(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法およびロックウール吹付け工法
(51)【国際特許分類】
C04B 14/46 20060101AFI20221118BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20221118BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20221118BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C04B14/46
E04B1/76 400G
E04B1/82 G
E04B1/94 E
(21)【出願番号】P 2019067661
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】常藤 光
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178656(JP,A)
【文献】特開2016-121435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B14/38-14/48
E04B1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口があるタンクと、前記開口を塞ぐ蓋と、ファンと、当該ファンを駆動するモーターと、フィルターと、ホース接続口とを具備し、タンク側面又は蓋にホース接続口が備わり、前記蓋のタンク内側の面に前記フィルターが配置されており、前記モーターを駆動するとファンが回転し、それにより、タンク内の空気が前記フィルターを通り外部に排気され、タンク内が負圧となり、タンク内と連通するホース接続口に接続されるホースのホース先端より外気をタンク内に吸込む構造である集塵機を用い、前記ホース接続口にホースを接続し、前記モーターを駆動させ、ホース先端より外気とともにロックウールを吸引し、タンク内で回収されたロックウールの質量(RW
T)と前記フィルターに付着したロックウールの質量(RW
F)とを測定し、下記式(1)~式(4)の何れかにより、全ロックウール中のタンク内で回収されたロックウールの割合(RW
T/RW
ALL比)、フィルターに付着したロックウールに対するタンク内で回収されたロックウールの割合(RW
T/RW
F比)、全ロックウール中のフィルターに付着したロックウールの割合(RW
F/RW
ALL比)、又はタンク内で回収されたロックウールに対するフィルターに付着したロックウールの割合(RW
F/RW
T比)を求め、吸引前のロックウールを評価することを特徴とするロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法。
RW
T/RW
ALL比=RW
T/(RW
T+RW
F) ・・・・・・ (1)
RW
T/RW
F比=RW
T/RW
F ・・・・・・ (2)
RW
F/RW
ALL比=RW
F/(RW
T+RW
F) ・・・・・・ (3)
RW
F/RW
T比=RW
F/RW
T ・・・・・・ (4)
【請求項2】
請求項1記載のロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法で求めたRW
T/RW
ALL比又はRW
T/RW
F比が所定割合以上であるロックウール、或いはRW
F/RW
ALL比又はRW
F/RW
T比が所定割合以下であるロックウールを選択し、半乾式工法のロックウール吹付け工法で結合材とともに吹付け装置で吹付け、ロックウール組成物を形成することを特徴とするロックウール吹付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロックウール吹付技術に関する。特に、発生する粉塵が少ないロックウール吹付技術に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性、防火性、吸音性及び/又は断熱性などを付与する目的で、構造体表面にロックウール層を設けることが提案されている。ロックウール組成物層の形成には、一般的には、ロックウール及びセメント等の結合材を用いたロックウール吹付け工法が用いられる。
【0003】
ロックウール吹付け工法としては、乾式工法、湿式工法、半乾式工法が知られている。乾式工法および半乾式工法は、湿式工法に比べて、ロックウール吹付け工法により形成される被覆層(ロックウール組成物層)の嵩密度を小さくできるという利点が知られている。乾式工法は、圧送管内を空気圧送したロックウールとセメントとの混合物(混綿)を吹付ガン(吹付ノズル)の混綿用管路の先端部の混綿噴射口より噴射し、この吹付ガンの混綿噴射口中心付近、即ち、混綿用管路の中心軸に配置した水用管路の先端部の水噴射口より水を噴射することで、ロックウール、セメント及び水とを合流混合させて、それによる合流混合物(ロックウール組成物)を構造物表面に被覆層として形成する。また、半乾式工法は、乾式工法の混綿の代わりにロックウールのみを、又水の代わりに水とセメントとの混合物であるセメントスラリーを、それぞれ用いるロックウール吹付け工法である(例えば特許文献1参照)。
【0004】
半乾式工法によるロックウール吹付け工法は、乾式工法に比べて発生する粉塵が少なくなるものの、充分に粉塵の発生を抑制できているとは云えない。とりわけ、冬場に多く発生する傾向がある。本願発明者等の研究により、半乾式工法によるロックウール吹付け工法で発生している粉塵は、多くがロックウールのうち比較的細い綿毛のような繊維(以下「綿毛状繊維」という。)であることが分かってきた。
【0005】
そこで、半乾式工法によるロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウールを選定するための評価方法、及びロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウール吹付け工法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題の解決、即ち、半乾式工法によるロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウールを選定するためのロックウール評価方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウール吹付け工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、ホースを接続した特定の集塵機を用いてホース先端よりロックウールを集塵機に吸い込ませ、集塵機のタンクとフィルターでそれぞれ回収されたロックウールの質量比率を求めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)で表すロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法、及び(2)で表すロックウール吹付け工法である。
(1)上部に開口があるタンクと、前記開口を塞ぐ蓋と、ファンと、当該ファンを駆動するモーターと、フィルターと、ホース接続口とを具備し、タンク側面又は蓋にホース接続口が備わり、前記蓋のタンク内側の面に前記フィルターが配置されており、前記モーターを駆動するとファンが回転し、それにより、タンク内の空気が前記フィルターを通り外部に排気され、タンク内が負圧となり、タンク内と連通するホース接続口に接続されるホース先端より外気をタンク内に吸込む構造である集塵機を用い、前記ホース接続口にホースを接続し、前記モーターを駆動させ、ホース先端より外気とともにロックウールを吸引し、タンク内で回収されたロックウールの質量(RWT)と前記フィルターに付着したロックウールの質量(RWF)とを測定し、下記式(1)~式(4)の何れかにより、全ロックウール中のタンク内で回収されたロックウールの割合(RWT/RWALL比)、フィルターに付着したロックウールに対するタンク内で回収されたロックウールの割合(RWT/RWF比)、全ロックウール中のフィルターに付着したロックウールの割合(RWF/RWALL比)、又はタンク内で回収されたロックウールに対するフィルターに付着したロックウールの割合(RWF/RWT比)を求め、吸引前のロックウールを評価することを特徴とするロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法。
RWT/RWALL比=RWT/(RWT+RWF) ・・・・・・ (1)
RWT/RWF比=RWT/RWF ・・・・・・ (2)
RWF/RWALL比=RWF/(RWT+RWF) ・・・・・・ (3)
RWF/RWT比=RWF/RWT ・・・・・・ (4)
(2)上記(1)のロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法で求めたRWT/RWALL比又はRWT/RWF比が所定割合以上であるロックウール、或いはRWF/RWALL比又はRWF/RWT比が所定割合以下であるロックウールを選択し、半乾式工法のロックウール吹付け工法で結合材とともに吹付け装置で吹付け、ロックウール組成物を形成することを特徴とするロックウール吹付け工法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半乾式工法によるロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウールを選定するためのロックウール評価方法が得られる。また、本発明によれば、ロックウール吹付け時に発生する粉塵が少ないロックウール吹付け工法が得られる。本発明によれば、ロックウール吹付け時に発生する粉塵量を抑制できるので、吹付け作業における作業環境の改善が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明で使用する集塵機および集塵機を用いホース先端より外気とともにロックウールを吸引している状況の概念的な縦断面図である
【
図2】
図2は、実施例で求めた綿毛率(R)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法は、上部に開口があるタンクと、前記開口を塞ぐ蓋と、ファンと、当該ファンを駆動するモーターと、フィルターと、ホース接続口とを具備し、タンク側面又は蓋にホース接続口が備わり、前記蓋のタンク内側の面に前記フィルターが配置されており、前記モーターを駆動するとファンが回転し、それにより、タンク内の空気が前記フィルターを通り外部に排気され、タンク内が負圧となり、タンク内と連通するホース接続口に接続されるホースのホース先端より外気をタンク内に吸込む構造である集塵機を用い、前記ホース接続口にホースを接続し、前記モーターを駆動させ、ホース先端より外気とともにロックウールを吸引し、タンク内で回収されたロックウールの質量(RWT)と前記フィルターに付着したロックウールの質量(RWF)とを測定し、下記式(1)~式(4)の何れかにより、全ロックウール中のタンク内で回収されたロックウールの割合(RWT/RWALL比)、フィルターに付着したロックウールに対するタンク内で回収されたロックウールの割合(RWT/RWF比)、全ロックウール中のフィルターに付着したロックウールの割合(RWF/RWALL比)、又はタンク内で回収されたロックウールに対するフィルターに付着したロックウールの割合(RWF/RWT比)を求め、吸引前のロックウールを評価することを特徴とする。
RWT/RWALL比=RWT/(RWT+RWF) ・・・・・・ (1)
RWT/RWF比=RWT/RWF ・・・・・・ (2)
RWF/RWALL比=RWF/(RWT+RWF) ・・・・・・ (3)
RWF/RWT比=RWF/RWT ・・・・・・ (4)
【0012】
本発明において、上記式(1)~式(4)で求まる値の少なくとも一つの値を求め、当該値により吸引する前のロックウールを評価する。上記式(1)又は式(2)で求まるRWT/RWALL比又はRWT/RWF比が所定割合以上であるロックウール、或いは上記式(3)又は(4)で求まるRWF/RWALL比又はRWF/RWT比が所定割合以下であるロックウールは、綿毛状繊維が少ない。そのようなロックウール、つまり、RWT/RWALL比又はRWT/RWF比が所定割合以上であるロックウール、或いはRWF/RWALL比又はRWF/RWT比が所定割合以下であるロックウールであるかを確認し、当該ロックウールを評価する。RWT/RWALL比、RWT/RWF比、RWF/RWALL比及びRWF/RWT比の所定割合は、半乾式工法で吹付けたときに発生した粉塵が少ないロックウールについて求めたものを使用してもよい。綿毛状繊維は、気流で浮遊し、フィルターで回収される。また、綿毛状繊維ではないロックウールは、タンクで回収される。
【0013】
上記式(1)及び式(3)におけるRWT+RWFの値に替えて、ホースに吸込んだロックウールの質量(RW0)を用いて、RWT/RWALL比又はRWF/RWALL比を求めてもよい。
【0014】
本発明において、ロックウールは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。前記ロックウールは、繊維化された鉱物繊維を集めただけの原綿を解綿機等で細かくした粒状ロックウールを好適に用いることができる。原綿を用いる場合は、輸送前に解綿機等で細かくして用いる。粒状ロックウールは、ロックウールの原綿を解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)、造粒などの工程の一種又は二種以上の組み合わせにより得られる。この粒状ロックウールは、ロックウールの繊維が凝集しているもので、ロックウールの粒状綿、細粒綿、微粒綿を含むものである。粒状綿としては、日本ロックウール社製「エスファイバー粒状綿」(商品名)、JFEロックファイバー社製「ロクセラム粒状綿」(商品名)、太平洋マテリアル社製「太平洋ミネラルファイバー粒状綿」(商品名)等の市販のロックウールの粒状綿、細粒綿、微粒綿を好適に用いることが出来る。斯かる粒状ロックウールが用いられた場合、熱がロックウールを被覆する下地に伝わり難く、断熱性、耐火性又は不燃性が得られ、また、吸音性も得られる。
【0015】
本発明に用いる集塵機は、上部に開口があるタンクと、前記開口を塞ぐ蓋と、ファンと、当該ファンを駆動するモーターと、フィルターと、ホース接続口とを具備し、タンク側面又は蓋にホース接続口が備わり、前記蓋のタンク内側の面に前記フィルターが配置されており、前記モーターを駆動するとファンが回転し、それにより、タンク内の空気が前記フィルターを通り外部に排気され、タンク内が負圧となり(圧力が下がり)、タンク内と連通するホース接続口に接続されるホース先端(ホース接続口と反対側の端部)より外気をタンク内に吸込む構造である。蓋にファン及び当該ファンを駆動するモーターが備わっていてもよい。この集塵機には、(電気)掃除機も含まれる。このような集塵機としては、市販のものでもよく、例えば、パナソニック社製業務・店舗用掃除機「MC-G3000P-S」(商品型番),同「MC-G5000P-K」(商品型番)、アクアシステム社製電動式クリーナー「アクア EVC550」(商品名・商品型番)、リョービ社(京セラインダストリアルツールズ社)製集塵機「RYOBI VC-125RS」(商品名・商品型番),同「RYOBI VC-1150」(商品名・商品型番),同「RYOBI VC-1200」(商品名・商品型番)、日立アプライアンス社製業務用掃除機「CV-G95K」(商品型番),同「CV-G2100」(商品型番),同「CV-110D」(商品型番)、東浜工業社製業務用クリーナー「ハイパワークリーナー AS-27R」(商品名・商品型番),同「強力ペールバキュームTPV-1」(商品名・商品型番)、日動工業社製「バキュームクリーナー NVC-30L-S」(商品名・商品型番)、アイリスオーヤマ社製ウエット&ドライコンパクトクリーナー「KIC-VWD1-H」(商品型番)、MonotaRO社製乾湿両用電気掃除機「モノクリーナー No.67-20」(商品名・商品型番),同「モノクリーナー ブロア機能付タイプ No.95-30」及びこれらに類似の集塵機又は(電気)掃除機が好ましい例として例示できる。
【0016】
図1に本発明で使用する集塵機および集塵機を用いホース先端より外気とともにロックウールを吸引している状況の概念的な縦断面図を示した。当該集塵機1は、上部に開口があり側面にホース接続口8を備えるタンク2と、内部にモーター4と該モーターの回転軸に繋がるファン5を備えタンク内側の面7にフィルター6が配置されている蓋3を具備する。該蓋3は空洞がある。また、蓋のタンク内側の面7には、通気口16が空いており、当該通気口16を塞ぐようにフィルター6が設置されている。また、ホース接続口8には、継手13を介してホース12が接続されている。モーター4を駆動させると、ファン5が回転し、通気口16から空気を取り込み、蓋3の空洞内の空気圧が高まり、排気口15より空気を排出する。また、このことにより、フィルター6の内部の空気圧およびタンク2の内部の空気圧が負圧となり(下がり)、タンク2の内部は、ホース接続口8、ホース12及び外気とつながっていることから、前記モーター4を駆動させると、ファン5が回転し、ホース12のホース先端14より外気を吸込み(吸引し)、その空気が、ホース12、継手13、ホース接続口8、タンク2、フィルター6のそれぞれの内部を通り、通気口16より蓋3の空洞内に入り、蓋3の側面に設けられている排気口15より排出される。このとき、ホース先端14よりロックウール11を吸込ませる(吸引させる)と、空気の流れ(気流)に乗って、タンク2まで運ばれる。ホース接続口8よりタンク2の内部に入ったロックウールのうち、綿毛状繊維のものは、繊維径が比較的細いので空気中に浮遊し易いためフィルターに付着し、フィルターに付着したロックウール10となる。一方、ホース接続口8よりタンク2の内部に入ったロックウールのうち、綿毛状繊維ではないものは、空気中に浮遊し難いため、自重で落下し、タンクの底に溜まり、タンク内で回収されるロックウール9となる。このため、本発明で使用する集塵機としては、タンクの底とフィルターが密着せずに隙間があることが好ましく、その隙間が1cm以上あることがより好ましい。
図1における矢印は、空気の流れの概略を表している。タンク2と蓋3は固定具で一体となっているが、固定具を緩めるとタンク2と蓋3が分離できる構造になっていることが、タンクの底に溜まったロックウール及びフィルターに付着したロックウールを回収し易いことから好ましい。固定具を緩め蓋3をタンク2から外す又は蓋3を開けると、タンク2の上部が空いており、その部分が開口(部)である。
【0017】
本発明で使用するホースは、ホースの一方の端部が用いる集塵機(掃除機)のホース接続口に接続できるものであれば、特に限定されない。ホースの一方の端部とホース接続口との接続方法は特に限定されない。例えば、。嵌合させる方法、ワンタッチ継手等の継手による方法等が好ましい方法として挙げられる。また、用いるホースの材質は特に限定されないが、ステンレス鋼や真鍮等の金属、ニトリルゴムやエチレンプロピレンゴム等の合成ゴム、ポリプロピレンやポリアミド等の合成樹脂等が好ましい例として挙げられるが、変形させ易いことから取り回しが行い易く且つ軽いことから、合成ゴム又は合成樹脂がより好ましい。また、好ましくは、ホース長が0.5~50mのホースである。より好ましくは、1~30mのホース長のホースである。ホース接続口とホースが一体となっていてもよい。
【0018】
ロックウールをホース先端から吸引する回数は、1回~10回が好ましい。複数回吸引するときは、直前の吸引によりタンク内で回収された、つまり、タンクに溜まったロックウールを静かに取り出し、再度ホース先端から吸引し、これを必要回数繰り返す。吸引する回数が多くなると、手間が掛かるとともに、最初に吸引したロックウールの質量(RW0)と、回収されるロックウールの質量の合計(RWT+RWF)との差が大きくなるので、ホース先端から吸引する回数は、より好ましくは1回~5回とする。
【0019】
本発明のロックウール吹付け工法は、上記のロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法で評価したロックウール、即ち、上記のロックウール吹付け工法用ロックウールの品質評価方法で求めたRWT/RWALL比又はRWT/RWF比が所定割合以上であるロックウール、或いはRWF/RWALL比又はRWF/RWT比が所定割合以下であるロックウールを選択し、半乾式工法のロックウール吹付け工法で結合材とともに吹付け装置で吹付け、ロックウール組成物を形成することを特徴とする。用いる結合材としては、液状の結合材であればよく、例えば、セメントペースト、ポリマーエマルション、ポリマーセメントペーストが好ましい例として挙げられる。ポリマーエマルション、ポリマーセメントペーストに含まれるポリマーとは、ポリマーセメントモルタルやポリマーセメントコンクリートに結合材として用いることのできるポリマーのことで、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体,クロロプレンゴム,アクリロニトリル・ブタジエン共重合体又はメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリクロロピレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル・アクリル共重合体,酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体,変性酢酸ビニル,エチレン・酢酸ビニル共重合体,エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体,酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体,アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t-デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト,ゴムアスファルト及びパラフィン等の瀝青質等が好ましい例として挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明のロックウール吹付け工法は、一般に半乾式工法のロックウール吹付け工法で使用される装置、機材及び方法を好適に用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
<綿毛率の測定>
圧縮成形された試料No.1のロックウール粒状綿を手で解して、単粒子の粒状綿(粒状綿A)にした後、室温10℃および湿度45%の環境下に一晩静置し、試料とした。
【0023】
消費電力1000Wの業務用掃除機(東浜工業社製業務用クリーナー「ハイパワークリーナー AS-27R」(商品名・商品型番)、ホース長10m、ホース径40mm、ホース先での風速15.5m/s、タンク容量38L)を用いて、試料のロックウール250gをホース先端より吸込み、全ての試料を吸込んだ後に、更に掃除機の運転を1分間継続した。掃除機を止めた後に掃除機の蓋を開け、フィルターに付着したロックウール(綿毛状繊維のロックウール)とタンク内に残ったロックウールを回収した。タンク内で回収したロックウールを更に同様に同じ掃除機で全量吸込み、その後1分間掃除機の運転を継続した。掃除機を止めた後に蓋を開け、上記同様に、フィルターに付着したロックウール(綿毛状繊維のロックウール)とタンク内に残ったロックウールを回収した。1回目にフィルターに付着したロックウールの質量(RWF1)、2回目にフィルターに付着したロックウールの質量(RWF2)及び2回目にタンク内で回収したロックウールの質量(RWT)を測定した。ロックウールの吸引に用いた業務用掃除機は、運転中(吸引中)及びその直後において、タンクの底とフィルターが密着せずに隙間が1cm以上ある。
【0024】
1回目にフィルターに付着したロックウールの質量(RW
F1)と2回目にフィルターに付着したロックウールの質量(RW
F2)の合計質量が、RW
Fである。また、下記式(5)により、綿毛率(R)を求めた。求めた綿毛率(R)を表1及び
図2に示した。この綿毛率(R)は、上記式(4)で求まるRW
F/RW
T比をパーセント表示したものである。
R=RW
F/RW
T×100(%) ・・・・・・ (5)
【0025】
【0026】
同様に、試料No.1のロックウール粒状綿とは別なロックウール粒状綿の試料2種類(試料No.2及び試料No.3)の綿毛率(R)を求め、表1及び
図2に合わせて示した。
【0027】
<作業環境性の評価>
上記のロックウール試料(試料No.1~試料No.3)を用いて、室温10℃の室内で、半乾式工法により直面にセメントペーストとともに1分間吹付け、発生する粉塵を目視で確認したところ、試料No.1及び試料No.2のロックウールを使用したときは粉塵の発生が少なかったが、それらに比べて試料No.3のロックウールを使用したときは粉塵の発生量が多かった。作業環境の評価として、粉塵の発生が少なかった試料No.1及び試料No.2のロックウールを「良好」(記号:○)、粉塵の発生が多かった試料No.3のロックウールを「不十分」(記号:△)と評価し、表1に示した。綿毛率(R)の小さい、つまり、RWF/RWT比が小さいロックウールを選定して用い、半乾式工法によるロックウール吹付け工法・吹付け装置で吹付け、ロックウール組成物を形成すると、吹付け施工時に発生する粉塵が少ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えば、構造物の部材に、耐火性、防火性、吸音性、及び/又は断熱性等を付与する目的で採用されるロックウール及びセメントペーストを用いたロックウール吹付け工法によりロックウール組成物を形成する工事において好適に使用することができる。又、セメントペーストに替えて、ポリマーエマルション又はポリマーセメントペーストを使用し、ロックウール吹付け工法によりロックウール組成物を形成する工事において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 集塵機
2 タンク
3 蓋
4 モーター
5 ファン
6 フィルター
7 蓋のタンク内側の面
8 ホース接続口
9 タンク内で回収されるロックウール
10 フィルターに付着したロックウール
11 (吸込む前の)ロックウール
12 ホース
13 継手
14 ホースの先端
15 排気口
16 通気口