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  • -光学ガラス、光学素子及びプリフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子及びプリフォーム
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/247 20060101AFI20221118BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C03C3/247
G02B1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019083885
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2019214506
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2018111747
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】向川 勝之
(72)【発明者】
【氏名】二野宮 晟大
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126603(JP,A)
【文献】特開2012-126608(JP,A)
【文献】特開2009-286670(JP,A)
【文献】特表2016-538211(JP,A)
【文献】特開2012-012282(JP,A)
【文献】特開2013-151410(JP,A)
【文献】特開2010-235429(JP,A)
【文献】特開2016-172668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン%(モル%)表示で、
5+を17.0~50.0%、
Al3+を3.0%以上10.0%未満
2+を33.0~60.0%
含有し、
カチオン%(モル%)表示で、Nb5+、Ti4+、及びW6+含有率の合計量(Nb5++Ti4++W6+)が0%~15.0%であり、
Ln3+の合計含有量が8.0~40.0%であり、
アニオン成分としてO2-及びF-を含み、
アニオン%(モル%)表示で、
2- を30.0~75.0%、
- を25.0~65.0%
含有し、
屈折率(nd)が1.50~1.67、アッベ数(νd)が45~67であり、
異常分散性(Δθg,F)が0.002以上である光学ガラス(Ln3+は、Y3+、La3+、Gd3+、Yb3+およびLu3+からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+からなる群から選ばれる少なくとも1つとする。)。
【請求項2】
カチオン%(モル%)表示で、
Mg2+を0~25.0%、
Ca2+を0~20.0%、
Ba2+を10.0%~55.0%
Sr2+を0~20.0%未満、
Zn2+を0~25.0%、
である請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項4】
請求項1又は2記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
【請求項5】
請求項に記載のプリフォームを研磨してなる光学素子。
【請求項6】
請求項に記載のプリフォームを精密プレスしてなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子及びプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器のレンズ系は、通常、異なる光学的性質を持つ複数のガラスレンズを組み合わせて設計される。近年、光学機器のレンズ系に求められる特性は多様化しており、その設計の自由度をさらに広げるため、従来は着目されていなかった光学特性を備える光学ガラスが開発されている。中でも異常分散性(Δθg,F)が特徴的な光学ガラスは、収差の色補正に顕著な効果を奏するものとして着目されている。
【0003】
例えば特許文献1~3では、従来必要とされていた高屈折率および低分散性ならびに加工性に優れるという性質に加え、異常分散性が高い光学ガラスとして、例えばカチオン成としてP5+、Al3+、アルカリ土類金属イオン等を含み、アニオン成分としてFおよびO2-を含む光学ガラスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-55883号公報
【文献】特開2011-116649号公報
【文献】特開2011-126782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の光学ガラスは、屈折率が低いか、もしくはアッベ数が高い。そのため、屈折率が1.50以上であり、アッベ数が45~68である高屈折率低分散領域の光学ガラスの開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、フツリン酸系光学ガラスのうち、高屈折率及び異常分散性(Δθg,F)の特徴を維持しながら、アッベ数が45~68という高い分散性を有している光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) カチオン%(モル%)表示で、
5+を17.0~50.0%、
Al3+を3.0~20.0%、
2+を33.0~60.0%、
を含有し、
カチオン%(モル%)表示で、Nb5+、Ti4+、及びW6+含有率の合計量(Nb5++Ti4++W6+)が0%~15.0%であり、
Ln3+の合計含有量が2.0~40.0%であり、
アニオン成分としてO2-及びFを含み、
屈折率(nd)が1.50~1.67、アッベ数(νd)が45~68であり、
異常分散性(Δθg,F)が0.002以上である光学ガラス(Ln3+は、Y3+、La3+、Gd3+、Yb3+およびLu3+からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+からなる群から選ばれる少なくとも1つとする。)。
【0009】
(2) カチオン%(モル%)表示で、
Mg2+を0~25.0%、
Ca2+を0~20.0%、
Ba2+を10.0%~55.0%
Sr2+を0~20.0%未満、
Zn2+を0~25.0%、
である(1)記載の光学ガラス。
【0010】
(3) アニオン%(モル%)表示で、
2-を30.0~75.0%
を25.0~65.0%
含有する(1)又は(2)記載の光学ガラス。
【0011】
(4) (1)から(3)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0012】
(5) (1)から(3)のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
【0013】
(6) (5)に記載のプリフォームを研磨してなる光学素子。
【0014】
(7) (5)に記載のプリフォームを精密プレスしてなる光学素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の高い屈折率及びアッベ数を有し、かつ異常分散性(Δθg,F)が0.002以上である光学ガラスと、これを用いた光学素子及びプリフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】部分分散比(θg,F)が縦軸でアッベ数(νd)が横軸の直交座標に表されるノーマルラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光学ガラスは、カチオン成分としてP5+、Al3+、R2+を必須成分として含有し、Nb5+、Ti4+、及びW6+含有率の合計量(Nb5++Ti4++W6+)が0%~15.0%、Ln3+の合計含有量が2.0~40.0%であり、アニオン成分としてO2-及びFを含有することにより、屈折率(nd)が1.50~1.67、アッベ数(νd)が45~68であり、異常分散性(Δθg,F)が0.002以上である光学ガラスを得ることができる。
【0018】
以下、本発明の光学ガラスについて説明する。本発明は、以下の態様に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所について説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0019】
<ガラス成分>
本発明の光学ガラスを構成する各成分について説明する。
本明細書中において、各成分の含有量は特に断りがない場合は、全てモル比に基づくカチオン%又はアニオン%で表示されるものとする。ここで、「カチオン%」及び「アニオン%」(以下、「カチオン%(モル%)」及び「アニオン%(モル%)」と表記することがある。)は、本発明の光学ガラスのガラス構成成分をカチオン成分及びアニオン成分に分離し、それぞれにおいて合計割合を100モル%として、ガラス中に含有される各成分の含有量を表記した組成である。
なお、各成分のイオン価は便宜的に代表値を用いているに過ぎないため、他のイオン価のものと区別するものではない。光学ガラス中に存在する各成分のイオン価は、代表値以外である可能性がある。例えば、Pは、通常イオン価が5価の状態でガラス中に存在するので、本明細書中では「P5+」と表しているが、他のイオン価の状態で存在する可能性がある。このように、厳密には他のイオン価の状態で存在するものであっても、本明細書では、各成分が代表値のイオン価でガラス中に存在するものとして扱う。
【0020】
[カチオン成分について]
5+はガラス形成成分であり、特に、17.0%以上含有することで、ガラスの耐失透性を高められる必須成分である。そのため、P5+の含有量は、好ましくは17.0%以上、より好ましくは20.0%以上、より好ましくは21.0%以上、より好ましくは22.0%以上、より好ましくは23.0%以上、さらに好ましくは24.0%以上を下限とする。
一方で、P5+の含有量を50.0%以下にすることで、P5+による屈折率やアッベ数の低下を抑えられ、且つ化学的耐久性の低下を抑えられる。従って、P5+の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは45.0%以下、より好ましくは43.0%以下、より好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、さらに好ましくは36.0%未満を上限とする。
5+は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、Zn(PO、BPO、HPO等を用いることができる。
【0021】
Al3+は、3.0%以上含有することで、ガラスの微細構造の骨格形成に寄与することで耐失透性を高められ、磨耗度を低くする必須成分である。従って、Al3+の含有量は、好ましくは3.0%以上、より好ましくは4.0%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは5.5%以上を下限とする。
一方で、Al3+の含有量を20.0%以下にすることで、Al3+による屈折率やアッベ数の低下や、ガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、Al3+の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%以下、より好ましくは12.0%未満、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは9.0%未満を上限とする。
Al3+は、原料としてAl(PO、AlF、Al等を用いることができる。
【0022】
3+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率と耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、B3+の含有量を10.0%以下にすることで、化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B3+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。特に、ガラスの揮発により脈理が発生することを防止するという観点では、B3+を含有しない方が好ましい。
3+は、原料としてHBO、Na、BPO等を用いることができる。
【0023】
Si4+は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高め、屈折率を高め、磨耗度を低下できる任意成分である。
一方で、Si4+の含有量を3.0%以下にすることで、Si4+の過剰な含有による失透を低減できる。従って、Si4+の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。
Si4+は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF等を用いることができる。
【0024】
Liは、0%超含有する場合に、ガラス形成時の耐失透性を高く維持しつつ、ガラス
転移点を下げられる任意成分である。
一方で、Liの含有率を10.0%以下含有することで、安定なガラスが得られ、膨張係数の最大値を低くすることができる。また、屈折率の低下を抑えることができる。従って、Liの含有率は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Liは、原料としてLiCO、LiNO、LiF等を用いることができる。
【0025】
Naは、0%超含有する場合に、ガラス形成時の耐失透性を高く維持しつつ、ガラス転移点を下げられる任意成分である。
一方で、Naの含有率を10.0%以下含有することで、安定なガラスが得られ、膨張係数の最大値を低くすることができる。また、屈折率の低下を抑えることができる。従って、Naの含有率は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下とし、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Naは、原料としてNaCO、NaNO、NaF等を用いることができる。
【0026】
は、0%超含有する場合に、ガラス形成時の耐失透性を高く維持しつつ、ガラス転移点を下げられる任意成分である。
一方で、Kの含有率を10.0%以下含有することで、安定なガラスが得られ、膨張係数の最大値を低くすることができる。また、屈折率の低下を抑えることができる。従って、Kの含有率は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下とし、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
は、原料としてKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いることができる。
【0027】
アルカリ金属は、Li、Na及びKからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を意味する。また、Li、Na及びKからなる群から選ばれる少なくとも1種以上をRnと表す場合がある。また、Rnの合計含有量とは、これらの3つのイオンのうち1種以上の合計含有量(例えばLi+Na+K)を意味するものとする。
【0028】
Mg2+は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高め、摩耗度を低下させ加工性を高める任意成分である。従って、Mg2+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上とする。
一方で、Mg2+の含有量を30.0%以下にすることで、Mg2+の過剰な含有によるガラスの失透や屈折率の低下を抑えられる。従って、Mg2+の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは26.0%以下、より好ましくは24.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは16.0%以下とする。
Mg2+は、原料としてMgO、MgF等を用いることができる。
【0029】
Ca2+は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
従って、Ca2+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、より好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは3.0%以上を下限とする。
一方で、Ca2+の含有量を30.0%以下にすることで、Ca2+の過剰な含有によるガラスの失透や屈折率の低下を抑えられる。従って、Ca2+の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは26.0%以下、より好ましくは23.0%以下、より好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは14.0%未満、さらに好ましくは12.0%以下とする。
Ca2+は、原料としてCa(PO、CaCO、CaF等を用いることができる。
【0030】
Sr2+は、0%超含有する場合にガラスの耐失透性を高め、且つ屈折率の低下を抑制する任意成分である。従って、Sr2+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上とする。
一方で、Sr2+の含有量を20.0%未満にすることで、Sr2+の過剰な含有によるガラスの失透や屈折率の低下を抑えられる。従って、Sr2+の含有量は、好ましくは20.0%未満、より好ましくは18.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下とする。
Sr2+は、原料としてSr(NO、SrF等を用いることができる。
【0031】
Ba2+は、10.0%以上含有することで、ガラス転移点及び屈伏点を下げ、耐失透性を高め、アッベ数を高め、且つ屈折率を高める必須成分である。従って、Ba2+の含有量は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは15.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上、より好ましくは25.0%以上、さらに好ましくは30.0%以上とする。
一方で、Ba2+の含有量を55.0%以下にすることで、Ba2+の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、Ba2+の含有量は、好ましくは55.0%以下、より好ましくは53.0%以下、さらに好ましくは50.0%以下、さらに好ましくは48.0%以下とする。
Ba2+は、原料としてBa(PO、BaCO、Ba(NO、BaF等を用いることができる。
【0032】
Zn2+は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Zn2+の含有量を25.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、Zn2+の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは13.0%以下とする。
Zn2+は、原料としてZn(PO、ZnO、ZnF等を用いることができる。
【0033】
アルカリ土類金属は、Sr2+、Ba2+、Mg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上を意味する。また、Sr2+、Ba2+、Mg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上をR2+と表す場合がある。
また、R2+の合計含有量とは、これら5つのイオンのうち1種以上の合計含有量(例えばSr2++Ba2++Mg2++Ca2++Zn2+)を意味するものとする。
【0034】
3+は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高められる任意成分である。従って、Y3+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上とする。
一方で、Y3+の含有量を25.0%以下にすることで、Y3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コスト、比重を低減できる。また、これによりガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、Y3+の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下とする。
3+は、原料としてY、YF等を用いることができる。
【0035】
La3+は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高められる任意成分である。従って、La3+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%超、より好ましくは0.3%超、さらに好ましくは0.5%超とする。
一方で、La3+の含有量を15.0%以下にすることで、La3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コスト、比重を低減できる。また、これによりガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、La3+の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは3.5%以下とする。
La3+は、原料としてLa、LaF等を用いることができる。
【0036】
Gd3+は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高められる任意成分である。従って、Gd3+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上とする。
一方で、Gd3+の含有量を25.0%以下にすることで、Gd3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コスト、比重を低減できる。また、これによりガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、Gd3+の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%以下、さらに好ましくは15.0%以下とする。
Gd3+は、原料としてGd、GdF等を用いることができる。
【0037】
Yb3+は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高められる任意成分である。従って、Yb3+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.5%以上とする。
一方で、Yb3+の含有量を10.0%以下にすることで、Yb3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コスト、比重を低減できる。また、これによりガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、Yb3+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下とする。
Yb3+は、原料としてYb、YbF等を用いることができる。
【0038】
Lu3+は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高められる任意成分である。従って、Lu3+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%とする。
一方で、Lu3+の含有量を10.0%以下にすることで、Lu3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コスト、比重を低減できる。また、これによりガラス転移点や屈伏点の上昇を抑えられる。従って、Lu3+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下とする。
Lu3+は、原料としてLu、LuF等を用いることができる。
【0039】
Ln3+は、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+からなる群から選ばれる少なくとも1つを意味する。また、Ln3+の合計含有量は、これらの5つのイオンの合計含有量(La3++Gd3++Y3++Yb+Lu3+)を表す場合がある。
【0040】
Ti4+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を高め、さらに、アッベ数の低下を抑制し、着色を低減する性質を有する任意成分である。
一方で、Ti4+を8.0%以下とすることで、耐失透性を高めることができる。従って、Ti4+の含有量は8.0%以下、より好ましくは7.0%以下、より好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下とする。
Ti4+は、原料として例えばTiO等を用いてガラス内に含有させることができる。
【0041】
Nb5+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を高め、さらに、アッベ数の低下を抑制し、溶融温度の上昇を抑制する性質を有する任意成分である。従って、Nb5+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上とする。
一方で、Nb5+を8.0%以下とすることで、耐失透性を高めることができる。従って、Nb5+の含有量は8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Nb5+は、原料として例えばNb等を用いてガラス内に含有させることができる。
【0042】
Zr4+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、Zr4+の含有量を10.0%以下にすることで、ガラス中の成分の揮発によるガラスの脈理を抑えられる。従って、Zr4+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Zr4+は、原料としてZrO、ZrF等を用いることができる。
【0043】
6+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を高め、さらに、アッベ数の低下を抑制し、着色を低減する性質を有する任意成分である。
従って、W6+の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上とする。
一方で、W6+の含有量を8.0%以下にすると屈折率の低下、更にアッベ数の低下を抑えられる。従って、W6+の含有量は8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、より好ましくは4.0以下%、さらに好ましくは3.0%以下とする。
6+は、原料として例えばWO等を用いてガラス内に含有させることができる。
【0044】
Ge4+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Ge4+の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGe4+の含有量が減少することで、ガラスの材料コストを低減できる。そのため、Ge4+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Ge4+は、原料としてGeO等を用いることができる。
【0045】
Ta5+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、Ta5+の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの失透を低減できる。従って、Ta5+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Ta5+は、原料としてTa等を用いることができる。
【0046】
Bi3+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
一方で、Bi3+の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの失透や、着色による可視光透過率の低下を抑えられる。従って、Bi3+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Bi3+は、原料としてBi等を用いることができる。
【0047】
Te4+は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、着色を抑えることができる任意成分である。
一方で、Te4+の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの失透や、着色による可視光透過率の低下を抑えられる。従って、Te4+の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下とする。
Te4+は、原料としてTeO等を用いることができる。
【0048】
2+の合計含有量は、33.0%以上60.0%以下が好ましい。
特に、R2+を33.0%以上含有することで、より耐失透性の高いガラスを得ることができる。従って、R2+の合計含有量は、好ましくは33.0%以上、より好ましくは35.0%以上、より好ましくは36.0%以上、より好ましくは37.0%以上、さらに好ましくは38.0%以上とする。
一方で、R2+の含有量を60.0%以下にすることで、R2+の過剰な含有による失透を低減できる。従って、R2+の合計含有量は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは55.0%以下、より好ましくは53.0%以下、さらに好ましくは50.0%以下とする。
【0049】
Rn+の合計含有量は、0%超含有する場合に、ガラス形成時の耐失透性を高く維持しつつ、ガラス転移点を下げることができる。従って、Rn+の合計含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.7%以上とする。
一方でRnの上限を5.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えることができる。従って、Rnの合計含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下とする。
【0050】
Ln3+の合計含有量を、2.0%以上にすることで、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、耐失透性を高めることができる。従って、Ln3+の合計含有量は、好ましくは2.0%以上、より好ましくは4.0%以上、さらに好ましくは6.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上とする。
一方、Ln3+の合計含有量を40.0%以下にすることで、Ln3+の過剰な含有による失透を低減でき、且つガラスの材料コストおよび比重を低減できる。従って、Ln3+の合計含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは30.0%以下、より好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%以下、さらに好ましくは21.0%以下とする。
【0051】
本発明の光学ガラスにおいて、Nb5+、Ti4+、W6+の合計含有量は、0%超含有する場合に、高屈折率を実現でき、化学的耐久性を向上させる効果がある。従って、(Nb5++Ti4++W6+)の合計含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.9%以上とする。
一方で、上限を15.0%にすることでアッベの低下を抑えられる。従って、(Nb5++Ti4++W6+)の合計含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは9.0%以下とする。
【0052】
Al3+/P5+は、0.05以上含有する場合に、均質性を高め、化学的耐久性の向上にも寄与することができる。従って、Al3+/P5+は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.15以上とする。
一方で、Al3+/P5+の上限を0.35以下にすることで、ガラス作製時の熔融ガラス均質悪化を抑えられる。従ってAl3+/P5+は、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.28以下とする。
【0053】
Ba2+/R2+は、0.40以上含有する場合に、ガラスが安定し、失透を抑えることができる。Ba2+/R2+の含有量は、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.43以上、更に好ましくは0.45以上とする。
一方Ba2+/Rの上限を1.00以下にすることで屈折率やアッベ数の低下を抑えられる。従って、Ba2+/Rの含有量は、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.90以下とする。
【0054】
Sr2+/(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)は、0超含有する場合に、ガラスが安定し、失透を抑えることができる。従って、Sr2+/(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)の含有量は、好ましくは0超、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上とする。
一方で、Sr2+/(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)の上限を0.35以下にすることで、屈折率の低下を抑えることができる。従って、Sr2+/(Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)の含有は、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.15以下とする。
【0055】
Sr2+/(Li+Na+K)は、0超含有する場合に、ガラス形成時の耐失透性を高く維持することができる。従って、Sr2+/(Li+Na+K)の含有量は、好ましくは0超、より好ましくは2.00以上、より好ましくは3.00以上、さらに好ましくは4.00以上とする。
一方で、Sr2+/(Li+Na+K)の上限を15.00以下にすることで、高い屈折率が得られ、脈理なども発生しにくくなる。従って、Sr2+/(Li+Na+K)の含有量は、好ましくは15.00以下、より好ましくは13.00以下、より好ましくは10.00以下、さらに好ましくは8.00以下とする。
【0056】
/P5+は、0.70以上含有する場合に、ガラスが安定し、失透を抑えることができる。従ってF/P5+の含有量は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.90以上、さらに好ましくは1.00以上とする。
一方で、F/P5+は、2.50以下含有する場合に、高い異常分散性を有することができる。従って、F/P5+の含有量は、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.30以下、より好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.80以下とする。
【0057】
[アニオン成分について]
本発明の光学ガラスはO2-を含有する。O2-の含有量は、例えば30.0%~75.0%にすることが好ましい。
特に、O2-を30.0%以上含有することで、ガラスの失透や、磨耗度の上昇を抑制できる。従って、O2-の含有量は、好ましくは30.0%以上、より好ましくは40.0%以上、さらに好ましくは45.0%以上、さらに好ましくは52.0%以上とする。
一方で、O2-の含有量を75.0%以下にすることで、他のアニオン成分による効果を得易くできる。従って、O2-の含有量は、好ましくは75.0%以下、より好ましくは70.0%以下、さらに好ましくは66.0%以下、さらに好ましくは63.0%以下、さらに好ましくは61.0%以下とする。
2-は、原料としてAl、MgO、BaO等の各種カチオン成分の酸化物や、Al(PO)、Mg(PO)、Ba(PO)等の各種カチオン成分の燐酸塩等を用いることができる。
【0058】
本発明の光学ガラスはFを含有する。Fの含有量は、例えば25.0%以上65.0%以下にすることが好ましい。
特に、Fを25.0%以上含有することで、ガラスの異常分散性やアッベ数を高め、且つガラスの耐失透性を高められる。従って、Fの含有量は、好ましくは25.0%以上、より好ましくは27.0%以上、より好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは35.0%以上、さらに好ましくは39.0%以上とする。
一方で、Fの含有量を65.0%以下にすることで、ガラスの磨耗度の低下を抑えられる。従って、Fの含有量は、好ましくは65.0%以下、より好ましくは60.0%以下、さらに好ましくは55.0%以下、さらに好ましくは50.0%以下、さらに好ましくは48.0%以下とする。
また、ガラスの失透を抑制する観点から、O2-の含有量とFの含有量の合計は、好ましくは98.0%以上、より好ましくは99.0%以上を下限とし、さらに好ましくは100%とする。
は、原料としてAlF、MgF、BaF等の各種カチオン成分のフッ化物を用いることができる。
【0059】
/(F+O2-)を0.35以上にすることでガラスの異常分散性やアッベ数を高め、且つガラスの耐失透性を高められる。従って、F/(F+O2-)は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.36以上、より好ましくは0.37以上、さらに好ましくは0.38以上とする。
一方で、F/(F+O2-)を0.55以下とすることで、ガラス中の成分の揮発によるガラスの脈理を抑えることができる。従って、F/(F+O2-)は、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.53以下、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.49以下とする。
【0060】
[その他の成分について]
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。
【0061】
[含有すべきでない成分について]
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0062】
上述されていない他の成分を、本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ce、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じることで、本願発明の可視光透過率を高める効果を減殺する性質があるため、特に可視領域の波長を透過させる光学ガラスでは、実質的に含まないことが好ましい。
【0063】
Pb、Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeのカチオンは、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄できる。
【0064】
SbやCeのカチオンは、脱泡剤として有用ではあるが、環境に不利益を及ぼす成分として、近年光学ガラスに含めないようにする傾向がある。そのため、本発明の光学ガラスは、このような点からSbやCeを含まないことが好ましい。
【0065】
[製造方法]
本発明の光学ガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を石英坩堝又はアルミナ坩堝又は白金坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて900~1200℃の温度範囲で2~10時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、900~750℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより製造することができる。
【0066】
[物性]
本発明の光学ガラスは、高屈折率低分散領域にて高屈折率を有する。また、本発明の光学ガラスは、高い分散を有することが好ましい。
本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.54以上、さらに好ましくは1.56以上を下限とする。一方で、屈折率の上限は、好ましくは1.67以下、より好ましくは1.66以下、さらに好ましくは1.65以下であってもよい。
【0067】
また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは45以上、より好ましくは47以上、さらに好ましくは50以上を下限とし、好ましくは68以下、より好ましくは67以下、さらに好ましくは65以下を上限とする。
【0068】
ここで、部分分散比(θg,F)および異常分散性(Δθg,F)について説明し、その後、本発明の光学ガラスの物性における特徴をより詳細に説明する。
初めに、部分分散比(θg,F)について説明する。
部分分散比(θg,F)とは、屈折率の波長依存性のうち、ある2つの波長域における屈折率の差の割合を示すものであり、次の式(1)で表される。
θg,F=(ng-nF)/(nF-nC)・・・・・・式(1)
ここでngはg線(435.83nm)、nFはF線(486.13nm)、nCはC線(656.27nm)における屈折率を意味する。
そして、この部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)との関係をXYグラフ上にプロットすると、一般的な光学ガラスの場合、ほぼ、ノーマルラインと呼ばれる直線上にプロットされることになる。ノーマルラインとは、部分分散比(θg,F)を縦軸に、アッベ数(ν)を横軸に採用したXYグラフ上(直交座標上)で、NSL7とPBM2の部分分散比およびアッベ数をプロットした2点を結ぶ右上がりの直線を意味する(図1参照)。ノーマルラインの基準となるノーマルガラスは光学ガラスメーカー毎によっても異なるが、各社ともほぼ同等の傾きと切片で定義している(NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比(θg,F)は0.5436、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比(θg,F)は0.5828である)。
【0069】
このような部分分散比(θg,F)に対して、異常分散性(Δθg,F)とは、部分分散比(θg,F)およびアッベ数(ν)のプロットが、ノーマルラインから縦軸方向にどの程度離れているかを示すものである。異常分散性(Δθg,F)が大きいガラスからなる光学素子は、青色付近の波長範囲について、他のレンズによって生じていた色収差を補正することができる性質を有する。
【0070】
本発明者は鋭意検討し、アッベ数(ν)に対する異常分散性(Δθg,F)の値が、従来のものと比較して、より高くなる光学ガラスを開発することに成功した。
例えば、後に実施例として示したより好ましい態様の光学ガラスであると、アッベ数(ν)が50~68程度の場合に、部分分散比(θg,F)が0.535以上となり、異常分散性(Δθg,F)も0.0020以上となる光学ガラスを得ることができる。このような部分分散比(θg,F)および異常分散性(Δθg,F)の値は、同程度のアッベ数(ν)を有する従来のものと比較して、著しく高い値である。
【0071】
本発明の光学ガラスは、部分分散比(θg,F)が特徴的である。したがって、色収差を高精度に補正できる光学ガラスを得易い。
部分分散比(θg,F)は0.510以上であり、0.520以上であることが好ましく、0.530以上であることがより好ましく、0.535以上であることがさらに好ましい。なお、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは0.580以下、より好ましくは0.576以下、さらに好ましくは0.573以下が望ましい。
また、本発明でいう部分分散比は、短波長域での部分分散比を意味するものとする。
【0072】
本発明の光学ガラスは、異常分散性(Δθg,F)が高い。したがって、色収差を高精
度に補正できるレンズを得易い。
異常分散性(Δθg,F)は0.002以上であることが好ましく、0.005以上で
あることがより好ましく、0.007以上であることがより好ましく、0.090以上で
あることがより好ましく、0.011以上であることがより好ましく、0.013以上で
あることがさらに好ましい。
一方、本発明の光学ガラスの異常分散性(Δθg,F)の上限は、は0.030以下であることが好ましく、0.028以下であることがより好ましく、0.026以下であることがより好ましく、0.024以下であることがより好ましく、0.022以下であることがさらに好ましい。
【0073】
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0074】
このようにして作製されるガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である。特に、本発明の光学ガラスから、精密プレス成形等の手段を用いて、レンズやプリズム、ミラー等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等のような光学素子に可視光を透過させる光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性等を実現しつつ、これら光学機器における光学系の軽量化を図ることができる。
【実施例
【0075】
本発明の光学ガラスである実施例(No.1~No.61)及び比較例(No.A)のガラスの組成(カチオン%表示又はアニオン%表示のモル%で示す)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、部分分散比(θg,F)及び異常分散性(Δθg,F)を表1~表9に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例の光学ガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、メタ燐酸化合物等の通常の弗燐酸塩ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の溶融難易度に応じて電気炉で900~1250℃の温度範囲で2~10時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、900℃以下に温度を下げてから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
【0077】
実施例及び比較例のガラスの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(nF)、C線(656.27nm)に対する屈折率(nC)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(nF-nC)]の式から算出した。
また、部分分散比は、C線(波長656.27nm)における屈折率nC、F線(波長486.13nm)における屈折率nF、g線(波長435.83nm)における屈折率ngを測定し、(θg,F)=(ng-nF)/(nF-nC)の式により算出した。そして、測定されたアッベ数(ν)における、図1のノーマルライン上にある部分分散比(θg,F)の値と測定された部分分散比(θg,F)の値との差から、異常分散性(Δθg,F)を求めた。


































【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
表1~表9に表されるように、実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率が1.50以上、より詳細には1.52以上であり、所望の範囲内であった。一方、比較例のガラスは、屈折率が1.4982であり、1.50以下であった。そのため、本発明の実施例の光学ガラスは比較例のガラスに比べて、屈折率が高いことが明らかとなった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数が45以上、より詳細には47以上であるとともに、このアッベ数は68以下、より詳細には67以下であり、所望の範囲内であった。一方、比較例のガラスは、アッベ数が79.1であり、68以上であった。そのため、本発明の実施例の光学ガラスは比較例のガラスに比べて、アッベ数が低いことが明らかとなった。
【0088】
また、実施例の光学ガラスは、いずれも部分分散比(θg,F)が0.510以上であり、異常分散性(Δθg,F)が0.002以上であった。
【0089】
従って、実施例の光学ガラスは、所望の高い屈折率を有し、アッベ数が所望の範囲内にありながらも、異常分散性(Δθg,F)が高いことが明らかになった。
【0090】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。




























図1