(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】把持システム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20221118BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20221118BHJP
B25J 15/10 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B25J15/08 J
B25J15/10
(21)【出願番号】P 2019518808
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018780
(87)【国際公開番号】W WO2018212189
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017096829
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 芳一
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】川畑 晋治
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085455(JP,A)
【文献】特開2014-108466(JP,A)
【文献】特開2012-011531(JP,A)
【文献】特開2015-000455(JP,A)
【文献】特開平05-318356(JP,A)
【文献】特開2016-087749(JP,A)
【文献】特開平10-249767(JP,A)
【文献】特開2008-149444(JP,A)
【文献】特開2010-064155(JP,A)
【文献】特開2011-177863(JP,A)
【文献】米国特許第09533419(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム機構と、
前記アーム機構に取り付けられ、複数の指部によって対象物を把持するハンド機構と、
前記対象物の位置情報を取得する取得部と、
前記対象物に対する前記ハンド機構の位置を制御するための所定のサーボ制御構造に従って前記アーム機構および該ハンド機構を制御することで、該ハンド機構の位置を制御する制御装置と、を備える把持システムにおいて、
前記ハンド機構が、前記複数の指部における関節部を駆動させる駆動部と、前記複数の指部のうちの少なくとも所定の指部に対応して設けられ、その関節部より先端部側の所定の接触部位が前記対象物に接触したことを検知する接触検知部と、を有し、
前記制御装置が、前記取得部によって取得された前記対象物の位置情報に基づいて決定される前記対象物における目標位置に向けて該ハンド機構の前記所定の指部における前記所定の接触部位が移動するように、前記所定のサーボ制御構造に従って該所定の接触部位の位置をサーボ制御し、該所定の接触部位が前記目標位置に到達する前に該所定の接触部位の該対象物への接触が前記接触検知部によって検知されると、前記所定のサーボ制御構造において少なくとも位置に関するフィードバック系を含む位置サーボループを無効化する
ことで、前記対象物から受ける力によって前記所定の指部の関節部が折れ曲がることを可能にする、
把持システム。
【請求項2】
前記所定のサーボ制御構造は、位置に関するフィードバック系を含む位置サーボループと、速度に関するフィードバック系を含む速度サーボループと、電流に関するフィードバック系を含む電流サーボループと、を有し、
前記制御装置は、前記所定の接触部位の前記対象物への接触が前記接触検知部によって検知されると、前記所定のサーボ制御構造のうち、前記位置サーボループ、前記速度サーボループ、前記電流サーボループの全てを無効化する、
請求項1に記載の把持システム。
【請求項3】
前記所定のサーボ制御構造は、位置に関するフィードバック系を含む位置サーボループ
と、速度に関するフィードバック系を含む速度サーボループと、電流に関するフィードバック系を含む電流サーボループと、を有し、
前記制御装置は、前記所定の接触部位の前記対象物への接触が前記接触検知部によって検知されると、前記所定のサーボ制御構造のうち、前記位置サーボループ及び前記速度サーボループを無効化し、前記電流サーボループは作動させた状態を維持する、
請求項1に記載の把持システム。
【請求項4】
前記制御装置が、更に、前記所定の指部における前記所定の接触部位の前記対象物への接触が前記接触検知部によって検知されたときの、該所定の接触部位の位置である接触位置を導出するとともに、該接触位置に関する接触位置情報に基づいて、前記取得部によって取得された前記対象物の前記位置情報を補正する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の把持システム。
【請求項5】
前記接触検知部が、前記ハンド機構の前記複数の指部それぞれに対応して設けられており、それぞれの接触検知部によって、各指部の関節部より先端側の所定の接触部位が前記対象物に接触したことを検知することが可能であって、
前記ハンド機構によって前記対象物を把持する際に、前記制御装置が、前記複数の指部のうち前記対象物の把持に用いる少なくとも2本の把持用指部における前記所定の接触部位の互いの間隔を、前記対象物における所定の把持箇所間の幅よりも大きい所定の初期間隔に広げた状態で、前記所定のサーボ制御構造に従って該所定の接触部位の位置をサーボ制御して該ハンド機構を前記対象物に接近させ、
さらに、前記ハンド機構を前記対象物に接近させているときに、前記2本の把持用指部のいずれかの前記所定の接触部位の前記対象物への接触が前記接触検知部によって検知された場合、前記制御装置が、前記対象物に接触した把持用指部側の方向へ該ハンド機構を移動させることで該2本の把持用指部における前記所定の接触部位の間に前記対象物の前記所定の把持箇所が位置する状態とし、該状態となってから、該2本の把持用指部における前記所定の接触部位の互いの間隔を前記所定の初期間隔よりも小さくすることで各把持用指部を前記対象物における前記所定の把持箇所に接触させて、該把持用指部によって前記対象物を把持する請求項4に記載の把持システム。
【請求項6】
前記ハンド機構によって前記対象物を把持する際に、前記制御装置が、前記接触位置情報に基づいて補正された前記位置情報に基づいて前記アーム機構および前記ハンド機構を制御することで該ハンド機構を前記対象物に接近させる請求項5に記載の把持システム。
【請求項7】
前記接触検知部が、前記ハンド機構の前記複数の指部それぞれに対応して設けられており、それぞれの接触検知部によって、各指部の関節部より先端側の所定の接触部位が前記対象物に接触したことを検知することが可能であって、
前記ハンド機構によって前記対象物を把持する際に、前記制御装置が、前記複数の指部のうち前記対象物の把持に用いる各把持用指部の前記駆動部をサーボ制御することで、それぞれに対応する前記接触検知部によってそれぞれの前記所定の接触部位の前記対象物への接触が検知されるまで、前記所定のサーボ制御構造に従って該所定の接触部位の位置をサーボ制御して各把持用指部を前記対象物に接近させ、
さらに、前記制御装置が、各把持用指部の前記駆動部の作動を、それぞれに対応する前記接触検知部によってそれぞれの前記所定の接触部位の前記対象物への接触が検知された時点で順次一旦停止させ、全ての前記把持用指部が前記対象物に接触してから、各把持用指部によって前記対象物を押圧するために少なくとも1本の把持用指部の前記駆動部を再度作動させる請求項4に記載の把持システム。
【請求項8】
前記ハンド機構によって前記対象物を把持する際に、前記制御装置が、前記接触位置情報に基づいて補正された前記位置情報に基づいて各把持用指部の前記駆動部をサーボ制御
する請求項7に記載の把持システム。
【請求項9】
前記制御装置が、全ての前記把持用指部が前記対象物に接触してから、各把持用指部によって前記対象物を押圧するために、全ての前記把持用指部の前記駆動部を再度作動させる請求項7または8に記載の把持システム。
【請求項10】
前記制御装置が、各把持用指部の前記対象物への接触位置に関する接触位置情報に基づいて、現在の各把持用指部の接触位置が該対象物を把持するために適切な位置であるか否かを判別し、現在の各把持用指部の接触位置が該対象物を把持するために適切な位置ではないと判定された場合、少なくとも1本の把持用指部の前記対象物への接触位置を変更してから、各把持用指部によって該対象物を押圧する請求項7から9のいずれか一項に記載の把持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の指部により対象物を把持するハンド機構を備えた把持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアーム等に取り付けられ、複数の指部によって対象物を把持するハンド機構が開発されている。例えば、特許文献1には、複数の指部を有するハンド機構(多指ハンド部)と、該ハンド機構が先端に取り付けられたロボットアームと、を備えたロボット装置が開示されている。この特許文献1に記載されたロボット装置においては、ハンド機構の各指部に力センサが設けられている。そして、この力センサによって該指部と対象物との接触位置を検出する。また、このロボット装置は、対象物を含む画像データを撮像する視覚センサを備えている。そして、視覚センサによって撮像された画像データに基づいて対象物の位置情報を取得する。さらに、画像データから取得された対象物の位置情報を、力センサによって検出された接触位置の情報に基づいて補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術のように、ハンド機構により対象物を把持する際に、該ハンド機構の指部を該対象物に接触させ、その接触位置を導出することで、該対象物の位置をより高い精度で把握することが可能となる。このように対象物の位置を高精度で把握することは、ハンド機構による該対象物の把持の安定性を向上させる上で非常に好ましい。
【0005】
しかしながら、対象物の位置を把握するためにハンド機構の指部を該対象物に接触させた場合、該対象物に接触した時の該指部の速度が大きいと、該対象物または該指部自体がダメージを受ける虞がある。一方で、対象物または指部自体へダメージを与えることを抑制するため、該指部を該対象物に接触させる際のハンド機構の移動速度を小さくすると、タクトタイムが長くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、ハンド機構によって対象物を把持するために、該対象物の位置をより好適に把握することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る把持システムは、アーム機構と、前記アーム機構に取り付けられ、複数の指部によって対象物を把持するハンド機構と、前記対象物の位置情報を取得する取得部と、前記対象物に対する前記ハンド機構の位置を制御するための所定のサーボ制御構造に従って前記アーム機構および該ハンド機構を制御することで、該ハンド機構の位置を制御する制御装置と、を備える把持システムにおいて、前記ハンド機構が、前記複数の指部における関節部を駆動させる駆動部と、前記複数の指部のうちの少なくとも所定の指部に対応して設けられ、その関節部より先端部側の所定の接触部位が前記対象物に接触したことを検知する接触検知部と、を有し、前記制御装置が、前記取得部によって取得された前記対象物の位置情報に基づいて決定される前記対象物における目標位置に向けて該ハンド機構の前記所定の指部における前記所定の接触部位が移動するように、前記所定のサーボ制御構造に従って該所定の接触部位の位置をサーボ制御し、該所定の接触部位が前記目標位置に到達する前に該所定の接触部位の該対象物への接触が前記接触検知部によって検知されると、前記所定のサーボ制御構造において少なくとも位置に関するフィードバック系を含む位置サーボループを無効化する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンド機構によって対象物を把持するために、該対象物の位置をより好適に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係るロボットアームの概略構成を示す図である。
【
図4】実施例に係るハンド機構の指部の側面図である。
【
図5】実施例に係るハンド機構の指部の先端部側を
図4の矢印Aの方向から見た図である。
【
図6】実施例に係るハンド機構の、ベース部における指部の接続部近傍部分の内部構造、および、指部における基端部および第2関節部の内部構造を示す図である。
【
図7】実施例に係るハンド機構の、指部における第1関節部および第2指リンク部の内部構造を示す図である。
【
図8】実施例に係るハンド機構の指部における第2関節部の可動範囲を示す図である。
【
図9】実施例に係るハンド機構の指部における第1関節部の可動範囲を示す図である。
【
図10】実施例に係るハンド機構の指部の第1リンク部における感圧センサの配置を示す図である。
【
図11A】実施例に係るアーム制御装置およびハンド制御装置に含まれる各機能部を示すブロック図である。
【
図11B】アーム機構及びハンド機構の位置をサーボ制御するためのサーボ制御構造の概念図である。
【
図12A】実施例に係るサーチ動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第1の図である。
【
図12B】実施例に係るサーチ動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第2の図である。
【
図12C】実施例に係るサーチ動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第3の図である。
【
図13A】実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第1の図である。
【
図13B】実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第2の図である。
【
図13C】実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第3の図である。
【
図13D】実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第4の図である。
【
図13E】実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構の様子を時系列に沿って示した第5の図である。
【
図14】実施例に係る位置決め動作制御におけるハンド機構の位置修正の第1の他の例について説明するための図である。
【
図15】実施例に係る位置決め動作制御におけるハンド機構の位置修正の第2の他の例について説明するための図である。
【
図16】実施例係る把持動作制御が実行されたときのハンド機構の各把持用指部と対象物との水平方向の位置関係を時系列に沿って示した図である。
【
図17】実施例に係るサーチ動作制御のフローを示すフローチャートである。
【
図18】実施例に係る位置決め動作制御および把持動作制御のフローを示すフローチャートの一部である。
【
図19】実施例に係る位置決め動作制御および把持動作制御のフローを示すフローチャートの他の一部である。
【
図20】実施例に係る位置決め動作制御および把持動作制御のフローを示すフローチャートの他の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る把持システムでは、ハンド機構によって把持する対象物の位置情報が取得部によって取得される。ここで、取得部は、ユーザーによる入力や、視覚センサによって撮像された画像等に基づいて対象物の位置情報を取得する。また、ハンド機構における各指部には、それぞれにおける関節部を駆動させる駆動部が設けられている。さらに、ハンド機構における複数の指部のうちの少なくとも所定の指部に対応して接触検知部が設けられている。接触検知部は、指部の関節部より先端部側の所定の接触部位が対象物に接触したことを検知する。
【0011】
そして、把持システムでは、制御装置が、所定のサーボ制御構造に従ってアーム機構とハンド機構を制御することで、対象物に対するハンド機構の位置、すなわち所定の指部における所定の接触部位の位置がサーボ制御される。このような所定の接触部位の位置に関するサーボ制御が制御装置により実行されることで、所定の接触部位の対象物に対する位置決め、例えば、対象物を把持するための位置決めやその他の目的のための位置決めを実現することができる。なお、所定のサーボ制御構造は、このようなハンド機構の位置をサーボ制御できるものであれば、特定の構造のものに限定されない。例えば、所定のサーボ制御構造は、位置に関するフィードバック系を含む位置サーボループと、速度に関するフィードバック系を含む速度サーボループと、電流に関するフィードバック系を含む電流サーボループを含む構造でもよく、更にはフィードフォワード系を含んで構成されてもよい。また、対象物における目標位置は、取得部によって取得された対象物の位置情報に基づいて決定される。
【0012】
そして、本発明に係る把持システムでは、所定のサーボ制御構造に従って所定の指部における所定の接触部位を目標位置に向けて移動させているときに、目標位置に到達する前に該所定の指部における該所定の接触部位の対象物への接触が接触検知部によって検知されると、制御装置が、所定のサーボ制御構造において少なくとも位置サーボループを無効化する。このように位置サーボループが無効化されると、該駆動部から関節部に対して所定の接触部位の位置決めのための駆動力が付与されなくなるため、所定の指部における所定の接触部位に対して外力が働いた際に、該所定の指部の関節部が、その機械的構造が許容する可動範囲内で折れ曲がることになる。そのため、目標位置への到達前に所定の指部における所定の接触部位が対象物に接触したときに、位置サーボループが無効化されると、その関節部が折れ曲がることになる。これによれば、所定の指部における所定の接触部位と対象物との接触によって、これらに作用する衝突力を低減することができ、以て、ハンド機構の指部のダメージを可及的に抑制することで好適な対象物の位置把握が実現される。
【0013】
更に好ましくは、前記制御装置が、更に、前記所定の指部における前記所定の接触部位の前記対象物への接触が前記接触検知部によって検知されたときの、該所定の接触部位の位置である接触位置を導出するとともに、該接触位置に関する接触位置情報に基づいて、前記取得部によって取得された前記対象物の前記位置情報を補正してもよい。ここで、所定の指部における所定の接触部位の対象物への接触が接触検知部によって検知されるまでは、該所定の指部の駆動部に対しては所定のサーボ制御構造に従って所定の接触部位の位置はサーボ制御されている状態となっている。そのため、対象物への接触によって生じる反力を接触検知部によって検出することができる。これにより、所定の指部の対象物への接触を検知することがでる。そこで、本発明では、制御装置が、所定の指部における所定の接触部位の対象物への接触が接触検知部によって検知されたときの、所定の接触部位の接触位置を導出するとともに、該接触位置に関する接触位置情報に基づいて、取得部によって取得された対象物の位置情報を補正する。目標位置への到達前に所定の接触部位が対象物に接触したことは、実際の対象物の位置と、取得部によって取得された対象物の位置とがずれていたことを意味する。そこで、上記のように導出された所定の接触部位の接触位置に基づいて対象物の位置情報を補正することで、ハンド機構による対象物の把持をより好適に行い得る。
【0014】
このように、本発明に係る把持システムによれば、所定の指部の先端部を対象物に接触させた際に生じる衝突力を低減することができる。そのため、所定の指部の所定の接触部位を対象物に接触させる際のハンド機構の移動速度を小さくすることなく、これらの接触に起因して該対象物または該指部自体がダメージを受けることを抑制することができる。したがって、タクトタイムが長くなることを抑制しつつ、対象物の位置をより高精度で把握することが可能となる。更に、上述した接触位置に基づいた対象物の位置情報の補正を行うことで、該対象物の位置をより高精度で把握することができ、以てハンド機構によってより安定的に対象物を把持することができる。
【0015】
<実施例>
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
ここでは、本発明に係るハンド機構および把持システムをロボットアームに適用した場合について説明する。
図1は、本実施例に係るロボットアームの概略構成を示す図である。ロボットアーム1は、ハンド機構2、アーム機構3、および台座部4を備えている。アーム機構3の一端にハンド機構2が取り付けられている。また、アーム機構3の他端が台座部4に取り付けられている。ハンド機構2は、アーム機構3に接続されたベース部20と、該ベース部20に設けられた4本の指部21とを備えている。なお、ハンド機構2の詳細な構成については後述する。
【0017】
<アーム機構>
アーム機構3は、第1アームリンク部31、第2アームリンク部32、第3アームリンク部33、第4アームリンク部34、第5アームリンク部35、および接続部材36を備えている。そして、ハンド機構2のベース部20が、アーム機構3の第1アームリンク部31の一端側に形成された第1関節部30aに接続されている。第1関節部30aには、第1アームリンク部31に対してハンド機構2を該第1アームリンク部31の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。第1アームリンク部31の他端側は、第2関節部30bで第2アームリンク部32の一端側に接続されている。第1アームリンク部31と第2アームリンク部32とはその中心軸が垂直に交わるように接続されている。そして、第2関節部30bには、第2アームリンク部32に対して、第1アームリンク部31を、その他端側を中心に該第2アームリンク部32の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第2アームリンク部32の他端側は、第3関節部30cで第3アームリンク部33の一端側に接続されている。第3関節部30cには、第3アームリンク部33に対して第2アームリンク部32を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。
【0018】
同じように、第3アームリンク部33の他端側は、第4関節部30dで第4アームリンク部34の一端側に接続されている。また、第4アームリンク部34の他端側は、第5関節部30eで第5アームリンク部35に接続されている。そして、第4関節部30dには、第4アームリンク部34に対して第3アームリンク部33を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第5関節部30eには、第5アームリンク部35に対して第4アームリンク部34を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。さらに、第5アームリンク部35は、台座部4から垂直に配置された接続部材36に第6関節部30fで接続されている。第5アームリンク部35と接続部材36とは、それぞれの中心軸が同軸となるように接続されている。そして、第6関節部30fには、第5アームリンク部35を、該第5アームリンク部35および接続部材36の軸回りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。アーム機構3をこのような構成とすることで、例えば、該アーム機構3を6自由度の自由度を有する機構とすることができる。
【0019】
<ハンド機構>
次に、ハンド機構2の構成について
図2から
図10に基づいて説明する。
図2はハンド機構2の斜視図である。
図3はハンド機構2の上面図である。なお、
図3において、矢印は、各指部21の回転可動範囲を示している。
図2および
図3に示すように、ハンド機構2においては、ベース部20に4本の指部21が、ハンド機構2の長手方向(
図3において紙面に垂直な方向)の軸を中心とした円周上に、等角度間隔(すなわち90deg間隔)に配置されている。また、4本の指部21は全て同一の構造を有し且つ同一の長さである。但し、各指部21の動作は、それぞれ独立して制御される。
【0020】
図4から
図10は、ハンド機構2の指部21の構成およびその駆動機構について説明するための図である。
図4は指部21の側面図である。なお、
図4では、ベース部20が透過された状態で記載されており、ベース部20の内部に位置する指部21の一部の内部構造をも示している。また、
図5は、指部21の先端部側を
図4の矢印Aの方向から見た図である。なお、
図4および
図5では、後述する指部21の第2指リンク部212の一部が透過された状態で記載されており、該第2指リンク部212の内部構造をも示されている。
【0021】
図2および
図4に示すとおり、各指部21は、第1指リンク部211、第2指リンク部212、および基端部213を有している。そして、指部21の基端部213がベース部20に接続されている。ここで、基端部213は、
図3において矢印で示すように、ベース部20に対して指部21の長手方向(
図3において紙面に垂直な方向)の軸回りに回転可能に接続されている。また、指部21において、基端部213に第2指リンク部212の一端が接続されている。そして、この第2指リンク部212と基端部213との接続部に第2関節部23が形成されている。
【0022】
ここで、
図6に基づいて基端部213の駆動機構および第2関節部23の駆動機構について説明する。
図6は、ベース部20における指部21の接続部近傍部分の内部構造、および、指部21における基端部213および第2関節部23の内部構造を示す図である。この
図6に示すように、ベース部20の内部には歯車65、歯車66、第2モータ52、および第3モータ53が設けられている。歯車65は、指部21全体を回転させるための歯車であり、基端部213の回転軸に接続されている。歯車66は第3モータ53の回転軸に接続されている。そして、歯車65と歯車66とが噛み合っている。このような構成により、第3モータ53が回転すると、その回転力が二つの歯車65、66を介して基端部213の回転軸に伝達される。その結果、基端部213が回転駆動され、それに伴って、
図3において矢印で示す範囲で指部21全体が回転駆動される。
【0023】
また、第2関節部23の内部には、ウォームホイール63と、該ウォームホイール63に噛み合ったウォーム64が設けられている。そして、第2関節部23における第2指リンク部212の回転軸にウォームホイール63が接続されている。また、ベース部20の内部に設けられた第2モータ52の回転軸にウォーム64が接続されている。このような構成により、第2モータ52が回転駆動すると、その回転力がウォーム64およびウォームホイール63によって第2指リンク部212の回転軸に伝達される。その結果、第2指リンク部212が、基端部213に対して相対的に回転駆動される。ここで、
図7は、第2モータ52の駆動力により実現される、指部21における第2関節部23の可動範囲を示す図である。この
図7に示すように、第2関節部23は屈曲および伸展可能に形成されている。なお、第2モータ52による駆動力と第3モータ53による駆動力とは、それぞれ独立してその作動対象に伝わるように構成されている。
【0024】
また、
図4および
図5に示すように、指部21においては、第2指リンク部212の他端に第1指リンク部211の一端が接続されている。そして、この第1指リンク部211と第2指リンク部212との接続部に第1関節部22が形成されている。ここで、
図8に基づいて第1関節部22の駆動機構について説明する。
図8は、指部21における第1関節部22および第2指リンク部212の内部構造を示す図である。第1関節部22の内部には、互いに噛み合った二つの傘歯車61、62が設けられている。そして、第1関節部22における第1指リンク部211の回転軸に一方の傘歯車61が接続されている。また、第2指リンク部212の内部に設けられた第1モータ51の回転軸に他方の傘歯車62が接続されている。このような構成により、第1モータ51が回転駆動すると、その回転力が二つの傘歯車61、62によって第1指リンク部211の回転軸に伝達される。その結果、第1指リンク部211が、第2指リンク部212に対して相対的に回転駆動される。ここで、
図9は、第1モータ51の駆動力により実現される、指部21における第1関節部22の可動範囲を示す図である。この
図9に示すように、第1関節部22は屈曲および伸展可能に形成されている。
【0025】
また、
図2および
図4に示すように、本実施例では、指部21において、第1関節部22よりも先端部側の第1指リンク部211よりも、該第1関節部22よりベース部20側(基端部213側)の第2指リンク部212の方が長くなっている。
【0026】
また、
図2、
図4、
図5、および
図10に示すように、本実施例では、指部21の第1指リンク部211の先端側に感圧センサ70が設けられている。感圧センサ70は、第1指リンク部211の先端部に作用する外力(圧力)を検出するセンサである。また、
図4に示すように、感圧センサ70は、第1指リンク部211における、第1関節部22の屈曲方向側の壁面(以下、「屈曲側壁面」と称する場合もある。)215および伸展方向側の壁面(以下、「伸展側壁面」と称する場合もある。)216の両面に設けられている。ここで、本実施例では、第1指リンク部211の先端側における屈曲側壁面215は曲面状に形成されている。そこで、
図10に示すように、第1指リンク部211の先端側における屈曲側壁面215には、複数の感圧センサ70をその曲面形状に沿って並べて設置してもよい。
【0027】
<台座部>
次に、台座部4に内蔵された、アーム制御装置42およびハンド制御装置43の構成について
図11Aに基づいて説明する。アーム制御装置42はロボットアーム1のアーム機構3を制御するための制御装置である。ハンド制御装置43はロボットアーム1のハンド機構2を制御するための制御装置である。アーム制御装置42及びハンド制御装置43によって、本実施形態の把持システムの制御装置が形成される。
図11Aは、アーム制御装置42およびハンド制御装置43に含まれる各機能部を示すブロック図である。
【0028】
アーム制御装置42は、アーム機構3の各関節部に設けられたモータを駆動するための駆動信号を生成する複数のドライバを含み、各ドライバからの駆動信号が対応する各モータに供給されるように構成される。また、アーム制御装置42は、演算処理装置及びメモリを有するコンピュータを含んでいる。そして、アーム制御装置42は、機能部として、アーム制御部420およびモータ状態量取得部421を有している。これらの機能部は、アーム制御装置42に含まれるコンピュータにおいて所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0029】
アーム制御部420は、ハンド制御装置43が有する機能部である後述の対象物情報取得部430によって取得された対象物情報およびハンド制御装置43が有する機能部である後述の位置情報補正部435によって補正された対象物10の位置情報に基づいて各ドライバから駆動信号を供給することで、アーム機構3の各関節部30a、30b、30c、30d、30e、30fに設けられたモータを制御する。そして、アーム制御部420は、各モータを制御することでアーム機構3を動かし、それによって、例えば、ハンド機構2を、対象物の把持のために適した所定の把持可能位置に移動させる。また、アーム機構3の各関節部30a、30b、30c、30d、30e、30fに設けられたモータには、それぞれの回転状態に関する状態量(モータの回転軸の回転位置や回転速度等)を検出するエンコーダ(図示略)が設けられている。そして、各モータのエンコーダによって検出された各モータの状態量が、アーム制御装置42のモータ状態量取得部421に入力される。そして、アーム制御部420は、モータ状態量取得部421に入力された各モータの状態量に基づいて、例えば、ハンド機構2が所定の把持可能位置に移動するように各モータをサーボ制御する。アーム制御部420によるサーボ制御については、後述する。
【0030】
また、ハンド制御装置43は、ハンド機構2に設けられた各モータを駆動するための駆動信号を生成する複数のドライバを含み、各ドライバからの駆動信号が対応する各モータに供給されるように構成される。また、ハンド制御装置43は、演算処理装置及びメモリを有するコンピュータを含んでいる。そして、ハンド制御装置43は、機能部として、対象物情報取得部430、ハンド制御部431、モータ状態量取得部432、センサ情報取得部433、接触位置導出部434および位置情報補正部435を有している。これらの機能部は、ハンド制御装置43に含まれるコンピュータにおいて所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0031】
対象物情報取得部430は、ハンド機構2よって把持すべき対象物に関する情報である対象物情報を取得する。ここで、対象物情報には、対象物の形状、寸法、およびその位置に関する情報、並びに、対象物周囲の環境情報(対象物の周囲に存在する該対象物以外の物に関する情報であり、例えば、対象物が収容されている容器の形状や当該容器における対象物の並びに関する情報)等が含まれる。この対象物情報取得部430は、ユーザーによって入力された対象物情報を取得してもよい。また、対象物を含む画像を撮像する視覚センサが設けられている場合、対象物情報取得部430は、該視覚センサによって撮像された画像から対象物情報を取得してもよい。
【0032】
また、ハンド制御部431は、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報および位置情報補正部435によって補正された対象物10の位置情報に基づいて各ドライバから駆動信号を供給することで、ハンド機構2の各指部21を駆動させる各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53を制御する。例えば、ハンド制御部431は、アーム制御部420によってアーム機構3が制御されることで所定の把持可能位置に移動されたハンド機構2によって対象物を把持するために、ハンド機構2の各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53を制御する。また、ハンド機構2の各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53には、それぞれの回転状態に関する状態量(モータの回転軸の回転位置や回転速度等)を検出するエンコーダ(図示略)が設けられている。そして、各モータ51、52、53のエンコーダによって検出された各モータ51、52、53の状態量が、ハンド制御装置43のモータ状態量取得部432に入力される。そして、ハンド制御部431は、モータ状態量取得部432に入力された各モータ51、52、53の状態量に基づいて、例えば、複数の指部21によって対象物を把持するように、各指部21における各モータ51、52、53をサーボ制御する。ハンド制御部431によるサーボ制御については、後述する。
【0033】
さらに、ハンド制御装置43はセンサ情報取得部433を有している。センサ情報取得部433には、ハンド機構2の各指部21の第1指リンク部211に設けられた感圧センサ70の検出値が入力される。そして、ハンド制御部431は、各感圧センサ70によって、各指部21の対象物への接触が検知された場合に、その検知信号に基づいて各指部21における各モータ51、52、53を制御することもできる。また、各感圧センサ70によって、各指部21の対象物への接触が検知された場合に、接触位置導出部434によって、各指部21が対象物に接触した位置である接触位置が導出される。
【0034】
ここで、アーム制御部420及びハンド制御部431によるサーボ制御について、
図11Bに基づいて説明する。
図11Bは、各制御部に形成されるサーボ制御構造の基本構造を示す概念図である。
図11Bでは、モータや指部、アーム等の構造物である負荷装置をまとめて制御対象80としている。なお、実際には、アーム制御部420とハンド制御部431とではそれぞれに対応したサーボ制御構造が形成されているが、概念的には両者のサーボ制御構造は同一視できるものとして説明を簡便化する。なお、
図11Bに示すサーボ制御構造は、コンピュータであるアーム制御装置42及びハンド制御装置43において所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0035】
位置制御器81は、例えば、比例制御(P制御)を行う。具体的には、各制御装置から通知された位置指令と検出位置との偏差である位置偏差に、位置比例ゲインKppを乗ずることにより速度指令を算出する。なお、位置制御器81は、予め制御パラメータとして、位置比例ゲインKppを有している。次に、速度制御器82は、例えば、比例積分制御(PI制御)を行う。具体的には、位置制御器81により算出された速度指令と検出速度との偏差である速度偏差の積分量に速度積分ゲインKviを乗じ、その算出結果と当該速度偏差の和に速度比例ゲインKvpを乗ずることにより、電流指令(トルク指令)を算出する。なお、速度制御器82は、予め制御パラメータとして、速度積分ゲインKviと速度比例ゲインKvpを有している。また、速度制御器82はPI制御に代えてP制御を行ってもよい。この場合には、速度制御器82は、予め制御パラメータとして、速度比例ゲインKvpを有することになる。次に、電流制御器83は、速度制御器82により算出された電流指令に基づいてアンプ84を駆動するための指令電圧を生成する。生成された指令電圧に応じてアンプ84がモータ2を駆動するための駆動電流を出力し、それによりアーム機構3やハンド機構2に搭載された各モータが駆動制御される。電流制御器83は、電流指令に関するフィルタ(1次のローパスフィルタ等)を含み、制御パラメータとして、これらのフィルタの性能に関するカットオフ周波数等を有している。
【0036】
そして、
図11Bに示すサーボ制御構造は、電流制御器83を前向き要素とする電流フィードバック系を含む電流サーボループを有し、更に当該電流フィードバック系と、速度制御器82及び制御対象80とを前向き要素とする速度フィードバック系を含む速度サーボループを有し、更に、当該速度フィードバック系と位置制御器81を前向き要素とする位置フィードバック系を含む位置サーボループを有している。このように構成されるサーボ制御構造によって、各制御装置は、アーム機構3やハンド機構2に搭載されているモータをサーボ制御し、特にハンド機構2の指部の位置が所望の位置となるように制御する。
【0037】
なお、
図11Aでは、把持システムに含まれる制御装置として、アーム制御装置42とハンド制御装置43とが区別して示されているが、別法として、各機能部が、両装置が一体化された一の制御装置内に形成される構成を採用することもできる。また、把持システムに含まれる制御装置が、アーム制御装置42とハンド制御装置43とに区別される場合でも、
図11Aに示す各機能部は、技術的な齟齬が生じない限りにおいて実質的に何れかの制御装置内に形成されればよく、必要に応じてアーム制御装置42とハンド制御装置43との間で適切な情報の授受を行うことができる。また、アーム制御装置42またはハンド制御装置43における各機能部のうちの一部が、アーム制御装置42およびハンド制御装置43とは別体の制御装置内に形成される構成を採用することもできる。
【0038】
<サーチ動作制御>
ここで、本実施例に係るロボットアーム1においては、ハンド制御装置43に含まれる機能部である対象物情報取得部430によって、該対象物の位置情報を含む対象物情報が取得される。しかしながら、対象物情報取得部430によって取得される対象物の位置情報はある程度の誤差を含んでいる虞がある。例えば、視覚センサによって撮像された対象物を含む画像から対象物の位置情報を取得した場合、該視覚センサの撮像性能に起因する誤差が該対象物の位置情報に含まれることになる。しかしながら、ロボットアーム1のハンド機構2によって対象物を安定的に把持するためには、該対象物の位置情報を高精度で把握した上で、アーム機構3およびハンド機構2を制御することが望まれる。
【0039】
そこで、本実施例に係るロボットアーム1においては、対象物を把持すべくアーム機構3およびハンド機構2を制御する前に、その準備段階として、該対象物の位置情報を高精度で把握することを目的としてサーチ動作制御が行われる。以下、本実施例に係るサーチ動作制御について
図12Aから
図12Cに基づいて説明する。
図12Aから
図12Cは、本実施例に係るサーチ動作制御が実行されたときのハンド機構2の様子を時系列に沿って示した図である。このサーチ動作制御は、アーム制御装置42によってアーム機構3が制御されるとともに、ハンド制御装置43によってハンド機構2が制御されることで実現される。
【0040】
なお、以下においては、ハンド機構2の各指部21を、それぞれ、第1指部21A、第2指部21B、第3指部21C、第4指部21Dと称する。また、サーチ動作制御では、ハンド機構2の4本の指部21のうちの所定の指部を対象物に接触させる。
図12Aから
図12Cにおいては、対象物10に接触させる所定の指部を第1指部21Aとする場合の動作を示している。また、
図12Aから
図12Cにおいては、便宜的に、ハンド機構2における第1指部21A、第2指部21B、および第3指部21Cのみを図示しており、第4指部21Dの図示を省略している。また、
図12Aから
図12Cは、対象物10の垂直方向(
図12Aから
図12Cにおける上下方向)の位置情報を把握することを目的した場合の動作を示している。
【0041】
サーチ動作制御においては、
図12Aに示すように、ハンド機構2の形態を、4本の指部21のうち第1指部21Aのみが対象物10に接触するような形態である第1アプローチ形態とした状態で、該ハンド機構2を白抜き矢印の方向(すなわち、
図12Aにおける下方に向う方向)に動かし、該ハンド機構2を対象物10に近づける。このとき、第1指部21Aの先端部が対象物10における目標位置に向って移動するように、
図11Bに示すサーボ制御構造に従って、アーム機構3の各関節部30a、30b、30c、30d、30e、30fに設けられたモータ、および、ハンド機構2の各指部21の各関節部を駆動させる各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53が、それぞれ、アーム制御装置42およびハンド制御装置43によってサーボ制御される。ここで、目標位置は、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に基づいて決定される。このとき、目標位置は、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に含まれる対象物10の位置情報に対応する位置に該対象物10が存在すると想定した場合の該対象物10の内部となる位置に決定されている。
【0042】
ハンド機構2の形態を第1アプローチ形態とした状態で、上記のように決定された目標位置に向かって第1指部21Aの先端部が移動するように、アーム機構3および該ハンド機構2が制御されることで、
図12Bに示すように、該第1指部21Aの先端部が目標位置に到達する前に対象物10の上面S1に該第1指部21Aの先端部が接触する。なお、
図12Bにおいても、白抜き矢印は、ハンド機構2の移動方向を表している。また、
図12Bにおいては、対象物10の上面S1と第1指部21Aの先端部との接触位置が一点鎖線で囲まれている。このように、対象物10の上面S1に第1指部21Aの先端部が接触すると、その接触が、該第1指部21Aの第1指リンク部211Aに設けられた感圧センサ70によって検知される。このとき、感圧センサ70の検出値がセンサ情報取得部433によって取得される。そして、第1指部21Aの感圧センサ70によって、該第1指部21Aと対象物10との接触が検知されると、接触位置導出部434がその接触位置を導出する。ここで、接触位置導出部434は、アーム制御装置42のモータ状態量取得部421によって取得されるアーム機構3の各モータの状態量、および、ハンド制御装置43のモータ状態量取得部432によって取得されるハンド機構2の各モータの状態量に基づいて、第1指部21Aの先端部と対象物10との接触位置を導出する。そして、接触位置導出部434によって導出された接触位置に関する接触位置情報に基づいて、位置情報補正部435が、対象物情報取得部430によって取得された対象物10の位置情報(垂直方向の位置情報)を補正する。例えば、導出された接触位置が、目標位置から想定される接触予定位置よりもずれている場合には、対象物情報取得部430によって取得された対象物10の位置情報が垂直方向にそのずれ量だけ誤差を含んでいることを意味する。そこで、位置情報補正部435は、そのずれ量を解消するように対象物情報取得部430によって取得された対象物10の位置情報を補正する。これによって、対象物10の位置情報を高精度で把握することができる。
【0043】
このようなサーチ動作制御を実行することにより対象物10の垂直方向の位置情報を高精度で把握することで、後述する把持用指部によって該対象物10を把持する際に、該把持用指部の垂直方向の位置を所望の位置に高精度で制御することができる。その結果、ハンド機構2による対象物10の把持の安定性を向上させることができる。また、同一の対象物10が同一の高さで複数配置されている場合、一の対象物10の垂直方向の位置情報を高精度で把握すれば、他の対象物10を把持する際にも、該一の対象物10の垂直方向の位置情報を該他の対象物10に関する垂直方向の位置情報として用いてハンド機構2を制御することができる。
【0044】
ただし、第1指部21Aの先端部と対象物10とが接触したときに、これらに作用する衝突力が大きいと、例えば、対象物10が硬度の高い物であった場合は、第1指部21Aがダメージを受ける虞があり、また、例えば、対象物10が硬度の低い物であった場合は、該対象物10がダメージを受ける虞がある。一方で、第1指部21Aまたは対象物10へダメージを与えることを抑制するために、該第1指部21Aを該対象物10に接触させる際のハンド機構2の移動速度を小さくすると、該対象物10を把持するための制御の準備段階の制御であるサーチ動作制御にかかる時間が長くなってしまう。そうなると、対象物10の把持のために必要となるタクトタイムが全体として長くなってしまうという問題が生じる。
【0045】
そこで、本実施例に係るサーチ動作制御においては、第1指部21Aの感圧センサ70によって該第1指部21Aの先端部と対象物10との接触が検知されると、該第1指部21Aの先端部の位置に関するモータのサーボ制御、例えば、第1関節部22Aを駆動させる第1モータ51のサーボ制御に関し、そのサーボ制御構造において少なくとも位置サーボループを無効化する。ここで、少なくとも位置サーボループを無効化することとは、ハンド機構2の制御において、所定のサーボ制御構造のうち少なくとも位置サーボループを作動させない状態とすること、換言すると、ハンド機構2の位置が、少なくとも位置指令に従ってサーボ制御されない状態とすることを意味する。このような少なくとも位置サーボループを無効化する処理の形態としては、以下の2つの形態が例示できる。
(第1例)位置サーボループ、速度サーボループ、電流サーボループの全てを無効化する。この場合、上記の例では、第1指部21Aの第1モータ51には実質的に駆動電流が供給されないこととなる。その結果、該第1モータ51から該第1指部21Aの第1関節部22Aに対して駆動力が付与されなくなる。そのため、
図12Cに示すように、第1指部21Aの第1指リンク部211Aが対象物10から受ける力によって、該第1指部21Aの第1関節部22が折れ曲がることになる。
(第2例)位置サーボループ及び速度サーボループを無効化し、電流サーボループは作動した状態を維持する。この場合、上記の例では、第1指部21Aの第1モータ51により発生されるトルクのみが所望のトルクとなるように所定のトルク指令に従って制御される。この場合の所望のトルクは、第1指部21Aが対象物に接触する前の第1モータ51のトルクや、対象物や第1指部21Aが損傷しない程度のトルクとされるのが好ましい。当該第2例の場合でも、当該所望のトルクと第1指部21Aの第1指リンク部211Aが対象物から受ける力との相関により、該第1指部21Aの第1関節部22が折れ曲がることになる。
なお、「少なくとも位置サーボループを無効化する処理」については、本明細書においては、以降、上記の第1例及び第2例のいずれに限定することなく、単に「サーボ無効化処理」又は「サーボ無効化」と称する。
【0046】
なお、
図9に示したように、本実施例に係るハンド機構2の指部21の第1関節部22は屈曲および伸展が可能な構造となっている。そのため、第1指部21Aの第1指リンク部211Aが対象物10から力を受けた際には、該第1指部21Aの第1関節部22Aは屈曲方向または伸展方向のいずれの方向にも曲がり得る。そして、このときに第1指部21Aの第1関節部22Aが屈曲方向または伸展方向のどちらの方向に曲がるのかは、該第1指部21Aの対象物10への接触方向に応じて決まる。そのため、第1指部21Aの先端部が対象物10に接触したときに該第1指部21Aの第1関節部22Aが所望の方向に曲がるように、第1アプローチ形態における対象物10に対する第1指部21Aの姿勢を定めてもよい。
【0047】
図12Cに示すように、第1指部21Aの先端部が対象物10に接触した時点で該第1指部21Aの第1関節部22Aが折れ曲がると、該接触によってこれらに作用する衝突力を低減することができる。つまり、サーチ動作制御における、第1指部21Aを対象物10に接触させる際のハンド機構2の移動速度を小さくすることなく、これらの接触に起因して該第1指部21Aまたは該対象物10がダメージを受けることを抑制することができる。したがって、本実施例に係るサーチ動作制御によれば、タクトタイムが長くなることを抑制しつつ、対象物10の位置をより高精度で把握することが可能となる。
【0048】
なお、上記サーチ動作制御において、第1指部21Aの感圧センサ70によって該第1指部21Aの先端部と対象物10との接触が検知されると、ハンド制御装置43からアーム制御装置42に対して、アーム機構3の動作を停止させるように指令信号が送信される。アーム制御装置42がこの指令信号を受信すると、アーム制御部420によって、
図12Aおよび
図12Bにおいて白抜き矢印で示すようにハンド機構2を対象物10に向けて移動させていたアーム機構3の動作が停止される。
【0049】
また、上記においては、対象物の垂直方向の位置情報を把握する場合のサーチ動作制御を例に挙げて説明したが、対象物の水平方向の位置情報を把握する場合にも同様のサーチ動作制御を適用することができる。この場合、ハンド機構2の形態を第1アプローチ形態とした状態で、該ハンド機構2を対象物に対して水平方向から近づけていけばよい。そして、この場合も、第1指部21Aの先端部が対象物に接触したときには、上述したサーチ動作制御と同様の制御を実行することができる。
【0050】
また、本実施例において、感圧センサ70としては、圧電式やひずみゲージ式、静電容量式等、周知のどのような方式のセンサを用いてもよい。なお、本実施例においては、この感圧センサ70が、本発明に係る「接触検知部」に相当する。また、第1指リンク部211の先端部に外力(圧力)が作用すると、第1モータ51にかかる負荷が変化する。そこで、この第1モータ51にかかる負荷の変化を電流値の変化として検出する電流計を、感圧センサ70に代えて、本発明に係る「接触検知部」として用いることもできる。
【0051】
また、上述したサーチ動作制御において、第1指部21Aの感圧センサ70によって該第1指部21Aの先端部と対象物10との接触が検知された時点でサーボ無効化処理されるモータは必ずしも第1モータ51に限られない。つまり、第1指部21Aの先端部と対象物10との接触が検知された時点で、第1指部21Aの第2関節部22Bを駆動させる第2モータ52についてサーボ無効化処理を施してもよい。この場合、第1指部21Aの先端部と対象物10との接触が検知された時点で該第1指部21Aの第2関節部22Bが折れ曲がることになる。そのため、この場合でも、第1指部21Aと対象物との接触によってこれらに作用する衝突力を低減することができる。更に、別法として、アーム機構3が安全な状態を保てるのであれば、アーム機構3に組み込まれた何れかのモータについて、サーボ無効化処理を施すこともできる。
【0052】
また、サーチ動作制御において、対象物に接触させる指部の部位(すなわち、本発明に係る「所定の接触部位」)は必ずしも該指部の先端部でなくともよい。例えば、上記のとおり、ハンド機構2の第1指部21Aを対象物に接触させる所定の指部とする場合に、第1指部21Aにおける第2指リンク部21Bを対象物に接触させてもよい。ただし、この場合は、サーチ動作制御における第1アプローチ形態を、第1指部21Aにおける第2指リンク部21Bのみが対象物に接触するような形態とする必要がある。さらに、感圧センサによって対象物への接触を検知する場合は、第2指リンク部21Bに感圧センサを設ける必要がある。そして、サーチ動作制御において、第2指リンク部21Bの対象物への接触が検知された時点で、第1指部21Aの第2関節部22Bを駆動させる第2モータ52についてサーボ無効化処理を施す。これにより、第1指部21Aの第2指リンク部21Bが対象物に接触した時点で該第1指部21Aの第2関節部22Bが折れ曲がることになる。そのため、この場合でも、第1指部21Aと対象物との接触によってこれらに作用する衝突力を低減することができる。
【0053】
<位置決め動作制御>
ここで、ハンド機構2によって対象物を把持する場合、少なくとも2本の指部21によって対象物を挟み込む必要がある。以下においては、ハンド機構2によって対象物を把持する際に該対象物10を挟み込むのに用いられる指部を「把持用指部」と称する場合もある。なお、ハンド機構2によれば、4本の指部21のうち2本の指部を把持用指部として用いて対象物を把持することもでき、また、4本の指部21のうち3本の指部を把持用指部として用いて対象物を把持することもでき、また、4本の指部21の全てを把持用指部として用いて対象物を把持することもできる。
【0054】
そして、ハンド機構2における把持用指部によって対象物を把持するためには、該把持用指部によって該対象物を挟み込む前に、該対象物における所定の把持箇所が少なくとも2本の把持用指部の先端部の間に位置した状態となる所定の把持可能位置にハンド機構2を位置決めする必要がある。なお、ここでの所定の把持箇所とは、対象物において把持用指部を接触させる部分のことである。以下においては、対象物が立方体の場合について説明する場合は、所定の把持箇所を、立方体を形成する複数の面のうちの把持用指部を接触させる面である所定の把持面として説明する。
【0055】
以下、本実施例において、ハンド機構2における2本の把持用指部の先端部の間に対象物の所定の把持面が位置した状態とすべく該ハンド機構2を所定の把持可能位置に位置決めするための位置決め動作制御について
図13Aから
図13Eに基づいて説明する。
図13Aから
図13Eは、本実施例に係る位置決め動作制御が実行されたときのハンド機構2の様子を時系列に沿って示した図である。この位置決め動作制御は、
図11Bに示すサーボ制御構造に従って、アーム制御装置42によってアーム機構3が制御されるとともに、ハンド制御装置43によってハンド機構2が制御されることで実現される。
【0056】
なお、
図13Aから
図13Eにおいては、ハンド機構2おける第2指部21Bおよび第3指部21Cを把持用指部とし、対象物10における面S2(
図13Aから
図13Eにおいて向かって左側の面)および面S3(
図13Aから
図13Eにおいて向かって右側の面)を所定の把持面とする場合の動作を示している。また、
図13Aから
図13Eにおいては、便宜的に、ハンド機構2における第1指部21A、第2指部21B、および第3指部21Cのみを図示しており、第4指部21Dの図示を省略している。
【0057】
位置決め動作制御においては、
図13Aに示すように、ハンド機構2の形態を、今回の対象物10の把持において把持用指部として用いる第2指部21Bおよび第3指部21Cのそれぞれの先端部(第2指部21Bの第1指リンク部211Bの先端部と第3指部21Cの第1指リンク部211Cの先端部)の互いの間隔を、対象物10における所定の把持面である面S2と面S3との間の幅dtよりも大きい所定の初期間隔dfに広げた形態である第2アプローチ形態とした状態で、該ハンド機構2を対象物10に近づける。なお、
図13Aにおける白抜き矢印はハンド機構2の動く方向を示している。
【0058】
ここで、第2アプローチ形態は、ハンド機構2の第2指部21Bと第3指部21Cとで対象物10が把持された際に、これら以外の指部である第1指部21Aと第4指部21Dは対象物10に接触しないような形態として設定される。このような第2アプローチ形態は、対象物情報取得部430によって取得された対象物10の形状および寸法に関する情報に基づいて決定される。このとき、第2アプローチ形態における第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間の所定の初期間隔dfは、対象物情報取得部430によって取得された対象物10における面S2と面S3との間の幅dtに基づいて決定される。
【0059】
そして、位置決め動作制御においては、ハンド機構2の形態を上記のような第2アプローチ形態とした状態で、該ハンド機構2を所定の把持可能位置に移動させるべく、アーム機構3の各モータおよびハンド機構2の各指部21における各モータが、それぞれ、アーム制御装置42およびハンド制御装置43によってサーボ制御される。なお、この場合における所定の把持可能位置は、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間に対象物10の面S2と面S3とが位置した状態となる位置である。
【0060】
このとき、対象物情報取得部430によって取得された対象物10の位置情報(水平方向の位置情報)および位置情報補正部435によって補正された対象物10の位置情報(垂直方向の位置情報)に基づいて、アーム制御装置42によってアーム機構3が制御され、且つ、ハンド制御装置43によってハンド機構2が制御される。ここで、対象物10についての垂直方向の位置情報は、上述したサーチ動作制御が実行されたことで位置情報補正部435によって補正されている。つまり、対象物10についての垂直方向の位置は高精度で把握できている。しかしながら、対象物10についての水平方向の位置情報には未だある程度の誤差が含まれている虞がある。そのため、ハンド機構2の形態を第2アプローチ形態とした状態で、所定の把持可能位置を目標ハンド位置として該ハンド機構2を該対象物10に近づけていった場合、
図13Bに示すように、ハンド機構2の位置が所定の把持可能位置に到達する前に、一方の把持用指部(
図13Bでは第2指部21B)が対象物10の上面S1に接触してしまう場合がある。なお、
図13Bにおいても、白抜き矢印は、ハンド機構2の移動方向を表している。また、
図13Bにおいては、対象物10の上面S1と第2指部21Bの先端部との接触位置が一点鎖線で囲まれている。このように、対象物10の上面S1に第2指部21Bの先端部が接触すると、その接触が、該第2指部21Bの第1指リンク部211Aに設けられた感圧センサ70によって検知される。また、このような位置決め動作制御におけるハンド機構2の指部21と対象物10との接触によって該指部21または該対象物10へダメージを与えることを抑制するために、該位置決め動作制御におけるハンド機構2の移動速度を、上述したサーチ動作制御におけるハンド機構2の移動速度よりも小さくしてもよい。
【0061】
そこで、本実施例に係る位置決め動作制御においては、ハンド機構2の位置が所定の把持可能位置に到達する前に、いずれかの把持用指部が対象物10に接触したことが検知された場合、
図13Cに示すように、ハンド機構2の水平方向の位置を修正する。このとき、どの把持用指部が対象物10に接触したかに基づいてハンド機構2の水平方向の位置を修正する。具体的には、
図13Cでは、対象物10の上面S1に接触した第2指部21B側にハンド機構2を移動させる。このとき、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間の間隔は所定の初期間隔dfに維持されている。なお、
図13Cにおいても、白抜き矢印は、ハンド機構2の移動方向を表している。
【0062】
図13Cに示すように、対象物10に接触した第2指部21B側にハンド機構2を移動させることで、該ハンド機構2の水平方向の位置を、該第2指部21Bと第3指部21Cとの間の下方に対象物10が位置するように修正することができる。そして、このようにハンド機構2の水平方向の位置を修正した上で、
図13Dに示すように、ハンド機構2を再度下方に移動させる(すなわち、再度、所定の把持可能位置に向かって移動させる)。なお、
図13Dにおいても、白抜き矢印は、ハンド機構2の移動方向を表している。これによって、ハンド機構2を所定の把持可能位置に到達させることができる。つまり、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間に対象物10の面S2と面S3とが位置した状態とすることができる。なお、所定の把持可能位置における垂直方向の位置は、当然のことながら、対象物10の把持のために適した位置として予め定められている。
【0063】
そして、
図13Dに示すようにハンド機構2の位置を所定の把持可能位置としてから、
図13Eに示すように、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間の間隔が所定の初期間隔dfよりも小さくなるように、該第2指部21Bおよび該第3指部21Cを制御する。なお、
図13Eにおいて、白抜き矢印は、第2指部21Bの先端部および第3指部21Cの先端部の移動方向を表している。これによって、第2指部21Bの先端部を対象物10の面S2に接触させるとともに、第3指部21Cの先端部を対象物10の面S3に接触させて、これら把持用指部21B、21Cによって対象物10を把持する。
【0064】
ここで、上述したように、本実施例に係るハンド機構2おいて把持用指部として機能する指部は第2指部21Bおよび第3指部21Cに限られず、全ての指部21が把持用指部として機能し得る。また、ハンド機構2の4本の指部21のうち3本の指部が把持用指部として用いられる場合や、4本の指部全てが把持用指部として用いられる場合もある。そして、把持用指部として用いる指部が異なれば、位置決め動作制御を実行する際のハンド機構2の第2アプローチ形態も異なった形態となる。
【0065】
以下、把持用指部および第2アプローチ形態が
図13Aから
図13Eに示したケースとは異なる場合の位置決め動作制御におけるハンド機構2の位置修正の例について
図14および
図15に基づいて説明する。当該修正例も、
図11Bに示すサーボ制御構造に従って、ハンド機構2の各指部及びアーム機構3が制御される。
図14(a)、(b)は、ハンド機構2の第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部とした場合における各把持用指部と対象物10との水平方向の位置関係を示した図である。また、
図14(a)、(b)は、対象物10を把持する際に、第2指部21Bおよび第4指部21Dを該対象物10の面S2に接触させるともに、第3指部21Cを該対象物10の面S3に接触させる場合の形態を示している。この場合の第2アプローチ形態では、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間および第4指部21Dの先端部と第3指部21Cの先端部との間のいずれにも対象物10の面S2および面S3が位置するように、それぞれの間の所定の初期間隔が設定されている。
【0066】
そして、
図14(a)は、第2アプローチ形態を上記のような形態とした状態でハンド機構2を対象物10に向けて近づけている時に、第2指部21Bおよび第4指部21Dが該対象物10の上面S1に接触した様子を示している。この場合、本実施例に係る位置決め動作制御では、
図14(b)に示すように、対象物10に接触した第2指部21Bおよび第4指部21D側にハンド機構2を移動させる。なお、
図14(b)において、白抜き矢印は、ハンド機構2の移動方向を表している。
図14(b)に示すように、対象物10に接触した第2指部21Bおよび第4指部21D側にハンド機構2を移動させることで、該ハンド機構2の水平方向の位置を、該第2指部21Bと第3指部21Cとの間且つ該第4指部21Dと第3指部21Cとの間の下方に対象物10が位置するように修正することができる。そして、このような位置にハンド機構2の水平方向の位置を修正した上で、ハンド機構2を再度下方に移動させることで、ハンド機構2の位置を、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間および第4指部21Dの先端部と第3指部21Cの先端部との間のいずれにも対象物10の面S2および面S3が位置する所定の把持可能位置とすることができる。
【0067】
図15(a)、(b)は、ハンド機構2の4本の指部21全てを把持用指部とした場合における各把持用指部と対象物10との水平方向の位置関係を示した図である。また、
図15(a)、(b)は、対象物10を把持する際に、第2指部21Bを該対象物10の面S2に接触させ、第3指部21Cを該対象物10の面S3に接触させ、第1指部21Aを該対象物10の面S4に接触させ、第4指部21Dを該対象物10の面S5に接触させる場合の形態を示している。この場合の第2アプローチ形態では、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間に対象物10の面S2および面S3が位置するようにこれらの間の所定の初期間隔が設定されている。また、第1指部21Aの先端部と第4指部21Dの先端部との間に対象物10の面S4および面S5が位置するようにこれらの間の所定の初期間隔が設定されている。
【0068】
そして、
図15(a)は、第2アプローチ形態を上記のような形態とした状態でハンド機構2を対象物10に向けて近づけている時に、第1指部21Aおよび第2指部21Bが該対象物10の上面S1に接触した様子を示している。この場合、本実施例に係る位置決め動作制御では、第2指部21Bおよび第3指部21Cに対しては対象物10に接触した第2指部21B側の方向であり、第1指部21Aおよび第4指部21Dに対しては対象物10に接触した第1指部21A側の方向である、
図15(b)において白抜き矢印の方向(すなわち、
図15(b)における左斜め上側に向う方向)にハンド機構2を移動させる。
図15(b)に示すように、対象物10に接触した第1指部21A側且つ第2指部21B側にハンド機構2を移動させることで、該ハンド機構2の水平方向の位置を、該第2指部21Bと第3指部21Cとの間且つ該第1指部21Aと第4指部21Dとの間の下方に対象物10が位置するように修正することができる。そして、このような位置にハンド機構2の水平方向の位置を修正した上で、ハンド機構2を再度下方に移動させることで、ハンド機構2の位置を、第2指部21Bの先端部と第3指部21Cの先端部との間に対象物10の面S2および面S3が位置し、且つ、第1指部21Aの先端部と第4指部21Dの先端部との間に対象物10の面S4および面S5が位置する所定の把持可能位置とすることができる。
【0069】
<把持動作制御>
ハンド機構2によって対象物を把持する場合、ハンド機構2の位置を上記の所定の把持可能位置に制御した後、例えば
図13Eに示したように、把持用指部(
図13Eでは第2指部21Bおよび第3指部21C)を対象物の所定の把持箇所(
図13Eでは所定の把持面である面S2および面S3)に接触させる。そして、対象物に接触した把持用指部によって該対象物を押圧することで、該把持用指部によって該対象物を挟み込む。以下、本実施例において、所定の把持可能位置に位置するハンド機構2の把持用指部によって対象物を挟み込むための把持動作制御について
図16に基づいて説明する。
図16は、本実施例係る把持動作制御が実行されたときのハンド機構2の各把持用指部と対象物10との水平方向の位置関係を、(a)から(d)の順に時系列に沿って示した図である。この把持動作制御は、ハンド制御装置43によってハンド機構2の各指部21における各モータがサーボ制御されることで実現される。なお、
図16は、ハンド機構2の第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部とし、第2指部21Bおよび第4指部21Dを対象物10の面S2に接触させるともに、第3指部21Cを該対象物10の面S3に接触させて、該対象物10を把持する場合の様子を示している。また、
図16において、白抜き矢印は、各把持用指部21A、21B、21Cの先端部の移動方向を表している。
【0070】
図16(a)に示すように、把持動作制御においては、各把持用指部21A、21B、21Cの先端部が対象物10における所定の把持面に向って移動するようにハンド機構2を制御する。つまり、第2指部21Bの先端部および第4指部21Dの先端部が対象物10の面S2に向って移動する、また、第3指部21Cの先端部が対象物10の面S3に向って移動する。このとき、必ずしも、各把持用指部21B、21C、21Dの先端部が、対象物10におけるそれぞれに対応する所定の把持面に同時に到達するとは限らない。つまり、各把持用指部21B、21C、21Dの先端部が、必ずしも同一のタイミングで対象物10に接触するわけではない。例えば、
図16では、(b)において、先ず第2指部21Bが対象物10の面S2に接触し、次に、(c)において、第4指部21Dが対象物10の面S2に接触し、最後に、(d)において、第3指部21Cが対象物10の面S3に接触する。
【0071】
ここで、把持用指部によって対象物10を把持する際には、所定の把持面に接触した状態の該外把持用指部によって対象物10を押圧する。つまり、把持用指部が対象物10に接触した後においても、該対象物10を押圧するために該把持用指部の各モータを作動させる必要がある。このとき、
図16に示したように各把持用指部21B、21C、21Dの対象物10への接触タイミングがそれぞれ異なる場合において、仮に、
図16(b)に示すように第2指部21Bのみが対象物10に接触した時に、該第2指部21Bによって該対象物10を押圧すべく該第2指部21Bの各モータの動作を継続した場合、該第2指部21Bから付与される力によって、該対象物10の位置が移動したり、その姿勢が変化したりする可能性がある。つまり、把持動作制御の途中であって、全ての把持用指部が対象物10に接触する前に、他の把持用指部よりも先に該対象物10に接触した把持用指部によって該対象物10に対して力が付与されると、該対象物10の位置または姿勢が変化する可能性がある。そして、このように、把持動作制御の途中において対象物10の位置または姿勢が変化すると、ハンド機構2による該対象物10の把持の安定性が低下する虞がある。
【0072】
そこで、本実施例に係る把持動作制御によれば、
図16(b)、(c)、(d)に示すように、各把持用指部の先端部に設けられた感圧センサ70によって対象物へ10の接触が検知された時点で、それぞれの把持用指部における各モータの作動を順位一旦停止させる。つまり、
図16(b)に示すように、第2指部21Bが対象物10の面S2に接触した時点で該第2指部21Bの各モータの作動を停止させる。これにより、第2指部21Bから対象物10に力が付与されなくなる。ただし、第2指部21Bが対象物10に接触した時点以降においても、他の把持用指部である第3指部21Cおよび第4指部21Dの各モータの作動は当然継続される。そのため、
図16(b)において白抜き矢印で示すように、第3指部21Cの先端部および第4指部21Dの先端部はさらに対象物10に近づいていく。
【0073】
そして、
図16(c)示すように、第2指部21Bに続いて第4指部21Dが対象物10の面S2に接触した時点で該第4指部21Dのモータの作動を停止させる。これにより、第4指部21Dから対象物10に力が付与されなくなる。ただし、
図16(c)において白抜き矢印で示すように、第4指部21Dが対象物10に接触した時点以降においても第3指部21Cの各モータの作動は当然継続される。そのため、第3指部21Cの先端部がさらに対象物10に近づいていく。その後、
図16(d)に示すように、第3指部21Cが対象物10に接触すると、全ての把持用指部21B、21C,21Dが対象物10に接触した状態となる。そして、本実施例に係る把持動作制御では、このように全ての把持用指部21B、21C,21Dが対象物10に接触した状態となってから、該全ての把持用指部21B、21C,21Dの各モータを作動させることで、これらの把持用指部によって対象物10を押圧し、該対象物10を把持する。このような把持用動作制御によれば、把持動作制御の途中において対象物10の位置または姿勢が変化することが抑制される。そのため、ハンド機構2による該対象物10の把持の安定性が低下することを抑制することができる。
【0074】
なお、把持動作制御においては、全ての把持用指部が対象物10に接触した状態となった後、必ずしも全ての把持用指部の各モータを再度作動させる必要はない。例えば、全ての把持用指部が対象物10に接触した状態で、1本の把持用指部のモータのみを作動させることで該把持用指部によって対象物10を押圧してもよい。この場合でも、モータの作動が停止された他の把持用指部によって対象物10を支持することができるため、対象物10を把持することができる。ただし、
図16(d)に示すように、全ての把持用指部のモータを再度作動させることで、該全ての把持用指部によって対象物を押圧した場合、該対象物10に対してよりバランスよく押圧力を付与することができる。そのため、対象物10に対してモーメントが発生することを抑制することができる。したがって、ハンド機構2による対象物10の把持の安定性をより向上させることができる。
【0075】
なお、上述した位置決め動作制御および把持動作制御における把持用指部においても、対象物に接触させる部位(すなわち、本発明に係る「所定の接触部位」)は必ずしも該指部の先端部でなくともよい。ただし、感圧センサによって対象物への接触を検知する場合は、把持用指部における対象物に接触させる部位に感圧センサを設ける必要がある。
【0076】
<サーチ動作制御のフロー>
次に、上述したサーチ動作制御のフローについて
図17に示すフローチャートに基づいて説明する。このサーチ動作制御のフローは、アーム制御装置42及びハンド制御装置43において所定の制御プログラムが実行されることで実現される。本フローでは、先ずS101において、今回の把持対象となる対象物についての対象物情報が対象物情報取得部430によって取得される。
【0077】
次に、S102において、S101で対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に基づいて、今回のサーチ動作制御における目標位置が決定される。次に、S103において、S101で対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に基づいて、今回のサーチ動作制御におけるハンド機構2の第1アプローチ形態が決定される。ここで、上述したように、サーチ動作制御では、ハンド機構2の4本の指部21のうちの所定の指部を対象物に接触させる。このとき、S103において決定された第1アプローチ形態において、対象物に接触させる所定の指部として選択された指部を、以下においては「サーチ用指部」と称する場合もある。次に、S104において、ハンド機構2の形態が、S103で決定された第1アプローチ形態に制御される。なお、S101からS104の処理はハンド制御部431によって実行される。
【0078】
次に、S105おいて、ハンド機構2のサーチ用指部の先端部が、S102で決定された目標位置に向うように、アーム制御部420によってアーム機構3を制御することで該ハンド機構2を移動させる。なお、このときは、ハンド制御部431によってハンド機構2の形態が第1アプローチ形態に維持されている。次に、S106において、サーチ用指部の先端部が目標位置に到達する前に、該サーチ用指部の感圧センサ70によって対象物10への接触が検知されたか否かが判別される。なお、S106の処理はセンサ情報取得部433によって実行される。このS106において否定判定された場合、すなわち、サーチ用指部が未だ対象物に接触していない場合は、S105の処理が継続される。
【0079】
一方、S106において肯定判定された場合、S107において、その時点で、ハンド制御部431によって、サーチ用指部の第1モータ51についてサーボ無効化処理が施される。これにより、例えば
図12Cに示したように、サーチ用指部の第1関節部22が折れ曲がることになる。さらに、S107においては、ハンド制御装置43からアーム制御装置42に対して指令信号が送信されることで、アーム制御部420によってアーム機構3の動作が停止される。
【0080】
次に、S108において、サーチ用指部の感圧センサ70によって対象物10への接触が検知されたときの接触位置が接触位置導出部434によって導出される。次に、S109において、対象物情報取得部430によって取得された対象物の位置情報が、S108で接触位置導出部434によって導出された接触位置に関する接触位置情報に基づいて位置情報補正部435よって補正される。
【0081】
なお、
図17に示すフローチャートでは、S108で接触位置が導出されるとともにS109でその接触位置に基づいて対象物の位置情報の補正が行われるが、これらの処理を含まずにS101-S107の処理までのフローに従ったサーチ動作制御も、本実施形態に含まれる制御である。そのようなサーチ動作制御では、サーチ用指部が対象物に接触すると、サーチ用指部の第1モータ51についてサーボ無効化処理が施されるとともにアーム機構3の動作が停止されることになる。
【0082】
<位置決め動作制御および把持動作制御のフロー>
次に、上述した位置決め動作制御および把持動作制御のフローについて
図18から
図20に示すフローチャートに基づいて説明する。この位置決め動作制御および把持動作制御のフローも、アーム制御装置42及びハンド制御装置43において所定の制御プログラムが実行されることで実現される。また、本フローに沿った制御は、
図17に示した制御フローによりサーチ動作制御が実行された後、同一の対象物をハンド機構2によって把持する際に実行される。
【0083】
本フローでは、
図18および
図19に示す通り、S201からS211において位置決め動作制御に係る各処理が実行される。ここでは、先ずS201において、今回の位置決め動作制御におけるハンド機構2の第2アプローチ形態が決定される。なお、このときに、ハンド機構2におけるいずれの指部21を今回の把持用指部とするのかが決定される。次に、S202において、今回の位置決め動作制御における所定の把持可能位置が決定される。なお、本実施例では、S201およびS202の処理は、
図17に示した制御フローによりサーチ動作制御が実行されることで、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報および位置情報補正部435によって補正された対象物の位置情報に基づいて、ハンド制御部431によって実行される。ただし、サーチ動作制御が実行されない場合は、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報のみに基づいて、ハンド機構2の第2アプローチ形態および所定の把持可能位置が決定される。
【0084】
次に、S203において、ハンド制御部431によって、ハンド機構2の形態が、S202で決定された第2アプローチ形態に制御される。次に、S204において、ハンド制御部431によってその形態が第2アプローチ形態に維持された状態のハンド機構2が、S202で決定された所定の把持可能位置に向うように、アーム制御部420によってアーム機構3を制御することで該ハンド機構2を移動させる。次に、S205において、いずれかの把持用指部の感圧センサ70によって対象物への接触が検知されたか否かが判別される。なお、S205の処理はセンサ情報取得部433によって実行される。このS205において否定判定された場合、次にS206において、ハンド機構2が、S202で決定された所定の把持可能位置に到達したか否かがハンド制御部431によって判別される。なお、このときに、ハンド機構2の現在の位置は、アーム制御装置42のモータ状態量取得部421によって取得されるアーム機構3の各モータの状態量、および、ハンド制御装置43のモータ状態量取得部432によって取得されるハンド機構2の各モータの状態量に基づいて導出される。そして、S206において肯定判定された場合、今回の位置決め動作制御が完了したことになる。この場合は、続いてS212以降の処理が実行される。一方、S206において否定判定された場合、すなわち、ハンド機構2が未だ所定の把持可能位置に到達していない場合は、S204の処理が再度実行される。
【0085】
また、S205において肯定判定された場合、ハンド機構2が所定の把持可能位置に到達する前に、いずれかの把持用指部が対象物に接触したと判断できる。この場合、
図19に示す通り、次にS207において、アーム制御部420によってアーム機構3の動作が一旦停止される。そして、次にS208の処理が実行される。このとき、対象物に接触した把持用指部の数は1本に限られず、複数の把持用指部が対象物に接触する場合もある。また、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報の誤差が大きいと、全ての把持用指部が対象物に接触する場合もあり得る。そして、対象物に接触した把持用指部の本数が多すぎると、上述したような位置決め動作制御におけるハンド機構2の位置の修正を行ったとしても、該ハンド機構2を所定の把持可能位置に到達させることができない場合もある。そこで、S208においては、対象物に接触した把持用指部の数が所定本数より少ないか否かが判別される。ここで、所定本数は、対象物に接触した把持用指部の数が該所定本数以上の場合、上述したような位置決め動作制御におけるハンド機構2の位置の修正を行ったとしても、該ハンド機構2を所定の把持可能位置に到達させることができないと判断できる数である。このような所定本数は、S201で決定された今回の位置決め動作制御におけるハンド機構2の第2アプローチ形態での把持用指部の本数に応じて設定される。
【0086】
そして、S208において否定判定された場合、すなわち、対象物に接触した把持用指部の数が所定本数以上の場合、次にS211において、ハンド機構2の第2アプローチ形態が変更される。この場合、対象物に接触した各把持用指部の接触位置を考慮して、ハンド機構2を所定の把持可能位置に到達させることが可能となるように新たな第2アプローチ形態が決定される。なお、S208およびS209の処理はハンド制御部431によって実行される。そして、S211においてハンド機構2の第2把持用形態が変更された後、S203の処理が再度実行され、ハンド機構2の形態が新たに決定された第2アプローチ形態に制御される。その後、S204以降の処理が実行される。
【0087】
一方、S208において肯定判定された場合、次にS209において、上述した位置決め動作制御におけるハンド機構2の位置の修正が実行される。すなわち、ハンド機構2の形態をこの時点での第2アプローチ形態に維持した状態で、該ハンド機構2を、対象物に接触した把持用指部側の方向(例えば、
図13C、
図14、
図15において白抜き矢印で示した方向)に移動させる。なお、S209の処理はハンド制御部431およびアーム制御部420によって実行される。
【0088】
そして、S209の次には、S210において、把持用指部が対象物から離れたか否かが判別される。このS201の処理は、対象物に接触していた把持用指部の感圧センサ70の検出値に基づいてセンサ情報取得部433によって実行される。このS210において否定判定された場合、S209の処理が再度実行される。すなわち、対象物に接触した把持用指部側の方向へのハンド機構2の移動量を大きくする。その後、S210の処理が再度実行される。一方、S210において肯定判定された場合、S204の処理が再度実行される。つまり、ハンド機構2の所定の把持可能位置に向う移動が再開される。
【0089】
そして、
図20に示す通り、S212以降においては把持動作制御に係る各処理が実行される。S212では、今回の位置決め動作制御が完了している状態のハンド機構2において、対象物に接触していない把持用指部における各モータが作動される。これによって、各把持用指部の先端部が、それぞれに対応する、対象物における所定の把持面に向って移動する。なお、S206において肯定判定された直後、すなわち今回の位置決め動作制御が完了した直後は、全ての把持用指部が対象物における所定の把持面には接触していない状態となっている。そのため、この場合は、S212において、全ての把持用指部における各モータが作動される。
【0090】
そして、次に、S213において、各把持用指部の感圧センサ70によって対象物への接触が検知されたか否かが判別される。S213において否定判定された場合、S212の処理が継続される。一方、S213において肯定判定された場合、次にS214において、感圧センサ70によって対象物への接触が検知された把持用指部における各モータの作動が停止される。次に、S215において、今回の対象物の把持における全ての把持用指部について、対象物への接触が検知されたか否かが判別される。S215において否定判定された場合、S212の処理が再度実行される。これにより、対象物に接触していない把持用指部における各モータの作動が継続される。ただし、この場合でも、対象物への接触が検知された把持用指部については、各モータの作動を停止した状態が維持される。そして、S212からS215の処理が繰り返されることで、全ての把持用指部が対象物の所定の把持面に接触するまでの間、感圧センサ70によって対象物へ10の接触が検知された時点でそれぞれの把持用指部における各モータの作動が順次一旦停止されることになる。なお、S212およびS214の処理はハンド制御部431によって実行される。また、S213およびS215の処理はセンサ情報取得部433によって実行される。
【0091】
そして、S215において肯定判定された場合、次にS216の処理が実行される。S216においては、接触位置導出部434によって、対象物における各把持用指部の接触位置が導出される。次に、S217において、S216で導出された対象物における各把持用指部の接触位置に関する接触位置情報に基づいて、各把持用指部の接触位置の修正が不要か否かが判別される。これまでの一連の位置決め制御および把持動作制御によって全ての把持用指部が対象物に接触した状態となった場合であっても、各把持用指部の対象物における接触位置が、該対象物の把持に適した位置とはならない場合もある。つまり、各把持用指部の対象物における接触位置をS217の処理が実行された時点での位置としたまま各把持用指部によって該対象物を押圧すると、該対象物に対してモーメント等が作用してしまうために、該対象物を安定的に把持することが困難であることが予想される場合がある。このような場合は、S217において否定判定されることになる。そして、S217において否定判定された場合、次にS221において、複数の把持用指部のうちの少なくとも1本の把持用指部の対象物への接触位置が変更される。このとき、対象物をより安定的に把持することが可能となると想定される位置に、少なくとも1本の把持用指部の対象物への接触位置を変更させる。
【0092】
ここで、S221においては、少なくとも1本の把持用指の各モータを作動させることで、該少なくとも1本の指部を動かしてその対象物への接触位置を変更させてもよい。また、対象物10の姿勢を変更させることが可能な場合は、少なくとも1本の把持用指を対象物から離間させるとともに、他の把持用指部によって該対象物を押圧することで該対象物の姿勢を変更させてもよい。そして、対象物から一旦離間した把持用指部が再度該対象物に接触することになるまで、該対象物の姿勢を変更させてもよい。そして、その結果として、対象物から一旦離間した把持指部の該対象物への接触位置を変更させてもよい。これらのようにしてS221において、少なくとも1本の把持用指部の対象物への接触位置が変更された後は、S216の処理が再度実行される。このように、S217において否定判定された場合においては、少なくとも1本の把持用指部の対象物への接触位置を変更することで、該対象物をより安定的に把持することが可能となる。
【0093】
一方、S217で肯定判定された場合、次にS218において、全ての把持用指部が対象物に接触している状態で該全ての把持用指部の各モータが再度作動される。これにより、各把持用指部によって対象物が押圧される。なお、上述したように、S218においては、必ずしも全ての把持用指部のモータを作動させる必要はない。つまり、1本の把持用指部のモータのみを作動させることで該把持用指部によって対象物10を押圧してもよい。
【0094】
次に、S219において、把持用指部による対象物の把持が完了したか否かが判別される。なお、把持用指部による対象物の把持が完了したか否かは、各把持用指部の先端部の位置、または、各把持用指部の感圧センサ70によって検出される圧力に基づいて判別することができる。このS219において否定判定された場合、S218の処理が継続される。一方、S219において肯定判定された場合、次にS220において、各把持用指部の各モータの作動が停止される。これにより、その時点での、各把持用指部の先端部の位置、または、各把持用指部によって対象物にかけられる圧力が維持された状態となる。そして、今回の把持動作制御が完了したことになる。
【0095】
<変形例>
なお、上記実施例によれば、サーチ動作制御と位置決め動作制御とをそれぞれ別々に実行される制御としたが、これらの制御を同時に実行してもよい。この場合、ハンド機構2の形態を上記位置決め動作制御における第2アプローチ形態とした状態で、該ハンド機構2を対象物に近づける。そして、このときに、いずれかの把持用指部の感圧センサ70によって対象物への接触が検知された場合に、その把持用指部と該対象物との接触位置を導出する。さらに、導出された把持用指部と対象物との接触位置に関する接触位置情報に基づいて、対象物情報取得部430によって取得された対象物の位置情報を補正する。このような場合でも、対象物の位置情報を高精度で把握することが可能となる。また、このような場合においても、いずれかの把持用指部の感圧センサ70によって対象物への接触が検知された時点で、該把持用指部の第1モータ51についてサーボ無効化処理を施す。これにより、把持用指部と対象物との接触に起因して該把持用指部または該対象物がダメージを受けることを抑制することが可能となる。
【0096】
また、上記実施例では、ハンド機構2に設けられた指部21の本数を4本としたが、ハンド機構2が少なくとも2本の指部を有していれば、上記のような一連のサーチ動作制御、位置決め動作制御、および把持制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・ロボットアーム、2・・・ハンド機構、20・・・ベース部、21・・・指部、22・・・第1関節部、23・・・第2関節部、211・・・第1指リンク部、212・・・第2指リンク部、213・・・基端部、3・・・アーム機構、30a・・・第1関節部、30b・・・第2関節部、30c・・・第3関節部、30d・・・第4関節部、30e・・・第5関節部、30f・・・第6関節部、31・・・第1アームリンク部、32・・・第2アームリンク部、33・・・第3アームリンク部、34・・・第4アームリンク部、35・・・第5アームリンク部、36・・・接続部材、4・・・台座部、42・・・アーム制御装置、420・・・アーム制御部、421・・・モータ状態量取得部、43・・・ハンド制御装置、430・・・対象物情報取得部、431・・・ハンド制御部、432・・・モータ状態量取得部、433・・・センサ情報取得部、51・・・第1モータ、52・・・第2モータ、53・・・第3モータ、61、62・・・傘歯車、63・・・ウォームホイール、64・・・ウォーム、65、66・・・歯車、70・・・感圧センサ