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特許7178979燃料電池シート体の積層方法及び積層装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】燃料電池シート体の積層方法及び積層装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2404 20160101AFI20221118BHJP
   H01M 8/248 20160101ALI20221118BHJP
【FI】
H01M8/2404
H01M8/248
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019195938
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021072162
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 明央
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-113997(JP,A)
【文献】特開2015-149265(JP,A)
【文献】特開2018-156820(JP,A)
【文献】特開2008-123819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の棚部のそれぞれにより、複数の保持部が水平方向に延在した姿勢で鉛直方向に並んで配置され、かつ、前記複数の保持部同士が水平方向に互いに対向するように支持されている状態で、前記複数の保持部のそれぞれに、燃料電池のシート体を配置する配置工程と、
前記複数の保持部上に配置された複数の前記シート体を、整列治具により、当該複数シート体の面方向に押圧し整列させ、各シート体に形成された貫通孔を重ね合わせる整列工程と、
整列された前記複数のシート体の前記貫通孔にピンを挿通するピン挿入工程と、
前記一対の棚部の前記複数の保持部を前記複数のシート体の面方向外側に移動させて、当該複数のシート体を重ね合せる重ね合わせ工程と、
を備えることを特徴とする、燃料電池シート体の積層方法。
【請求項2】
前記複数のシート体が略矩形状であり、前記整列工程において、前記整列治具が、前記複数の略矩形状のシート体のそれぞれの、少なくとも2辺を押圧することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池シート体の積層方法。
【請求項3】
前記整列工程は、前記押圧の荷重を測定するための荷重センサにより、押圧荷重を計測する荷重計測工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池シート体の積層方法。
【請求項4】
鉛直方向に並んで配置された複数の保持部と、前記複数の保持部を水平方向に延在した姿勢で支持するとともに、前記複数の保持部同士が水平方向に互いに対向するように配設された、前記複数の保持部のそれぞれに、燃料電池のシート体を配置するための一対の棚部と、
水平方向において、前記複数の保持部同士が対向する方向と垂直な方向で互いに対向するように前記複数の保持部上に配置された複数の前記シート体を、当該複数シート体の面方向に押圧し整列させ、各シート体に形成された貫通孔を重ね合わせるための一対の整列手段と、
整列された前記複数のシート体の前記貫通孔にピンを挿通するピン挿入手段と、前記一対の棚部の前記複数の保持部を前記複数のシート体の面方向内外に移動させるための移動手段と、 を備えることを特徴とする、燃料電池シート体の積層装置。
【請求項5】
前記棚部は、前記整列手段の少なくとも一部を構成することを特徴とする、請求項4に記
載の燃料電池シート体の積層装置。
【請求項6】
前記押圧の際の荷重を測定するための荷重センサを備えることを特徴とする、請求項4又
は5に記載の燃料電池シート体の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池シート体の積層方法及び積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池は、電解質膜(電解質)の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータによって挟持した発電セルを備える。この種の発電セルは、セパレータを介して所定数だけ交互に積層することにより、燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
ところで、燃料電池スタックを製造する際には、従来、必要な数の発電セルを1個ずつ重ねる作業を必要枚数分繰り返すことにより行われている。したがって、1つの発電セルの積層作業に要する時間が約10秒であるとすれば、発電セルが300枚積層された燃料電池スタックを得るためには、積層作業に10×300=3000秒(50分)を要することとなり、燃料電池スタックの量産性を向上させる上で障害となる。
【0004】
このような問題に対処すべく、特許文献1には、粗整列ガイド治具に形成された切り欠きに発電セルを挿入して立て掛け、これら発電セルの位置決め用基準孔を大まかに整列させた後、この位置決め基準孔にバーを挿通して持ち上げる。次いで、高精度ガイド治具に上方から、当該高精度ガイド治具に配設されたスライド面に沿って落とし込み、高精度ガイド部材治具の下端ガイドで整列させ、その後、バーを引き抜き、発電セルを固着させることにより、これら発電セルが積層されてなる燃料電池スタックを製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-113997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、発電セルの粗整列ガイド治具の切り欠きへの挿入を容易にすべく、当該切り欠きの幅が、発電セルの幅よりも比較的大きく構成されている。したがって、上記切り欠きに発電セルを挿入した場合、当該発電セルが切り欠き内で傾斜してしまい、位置決め用基準孔を大まかに整列させるためには、当該位置決め用基準孔を大きくしなければならなかった。このため、位置決め基準孔にバーを挿通して持ち上げて、高精度ガイド部材治具の下端ガイドで整列させた際に、基準孔の大きさに起因してバーの挿通状態が安定せず、高精度ガイド部材治具に発電セルを配設した際にも、これら発電セル間の位置がずれてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、高精度な位置決めが可能であるとともに、燃料電池スタックを一括して高速で製造することが可能な燃料電池シート体の積層方法及び積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の棚部のそれぞれにより、複数の保持部が水平方向に延在した姿勢で鉛直方向に並んで配置され、かつ、前記複数の保持部同士が水平方向に互いに対向するように支持されている状態で、前記複数の保持部のそれぞれに、燃料電池のシート体を配置する配置工程と、
前記複数の保持部上に配置された複数の前記シート体を、整列治具により、当該複数シート体の面方向に押圧し整列させ、各シート体に形成された貫通孔を重ね合わせる整列工程と、
整列された前記複数のシート体の前記貫通孔にピンを挿通するピン挿入工程と、
前記一対の棚部の前記複数の保持部を前記複数のシート体の面方向外側に移動させて、当該複数のシート体を重ね合せる重ね合わせ工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池シート体の積層方法に関する。
【0009】
また、本発明は、鉛直方向に並んで配置された複数の保持部と、前記複数の保持部を水平方向に延在した姿勢で支持するとともに、前記複数の保持部同士が水平方向に互いに対向するように配設された、前記複数の保持部のそれぞれに、燃料電池のシート体を配置するための一対の棚部と、水平方向において、前記複数の保持部同士が対向する方向と垂直な方向で互いに対向するように前記複数の保持部上に配置された複数の前記シート体を、当該複数シート体の面方向に押圧し整列させ、各シート体に形成された貫通孔を重ね合わせるための一対の整列手段と、整列された前記複数のシート体の前記貫通孔にピンを挿通するピン挿入手段と、前記一対の棚部の前記複数の保持部を前記複数のシート体の面方向内外に移動させるための移動手段と、を備えることを特徴とする、燃料電池シート体の積層装置に関する。
【0010】
なお、上記では、貫通孔に対してピンを挿通するというように、「ピン」なる文言を用いているが、「バー」なる文言を用いてもよい。すなわち、本発明の実施形態における「ピン」は長さ方向に垂直な断面が立体的であって、長さ方向に略均一な太さで延在した部材を意味するものである。
【0011】
本発明によれば、互いに離隔した複数の保持部を有する棚部を準備し、この棚部の複数の保持部上に燃料電池のシート体を配置する。次いで、整列手段で複数のシート体を面方向に押圧して整列させ、各シート体に形成された貫通孔を重ね合せるようにする。そして、所定のピン挿入手段で複数のシート体の貫通孔にピンを挿通させ、その後、移動手段によって、複数の保持部を複数のシート体の面方向外側に移動させ、これら複数のシート体を積層するようにしている。
【0012】
このように本発明では、貫通孔が形成された燃料電池の複数のシート体を棚部の保持部上に配置し、この保持部上で面方向に整列させた後、当該保持部上で複数のシート体の貫通孔を重ね合わせ、これら貫通孔に対してピンを挿通させ、複数のシート体を積層するようにしている。したがって、従来と異なり、ガイド治具の切り欠きの幅が、発電セルの幅よりも大きいことに起因したような貫通孔の増大を抑制することができ、貫通孔の大きさを狭小化することができる。このため、貫通孔にピンを挿入した場合にピンの挿通状態が安定し、発電セルのスタックの際の位置ずれを防止することができる。
【0013】
また、本発明では、上述のように複数のシート体を棚部の保持部上で一括して積層するものであるため、高精度な位置決めが可能であるとともに、燃料電池スタックを一括して高速で製造することが可能な燃料電池シート体の積層方法及び積層装置を提供することができる。
【0014】
なお、本発明の一態様によれば、整列工程は、前記複数のシート体が略矩形状であり、整列治具が、前記複数の略矩形状のシート体のそれぞれの、少なくとも2辺を押圧することができる。この場合、燃料電池の複数のシート体のより高精度な位置決めが可能となる。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、整列工程で、複数のシート体を押圧する際に、その荷重を測定するための荷重センサを備えることができる。この場合、整列手段が押圧する際に、その押圧過程をモニタリングすることができるので、整列手段による押圧時の、例えば棚部などへの引掛りやシート体の押圧完了等を検知することができる。したがって、上記整列工程をより正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、高精度な位置決めが可能であるとともに、燃料電池スタックを一括して高速で製造することが可能な燃料電池シート体の積層方法及び積層装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態における燃料電池シート体の積層装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図3】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図4】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図5】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図6】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図7】第1実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図8】第2実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図9】第2実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図10】第2実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図11】第2実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図12】第3実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図13】第3実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図14】第4実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
図15】第4実施形態における燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のその他の特徴及び詳細について発明を実施するための形態に基づいて詳述する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における燃料電池シート体の積層装置の概略構成を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池シート体の積層装置10は、垂直方向に互いに等間隔で離隔した複数の保持部12及び複数の保持部12を保持固定する支持部13を有し、互いに対向するように配設された一対の棚部11と、当該一対の棚部11を結ぶ直線と垂直な位置において互いに対向するように配設された一対の整列治具15とを備える。一対の棚部11及び一対の整列治具15は、それぞれ台座17に配設された一対のレール18及び一対のレール19上に固定にされている。
【0021】
なお、本実施形態では、一対の棚部11が一対のレール18に移動可能に固定されており、整列治具15の後方側が一対のレール19に移動可能に固定されている。
【0022】
保持部12及び支持部13を含む棚部11、並びに整列治具15は、如何なる材料から構成してもよいが、積層装置10の軽量化や以下に説明するようなシート体との当接の際におけるシート体の破損防止等の観点から樹脂等の材料から構成することが好ましい。
【0023】
同様に、一対のレール18及び一対のレール19を含む台座17も樹脂等から構成することができるが、棚部11及び整列治具15の安定保持のためSUSなどの金属から構成してもよい。
【0024】
次に、図1に示す積層装置10を用いて、燃料電池スタックを製造するための方法について説明する。
【0025】
図2図7は、図1に示す積層装置10を用いた積層方法を説明するための概略図である。なお、説明を明確に行うために、図2及び図3は、図1の矢印A方向から見た場合の側面を示す図であって、図4図6は、図1の矢印B方向から見た場合の側面を示す図である。また、図2及び図3では、整列治具15は省略している。
【0026】
また、本実施形態では、第1シートX及び第2シートYを交互に積層する場合について説明し、簡略化のためにシート数を合計5としている。第1シートXは例えば膜電極構造体とすることができ、第2シートYは例えばセパレータとすることができる。また第1シートX及び第2シートYは短辺と長辺を有する略矩形形状とされる。
【0027】
最初に、図2に示すように、一対の棚部11の複数の保持部13それぞれの上に、第1シートX及び第2シートYを交互に配置する。このとき、複数の保持部13の間隔は、第1シートX及び第2シートYを配置できるように、これらのシートの厚さより大きいことが必要であるが、その大きさは、例えば第1シートX及び第2シートYの厚さより3mmから10mm程度大きければよい。
【0028】
次いで、図2に示すように、移動可能に配設された一対の棚部11を、図示しない移動手段によって、レール18上を矢印方向に移動させ、図3に示すように、第1シートX及び第2シートYの両端の辺部が棚部11の壁面11Aに当接することで第1シートX及び第2シートYが複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧され、一対の棚部11の両方の壁面11Aに当接させる。なお、第1シートX及び第2シートYを保持部13上に配置する段階で、これらシートの端部が一対の棚部11の一方の壁面11Aに当接するようにしてもよい。
【0029】
次いで、図4に示すように、一対の整列治具15の内、移動可能に配設された後方の整列治具15を、図示しない移動手段によって、レール19上を矢印方向に移動させ、図5に示すように、第1シートX及び第2シートYの前後端の辺部が整列治具15の壁部15Aに当接することで、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧して整列させる。すると、図3及び図5に示すように、第1シートX及び第2シートYの前後左右の端部が揃えられ、これらシートに形成された貫通孔Hが重なり合うようになる。
【0030】
その後、図6に示すように、複数の第1シートX及び第2シートYの貫通孔Hに対して図示しないピン挿入手段によりピンを挿通する。その後、図示しない移動手段によって、一対の棚部11の複数の保持部13を第1シートX及び第2シートYの面方向外側に移動させ、第1シートX及び第2シートを固着させた後にピンを引き抜くことにより、図7に示すような第1シートX及び第2シートYの積層体、例えば膜電極構造体とセパレータとの積層体である燃料電池スタックを製造することができる。
【0031】
なお、上述のように、「ピン」なる文言の代わりに「バー」なる文言を用いてもよい。すなわち、本発明の実施形態における「ピン」は長さ方向に垂直な断面が立体的であって、長さ方向に略均一な太さで延在した部材を意味するものである。例えば、円柱状、四角柱状、多角柱状の部材などを使用することができる。
【0032】
このように本実施形態では、貫通孔Hが形成された第1シートX及び第2シートYを一対の棚部11の保持部12上に配置し、この保持部12上で面方向に整列させた後、保持部12上で第1シートX及び第2シートYの貫通孔Hを重ね合わせ、これら貫通孔Hに対してピン21を挿通させ、第1シートX及び第2シートYを積層するようにしている。したがって、従来と異なり、ガイド治具の切り欠きの幅が、発電セルの幅よりも大きいことに起因したような貫通孔の増大を抑制することができ、貫通孔の大きさを狭小化することができる。このため、貫通孔にピンを挿入した場合にピンの挿通状態が安定し、発電セルのスタックの際の位置ずれを防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、第1シートX及び第2シートYを棚部11の保持部12上で一括して積層している。このため、従来のような発電セルのみでなく、例えば、膜電極構造体を第1シートXとし、セパレータを第2シートYとして発電セルを製造すると同時に、この発電セルが積層してなる燃料電池スタックを製造することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、一対の棚部11で第1シートX及び第2シートYの両端の辺部を押圧して整列させ、一対の整列治具15で第1シートX及び第2シートYの前後端の辺部を押圧して整列させている。したがって、一対の棚部11及び一対の整列治具15は第1シートX及び第2シートYの整列手段を構成する。
【0035】
(第2実施形態)
図8図11は、本実施形態の燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。なお、これらの図は、第1実施形態の図4及び図5に相当するものである。
【0036】
また、本実施形態は、第2シートYの長さ(幅)が第1シートXの長さ(幅)よりも大きい場合の燃料電池シート体の積層方法を説明するものである。
【0037】
さらに、本実施形態における燃料電池シート体の積層装置は、図8図11に示すように、符号“25”及び符号“27”で示す一対の第1整列治具及び一対の第2整列治具を用いている点で第1実施形態における積層装置と異なり、その他の点では一致する。したがって、本実施形態の積層装置の特徴については、以下に説明する積層方法と合わせて説明する。
【0038】
最初に、第1実施形態の図2に示すように、一対の棚部11の複数の保持部13それぞれの上に、第1シートX及び第2シートYを交互に配置する。このときの配置は、側面視で同じ幅(長さ)を有する第1シートX及び第2シートYの端面が同じ向きとなるようにする。なお、複数の保持部13の間隔は第1実施形態と同じである。
【0039】
次いで、移動可能に配設された一対の棚部11を、図示しない移動手段によって、レール18上を矢印方向に移動させ、図3に示すように、第1シートX及び第2シートYの両端の辺部が棚部11の壁面11Aに当接することで第1シートX及び第2シートYが、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧され、一対の棚部11の両方の壁面11Aに当接させる。なお、第1シートX及び第2シートYを保持部13上に配置する段階で、これらシートの端部が一対の棚部11の一方の壁面11Aに当接するようにしてもよい。
【0040】
次いで、図8に示すように、凸部26を有する一対の第1整列治具25を準備し、一対の第1整列治具25の内、移動可能に配設された後方の第1整列治具25を、図示しない移動手段によって、レール19上を矢印方向に移動させ、図9に示すように、第1シートXの両端の辺部に凸部26を当接させて、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧して、第1シートXの前後端部を整列させる。
【0041】
次いで、図10に示すように、凸部26よりも小さい高さの凸部28を有する一対の第2整列治具27を準備し、一対の第2整列治具27の内、移動可能に配設された後方の第2整列治具27を、図示しない移動手段によって、レール19上を矢印方向に移動させ、図11に示すように、第2シートYの両端の辺部に凸部26を当接させて、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧して、第2シートYの前後端部を整列させる。
【0042】
すると、図3及び図11に示すように、第1シートX及び第2シートYの前後左右の端部が揃えられ、これらシートに形成された貫通孔Hが重なり合うようになる。
【0043】
その後、第1実施形態の図6に示すように、複数の第1シートX及び第2シートYの貫通孔Hに対して図示しないピン挿入手段によりピンを挿通する。その後、図示しない移動手段によって、一対の棚部11の保持部13を第1シートX及び第2シートYの面方向外側に移動させ、第1シートX及び第2シートを固着させた後にピンを引き抜くことにより、長さ(幅)の異なる第1シートX及び第2シートYの積層体、例えば膜電極構造体とセパレータとの積層体である燃料電池スタックを製造することができる。
【0044】
その他の特徴及び作用効果について第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0045】
(第3実施形態)
図12及び図13は、本実施形態の燃料電池シート体の積層方法を説明するための概略図である。なお、これらの図は、第1実施形態の図4及び図5に相当するものである。
【0046】
また、本実施形態は、第2シートYの長さ(幅)が第1シートXの長さ(幅)よりも大きい場合の燃料電池シート体の積層方法を説明するものである。
【0047】
さらに、本実施形態における燃料電池シート体の積層装置は、図12及び図13に示すように、符号“29”で示す一対の整列治具を用いている点で第1実施形態及び第2実施形態における積層装置と異なり、その他の点では一致する。したがって、本実施形態の積層装置の特徴については、以下に説明する積層方法と合わせて説明する。
【0048】
最初に、第1実施形態の図2に示すように、一対の棚部11の複数の保持部13それぞれの上に、第1シートX及び第2シートYを交互に配置する。このときの配置は、側面視で同じ幅(長さ)を有する第1シートX及び第2シートYの端面が同じ向きとなるようにする。なお、複数の保持部13の間隔は第1実施形態と同じである。
【0049】
次いで、移動可能に配設された一対の棚部11を、図示しない移動手段によって、レール18上を矢印方向に移動させ、図3に示すように、第1シートX及び第2シートYの両端の辺部が棚部11の壁面11Aに当接することで第1シートX及び第2シートYが、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧され、一対の棚部11の両方の壁面11Aに当接させる。なお、第1シートX及び第2シートYを保持部13上に配置する段階で、これらシートの端部が一対の棚部11の一方の壁面11Aに当接するようにしてもよい。
【0050】
次いで、図12に示すように、凸部26と当該凸部26よりも小さい高さの凸部28が交互に配設された一対の整列治具29を準備する。次いで、一対の整列治具29の内、移動可能に配設された後方の整列治具29を、図示しない移動手段によって、レール19上を矢印方向に移動させ、図13に示すように、第1シートXの両端の辺部に凸部26を当接させるとともに、第2シートYの両端の辺部に凸部28を当接させて、複数の保持部13と平行かつそれらシートの面方向に押圧して、第1シートX及び第2シートYの前後端部を整列させる。
【0051】
すると、図3及び図13に示すように、第1シートX及び第2シートYの前後左右の端部が揃えられ、これらシートに形成された貫通孔Hが重なり合うようになる。
【0052】
その後、第1実施形態の図6に示すように、複数の第1シートX及び第2シートYの貫通孔Hに対して図示しないピン挿入手段によりピンを挿通する。その後、図示しない移動手段によって、一対の棚部11の複数の保持部13を第1シートX及び第2シートYの面方向外側に移動させ、第1シートX及び第2シートを固着させた後にピンを引き抜くことにより、長さ(幅)の異なる第1シートX及び第2シートYの積層体、例えば膜電極構造体とセパレータとの積層体である燃料電池スタックを製造することができる。
【0053】
すなわち、本実施形態では、単一の整列治具29の使用のみで上記燃料電池スタックを製造することができ、第1整列治具25及び第2整列治具27を使用し、それぞれ第1シートX及び第2シートYの前後端部を整列させる第2実施形態に比較して、1回で第1シートX及び第2シートYの前後端部を整列させることができる。すなわち、本実施形態は、第2実施形態に比較して燃料電池スタックの製造工程を簡略化することができる。
【0054】
その他の特徴及び作用効果について第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0055】
(第4実施形態)
本実施形態では、第2実施形態の第1整列治具25及び第2整列治具27の、移動可能に配設されたそれぞれの治具に荷重センサが取り付けられている点で、第2実施形態と相違する。
【0056】
図14に示すように、移動可能に配設された第1整列治具25に荷重センサ31が取り付けられていることにより、この第1整列治具25が第1シートXを押圧する際の、当該第1整列治具25の押圧途中での棚部11等との引掛りや、第1シートXの押圧完了などの、第1整列治具25の押圧状態を適宜モニタリングすることができる。したがって、第1シートXの前後端部をより正確に整列させることができる。
【0057】
同様に、図15に示すように、移動可能に配設された第2整列治具27に荷重センサ32が取り付けられていることにより、この第2整列治具27が第2シートYを押圧する際の、当該第2整列治具27の押圧途中での棚部11等との引掛りや、第2シートYの押圧完了などの、第2整列治具27の押圧状態を適宜モニタリングすることができる。したがって、第2シートYの前後端部をより正確に整列させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、第2実施形態の整列治具25,27に荷重センサを取り付けたが、第1実施形態の整列治具15や第3実施形態の整列治具29に荷重センサを取り付けることもできる。
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0060】
例えば、本実施形態における棚部の保持部は互いに等間隔に配設しているが、上記作用効果を奏する限り、異なる間隔としてもよい。また、保持部は棚部の支持部に対して垂直に配設されていることが好ましいが、例えば、上記作用効果を奏する限り、数度程度の範囲で傾斜していてもよい。
【0061】
また、第2実施形態及び第3実施形態では、幅あるいは長さの異なるシートX及びシートYを積層させているが、幅及び長さの異なるシートX及びシートYを積層させることもできる。この場合、棚部11における壁面11AとシートX及びシートYまでの長さをシートX及びシートYに合わせてそれぞれ変化させる。
【0062】
また、第1実施形態から第4実施形態では第1シート体X及び第2シート体Yそれぞれの辺部を整列手段が押圧するように構成したが、これに限らず、例えば整列手段により、略矩形形状の第1シート体X及び第2シート体Yの対向する角部を押圧してもよい。具体的には、整列手段は棚部11にこれらシート体の対向する角部にそれぞれの短辺と長辺の2辺両方に当接する一対の壁面11Aを設け、棚部を複数の保持部と並行かつそれらシートの面方向の中心に向けて押圧して、一対の棚部11の両方の壁面11Aに当接させる。これにより1回の整列により第1シートX及び第2シートYの前後左右の端部が揃えられ、これらシートに形成された貫通孔Hが重なり合うようになる。
【0063】
また、各実施形態では、棚部11の壁面11Aでシート体を押圧して整列手段としたが、これに限らず、棚部11の複数の保持部12のそれぞれに燃料電池のシート体を配置し、棚部11とは別の整列手段によって複数のシート体を面方向の中心に向けて押圧して整列し、整列された複数のシート体の貫通孔にピンを挿通した後に棚部の保持部12を面方向外側に移動手段によって移動させてもよい。この場合、棚部11の壁面11Aによってシート体を移動させる場合と比べ、保持部12の移動時間が短縮でき、サイクルタイムを削減できる。
【0064】
また、第1シートXを膜電極構造体、第2シートYをセパレータとして別な要素として説明したが、第1シートXと第2シートYを同じ要素としても良く、具体的には膜電極構造体とセパレータを一体化したユニットを複数積層する積層装置にも好適に利用できる。また、シートの種類を3つ以上としてもよく、例えば第1シートXをカソード電極体、第2シートYを電解質膜、第3シートZをアノード電極体としてもよい。このように構成することにより、発電セルを一括で高速で整列させることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 燃料電池シート体の積層装置
11 棚部
12 保持部
13 支持部
15,29 整列治具
17 台座
18,19 レール
21 ピン
25 第1整列治具
26,28 凸部
27 第2整列治具
31,32 荷重センサ
H 貫通孔
X 第1シート
Y 第2シート
図1
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