リユースバッテリ部材200の寿命を予測するにあたり、予測部440は、予測対象となるリユースバッテリ部材200となる前のバッテリ部材100のバッテリ使用状態データ472を取得するとともに、寿命予測モデル476を記憶部470から読み出す。予測部440は、バッテリ使用状態データ472及び寿命予測モデル476に基づいて、リユースバッテリ部材200の寿命を予測する。予測部440は、予測したリユースバッテリ部材200の寿命の情報を記憶部470に格納する。記憶部470は、複数のリユースバッテリ部材200の寿命の情報を記憶している。予測部440は、寿命予測要請を行った再利用製品製造業者に対して、予測したリユースバッテリ部材200の寿命の情報を、通信部410を利用して送信する。
【0074】
選定モデル生成部450は、記憶部470に記憶された複数のリユースバッテリ部材200の寿命のデータ及びリユースバッテリ使用状態データ474を学習データ及び教師データとした機械学習を行い、バッテリ選定モデル478を生成する。選定モデル生成部450は、リユースバッテリ部材200の寿命のデータ及びリユースバッテリ使用状態データ474により取得されるデータを入力データ、複数のリユースバッテリ部材200についての再利用製品としての適性のデータを出力データとして、複数のバッテリ部材100及びリユースバッテリ部材200のニューラルネットワークモデルをバッテリ選定モデル478として生成する。
【0075】
選定モデル生成部450は、ニューラルネットワークモデルの入力データをリユースバッテリ部材200の寿命、用途、使用状態とし、出力データをリユースバッテリ部材200についての再利用製品としての適性を表すデータとしてバッテリ選定モデル478を生成する。選定モデル生成部450は、生成したバッテリ選定モデル478を記憶部470に格納する。選定モデル生成部450は、実施形態において入力層に入力されるデータを一部に限定してバッテリ選定モデル478を生成してもよい。
【0076】
選定部460は、例えば再利用製品製造業者によりバッテリ選定要請があった場合に、再利用製品として適したリユースバッテリ部材200を複数のリユースバッテリ部材200の中から選定する。選定部460は、例えば、再利用製品製造業者によるバッテリ選定要請を、通信部410によって受信して取得する。バッテリ選定要請には、例えば、リユースバッテリ部材200を再利用する製品の用途の情報が含まれる。リユースバッテリ部材200を選定するにあたり、選定部460は、リユースバッテリ部材200が搭載される再利用製品の用途のデータを取得するとともに、バッテリ選定モデル478を記憶部470から読み出す。選定部460は、再利用製品の用途及びバッテリ選定モデル478に基づいて、再利用製品に適するリユースバッテリ部材200を選定して選定結果データ480を生成する。
【0077】
図9は、選定結果データ480の一例を示す図である。選定結果データ480は、再利用製品に適するリユースバッテリ部材200として用途ごとに選定されたリユースバッテリ部材200の順位を示すデータである。図9に示すように、選定結果データ480は、用途ごとに生成され、バッテリID、劣化要素、バッテリSOH、適正順位の各要素を含む。このうち、バッテリID、劣化要素、バッテリ使用状態収集データ162やリユースバッテリ使用状態データ474と同様の事項を示す。バッテリSOHの項目は、良・不良の判定基準をバッテリ使用状態収集データ162やリユースバッテリ使用状態データ474よりも低くし、バッテリ使用状態収集データ162やリユースバッテリ使用状態データ474では「不良」と判定されるSOHでも、選定結果データ480では「良」と判定される場合がある。実施形態では、バッテリSOHは「良」「不良」の2段階をもって判定されるが、3段階以上の段階をもって判定されてもよい。劣化要素についても「小」「大」の2段階ではなく、3段階以上で判定されてもよい。
【0078】
適正順位の項目は、選定装置400が管理するリユースバッテリ部材200における当該用途として再利用する場合の適性を示す順位である。図9に示す例では、「ロボット」の再利用製品50に適するリユースバッテリ部材200としては、バッテリIDが「B300-2001」であるリユースバッテリ部材200が第1位に挙げられる。以下、バッテリIDが「B400-1001」「B500-1001」、・・・であるリユースバッテリ部材200が、第2位、第3位、・・・に挙げられる。
【0079】
適正順位は、例えば、バッテリSOHが高いほど高く、劣化要素との関係で適正が異なる場合がある。例えば、ロボットには、低圧バッテリが設けられていないため、コンバータに劣化が生じていてもロボットとしての適性が低くなることはない。実施形態では、用途ごとにリユースバッテリ部材200に対して適正順位を付けるが、用途ごとではなく、他の要素ごとに分けて適正順位を決定してもよい。例えば、リユースバッテリ部材200ごとに、用途に対して順位を付けてもよく、例えば、「B300-2001」のリユースバッテリ部材200は、用途の適正順位として、1位がロボット、2位がフォークリフト、3位がカート・・・などとしてもよい。
【0080】
選定部460は、選定したリユースバッテリ部材200についての選定結果データ480を、バッテリ選定要請を行った再利用製品製造業者に対して提供する。選定結果データ480の提供は、例えば、選定装置400に設けられたモニタやスピーカから画像や音声を出力して行ってもよい。あるいは、選定部460は、再利用製品製造業者が有する情報端末に選定結果データ480を送信し、再利用製品製造業者が有する情報端末におけるモニタやスピーカから画像や音声を出力して選定結果データ480を提供してもよい。
【0081】
選定部460は、バッテリ選定モデル478を用いることなく、バッテリ選定モデル478の入力層に入力された各データに基づくルールベースによって、リユースバッテリ部材200の選定を行ってもよい。選定部460は、再利用製品製造業者に選定結果データ480を提供する際に、リユースバッテリ部材200に設定された価格の情報を付加してもよい。
【0082】
次に、選定装置400における処理について説明する。図10~13は、選定装置400において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、まず、寿命予測モデル476を更新する処理及びリユースバッテリ部材200の寿命予測を行う処理について、図10及び図11を参照して説明する。
【0083】
まず、寿命予測モデル476を更新する処理について説明する。図10に示すように、取得部420は、バッテリ使用状態収集データ162を取得したか否かを判定する(ステップS110)。バッテリ使用状態収集データ162を取得したと判定した場合、取得部420は、記憶部470からバッテリ使用状態データ472を読み出し、取得したバッテリ使用状態収集データ162をバッテリ使用状態データ472に追加して、バッテリ使用状態データ472を更新する(ステップS120)。バッテリ使用状態収集データ162を取得していないと判定した場合、選定装置400は、ステップS130に進む。
【0084】
続いて、取得部420は、リユースバッテリ使用状態収集データ262を取得したか否かを判定する(ステップS130)。リユースバッテリ使用状態収集データ262を取得したと判定した場合、取得部420は、記憶部470からリユースバッテリ使用状態データ474を読み出し、取得したリユースバッテリ使用状態収集データ262をリユースバッテリ使用状態データ474に追加して、リユースバッテリ使用状態データ474を更新する(ステップS140)。リユースバッテリ使用状態収集データ262を取得していないと判定した場合、選定装置400は、ステップS150に進む。
【0085】
続いて、生成部430は、バッテリ使用状態収集データ162またはリユースバッテリ使用状態収集データ262の更新があったか否かを判定する(ステップS150)。データの更新があったと判定した場合、生成部430は、寿命予測モデル476を記憶部470から読み出し、更新があったデータ等に基づいて、寿命予測モデル476を更新する(ステップS160)。
【0086】
図14は、寿命予測モデル476の生成工程の概念図である。生成部430は、図14に示すように、入力層と隠れ層と出力層とを有する寿命予測モデル476を生成する。入力層には、バッテリ部材100の使用状態と、バッテリ部材100の交換の有無と、バッテリ部材100の利用期間と、リユースバッテリ部材200の用途と、リユースバッテリ部材200の使用状態と、リユースバッテリ部材200の寿命とが入力される。なお、バッテリ部材100の利用期間は、バッテリ部材100の使用開始年月日から故障発生年月日または故障は発生しないが、交換のためにバッテリ部材100を車両から取り外した年月日までの期間である。リユースバッテリ部材200の寿命は、リユースバッテリ部材200のリユース年月日から故障発生年月日までの期間である。
【0087】
出力層からは、リユースバッテリ部材200の寿命が出力される。隠れ層は、入力層と出力層をつなぐ多層のニューラルネットワークを有する。隠れ層のパラメータは、入力層への入力を入力データと、出力層から出力される出力データを用いて機械学習を行うことで最適化される。生成部430は、こうして寿命予測モデル476を更新(生成)する。
【0088】
図10に示すフローに戻り、生成部430は、更新した寿命予測モデル476を記憶部470に格納する(ステップS170)。こうして、選定装置400は、寿命予測モデル476を更新した後、図10に示す処理を終了する。さらに、ステップS150において、データの更新がなかったと判定した場合、選定装置400は、そのまま図10に示す処理を終了する。
【0089】
続いて、リユースバッテリ部材200の寿命予測を行う処理について図11を参照して説明する。予測部440は、寿命予測を実行する時期であるか否かを判定する(ステップS210)。予測部440は、バッテリ部材100が車両10より取り外された情報を取得したり、再利用製品製造業者等により発信されたから寿命予測要請を通信部410が受信したりした場合に、寿命予測を実行する時期であると判定する。
【0090】
寿命予測を実行する時期でないと判定した場合、選定装置400は、そのまま図11に示す処理を終了する。寿命予測を実行する時期であると判定した場合、予測部440は、記憶部470から寿命予測モデル476を読み出す(ステップS220)。続いて、予測対象となるリユースバッテリ部材200となるバッテリ部材100の使用状態と、寿命予測モデル476を用いて、リユースバッテリ部材200の寿命を予測する(ステップS230)。このとき、リユースバッテリ部材の用途の情報を更に用いてもよい。こうして、選定装置400は、図11に示す処理を終了する。
【0091】
続いて、選定装置400における処理のうち、バッテリ選定モデル478を更新する処理及びリユースバッテリ部材200を選定する処理について、図12及び図13を参照して説明する。選定モデル生成部450は、図12に示すように、予測部440がバッテリ寿命の予測を行ったか否かを判定する(ステップS310)。予測部440がバッテリ寿命の予測を行っていないと判定した場合、選定モデル生成部450は、再利用製品50により送信されたリユースバッテリ使用状態収集データ262を、通信部410を用いて取得した取得部420が、リユースバッテリ使用状態データ474を更新したか否かを判定する(ステップS320)。
【0092】
ステップS310において、予測部440がバッテリ寿命の予測を行ったと判定した場合、またはステップS320において、取得部420がリユースバッテリ使用状態データ474を更新したと判定した場合、選定モデル生成部450は、バッテリ選定モデル478を記憶部470から読み出し、バッテリ選定モデル478を更新する(ステップS330)。
【0093】
図15は、バッテリ選定モデル478の生成工程の概念図である。選定モデル生成部450は、図15に示すように、入力層と隠れ層と出力層とを有するバッテリ選定モデル478を生成する。入力層には、リユースバッテリ部材200の劣化要素と、リユースバッテリ部材200のSOHと、リユースバッテリ部材200の用途と、予測されたリユースバッテリ部材200の寿命とが入力される。
【0094】
出力層からは、リユースバッテリ部材200の用途ごとの適正順位が出力される。隠れ層は、入力層と出力層をつなぐ多層のニューラルネットワークを有する。隠れ層のパラメータは、入力層への入力を入力データと、出力層から出力される出力データを用いて機械学習を行うことで最適化される。選定モデル生成部450は、こうしてバッテリ選定モデル478を更新(生成)する。バッテリ選定モデル478を生成するにあたり、リユースバッテリ200使用状態、故障年月日(故障履歴)、バッテリの性能情報等を引き続き取得し、モデルを更新することで、再利用部品の選定精度を向上させることができる。
【0095】
図12に示すフローに戻り、選定モデル生成部450は、更新したバッテリ選定モデル478を記憶部470に格納する(ステップS340)。こうして、選定装置400は、バッテリ選定モデル478を更新した後、図12に示す処理を終了する。ステップS310において予測部440がバッテリ寿命を予測していないと判定した場合、または取得部420がリユースバッテリ使用状態データ474を更新していないと判定した場合、選定装置400は、そのまま図12に示す処理を終了する。
【0096】
続いて、リユースバッテリ部材200を選定する処理について図13を参照して説明する。選定部460は、再利用製品製造業者によりバッテリ選定要請があったか否かを判定する(ステップS410)。バッテリ選定要請がなかったと選定部460が判定した場合、選定装置400は、ステップS410の処理を繰り返す。
【0097】
バッテリ選定要請があったと判定した場合、選定部460は、記憶部470からバッテリ選定モデル478を読み出す(ステップS420)。続いて、選定部460は、記憶部470から読み出したバッテリ選定モデル478と、バッテリ選定要請に含まれるリユースバッテリ部材200の用途と、複数のバッテリ部材100の劣化要素及び予測された寿命とに基づいて、リユースバッテリ部材200を選定し、選定結果データ480を生成する(ステップS430)。続いて、選定部460は、生成した選定結果データ480を再利用製品製造業者に提供する(ステップS440)。こうして、選定装置400は、図13に示す処理を終了する。
【0098】
以上説明した実施形態によれば、リユースバッテリ部材200の用途、使用状態、寿命といったリユースバッテリ部材200の情報に基づいて、バッテリ部材100が再利用されるリユースバッテリ部材200の寿命を予測する。このため、例えば最利用製品にリユースバッテリを搭載して新たに耐久試験などを行うことなくリユースバッテリ部材200の予測寿命の情報を提供できるので、再利用するバッテリ部材の選定基準を提供することができる。
【0099】
また、上記の実施形態によれば、バッテリ部材100の使用状態に基づいてリユースバッテリ部材200の寿命を予測し、予測したリユースバッテリ部材200の寿命等に基づいて、リユースバッテリ部材200を選定する。このため、リユースバッテリ部材200を再利用して再利用製品を製造する再利用製品製造業者に対して、リユースバッテリ部材200を選定させやすくすることができる。
【0100】
また、選定装置400は、リユースバッテリ部材200を選定するにあたり、複数のリユースバッテリ部材200について、リユースバッテリ部材200の用途に応じた適正順位を付している。このため、選定装置400は、再利用製品製造業者等に対して、再利用するリユースバッテリ部材200をさらに選定させやすくすることができる。さらに、選定装置400は、リユースバッテリ部材200の価格の情報を付加して提供することにより、再利用製品製造業者は、予算と性能との兼ね合いをもってリユースバッテリ部材200を選定することができる。
【0101】
なお、上記の実施形態では、再利用部品は、バッテリ部材100(バッテリ120及び付属部品140)以外の部品でもよい。例えば、車両の部品、例えばドアパネルなどの車体パネルやタイヤ、フレーム、モータ、発電機や照明装置などの補機類でもよい。車両の部品以外でもよい。鉄道、航空機、ロボット、船舶等の移動体(駆動体)の部品でもよいし、冷蔵庫、テレビ、エアーコンディショナなどの家電など、設置して用いられる機器の部品でもよい。
【0102】
また、上記の実施形態において、車両10から取り外れたバッテリ部材100について、バッテリ部材100が再利用されたリユースバッテリ部材200の寿命を予測するが、車両10に搭載されているバッテリ部材100について、バッテリ部材100が再利用されたリユースバッテリ部材200の寿命を予測してもよい。この場合、車両10から取り外された際のバッテリ部材100の使用状態は未定であるので、例えば、車両10に搭載中のバッテリ部材100の使用状態に基づいて、所定の取り外し時期におけるバッテリ部材100の使用状態を推定し、推定したバッテリ部材100の使用状態からリユースバッテリ部材200の寿命を予測してもよい。この場合には、バッテリ部材100の取り外し時期を複数想定して、それぞれの時期におけるリユースバッテリ部材200の寿命を予測してもよい。
【0103】
また、上記の実施形態では、リユースバッテリ部材200の使用状態について、再利用製品50に搭載された再利用製品記憶装置260に記憶しておき、リユースバッテリ使用状態収集データ262としてまとまったときに選定装置400に送信するが、リユースバッテリ部材200の使用状態の個々のデータを選定装置400や他のサーバ等に送信し、送信先においてリユースバッテリ使用状態収集データ262を生成するようにしてもよい。同様に、バッテリ使用状態収集データ162についても、車両10で収集する代わりに、選定装置400や他のサーバ等で生成するようにしてもよい。また、選定装置400における生成部430や予測部440の各機能は、再利用製品50や車両10が備えていてもよい。
【0104】
また、上記の実施形態では、バッテリ部材100の全体についてのリユースバッテリ部材200の寿命を予測するが、バッテリ部材100におけるバッテリ120のみ、または付属部品140毎のリユース品の寿命を予測するようにしてもよい。この場合、例えばリユース品ごとに寿命予測モデルを生成してリユース品の寿命を予測してもよい。また、リユース品個々の寿命を予測してもよいし、複数のリユース品のいくつかをまとめて寿命を予測してもよい。
【0105】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0106】
1…バッテリ選定システム
10…車両
50…再利用製品
100…バッテリ部材
120…バッテリ
140…付属部品
141…冷却ファン
142…電流センサ
143…電圧センサ
144…温度センサ
146…コンタクタ
147…コンバータ
148…ヒューズ
150…IPU
160…車両記憶装置
162…バッテリ使用状態収集データ
180…通信装置
200…リユースバッテリ部材
220…リユースバッテリ
240…リユース付属部品
260…再利用製品記憶装置
262…リユースバッテリ使用状態収集データ
300…廃棄バッテリ部材
400…選定装置
410…通信部
420…取得部
430…生成部
440…予測部
450…選定モデル生成部
460…選定部
470…記憶部
472…バッテリ使用状態データ
474…リユースバッテリ使用状態データ
476…寿命予測モデル
478…バッテリ選定モデル
480…選定結果データ
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
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図15