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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20221118BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/03 300B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019106734
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199821
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】片山 明愛
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-82307(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056573(WO,A1)
【文献】特開2010-143377(JP,A)
【文献】特開2007-153275(JP,A)
【文献】特開2008-201368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッドにタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝(11i,11o)により区画されて複数の周方向に連なる陸部(12A,12B,12C)が形成され、
前記周方向溝(11i,11o)のうちタイヤ幅方向の最も外側の最外側周方向溝(11o)よりタイヤ幅方向の内側に位置する前記陸部(12A,12B,12C)のうちの内側陸部(12A,12B)は、タイヤ周方向に延びる周方向細溝(13)によりタイヤ幅方向に分割されて2列の分割陸部(12p,12q)とされ、
前記分割陸部(12p,12q)は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝(14)により複数のブロック(15P,15Q)に区画され、
前記周方向細溝(13)を挟んで隣接する2列の前記分割陸部(12p,12q)は、それぞれに形成されたブロック(15P,15Q)が互いにタイヤ周方向に位相がずれて一部がタイヤ周方向に交互に重なるように千鳥状に位置する空気入りタイヤにおいて、
前記ブロック(15P,15Q)には、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3つの幅方向サイプ(16a,16m,16z)が同ブロック(15P,15Q)のタイヤ周方向の中央部に集中して形成され、
前記幅方向サイプ(16a,16m,16z)は、前記ブロック(15P,15Q)のタイヤ幅方向の両側面に開口し、
前記周方向溝(11i,11o)のうち前記最外側周方向溝(11o)以外の内側周方向溝(11i)は、前記最外側周方向溝(11o)よりも溝幅を狭く、接地時に前記内側陸部(12A,12B)どうしが接触可能な溝幅を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
少なくとも3つの幅方向サイプ(16a,16m,16z)のうち最も外側の2つの外側幅方向サイプ(16a,16z)と、2つの前記外側幅方向サイプ(16a,16z)の間にある内側幅方向サイプ(16m)とは、タイヤ径方向の深さが同じであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周方向溝(11i,11o)は、タイヤ幅方向に振れながらタイヤ周方向にジグザグ形状に延びており、
前記ブロック(15P,15Q)は、タイヤ周方向の中央が前記周方向溝(11i,11o)のジグザグ形状に合わせて折曲し、
前記内側幅方向サイプ(16m)は、前記ブロックの折曲部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ブロック(15P,15Q)は、ジグザグ形状の前記周方向溝(11i,11o)側の側面が突出するようにタイヤ周方向の中央が折曲していることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、氷雪上性能を備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪上性能を考慮したスタッドレス仕様のタイヤでは、タイヤトレッドに周方向溝により区画された周方向に連なる陸部を幅方向溝により複数のブロックに分割し、各ブロックにサイプを形成したトラクションパターンがよく知られている。
【0003】
サイプは、路面とタイヤの間に生じる水膜を吸水によりなくすとともに、サイプのエッジ部により路面水膜を切り裂いて路面に直接接触することでトラクション性を向上させることができる。
【0004】
ブロックに形成するサイプの数を増やせば、ブロック内のエッジ成分が増加して、氷雪上性能を向上させることができる。
しかし、サイプの数が多くなると、ブロック内でサイプにより分断された分断ブロックが小さくなり、剛性が低く、車両走行時に変形して、特にタイヤ周方向の外側の分断ブロックは欠損し易くなる。
【0005】
そこで、ブロックのタイヤ周方向の中央部に2つのサイプを集中して形成し、サイプによるエッジ成分を確保するとともに、中央部に集中した2つのサイプによりブロックを2つのタイヤ周方向の外側の大きな外側の分断ブロックと小さな中央の分断ブロックに分断し、外側の分断ブロックをできるだけ大きいブロックとして剛性を維持して車両走行時の欠損を防止した例(特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-149768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された空気入りタイヤに対して、氷雪上性能を更に向上させるには、ブロックに対するサイプの数を増やし、エッジ成分を増加すればよいが、サイプの数を増やしながら、外側の分断ブロックを大きく維持してブロックの欠損を抑制することが課題となる。
また、増やしたサイプによっては分断ブロックの剛性が低くなり、接地時に変形が大きくなることで、サイプの溝底に底割れを生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、氷雪上性能をより向上させるとともに、ブロックの欠損およびサイプの溝底の割れを抑制した空気入りタイヤを供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
タイヤのトレッドにタイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝により区画されて複数の周方向に連なる陸部が形成され、
前記周方向溝のうちタイヤ幅方向の最も外側の最外側周方向溝よりタイヤ幅方向の内側に位置する前記陸部のうちの内側陸部は、タイヤ周方向に延びる周方向細溝によりタイヤ幅方向に分割されて2列の分割陸部とされ、
前記分割陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝により複数のブロックに区画され、
前記周方向細溝を挟んで隣接する2列の前記分割陸部は、それぞれに形成されたブロックが互いにタイヤ周方向に位相がずれて一部がタイヤ周方向に交互に重なるように千鳥状に位置する空気入りタイヤにおいて、
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3つの幅方向サイプが同ブロックのタイヤ周方向の中央部に集中して形成され、
前記幅方向サイプは、前記ブロックのタイヤ幅方向の両側面に開口し、
前記周方向溝のうち前記最外側周方向溝以外の内側周方向溝は、前記最外側周方向溝よりも溝幅を狭く、接地時に前記内側陸部どうしが接触可能な溝幅を有することを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0010】
この構成によれば、1つのブロックにタイヤ幅方向に延びる両側開口サイプである幅方向サイプが3つ形成されるので、2つの幅方向サイプよりエッジ成分を増やし氷雪上性能をより向上させることができる。
そして、周方向溝のうち最外側周方向溝以外の内側周方向溝は、最外側周方向溝よりも溝幅を狭く、接地時に内側陸部どうしが接触可能な溝幅を有するので、接地時に内側陸部とその両側の内側陸部が互いに接して複数の内側陸部が一体化して全体的に剛性が高くなるため、幅方向サイプにより分断された小さな内側分断小ブロックが大きな接地圧を受けても、大きく変形することが抑えられ、幅方向サイプの溝底に底割れを生じるのを抑制することができる。
【0011】
また、分割陸部の複数本の幅方向溝により区画されたブロックには、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3つの幅方向サイプが同ブロックのタイヤ周方向の中央部に集中して形成されるので、中央部に集中した少なくとも3つのサイプによりブロックを2つのタイヤ周方向の外側の大きな外側分断大ブロックと小さな内側分断小ブロックに分断し、外側分断大ブロックをできるだけ大きいブロックとして剛性を維持するとともに、接地時に外側分断大ブロックは幅狭の周方向溝を介して隣合うブロックに接して剛性を益々高くすることができ、車両走行時に外側分断大ブロックが欠損することを抑制することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、
少なくとも3つの幅方向サイプのうち最も外側の2つの外側幅方向サイプと、2つの前記外側幅方向サイプの間にある内側幅方向サイプとは、タイヤ径方向の深さが同じである。
【0013】
この構成によれば、2つの外側幅方向サイプとその間にある内側幅方向サイプとは、タイヤ径方向の深さが同じであるので、外側幅方向サイプと内側幅方向サイプのどちらか一方が特に溝底に底割れを生じ易いということはない。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、
前記周方向溝は、タイヤ幅方向に振れながらタイヤ周方向にジグザグ形状に延びており、
前記ブロックは、タイヤ周方向の中央が前記周方向溝のジグザグ形状に合わせて折曲し、
前記内側幅方向サイプは、前記ブロックの折曲部に形成される。
【0015】
この構成によれば、ブロックは、タイヤ周方向の中央が前記周方向溝のジグザグ形状に合わせて折曲し、この折曲部に内側幅方向サイプが形成されるので、2つのタイヤ周方向の外側の外側分断ブロックが略均等に適度な大きさに分断されて剛性が維持されるため、一方の外側分断ブロックが他方より小さくなって剛性が低下して車両走行時に欠損を生じるようなことはない。
【0016】
本発明の好適な実施形態では、
前記ブロックは、ジグザグ形状の前記周方向溝側の側面が突出するようにタイヤ周方向の中央が折曲している。
【0017】
この構成によれば、ブロックは、ジグザグ形状の周方向溝側の側面が突出するようにタイヤ周方向の中央が折曲しているので、折曲部の内側幅方向サイプおよびその両側の外側幅方向サイプは、ブロックの突出する周方向溝側の側面に開口を有し、接地時に吸水した水を容易に周方向溝に排出することができ、排水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、分割陸部の複数本の幅方向溝により区画されたブロックには、タイヤ幅方向に延びる少なくとも3つの幅方向サイプが同ブロックのタイヤ周方向の中央部に集中して形成されるので、サイプを少なくとも3つとしてエッジ成分をさらに増やし氷雪上性能をより向上させるとともに、中央部に集中した少なくとも3つのサイプによりブロックを2つのタイヤ周方向の外側の大きな外側分断ブロックと小さな内側分断ブロックに分断し、外側分断ブロックをできるだけ大きいブロックとして剛性を維持して車両走行時の欠損を抑制することができる。
【0019】
また、周方向溝のうち最外側周方向溝以外の内側周方向溝は、最外側周方向溝よりも溝幅を狭く、接地時に内側陸部どうしが接触可能であるので、小さな内側分断ブロックが大きな接地圧を受けても、内側分断ブロックが隣接するブロックに接して剛性が確保されることで、内側分断ブロックが大きく変形することが抑えられ、幅方向サイプの溝底に底割れを生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】同空気入りタイヤのトレッドの部分平面図である。
図3】同トレッドの内側陸部の部分拡大平面図である。
図4図3のIV-IV矢視による同内側陸部の部分断面図である。
図5図3のV-V矢視による同トレッドの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図5に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るトラック・バス用の重荷重用ラジアルタイヤである空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向断面図(タイヤ回転中心軸を含む平面で切断したときの断面図)である。
【0022】
空気入りタイヤ1は、金属線がリング状に巻回されて形成された左右一対のビードリング2,2に、両側縁をそれぞれ巻き付けて両側縁間をタイヤ径方向外側に膨出してトロイダル状にカーカスプライ3が形成されている。
【0023】
カーカスプライ3の内表面には耐空気透過性のインナライナ部4が形成されている。
カーカスプライ3のクラウン部の外周には、ベルト6が複数重ねられるように巻き付けられてベルト層5を形成しており、そのタイヤ径方向外側にトレッド7が覆いかぶさるように形成されている。
ベルト層5はベルト6が複数層に重ねられたもので、各ベルト6はベルトコードをベルト用ゴムにより被覆して帯状にしたものである。
【0024】
カーカスプライ3の両サイド部の外表面には、サイドウォール部8が形成されている。
カーカスプライ3のビードリング2に巻き付けられて折り返された環状端部を覆うビード部9は、内側がインナライナ部4に連続し、外側がサイドウォール部8に連続する。
【0025】
図2は、トレッド7の部分平面図であり、タイヤが接地したときのトレッドの路面に接する部分を示しており、路面に接するタイヤ幅方向の最大幅位置である両側のタイヤ接地端E,E間を示している。
図1および図2を参照して、トレッド7には、タイヤ幅方向の中央のタイヤ赤道線Leの両側に、それぞれ2本ずつタイヤ周方向に延びる周方向溝11i,11oが、タイヤ幅方向に略等間隔に形成されている。
【0026】
4本の周方向溝11o,11i,11i,11oは、タイヤ赤道線Leに近いタイヤ幅方向内側の内側周方向溝11i,11iと、内側周方向溝11iのさらにタイヤ幅方向の最も外側の最外側周方向溝11oとからなる。
周方向溝11i,11oは、いずれもタイヤ幅方向に振れながらタイヤ周方向にジグザグ形状に延びている。
【0027】
この4本の周方向溝11o,11i,11i,11oにより区画されて5本のタイヤ周方向に延びる陸部12C,12B,12A,12B,12Cが形成されている。
タイヤ幅方向の両側の最外側周方向溝11o,11oの間のタイヤ赤道線Leのあるタイヤ幅方向の内側に、3本の内側陸部12B,12A,12Bが区画されている。
最外側周方向溝11oよりタイヤ幅方向外側のタイヤショルダ領域にショルダ陸部12Cが区画されている。
【0028】
周方向溝11i,11oのうち最外側周方向溝11o以外の内側周方向溝11iは、最外側周方向溝11oよりも溝幅を狭く、接地時に内側周方向溝11iの両側の内側陸部12A,12Bどうしが接触可能な溝幅である。
【0029】
内側陸部12A,12Bは、それぞれタイヤ幅方向中央をタイヤ幅方向に振れながらタイヤ周方向にジグザグ形状に延びる周方向細溝13によりタイヤ幅方向に分割されて2列の分割陸部12p,12qが形成されている。
【0030】
分割陸部12p,12qは、それぞれタイヤ周方向に等間隔に設けられたタイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝14により複数のブロック15P,15Qに区画されている。
幅方向溝14は、溝幅が大きく、タイヤ径方向の深さが周方向溝11i,11oの深さの半分ほどである。
【0031】
周方向細溝13を挟んで隣接する2列の分割陸部12p,12qは、それぞれに形成されたブロック15P,15Qが、互いにタイヤ周方向にずれて一部がタイヤ周方向に交互に重なるように千鳥状に位置している。
【0032】
ブロック15P,15Qは、周方向溝11i(または周方向溝11o)と周方向細溝13のジグザグ形状に合わせてタイヤ周方向の中央が折曲している。
ブロック15P,15Qは、ジグザグ形状の周方向溝11i(または周方向溝11o)の側の側面15Ps,15Qsが突出するようにタイヤ周方向の中央が折曲している(図3参照)。
【0033】
ブロック15P,15Qのタイヤ周方向中央の折曲部に集中してタイヤ幅方向に延びる3つの幅方向サイプ16a,16m,16zが形成されている。
幅方向サイプ16a,16m,16zは、溝幅が1.0mm未満の切り込みである。
【0034】
幅方向サイプ16a,16m,16zのうち最も外側の2つの外側幅方向サイプ16a,16zと、2つの外側幅方向サイプ16a,16zの間に形成される内側幅方向サイプ16mとは、タイヤ径方向の深さが同じで、前記幅方向溝14の深さと略同じである(図5参照)。
内側幅方向サイプ16mがブロック15P,15Qのタイヤ周方向中央の折曲部に形成されている。
【0035】
3つの幅方向サイプ16a,16m,16zは、ブロック15P,15Qのタイヤ幅方向の両側面に開口している両側開口サイプである。
すなわち、幅方向サイプ16a,16m,16zは、一端が周方向溝11i(または周方向溝11o)に開口し、他端が周方向細溝13に開口して、周方向溝11i(または周方向溝11o)と周方向細溝13とを連通している。
【0036】
したがって、図3を参照して、ブロック15Pは、両側開口サイプである幅方向サイプ16a,16m,16zによりタイヤ周方向外側のブロック長(ブロックのタイヤ周方向の長さ)が長い外側分断大ブロック15Pa,15Pzと、外側分断大ブロック15Pa,15Pz間のブロック長が短く小さい内側分断小ブロック15Pm,15Pnとに分断される。
同様に、ブロック15Qは、幅方向サイプ16a,16m,16zによりタイヤ周方向外側のブロック長が長い大きな外側分断大ブロック15Qa,15Qzと、外側分断大ブロック15Qa,15Qz間のブロック長が短く小さい内側分断小ブロック15Qm,15Qnとに分断される。
【0037】
ここに、幅方向サイプ16a,16m,16zは、溝幅が1.0mm未満の幅狭の切り込みであるので、接地時に幅方向サイプ16a,16m,16zの両側のブロックが押圧変形して互いに接することができる。
【0038】
すなわち、接地時に、3つの幅方向サイプ16a,16m,16zにより分断された外側分断大ブロック15Pa,内側分断小ブロック15Pm,15Pn,外側分断大ブロック15Pzおよび外側分断大ブロック15Qa,内側分断小ブロック15Qm,15Qn,外側分断大ブロック15Qzがそれぞれ押圧変形して互いに接してブロック15Pおよびブロック15Qはそれぞれ1つに一体化して剛性を高めることができる。
【0039】
さらに、周方向細溝13は、溝幅が幅方向サイプ16a,16m,16zと同じか若干大きい程度であり、接地時に周方向細溝13の両側のそれぞれ1つに一体化して千鳥状に位置したブロック15Pとブロック15Qが、押圧変形して互いに連続的に噛み合い、タイヤ周方向の剛性を向上させることができる。
【0040】
図2を参照して、最外側周方向溝11oよりタイヤ幅方向外側のショルダ陸部12Cは、タイヤ周方向に直線状に延びる周方向細溝21によりタイヤ幅方向内側の内側ショルダ陸部12Ciとタイヤ幅方向外側の外側ショルダ陸部12Coとに区画される。
内側ショルダ陸部12Ciの方が外側ショルダ陸部12Coよりタイヤ幅方向の幅が大きく、剛性が高い。
【0041】
内側ショルダ陸部12Ciは、タイヤ周方向に等間隔に設けられたタイヤ幅方向に延びる内側幅方向ラグ溝22により複数の内側ブロック23に区画される。
内側幅方向ラグ溝22のタイヤ径方向の深さは、最外側周方向溝11oのタイヤ径方向の深さの半分である。
【0042】
内側ブロック23には、タイヤ周方向の中央部にタイヤ幅方向に延びる内側幅方向細溝24が形成されている。
内側幅方向細溝24は、一端が11oに開口し、他端が周方向細溝21に開口する両側開口サイプであり、タイヤ径方向の深さは、内側幅方向ラグ溝22と同じである。
【0043】
したがって、内側ブロック23は、内側幅方向細溝24によりブロック長の短い小ブロックに分断されている。
なお、内側幅方向細溝24は、溝幅がサイプより若干大きいが、タイヤ接地時には内側幅方向細溝24の両側の小ブロックが押圧変形して互いに接する。
【0044】
ショルダ陸部12Cの周方向細溝21によりタイヤ幅方向外側に区画された外側ショルダ陸部12Coは、タイヤ周方向に等間隔に設けられたタイヤ幅方向に延びる外側幅方向ラグ溝32により複数の外側ブロック33に区画される。
外側ブロック33のタイヤ幅方向の外側の辺がタイヤ接地端Eである。
【0045】
外側幅方向ラグ溝32は、溝幅が大きく、タイヤ径方向の深さが内側幅方向ラグ溝22のタイヤ径方向の深さと略同じである。
外側幅方向ラグ溝32は、タイヤ周方向で内側幅方向ラグ溝22と同じ位置に形成されている。
したがって、ショルダ陸部12Cにおける内側幅方向ラグ溝22と外側幅方向ラグ溝32がタイヤ周方向で同じ位置に形成されているので、ショルダ陸部12Cの排水性が向上している。
【0046】
以上、詳細に説明した本発明に係る空気入りタイヤの一実施の形態では、以下に記す効果を奏する。
本空気入りタイヤ1のトレッド7における最外側周方向溝11oよりタイヤ幅方向の内側に位置する内側陸部12A,12Bは、図2および図3を参照して、周方向細溝13によりタイヤ幅方向に分割されて2列の分割陸部12p,12qとされ、分割陸部12p,12qは複数本の幅方向溝14によりブロック15P,15Qに区画されている。
【0047】
ブロック15P(15Q)には、タイヤ幅方向に延びる3つの幅方向サイプ16a,16m,16zが同ブロック15P(15Q)のタイヤ周方向の中央部に集中して形成されるので、中央部に集中した3つの幅方向サイプ16a,16m,16zによりブロック15P(15Q)を、2つのタイヤ周方向の外側のブロック長が長い大きな外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)とブロック長が短い小さな内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)に分断される。
【0048】
1つのブロック15P(15Q)にタイヤ幅方向に延びる両側開口サイプである幅方向サイプ16a,16m,16zが3つ形成されるので、2つの幅方向サイプよりエッジ成分を増やし氷雪上性能をより向上させることができる。
【0049】
接地時に、幅方向サイプ16a,16m,16zに分断された外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)と内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)は互いに隣合うブロックと接するが、剛性の低い内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)に接地圧が集中したときに、内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)は、大きく変形し易い。
【0050】
本空気入りタイヤ1においては、図2に示されるように、周方向溝11i,11oのうち最外側周方向溝11o以外の内側周方向溝11iは、最外側周方向溝11oよりも溝幅を狭く、接地時に内側陸部12A,12Bどうしが接触可能な溝幅を有するので、接地時に内側陸部12Aとその両側の内側陸部12B,12Bが互いに接して内側陸部12B,12A,12Bが一体化して全体的に剛性が高くなるため、幅方向サイプ16a,16m,16zにより分断された小さな内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)が大きな接地圧を受けても、大きく変形することが抑えられ、幅方向サイプ16a,16m,16zの溝底に底割れを生じるのを抑制することができる。
【0051】
幅方向サイプ16a,16m,16zのうち最も外側の2つの外側幅方向サイプ16a,16zと、2つの外側幅方向サイプ16a,16zの間にある内側幅方向サイプ16mとは、タイヤ径方向の深さが同じであるので、外側幅方向サイプ16a,16zと内側幅方向サイプ16mのどちらか一方が特に溝底に底割れを生じ易いということはない。
【0052】
また、図2および図3に示されるように、中央部に集中した3つの幅方向サイプ16a,16m,16zによりブロック15P(15Q)を2つのタイヤ周方向の外側の大きな外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)と小さな内側分断小ブロック15Pm,15Pn(15Qm,15Qn)に分断し、外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)をできるだけ大きいブロックとして剛性を維持するとともに、接地時に外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)は幅狭の周方向溝11iを介して隣合うブロック15P(15Q)に接して剛性を益々高くすることができ、車両走行時に外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)が欠損することを抑制することができる。
【0053】
図2および図3に示されるように、周方向溝11i,11oがタイヤ幅方向に振れながらタイヤ周方向にジグザグ形状に延びており、ブロック15P(15Q)は、タイヤ周方向の中央が周方向溝11i,11oのジグザグ形状に合わせて折曲し、この折曲部に内側幅方向サイプ16mが形成されるので、2つのタイヤ周方向の外側の外側分断大ブロック15Pa,15Pz(15Qa,15Qz)が略均等に適度な大きさに分断されて剛性が維持されるため、一方の外側分断大ブロックが他方の外側分断大ブロックより小さくなって剛性が低下して車両走行時に欠損を生じるようなことはない。
【0054】
ブロック15P,15Qは、ジグザグ形状の周方向溝11i,11o側の側面が突出するようにタイヤ周方向の中央が折曲しているので、折曲部の内側幅方向サイプ16mおよびその両側の外側幅方向サイプ16a,16zは、ブロック15P,15Qの突出する周方向溝11i,11o側の側面に開口を有し、接地時に吸水した水を容易に周方向溝11i,11oに排出することができ、排水性を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明に係る一実施の形態に係る空気入りタイヤについて説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。
【0056】
例えば、ブロック15P,15Qの2つの外側幅方向サイプ16a,16zの間に挟まれた内側幅方向サイプは1つとは限らず、エッジ成分を増やすために2つ以上の内側幅方向サイプを形成してもよいが、内側幅方向サイプにより分断される内側分断小ブロックにも剛性がある程度必要とされることから、内側幅方向サイプはそれ程多くは形成できない。
【0057】
本発明の空気入りタイヤは、トラック・バス用タイヤに限らず、乗用車用タイヤにも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…空気入りタイヤ、2…ビードリング、3…カーカスプライ、4…インナライナ部、5…ベルト層、6…ベルト、7…トレッド、8…サイドウォール部、9…ビード部、
11i…内側周方向溝、11o…最外側周方向溝、
12A,12B…内側陸部、12C…ショルダ陸部、12Ci…内側ショルダ陸部、12Co…外側ショルダ陸部、
12p,12q…分割陸部、13…周方向細溝、14…幅方向溝、
15P…ブロック、15Pa,15Pz…外側分断大ブロック、15Pm,15Pn…内側分断小ブロック、
15Q…ブロック、15Qa,15Qz…外側分断大ブロック、15Qm,15Qn…内側分断小ブロック、
16a,16z…外側幅方向サイプ、16m…内側幅方向サイプ、
21…周方向細溝、
22…内側幅方向ラグ溝、23…内側ブロック、24…内側幅方向細溝、
32…外側幅方向ラグ溝、33…外側ブロック。
図1
図2
図3
図4
図5