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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】障害の治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221118BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20221118BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221118BHJP
   A61K 47/34 20170101ALN20221118BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61P17/00
A61P17/06
A61P37/08
A61P11/06
A61P19/02
A61P27/02
A61P1/02
A61K9/19
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/14
A61K9/107
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/70 401
A61K39/395 M
A61P37/06
C07K16/24
C12N15/13
A61K47/34
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019500796
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 GB2017052021
(87)【国際公開番号】W WO2018011555
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1612043.8
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518247933
【氏名又は名称】クレッシェンド、バイオロジックス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRESCENDO BIOLOGICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】カレン、バニスター
(72)【発明者】
【氏名】ウラ、ラシュマー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ペティット
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、サンダル
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516945(JP,A)
【文献】特表2012-507553(JP,A)
【文献】DAUGHERTY ANN L; MRSNY RANDALL J,CHAPTER 8: FORMULATION AND DELIVERY ISSUES FOR MONOCLONAL ANTIBODY THERAPEUTICS,CURRENT TRENDS IN MONOCLONAL ANTIBODY DEVELOPMENT AND MANUFACTURING,米国,SPRINGER,2010年01月01日,PAGE(S):103 - 129,http://dx.doi.org/10.1007/978-0-387-76643-0_8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 - 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、少なくとも1種類の単一可変重鎖ドメイン抗体、
b)70~110mMのトリス/グリシン、100~125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、~30%のプロピレングリコール、および7.5~10%のソルビトールを含んでなり、pHが7.5~8.5であり、
前記単一可変重鎖ドメイン抗体が、配列番号2を有するCDR1、配列番号3を有するCDR2、および配列番号4を有するCDR3を含んでなり、かつ、前記単一可変重鎖ドメイン抗体が配列番号1または配列番号74を含んでなる、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、90~110mMのトリス/グリシン、100~125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、7.5~10%のソルビトール、および6%のプロピレングリコールを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が局所投与に好適である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
浸透促進剤をさらに含んでなり、好ましくは前記浸透促進剤がトランスクトール(商標) ステアレス-20、ステアレス-2、オクチルデカノール、またはミリスチン酸イソプロピルから選択され、および/または
粘度調整剤をさらに含んでなり、好ましくは前記粘度調整剤がポロキサマーである、請求項1~のいずれか一項に記載の記載の組成物。
【請求項5】
単一ドメイン抗体の濃度が10mg/ml~50mg/mlであり、および/または
2~8℃、20~25℃、または-70℃で少なくとも1、2、3、6、または12か月間の保存時に安定である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
疾患の治療のための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記疾患が皮膚障害であり、好ましくは前記皮膚障害が乾癬、脊椎関節症、ブドウ膜炎、歯肉炎またはアトピー性皮膚炎から選択され、または前記疾患が自己免疫疾患であり、好ましくは前記自己免疫疾患が喘息である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
投与が局所的である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
a)ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる、少なくとも1種類の単一可変重鎖ドメイン抗体、および
b)70~110mMのトリス/グリシン、100~125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、4~30%のプロピレングリコール、および7.5~10%のソルビトールを含んでなり、pHが7.5~8.5であり、
前記単一可変重鎖ドメイン抗体が、配列番号2を有するCDR1、配列番号3を有するCDR2、および配列番号4を有するCDR3を含んでなり、かつ、前記単一可変重鎖ドメイン抗体が配列番号1または配列番号74を含んでなる、凍結形態または噴霧乾燥形態に調製するための組成物
【請求項10】
前記組成物が、90~110mMのトリス/グリシン、100~125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、7.5~10%のソルビトール、および6%のプロピレングリコールを含んでなる、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
再構成剤をさらに含んでなる、請求項9または10に記載の組成物を含んでなる、再構成された凍結形態または噴霧乾燥形態に調製するための組成物
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物と、場合により使用説明書とを含んでなり、場合により再構成剤をさらに含んでなる、キット。
【請求項13】
請求項9または10に記載の組成物を準備することと、再構成剤を添加することを含んでなる、局所投与用の再構成処方物を作製するための方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、局所投与用のクリーム、ローション、ゲル、または液体。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を作製するための方法であって、賦形剤と、IL-17Aと結合することができる単一ドメイン抗体とを合わせることを含んでなり、前記単一ドメイン抗体が配列番号1または配列番号74を含んでなり、前記組成物が、70~110mMのトリス/グリシン、100~125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、4~30%のプロピレングリコール、および7.5~10%のソルビトールを含んでなり、かつ、前記組成物のpHが7.5~8.5である、方法。
【請求項16】
請求項9または11に記載の組成物を含んでなる、液体、クリーム、粉末、ローション、ゲル、包帯、パッチ剤、または硬膏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に局所投与のための、IL-17A結合分子を含んでなる安定かつ非凝集性の組成物、および疾患の治療におけるこのような組成物の使用に関する。
【0002】
緒論
乾癬は、世界の人口の2~3%(約1億2千5百万人の患者)に影響を及ぼす慢性再発型および寛解型の炎症性皮膚疾患であり、主として臨床再燃と皮膚の目に付く領域の美観を損ねる病変、全身症状および薬物関連副作用のために重大な病的状態と生活の質の低下を招く。「尋常性乾癬斑」と呼ばれるこの疾患の一般形態は80%を超える患者に見られ、最小のものから皮膚表面全体の関与まで大きさが異なり得る紅斑性鱗状斑(一般に、肘、膝、頭皮および臀部)を特徴とする。
【0003】
体表面積(BSA)関与の程度に応じて、乾癬は、軽度(<3%BSA関与)、中等度(3~10%BSA)および重度(>10%BSA)疾患に分類することができる。コルチコステロイド、ビタミンD誘導体、コールタールおよび局所用レチノイドなど局所用薬剤は、乾癬の初期管理の基礎であり、疾患の重篤度のスペクトルにわたって患者に適用される治療ラダーの重要な部分である。軽度~中等度疾患と診断された患者は一般に、単剤療法として局所用薬剤を処方される。重度疾患を有する患者は一般に、光線療法またはメトトレキサート、シクロスポリンもしくは経口レチノイドなどの全身(小分子)療法の補助として局所用薬剤を処方される。中等度~重度乾癬の治療計画にはまた、抗体に基づく療法も含まれる。
【0004】
現在、乾癬治療の市場にある治療製品は、様々な程度の症状緩和を与え、再発率を引き下げるが、現在のところ治療法と見なされるものはなく、従って、長期投与を必要とする。多くの既存の局所用薬剤は短期間有効であり得るが、治療制限毒性のためにほとんどのものが短期間の使用に制限される。このことは、患者が副作用の日常的監視と新しい治療プロトコールへの定期的循環を必要とすることを意味する。
【0005】
重度疾患を有する患者は一般に、光線療法またはメトトレキサート、シクロスポリンもしくは経口レチノイドなどの全身(小分子)療法の補助として局所用薬剤を処方される(Nast et al., Arch Dermatol Res (2007) 299:111-138)。光線療法は有効であり得るが、不便であり、皮膚癌の重大なリスクを伴う。小分子全身療法は、心血管リスクの増大、腎機能障害、白血球減少および血小板減少症を伴う。例えば、メトトレキサートは、好中球減少症および肝障害を引き起こすことがあり、予防措置なしに生殖年齢の男性および女性には禁忌である。シクロスポリンは、強力な免疫抑制剤であり、腎臓および血圧に対して潜在的有害作用がある。アシトレチンは、一定範囲の副作用を有する経口レチノイドであり、これもまた予防措置なしに生殖年齢の女性には禁忌である(Nast et al., Arch Dermatol Res (2007) 299:111-138)。
【0006】
中等度~重度乾癬の治療計画にはまた、抗体に基づく療法も含まれる。承認済みの治療としては、TNF-アルファ(α)に対して活性を有するヒト化モノクローナル抗体であるアダリムマブ(ヒュミラ(Humira)(商標))、TNF-α阻害剤エタネルセプト(エンブレル(Enbrel)(商標))、TNF-α阻害剤インフリキシマブ(レミケード(Remicade)(商標))およびさらに最近では、IL-12およびIL-23の共通p40サブユニットを標的とし、それにより両サイトカインのシグナル伝達を遮断するヒトmAbであるウステキヌマブ(ステラーラ(Stelara)(商標))が含まれる。
【0007】
近年では、Th17経路の重要性は乾癬において十分にバリデートされるようになっており、IL-17を標的とするいくつかのモノクローナル抗体(mAb)は、これらのサイトカインを調節し、乾癬に影響を与えることの大きな重要性を示している。T細胞由来サイトカインであるIL-17は、皮膚における局所療法の標的である。乾癬は、患者によっては全身成分を有することがあるが、この疾患は主として皮膚のものである。Th17細胞により分泌されたIL-17は表皮ケラチノサイトに対して、これらの細胞上に存在するIL-17R複合体を介して働き、ケラチノサイトヘルパーの増殖と進行中の炎症のフィードバックループを誘導し、それにより乾癬斑を生成する。病的活性の主要な要素は皮膚に局在し、従って、IL-17/IL-17R相互作用の阻害は、局所療法の最もよくバリデートされた標的であると考えられる。これは、活性の重要な相が所属リンパ節にあるIL-23などの他のバリデート済みのTh17標的とは対照的である。
【0008】
いくつかの他のモノクローナル抗体薬剤は、中等度~重度の乾癬斑を有する患者の疾患重篤度を著しく軽減することが示されている。これらの薬剤には、イキセキズマブ(トルツ(Taltz)(商標))およびセクキヌバブ(コセンティクス(Costentyx)(商標))(両方ともIL-17Aを標的とする)、ならびにIL-17RAと結合してそのシグナル伝達を阻害し、従って、IL-17A、IL-17F、IL-17A/FおよびおそらくはIL-17Eを含むこの受容体を利用するIL1-7ファミリーメンバーを遮断すると思われるブロダルマブ(シリク(Siliq)(商標))が含まれる。IL-17阻害剤に関する予備的な臨床結果は、乾癬病態生理学におけるIL-17Aの重要性を示す。実質的確証第III相臨床試験までを含む独立した臨床試験プログラムでは、3つ総ての薬剤が中等度~重度の乾癬斑を有する患者において疾患重篤度を著しく軽減することを報告している。セクキヌバブは、サイトカイン、ケモカインおよび病変皮膚における炎症性応答に関連するタンパク質を下方調節することが示されている。要するに、IL-17Aの阻害は、選択的介入が乾癬斑における調節不全の免疫系に接近することを可能とする(Girolomoni et al., The British Journal of Dermatology. 2012a; 167(4):717-724, Huebner et al., Gut 2012; 61: 1693-700, Papp et al., New Engl J Med 2012; 366: 1181-9, Mease et al., N Engl J Med. 2014 12;370(24):2295-306 and Langley et al., New Engl J Med 2014; 371: 326-38)。
【0009】
現在、乾癬治療の市場にある治療製品は、様々な程度の症状緩和を与え、再発率を引き下げるが、現在のところ治療法と見なされるものはなく、従って、長期投与を必要とする。多くの既存の局所用薬剤は短期間有効であり得るが、治療制限毒性のためにほとんどのものが短期間の使用に制限される。このことは、患者が副作用の日常的監視と新しい治療プロトコールへの定期的循環を必要とすることを意味する。光線療法は有効であり得るが、不便であり、皮膚癌の重大なリスクを伴い、多くの従来の(小分子)全身療法は、心血管リスクの増大、腎機能障害、白血球減少および血小板減少症を伴う。全身性の生物製剤は中等度~重度の乾癬の治療を変容させたが、免疫抑制計画と同様に、長期使用は感染または悪性腫瘍のリスクの増大などの重大な副作用を有する可能性がある。治療計画は、回転療法または逐次療法、休薬、および併用療法を含む、毒性を軽減するための戦略を採用することにより、このことを考慮しなければならない。重要なこととして、数種の薬物については、どの患者も安全に受容できる暴露に対して絶対的な寿命限界がある。
【0010】
IL-17ファミリーのサイトカインには、IL-17/IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E/IL-25、およびIL-17Fの6つのメンバーが含まれ、これらは複数の細胞種によって産生される。このファミリーのメンバーは、システインノット折り畳み構造を含む保存性の高いC末端を有する。ほとんどのIL-17タンパク質はジスルフィド結合した二量体として分泌され、例外として非共有結合ホモ二量体として分泌されるIL-17Bがある。
【0011】
IL-17ファミリーサイトカインによるシグナル伝達は、IL-17受容体ファミリーのメンバーであるIL-17R/IL-17RA、IL-17BR/IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REにより媒介される。これらの受容体の活性化は、炎症性サイトカインおよび抗微生物ペプチドの産生を誘導する細胞内経路を惹起する。IL-17A、IL-17F、およびIL-17A/Fは、主として、活性化されたT細胞により産生され、IL-17RAとIL-17RCからなるオリゴマー化受容体複合体を介してシグナルを伝達する。この複合体に対するリガンドの結合は、細胞内アダプタータンパク質Act1およびTRAF-6の動員、および下流の転写因子NFκB、AP-1、およびC/EBPの活性化をもたらす。IL-17Eは、IL-17RAおよびIL-17BR/IL-17RBにより形成される受容体複合体を介して類似のシグナル伝達経路を活性化する。IL-17Eによるシグナル伝達は、Th2型免疫応答を誘導し、喘息の病因の促進に関与する可能性がある。他のIL-17ファミリーサイトカインによって活性化されるシグナル伝達経路についてはあまり知られていない。最近の研究では、IL-17Cは主として上皮細胞により産生され、IL-17RAとIL-17REからなる受容体複合体と結合することが示唆されている。上皮細胞におけるIL-17Cによる自己分泌シグナル伝達は、抗微生物ペプチドおよび炎症性サイトカインの産生を刺激するが、IL-17Aと同様に、IL-17Cの過剰発現は、自己免疫疾患の発症に寄与し得る。IL-17Eと同様に、IL-17BはIL-17BR/IL-17RBに結合するが、主要な標的細胞およびIL-17Bシグナル伝達の効果は報告されてない。加えて、IL-17Dに対する受容体およびIL-17RDのリガンドも現在知られていない。
【0012】
ヒトIL17Aに結合する単一ドメイン抗体は、その全内容は引用することにより本明細書の一部とされるWO2016/113557に記載されている。
【0013】
IL-17経路は、乾癬および喘息などの疾患の発症に主要な役割を果たす。IL-17は、表皮層のケラチノサイト細胞を傷害し、崩壊させる炎症性応答に寄与することによって乾癬を促進させる。疾患におけるそれらの役割のために、IL-17阻害剤は、種々の疾患に対する潜在的治療として検討されている。しかしながら、安定かつ活性なタンパク質処方物、特に、局所送達用のものの開発は、タンパク質の物理的および化学的安定性、タンパク質処方物の製造、保存、および送達に関する問題のために困難な課題となり得る。
【0014】
上記で示されているように、局所用および全身用の両方のための、IL-17シグナル伝達に関連する疾患の新たな有効かつ安全な治療選択肢の必要がある。特に、この分野における、特に、局所用処方物のための安定な薬物処方物の必要がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、局所投与のための、ヒトIL-17Aと結合することができる単離された結合分子、特に、抗体またはそのフラグメントを含んでなる医薬組成物および処方物に関する。好ましいフラグメントは、単一ドメイン抗体、特に、単一可変重鎖ドメイン抗体である。
【0016】
一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一可変重鎖ドメイン抗体、
b)10~150mMのトリス/グリシン
を含んでなる組成物に関し、前記本発明のpHは約5~約9である。
【0017】
例えば、前記単一可変重鎖ドメイン抗体は、配列番号4を有するCDR3を含んでなる。別の実施形態では、前記単一可変重鎖ドメイン抗体は、配列番号2を有するCDR1、配列番号3を有するCDR2および配列番号4を有するCDR3を含んでなる。別の実施形態では、前記単一可変重鎖ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる。別の実施形態では、前記単一可変重鎖ドメイン抗体は、配列番号74またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる。
【0018】
一つの実施形態では、前記組成物は、以下の賦形剤:0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、0.1~15%のソルビトールおよび/または0.1~30%のプロピレングリコールのうち1以上をさらに含んでなる。
【0019】
一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体、ここで、前記単一ドメイン抗体ドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、b)10~150mMのトリス/グリシン、および場合により以下の賦形剤:0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、0.1~15%のソルビトールおよび/または0.1~30%のプロピレングリコールのうち1以上を含んでなる組成物を提供し、前記組成物βのpHは約5~約9である。
【0020】
この組成物は、液体、噴霧乾燥形態または凍結乾燥形態であり得る。
【0021】
一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体、ここで、前記単一ドメイン抗体ドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、
b)50~150mMのトリス/グリシン、
c)50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
d)5~15%のソルビトール、および
e)4~30%のプロピレングリコール
を含んでなる組成物に関し、前記組成物のpHは約5~約9である。
【0022】
一つの実施形態では、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の単一ドメイン抗体、ここで、前記単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、
b)約100mMのトリス/グリシン、
c)約125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
d)約10%のソルビトール、および
e)約6%のプロピレングリコール
を含んでなる組成物に関し、前記組成物のpHは7.5~8.5、例えば約8である。
【0023】
一つの側面において、本発明は、疾患の治療における上記のような組成物の使用に関する。
【0024】
一つの実施形態では、薬剤は、局所投与に好適である。
【0025】
一つの側面において、本発明は、上記のような組成物の治療上有効な量を投与することを含んでなる、疾患を治療する方法に関する。
【0026】
一つの側面において、本発明は、疾患の治療における使用のための、上記のような組成物に関する。
【0027】
一つの実施形態では、疾患は、皮膚障害、例えば、乾癬、脊椎関節症、ブドウ膜炎、歯肉炎またはアトピー性皮膚炎から選択される。
【0028】
一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体、例えば、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる単一ドメイン抗体、
b)10~150mMのトリス/グリシン
を含んでなる凍結または噴霧乾燥組成物に関し、前記組成物のpHは約5~約9である。
【0029】
一つの側面において、本発明は、プロピレングリコールおよび/またはソルビトールなどの再構成剤をさらに含んでなる上記のような組成物を含んでなる、再構成された凍結乾燥または噴霧乾燥組成物に関する。
【0030】
一つの側面において、本発明は、上記のような組成物と場合により使用説明書とを含んでなるキットに関する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、上記のような組成物を含んでなる容器、例えば、ネブライザーまたは吸入器に関する。
【0032】
別の側面において、本発明は、上記のような組成物を準備することと、プロピレングリコールなどの再構成剤を添加することを含んでなる、局所投与用の再構成処方物を作製するための方法に関する。
【0033】
別の側面において、本発明は、上記のような組成物を含んでなる、局所投与用のクリーム、軟膏、ローション、ゲル、パッチ剤、硬膏、包帯、蒸気または粉末または液体に関する。
【0034】
別の側面において、本発明は、ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の単一ドメイン抗体、例えば、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる単一ドメイン抗体を含んでなる処方物の調製における、10~150mMのトリス/グリシンを含んでなるバッファーの使用に関する。
【0035】
一つの実施形態では、バッファーは、
a)約100mMのトリス/グリシン、
b)約125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
c)約10%のソルビトール、および
d)約6%のプロピレングリコール
を含んでなり、前記組成物のpHは7.5~8.5、例えば約8である。
【0036】
一つの側面において、本発明は、上記のような原薬バッファーとIL-17分子結合分子を合わせることを含んでなる、上記のような組成物を作製するための方法に関する。
【0037】
一つの側面において、本発明は、ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の単一ドメイン抗体(ここで、例えば、単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる)を10~150mMのトリス/グリシンを含んでなるバッファーに添加することを含んでなる、障害の治療のための処方物を調製するための方法に関する。
【0038】
本発明を以下の非限的的な図面でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】上位4つの原薬処方物に対する6週間加速安定性試験(各処方物に関して左から右へと示すT=0~T=6)。
図2】3か月にわたる2~8℃保存の、原薬バッファー中40mg/mLの抗IL-17A V1.1(配列番号74)の安定性。SE-HPLCを用いて測定。
図3】3か月にわたる2~8℃保存の、原薬バッファー中40mg/mLの抗IL-17A V1.1(配列番号74)。SDS pageを用いて測定。
図4】in vitro乾癬皮膚モデルにおいて処方物中の抗IL-17A V1.1(配列番号74)によって阻害された幾つかのバイオマーカーの遺伝子発現。X軸:供試処方物およびバイオマーカー。Y軸:遺伝子発現の誘導百分率。
図5】in vitro乾癬皮膚モデルにおける処方物中のV1.1(配列番号74)によるサイトカイン/ケモカイン阻害。X軸:供試処方物およびサイトカイン/ケモカイン。Y軸:サイトカイン/ケモカインの放出百分率。
図6】蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ原理の実例。
図7】Gyros V1.1アッセイの実例。
図8】CCL20は、in vitro乾癬モデルにおいて、処方物中の局所的抗IL-17A V1.1(配列番号74、100μl)(低用量であっても)により阻害される。
図9】乾癬皮膚構築物を用いた、局所適用される選択的処方物中のV1.1(配列番号74)によるCCL20放出試験-96時間。供試処方物は表3~5の通り。
図10】RET分析を用いた、選択的処方物中の抗IL-17A V1.1(配列番号74)による乾癬組織サンプルの浸透。供試処方物は表3~5の通り。
図11】5℃で12か月の原薬処方物および付加的処方物の安定性。SE HPLC。
図12】-20℃で12か月の原薬処方物および付加的処方物の安定性。SE HPLC。
図13】SE-HPLCを用いた、-70℃で12か月の原薬処方物および付加的処方物の安定性。
図14】SE-HPLCを用いた、-70℃でのバルク原薬に対する安定性試験の12か月データ。
図15】IEX-HPLCを用いた、-70℃でのバルク原薬に対する安定性試験の12か月データ。
図16】SDS PAGEを用いた、-70℃でのバルク原薬に対する安定性試験の12か月データ。
図17】SE-HPLCを用いた、-70℃でのバルク原薬(PG不含処方物)に対する安定性試験の12か月データ。
図18】IEX-HPLCを用いた、-70℃でのバルク原薬(PG不含処方物)に対する安定性試験の12か月データ。
図19】SDS PAGEを用いた、-70℃でのバルク原薬(PG不含処方物)に対する安定性試験の12か月データ。
【0040】
詳細な説明
以下、本発明をさらに説明する。以下の節で、本発明の種々の側面がより詳細に定義される。このように定義される各側面は、そうではないことが明示されない限り、他のいずれの1または複数の側面と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示されているいずれの特徴も、好ましいまたは有利であると示されている他のいずれの1または複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0041】
一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、病理学、腫瘍学、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関して使用される名称およびその技術は、当技術分野で周知かつ慣用されるものである。本開示の方法および技術は一般に、当技術分野で周知であり、また、そうではないことが示されない限り、本明細書中に引用および記述されている種々の一般的な、またより特殊な参照文献に記載されているような従来法に従って実施される。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第4版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2012))参照。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従い、当技術分野で一般に遂行されるように、または本明細書に記載されるように実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、医化学および製薬化学に関して使用される名称、ならびにその実験室手順および技術は当技術分野で周知かつ慣用されるものである。化学合成、化学分析、医薬製剤、処方、および送達、ならびに患者の治療には標準的技術が使用される。
【0042】
本発明者らは、単離されたIL-17A結合分子が本明細書に記載されるような好適な賦形剤を用いて局所送達用に処方できることを実証した。よって、本発明は、IL-17A結合分子を含んでなる、安定かつ非凝集性の組成物/処方物、特に、局所送達に好適な組成物および処方物を提供する。一つの側面において、本発明は、凍結または噴霧乾燥組成物として処方されるこのような組成物を提供する。これらは投与のために再構成することができる。別の側面において、本発明は、液体、ゲル、クリーム、ローション、軟膏もしくは粉末吸入のため蒸気として処方される組成物、または硬膏もしくはパッチ剤などを用いて投与される組成物を提供する。
【0043】
よって、一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の結合分子、例えば、少なくとも1種類の単一ドメイン抗体、および
b)10~150mMのトリス/グリシン
を含んでなる組成物を提供し、前記組成物のpHは約5~約9である。
【0044】
本明細書でさらに説明されるように、一つの実施形態では、IL-17A結合分子は、好ましくは単一ドメイン抗体(sdAb)から選択される。一つの実施形態では、単一ドメイン抗体は、単一可変ドメイン抗体である。一つの実施形態では、単一可変ドメインは、重鎖可変ドメインである。一つの実施形態では、IL-17A結合分子は、ヒトIL-17Aと結合することができるVまたはVHHドメインを含んでなる少なくとも1種類の単一ドメイン抗体(「VまたはVHH単一ドメイン抗体」)から選択される。Vドメインは一般に、ヒト可変重鎖ドメインと呼ばれると理解される。VHHドメインは一般に、ラクダ科動物可変重鎖ドメインと呼ばれると理解される。
【0045】
本発明の組成物の一つの実施形態では、組成物は、ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体を含んでなり、ここで、前記Vドメインは、アミノ酸残基GEILPLYFDY(配列番号4)を有するCDR3配列を含んでなる配列、または配列番号4と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有する配列を有するCDR3を含んでなる配列を有する。一つの実施形態では、前記CDR3配列は、配列番号4の変異体であり、かつ前記配列番号4の1以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失を含んでなる。
【0046】
一つの実施形態では、前記Vドメインは、アミノ酸残基SYSMY(配列番号2)を有するCDR1、または1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸改変を有する配列を有する配列を含んでなる。一つの実施形態では、前記CDR1配列は、配列番号2の変異体であり、かつ前記配列番号2の1以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加または欠失を含んでなる。
【0047】
一つの実施形態では、前記Vドメインは、アミノ酸残基EIKQDGSVQYYVSDVKG(配列番号3)を有するCDR2、または配列番号3と少なくとも80%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有する配列を含んでなる。一つの実施形態では、前記CDR2配列は、配列番号3の変異体であり、かつ前記配列番号3の1以上のアミノ酸残基の置換、付加、挿入または欠失を含んでなる。
【0048】
一つの実施形態では、Vドメインは、CDR1、CDR2およびCDR3を有し、ここで、前記CDR1は、配列番号2または1以上のアミノ酸残基の置換、付加もしくは欠失を含んでなるその変異体を有し、前記CDR2は、配列番号3、または1以上のアミノ酸残基の置換、付加、挿入もしくは欠失を含んでなるその変異体を有し、かつ、前記CDR3は、配列番号4、または1以上のアミノ酸残基の置換、付加、挿入または欠失を含んでなるその変異体を有する。一つの実施形態では、Vドメインは、CDR1、CDR2およびCDR3を有し、ここで、前記CDR1は配列番号2を有し、前記CDR2は配列番号3を有し、かつ、前記CDR3は配列番号4を有する。
【0049】
別の実施形態では、前記Vドメインは、配列番号1、またはそれと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%もしくは75%の相同性を有する配列を含んでなる、またはからなる。配列番号1を以下に示す。
配列番号1(CDR1、2および3を太字と下線で示す)
【化1】
【0050】
本明細書でさらに説明されるように、一つの側面において、1以上の任意選択の賦形剤を、特に、局所送達のために、上記の組成物に添加することができる。局所送達は、本明細書において身体の特定のスポットへの投与を表すために使用され、身体表面への投与ならびに局所用薬剤による肺投与を含む。局所投与は皮膚、眼、歯肉、膜または肺に対するものであり得る。第2の側面において、上記の本発明の組成物は、1以上の任意選択の賦形剤とともに凍結または噴霧乾燥させることができる。このような組成物は、投与前に局所送達に好適な1以上の賦形剤で再構成してもよい。
【0051】
本開示を通して、百分率および比などの表現は総て、そうではないことが示されない限り「重量」によるものである。本明細書で使用する場合、「重量」は用語「質量」と同義であり、本明細書に定義される比または百分率が容量、厚さ、または他の何らかの尺度ではなく重量に従って定義されることを示す。
【0052】
本発明は、医薬組成物および処方物である処方物および組成物に関する。本明細書で使用する場合、用語「処方物」または「組成物」は、有効分子と薬学的に許容可能な賦形剤との組合せを表す。用語「医薬組成物」または「医薬処方物」は、有効成分の生物活性を有効とさせるような形態にある製剤を指す。用語「薬学的に許容可能な」とは、重大な有害医学事象なく動物(例えば、哺乳動物)に投与することができる化合物またはタンパク質を指す。
【0053】
IL-17ファミリーのサイトカインには、IL-17/IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E/IL-25、およびIL-17Fの6つのメンバーが含まれ、これらは複数の細胞種によって産生される。このファミリーのメンバーは、システインノット折り畳み構造を含む保存性の高いC末端を有する。ほとんどのIL-17タンパク質は、非共有結合ホモ二量体として分泌されるIL-17Bの例外があるが、ジスルフィド結合した二量体として分泌される。
【0054】
IL-17ファミリーサイトカインによるシグナル伝達は、IL-17受容体ファミリーのメンバーであるIL-17R/IL-17RA、IL-17BR/IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REにより媒介される。これらの受容体の活性化は、炎症性サイトカインおよび抗微生物ペプチドの産生を誘導する細胞内経路を惹起する。IL-17A、IL-17F、およびIL-17A/Fは、主として、活性化されたT細胞により産生され、IL-17RAとIL-17RCからなるオリゴマー化受容体複合体を介してシグナルを伝達する。この複合体に対するリガンドの結合は、細胞内アダプタータンパク質Act1およびTRAF-6の動員、および下流の転写因子NFκB、AP-1、およびC/EBPの活性化をもたらす。IL-17Eは、IL-17RAおよびIL-17BR/IL-17RBにより形成される受容体複合体を介して類似のシグナル伝達経路を活性化する。IL-17Eによるシグナル伝達は、Th2型免疫応答を誘導し、喘息の病因の促進に関与する可能性がある。他のIL-17ファミリーサイトカインによって活性化されるシグナル伝達経路についてはあまり知られていない。最近の研究では、IL-17Cは主として上皮細胞により産生され、IL-17RAとIL-17REからなる受容体複合体と結合することが示唆されている。上皮細胞におけるIL-17Cによる自己分泌シグナル伝達は、抗微生物ペプチドおよび炎症性サイトカインの産生を刺激するが、IL-17Aと同様に、IL-17Cの過剰発現は、自己免疫疾患の発症に寄与し得る。IL-17Eと同様に、IL-17BはIL-17BR/IL-17RBに結合するが、主要な標的細胞およびIL-17Bシグナル伝達の効果は報告されてない。加えて、IL-17Dに対する受容体およびIL-17RDのリガンドも現在知られていない。
【0055】
IL-17A結合分子は、本明細書で使用する場合、ヒトIL-17A(シグナルペプチドを含む全長前駆体IL-17Aを示す受託番号Q16552(Swiss-Prot)配列番号75)および/またはカニクイザルIL-17(Uniprot G7P4U9)に結合する。ヒトIL-17Aは、2本の155アミノ酸の鎖からなるホモ二量体である。各ポリペプチド鎖は、23アミノ酸のN末端ペプチドを含み、これが切断されて132残基の成熟ポリペプチドを生じる。IL-17Aは、IL-17受容体AおよびCに結合し、それらの活性化を介してその効果を発揮する。
配列番号75
【化2】
【0056】
用語「IL-17結合分子」、「抗IL-17結合分子」、「IL-17結合タンパク質」、「抗IL-17単一ドメイン抗体」または「抗IL-17抗体」は総て、ヒトIL-17A抗原に結合することができる分子を指す。よって、本明細書で使用する場合、IL-17は、そうではないことが示されない限りまたは文脈がそうではないことを指さない限り、通常、IL-17Aを指す。結合反応は、例えば、その受容体に対するIL-17結合の阻害を判定するための結合アッセイ、競合アッセイもしくはバイオアッセイ、または抗体が無関連の特異性を持つ陰性対照試験を参照する任意の種類の結合アッセイを含む、標準的な方法(定性アッセイ)によって示すことができる。用語「IL-17結合分子」には、IL-17結合タンパク質またはヒトIL-17Aと結合することができるその一部が含まれる。好ましい実施形態では、IL-17結合分子は、抗体またはそのフラグメント、例えば、抗IL-17単一ドメイン抗体である。より好ましい実施形態では、IL-17結合分子は、本明細書に記載されるようなVドメインを含んでなる抗IL-17単一ドメイン抗体である。
【0057】
用語「抗体」は、広義には、2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖で構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、もしくはその抗原結合部分、またはIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持するその任意の機能的フラグメント、突然変異体、変異体、もしくは誘導体を指す。このような突然変異体、変異体、または誘導体抗体形式は当技術分野で公知である。全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略される)と重鎖定常領域とで構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインC1、C2およびC3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略される)と軽鎖定常領域とで構成される。軽鎖定常領域は、一つのドメインCで構成される。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存性の高い領域が散在する。各VおよびVは3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAlおよびIgA2)またはサブクラスのものであってもよい。
【0058】
用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれに3つのCDRが存在し、これらは可変領域のそれぞれに対してCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。用語「CDRセット」は、抗原と結合することができる単一可変領域中に存在する3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なる体系により異なる定義がなされている。本明細書では、Kabatにより記載されている体系が使用される。用語「Kabatナンバリング」、「Kabat定義」および「Kabat標識」は、本明細書では互換的に使用される。当技術分野で認識されているこれらの用語は、抗体、またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖可変領域内の他のアミノ酸残基よりもより可変な(すなわち、超可変)アミノ酸残基をナンバリングする体系を指す(Kabat et al., (1971) Ann. NY Acad. Sci. 190:382-391 and Kabat, et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0059】
用語「抗原結合部位」は、抗原と特異的に結合する領域を含んでなる抗体または抗体フラグメントの部分を指す。抗原結合部位は、1以上の抗体可変ドメインにより提供されてもよい。好ましくは、抗原結合部位は、抗体または抗体フラグメントの会合したVおよびV内に含まれる。
【0060】
抗体フラグメントは、例えば、(ab’)、Fab、Fv、およびsFvなどとしての抗体の部分である。全長抗体の機能的フラグメントは、全長抗体の標的特異性を保持する。従って、組換え機能的抗体フラグメント、例えば、Fab(Fragment, antibody)、scFv(single variable chain fragments)および単一ドメイン抗体(dAb)は、mAbに基づく治療薬に代わるものとしての治療薬を開発するために使用されてきた。
【0061】
scFvフラグメント(約25kDa)は、2つの可変ドメインVおよびVからなる。本来、VドメインとVドメインは疎水性相互作用を介して非共有結合的に会合し、解離する傾向がある。しかしながら、安定なフラグメントは、これらのドメインを親水性のフレキシブルリンカーで架橋して単鎖Fv(scFv)を作出することによって工作することができる。
【0062】
最小の抗原結合フラグメントは、単一可変フラグメント、すなわち、VまたはVドメインである。標的結合には、軽鎖/重鎖相手それぞれへの結合は必要とされない。このようなフラグメントが単一ドメイン抗体内で使用される。従って、単一ドメイン抗体(約12~15kDa)は、VドメインまたはVドメインのいずれかからなる、または含んでなる。
【0063】
用語「単一ドメイン抗体、可変単一ドメインまたは免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)」は、当技術分野で周知であり、標的抗原に結合する抗体の単一可変フラグメントを表す。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。以下に説明されるように、本発明の種々の側面の好ましい実施形態では、単一可変ドメインは、ドメイン抗体(「dAb」)もしくはドメイン抗体として使用するのに好適なアミノ酸配列、単一ドメイン抗体(もしくは単一ドメイン抗体として使用するのに好適なアミノ酸配列)、他の単一可変ドメイン、またはそのいずれか一つの任意の好適なフラグメントであり得る。単一ドメイン抗体は当技術分野で記載されており、それらは、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチド、例えば、可変ドメイン、例えば、ヒト可変重鎖ドメイン(V)ポリペプチドの一部である抗体である。可変ドメインがVHHドメインである単一可変ドメイン抗体も本発明の範囲内にある。(単一)ドメイン抗体の概要については、Ward et al. 1989 (Nature 341 (6242): 544-546) and to Holt et al. 2003 (Trends Biotechnol. 21(11): 484-490)もまた参照。
【0064】
一つの実施形態では、本発明の結合分子は、前記可変ドメインがVドメインである単一可変ドメイン抗体を含んでなる。このような分子はV単一ドメイン抗体または単一Vドメイン抗体と呼ばれる。ヒト重鎖可変ドメイン抗体が特に好ましい。単一可変ドメイン抗体を含んでなる結合分子(ここで、前記ドメインはヒトVドメインである)はまた、本明細書ではヒューマボディ(Humabody)(商標)Vとも呼ばれる。よって、一つの実施形態では、IL-17A結合分子は、ヒューマボディ(商標)Vである。ヒューマボディ(商標)は、Crescendo Biologics Ltdの商標である。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語Vまたは「可変ドメイン」は、Kabat et al. (1991)により定義された免疫グロブリン可変ドメインを指す。CDRアミノ酸残基のナンバリングおよび位置決定は、本明細書で使用する場合、周知のKabatナンバリング規則に従ったものである。
【0066】
一つの実施形態では、処方物および本発明の他の側面で使用される、単離された結合分子は、少なくとも1種類の単一ドメイン抗体を含んでなる、またはからなり、ここで、前記ドメインはヒトVドメインである。よって、一つの側面において、本発明の結合分子は、Vドメインを有するがVドメインを欠く少なくとも1種類の免疫グロブリン単一可変重鎖ドメイン抗体を含んでなる、またはからなる。
【0067】
各単一Vドメイン抗体は、3つのCDRと4つのFRを含んでなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置される:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。よって、本発明の一つの実施形態では、ドメインは、以下の式FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有するVドメインである。
【0068】
本発明による組成物で使用される単一ドメイン抗体を含むIL17A結合分子は、単離された分子である。用語「単離された」単一ドメイン抗体とは、異なる抗原特異性を有する他の単一ドメイン抗体、抗体または抗体フラグメントを実質的に含まない単一ドメイン抗体を指す。さらに、単離された単一ドメイン抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0069】
本明細書でさらに説明されるように、好ましい実施形態では、単一Vドメイン抗体は、ヒトV、DおよびJ領域を発現するトランスジェニックマウスで生成され、本発明に従って使用される。
【0070】
本発明の種々の側面および実施形態によれば、本発明の単一ドメイン抗体の可変ドメインは好ましくは、ヒト可変ドメイン(ヒト可変ドメインは一般にVと呼ばれる)である。本明細書で使用する場合、ヒトVドメインは、完全なヒトまたは実質的に完全なヒトVドメインを含む。本明細書で使用する場合、用語ヒトVドメインはまた、特に、例えばWO2016/062990および実施例に記載されるように、対象とする抗原による免疫誘導に応答して完全ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスによって作製された重鎖単独抗体から単離されたVドメインも含む。一つの実施形態では、ヒトVドメインはまた、ヒトVドメインアミノ酸またはこのようなVドメインをコードする核酸配列に由来するまたは基づくVドメインも含み得る。よって、この用語には、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する、またはそれによりコードされる可変重鎖領域が含まれる。ヒトVドメインに由来するまたは基づく実質的ヒトVドメインまたはVドメインは、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、vitroにおいて例えばランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により導入される、またはin vivoにおいて体細胞突然変異により導入される突然変異)を含んでもよい。従って、用語「ヒトVドメイン」にはまた、1以上のアミノ酸残基が改変された実質的ヒトVドメインも含まれる。例えば、実質的ヒトVドメインは、完全ヒト配列に比べて最大10、例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸改変を含み得る。
【0071】
しかしながら、用語「ヒトVドメイン」または「実質的ヒトVドメイン」は、本明細書で使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図されない。いくつかの実施形態では、用語「ヒトVドメイン」は、本明細書で使用する場合、ラクダ化Vドメイン、すなわち、例えば、in vitroにおいて、Vドメイン配列において所定の位置を選択し、その所定の位置において1以上の所定の残基をラクダ科動物VHHドメインに見出せる特定の残基に変化させるために1以上の点突然変異を導入するための従来の突然変異誘発法によって特異的に改変されているヒトVドメインは含まない。
【0072】
よって、一つの実施形態では、IL-17A結合分子は、ヒトIL-17Aと結合することができるヒトVドメインを含んでなる少なくとも1種類の単一ドメイン抗体から選択される。一つの実施形態では、IL-17A結合分子は、ヒトIL-17Aと結合することができる少なくとも1種類の単一Vドメイン抗体から選択される。別の実施形態では、Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%もしくは75%の相同性を有する配列を含んでなる、またはからなる。
【0073】
フレームワークに対する改変は、結合および/またはその他の特性を改善するために行うことができる。例えば、Vドメインは、C末端またはN末端延長を含んでなってもよい。
【0074】
「相同性」は一般に、配列をアラインした後に、いくつかの実施形態では、最大相同性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後に、かつ、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮せずに、候補配列が比較されるポリペプチドの残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率を指す。N末端もしくはC末端延長、タグまたは挿入はいずれも同一性または相同性を低下させると解釈されるべきではない。アラインメントのための方法およびコンピュータープログラムは周知である。
【0075】
本明細書で示されるように、一つの実施形態では、本発明の組成物は、ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類のVドメイン抗体を含んでなり、前記Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%もしくは75%の相同性を有する配列を含んでなる。一つの実施形態では、前記配列相同性または同一性は、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明は、配列番号1に比べて1以上のアミノ酸改変を有し、かつ、単一ドメイン抗体の生物学的機能を保持する、配列番号1に定義される単一Vドメイン抗体の変異体である単一Vドメイン抗体を提供する。この改変は、アミノ酸残基の1以上の置換、欠失、挿入またはその他の付加であり得る。変異体は、表1に示されるように配列番号5~73から選択することができる。
【0077】
一つの実施形態では、変異体単一Vドメイン抗体は、操作された配列であり得る。改変には、天然配列V単一ドメイン抗体またはポリペプチドに比べてアミノ酸配列に変化を生じる単一ドメイン抗体またはポリペプチドをコードする1以上のコドンの少なくとも一つの置換、欠失または挿入が含まれる。アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換すること、例えば、ロイシンのセリンによる置換、すなわち、保存的アミノ酸置換の結果であり得る。挿入または欠失は、場合により約1~10の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸であってよい。許容されるバリエーションは、配列においてアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に作出し、得られた変異体を全長または成熟天然配列により示される活性に関して試験することによって判定することができる。配列番号1で定義されるV単一ドメイン抗体の変異体は、好ましくは、非変異体分子と少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性を有する。
【0078】
一つの実施形態では、改変は、保存的配列改変である。本明細書で使用する場合、用語「保存的配列改変」は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特徴に有意に影響を及ぼさないまたはそれを変更しないアミノ酸改変を指すものとする。このような保存的改変には、アミノ酸置換、付加および欠失が含まれる。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当技術分野で公知の標準的技術によって本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残で置換されたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。よって、本発明の単一ドメイン抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、本明細書に記載の機能アッセイを用い、変更された抗体を保持される機能(すなわち、上記(c)~(l)に示される機能)に関して試験することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明は、1以上の配列改変を含んでなる配列番号1に定義されるV単一ドメイン抗体の変異体を提供し、非改変単一ドメイン抗体と比較した場合に結合親和性、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、免疫原性の軽減、または溶解度などの特性のうち1以上に改善を有する。
【0080】
一つの実施形態では、改変は、単一ドメイン抗体の免疫原性を軽減するために行うことができる。例えば、一つのアプローチは、1以上のフレームワーク残基を、相当するヒト生殖細胞系配列に戻すことである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた単一ドメイン抗体は、その単一ドメイン抗体が由来する生殖細胞系配列とは異なるフレームワーク残基を含んでよい。このような残基は、単一ドメイン抗体フレームワーク配列を、その単一ドメイン抗体が由来する生殖細胞系配列と比較することによって同定することができる。
【0081】
フレームワーク領域配列内のアミノ酸残基のうち1以上をそれらの生殖細胞系構成に戻すために、体細胞突然変異は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発によって生殖細胞系配列に「復帰突然変異」させることができる。
【0082】
別のタイプのフレームワーク改変は、フレームワーク領域内または1以上のCDR領域内であっても1以上の残基を、T細胞エピトープを除去しそれにより抗体の潜在的免疫原性を軽減するように突然変異させることを含む。
【0083】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるように変更することができる。このような糖鎖改変は、例えば、抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を変化させることによって達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらしてそれによりその部位のグリコシル化を除去する1以上のアミノ酸置換を行うことができる。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増強し得る。
【0084】
当業者は、in vitroおよびin vivo発現ライブラリーを含め、本明細書に記載されるような抗原結合分子を同定、取得および最適化するための様々な方法が存在することを知っているであろう。このことは実施例にさらに記載される。当技術分野で公知の最適化技術、例えば、ディスプレー(例えば、リボソームおよび/またはファージディスプレー)ならびに/または突然変異誘発(例えば、エラープローン突然変異誘発)が使用可能である。よって、本発明はまた、本明細書に記載の単一ドメイン抗体の配列最適化変異体も含んでなる。
【0085】
一つの実施形態では、Vドメインは、1以上のアミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を含んでなること以外は配列番号1を含んでなる、またはからなる。一つの実施形態では、1以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域、例えば、FR1、FR2、FR3および/またはFR4の1以上にある。別の実施形態では、1以上のアミノ酸置換は、CDRの1以上にある。別の実施形態では、Vドメインは、CDR配列、例えば、CDR1、CDR2またはCDR3内に1、2、3、4または5個のアミノ酸置換を含んでなること以外は配列番号1を含んでなる、またはからなる。例えば、配列番号1のCDR3(配列番号4)またはその変異体では、1以上のYがHに置換されていてよい。
【0086】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、以下の表1に示されるアミノ酸配列の一つから選択される(表1は、全長Vアミノ酸配列を示し、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の配列はそれぞれ、参照しやすいように表1の別の欄に示される)。
【0087】
【表1】
【0088】
ドメインのC末端はVTVSS(配列番号77)で終わる。本明細書に記載の結合分子の一つの実施形態では、Vドメインは、付加的C末端残基、例えば、1~15個の付加的C末端残基、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の付加的アミノ酸を含んでなる。一つの実施形態では、Vドメインは、1~15個のアミノ酸残基、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の付加的C末端残基を含んでなり、前記残基はC1ドメインの残基である。言い換えれば、Vドメインは、C1ドメインへと延長される。一つの実施形態では、前記延長は、少なくとも1個のアラニン残基、例えば、単一のアラニン残基、2個のアラニン残基または3個のアラニン残基を含んでなる。このような延長されたVドメインは、本発明の範囲内にある。一つの実施形態では、VドメインのC末端は末端切断され、VTVSS(配列番号77)のうち1以上が欠失されていてもよい。一つの実施形態では、VTVSS(配列番号77)の1以上が別の残基に置換されていてもよい。
【0089】
また、付加的なC末端またはN末端残基、例えば、リンカー残基および/またはHisタグ、例えばヘキサHisなどのタグの標識を含んでなるVドメインも本発明の範囲内にある。一つの実施形態では、Vドメインは、配列番号1の変異体を含んでなり、またはからなり、実施例に示されるように以下のアミノ酸配列を有するV1.1(配列番号74)と呼ばれる。
配列番号74
【化3】
【0090】
よって、一つの側面において、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体、ここで、前記単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、および
b)10~150mMのトリス/グリシン
を含んでなる局所送達のための組成物に関し、前記組成物のpHは約5~約9である。
【0091】
一つの実施形態では、Vドメインは、配列番号1または74を含んでなる、またはからなる。
【0092】
一つの実施形態では、組成物は、約10~約150mM、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMの濃度でトリス/グリシンを含んでなる。本発明の組成物の一つの実施形態では、トリス/グリシンの濃度は、約50~約150mM、例えば50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。一つの実施形態では、濃度は約90~110mMである。一つの実施形態では、濃度は約100mMである。
【0093】
一つの実施形態では、組成物は、以下の賦形剤:約0.1~約150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、約0.1~約15%のソルビトールおよび/または約0.1~約30%のプロピレングリコールのうち1以上をさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸をさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~15%のソルビトールをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~30%のプロピレングリコールをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸および0.1~15%のソルビトールをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~15%のソルビトールおよび0.1~30%のプロピレングリコールをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸および0.1~30%のプロピレングリコールをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物は、0.1~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、0.1~15%のソルビトールおよび0.1~30%のプロピレングリコールをさらに含んでなる。
【0094】
本発明の組成物の一つの実施形態では、L-アルギニン/グルタミン酸の濃度は、約50~約150mM、例えば約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。一つの実施形態では、この濃度は約90~110mMである。一つの実施形態では、この濃度は約125mMである。
【0095】
本発明の組成物の一つの実施形態では、ソルビトールの濃度は、5~15%、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%である。一つの実施形態では、この濃度は約10%である。
【0096】
本発明の組成物の一つの実施形態では、プロピレングリコールの濃度は、約4 約30%、例えば4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%である。一つの実施形態では、この濃度は、約5~15%、10%~15%、15%~20%または20%~25%である。一つの実施形態では、この濃度は約6%である。一つの実施形態では、この濃度は約14%である。
【0097】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、pHは約7~約8.5、好ましくは7.5~8.5の範囲である。いくつかの実施形態では、pHは、約pH7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4または8.5から選択することができる。一つの実施形態では、pHは約8.0である。
【0098】
当業者は、上記に示されるような組成物の成分の様々な濃度を組み合わせることができることを理解するであろう。
【0099】
一つの実施形態では、組成物は、50~150mMのトリス/グリシン、50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、5~15%のソルビトールおよび4~30%のプロピレングリコールを含んでなり、前記組成物のpHは、約5~約9、例えば7.5~8.5である。
【0100】
一つの実施形態では、組成物は、約100mMのトリス/グリシン、約125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、約10%ソルビトールのおよび約6%のプロピレングリコールを含んでなり、前記組成物のpHは、7.5~8.5、例えば約8である。
【0101】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1種類の抗IL-17A結合分子、例えば、本明細書に記載されるようなV単一ドメイン抗体を含んでなる。いくつかの実施形態では、2以上の抗IL-17A V単一ドメイン抗体が存在してよい。一つの実施形態では、組成物は、二重パラトープ性または二価の抗IL-17A V単一ドメイン抗体を含んでなる。別の実施形態では、組成物は、V単一ドメイン抗体ではない第2の抗体または抗体フラグメントをさらに含んでなる。抗IL-17A V単一ドメイン抗体はまた、抗体の有効性を増強および/または補足する働きをする他の薬剤とともに使用および投与することもできる。
【0102】
本発明の処方物において使用するための多重特異性結合分子は、技術分野で既知の方法を用いて構築することができる。
【0103】
二重パラトープ性または多重特異性結合分子では、これらの部分は一般にリンカー、例えば、ポリペプチドリンカーによって連結される。例えば、(Gly4Ser)n、(式中、n=1~10、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10)などのGS残基を含むリンカーを含んでなる好適なリンカーが当技術分野で公知である。
【0104】
所望であれば、二重特異性または多重特異性結合分子は、C2およびC3ドメインの一方または両方、および場合によりヒンジ領域を含んでなる抗体Fc領域またはそのフラグメントに連結することができる。例えば、単一のヌクレオチド配列としてFc領域またはそのフラグメントに連結された二重特異性または多重特異性結合分子をコードするベクターを、このようなポリペプチドを作製するために使用することができる。
【0105】
例示的な第2の抗原標的としては、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD4、CD45、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンド;TNF、IL-1、IL-15、IL-23、IL-6またはCD20が含まれる。この一覧は、記載されている薬剤に限定されない。
【0106】
一つの実施形態では、例えば結合分子の半減期を延長するために、第2(または第3、第4、第5など)の部分を、IL-17Aと結合するVドメインに連結することができる。この部分は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と結合するタンパク質、例えば抗体、またはその一部を含んでなってよい。一つの実施形態では、第2の部分は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と結合するVドメインを含んでなってよい。
【0107】
第2の部分は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはC34Sなどのその変異体を含んでなってよい。さらに、VドメインおよびFcドメインまたはそのフラグメントを含んでなる、本明細書に記載されるような結合分子も提供され、例えば、ここで、Vドメインは、Fcドメインまたはそのフラグメントに接続される。さらに、第2の抗原と特異的に結合する第2の可変ドメインを含んでなる結合分子も提供され、ここで、第2の抗原は、ヒトIL-17A以外の抗原である。第2の抗原は、分化抗原群(CD)分子または主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子であり得る。
【0108】
本明細書に記載の結合分子は、内因性の免疫グロブリンを欠くトランスジェニックノックアウト(KO)齧歯類、例えばマウスを使用することによって得ることができる。好ましくは、マウスは、機能的重鎖、λ軽鎖およびκ軽鎖遺伝子座を含まない。これらの遺伝子座は、欠失、挿入、遺伝子編集または当技術分野で公知の他の技術によって非機能的とされ得る。非機能的な内因性λおよびκL鎖遺伝子座を有するマウスは、例えば、その全内容は引用することにより本明細書の一部とされるWO2003/000737に開示されるように作出することができる。非機能的重鎖遺伝子座を有するマウスは、例えば、その全内容は引用することにより本明細書の一部とされるWO2004/076618に開示されるように作出することができる。
【0109】
例えば、トランスジェニックマウスは、異種重鎖遺伝子座を発現するためのベクター、例えば、酵母人工染色体(YAC)を含んでなる。YACは、酵母において極めて大きな対象DNAをクローニングするために使用できるベクターである。天然酵母染色体のように挙動するために不可欠な3つのシス作用構造要素(自立複製配列(ARS)、セントロメア(CEN)および2つのテロメア(TEL))を総て含んでなるだけでなく、大きなDNA挿入を受け入れるそれらの能力は、それらを、染色体様の安定性と酵母細胞における伝達の忠実性に必要とされる最小サイズ(150kb)とすることを可能とする。YACの構築および使用は当技術分野で周知である(例えば、Bruschi, C.V. and Gjuracic, K. Yeast Artificial Chromosomes, Encyclopaedia of Life Sciences 2002 Macmillan Publishers Ltd, Nature Publishing Group / www.els.net)。
【0110】
例えば、YACは、その全内容は引用することにより本明細書の一部とされるWO2016/062990に開示されるように、C1ドメイン、マウスエンハンサーおよび調節領域を欠くマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて過多のヒトV、DおよびJ遺伝子を含んでなってよい。
【0111】
トランスジェニックマウスは、標準的技術に従って作出することができる。トランスジェニックマウスをIL-17A抗原で免疫してよく、次いで、前記マウス由来のVドメイン配列を含んでなる配列のライブラリーを生成させる。前記ライブラリー由来のVドメイン配列を含んでなる配列は、標準的技術を用いて単離される。
【0112】
組成物中に存在する有効分子、例えば、ヒトIL-17Aに結合する抗体、抗体フラグメント、単一ドメイン抗体またはV単一ドメイン抗体は、に約0.5mg/ml~約300mg/mlの範囲の濃度で組成物中存在してよい。いくつかの実施形態では、有効分子の濃度は、約10mg/ml~200mg/mlまたは約10mg/ml~100mg/mlである。いくつかの実施形態では、この濃度は、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/ml、約26mg/ml、約27mg/ml、約28mg/ml、約29mg/ml、約30mg/ml、約31mg/ml、約32mg/ml、約33mg/ml、約34mg/ml、約35mg/ml、約36mg/ml、約37mg/ml、約38mg/ml、約39mg/ml、約40mg/ml、約41mg/ml、約42mg/ml、約43mg/ml、約44mg/ml、約45mg/ml、約46mg/ml、約47mg/ml、約48mg/ml、約49mg/ml、約50mg/ml、約51mg/ml、約52mg/ml、約53mg/ml、約54mg/ml、約55mg/ml、約56mg/ml、約57mg/ml、約58mg/ml、約59mg/ml、約61mg/ml、約62mg/ml、約63mg/ml、約64mg/ml、約65mg/ml、約66mg/ml、約67mg/ml、約68mg/ml、約69mg/ml、約70mg/ml、約70mg/ml、約71mg/ml、約72mg/ml、約73mg/ml、約74mg/ml、約75mg/ml、約76mg/ml、約77mg/ml、約78mg/ml、約79mg/ml、約80mg/ml、約80mg/ml、約81mg/ml、約82mg/ml、約83mg/ml、約84mg/ml、約85mg/m、約86mg/m、約87mg/m、約88mg/m、約89mg/ml、約90mg/ml、約91mg/ml、約92mg/ml、約93mg/ml、約94mg/ml、約95mg/ml、約96mg/ml、約97mg/ml、約98mg/ml、約99mg/ml、約100mg/mlである。一つの実施形態では、この濃度は、約20mg/ml~40mg/mlである。一つの実施形態では、この濃度は、約20mg/mlである。一つの実施形態では、この濃度は、約40mg/mlである。
【0113】
一つの実施形態では、Vドメインの濃度は、約20mg/ml~約50mg/ml、例えば約20mg/mlまたは約40mg/mlである。
【0114】
治療適用のための処方物のモル浸透圧濃度は重要である。血液/血清の通常のモル浸透圧濃度は、約300~310mOsm/Lである。実施例に示されるように、処方物中の結合分子は、生理学的レベルを超えたモル浸透圧濃度を示した。よって、一つの実施形態では、処方物のモル浸透圧濃度は、生理学的レベルかそれ以上である。例えば、モル浸透圧濃度は、約2mOsm/kg以上である。一つの実施形態では、モル浸透圧濃度は、約2,386mOsm/kgである。
【0115】
実施例に示されるように、本発明による組成物は、種々の条件下で安定である。本明細書で使用する場合、用語「安定性」は一般に、生物学的に活性な薬剤、すなわち、本明細書に記載のIL-17結合分子の完全性を維持すること、またはその分解、変性、凝集もしくは折り畳みの解除を最小限にすることに関する。組成物中の有効分子の安定性は、当業者に知られている様々な手段によって決定することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体の安定性または凝集は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、すなわち、成分、例えば抗体またはそのフラグメントの分子サイズ、それらの拡散係数、および表面特性に基づく分離技術によって決定される。よって、例えば、SECは、それらの天然三次元立体配座にある抗体または抗体フラグメントを、種々の変性状態の抗体、および/または分解された抗体から分離することができる。SECでは、固定相は一般に、ガラスまたはスチールカラム内に稠密三次元マトリックスとして充填された不活性粒子から構成される。移動相は、純水、水性バッファー、有機溶媒、これらの混合物、または他の溶媒であり得る。固定相粒子は、特定の大きさに満たない種だけを入らせる小さな孔および/または溝を有する。従って、大きな粒子はこれらの孔および溝から排除されるが、より小さな粒子は流動している移動相から除去される。粒子が固定相孔で不動となって費やす時間は、一部には、それらの粒子が孔の中へどれだけ浸透できるかによって決まる。移動相流からの粒子の除去は、それらの粒子がカラムから溶出するのを長引かせ、粒子のサイズの違いに基づいて粒子間の分離が起こる。
【0117】
水性または水性/有機移動相中での生体分子の分離については、SECはゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)と呼ばれ、一方、非水性移動相中での有機ポリマーの分離はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と呼ばれる。
【0118】
SECは、当業者に知られているタンパク質、またはそれらのフラグメントを同定または特性評価するための同定技術と組み合わせることができる。タンパク質同定および特性評価は、限定されるものではないが、クロマトグラフィー技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イムノアッセイ、電気泳動、紫外線/可視光/赤外線分光法、ラマン分光法、表面増強ラマン分光法、質量分析、ガスクロマトグラフィー、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素誘導タンパク質変性技術、内部トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、および/またはANSタンパク質結合を含む種々の技術によって達成することができる。
【0119】
タンパク質は高速液体クロマトグラフィーによって同定することができる。周知の技術は、HPLC、例えば、逆相HPLC(RP-HPLC)または陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(AIEX-HPLC)である。対象とするタンパク質を含有する液体溶媒を分離カラムにロードし、そこで分離が起こる。HPLC分離カラムには固体粒子(例えば、シリカ、ポリマー、または吸着剤)が充填され、サンプル混合物はカラム粒子と相互作用するので化合物に分離される。SECおよびHPLCは組み合わせることができ、しばしばSE-HPLCと呼ばれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、安定性は、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素誘導タンパク質変性技術、内部トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、およびl-アニリノ-8-ナフタレンスルホン酸(ANS)タンパク質結合技術または当技術分野で公知の他の技術により測定した場合に、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下および0.5重量%以下のタンパク質凝集を含む、低~検出不能な凝集レベルを有する処方物を指す。
【0121】
液体組成物の安定性はまた、抗原に免疫特異的に結合する抗体またはその一部(Vドメインを含む)の能力を測定するための、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイを含む種々の免疫学的アッセイによって評価されるような、上記の条件下での長期保存中の抗体(フラグメント/その一部を含む)の生物活性を調べることによって決定することもできる。一つの実施形態では、本発明の組成物は、上記で定義された期間保存した後に、保存前の処方物の初期生物活性の、すなわち、保存前のIL-17結合Vドメインに相当する参照分子または処方物に比べて、80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超または99.5%超を保持する。
【0122】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、保存時に、向上した凝集および安定性プロフィールを維持する。別の実施形態では、本発明の組成物は、不溶性凝集の発生率低減を示す。一つの実施形態では、本発明の組成物は、室温(約20℃~約25℃)で長期間保存した際に、改善された凝集および安定性プロフィールを維持する。
【0123】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、低温(約10℃未満、約2℃~約8℃、例えば5℃)、最大約1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年または5年の長期間保存した際に、改善された安定性および/または凝集プロフィールを維持する。
【0124】
別の実施形態では、本発明の組成物は、低温、例えば、0℃以下、例えば0℃~-70℃、例えば-1℃、-2℃、-3℃、-4℃、-5℃、-6℃、-7℃、-8℃、-9℃または-10℃で、最大約1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年または5年の長期間保存した際に、改善された安定性および/または凝集プロフィールを維持する。
【0125】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、浸透促進剤をさらに含んでなる。多くの化学浸透促進剤が当技術分野で公知であり、本発明の組成物において使用可能である。これらには、限定されるものではないが、水、アルコール、好ましくは最大6個の炭素原子を有するアルコール、例えば、エタノール、グリコール、例えば、アルコールジエチレングリコール(トランスクトール(Transcutol)(商標))、アルキル-N,N-二置換アミノアセテート、例えば、ドデシル-N,N-ジメチル-アミノアセテート、エステル、例えば、酢酸エチル、アゾン(商標)および誘導体、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テルペンおよびテルペノイド、例えば、d-リモネン、脂肪酸、例えば、オレイン酸、尿素および誘導体、例えば、1,3-ジフェニル-尿素、ピロリドン、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、カルボン酸ピロリドン、例えば、2-ピロリドン-5-カルボン酸、シクロデキストリン、例えば、β-シクロデキストリン、スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシドが含まれる。他の皮膚浸透促進剤も当業者に知られている。一つの実施形態では、皮膚浸透促進剤は、トランスクトール(商標)、ミリスチン酸イソプロピルまたはアゾンのうち1以上から選択される。
【0126】
よって、一つの実施形態では、本発明は、トランスクトール(商標)をさらに含んでなる上記のような組成物に関する。実施例に示されるように、トランスクトール(商標)を含んでなる組成物は浸透の向上および良好な安定性の保持を示したことが実証された。トランスクトール(商標)の濃度は、約1~60%、例えば約40%であり得る。
【0127】
一つの実施形態では、本発明は、10%を超える、例えば、11%、12%、13%、14%、15%またはそれを超えるプロピレングリコール濃度を有する上記のような組成物に関する。実施例に示されるように、より高い濃度のプロピレングリコールを含んでなる組成物は浸透の向上および良好な安定性の保持を示したことが実証された。
【0128】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、局所投与用の組成物の粘度を高めるためにゲル化剤を含んでなる。これは、カルボマー、ポロキサマーまたはセルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択することができる。ゲル化剤の濃度は、0.5%~20%であり得る。一つの実施形態では、ゲル化剤はポロキサマーである。ポロキサマーの濃度は、例えば、0.5%~20%、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%から選択される。
【0129】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、浸透促進剤およびゲル化剤、例えば、トランスクトール(商標)およびポロキサマーを含んでなる。
【0130】
さらなる実施形態では、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる、有効量の単一ドメイン抗体、ここで、前記Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、
b)約100mMのトリス/グリシン、
c)約125mMのLアルギニン/グルタミン酸、
d)約10%のソルビトール、および
e)約14%のプロピレングリコール
に関し、前記組成物のpHは7.5~8.5、例えば8である。
【0131】
さらなる実施形態では、本発明は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる、有効量の単一ドメイン抗体、ここで、前記Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、
b)約100mMのトリス/グリシン、
c)約125mMのLアルギニン/グルタミン酸、
d)約10%のソルビトール、
e)約6%のプロピレングリコール、および
f)約20%のトランスクトール(商標)
に関し、前記組成物のpHは7.5~8.5、例えば8である。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、保存剤を含んでなり得る。保存剤は、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルトニウム(benzalthonium chloride)、フェノキシエタノールおよびメチルパラベンから選択することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、組成物は、酸化防止剤を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、カタラーゼ、および白金を含んでなる群から選択される。
【0134】
一つの実施形態では、本発明の組成物は、以下の賦形剤:アゾン、B-シクロデキストリン、ベンジルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、PEG100ステアレート、ヘキシレングリコール、ヒスチジン、ヒドロキシプロピルセルロース、ミリスチン酸イソプロピル、液体パラフィン(軽油)、中鎖トリグリセリド(カプテックス(captex)300)、サリチル酸メチル、N-メチル-2-ピロリドン、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー-407、ポリビニルアルコール、ソルビン酸カリウム、プロリン、没食子酸プロピル、ピロリジノンカルボン酸、モノオレイン酸ソルビタン(スパン(Span)80)、ステアリン酸ソルビタン(スパン60)、ステアレス-20、ステアリン酸、テフォース(Tefose)63、トランスクトール(商標)、トリアセチン、ステアレス-20、ステアレス-2、ジメチルスルホキシド、オクチルドデカノール、カプテックス300、ポリソルベート80、スパン80、プロリン、軽油またはアルラセル(Arlacel)165のうち1以上を含んでなる。
【0135】
本発明の組成物において使用可能な他の意図される賦形剤としては、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、リン脂質または脂肪酸などの脂質、コレステロールなどのステロイド、ゼラチン、カゼイン、ナトリウムなどの塩形成対イオンなどが含まれる。これらの、またさらなる既知の製薬賦形剤、例えば、本発明の処方物における使用に好適な生理学的に許容可能な担体および/または添加剤は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされる"The Handbook of Pharmaceutical Excipients,第4版, Rowe et al.編, American Pharmaceuticals Association (2003);および引用することにより本明細書の一部とされるRemington: the Science and Practice ofPharmacy, 21st edition, Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)に挙げられているように当技術分野で公知である。用語「生理学的に許容可能な担体」は、被処置宿主に重大な有害な影響を与えず、かつ、それが一緒に投与される化合物の治療特性を保持する担体を指す。
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、表3に示されるような1以上のさらなる賦形剤を含んでなる。よって、賦形剤は、トランスクトール(商標)、ステアレス-20、ステアレス-2、オクチルデカノールまたはミリスチン酸イソプロピルのうち1以上から選択される。
【0137】
一つの実施形態では、上記のような本発明の組成物は、皮膚、歯肉または眼の表面への局所投与用に処方される。よって、組成物は、液体、ゲル、懸濁液、軟膏、クリーム、またはローションなどの形態である。
【0138】
別の実施形態では、上記のような本発明の組成物は、凍結または噴霧乾燥させる。一つの実施形態では、凍結または噴霧乾燥組成物は、上記に示される成分を含んでなるが、プロピレングリコールおよび/またはソルビトールを欠く。
【0139】
上記で説明されるように、本発明は、ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の少なくとも1種類の単一ドメイン抗体と10~150mMのトリス/グリシンとを含んでなる凍結または噴霧乾燥組成物を提供し、前記組成物のpHは約5~約9である。本発明の組成物の一つの実施形態では、トリス/グリシンの濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。本発明の組成物の一つの実施形態では、トリス/グリシンの濃度は、約50~約150mM、例えば50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。一つの実施形態では、この濃度は、約90~110mMである。一つの実施形態では、この濃度は約100mMである。一つの実施形態では、組成物は50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸をさらに含んでなり、前記組成物のpHは約5~約9である。本発明の組成物の一つの実施形態では、L-アルギニン/グルタミン酸の濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。本発明の組成物の一つの実施形態では、L-アルギニン/グルタミン酸の濃度は、約50~約150mM、例えば約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMである。一つの実施形態では、この濃度は約90~110mMである。一つの実施形態では、この濃度は約125mMである。
【0140】
本発明の凍結または噴霧乾燥組成物の一つの実施形態では、組成物は、
a)ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる、有効量の単一ドメイン抗体、ここで、前記Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる、
b)約100mMのトリス/グリシン、および
c)約125mMのLアルギニン/グルタミン酸
を含んでなり、前記組成物のpHは、7.5~8.5、例えば8である。
【0141】
凍結または噴霧乾燥組成物では、IL-17A結合分子は、本明細書の他所に記載される通りである。例えば、IL-17A結合分子は、ヒトIL-17Aと結合することができるVドメインを含んでなる少なくとも1種類の単一ドメイン抗体を含んでなる。別の実施形態では、前記Vドメインは、配列番号4のCDR3を含んでなる。別の実施形態では、前記Vドメインは、配列番号1またはそれと少なくとも50%、60%、70%または75%の相同性を有する配列を含んでなる。別の実施形態では、前記Vドメインは、表1から選択され、配列番号5~73または配列番号74のいずれかで定義されるVドメインを含んでなる。
【0142】
本発明の凍結または噴霧乾燥組成物は、1以上の許容可能な賦形剤/再構成剤を用いて再構成される。例えば、プロピレングリコールなどの浸透促進剤が含まれてよい。
【0143】
よって、別の側面において、本発明は、上記のような組成物を含んでなり、かつ、プロピレングリコールを、例えば、4~30%、例えば4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%の濃度でさらに含んでなる再構成された凍結または噴霧乾燥組成物に関する。一つの実施形態では、この濃度は、約5~15%、10%~15%、15%~20%または20%~25%である。一つの実施形態では、この濃度は約6%または14%である。
【0144】
一つの実施形態では、凍結または噴霧乾燥組成物は、局所投与のために再構成される。一つの実施形態では、再構成賦形剤は、L-アルギニン/グルタミン酸、ソルビトールおよび/またはプロピレングリコールのうち1以上から選択される。
【0145】
一つの実施形態では、再構成賦形剤は、50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、例えば50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、5~15%のソルビトール、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%のソルビトールおよび/または4~30%のプロピレングリコール、例えば4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%のプロピレングリコールを含んでなる。
【0146】
好ましくは、前記組成物のpHは、5~9、例えば7.5~8.5、例えば8である。
【0147】
別の側面において、本発明は、上記のような凍結または噴霧乾燥組成物を準備することと、許容可能な賦形剤/再構成剤、例えば、プロピレングリコールなどの浸透促進剤を添加することを含んでなる、局所投与用の再構成処方物を作製するための方法に関する。プロピレングリコールは、4~30%、例えば4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%の濃度で添加してよい。一つの実施形態では、この濃度は、約5~15%、10%~15%、15%~20%または20%~25%である。一つの実施形態では、この濃度は約6%または14%である。
【0148】
一つの実施形態では、本発明の凍結または噴霧乾燥組成物は、室温(約20℃~約25℃)で長期間または低温度(約10℃未満、約2℃~約8℃、例えば5℃)で最大約1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年または5年保存した場合に、改善された安定性および凝集プロフィールを維持する。
【0149】
別の実施形態では、本発明の凍結または噴霧乾燥組成物は、最大約1週間、最大約2週間、最大約3週間、最大約1か月、最大約2か月、最大約3か月、または最大約6か月などの期間、約0℃~約8℃、例えば約5℃の温度で保存した場合に、改善された安定性および/または凝集プロフィールを維持する。
【0150】
別の実施形態では、本発明の凍結または噴霧乾燥組成物は、低温度、例えば0℃以下、例えば0℃~-70℃、例えば-1℃、-2℃、-3℃、-4℃、-5℃、-6℃、-7℃、-8℃、-9℃または-10℃で、最大約1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年または5年の長期間保存した場合に、改善された安定性および/または凝集プロフィールを維持する。
【0151】
好ましい実施形態では、本発明の凍結または噴霧乾燥組成物は、例えば、最大約1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年または5年の長期間、約20℃~約25℃、例えば20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃で保存した場合に、改善された安定性および/または凝集プロフィールを維持する。
【0152】
本発明はさらに、対象に本発明の組成物を投与することを含んでなる、疾患の予防および/または治療のための方法に関する。
【0153】
治療目的で、用語「対象」は、いずれの対象も含み、好ましくは、標的とする病態、例えば、自己免疫疾患の治療を必要とする対象である。予防目的で、対象は、いずれの対象であってもよく、好ましくは、標的とする病態、例えば、自己免疫疾患を発症するリスクがあるか、または発症する素因のある対象である。用語「対象」は、生物、例えば、原核生物および真核生物を含むものとする。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。本発明の特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0154】
より詳しくは、本発明は、本明細書に列挙される疾患および障害からなる非限定群から選択される疾患の予防および/または治療のための方法に関し、前記方法は、それを必要とする対象に薬学上有効な量の本発明の結合分子または医薬組成物を投与することを含んでなる。本発明に従って治療可能な免疫関連疾患の例は、当業者には本明細書の開示に基づいて自明であり、例えば、自己免疫疾患、炎症病態、アレルギーおよびアレルギー性病態、過敏反応、重度感染、および器官または組織移植拒絶を含む。
【0155】
本発明はまた、疾患の治療において使用するための本発明の組成物に関する。別の側面において、本発明は、本明細書に列挙される疾患および障害からなる非限定群から選択される疾患の治療において使用するための本発明の組成物に関する。
【0156】
別の側面において、本発明は、本明細書に列挙される疾患および障害からなる非限定群から選択される疾患、例えば、自己免疫疾患、炎症病態、アレルギーおよびアレルギー性病態、過敏反応、重度感染、および器官または組織移植拒絶の治療のための薬剤の製造における本発明の組成物の使用に関する。
【0157】
上記の種々の側面によれば、疾患は以下の非限定一覧から選択されてよい:乾癬、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、特発性炎症性ミオパチー、シェーグレン症候群、全身性血管炎、類肉腫症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、真性糖尿病、免疫介在性腎疾患、中枢神経系および末梢神経系の脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経障害またはギランバレー症候群、および慢性炎症性脱髄性多発神経障害)、肝胆道疾患(例えば、感染性、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎)、炎症性腸疾患、グルテン過敏性腸症、およびウィップル病、自己免疫性または免疫介在性皮膚疾患(水疱性皮膚疾患、多形性紅斑および接触性皮膚炎を含む)、アレルギー性疾患(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症およびじんま疹)、肺の免疫疾患(好酸球性肺炎、特発性肺線維症および過敏性肺炎など)、自己免疫性血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、真性赤血球性貧血および特発性血小板減少症)、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病および過敏性腸症候群を含む)、移植関連疾患(移植片拒絶および移植片対宿主病を含む)。
【0158】
本発明の組成物はまた、喘息、気管支炎、塵肺、肺気腫、および気道の他の閉塞性または炎症性疾患の治療、予防、または改善のためにも有用である。
【0159】
好ましい実施形態では、疾患は皮膚疾患である。一つの実施形態では、疾患は、乾癬、脊椎関節症、ブドウ膜炎、歯肉炎、アトピー性皮膚炎および喘息から選択される。
【0160】
本発明の組成物は、IL-17により媒介される、またはIL-17産生もしくはIL-17によるTNF放出の促進を含む望ましくない急性および超急性炎症反応、例えば、急性感染、例えば、敗血性ショック(例えば、内毒素ショックおよび成人性呼吸窮迫症候群)、髄膜炎、肺炎;および重度の火傷の治療;ならびに病的なTNF放出に関連する、感染、癌、もしくは臓器機能不全の結果として起こる悪液質または消耗症候群、特に、例えばHIV感染に関連する、もしくはHIV感染の結果として起こるAIDS関連悪液質の治療に有用である。
【0161】
本発明の組成物は、骨関節炎、骨粗鬆症およびその他の炎症性関節炎を含む骨代謝の疾患、ならびに一般に、加齢性骨量減少を含む骨量減少、特に、歯周病の治療に特に有用である。
【0162】
本発明の組成物は、例えば、上述の疾患の治療または予防のために、単独の有効成分として、または1以上の他の薬物、例えば、免疫抑制もしくは免疫調節薬またはその他の抗炎症薬と組み合わせて投与してよい。例えば、本発明の結合分子は、免疫抑制モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86もしくはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;その他の免疫調節化合物、例えば、非CTLA4タンパク質配列に連結されたCTLA4もしくはその突然変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば、CTLA4もしくはその突然変異体の少なくとも細胞外部分を有する組換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば、ATCC68629と呼称)もしくはその突然変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA-Iアンタゴニスト、ICAM-Iもしくは-3アンタゴニスト、VCAM-4アンタゴニストまたはVLA-4アンタゴニスト;または化学療法薬、例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシンまたは5-フルオロウラシル;抗TNF薬、例えば、TNFに対するモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF-RIもしくはTNF-RIIに対する受容体構築物、例えば、エタネルセプト(商標)、PEG-TNF-RI;炎症性サイトカインの遮断薬、IL-I遮断薬、例えば、アナキンラまたはIL-Iトラップ、AAL160、ACZ885、IL-6遮断薬;ケモカイン遮断薬、例えば、プロテアーゼ、例えばメタロプロテアーゼの阻害剤または活性剤、抗IL-15抗体、抗IL-6抗体、抗CD20抗体、アスピリンなどのNSAID、または抗感染薬と組み合わせて使用してよい。この一覧は記述された薬剤に限定されない。
【0163】
本発明の組成物は、他の薬物と同時にまたは異なる時点で、例えば、同時、別々に、または逐次に投与してよい。
【0164】
本発明による組成物は、特に局所送達用である。よって、これらの組成物は、好ましくは、クリーム、ローション、スプレー、粉末、蒸気、溶液、ゲル、軟膏、ペースト、懸濁液、エマルション、またはフォームなどの形態である。
【0165】
これらの組成物はまた、硬膏、パッチ剤、生体接着剤または包帯として適用してもよい。よって、本発明はまた、本発明の処方物を含んでなる硬膏、パッチ剤、生体接着剤または包帯に関する。
【0166】
一つの実施形態では、局所送達は、吸入による肺へのものである。よって、本発明の組成物はまた、蒸気として、特に、噴霧乾燥または凍結乾燥組成物の場合には直接的に粉末として投与される。
【0167】
これらの組成物は、いずれの皮膚科的に許容可能な担体を用いて処方してもよい。例示的担体としては、アルミナ、クレイ、微晶質セルロース、シリカ、もしくはタルクなどの固体担体;および/または水、アルコール、グリコール、もしくは水-アルコール/グリコールブレンドなどの液体担体が含まれる。これらの治療薬はまた、治療薬が皮膚に入ることを可能とするリポソーム処方物中で投与してもよい。
【0168】
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に局所的に組成物を投与することが望ましいものであり得る。
【0169】
よって、本発明の総ての側面の好ましい実施形態では、本発明の組成物の投与は、健康なまたは罹患した皮膚への局所投与による。結合分子は、少なくとも皮膚の外層に浸透することができ、従って、皮膚にまたは経皮的に送達することができる。よって、本発明の種々の側面の一つの実施形態では、本発明の組成物または結合分子の皮膚への局所送達は、非全身性の局所的な暴露のための皮膚への直接送達である。別の実施形態では、本発明の組成物または結合分子の皮膚への局所送達は、皮膚の全層を経た浸透の後に全身性暴露を提供するための皮膚への直接送達である。
【0170】
処置される皮膚は罹患した皮膚でもまたは健康な皮膚でもよい。好ましい実施形態では、皮膚疾患は、乾癬またはアトピー性皮膚炎である。
【0171】
好ましくは、それが適用される表面積は、体表面積の1%~30%、例えば、1%~10%または1~20%である。従って、投与は、体表面積の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、27%、26%、28%、29%または30%に対するものであり得る。一つの実施形態では、病態は軽度である。別の実施形態では、病態は中等度である。別の実施形態では、病態は重度である。乾癬の治療に関しては、投与は、侵された領域、一般に、肘、膝、掌、頭皮、足の裏、生殖器、大腿上部、鼠径部、臀部、顔面および胴から選択される1以上の領域に対する。アトピー性皮膚炎の治療に関しては、投与は、侵された領域、一般に、顔面、前腕および手首から選択される1以上の領域に対する。
【0172】
特定の障害または病態の治療において有効/活性な本発明の結合分子の量は、その障害または病態の性質によって決まり、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、最適な用量範囲を特定する助けとするために、場合によりin vitroまたはin vivoアッセイを使用することができる。組成物中に使用される厳密な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重篤度によっても決まり、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。
【0173】
本発明の組成物は、好適な用量が得られるような有効量の本発明の結合分子を含んでなる。これらの化合物の正確な用量は、特定の処方物、適用様式、およびその特定の部位、宿主および処置される疾患に応じて異なる。齢、体重、性、食餌、投与時間、排泄速度、宿主の状態、薬物の組合せ、反応感受性および疾患の重篤度のような他の因子も考慮されるべきである。
【0174】
一つの実施形態によれば、用量は、約1μg/kg、約10μg/kg、約20μg/kg、約25μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約250μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、または約11mg/kg(その用量が投与される哺乳動物の質量)である有効分子の量を含有する。いくつかの実施形態では、その用量は、約20μg/kg、約25μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約250μg/kg、1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、または約10mg/kgの有効分子を含有する。
【0175】
投与計画は、医師が達成しようとする薬物動態減衰のパターンによって決まり得る。例えば、いくつかの実施形態では、週に1~4回の投与が企図される。少ない投与頻度でも使用可能である。いくつかの実施形態では、その用量は、1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、15週間毎、20週間毎、25週間毎、またはそれより長い期間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、用量は、1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、またはそれより長い期間毎に1回投与される。この療法の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投与計画は経時的に変えることができる。
【0176】
医学的処置のために本発明の組成物中で使用されるIL17結合分子は、本明細書の他所に記載される通りである。例えば、IL17結合分子は、本明細書に記載されるような配列番号2、3および4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるV単一ドメイン抗体から選択することができる。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、表1から選択される。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列、例えば、配列番号74を含んでなる。
【0177】
別の側面において、本発明は、上記の疾患の治療のために有用な本発明の組成物を含んでなるキットまたは製品を提供する。このキットは、対象とする組成物を含む、例えば局所投与用に好適な形態の容器と場合により使用説明書とを含んでなり得る。一つの側面において、本発明は、本発明の組成物を含んでなる容器、例えば、ネブライザーまたは吸入器を提供する。一つの実施形態では、この組成物は、本発明の凍結または噴霧乾燥組成物である。容器またはキットの組成物中で使用されるIL17結合分子は、本明細書の他所に記載されるような本発明の組成物である。例えば、IL17結合分子は、本明細書に記載されるような配列番号2、3および4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるV単一ドメイン抗体から選択することができる。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は表1から選択される。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列、例えば、配列番号74を含んでなる。
【0178】
別の側面において、本発明は、ヒトIL-17Aと結合することができる有効量の単一ドメイン抗体、例えば、前記Vドメインが配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列を含んでなる単一ドメイン抗体を含んでなる処方物を調製する際の、
a)50~150mMのトリス/グリシン、
b)50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
c)5~15%のソルビトール、および
d)4~30%のプロピレングリコール
を含んでなるバッファーの使用に関し、
前記組成物のpHは、約5~9、例えば7.5~8.5である。
【0179】
一つの実施形態では、バッファーは、
a)約100mMのトリス/グリシン、
b)約125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
c)約10%のソルビトール、および
d)約6%のプロピレングリコール
を含んでなり、
前記組成物のpHは、7.5~8.5、例えば約8である。
【0180】
組成物中に使用されるIL17結合分子は、本明細書の他所に記載される通りである。例えば、IL17結合分子は、本明細書に記載されるような配列番号2、3および4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるV単一ドメイン抗体から選択することができる。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は表1から選択される。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列、例えば、配列番号74を含んでなる。
【0181】
別の側面において、本発明は、ヒトIL-17Aと結合することができる、有効量の単一ドメイン抗体を、
a)50~150mMのトリス/グリシン、
b)50~150mMのL-アルギニン/グルタミン酸、
c)5~15%のソルビトール、および
d)4~30%のプロピレングリコール
を含んでなるバッファーに添加することを含んでなる、障害の治療のための処方物を調製するための方法に関する。
【0182】
組成物中で使用されるIL17結合分子は、本明細書の他所に記載される通りである。例えば、IL17結合分子は、本明細書に記載されるような配列番号2、3および4のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含んでなるV単一ドメイン抗体から選択することができる。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は表1から選択される。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも75%の相同性を有する配列、例えば、配列番号74を含んでなる。
【0183】
別の側面において、本発明は、実施例および/または添付の図面で示されるような組成物を提供する。
【0184】
本明細書でそうではないことが定義されない限り、本開示に関して使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般に理解されている意味を持つものとする。以上の開示は、本発明を作製および使用する方法ならびにその最良の実施態様を含む、本発明の範囲内に包含される主題の全般的説明を提供するが、以下の実施例は、当業者に本発明を実施することをさらに可能とさせるため、およびその完全な明細書記載を提供するために示される。しかしながら、当業者は、これらの実施例の明細が本発明の限定として読まれるべきでなく、その範囲は特許請求の範囲および本開示に付属するそれらの等価物から理解されるべきであることを認識するであろう。本発明の種々のさらなる側面および実施形態は、本開示に照らして当業者に自明である。
【0185】
遺伝子受託番号の参照を含め、本明細書に記載される総ての文献は、その全内容は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0186】
「および/または」は、本明細書で使用する場合、他を伴うまたは伴わない2つの明示された特徴または成分のそれぞれの具体的開示として理解されるべきである。例えば、「A および/またはB」は、(i)A、(ii)Bおよび(iii)AとBのそれぞれが本明細書に個々に示されているかのような、それぞれの具体的開示として理解されるべきである。文脈がそうではないことを示さない限り、上記に示された特徴の記載および定義は、本発明のいずれの特定の側面または実施形態にも限定されず、記載されている総ての側面および実施形態に等しく当てはまる。
【0187】
本発明を限定されない例でさらに説明する。
【実施例
【0188】
実施例1 V ドメインの作出
1.1 Tg/TKOマウスの構築
内因性の重鎖および軽鎖抗体発現がサイレンシングされたバックグラウンド内の生殖細胞系構成に重鎖抗体トランスジェニック遺伝子座を有するマウス(トリプルノックアウトまたはTKO)を従前に記載されるように作出した(WO2004/076618およびWO2003/000737、Ren et al. Genomics, 84, 686, 2004; Zou et al., J. Immunol., 170, 1354, 2003およびWO2016/062990)。簡単に述べれば、トランスジェニックマウスは、受精したばかりの卵母細胞に、過多のヒトV、DおよびJ遺伝子を、C1ドメイン、マウスエンハンサーおよび調節領域を欠くマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて含んでなる酵母人工染色体(YAC)で前核マイクロインジェクションを行った後に誘導された。トランスジェニック創始マウスを、内因性の免疫グロブリン発現を欠く動物と戻し交配して、記載される免疫誘導試験で使用されるTg/TKO系統を作出した。
【0189】
1.2. 免疫誘導のための抗原
免疫誘導では組換え精製タンパク質を使用した。組換えヒトIL-17Aは、Peprotech(Peprotech、カタログ番号AF-200-17)から購入した。
【0190】
1.3. 免疫誘導プロトコール
本場合では、組換えタンパク質をTg/TKOに投与した。簡単に述べれば、8~12週齢のマウスそれぞれにフロイントの完全アジュバントに乳化させて皮下送達する合計10ugの組換えタンパク質を施した後、フロイントの不完全アジュバントに乳化させて、この場合にも皮下投与され、初期プライミング後様々な期間で与えられる、1~10ugの組換えタンパク質で追加免疫を行った。最終用量の抗原は、アジュバントの不在下、リン酸緩衝生理食塩水中で腹膜内に投与した。別の免疫誘導経路および手法も使用することができる。例えば、フロイントのアジュバントの代わりに違ったアジュバントまたは免疫増強法を使用してもよい。DNA免疫誘導は多くの場合、筋肉内送達されるか、または遺伝子銃による。トランスフェクトされた細胞またはこのような細胞由来の膜調製物が、他を排するものではないが、多くの場合、腹膜内に投与される。
【0191】
1.4. 血清ELISA
免疫誘導中および誘導後に、血清をマウスから採取し、免疫原に対する重鎖抗体応答の存在をELISAにより確認した。Nunc Maxisorpプレート(Nuncカタログ番号443404)を50μl/ウェルの5μg組換え抗原/PBS溶液mlで、4℃にて一晩コーティングした。抗原溶液をデカントした後、0.05%ツイーン(商標)20(sigma P1379)を添加したPBS(PBS錠、Oxoidカタログ番号BR0014Gから調製)を用いてプレートを洗浄した後、ツイーン(商標)を添加しないPBSで洗浄した。非特異的タンパク質相互作用を遮断するために、PBS中3%脱脂乳粉末(Marvel)の溶液をウェルに加え、プレートを室温で少なくとも1時間インキュベートした。3%脱脂乳粉末/PBS中血清の希釈液をポリプロピレンチューブまたはプレート内で調製し、室温で少なくとも1時間インキュベートした後、遮断されたELISAプレートに移し、そこでさらに少なくとも1時間のインキュベーションを行った。次に、結合していないタンパク質を、PBS/ツイーン(商標)、次いでPBSでの反復洗浄を用いて洗い流した。その後、PBS/3%μ中に調製したビオチンコンジュゲートヤギ抗マウスIgG、Fcγサブクラス1特異的抗体(Jackson 115-065-205)の溶液を各ウェルに加え、さらに室温で少なくとも1時間のインキュベーションを行った。結合していない検出抗体を、PBS/ツイーン(商標)およびPBSを用いて反復洗浄することにより除去した。次に、3%Marvel/PBS中、ニュートラビジン-HRP溶液(Pierce 31030)をELISAプレートに加え、少なくとも30分間結合させた。さらに洗浄した後、TMB基質(Sigmaカタログ番号T0440)を用いてELISAを現像し、0.5M HSO溶液(Sigmaカタログ番号320501)の添加により10分後に反応を停止させた。吸光度は、450nmで読み取ることによって決定した。ELISPOTアッセイなどの別のアッセイもまた、免疫誘導重鎖抗体応答に関して確認するために使用可能である。
【0192】
1.5. 免疫マウスからのライブラリーの作製
a. 組織の処理、RNA抽出およびcDNA作製
各免疫動物から脾臓、鼠径リンパ節および上腕リンパ節をRNAlaterに採取した。各動物について、脾臓の1/3および4つのリンパ節を別個に処理した。まず、これらの組織をホモジナイズし、組織をライシングマトリックスDビーズチューブ(MP Bioカタログ番号116913100)に移した後に、β-メルカプトエタノールを含有する600μlのRLTバッファー(Qiagen RNeasy(商標)キット カタログ番号74104)を加え、その後、MP Bio Fastprepホモジナイザー(カタログ番号116004500)にて6m/sの40秒サイクルを用いてホモジナイズした。ホモジナイズ組織を含有するチューブを氷に移し、10gで5分の微小遠心分離により残渣をペレットとした。400μlの上清を取り出し、RT-PCRに使用した。
【0193】
まず、Qiagen RNeasy(商標)キット カタログ番号74104を製造者のプロトコールに従って用いてRNAを抽出した。次に、各RNAサンプルを、スーパースクリプトIII RT-PCRハイフィデリティキット(Invitrogenカタログ番号12574-035)を用いてcDNAを作製するために使用した。各脾臓およびLN RNAサンプルについて、5回のRT-PCR反応を行い、それぞれ存在する各Vファミリーに対するプライマーと組み合わせてVH_J/F(ロング)プライマーを用いた。RT-PCR反応のために、以下のチューブ反応成分に基づきマスターミックスを調製した。
12.5μlの2倍反応混合物
0.5μlのフォワードプライマー(10uM)
0.5μlのリバースプライマー(10uM)
0.5μlの酵素混合物
500ng~1μg RNA
水で25μlとする。
【0194】
RT-PCR反応は、サーマルサイクラーにて以下の条件を用いて行った。
50℃20分
94℃2分
94℃15秒、58℃30秒、68℃30秒の35サイクル
68℃5分
4℃で保持。
【0195】
370bpの範囲の産物をゲル電気泳動により確認した。
各マウスについて、所与の系統に関して1/3脾臓および4つのリンパ節のそれぞれから増幅したV産物を、Thermo/Fermentas GeneJet PCR精製キット(カタログ番号K0702)(製造者の説明書に従って使用し、産物は50μlの水中に溶出させた)を用いる精製のためにプールした。
【0196】
b. ファージミドベクターへのクローニング
ファージミドベクターpUCG3をこれらの試験において使用した。示されているように、Vは、NcoIおよびXhoIを用いた制限酵素消化、連結および形質転換を含む従来の方法を用いてpUCG3にクローニング可能である。あるいは、PCRに基づく方法を用いて、Vファージミドライブラリーを構築してもよい。これらの手法の両方を、増幅されたV配列からライブラリーを作製するために使用した。前者の方法は当技術分野で広く使用されている。GCバッファーを含むPhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(カタログ番号F532L、NEB)を、以下の試薬を含んでなるPCR反応に使用した。
Phusion GC 2倍混合物 25μl
pUCG3 5~10ng
プライマー(10uM) 各1.25μl
DMSO 1.5μl
ヌクレアーゼ不含HO 最終容量50μlまで
【0197】
使用したサイクリング条件は以下であった。
98℃30秒
98℃10秒、58℃20秒、68℃2分30秒の10サイクル
98℃10秒、58℃20秒、68℃3分の20サイクル
68℃5分
4℃で保持。
【0198】
Fermentas GeneJetゲル精製キット(カタログ番号K0691)を製造者の説明書に従って用いてPCR産物(3152bp)をゲル精製し、最終的に40μlの溶出バッファー中に溶出させた。精製されたV RT-PCR産物をメガプライマーとして、線状化したpUCG3とともに使用して、以下の反応に基づく形質転換およびライブラリー作出のためのファージミド産物を得た。
Phusion GC 2倍混合物 25μl
線状化pUCG3 700ng
PCR産物 250ng
DMSO 1.5μl
ヌクレアーゼ不含HO 最終容量50μlまで。
【0199】
PCRは次のように行った。
【化4】
【0200】
PCRの産物を1%アガロースゲルで分析した。
【0201】
種々の系統のV/ファージミド産物を、PCR精製キット(カタログ番号K0702)としてのFermentを製造者の説明書に従って用いて精製し、最終溶出は25μl HO中であり、BioRad(商標)10×1mmキュベット(BioRad(商標)カタログ番号165-2089、Eppendorf(商標)Eporatorおよび予温回収媒体(Lucigen、特許混合物)を用いたエレクトロポレーションによるTG1大腸菌(E. coli)(Lucigen、カタログ:60502-2)の形質転換に使用した。2μlの精製産物をエレクトロポレーションのために25ulの細胞に加え、各V/ファージミド産物について1800vで最大10回のエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションを受けた細胞をプールし、50mlのファルコンチューブに回収し、150rpmで振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。形質転換体のアリコートの10倍希釈系を作製し、2%(w/v)グルコースおよび100ug/mlアンピシリンを添加した2倍TY寒天を含むペトリディッシュに播種した。これらのディッシュ上に生じたコロニーを、ライブラリーサイズを評価するために使用した。残りの形質転換体を、2%(w/v)グルコースおよび100ug/mlアンピシリンを添加した2倍TY寒天を含む大規模形式のバイオアッセイディッシュに播種した。全寒天プレートを30℃で一晩インキュベートした。10mlの2倍TY培養液を大規模形式のバイオアッセイディッシュに加え、コロニーをすりつけ、OD600を測定した(OD1.0=5×10細胞/ml)。アリコートを、50%v/vグリセロール溶液(50%)を添加した後にクライオバイアルにて-80℃で保存するか、またはそのままファージ選択プロセスに使用した。
【0202】
場合によっては、クローンを直接採取し、ライブラリーの多様性の評価を得るために配列を決定した。一般に、各マウスについて、そのマウスのV多様性を完全に捕捉するために、1e8を超える組換えを有するファージディスプレーライブラリーを構築した。次に、ナイーブVライブラリーを構築した。ライブラリーファージストックの作製およびファージディスプレー選択は、公開されている方法(Antibody Engineering, Edited by Benny Lo, chapter 8, p161-176, 2004)に従って行った。
【0203】
種々の選択からのVを、中和特性を有する特定のVを同定するために、結合ELISAアッセイを用いてスクリーニングした。また、精製されたものと未精製の原形質周辺抽出物の両方のVを、IL-17Aと組換えIL-17RA-Fcの相互作用を阻害するそれらの能力に関して試験した。
【0204】
細胞株HT1080(ECACCカタログ番号85111505)からのIL-17Aにより誘導されるIL6放出を阻害するIL-17A結合Vの能力を測定するためのアッセイを開発した。細胞株を、非必須アミノ酸、10%FBS、2mM L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したアール(Earles)の塩を含むMEM中で対数増殖に維持し、加湿インキュベーターにて37℃、5%COでインキュベートした。アッセイのために、50,000細胞/ウェルを96平底組織培養プレートに播種し、一晩培養した。精製Vの連続希釈液を調製し、10ng/ml IL-17A(Peprotechカタログ番号AF200-17)を添加した培養培地/PBSとともに37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、V/IL-17A混合物(または好適な対照)をHT1080細胞(培養培地を吸引した)に移し、COインキュベーター内でさらに5時間インキュベートした。細胞培養上清を回収し、IL-6 Duoset(R & D Systems、カタログ番号DY206)を製造者の説明書に従って用いてIL6に関してアッセイした。抗IL-17A V抗体の結合動態をBIAcore(商標)T200装置にて測定した。上記のスクリーニングカスケードの後、阻害特性を示した、IL-17Aと結合するVドメインを特定した。このVドメインを最適化して配列番号1で示されるVドメインを得た。最適化は、免疫応答の際に標的とされる体細胞超突然変異ホットスポットを同定するためにリードVを同じ系譜の他のメンバーとアラインすることによって行った。最適化されたVは、IL-17細胞系アッセイにおいてより緩慢な解離速度のために、IL-17に対して改善された親和性と改善された効力を示す。本明細書に開示されるようなVドメインを、上記のようにELISAにより結合特異性を確立するために特性評価した。配列番号1で示されるものを含めいくつかのVドメインは、ヒトIL-17Aに対して良好な結合特性を有することが示された。同定されたVは、IL-17CおよびIL-17Fなどの近縁種と交差反応しないことが示された。配列番号1をコードする核酸を以下に示す。
【0205】
【化5】
【0206】
実施例2 原薬賦形剤スクリーニング
2.1. 原薬バッファー処方物の作製:組成物の種々の部分の濃度およびpH
最適な原薬バッファー賦形剤および最適pHを特定するために、V1.1(配列番号74)を用いた初期適合性スクリーニングを行った。V1.1の最適pH範囲は、pH7.5~8.5、好ましくは8.0として特定された。次に、このpHで種々の濃度のいくつかの異なるバッファー種に処方したV1.1を検討するために、スクリーニング試験とその後の実験計画法(DOE)を使用した。
【0207】
処方物スクリーニング試験をまず、加速条件(高温)下で行った。分析は、外観、UV分析(濃度および光散乱)、SE-HPLC、NR SDS PAGE、RP HPLC、AIEXおよび結合ELISAを用いて行った。V1.1を、広いpH範囲にわたってバッファーを評価するために初期加速安定性試験で試験した。次に、これらをまた、単一濃度の5種類の賦形剤を用いる場合および用いない場合で試験した。より高いpH(約pH8.0)のバッファーが、SE-HPLCおよびAIEX-HPLCおよびELISAによって測定した場合にCB001の安定性を改善したことが認められた。このスクリーンで試験した賦形剤のうち、プロピレングリコールは、生成物の安定性を高めることも示された。安定性は試験を2~8℃で1か月に延長することによって確認され、この場合、分解は見られなかった。
【0208】
次に、さらに加速スクリーニング安定性試験を、最適pH前後の別のバッファーで、さらなる供試賦形剤を用いて、また用いずに行った。バッファー単独サンプルのうち、トリス/グリシンおよびリン酸塩/クエン酸塩は、供試した他のバッファーよりも安定性を改善することが示された。100mM濃度もまた、より高い安定性を与えることが示された。この試験から、これら2つのバッファー系をDoE試験でさらに試験した。これにより、種々のレベルの、4つの異なる賦形剤(プロピレングリコール、L-アルギニン/L-グルタミン酸、ポロキサマーおよびソルビトール)のうち1つを含むバッファーを評価した。次に、トリス-グリシンを、それがリン酸塩/クエン酸塩系よりも一貫してより安定なモノマーレベルを示したことから最終バッファー系として選択した。DoE分析から、以下の処方物が最も安定であると予測された:100mMのトリス/グリシン、125mMのArg/glu、10%のソルビトール、15%のプロピレングリコールpH8.0。次に、これをさらに、DoE分析後に安定であると予測された3つの他の組合せに対して、6週間加速安定性試験で試験した。種々の処方物を加速安定性試験で試験し、SE-UPLC、UV A280nmおよび外観によって調べた。統計モデリングの後、4つの最適な原薬バッファー(DSB)処方物(表2aに示される通り、2bも参照)が選択された。
【0209】
本明細書で使用する場合、用語原薬バッファーは、有効なIL-17結合分子を含まない不活性バッファーを指す。本明細書で使用する場合、用語原薬(DS)は、ヒトIL17Aに結合する有効分子と原薬バッファーとを含んでなる処方物を指す。
【0210】
【表2】
【0211】
処方物1は、以下に示されるように処方した。
【0212】
【表3】
【0213】
表2に示されるような4種類の組合せを6週間加速安定性試験で試験し、SE-UPLC、AIEX-HPLC、RP-HPLC、UV A280nm、SDS PAGEおよびELISAを用いて分析した。試験データは、100mMのトリス/グリシン、125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、6%のプロピレングリコール、10%のソルビトール、pH8.0を含んでなる処方物は安定であり、低い凝集を示したことを実証した。図1参照。
【0214】
2.2. DSに関するより長期の安定性スクリーニング
1.1の大規模バッチを100mMのトリス/グリシン、125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、6%のプロピレングリコール、10%のソルビトール、pH8.0(DS)中に40mg/mLで製造し、複数の温度で長期安定性を調べた。サンプルをpH、UV A280nm、SE-UPLC、RP-UPLC、AIEX-HPLC、SDS PAGE、ELISA、内毒素およびバイオバーデンに関して分析した。3か月にわたる2~8℃での保存時にDSの良好な安定性を示すデータ例を図2および図3に示す。
【0215】
原薬バッファー中40mg/mLのV1.1は、モル浸透圧濃度を用いて凝固点降下により測定した場合、2,386mOsm/kgのモル浸透圧濃度を示し、これは生理学的レベルよりも高い。血液/血清の通常のモル浸透圧濃度は、約300~310mOsm/Lである。
【0216】
実施例3 局所投与用処方物のさらなる開発
3.1 適合性試験
賦形剤/処方成分を、局所用処方物とともに使用するための有効分子との適合性に関して、SE-HPLCを用いて評価される加速安定性試験で試験した。処方物をさらに安定性試験および有効性試験でも試験した。表3および表4参照。
【0217】
【表4】
【0218】
【表5】
【0219】
【表6】
【0220】
原薬バッファーは100mMのトリス/グリシン、125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、6%のプロピレングリコール、10%のソルビトール、pH8.0であり、原薬は原薬バッファー中40mg/mL V1.1である。これらを、SE-HPLCを用いた加速安定性試験、ならびにin vitro 3D皮膚構築物を用いた有効性および浸透効率により評価した(第2.2節も参照)。
【0221】
これらの試験は、処方物1~6が総てin vitro有効性および浸透性を示し、処方物1、2および3がより優れた浸透性を示し、1と3が最高の安定性であることを実証した。
【0222】
3.2 in vitro有効性:MatTekモデル(DSおよび他の処方物のin vitro有効性)
MatTekの3D乾癬組織モデル(Ayehunie、2012)に基づくモデルを使用した。乾癬組織モデルを、正常ヒト表皮ケラチノサイトおよび乾癬線維芽細胞を用いて培養した。再構築された乾癬組織は、基本細胞増殖の増加、乾癬関連バイオマーカーの発現、およびサイトカイン放出の上昇により証明されるような乾癬の表現型を採る(MatTek Corporation, 2016)。IL-17Aの付加によって修正されたMatTekの3D乾癬組織モデルを、試験バッファーおよび原薬バッファー中でのV1.1の有効性試験のために使用した。
【0223】
このモデルへのIL-17Aの付加(培養培地を介する)は、遺伝子発現により証明されるように乾癬表現型(有意な上方調節(>2倍)遺伝子発現がCCL20、CXCL5、HBD-2、IL-8およびプソリアシンで示された)ならびにサイトカイン/ケモカイン放出(サイトカイン/ケモカイン生産の有意な増加がCCL20、CXCL6、IL-6、IL-8およびTNF-αで示された)をさらに上方調節したことが実証された。次に、この上方調節モデルを用いて、このモデルでのV1.1の有効性に関して試験した。
【0224】
組織を予備バッファー(50mMトリシン)pH8.0中、局所的または全身的のいずれかで(すなわち、培養培地へのまたは組織構築物の頂端側表面への添加による基底側への送達)V1.1に曝した。組織を4日間処理し、48時間および96時間で評価した。遺伝子分析のために、標準的なRNA単離プロトコールを用いてRNAを単離した。6つの乾癬および皮膚関連遺伝子の発現レベルを決定するために定量的RT-PCRを行った。加えて、ケモカイン/サイトカインレベルを、市販のキットを用いて評価した。これは、これらの乾癬マーカーが総て有意に低減され得、従って、このモデルにおいてV1.1の有効性を示すことを実証した(図4および図5)。
【0225】
CCL20は、それが明確な用量依存的効果を示し、臨床的に関連のあるバイオマーカーであることから、局所用処方物のさらなる試験で使用するために選択された。次に、この試験を、V1.1が局所的に加えられた場合(上記のように原薬として)に効果を有するために必要とされる用量をさらに評価するために拡張した。
【0226】
1.1を4日間毎日添加した後、表6に詳細に示されるように24時間後に培地交換を行った。培地は分析まで-80℃で保存した。
【0227】
【表7】
【0228】
その後、次の試験は、CCL20は、試験バッファー(50mMトリシン)pH8.0中、V1.1の低用量の局所添加によってさえ阻害されたことを示し(図8)、この試験計画を7つの医薬品(DP)処方物を比較するために使用した(図9)。
【0229】
1.1は、表2~4に従って処方した。次に、組織構築物の浸透を、図6に記載されるようなFRETアッセイ、またはストレプトアビジンコーティングビーズを用いて捕捉させたビオチン化2型抗イディオタイプFab(IL-17Aを伴ってまたは伴わずにV1.1と結合する)を用いるGyrosアッセイのいずれかを用いて測定した。その後、検出は図7のように蛍光団標識ウサギ抗V1.1pAbを用いる。
【0230】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)複合体は、ウサギポリクローナル抗V抗体へのビオチン化IL-17Vの結合から形成される。この相互作用の検出は、ドナー蛍光団としてストレプトアビジンユウロピウムクリプテートを、そしてFRET複合体中のアクセプター蛍光団としてヤギ抗ウサギ-Alexa Fluor-647を用いて行う。ひと度、複合体が形成されれば、ドナー蛍光団の励起がアクセプター蛍光団へのFRETをもたらす(それらが近接するため)。その後、時間分解アクセプター蛍光発光を測定する。
【0231】
このアッセイは、競合形式で非ビオチン化IL-17Vを検出するために使用できる。IL-17Vは、ウサギポリクローナル抗V抗体との結合をめぐってビオチン化IL-17Vと競合し、アクセプター蛍光団からの蛍光発光の低下をもたらす。競合の程度は、IL-17Vの濃度に依存する。試験サンプル中に存在するVの量は、既知濃度の精製IL-17Vの存在下での発光シグナルの標準曲線を用いて定量される。この競合的アッセイ形式のために、定量の直線範囲が限定されるならば、このようなサンプルはこの範囲内に入ることを保証するために複数の希釈率で試験される。
【0232】
処方物1~6は総て良好な皮膚浸透を示し、処方物1~3は最高レベルの皮膚浸透を示した(図10)。
【0233】
実施例4. さらなる医薬品の開発
トランスクトール(商標)(処方物2からの浸透促進剤);プロピレングリコール(処方物3からの浸透促進剤)を用いてさらなる開発を行った。
【0234】
DOEで使用された実用範囲を決定するために、初期加速安定性試験(SE-UPLCでアッセイされた通り)を、原薬バッファー中、種々の濃度のこれらの賦形剤およびV1.1を用いて行った。加えて、薄いゲルを作製するために必要とされたポロキサマー407の範囲を決定した。ここで、原薬バッファーは100mMのトリス/グリシン、125mMのL-アルギニン/グルタミン酸、6%のプロピレングリコール、10%のソルビトール、pH8.0であり、成分は相応に調整した。PGを加えた場合、表7に示されるような値は、DSB中にその量をすでに含むように最終濃度の調整を行った。
【0235】
この後、V濃度の異なる2つの処方物(それぞれ20mg/mLおよび30mg/mL)と原薬(それぞれ20、30および40mg/mL)(表7)を、SE-UPLCおよびAIEX-HPLCにより測定されるような長期安定性を調べるために選択した。
【0236】
【表8】
【0237】
総ての処方物は5℃で(図11)、またより低い温度で(図12および図13)安定であった。結果はまた、高いPG濃度が安定性においていくつかの付加的な利益を与えることを示した。
【0238】
噴霧乾燥処方物および凍結乾燥処方物
長期保存が可能で、その後、使用の時点で再構成可能なバルク原薬を生産するために処方物中V1.1を噴霧乾燥または凍結乾燥させる。再構成は、再構成溶液中での、有益な特性、例えば、浸透または粘度の増大を有するさらなる賦形剤の使用を可能とする。例えば、特に高温下での限定された安定性のために長期保存にあまり適切でない賦形剤は、再構成溶液に含めることができる。
【0239】
一例では、上記のような原薬を噴霧乾燥または凍結乾燥させる。あるいは、有効分子を、PGおよび/またはソルビトールを含まないこと以外は原薬バッファーに相当するバッファー中に処方し、噴霧乾燥または凍結乾燥させる。PGおよび/またはソルビトールは、噴霧乾燥または凍結乾燥処方物を再構成するための再構成溶液中で使用することができる。図14は、1か月の時間経過における、PGを含まないDSB中のV1.1の安定性試験の結果を示す。これは-70℃で1か月間、処方物の良好な安定性を示す。
【0240】
参照文献
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【配列表】
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