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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20221118BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221118BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/027 502
G02F1/1339 500
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506286
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2018010400
(87)【国際公開番号】W WO2018169036
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2017052527
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104639
【弁理士】
【氏名又は名称】早坂 巧
(72)【発明者】
【氏名】椿 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 豊
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-259663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/027
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖を備え,該側鎖は2つに分枝した末端の各々がラジカル重合性置換基に終わっており,該ラジカル重合性置換基のそれぞれは該側鎖の一部をなす炭素数3個の炭化水素鎖(L)上に置換しており,該炭化水素鎖(L)はポリマーの主鎖に基-C(O)O-を介して結合しているものである,(メタ)アクリル系モノマー単位(1)と,
側鎖を備え,該側鎖は2つに分枝した末端の一方がカルボキシル基に終わり,他方がラジカル重合性置換基に終わっており,該ラジカル重合性置換基は該側鎖の一部をなす炭素数3個の炭化水素鎖(M)上に置換し,該炭化水素鎖(M)はポリマーの主鎖に基-C(O)O-を介して結合しており,該カルボキシル基は該炭化水素鎖(M)上に基-OC(O)-Z-を介して結合しているものであり,ここに該基の一部をなす基-Z-は,炭素数2~7個からなる,飽和若しくは不飽和の鎖状若しくは環状の,炭化水素骨格又はベンゼン環を含んでなるものである,(メタ)アクリル系モノマー単位(2)と,又は更に
ラジカル重合性置換基で終わる1つの末端を有する側鎖を備えた(メタ)アクリル系モノマー単位(3)と,
を構成要素として含んでなり,かつ該ラジカル重合性置換基は相互に独立して(メタ)アクリロイルオキシ基である,重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)と,
多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)と
光重合開始剤(C)を含んでなる,
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
モノマー単位(3)における該ラジカル重合性置換基が,側鎖の一部をなす炭素数3~5個を含んでなる炭化水素鎖上に置換しているものである,請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
該モノマー単位(2)における基-Z-の2個の結合位置が,当該基を構成する炭素原子のうち互いに隣接する2個の炭素原子上に存在するものである,請求項1又は2の樹脂組成物。
【請求項4】
該モノマー単位(1)が,アクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1a)と,メタクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1b)とからなるものである,請求項1~の何れかの樹脂組成物。
【請求項5】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する該モノマー単位間のモル比が,モノマー単位(1):モノマー単位(2):モノマー単位(3)=20~80:5~50:0~30である,請求項1~の何れかの樹脂組成物。
【請求項6】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が次の一般式:
【化1】

〔式中,各Rは,独立して,水素原子又はメチル基を表し,X,X,X及びXは,それぞれ独立して,下記一般式(1)で示される置換基を表し,
【化2】

(式中,Rは,水素原子又はメチル基を表し,「*-」は単結合を表す。),
は,下記構造式で表される置換基の何れか表し,
【化3】

l,m及びnは,比l:m:nの形で各モノマー単位相互のモル比を表す。〕で示されるものである,請求項1~の何れかの樹脂組成物。
【請求項7】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)において,比l:m:n=20~80:5~50:0~30である,請求項の樹脂組成物。
【請求項8】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)の一般式中,次式:
【化4】

で示されるモノマー単位(1)が,X,X共にアクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1a)と,X,X共にメタクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1b)とを含んでなるものである,請求項又はの樹脂組成物。
【請求項9】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が,次式
【化5】

【化6】

【化7】

(式中,l,m及びnは,比l:m:nの形で各モノマー単位相互のモル比を表し,比l:m:n=20~80:5~50:0~30である)の何れかで示されるものである,請求項の何れかの樹脂組成物。
【請求項10】
該多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)が,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ジペンタエリスリトールポリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート,ペンタエリスリトールテトラアクリレート,エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート,ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート,及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる群より選ばれるものである,請求項1~の何れかの樹脂組成物。
【請求項11】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が,該モノマー単位(1),(2),及び(3)の何れとも異なるモノマー単位(4)を更に含んでなるものである,請求項1~の何れかの樹脂組成物。
【請求項12】
側鎖を備え,該側鎖は2つに分枝した末端の各々がラジカル重合性置換基に終わっており,該ラジカル重合性置換基のそれぞれは該側鎖の一部をなす炭素数3個の炭化水素鎖(L)上に置換しており,該炭化水素鎖(L)はポリマーの主鎖に基-C(O)O-を介して結合しているものである,(メタ)アクリル系モノマー単位(1)と,
側鎖を備え,該側鎖は2つに分枝した末端の一方がカルボキシル基に終わり,他方がラジカル重合性置換基に終わっており,該ラジカル重合性置換基は該側鎖の一部をなす炭素数3個の炭化水素鎖(M)上に置換し,該炭化水素鎖(M)はポリマーの主鎖に基-C(O)O-を介して結合しており,該カルボキシル基は該炭化水素鎖(M)上に基-OC(O)-Z-を介して結合しているものであり,ここに該基の一部をなす基-Z-は,炭素数2~7個からなる,飽和若しくは不飽和の鎖状若しくは環状の,炭化水素骨格又はベンゼン環を含んでなるものである,(メタ)アクリル系モノマー単位(2)と,又は更に,
ラジカル重合性置換基で終わる1つの末端を有する側鎖を備えた(メタ)アクリル系モノマー単位(3)と,
を構成要素として含んでなり,かつ該ラジカル重合性置換基は相互に独立して(メタ)アクリロイルオキシ基である,重合性(メタ)アクリル系ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,(メタ)アクリル系樹脂組成物に関し,より詳しくは感光性樹脂組成物,特に,フォトスペーサー等に用いられる感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置において,絶縁膜,保護膜,液晶層を一定の厚みに保つためのスペーサー等の硬化膜として,複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む構造単位とカルボキシル基を含む構造単位を有する重合体と,塩基性化合物を含有する硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)の製造において,液晶層の厚み(前後の配向膜の間のギャップ)が一定となるよう高度に制御することが求められ,その成否が画質の良否に直結する。このため,スペーサーが用いられ,近年では,カラーフィルター上等にカラム状のフォトスペーサー(PS)が形成されるようになっている。フォトスペーサーは,フォトリソグラフィーにより形成されることから,その作製材料として良好な感光性を有するレジスト必要である。同時に,作製工程の効率の点から,迅速な現像性,即ちレジストの露光後に,不要な部分が現像液によって迅速に除去できることが求められる。更には,ディスプレイ画面に対し指などにより外力がかかった場合,特にカラム状のフォトスペーサーに外力が集中するが,フォトスペーサーは,それにより幾らか圧縮された場合でも圧力の除去後には実質的な回復が可能であるよう,用いるレジストが優れた弾性回復率の硬化物を与えるものであることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-16393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は,活性エネルギー線に対する良好な感光性(硬化性)と,感光後の迅速な現像性を有し,且つ外力の負荷による変形に対して優れた弾性回復率を示す硬化物を与えるものである,活性エネルギー線硬化型の樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に沿って研究の結果,本発明者らは,複数の末端にラジカル重合性置換基を備えてなる分枝した側鎖を有するタイプのモノマーと,複数の末端にカルボキシル基とラジカル重合性置換基とを備えてなる分枝した側鎖を有するタイプのモノマーとを構成単位として含んでなる重合性樹脂と,多官能(メタ)アクリレート系モノマーとを含んでなる重合性樹脂組成物が,これを光硬化させるとき,優れた感光性を有し,感光後はアルカリ溶液への迅速な現像性を示し,得られる硬化物が優れた弾性回復率を有することを見出した。本発明は,当該発見に基づき,更に検討を重ねて完成させたものである。即ち,本発明は以下を提供する。
【0007】
1.各々がラジカル重合性置換基に終わる2~3個の末端を有する分枝した側鎖を備えたモノマー単位(1)と,カルボキシル基に終わる末端とラジカル重合性置換基に終わる末端とを有する2つに分枝した側鎖を備えたモノマー単位(2)と,又は更に,ラジカル重合性置換基で終わる1つの末端を有する側鎖を備えたモノマー単位(3)と,を構成要素として含んでなる重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)と,多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)と光重合開始剤(C)を含んでなる,感光性樹脂組成物。
2.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)において,該モノマー単位(1)における該ラジカル重合性置換基は,側鎖の一部をなす炭素数3~5個を含んでなる炭化水素鎖(L)上に置換しており,該モノマー単位(2)における該ラジカル重合性置換基は,側鎖の一部をなす炭素数3~5個を含んでなる炭化水素鎖(M)上に置換すると共に,該炭化水素鎖(M)上に基-OC(O)-Z-を介して該カルボキシル基が結合しており,ここに該基の一部をなす基-Z-は,炭素数2~7個からなる,飽和若しくは不飽和の鎖状若しくは環状の,炭化水素骨格又はベンゼン環を含んでなるものであり,且つ該モノマー単位(3)における該ラジカル重合性置換基が,側鎖の一部をなす炭素数3~5個を含んでなる炭化水素鎖上に置換しているものである,上記1の樹脂組成物。
3.該モノマー単位(2)における基-Z-の2個の結合位置が,当該基を構成する炭素原子のうち互いに隣接する2個の炭素原子上に存在するものである,上記1又は2の樹脂組成物。
4.該ラジカル重合性置換基が,相互に独立して,(メタ)アクリロイルオキシ基である,上記1~3の何れかの樹脂組成物。
5.該モノマー単位(1)が,アクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1a)と,メタクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1b)とからなるものである,上記1~4の何れかの樹脂組成物。
6.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する該モノマー単位間のモル比が,モノマー単位(1):モノマー単位(2):モノマー単位(3)=20~80:5~50:0~30である,上記1~5の何れかの樹脂組成物。
7.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が次の一般式:
【0008】
【化1】
【0009】
〔式中,各Rは,独立して,水素原子又はメチル基を表し,X,X,X及びXは,それぞれ独立して,下記一般式(1)で示される置換基を表し,
【0010】
【化2】
【0011】
(式中,Rは,水素原子又はメチル基を表し,「*-」は単結合を表す。),
は,下記構造式で表される置換基の何れか表し,
【0012】
【化3】
【0013】
l,m及びnは,比l:m:nの形で各モノマー単位相互のモル比を表す。〕で示されるものである,上記1~5の何れかの樹脂組成物。
8.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)において,比l:m:n=20~80:5~50:0~30である,上記7の樹脂組成物。
9.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)の一般式中,次式:
【0014】
【化4】
【0015】
で示されるモノマー単位(1)が,X,X共にアクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1a)と,X,X共にメタクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1b)とを含んでなるものである,上記7又は8の樹脂組成物。
10.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が,次式
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
の何れかで示されるものである,上記7~9の何れかの組成物。
11.該多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)が,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ジペンタエリスリトールポリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート,ペンタエリスリトールテトラアクリレート,エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート,ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート,及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる群より選ばれるものである,上記1~10の何れかの樹脂組成物。
【0020】
12.該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が,該モノマー単位(1),(2),及び(3)の何れとも異なるモノマー単位(4)を更に含んでなるものである,上記1~5の何れかの樹脂組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,活性エネルギー線に対する良好な反応性(本発明において,包括的に「感光性」という。)を示して硬化し,感光後のアルカリ性現像液に対する迅速な現像性を有する樹脂組成物を得ることができる。また本発明の樹脂組成物は,外力の負荷による変形に対して優れた弾性回復率を示す硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明において,「活性エネルギー線」とは,紫外線,電子線,α線,β線,γ線等の電離放射線をいう。これらのうち,取扱いに便利なものとして,例えば紫外線が挙げられ,照射には高圧水銀灯,超高圧水銀灯を簡便に用いることができる。
【0023】
本発明において,「(メタ)アクリル系」の語は,アクリル酸及びメタクリル酸に基づく化合物を,両者を区別することなく包括的に意味する。「(メタ)アクリレート」の語も同様である。
【0024】
本発明において,重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)は,モノマー単位(1)及(2)を,又は更にモノマー単位(3)を含んでなり,それらのモノマー単位は,各々(メタ)アクリル系モノマー単位である。本発明において,各モノマー単位の構造について「側鎖」というときは,それらが共通して有する(メタ)アクリレート部分が付加重合してなる主鎖に対する側鎖を構成する部分をいう。
【0025】
モノマー単位(1)は,各々がラジカル重合性置換基に終わる2~3個の末端を有する分枝した側鎖を備えている。それらラジカル重合性置換基は,好ましくは,炭化水素鎖(L)上にそれぞれ置換しており,当該炭化水素鎖(L)は,好ましくは基-COO-を介して,ポリマーの主鎖に結合している。当該炭化水素鎖(L)を構成する炭素数は好ましくは3~5個であり,より好ましくは3又は4個であり,特に好ましくは3個である。
【0026】
モノマー単位(2)は,カルボキシル基に終わる末端とラジカル重合性置換基に終わる末端とを有する2つに分枝した側鎖を備えている。ここに,当該ラジカル重合性置換基は,好ましくは,炭化水素鎖(M)上に置換しており,当該炭化水素鎖(M)は,好ましくは基-COO-を介して,ポリマーの主鎖に結合している。当該炭化水素鎖(M)を構成する炭素の数は好ましくは3~5個であり,より好ましくは3又は4個であり,特に好ましくは3個である。他方,当該カルボキシル基は,当該炭化水素鎖(M)上に,基-OC(O)-Z-を介して置換している。ここに,当該基の一部をなす基-Z-は,炭素数2~7個からなり,飽和若しくは不飽和の鎖状若しくは環状の,炭化水素骨格又はベンゼン環を含んでなる。また,基-Z-は,その2個の結合位置が,当該基を構成する炭素原子のうち互いに隣接する2個の炭素原子上に存在することが,より好ましい。また,モノマー単位(2)は,分子量が1000未満であることが好ましい。
【0027】
モノマー単位(3)は,ラジカル重合性置換基で終わる1つの末端を有する側鎖を備えている。当該ラジカル重合性置換基は,好ましくは,炭化水素鎖(N)上に置換しており,当該炭化水素鎖(N)は,好ましくは基-COO-を介して,ポリマーの主鎖に結合している。当該炭化水素鎖(N)を構成する炭素の数は好ましくは3~5個であり,より好ましくは3又は4個であり,特に好ましくは3個である。
【0028】
モノマー単位(1)~(3)において,「ラジカル重合性置換基」は,好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基である。該モノマー単位(1)は,アクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1a)と,メタクリロイルオキシ基を該ラジカル重合性置換基として有するモノマー単位(1b)とからなるものであってもよい。
【0029】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)は,上記モノマー単位(3)を含まずに,モノマー単位(1)及び(2)で構成されていることができる。その場合,当該ポリマーにおけるモノマー単位(1)とモノマー単位(2)とのモル比に明確な限界はないが,一般に好ましくは,モノマー単位(1):モノマー単位(2)=20~80:5~50であり,より好ましくは50~70:10~30である。
【0030】
該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)が,モノマー単位(3)を含んで構成されている場合,モノマー単位(1)~(3)の相互のモル比に明確な限界はないが,一般に好ましくは,モノマー単位(1):モノマー単位(2):モノマー単位(3)=20~80:5~50:0~30であり,より好ましくは50~70:10~30:0~10である。
【0031】
また,フォトスペーサの弾性回復率を高める観点からは,該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)は二重結合当量が100~270のものであることが好ましい。ここで,「二重結合当量」とは,アクリロイル基1モルに対する樹脂組成物のグラム数をいう。また,「樹脂組成物のグラム数」とは,樹脂組成物の全体(但し,溶媒を除く)の質量を意味する。
【0032】
なお,該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)は,本発明の目的に反しない限り,上記モノマー単位(1)~(3)以外の追加のモノマー単位を更に含んでいてもよい。そのような追加のモノマー単位は,例えば,所望により,本発明の感光性樹脂組成物のガラス転移点(Tg)や疎水性等の物性を調整する目的で利用できる。追加のモノマー単位「モノマー単位(4)」を含めたとき,該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する各モノマー単位のモル比に明確な限定はないが,一般に好ましくは,モノマー単位(1):モノマー単位(2):モノマー単位(3):モノマー単位(4)=20~80:5~50:0~30:0~40であり,より好ましくは50~70:10~30:0~10:0~30である。
【0033】
上記追加のモノマー単位の例としては,重合性(メタ)アクリル系モノマーが挙げられるが,これに限定されない。また重合性(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては,ジシクロペンテニルアクリレ-ト,ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト,ジシクロペンタニルアクリレ-ト,ベンジルアクリレート,ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート,ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート,ノナンジオールジアクリレ-ト,ポリプロピレングリコールアクリレート,1,4-ブタンジオールジメタクリレート,ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート,ジシクロペンタニルメタクリレート,ペンタメチルピペリジルメタクリレ-ト,テトラメチルピペリジルメタクリレート,メトキシポリエチレングリコールメタクリレート,ベンジルメタクリレート,ネオペンチルグリコールジメタクリレート,ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられるが,これらに限定されない。
【0034】
上記重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)は,特に好ましくは次の一般式,
【0035】
【化8】
【0036】
〔式中,各Rは,独立して,水素原子又はメチル基を表し,X,X,X及びXは,それぞれ独立して,下記一般式(1)で示される置換基を表し,
【0037】
【化9】
【0038】
(式中,Rは,水素原子又はメチル基を表し,「*-」は単結合を表す。),
は,下記構造式で表される置換基の何れか表し,
【0039】
【化10】
【0040】
l,m及びnは,l:m:nの形で各モノマー単位相互のモル比を表す。〕で示される。
【0041】
上記において,該重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)の一般式中,次式
【0042】
【化11】
【0043】
で示されるモノマー単位(1)は,X,X共にアクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1a)と,X,X共にメタクリロイルオキシ基であるモノマー単位(1b)とを含んでなるものであってもよい。
【0044】
上記において,好ましくは,比l:m:n=20~80:5~50:0~30であり,より好ましくは50~70:10~30:0~10である。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の構成要素の1つである多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)の例としては,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ジペンタエリスリトールポリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート,ペンタエリスリトールテトラアクリレート,エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート,ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート,及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられるが,これらに限定されない。これらのうち,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは,特に好ましいものの1つである。本発明の樹脂組成物中,重合性(メタ)アクリル系ポリマー(A)の固形分100重量部に対し,多官能(メタ)アクリレート系モノマー(B)は,好ましくは50~350重量部,より好ましくは80~300重量部,更に好ましく100~250重量部が含有される。
【0046】
本願発明において,ラジカル重合開始剤としては,慣用のものを適宜用いることができる。例として,光重合開始剤イルガキュア907,イルガキュア379,イルガキュア819,イルガキュアOXE-01,イルガキュアOXE-02等が挙げられるが,これに限定されない。
【実施例
【0047】
以下実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明がそれらの実施例に限定されることは意図しない。
【0048】
〔製造例1〕 アクリル樹脂(A-1)(X:Y=80:20)の製造
【0049】
【化12】
【0050】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘-アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更に無水アクリル酸g,アクリル酸15g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート173gを添加し,70℃で12時間反応させた。その後,反応後の溶液に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-1)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は37.4であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
【0051】
〔製造例2〕 アクリル樹脂(A-2)(X:Y=80:20)の製造
【0052】
【化13】
【0053】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80 ℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更に無水メタクリル酸87g,アクリル酸15g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190gを添加し,70℃で12時間反応させた。その後,溶液に更に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-2)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は34.8であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
【0054】
〔製造例3〕 アクリル樹脂(A-3)の製造(X:Y:Z=40:40:20)
【0055】
【化14】
【0056】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘-アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80 ℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更に無水アクリル酸35g,無水メタクリル酸43g,アクリル酸15g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート180gを添加し,70℃で12時間反応させた。その後,溶液に更に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-3)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は36.2であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0057】
〔製造例4〕 アクリル樹脂(A-4)(X:Y=80:20)の製造
【0058】
【化15】
【0059】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80 ℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更にアクリル酸51g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート110gを添加し,100℃で12時間反応させた。その後,溶液に更に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-4)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は46.2であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は17,000であった。
【0060】
〔製造例5〕 アクリル樹脂(A-5)(X:Y=80:20)の製造
【0061】
【化16】
【0062】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80 ℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更にアクリル酸51g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート240gを添加し,100℃で12時間反応させた。反応後,カレンズMOI87gを添加し,70℃で10時間反応させた。その後,溶液に更に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-5)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は30.0であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は28,000であった。
【0063】
〔製造例6〕 アクリル樹脂(A-6)の製造(W:X:Y:Z=20:56:16:8)
【0064】
【化17】
【0065】
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,ジシクロペンタニルメタクリレート39g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート208gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)7.2gを添加し,80℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。
得られた溶液に,更に無水メタクリル酸76g,アクリル酸15g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160gを添加し,70℃で12時間反応させた。その後,得られた溶液に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-6)の40%溶液を得た。
このアクリル樹脂の固形分換算した酸価は32.3であった。GPCによる重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
【0066】
〔実施例1~14,比較例1~8〕
(1)フォトスペーサー用レジストの調製
表1に示した組成に従い,重合体(A-1)35.7g,多官能アクリレート系モノマー(B)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA)(B-1)14.3g,光重合開始剤イルガキュア907(C-1)1.5g,及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート48.5gを遮光下で混合し,実施例1のフォトスペーサー用レジストを調製した。表中の実施例2~14及び比較例1~8も同様に調製した。なお,表中のB-2は,ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学(株)製,製品名:PET3A)である。
【0067】
【表1】
【0068】
(2)フォトスペーサーの作製
10cm×10cm角のガラス基板上に,実施例及び比較例の各レジストをスピンコーターにより塗布し,乾燥し,乾燥膜厚3μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で90℃,2分間加熱した。得られた塗膜に対し複数の開口部を有するフォトスペーサー形成用のマスクを通して超高圧水銀灯の光を100mJ/cm照射した(i線換算で照度20mW/cm)。なお,マスクと基板の間隔(露光ギャップ)は100μmで露光した。その後0.3%KCO水溶液を用いてアルカリ現像した。水洗したのち,230℃で30分間ポストベークを行い,膜厚3μmのフォトスペーサーを作製した。なお,マスク開口径を調整することにより下底径7μmを有するフォトスペーサーを作製した。
【0069】
(3)現像速度の測定
10cm×10cm角のガラス基板上にスピンコーターにより塗布し,乾燥し,乾燥膜厚3μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で90℃,2分間加熱した。0.3%KCO水溶液を用いて得られた塗膜をアルカリ現像し,基板上からレジスト残渣がなくなるまでの現像時間を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
(4)弾性回復率の測定
フォトスペーサーの弾性回復特性は,下記数式(1)で定義された一定の圧力がかかった時の「弾性回復率」によって評価することができる。弾性回復率(%)の値の高い方が弾性回復特性に優れる。
ガラス基板上に形成したフォトスペーサーのうち任意に選択した1個のフォトスペーサーに対し,微小硬度計(フィッシャーインストルメンツ社製;「フィッシャースコープH- 100」)と断面が正方形の平面圧子(50μm×50μm)を用いて,荷重をかけたときと戻したときの変形量を測定した。この際に2mN/秒の負荷速度で,10秒かけて20mNまで荷重をかけ,5秒間保持した。荷重がかかった状態でのフォトスペーサーの初期位置からの変形量を測定した。このときの変化量を総変形量T0(μm)とする。次に,2mN/秒の除荷速度で10秒かけて荷重を0まで解除し,その状態で5秒間保持した。この時のフォトスペーサーの変形量を塑性変形量T1(μ m)とする。
上記のようにして測定したT0とT1から,下記数式(1)を用いて弾性回復率を算出した。結果を表2に示す。
・弾性回復率(%)=[(T0-T1)/T0]×100 ・・・(1)
【0071】
【表2】
【0072】
表2に見られるように,実施例のフォトレジストは現像完了まで8~13秒であり,比較例の15~60秒に比べて,現像速度が顕著に速い。また実施例のフォトレジストでは,弾性回復率が,80%以上のもの5例(全体の42%),75%~80%未満のもの4例(全体の33%),70%~75%未満のもの3例(全体の25%)であるのに対し,比較例のフォトレジストでは,80%以上のものはなく(全体の0%),75%~80%未満のもの1例(全体の13%),70%~75%未満のもの2例(全体の25%),65%~70%未満のもの4例(全体の50%),60%~65%未満のもの1例(全体の13%)であり,実施例のフォトレジストは比較例により全体として顕著に優れている。また比較例のレジストにおいて弾性回復率が70以上を示したものは,現像速度が50秒(比較例2),60秒(比較例6),及び20秒(比較例8)であり,とりわけ長い現像時間を要するものである。これらの結果は,実施例のレジストにより,現像の迅速性と優れた弾性回復率との両立が達成されていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は,活性エネルギー線に対する良好な感光性と,感光後のアルカリ性現像液に対する迅速な現像性と,外力の負荷による変形に対して優れた弾性回復率を示す硬化物を与えることができるものとして,有用である。