(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221118BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221118BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221118BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221118BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221118BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221118BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221118BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221118BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221118BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221118BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2019526515
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2017079615
(87)【国際公開番号】W WO2018091661
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505257682
【氏名又は名称】シムフォゲン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ラント
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブーキン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・コフォーズ
(72)【発明者】
【氏名】トーベン・ゲティング
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム・クラー・バティア
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・ガッド
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ローラン・ガラー
(72)【発明者】
【氏名】カミラ・フレーリヒ
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-340714(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092419(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/014688(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/112800(WO,A1)
【文献】特表2016-533763(JP,A)
【文献】特表2010-530753(JP,A)
【文献】国際公開第2015/112900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれ、配列番号52、53、54、38、45および55;または
b)それぞれ、配列番号66、67、68、38、45および55
である、H-CDR1-3およびL-CDR1-3アミノ酸配列を含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
a)それぞれ、配列番号9および10;
b)それぞれ、配列番号78および10;
c)それぞれ、配列番号99および10;
d)それぞれ、配列番号9および88;
e)それぞれ、配列番号78および88;
f)それぞれ、配列番号99および88;
g)それぞれ、配列番号19および20;
h)それぞれ、配列番号82および20;
i)それぞれ、配列番号103および20;
j)それぞれ、配列番号19および93;
k)それぞれ、配列番号82および93;
l)それぞれ、配列番号103および93;
m)それぞれ、配列番号19および112;
n)それぞれ、配列番号82および112;または
o)それぞれ、配列番号103および112
のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
a)前記抗体がIgGアイソタイプIgG1サブクラスの抗体であり、位置234および235のアミノ酸残基の一方または両方がAlaに変異しており、または
b)前記抗体がIgGアイソタイプIgG4サブクラスの抗体であり、位置228のアミノ酸残基がProに変異している、請求項1または2に記載の抗PD-1抗体。
【請求項4】
以下の特徴の少なくとも1つを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分:
a)4x10
-8M以下のK
DでカニクイザルのPD-1に結合する;
b)2x10
-8M以下のK
DでマウスPD-1に結合する;
c)3x10
-9M以下のK
DでヒトPD-1に結合する;
d)10μg/mlの濃度でPD-1とPD-L1との相互作用を阻害する;
e)SEB全血アッセイにおいて、IL-2産生を刺激する;および
f)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいて、IFN-γ産生を刺激する。
【請求項5】
a)配列番号9および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号10および28のアミノ酸配列を有するLC;
b)配列番号78および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号10および28のアミノ酸配列を有するLC;
c)配列番号99および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号10および28のアミノ酸配列を有するLC;
d)配列番号9および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号88および28のアミノ酸配列を有するLC;
e)配列番号78および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号88および28のアミノ酸配列を有するLC;
f)配列番号99および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号88および28のアミノ酸配列を有するLC;
g)配列番号19および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号20および28のアミノ酸配列を有するLC;
h)配列番号82および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号20および28のアミノ酸配列を有するLC;
i)配列番号103および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号20および28のアミノ酸配列を有するLC;
j)配列番号19および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号93および28のアミノ酸配列を有するLC;
k)配列番号82および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号93および28のアミノ酸配列を有するLC;
l)配列番号103および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号93および28のアミノ酸配列を有するLC;
m)配列番号19および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号112および28のアミノ酸配列を有するLC;
n)配列番号82および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号112および28のアミノ酸配列を有するLC;または
o)配列番号103および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号112および28のアミノ酸配列を有するLC
を含む、抗PD-1抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分ならびに薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
単離された核酸分子または単離された核酸分子のセットであって、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、および軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子または単離された核酸分子のセット。
【請求項8】
請求項7に記載の単離された核酸分子を含むベクターまたはベクターのセットであって、発現調節配列をさらに含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、および軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分を産生する方法であって、請求項9に記載の宿主細胞を提供し、該宿主細胞を抗体またはその部分の発現に適する条件下で培養し、そして結果得られた抗体または部分を単離することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分
から選択される異なる2つの
抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の
抗原結合ドメインを含む、二重特異性結合分子。
【請求項12】
患者における免疫の増強または癌の処置のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合部分、または請求項11に記載の二重特異性結合分子を含む、医薬組成物。
【請求項13】
癌が、進行性または転移性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、腎細胞癌、肝細胞癌、結腸直腸癌またはホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
組成物が、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、またはPD-1経路阻害剤をさらに含む、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2016年11月18日に出願された米国仮特許出願62/424,163に基づく優先権の利益を主張し、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その内容全体が引用により本明細書中に包含される配列表を包含する。2017年11月13日に作成された配列表の電子コピーは、022675_WO056_SL.txtと称され、サイズは99,158バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プログラム細胞死タンパク質1およびCD279としても知られるPD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する、268アミノ酸の細胞表面受容体である。PD-1は、T細胞調節因子のCD28ファミリーのメンバーであり、T細胞、B細胞およびマクロファージで発現される。それは、リガンドであるPD-L1(B7ホモログとしても公知)およびPD-L2(B7-DCとしても公知)に結合する。
【0004】
PD-1は、その構造が細胞外IgVドメイン、膜貫通領域および2つのリン酸化部位を含む細胞内テイルを含むI型膜タンパク質である。免疫チェックポイントタンパク質として知られているPD-1は、誘導性免疫調節性受容体として機能し、例えば、抗原刺激に対するT細胞応答の負の調節において役割を果たす。
【0005】
PD-L1は、PD-1に対する主なリガンドである。PD-L1のPD-1への結合は、T細胞活性を阻害し、サイトカイン産生を減少させ、そしてT細胞増殖を抑制する。PD-L1を発現する癌細胞は、PD-L1のPD-1受容体への結合を介してT細胞の抗腫瘍活性を不活性化するためにこのメカニズムを利用することができる。
【0006】
その免疫応答調節特性を考慮して、PD-1は、癌および自己免疫疾患の処置を含む、免疫療法の可能性のある標的として研究されてきた。2つの抗PD-1抗体であるペムブロリズマブおよびニボルマブは、特定の癌の治療薬として米国および欧州で承認されている。
【0007】
免疫調節剤としてのPD-1の重要な役割を考慮すると、癌および免疫系の特定の障害を処置するためにPD-1受容体を標的とする新規かつ改良された免疫療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、PD-1を標的とする新規の組換え抗体、ならびに1以上のこれらの抗体を含む医薬組成物、ならびに患者における免疫を増強するための、および皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血系、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織由来の癌を処置するための、該抗体および医薬組成物の使用に関する。抗体治療を含む、そのような癌に対して現在利用可能な処置と比較して、本発明の抗体は、単独で、または他の癌治療薬、例えば他の免疫チェックポイントタンパク質を標的とする抗体と組み合わせて、優れた臨床応答を提供し得ると考えられる。
【0009】
一態様において、本発明は、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体が、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483のいずれか1つと、ヒトPD-1への結合について競合するか、または同じヒトPD-1のエピトープに結合する、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0010】
一態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合について、その重鎖(H)CDR1-3および軽鎖(L)CDR1-3が、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のH-CDR1-3およびL-CDR1-3と同じかまたはそれに由来する抗体と競合する。
【0011】
一態様において、抗PD-1抗体は、その重鎖(H)CDR1-3および軽鎖(L)CDR1-3が、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のH-CDR1-3およびL-CDR1-3と同じかまたはそれに由来する抗体と同じヒトPD-1のエピトープに結合する。
【0012】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のH-CDR1-3アミノ酸配列それぞれを含むH-CDR1-3を含む。
【0013】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVHドメインとアミノ酸配列において、少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である重鎖可変ドメイン(VH)を有する。
【0014】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVHアミノ酸配列を含むVHを有する。
【0015】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVHアミノ酸配列、および配列番号26の重鎖定常領域アミノ酸配列を含む重鎖(HC)を有する。
【0016】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のL-CDR1-3アミノ酸配列それぞれを含むL-CDR1-3を含む。
【0017】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVLドメインとアミノ酸配列において、少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を有する。
【0018】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVLアミノ酸配列を含むVLを有する。
【0019】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVLアミノ酸配列、および配列番号28の軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を有する。
【0020】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のH-CDR3およびL-CDR3アミノ酸配列を含む。
【0021】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のH-CDR1-3およびL-CDR1-3アミノ酸配列を含む。
【0022】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVHおよびVLそれぞれとアミノ酸配列において、少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるVHおよびVLを有する。
【0023】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むかまたはそれからなるVHおよびVLを有する。
【0024】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413または18483のHCおよびLCアミノ酸配列それぞれを含むかまたはそれからなるHCおよびLCを有する。
【0025】
一態様において、抗PD-1抗体は、(1)抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483からなる群より選択される抗体のVHアミノ酸配列、および配列番号26の重鎖定常領域アミノ酸を含むHC;ならびに、(2)選択された抗体のVLアミノ酸配列および配列番号28の軽鎖定常領域アミノ酸配列を含むLCを有する。
【0026】
特定の態様において、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、以下の特徴の少なくとも1つを有する:
a)例えば、4x10-8M以下のKDでカニクイザルのPD-1に結合する;
b)例えば、2x10-8M以下のKDでマウスPD-1に結合する;
c)3x10-9M以下のKDでヒトPD-1に結合する;
d)10μg/mlの濃度でPD-1とPD-L1との相互作用を阻害する;
e)SEB全血アッセイにおいて、IL-2産生を刺激する;および
f)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいて、IFN-γ産生を刺激する。
かかる抗体の例としては、抗体18040、18049、18098、18113、18247、18250、18325、18366、18413および18483(特徴a)およびc)-f)を有する)ならびに抗体18201および18400(特徴a)-f)を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、上記特徴のすべてを有する。
【0027】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合について、抗体18366、18250、18040、18247、18113および/または18483と競合する。ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合について、抗体12760および/または13112と競合する。
【0028】
特定の態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、PD-1への結合について、ペムブロリズマブまたはニボルマブと競合しない。特定の態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、ペムブロリズマブまたはニボルマブと同じエピトープに結合しない。
【0029】
別の側面において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗PD-1抗体またはその抗原結合部分および薬学的に許容される賦形剤を含み、要すれば抗癌抗体治療薬のようなさらなる治療薬を含む、医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明はさらに、本明細書に記載の抗PD-1抗体の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、またはその両方を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0031】
本発明はまた、そのような単離された核酸分子を含むベクターを提供し、ここで、該ベクターは発現調節配列をさらに含み得る。
【0032】
本発明はまた、本明細書に記載の抗PD-1抗体の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、またはその両方を含む宿主細胞を提供する。
【0033】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合部分を製造する方法であって、本明細書に記載の抗PD-1抗体の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列および軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供し、該抗体もしくはその一部分の発現に適した条件下で該宿主細胞を培養し、そして得られた抗体もしくはその一部分を単離することを含む、製造方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、本明細書に記載の抗PD-1抗体の結合特異性、ならびに別の異なる抗体、例えば別の抗PD-1抗体(例えば、本明細書に記載のような)あるいは別の免疫チェックポイントタンパク質、癌抗原またはその活性が癌などの疾患状態に介在する別の細胞表面分子などの別の異なるたんぱく質を標的とする抗体の結合特異性を有する、多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子を提供する。ある態様において、多重特異性(例えば、二重特異性)結合分子は、抗PD-1抗体および他の抗体の抗原結合部分(例えば、6つのCDR)を含む。
【0035】
本発明はまた、患者(例えば、ヒト患者)において免疫を増強するための方法であって、該患者に、本明細書に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、医薬組成物または二重特異性結合分子を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
本発明はさらに、患者(例えば、ヒト患者)において癌を処置する方法であって、該患者に、本明細書に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、医薬組成物または二重特異性結合分子を投与することを含む方法を提供する。ある態様において、癌は、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血系、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓から選択される組織に由来する。癌は、例えば、進行性もしくは転移性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頚部扁平細胞癌、膀胱癌、胃癌、腎細胞癌、肝細胞癌、結腸直腸癌またはホジキンリンパ腫であり得る。
【0037】
上記方法のいずれも、例えば、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PD-1経路阻害剤、または放射線療法の投与をさらに含み得る。
【0038】
本発明はさらに、患者の癌を処置するためおよび/または患者の免疫を増強するための、医薬の製造を目的とする、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分を含む抗体組成物の使用を提供する。
【0039】
本発明はさらに、例えば、本明細書に記載の処置方法において、患者の癌を処置するおよび/または患者の免疫を増強するのに使用するための本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分を提供する。
【0040】
本発明はさらに、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分を含む製品を提供し、ここで、該製品は、例えば、本明細書に記載の処置方法において、患者の癌を処置するおよび/または患者の免疫を増強するのに適している、製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1Aから1Dは、PD-1オルソログに対して異なる反応性を示す4つの抗PD-1抗体クローンについての代表的なフローサイトメトリードットプロットを示す。
【
図2】
図2Aから2Hは、本発明の抗PD-1抗体について、細胞発現PD-1へのPD-L1結合の阻止を示す。
【
図3】
図3Aから3Fは、SEB全血アッセイにおける12種の抗PD-1抗体の用量応答曲線を示す。
【
図4】
図4Aから4Fは、MLR(一方向混合リンパ球反応)アッセイにおける12種の抗PD-1抗体の用量応答曲線を示す。
【
図5】
図5は、試験した抗PD-1抗体ならびにニボルマブ類縁体およびペムブロリズマブ類縁体について同定されたエピトープ群(エピトープビン)の概要を示す。黒い線で結ばれた抗体は交差ブロッキング活性(cross blocking activity)を示す。抗体は、他の抗PD-1抗体との競合パターンに従って分類されている。Nivo:ニボルマブ類縁体;Pembro:ペムブロリズマブ類縁体。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、癌患者などのヒト患者における免疫系を増強するために使用することができる新規の抗ヒトPD-1抗体を提供する。ほかに特記しない限り、本明細書で用いる“PD-1”は、ヒトPD-1を意味する。ヒトPD-1ポリペプチド配列は、Uniprot受託番号Q15116(PDCD1_HUMAN)で入手可能である。
【0043】
本明細書で用いる用語“抗体”(Ab)または“免疫グロブリン”(Ig)は、ジスルフィド結合によって相互に連結されている、2本の重(H)鎖(約50-70kDa)および2本の軽(L)鎖(約25kDa)を含む四量体を意味する。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。VHおよびVLドメインは、“フレームワーク領域”(FR)と称される、より保存されている領域が点在する“相補性決定領域”(CDR)と称される超可変領域にさらに細分化され得る。各VHおよびVLは、3つのCDR(本明細書中、H-CDRは、重鎖由来のCDRを示し;L-CDRは、軽鎖由来のCDRを示す)および4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下の順で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖または軽鎖におけるアミノ酸番号の割り当ては、IMGT(登録商標)の定義(Lefranc et al., Dev Comp Immunol 27(1):55-77 (2003));または、Kabatの定義 (Sequences of Proteins of Immunological Interest)(National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987 and 1991)); Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);または、Chothia et al., Nature 342:878-883 (1989) に従って行われてよい。
【0044】
用語“組換え抗体”は、抗体をコードするヌクレオチド配列(複数可)を含む細胞または細胞株から発現される抗体であって、ここで該ヌクレオチド配列(複数可)は該細胞と天然では関連していない抗体を意味する。
【0045】
用語“単離されたタンパク質”、“単離されたポリペプチド”または“単離された抗体”は、その起源または由来源のために、(1)その天然状態においてそれに付随する天然に会合した成分と会合していない、(2)同一種由来の他のタンパク質を含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、および/または(4)天然には生じない、タンパク質、ポリペプチドまたは抗体を意味する。従って、化学的に合成されるか、またはそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成されるポリペプチドは、その天然に会合した成分から“単離され”得る。タンパク質もまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって天然に会合した成分を実質的に含まないようにされ得る。
【0046】
本明細書で用いる用語“生殖細胞系列”は、それらが生殖細胞を介して親から子孫に受け渡されるときの抗体遺伝子および遺伝子断片のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を意味する。生殖細胞系列配列は、成熟B細胞中の抗体をコードするヌクレオチド配列とは区別され、それらはB細胞成熟の過程で、組換え事象および高頻度変異事象によって変化されている。特定の生殖細胞系列配列を“利用する”抗体は、その生殖細胞系列ヌクレオチド配列と、またはそれがいずれか他の生殖細胞系列ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列よりも厳密に特定するアミノ酸配列と、整列するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する。
【0047】
用語“親和性”は、抗原と抗体との間の引力の尺度を意味する。抗原に対する抗体の固有の引力は、一般的に、特定の抗体-抗原相互作用の結合親和性平衡定数(KD)として表される。抗体は、KDが≦1mM、好ましくは≦100nMのとき、抗原に特異的に結合すると言われる。KD結合親和性定数は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(BIAcore(商標))またはバイオレイヤー干渉法により、例えばIBIS TechnologiesのIBIS MX96 SPRシステム、Bio-Rad のProteOn(商標)XPR36 SPRシステム、またはForteBioのOctet(商標)システムを用いて測定可能である。
【0048】
用語“koff”は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を意味する。koff解離速度定数は、SPRまたはバイオレイヤー干渉法によって、例えば上記のシステムのうちの1つを用いて測定することができる。
【0049】
本明細書で用いる用語“エピトープ”は、抗体または二重特異性結合分子などの関連分子に特異的に結合する抗原の一部分(決定基)を意味する。エピトープ決定基は、一般的に、アミノ酸または炭水化物または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基群からなり、一般的に、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。エピトープは、“直線状”または“立体構造”であり得る。直線状エピトープにおいて、タンパク質(例えば、抗原)と相互作用分子(例えば、抗体など)との間の全ての相互作用点は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に生じる。立体構造エピトープにおいて、相互作用点は、一次アミノ酸配列において互いに分離されているタンパク質上のアミノ酸残基に亘って生じる。抗原上の所望のエピトープが決定されると、当技術分野において周知の技術を用いてそのエピトープに対する抗体を作製することができる。例えば、直鎖状エピトープのアミノ酸残基を有するペプチドで動物を免疫することにより、例えば直線状エピトープに対する抗体を作製することができる。立体構造エピトープに対する抗体は、例えば、立体構造エピトープの関連アミノ酸残基を含むミニドメインで動物を免疫することによって作製することができる。特定のエピトープに対する抗体はまた、例えば、動物を目的の標的分子(例えば、PD-1)またはその関連部分で免疫し、その後エピトープへの結合についてスクリーニングすることによっても作製することができる。
【0050】
当業者は、競合アッセイ、エピトープビニングおよびアラニンスキャンを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の方法を用いて、抗体が本発明の抗PD-1抗体と同じエピトープに結合するかまたは抗PD-1抗体との結合について競合するかどうかを決定することができる。ある態様において、試験抗体および本発明の抗PD-1抗体は、PD-1上の少なくとも1つの共通残基(例えば、少なくとも2、3、4、5または6個の共通残基)に結合する。さらなる態様において、PD-1上の接触残基は、試験抗体と本発明の抗PD-1抗体との間で完全に同一である。一態様において、当業者は、本発明の抗PD-1抗体を飽和条件下でPD-1に結合させて、その後、試験抗体のPD-1への結合能を測定することができる。試験抗体が対照抗PD-1抗体と同時にPD-1に結合することができる場合、該試験抗体は、対照抗PD-1抗体とは異なるエピトープに結合する。しかしながら、試験抗体が同時にPD-1に結合することができない場合、該試験抗体は、同じエピトープ、重複するエピトープ、または本発明の抗PD-1抗体によって結合されたエピトープにごく近接しているエピトープに結合する。この試験は、例えば、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、SPR、バイオレイヤー干渉法またはフローサイトメトリーを用いて実施することができる。抗PD-1抗体が別の抗PD-1抗体と交差競合するかどうかを試験するために、当業者は、2つの方向で、すなわち既知の抗体が試験抗体を遮断するかどうかを決定すること、およびその逆を決定することに、上記の競合方法を用いることができる。そのような交差競合試験は、例えば、IBIS MX96 SPR装置またはOctet(商標)システムを用いて実施することができる。
【0051】
特定の場合において、標的エピトープに対する結合親和性を改善するために1以上のCDRアミノ酸残基を変更することもまた望ましいかもしれない。これは、“親和性成熟”として知られており、例えば抗体のヒト化が結合特異性または親和性の低下をもたらし、復帰突然変異のみによってその結合特異性または親和性を十分に改善することができない状況において、ヒト化に関連して任意に行われ得る。種々の親和性成熟法、例えば、Burksらの、Proc Natl Acad Sci USA, 94:412-417 (1997)に記載されたインビトロスキャニング飽和突然変異法、およびWuらの、Proc Natl Acad Sci USA 95:6037-6042 (1998)の段階的インビトロ親和性成熟法が当技術分野で知られている。
【0052】
ある態様において、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり得る。特定の抗体薬の免疫原性を正確に予測することはできないが、非ヒト抗体は、ヒト抗体よりもヒトにおいてより免疫原性である傾向がある。外来(例えば、げっ歯動物または鳥類)起源の定常領域がヒト起源の配列で置換されているキメラ抗体は、一般的に、完全に外来起源の抗体よりも免疫原性が低いことが示されている。治療法抗体のトレンドは、ヒト化抗体または完全ヒト抗体に向かっている。
【0053】
用語“キメラ抗体”は、2種の異なる動物種由来の配列を含む抗体を意味する。例えば、キメラ抗体は、別の種(例えば、ヒト、ウサギまたはラット)由来の抗体の定常領域に連結されたマウス抗体(すなわち、ハイブリドーマ技術を用いて免疫されたマウスから得られた抗体などのマウス抗体遺伝子によってコードされる抗体)の可変ドメインを含み得る。キメラ抗体の場合、抗体をヒト化するために、非ヒト部分をさらに改変することができる。
【0054】
用語“ヒト化”は、ヒト患者における抗薬物抗体反応を回避するまたは最小化するために、完全にまたは部分的に非ヒト起源の抗体(例えば、マウスまたはニワトリそれぞれの、目的の抗原またはマウスもしくはニワトリ抗体に基づくキメラ抗体での免疫化から得られたマウスまたはニワトリ抗体)を、特に重鎖および軽鎖のフレームワーク領域(FR)および定常領域内の特定のアミノ酸配列を、対応するヒトFRおよび定常領域アミノ酸配列で置換することにより修飾することを意味する。従って、非ヒト起源の抗体をヒト化して、ヒト抗薬物抗体反応のリスクを減らすことができる。
【0055】
用語“ヒト抗体”とは、可変ドメイン配列および定常領域配列がヒト配列に由来する抗体を意味する。この用語は、ヒト遺伝子に由来するが、例えば免疫原性を減少させる、親和性を増加させる、および/または安定性を増加させるために修飾されている配列を有する抗体を包含する。さらに、この用語は、非ヒト細胞で組換え的に産生された抗体を包含し、これは、ヒト細胞には一般的ではないグリコシル化を付与し得る。この用語はまた、ヒト抗体遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト生物(例えば、OmniRat(登録商標)ラット)において産生される抗体を包含する。
【0056】
本明細書で用いる用語、抗体の“抗原結合部分”(または、単に“抗体の部分”)は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の部分またはフラグメント(例えば、ヒトPD-1またはその一部)を意味する。全長抗体の特定のフラグメントが抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示されている。用語“抗原結合部分”内に包含される結合断片の例には、(i)Fabフラグメント:VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント:ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント;ならびに、(vi)抗原に特異的に結合することができる単離された相補性決定領域(CDR)、が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子にコードされているが、それらは、組換え方法を用いて、VLドメインおよびVHドメインが対になって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、連結され得る。VHおよび/またはVLを含む抗原結合分子もまた本発明の範囲内である。VHの場合、分子はまた、CH1、ヒンジ、CH2またはCH3領域のうちの1以上を含み得る。かかる一本鎖抗体も、抗体の“抗原結合部分”という用語内に包含されることを意図される。一本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディーもまた、包含される。ダイアボディーは、VHおよびVLドメインが一本鎖ポリペプチド上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いて、該ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合して、2つの抗原結合部位を作り出す、二価の二重特異性抗体である。
【0057】
FabおよびF(ab’)2フラグメントなどの抗体の部分は、全長抗体のパパインまたはペプシン消化などの常套の技術を用いて、全長抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体の部分および免疫接着分子は、例えば本明細書に記載されるように、標準的な組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0058】
抗PD-1抗体のクラス(アイソタイプ)およびサブクラスは、当技術分野で公知の任意の方法によって決定され得る。一般に、抗体のクラスおよびサブクラスは、抗体の特定のクラスおよびサブクラスに特異的な抗体を用いて決定することができる。そのような抗体は市販されている。クラスおよびサブクラスは、ELISA、ウエスタンブロットおよび他の技術によって決定することができる。あるいは、クラスおよびサブクラスは、抗体の重鎖および/または軽鎖の定常領域の全部または一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの既知のアミノ酸配列と比較し、そして抗体のクラスおよびサブクラスを決定すること決定され得る。
【0059】
抗体配列の所与の位置における特定のアミノ酸残基に言及するとき、例えば、“35S”の表示は、位置および残基を意味し、すなわちこの場合、配列の位置35にセリン残基(S)が存在することを示唆する。同様に、例えば、“13Q+35S”の表示は、それぞれの位置の2つの残基を意味する。他に特記しない限り、本明細書に言及される全ての抗体アミノ酸残基番号は、IMGT(登録商標)番号付けスキームに基づくものである。
【0060】
抗PD-1抗体
本発明は、PD-1に対する抗体、およびその抗原結合部分を提供する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、例えばヒト抗体遺伝子を有するトランスジェニックラットから作製された、ヒト抗体である。特定の態様において、ヒト抗体は、例えばプライマー由来の変異を生殖細胞系列配列に戻すよう変異させるため(例えば、以下の“シンプレックス補正”変異体配列参照)またはフレームワーク領域の変異を最も近いVまたはJ生殖細胞系列の配列に戻すよう改変するため(例えば、以下の“生殖細胞系列”バリアント配列参照)に、特定の変異を含み得る。
【0061】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号29-31のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号1および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号32-34のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号2および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号29-34のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号1および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号2および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0062】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号35-37のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが配列番号3のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号3および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号38-40のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号4および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号35-40のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号3および26のアミノ酸配列を有し、かつそのLCが、配列番号4および28のアミノ酸配列を有する、抗体。
【0063】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号41-43のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号5のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号5および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号44-46のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号6および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号41-46のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、そのVLが、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号5および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号6および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0064】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号29、47および48のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号7および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号49-51のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号8および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号29、47、48および49-51のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、そのVLが、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号7および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号8および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0065】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号52-54のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号9のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号9および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号38、45および55のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが配列番号10のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号10および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号52-54および38、45および55のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号9のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号10のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに、
l)そのHCが、配列番号9および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号10および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0066】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号29、56および48のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが配列番号11のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号11および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号57、33および51のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号12および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号29、56および48ならびに57、33および51のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号12のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号11および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号12および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0067】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号58-60のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号13および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号57、33および34のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号14および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号58-60および57、33および34のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号13および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号14および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0068】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号61、62および43のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号15および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号44-46のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号16および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号61、62および43ならびに44-46のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号15および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号16および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0069】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号63-65のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号17および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号32-34のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号18および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号63-65および32-34のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号17および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号18および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0070】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号66-68のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号19および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号38、45および55のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号20および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号66-68ならびに38、45および55のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号19および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号20および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0071】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号69-71のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号21および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号72、45および73のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号22および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号69-71ならびに72、45および73のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号21および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号22および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0072】
一態様において、抗PD-1抗体は、以下からなる群より選択される:
a)そのH-CDR1-3が、それぞれ配列番号74-76のアミノ酸配列を含む、抗体;
b)その重鎖可変ドメイン(VH)が、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
c)そのVHが、配列番号23のアミノ酸配列を含む、抗体;
d)その重鎖(HC)が、配列番号23および26のアミノ酸配列を含む、抗体;
e)そのL-CDR1-3が、それぞれ配列番号57、33および34のアミノ酸配列を含む、抗体;
f)その軽鎖可変ドメイン(VL)が、配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
g)そのVLが、配列番号24のアミノ酸配列を含む、抗体;
h)その軽鎖(LC)が、配列番号24および28のアミノ酸配列を含む、抗体;
i)そのH-CDR1-3およびL-CDR1-3が、それぞれ配列番号74-76ならびに57、33および34のアミノ酸配列を含む、抗体;
j)そのVHが、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつそのVLが、配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、抗体;
k)そのVHが、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつそのVLが、配列番号24のアミノ酸配列を含む、抗体;ならびに
l)そのHCが、配列番号23および26のアミノ酸配列を含み、かつそのLCが、配列番号24および28のアミノ酸配列を含む、抗体。
【0073】
他の態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483のいずれか1つのVHおよびVLそれぞれとアミノ酸配列において少なくとも90%同一である、例えば該抗体のいずれかのVHおよびVLと少なくとも92%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列である、VHおよびVLを有する。ある態様において、抗PD-1抗体の抗原結合部分は、該VHおよびVLを有する。
【0074】
ある態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483のいずれか1つのVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有する。ある態様において、抗PD-1抗体の抗原結合部分は、該VHおよびVLを有する。
【0075】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、
a)それぞれ、配列番号29、30、31、32、33および34;
b)それぞれ、配列番号35、36、37、38、39および40;
c)それぞれ、配列番号41、42、43、44、45および46;
d)それぞれ、配列番号29、47、48、49、50および51;
e)それぞれ、配列番号52、53、54、38、45および55;
f)それぞれ、配列番号29、56、48、57、33および51;
g)それぞれ、配列番号58、59、60、57、33および34;
h)それぞれ、配列番号61、62、43、44、45および46;
i)それぞれ、配列番号63、64、65、32、33および34;
j)それぞれ、配列番号66、67、68、38、45および55;
k)それぞれ、配列番号69、70、71、72、45および73;または
l)それぞれ、配列番号74、75、76、57、33および34
である、H-CDR1-3およびL-CDR1-3アミノ酸配列を含む。
【0076】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、
a)それぞれ、配列番号1および2;
b)それぞれ、配列番号3および4;
c)それぞれ、配列番号5および6;
d)それぞれ、配列番号7および8;
e)それぞれ、配列番号9および10;
f)それぞれ、配列番号11および12;
g)それぞれ、配列番号13および14;
h)それぞれ、配列番号15および16;
i)それぞれ、配列番号17および18;
j)それぞれ、配列番号19および20;
k)それぞれ、配列番号21および22;または
l)それぞれ、配列番号23および24
のアミノ酸配列と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるVHおよびVLを含む。
【0077】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、
a)それぞれ、配列番号1および2;
b)それぞれ、配列番号3および4;
c)それぞれ、配列番号5および6;
d)それぞれ、配列番号7および8;
e)それぞれ、配列番号9および10;
f)それぞれ、配列番号11および12;
g)それぞれ、配列番号13および14;
h)それぞれ、配列番号15および16;
i)それぞれ、配列番号17および18;
j)それぞれ、配列番号19および20;
k)それぞれ、配列番号21および22;または
l)それぞれ、配列番号23および24
のアミノ酸配列を有するVHおよびVLを含む。
【0078】
ある態様において、抗PD-1抗体は、
a)配列番号1および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号2および28のアミノ酸配列を有するLC;
b)配列番号3および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号4および28のアミノ酸配列を有するLC;
c)配列番号5および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号6および28のアミノ酸配列を有するLC;
d)配列番号7および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号8および28のアミノ酸配列を有するLC;
e)配列番号9および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号10および28のアミノ酸配列を有するLC;
f)配列番号11および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号12および28のアミノ酸配列を有するLC;
g)配列番号13および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号14および28のアミノ酸配列を有するLC;
h)配列番号15および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号16および28のアミノ酸配列を有するLC;
i)配列番号17および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号18および28のアミノ酸配列を有するLC;
j)配列番号19および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号20および28のアミノ酸配列を有するLC;
k)配列番号21および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号22および28のアミノ酸配列を有するLC;または
l)配列番号23および26のアミノ酸配列を有するHCならびに配列番号24および28のアミノ酸配列を有するLC
を含む。
【0079】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18040のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号2のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、ここで、位置35のXがSであり、および/または位置84のXがNである。特定の態様において、VLはまた、配列番号2のアミノ酸配列を含み、ここで、位置40のXがAであり、および/または位置55のXがYである。
【0080】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18049のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号4のアミノ酸配列を含む。この態様において、VLは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、ここで、位置1のXがDであり、および/または位置3のXがQである。ある態様において、VLは、位置1にDおよび位置3にQを含む。特定の態様において、VLはまた、配列番号4のアミノ酸配列を含み、ここで、位置53のXがSである。
【0081】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18098のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号6のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、ここで、位置1のXがEであり、および/または位置5のXがVである。ある態様において、VHは、位置1にEおよび位置5にVを含む。特定の態様において、VHは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、ここで、位置13のXがQであり、位置35のXがSであり、位置46のXがEであり、位置50のXがAであり、位置77のXがNであり、位置80のXがYであり、および/または位置115のXがMである。VLは、配列番号6のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで位置4のXがMである。
【0082】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18113のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号8のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号7のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置64のXがVである。VLは、配列番号8のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置3のXがVであり、および/または位置4のXがMである。ある態様において、VLは、位置3にVおよび位置4にMを含む。特定の態様において、VLはまた、配列番号8のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置69のXがSである。
【0083】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18201のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号9のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号10のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号9のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置5のXはQである。ある態様において、VHはまた、配列番号9のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置59のXはNであり、位置76のXはKであり、および/または位置83のXはLである。VLは、配列番号10のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはAである。
【0084】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18247のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号12のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号11のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで位置10のXがGであり、および/または位置16のXがGである。VLは、配列番号12のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXがDであり、および/または位置4のXがMである。ある態様において、VLは、位置1にDおよび位置4にMを含む。特定の態様において、VLはまた、配列番号12のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで位置55のXがYであり、および/または位置93のXがYである。
【0085】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18250のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号13のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号14のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号13のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置5のXはVである。ある態様において、VHはまた配列番号13のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置50のXはYであり、位置59のXはYであり、および/または位置61のXはAである。VLは配列番号14を含んでいてよく、ここで、位置3のXはVであり、および/または位置4のXはMである。ある態様において、VLは位置3にVおよび位置4にMを含む。特定の態様において、VLはまた配列番号14のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置55のXはYである。
【0086】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18325のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号15のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号16のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは配列番号15のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはEであり、位置5のXはVであり、および/または位置6のXはEである。ある態様において、VHは位置1にE、位置5にVおよび位置6にEを含む。特定の態様において、VHはまた、配列番号15のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置35のXはSであり、位置49のXはSであり、位置50のXはAであり、位置73のXはDであり、および/または位置78のXはTである。VLは配列番号16のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはDであり、位置3のXはQであり、および/または位置4のXはMである。ある態様において、VLは、位置1にD、位置3にQおよび位置4にMを含む。
【0087】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18366のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号17のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号18のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号17のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはEであり、および/または位置6のXはEである。ある態様において、VHは、位置1にEおよび位置6にEを含む。VLは、配列番号18のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはDである。特定の態様において、VLはまた、配列番号18のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置40のXはAであり、および/または位置55のXはYである。
【0088】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18400のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号19のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号20のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号19のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置2のXはVである。特定の態様において、VHはまた、配列番号19のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置43のXはGであり、位置49のXはIであり、位置59のXはNであり、位置70のXはIであり、および/または位置111のXはQである。VLは配列番号20のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXはAであり、および/または位置3のXはQである。ある態様において、VLは、位置1にAおよび位置3にQを含む。特定の態様において、VLはまた、配列番号20のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置10のXはSである。
【0089】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18413のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号21のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号22のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは配列番号21のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置48のXがVであり、および/または位置50のXがAである。VLは配列番号22のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置4のXはMである。特定の態様において、VLはまた、配列番号22のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置12のXはSである。
【0090】
一態様において、抗PD-1抗体は、抗体18483のVHおよびVLアミノ酸配列それぞれを含むVHおよびVLを有し、すなわち、VHが配列番号23のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号24のアミノ酸配列を含む。この態様において、VHは、配列番号23のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置1のXがEであり、位置5のXがVであり、および/または位置6のXがEである。ある態様において、VLは、位置1にE、位置5にVおよび位置6にEを含む。特定の態様において、VHはまた、配列番号23のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置35のXはSである。VLは配列番号24のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置3のXはVである。特定の態様において、VLはまた、配列番号24のアミノ酸配列を含んでいてよく、ここで、位置40のXはAであり、および/または位置55のXはYである。
【0091】
特定の態様において、抗PD-1抗体または抗原結合部分は、18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483から選択される抗体のH-CDR1-3およびL-CDR1-3 アミノ酸配列を含み、さらに該選択された抗体と同じ重鎖および/または軽鎖生殖細胞配列を利用している。
【0092】
特定の態様において、抗PD-1抗体または抗原結合部分は、18040、18049、18098、18113、18201、18247、18250、18325、18366、18400、18413および18483から選択される抗体のH-CDR1-3およびL-CDR1-3 アミノ酸配列を含み、さらに該選択された抗体のフレームワーク領域(FR)と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のFRを含む。
【0093】
ある態様において、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分のいずれかは、PD-1への、PD-L1またはPD-L2の、あるいは両方の結合を阻害し得る。
【0094】
ある態様において、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分のいずれかは、以下の特徴の少なくとも1つを有し得る:
a)4x10-8M以下のKDでカニクイザルのPD-1に結合する;
b)2x10-8M以下のKDでマウスPD-1に結合する;
c)3x10-9M以下のKDでヒトPD-1に結合する;
d)10μg/mlの濃度でPD-1とPD-L1との相互作用を阻害する;
e)SEB全血アッセイにおいて、IL-2産生を刺激する;および
f)一方向混合リンパ球反応アッセイにおいて、IFN-γ産生を刺激する。
【0095】
ある態様において、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分のいずれかは、5x10-9M以下、4x10-9M以下、3x10-9M以下、2x10-9M以下、1x10-9M以下、9x10-10M以下、8x10-10M以下、7x10-10M以下、6x10-10M以下、5x10-10M以下、4x10-10M以下、3x10-10M以下、2x10-10M以下、または1x10-10M以下のKDでヒトPD-1に結合し得る。特定の態様において、KDは、表面プラズモン共鳴を用いて決定される。
【0096】
ある態様において、本明細書に記載の抗PD-1抗体または抗原結合部分のいずれかは、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1μg/mlの濃度でPD-1とPD-L1との相互作用を阻害し得る。
【0097】
本明細書に記載の方法によって得られる抗PD-1抗体のクラスは、別のクラスまたはサブクラスと変更または交換(スイッチ)することができる。本発明の一側面において、VLまたはVHをコードする核酸分子は、それがCLまたはCHをコードする核酸配列を含まないように、当技術分野で周知の方法を用いて単離される。次いで、VLまたはVHをコードする核酸分子を、免疫グロブリン分子の異なるクラス由来の、CLまたはCHそれぞれをコードする核酸配列に作動可能に連結させる。これは、上記のように、CL鎖またはCH鎖を含むベクターまたは核酸分子を用いて達成され得る。例えば、もともとIgMであった抗PD-1抗体は、IgGにクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチングを用いて、あるIgGサブクラスを別のサブクラス、例えばIgG1からIgG2に変換することができる。κ軽鎖定常領域は、例えば、λ軽鎖定常領域に変えることができる。所望のIgアイソタイプを有する本発明の抗体を製造するための好ましい方法は、抗PD-1抗体の重鎖をコードする核酸分子および抗PD-1抗体の軽鎖をコードする核酸分子を単離し、重鎖の可変ドメインを得て、該重鎖の可変ドメインを所望のアイソタイプの重鎖の定常領域と連結させ、細胞内で軽鎖および連結した重鎖を発現させて、所望のアイソタイプを有する抗PD-1抗体を取得する工程を含む。
【0098】
本発明の抗PD-1抗体は、IgG、IgM、IgE、IgAまたはIgD分子であり得るが、一般的には、IgGアイソタイプのもの、例えばIgGサブクラスであるIgG1、IgG2aもしくはIgG2b、IgG3またはIgG4のものである。一態様において、抗体はIgG1である。別の態様において、抗体はIgG4である。
【0099】
一態様において、抗PD-1抗体は、Fc領域に少なくとも1つの変異を含み得る。多数の異なるFc変異が知られており、これらの変異はエフェクター機能の変化をもたらす。例えば、多くの場合、例えば、リガンド/受容体相互作用が望ましくない場合、または抗体-薬物複合体の場合には、エフェクター機能を低下または排除することが望ましい。
【0100】
一態様において、抗PD-1抗体は、Fc領域にエフェクター機能を低下させる少なくとも1つの変異を含む。エフェクター機能を低下させるために変異させるのに有利であり得るFc領域アミノ酸位置には、位置228、233、234および235のうち1以上が含まれ、ここで、アミノ酸位置は、IMGT番号付けスキームに従って番号付けされている。
【0101】
一態様において、位置234および235のアミノ酸残基の一方または両方が、例えばLeuからAlaへ変異されていてよい(L234A/L235A)。これらの変異は、IgG1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させる。さらに、またはあるいは、位置228のアミノ酸残基は、例えばProに変異されていてよい。ある態様において、位置233のアミノ酸残基は、例えばProに変異されていてよく、位置234のアミノ酸残基は、例えばValに変異されていてよく、および/または位置235のアミノ酸残基は、例えばAlaに変異されていてよい。アミノ酸位置は、IMGT(登録商標)番号付けスキームに従って番号付けされる。
【0102】
ある態様において、抗体がIgG4サブクラスのものであるとき、それは変異S228Pを含んでいてよく、すなわち、位置228にプロリンを有していてよく、ここで、アミノ酸位置は、IMGT(登録商標)番号付けスキームに従って番号付けされる。この変異は、望ましくないFabアーム交換を減らすことが知られている。
【0103】
特定の態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、抗体 またはその抗体の部分と1以上の他のタンパク質もしくはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成されたより大きな免疫接着分子の一部であり得る。そのような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al., Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101 (1995))ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al., Mol. Immunol. 31:1047-1058 (1994))が含まれる。他の例には、抗体由来の1以上のCDRが、共有結合または非共有結合のいずれかで分子に組み込まれて、目的の抗原に特異的に結合するイムノアドヘシンになる場合が含まれる。かかる態様において、CDR(複数可)は、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれてもよく、別のポリペプチド鎖に共有結合されてもよく、または非共有結合で組み込まれてもよい。
【0104】
別の態様において、別のポリペプチドに結合された本発明の抗PD-1抗体の全部または一部を含む融合抗体またはイムノアドへシンを作製することができる。特定の態様において、抗PD-1抗体の可変ドメインのみが、ポリペプチドに連結されている。特定の態様において、抗PD-1抗体のVHドメインは、第1のポリペプチドに連結されているが、抗PD-1抗体のVLドメインは、VHドメインおよびVLドメインが互いに相互作用して抗原結合部位を形成することができるように、第1のポリペプチドと結合する第2のポリペプチドに連結されている。別の好ましい態様において、VHドメインは、VHドメインおよびVLドメインが互いに相互作用できるように、リンカーによってVLドメインから離されている(例えば、一本鎖抗体)。次いで、VH-リンカー-VL抗体を、目的のポリペプチドに連結させる。加えて、2つ(またはそれ以上)の一本鎖抗体が互いに連結している融合抗体を作製することができる。これは、単一のポリペプチド鎖上に二価または多価抗体を作製したい場合、または二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
【0105】
一本鎖抗体(scFv)を作製するために、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントを、フレキシブルリンカー、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3(配列番号115)をコードする別のフラグメントに作動可能に連結させて、そのようにして、VHおよびVL配列は、フレキシブルリンカーによって連結されたVLおよびVHドメインを有する隣接する一本鎖たんぱく質として発現され得る。例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988);および、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと。単一のVHおよびVLのみが用いられる場合、一本鎖抗体は一価であり得る;2つのVHおよびVLが用いられる場合、二価であり得る;または、3つ以上のVHおよびVLが用いられる場合、多価であり得る。例えば、ヒトPD-1および別の分子に特異的に結合する二重特異性抗体または多価抗体を作製することができる。
【0106】
他の態様において、他の修飾抗体は、抗PD-1抗体をコードする核酸分子を用いて調製され得る。例えば、“カッパ(κ)体”(Ill et al., Protein Eng. 10:949-57 (1997))、“ミニボディー”(Martin et al., EMBO J. 13:5303-9 (1994))、“ダイアボディー”(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993))、または“ジャヌシン(Janusin)”(Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991) および Traunecker et al., Int. J. Cancer (Suppl.) 7:51-52 (1992))は、本明細書の教示に従って標準的な分子生物学的技術を用いて調製することができる。
【0107】
本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分は、誘導体化できるか、または他の分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結させることができる。一般的に、抗体またはその部分は、PD-1結合が、誘導体化または標識化によって悪影響を受けないように、誘導体化されている。従って、本発明の抗体および抗体の部分は、本明細書に記載の無修飾および修飾形態の両方のヒト抗PD-1抗体を含むことを意図している。例えば、本発明の抗体または抗体の部分は、別の抗体(例えば、二重特異性抗体またはダイアボディー)、検出試薬、医薬品、および/あるいは抗体または抗体の部分と別の分子(ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグなど)との結合に介在することができるタンパク質もしくはペプチドのような1以上の他の分子に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合などにより)作動可能に連結され得る。
【0108】
1種の誘導体化抗体は、例えば、二重特異性抗体を作製するために、同じか、または異なるタイプの)2以上の抗体を架橋することによって産生される。好適な架橋リンカーとしては、適当なスペーサー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二官能性(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)によって分離された2つの明確に反応性の基を有するヘテロ二官能性のものが挙げられる。そのようなリンカーは、例えばイリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Companyから入手可能である。
【0109】
抗PD-1抗体はまた、ポリエチレングリコール(PEG)、メチルもしくはエチル基、または炭水化物基などの化学基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特性を改善するために、例えば血清半減期を増加させるために有用であり得る。
【0110】
本発明の抗体はまた標識されていてよい。本明細書で用いる用語“標識”または“標識された”は、抗体への別の分子の組み込みを意味する。一態様において、標識は、検出可能マーカー、例えば、放射性標識アミノ酸の組み込みまたは標識アビジン(例えば、光学的または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合である。別の態様において、標識またはマーカーは、治療薬、例えば薬物複合体または毒素であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法が当技術分野で公知であり、使用され得る。ポリペプチドの標識の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレートなどの磁性剤、百日咳毒素などの毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそれらの類縁体またはホモログ。ある態様において、標識は、潜在的な立体障害を減らすために種々の長さのスペーサーアームによって結合されている。
【0111】
特定の態様において、本発明の抗体は、中性型(双性イオン型を含む)または正もしくは負に帯電した種として存在し得る。ある態様において、抗体は、対イオンと複合体形成して薬学的に許容される塩を形成してもよい。
【0112】
用語“薬学的に許容される塩”は、対イオンが薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基に由来する、1または複数の抗体および1または複数の対イオンを含む複合体を意味する。
【0113】
二重特異性結合分子
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載の抗PD-1抗体の結合特異性および別の抗PD-1抗体(例えば、本明細書に記載の別の抗PD-1抗体)あるいは別の免疫チェックポイントタンパク質、癌抗原、またはその活性が癌などの疾患状態に介在する別の細胞表面分子などの異なるタンパク質を標的とする抗体の結合特異性を有する二重特異性結合分子を提供する。そのような二重特異性結合分子は当技術分野で公知であり、異なる種類の二重特異性結合分子の例は本明細書の他の箇所に記載されている。
【0114】
核酸分子およびベクター
本発明はまた、本明細書に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸分子および配列も提供する。ある態様において、異なる核酸分子は、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖アミノ酸配列をコードする。他の態様において、同じ核酸分子は、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖アミノ酸配列をコードする。
【0115】
他に特記されない限り、ヌクレオチド配列への言及は、その相補体を包含する。従って、特定の配列を有する核酸への言及は、その相補鎖と共に、その相補配列を含むと理解されるべきである。本明細書で用いる用語“ポリヌクレオチド”は、長さが少なくとも10塩基のポリマー形態のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を意味する。この用語は一本鎖および二本鎖形態を含む。
【0116】
上記の態様のいずれにおいても、核酸分子は単離することができる。
【0117】
さらなる側面において、本発明は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分の鎖の1つを発現するのに適するベクターを提供する。本明細書で用いる用語“ベクター”は、それが結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。ある態様において、ベクターはプラスミド、すなわち、それにさらなるDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNA片である。ある態様において、ベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントはウイルスゲノムに連結され得る。ある態様において、ベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌性ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクターである)。他の態様において、ベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得て、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書中、“組換え発現ベクター”(または単に、“発現ベクター”)と呼ばれる。
【0118】
本発明は、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の重鎖、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の軽鎖、あるいは本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖の両方、をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。本発明はさらに、融合タンパク質、修飾抗体、抗体フラグメント、およびそれらのプローブをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0119】
本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子は、そのような抗体または部分を産生する任意の供給源から単離することができる。種々の態様において、核酸分子は、ヒトPD-1抗原で免疫された動物から単離された抗PD-1抗体を発現するB細胞から、またはそのようなB細胞から産生された不死化細胞から単離される。抗体をコードする核酸を単離する方法は当技術分野において周知である。mRNAを単離し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または抗体遺伝子のcDNAクローニングに使用するためのcDNAを製造するために用いることができる。特定の態様において、本発明の核酸分子は、単離するよりむしろ合成することができる。
【0120】
ある態様において、本発明の核酸分子は、任意の供給源由来の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分由来のVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含み得る。同様に、本発明の核酸分子は、本発明の抗PD-1抗体または抗原結合部分由来のVLドメインをコードするヌクレオチド配列を、いずれかの供給源由来の軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結したものを含み得る。
【0121】
本発明のさらなる側面において、重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)の可変ドメインをコードする核酸分子を、全長抗体遺伝子に“変換”することができる。一態様において、VHドメインまたはVLドメインをコードする核酸分子は、それぞれ重鎖定常(CH)領域または軽鎖定常(CL)領域を既にコードしている発現ベクター中に、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(複数可)に作動可能に連結され、および/またはVLセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、挿入することによって全長抗体遺伝子に変換される。別の態様において、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子は、標準的な分子生物学的技術を用いて、CHおよび/またはCL領域をコードする核酸分子にVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を結合する、例えば連結することによって、全長抗体遺伝子に変換される。次いで、全長重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子を、それらが導入された細胞から発現させ、そして抗PD-1抗体を単離することができる。
【0122】
核酸分子を用いて、大量の抗PD-1抗体を組換え的に発現させることができる。核酸分子はまた、本明細書に記載の、キメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、ダイアボディー、変異型抗体および抗体誘導体を産生するために用いられ得る。
【0123】
別の態様において、本発明の核酸分子は、特定の抗体配列のためのプローブまたはPCRプライマーとして用いられる。例えば、核酸は、診断方法におけるプローブとして、またはとりわけ抗PD-1抗体の可変ドメインをコードするさらなる核酸分子を単離するために用いられ得るDNA領域を増幅するためのPCRプライマーとして使用され得る。ある態様において、核酸分子はオリゴヌクレオチドである。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、目的の抗体の重鎖および軽鎖の高度に可変なドメインに由来する。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の1以上のCDRの全部または一部をコードする。
【0124】
別の態様において、核酸分子およびベクターは、変異型抗PD-1抗体を作製するために用いられ得る。抗体は、該抗体の結合特性を変えるために、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン中に変異を生じさせてよい。例えば、抗PD-1抗体のKDを増加または減少させるため、koffを増加または減少させるため、または抗体の結合特異性を変えるために、1以上のCDR中に変異を生じさせてよい。別の態様において、1以上の変異が、本発明のモノクローナル抗体において生殖細胞系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基に生じる。変異は、可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域に、または定常領域に生じ得る。好ましい態様において、変異は、可変ドメイン中に生じる。ある態様において、1以上の変異が、本発明の抗体またはその抗原結合部分の可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域において生殖細胞系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基に生じる。
【0125】
別の態様において、フレームワーク領域(複数可)は、得られたフレームワーク領域(複数可)が対応する生殖細胞系遺伝子のアミノ酸配列を有するように変異される。抗PD-1抗体の半減期を増加させるために、フレームワーク領域または定常領域に変異を乗じさせ得る。例えば、PCT公開公報 WO00/09560を参照のこと。フレームワーク領域または定常領域における変異はまた、抗体の免疫原性を変化させるために、および/または別の分子への共有結合もしくは非共有結合のための部位を提供するためにも生じさせ得る。本発明により、単一の抗体は、可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域の任意の1以上または定常領域に変異を有し得る。
【0126】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、上記のように得られた部分または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを、転写および翻訳調節配列のような必要な発現調節配列に作動可能に連結されるように、発現ベクターに挿入することにより発現される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなどの植物ウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。抗体コーディング配列は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が該抗体コーディング配列の転写および翻訳を調節するというそれらの意図された機能を果たすようにベクターに連結され得る。発現ベクターおよび発現調節配列は、用いられる発現宿主細胞と適合するように選択され得る。抗体軽鎖コーディング配列および抗体重鎖コーディング配列は、別々のベクターに挿入することができ、同じかまたは異なる発現調節配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。一態様において、両方のコーディング配列は同じ発現ベクターに挿入されて、同じ発現調節配列(例えば、共通のプロモーター)に、別々の同一の発現調節配列(例えば、複数のプロモーター)に、または異なる発現調節配列(例えば、複数のプロモーター)に作動可能に連結され得る。抗体コーディング配列は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位の連結、または制限部位が存在しない場合は平滑末端連結)によって発現ベクターに挿入することができる。
【0127】
コンビニエントベクター(convenient vector)は、上記のように、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入および発現され得るように設計された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクター中のHC-およびLC-コーディング遺伝子は、関連mRNAを安定化することによって抗体タンパク質の全収量を増加させ得るイントロン配列を含み得る。イントロン配列は、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位に隣接しており、それは、RNAスプライシングが生じ得る場所を決定する。イントロン配列の位置は、抗体鎖の可変領域または定常領域のいずれにあってもよく、あるいは複数のイントロンが用いられるとき、可変領域および定常領域の両方にあり得る。ポリアデニル化および転写終結は、コーディング領域の下流の天然の染色体部位で起こり得る。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが免疫グロブリン鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0128】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持していてよい。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような要因に依存し得ることを当業者は理解し得る。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、レトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期(major late)プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーならびに天然の免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターのような強力な哺乳動物プロモーターなどの、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメントを含む。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば米国特許第5,168,062号、同第4,510,245号および同第4,968,615号を参照のこと。プロモーターおよびベクターの説明、ならびに植物の形質転換を含む、植物中で抗体を発現させるための方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,517,529号を参照のこと。細菌細胞または真菌細胞、例えば酵母細胞においてポリペプチドを発現させる方法もまた、当技術分野において周知である。
【0129】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などの、さらなる配列を担持していてよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照のこと)。例えば、一般的に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。例えば、選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞において使用するための)、neo遺伝子(G418選択のための)、およびグルタミン酸シンテターゼ遺伝子が含まれる。
【0130】
本明細書で用いる用語“発現調節配列”とは、それらが連結されているコーディング配列の発現およびプロセシングをもたらすために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現調節配列は、適当な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;および、必要に応じて、タンパク質分泌を増強する配列を含む。そのような調節配列の性質は宿主生物によって異なる。原核生物では、かかる調節配列は、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含む。真核生物では、一般的に、かかる調節配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語“調節配列”は、少なくとも、その存在が発現およびプロセシングに必須である全ての成分を含むことを意図しており、その存在が有利であるさらなる成分、例えばリーダー配列および融合パートナー配列も含んでいてよい。
【0131】
宿主細胞ならびに抗体および抗体組成物の産生方法
本発明のさらなる側面は、本発明の抗体組成物ならびに抗体およびその抗原結合部分を産生するための方法に関する。本発明のこの側面の一態様は、抗体を発現することができる組換え宿主細胞を提供すること、該宿主細胞を抗体の発現に適する条件下で培養すること、および得られた抗体を単離することを含む、本明細書に記載の抗体を産生する方法に関する。そのような組換え宿主細胞におけるかかる発現によって産生される抗体は、本明細書中、“組換え抗体”と称される。本発明はまた、そのような宿主細胞の子孫細胞、およびそれによって産生される抗体も提供する。
【0132】
本明細書で用いる用語“組換え宿主細胞”(または、単に“宿主細胞”)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を意味する。本発明は、例えば、上記の本発明のベクターを含み得る宿主細胞を提供する。本発明はまた、例えば、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の、重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいはその両方を含む宿主細胞を提供する。“組換え宿主細胞”および“宿主細胞”は、特定の対象細胞のみならず、そのような細胞の子孫も意味することが理解されるべきである。突然変異または環境の影響のいずれかのために後続の世代において何らかの修飾が起こり得るため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、依然として、本明細書で用いる用語“宿主細胞”の範囲内に含まれる。
【0133】
抗PD-1抗体をコードする核酸分子およびこれらの核酸分子を含むベクターは、適切な哺乳動物細胞、植物細胞、細菌細胞または酵母宿主細胞のトランスフェクションに用いることができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための公知の方法によるものであり得る。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法は当技術分野において周知であり、デキストラン介在トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチド(複数可)の封入、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。加えて、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入され得る。細胞を形質転換する方法は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号を参照のこと。植物細胞を形質転換する方法は当技術分野において周知であり、例えば、アグロバクテリウム介在形質転換、バイオリスティック形質転換、直接注入、エレクトロポレーションおよびウイルス形質転換が挙げられる。細菌細胞および酵母細胞を形質転換する方法も当技術分野において周知である。
【0134】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection (ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が挙げられる。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、293フリースタイル細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザルの腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多くの他の細胞株が含まれる。特定の好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することによって選択される。用いられ得る他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9またはSf21細胞である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培養培地から回収することができる。植物宿主細胞には、例えば、ニコチアナ、アラビドプシス、ウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモなどが含まれる。細菌宿主細胞には、大腸菌およびストレプトマイセス属が含まれる。酵母宿主細胞には、分裂酵母、出芽酵母および メタノール資化酵母が含まれる。
【0135】
さらに、本発明の抗体またはその抗原結合部分の産生細胞株からの発現は、いくつかの公知の技術を用いて増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GSシステム)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的な方法である。GSシステムは、欧州特許第0 216 846号、同第0 256 055号、同第0 323 997号および同第0 338 841号に全体的または部分的に報告されている。
【0136】
異なる細胞株によってまたはトランスジェニック動物において発現される抗体は、互いに異なるグリコシル化パターンを有すると考えられる。しかしながら、本明細書に提供される核酸分子によってコードされる、または本明細書に提供されるアミノ酸配列を含む全ての抗体は、抗体のグリコシル化状態にかかわらず、より一般的には、翻訳後修飾(複数可)の有無にかかわらず、本発明の一部である。
【0137】
医薬組成物
本発明の別の側面は、有効成分として(または唯一の有効成分として)、本発明の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-1抗体組成物を含む医薬組成物である。医薬組成物は、本明細書に記載の抗PD-1抗体組成物または抗体もしくはその抗原結合部分を含み得る。ある態様において、組成物は、PD-1関連障害および/または癌の改善、予防および/または処置を目的とする。本明細書で用いる、PD-1関連障害またはPD-1介在障害は、PD-1活性の調節によって改善される、またはその進行が遅延される、障害、疾患または病状を意味する。ある態様において、組成物は免疫系の活性化を目的とする。特定の態様において、組成物は、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織に由来する癌の改善、予防および/または処置を目的とする。
【0138】
一般的に、本発明の抗体、その抗原結合部分および二重特異性結合分子は、例えば、以下に記載される、1以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて製剤として投与するのに適している。
【0139】
本発明の医薬組成物は、本発明の1以上の抗PD-1抗体または結合部分または二重特異性結合分子、例えば、1つもしくは2つの抗PD-1抗体、結合部分または二重結合性分子を含み得る。一態様において、組成物は、本発明の単一の抗PD-1抗体またはその結合部分を含む。
【0140】
別の態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、例えば1つの抗PD-1抗体またはその部分、および1つまたは複数の関連する細胞表面受容体、例えば1つまたは複数の癌関連受容体を標的とする1以上のさらなる抗体を含み得る。
【0141】
用語“賦形剤”は、本明細書中、本発明の化合物(複数可)以外の任意の成分を説明するために用いられる。賦形剤(複数可)の選択は、特定の投与方法、溶解性および安定性に対する賦形剤の効果、ならびに投与量形態の性質などの因子に大きく影響され得る。本明細書で用いる“薬学的に許容される賦形剤”には、生理学的に適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される賦形剤のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせである。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容される物質のさらなる例は、湿潤剤または少量の補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝剤であり、それらは抗体の有効期間または有効性を高める。
【0142】
本発明の医薬組成物およびそれらの製造方法は、当業者には容易に明らかであり得る。そのような組成物およびそれらの製造方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995)に見いだされ得る。医薬組成物は、好ましくはGMP(適正製造基準:good manufacturing practices)条件下で製造される。
【0143】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単一単位用量として調製、包装および/または販売されてよい。本明細書で用いる“単位用量”は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量またはそのような投与量の便利な一部分(例えば、そのような投与量の半分または三分の一)に等しい。
【0144】
当技術分野で許容されているペプチド、タンパク質または抗体を投与するための任意の方法が、本発明の抗体および抗原結合部分のために好適に用いられ得る。
【0145】
本発明の医薬組成物は、一般的に、非経腸投与に適している。本明細書で用いる、医薬組成物の“非経腸投与”には、対象の組織の物理的侵蝕を特徴とする投与経路および組織内の侵蝕による医薬組成物の投与経路を含み、したがって一般に血中、筋肉内または臓器内への直接投与が行われる。従って、非経腸投与としては、組成物の注射による、外科的切開部を通した組成物の適用による、組織貫通非外科的創傷を通した組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が挙げられるが、これらに限定されない。特に、非経腸投与は、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、および滑液内注射または注入;ならびに、腎臓透析液注入技術を含むが、これらに限定されないことが意図される。局所灌流もまた意図される。特定の態様としては、静脈内経路および皮下経路が含まれる。
【0146】
非経腸投与に適する医薬組成物の製剤は、一般的に、活性成分を、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせて含む。かかる製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製、包装または販売され得る。注射可能な製剤は、単位投与量形態で、例えば防腐剤を含むアンプルまたは複数回投与用容器中に、調製、包装または販売され得る。非経腸投与用製剤としては、懸濁液、溶液、油性もしくは水性ビークル中のエマルジョン、ペーストなどが挙げられるが、これらに限定されない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定剤または分散剤を含むが、これらに限定されない、1以上のさらなる成分をさらに含み得る。非経口投与用の製剤の一実施形態では、前記活性成分は、再構築された組成物の非経口投与の前に、適切な媒体(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)により再構築用の乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態において提供される。非経腸投与用の製剤の一態様において、活性成分は、再構成された組成物の非経腸投与の前に、適切なビークル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)により再構築するための乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態で提供される。非経腸製剤には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは、pH3から9)などの賦形剤を含み得る水溶液も含まれるが、いくつかの用途では、それらは、滅菌非水溶液として、または無菌の発熱物質を含まない水などの好適なビークルと共に用いられる乾燥形態として、より好適に製剤されてもよい。非経腸投与形態の例としては、滅菌水溶液、例えば水性プロピレングリコールもしくはデキストロース溶液中の溶液または懸濁液が挙げられる。そのような投与量形態は、要すれば、適切に緩衝化されてよい。有用な他の非経腸投与可能な製剤としては、微結晶形態またはリポソーム製剤中に活性成分を含むものが挙げられる。非経腸投与用製剤は、即時放出および/または徐放性放出となるように製剤され得る。徐放性製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラムされた放出が含まれる。
【0147】
例えば、一側面において、滅菌注射可能溶液は、必要に応じて、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む適当な溶媒中に、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分、二重特異性結合分子、または抗PD-1抗体組成物を必要量で組み込み、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌ビークルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、活性成分に加えて、予め滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥法および凍結乾燥法である。溶液の適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。注射可能組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによって、および/または放出調節コーティング(例えば徐放性コーティング)を用いることによってもたらすことができる。
【0148】
本発明の抗体はまた、鼻腔内投与または吸入投与によって、一般的には乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、または例えば適当な薬学的に許容される賦形剤と混合した混合成分粒子として)、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは電子流体力学を用いて微細なミストを形成する噴霧器)またはネブライザーからの、好適な噴射剤の使用の有無で、エアゾールスプレーとして、または点鼻剤として、投与されてもよい。
【0149】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーは、一般的に、例えば、活性物質の分散、可溶化または持続放出のための好適な薬剤、溶媒としての噴射剤を含む、本発明の抗体の溶液または懸濁液を含む。
【0150】
乾燥粉末または懸濁液製剤に用いる前に、薬剤は一般的に吸入による送達に適したサイズ(一般的には5ミクロン未満)に微粉化される。これは、スパイラルジェットミル法、流動床式ジェットミル法、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、または噴霧乾燥などの任意の好適な粉砕方法によって達成することができる。
【0151】
吸入器または吹き入れ器(insufflator)で用いるためのカプセル剤、ブリスター剤およびカートリッジ剤は、本発明の化合物の粉末混合物、適切な粉末基剤および動作調整剤を含有するように製剤され得る。
【0152】
細かい霧を発生するための電子流体力学を用いるアトマイザーにおいて用いるのに適する溶液製剤は、1動作につき本発明の抗体の適当な用量を含有することができ、動作容量は、1μLから100μLまで変化し得る。
【0153】
吸入投与/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出および/または徐放性放出であるように製剤することができる。徐放性製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。
【0154】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合、投与量単位は、定量を送達するバルブによって決定される。本発明による単位は、通常、本発明の抗体の定量または“一吹き(puff)”を投与するように構成される。全一日用量は、一般的には単回用量で、またはより通常には一日を通して分割用量として投与され得る。
【0155】
本発明の抗体および抗体の部分はまた、経口投与用にも製剤され得る。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように飲み込むこと、および/または化合物が口から直接血流に入る頬側、舌側または舌下投与を含み得る。
【0156】
経口投与に適した製剤には、錠剤などの固体、半固体および液体系;多粒子もしくはナノ粒子、液体または粉末を含む軟質または硬質カプセル;ロゼンジ(液体充填を含む);咀嚼剤(chews);ゲル剤;速分散性投与量形態;フィルム剤;膣坐剤(ovules);噴霧剤;および、頬側/粘膜付着性パッチが含まれる。
【0157】
液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。かかる製剤は、軟質または硬質カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから製造される)中の充填剤として用いることができ、そして一般的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適当な油状物、および1以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤はまた、例えば、サシェ剤からの固体の再構成によっても調製することができる。
【0158】
本発明の抗体および組成物の治療的使用
一側面において、本発明の抗PD-1抗体およびその抗原結合部分、抗PD-1組成物、ならびに二重特異性結合分子は、それが必要なヒトにおいて免疫系を増強または活性化するために用いられる。ある態様において、患者は免疫抑制されている。例えば、医師は、本発明の抗PD-1抗体、抗体結合部分、組成物、または二重特異性結合分子を、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて(連続的にまたは同時に)投与することにより、患者自身の免疫系の抗癌活性を高めることができる。抗PD-1抗体またはその一部、組成物、または二重特異性結合分子は、免疫細胞中のPD-1の活性を調節し、その結果、抗癌免疫の増強をもたらす。特定の態様において、抗体もしくはその抗原結合部分、組成物、または二重特異性結合分子は、癌、例えば、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟組織、造血系、頭頚部、肝臓、膀胱、乳房、胃、子宮および膵臓などの組織に由来する癌、ならびにPD-1活性に依存する、および/またはPD1、PD-L1および/またはPD-L2を発現または過剰発現する患者における、任意の癌または他の病状の処置に用いるためのものである。本発明の抗PD-1抗体、その抗原結合部分、抗PD-1組成物、および/または二重特異性結合分子によって処置される癌としては、例えば、黒色腫(例えば、進行性黒色腫、または切除不能もしくは転移性黒色腫)、非小細胞肺癌、膀胱癌、頭頚部扁平上皮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、胃癌、高頻度マイクロサテライト不安定性癌、肝細胞癌、中皮腫、メルケル細胞癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫および腎細胞癌(RCC)が挙げられ得る。
【0159】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体、抗原結合部分、抗PD-1組成物、および/または二重特異性結合分子によって処置される癌としては、例えば、進行性または転移性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頚部扁平上皮癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経膠芽腫、神経膠腫、神経内分泌腫瘍、扁平上皮肺癌、小細胞肺癌、肝細胞癌、膀胱癌、上部尿路癌、食道癌、胃食道接合部癌、胃癌、肝臓癌、大腸癌、結腸直腸癌腫、多発性骨髄腫、肉腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、鼻咽頭癌、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、卵巣癌、胃腸癌、原発性腹膜癌、卵管癌、尿路上皮癌、HTLV関連T細胞白血病/リンパ腫、前立腺癌、尿生殖器癌、髄膜腫、副腎皮質癌、神経膠肉腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、子宮内膜癌、皮膚基底細胞癌、虫垂癌、胆管癌、唾液腺癌、進行性メルケル細胞癌、泌尿器癌、骨肉腫(bone cancer)、胸部の癌、気道腫瘍、腺様嚢胞癌、子宮頸癌、星状細胞腫、脊索腫、血液芽細胞腫、神経芽腫、口腔癌、皮膚扁平上皮癌、甲状腺癌、カポジ肉腫、肛門癌、胆嚢癌、胸腺癌、子宮癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、中皮腫、または固形腫瘍が挙げられる。癌は、例えば、早期、中期、後期または転移期にあり得る。
【0160】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体、抗原結合部分、組成物および/または二重特異性結合分子は、例えば、病原体が宿主を阻害する場合に、ウイルス感染および/または寄生虫感染を処置するために用い得る。例えば、病原体は、例えばHIV、肝炎(A型、B型もしくはC型)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、アデノウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コノウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、デング熱ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス(molluscum virus)、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ジョンカニンガム(JC)ウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、または緑膿菌であり得る。
【0161】
ある態様において、本発明の抗PD-1抗体、抗原結合部分、組成物および/または二重特異性結合分子は、免疫不全であるか、または免疫不全のリスクがある患者を(例えば、化学療法または放射線療法により)処置するために用いられ得る。
【0162】
“処置する”、“処置すること”および“処置”は、生物学的障害および/またはそれに付随する症状の少なくとも1つを軽減または排除する方法を意味する。本明細書用いる場合、疾患、障害または病状を“軽減すること”は、疾患、障害または病状の症状の重症度および/または発生頻度を減らすことを意味する。さらに、本明細書における“処置”への言及は、治療的、緩和的および予防的処置への言及を含む。
【0163】
“治療的有効量”とは、処置されるべき障害の症状の1以上をある程度軽減し得る、投与されるべき治療剤の量を意味する。抗癌剤の治療的有効量は、結果として、例えば、腫瘍の縮小、生存率の増加、癌細胞の排除、疾患進行の遅延、転移の減少、または医療専門家によって望まれる他の臨床的終点をもたらし得る。
【0164】
本発明の抗PD-1抗体もしくは抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、単独で、または1以上の他の薬剤もしくは抗体と組み合わせて(または、それらの任意の組合せとして)投与され得る。従って、本発明の医薬組成物、方法および使用はまた、以下に詳述するように、他の活性剤との組み合わせ(同時投与)の態様も包含する。
【0165】
本発明の抗体およびその抗原結合部分、組成物ならびに二重特異性結合分子と1以上の他の治療剤との投与について言及するとき、本明細書で用いる用語“同時投与”、“同時に投与される”および“~と組み合わせて”とは、以下を意味することを意図し、そして以下を言及しかつ包含する:
- 本発明の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のかかる組合せの、かかる構成要素が、該構成要素を患者に実質的に同時に放出する単一の投与量形態に共に製剤される場合の、処置を必要とする患者への同時投与;
- 本発明の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子および治療剤のかかる組合せのおよび治療剤(複数可)のかかる組合せの、かかる構成要素が、患者によって実質的に同時に服用される別々の投与量形態に互いに別個に製剤され、それにより該構成要素が患者に実質的に同時に放出される場合の、処置を必要とする患者への実質的な同時投与;
- 本発明の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のかかる組合せの、かかる構成要素が、各投与の間に有意な時間間隔をおいて患者によって連続した時間に服用される別々の投与量形態に互いに別個に製剤され、それにより該構成要素が、患者に実質的に異なる時間に放出される場合の、処置を必要とする患者への連続投与;および
- 本発明の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子および治療剤(複数可)のかかる組合せの、かかる構成要素が、制御された方法で該成分を放出する単一の投与量形態に共に製剤され、それによりそれらが患者に同じ時間におよび/または異なる時間に同時的に、連続的に、および/または重複して放出され、各部分が同一または異なる経路のいずれかにより投与され得る場合の、処置を必要とする患者への連続投与。
【0166】
本発明の抗体およびその抗原結合部分、組成物ならびに二重特異性結合分子は、追加の治療的処置なしで、すなわち独立型療法(単剤療法)として、投与され得る。あるいは、本発明の抗体およびその抗原結合部分、組成物ならびに二重特異性結合分子を用いる処置は、少なくとも1つのさらなる治療的処置(併用療法)、例えば、別の免疫刺激剤、抗癌剤、抗ウイルス剤またはワクチン(例えば、腫瘍ワクチン)を含んでいてよい。ある態様において、抗体もしくはその抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、癌の治療のための他の薬物/薬剤と同時投与され得るか、またはそれらと共に製剤されてよい。追加の治療的処置は、例えば、化学療法剤、抗腫瘍剤、または抗血管形成剤、異なる抗癌抗体、および/または放射線療法を含み得る。
【0167】
本発明の抗体、抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子を癌細胞の最終分化を誘導することが知られている薬剤と組み合わせることにより、効果はさらに改善され得る。そのような化合物は、例えば、レチノイン酸、トランス-レチノイン酸、シス-レチノイン酸、フェニルブチレート、神経成長因子、ジメチルスルホキシド、活性型ビタミンD3、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ、12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセテート、ヘキサメチレン-ビス-アセトアミド、トランスフォーミング増殖因子-ベータ、酪酸、サイクリックAMP、およびベスナリノンからなる群より選択され得る。ある態様において、化合物は、レチノイン酸、フェニルブチレート、オールトランス-レチノイン酸および活性型ビタミンDからなる群より選択される。
【0168】
本発明の抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分、組成物、または二重特異性結合分子および少なくとも1つの他の薬剤(例えば、化学療法剤、抗腫瘍剤または抗血管形成剤)を含む医薬品は、癌療法における同時、個別または連続投与のための併用療法として用いられ得る。他の薬剤は、対象となる特定の癌の処置に適する任意の薬剤、例えば、アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチンおよび/またはオキサリプラチンなどの白金誘導体;植物アルカロイド、例えばパクリタキセル、ドセタキセルおよび/またはイリノテカン;抗腫瘍抗生物質、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、ルテオマイシンおよび/またはマイトマイシン;トポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;および/または、代謝拮抗剤、例えばフルオロウラシルおよび/または他のフルオロピリミジンからなる群より選択される薬剤であり得る。
【0169】
本発明の抗PD-1抗体もしくは抗原結合部分、抗体組成物、または二重特異性結合分子はまた、ワクチン、サイトカイン、酵素阻害剤、免疫刺激化合物およびT細胞療法剤などの他の抗原療法剤と組み合わせて用いられてもよい。ワクチンの場合、それは、例えば、処置されるべき癌に関連する1以上の抗原を含有するタンパク質、ペプチドまたはDNAワクチン、あるいは抗原と共に樹状細胞を含むワクチンであり得る。好適なサイトカインとしては、例えば、IL-2、IFN-γおよびGM-CSFが挙げられる。抗癌活性を有する酵素阻害剤種の例は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、例えば1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MT)である。養子T細胞療法とは、腫瘍を認識して攻撃するために患者自身のT細胞を増殖または操作することを含む種々の免疫療法を意味する。
【0170】
本発明の抗PD-1抗体もしくは抗原結合部分、抗体組成物または二重特異性結合分子は、チロシンキナーゼ阻害剤と関連して補助療法にて用いられ得ることも意図される。これらは、これらは、受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインと相互作用し、細胞内Mg-ATP結合部位について競合することによってリガンド誘導性受容体リン酸化を阻害する、合成の、主にキナゾリン由来の、低分子量分子である。
【0171】
ある態様において、抗体もしくはその抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、免疫系の活性化に介在する別の薬物/薬剤、A2AR、BTLA、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、CD27、CD28、CD40、CD55、CD73、CD122、CD137、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、CTLA-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/またはCEACAM-5)、GAL9、GITR、HVEM、ICOS、IDO、KIR、LAIR1、LAG-3、OX40、TIGIT、TIM-3、TGFR-beta、VISTA、LILRB2、CMTM6、および/または2B4の発現または活性を調節する薬剤を含むが、これらに限定されない薬剤と組み合わせて用いられ得る。特定の態様において、薬剤は、上記の分子の1つに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本発明の抗体もしくはその抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、CTLA-4阻害剤(例えば、トレメリムマブまたはイピリムマブなどの抗CTLA-4抗体)と組み合わせて投与され得る。一態様において、本発明の抗体もしくはその抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、イピリムマブと組み合わせて投与され得る。
【0172】
特定の側面において、本発明の抗体および抗原結合部分、組成物ならびに二重特異性結合分子は、PD-1またはそのリガンドの1以上を標的とし得る、PD-1経路の別の阻害剤と組み合わせて投与され得る。そのような阻害剤の例としては、他の抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および抗PD-L2抗体が挙げられる。ある態様において、本発明の抗PD1抗体もしくはその抗原結合部分、二重特異性抗体または抗体組成物は、ペムブロリズマブおよび/またはニボルマブと組み合わせて投与され得る。
【0173】
本発明の抗体およびその抗原結合部分、抗体組成物ならびに二重特異性結合分子は、本明細書に記載の処置法に用いることができ、本明細書に記載の処置に用いることができ、および/または本明細書に記載の処置のための医薬の製造に用いることができることが理解される。本発明はまた、本明細書に記載の抗体およびその抗原結合部分、抗体組成物、および/または二重特異性結合分子を含むキットおよび製品も提供する。
【0174】
投与量および投与経路
本発明の抗体またはその抗原結合部分、組成物および二重特異性結合分子は、対象となる病状の処置に有効な量で、すなわち望ましい結果を達成するのに必要な投与量および期間で投与され得る。治療的有効量は、治療すべき特定の病状、患者の年齢、性別および体重、ならびに抗体が独立型治療として投与されるべきか、または1以上の追加の抗癌処置剤と組み合わせて投与されるべきかなどの要因によって変わり得る。
【0175】
投与量レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回に分割した用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少または増加させてもよい。とりわけ、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、非経腸組成物を単位投与量形態で製剤するのが有利である。本明細書で用いる、単位投与量形態は、処置されるべき患者/対象のための単位投与量として適する物理的に別個の単位を意味する;各単位は、必要な薬学的担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投与量形態の詳細は、一般的に、(a)化学療法剤のユニークな特徴および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における処置感受性のためにそのような活性化合物を配合する当技術分野における固有の制限によって決定されるか、またはそれに直接左右される。
【0176】
従って、当業者は、本明細書に提供される開示に基づいて、用量および投与レジメンが治療分野で周知の方法に従って調整されることを理解し得る。すなわち、最大耐用量を容易に確立することができ、患者に検出可能な治療効果をもたらすために各薬剤を投与するための時間的要件と同様に、患者に検出可能な治療効果をもたらす有効量も決定することができる。従って、本明細書では特定の用量および投与レジメンが例示されているが、これらの例示は、本発明を実施する際に患者に提供され得る用量および投与レジメンを限定するものではない。
【0177】
投与量値は、軽減されるべき病状のタイプおよび重篤度によって異なっていてよく、そして単回投与または複数回投与を含み得ることが特記される。さらに、特定の対象について、個々の必要性および組成物の投与を管理または監督する担当者の専門的判断に従って、特定の投与レジメンを経時的に調整すべきであり、本明細書に記載の投与量範囲は単なる例示であって、具体化された組成物の範囲または実施を限定することを意図しないことも理解されるべきである。さらに、本発明の組成物を用いる投与レジメンは、疾患タイプ、患者の年齢、体重、性別および病状、重篤度、投与経路ならびに用いる特定の抗体を含む種々の要因に基づいてもよい。従って、投与レジメンは広く変わり得るが、標準的方法を用いて常套的に決定され得る。例えば、用量は、薬物動態学的または薬力学的パラメータに基づいて調整することができ、これは、毒性作用および/または臨床検査値などの臨床効果を含み得る。従って、本発明は、当業者によって決定されるような患者内の用量漸増を包含する。適当な投与量および投与レジメンを決定することは関連する技術分野で周知であり、本明細書に記載された教示が提供されれば当業者により包含されると理解され得る。
【0178】
本発明の抗体もしくはその抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子の適する用量は、0.5-50mg/kgなど、0.1-100mg/kgの範囲であり得て、例えば、約1-20mg/kgであることが意図される。該抗体、抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子は、例えば、少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kg、例えば少なくとも1mg/kg、例えば少なくとも1.5mg/kg、例えば少なくとも2mg/kg、例えば少なくとも3mg/kg、例えば少なくとも4mg/kg、例えば少なくとも5mg/kgなどの投与量で投与することができ、例えば、最大50mg/kgまで、例えば最大30mg/kgまで、例えば最大20mg/kgまで、例えば最大15mg/kgまでの投与量で投与することができる。投与は、通常、適当な間隔で、例えば週1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回繰り返され、必要に応じて投与量を増減することができる担当医によって適切と考えられる限り反復される。
【0179】
腫瘍治療のための有効量は、患者における疾患の進行を安定化させる、および/または病状を改善するその能力によって、好ましくは、例えば腫瘍サイズを減少させることによって疾患の進行を元に戻す能力によって測定され得る。本発明の抗体、抗原結合部分、組成物または二重特異性結合分子の癌を阻害する能力は、例えば実施例に記載されるようなインビトロアッセイにより、ならびにヒト腫瘍における有効性の予測をする適切な動物モデルにおいて、評価することができる。適切な投与レジメンは、それぞれの特定の状況において、例えば、単回ボーラスまたは連続的点滴として、そしてそれぞれの場合の緊急性によって示されるように投与量を調整して投与することで、最適な治療応答を提供するために選択され得る。
【0180】
診断用途および組成物
本発明の抗体は、診断過程(例えば、インビトロ、エクスビボ)においても有用である。例えば、抗体は、患者由来のサンプル(例えば、組織サンプル、または炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液もしくは尿などの体液サンプル)中のPD-1レベルを検出および/または測定するために用いることができる。好適な検出および測定法としては、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、放射免疫測定、および免疫組織学などの免疫学的方法が挙げられる。本発明はさらに、本明細書に記載の抗体を含むキット(例えば、診断キット)を包含する。
【0181】
本明細書中他に定義されない限り、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者によって通常理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験に用いることができる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書tが優先されるものとする。
【0182】
一般的に、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医薬品および製薬化学、ならびにタンパク質および核酸の化学ならびにハイブリダイゼーションの技術に関連して本明細書中用いられる命名法は、当技術分野において周知でありかつ一般的に用いられているものである。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、製造者の仕様に従って行われる。
【0183】
さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書および態様を通して、用語“有する(have)”および“含む(comprise)”または“has”、“having”、“comprises”もしくは“comprising”などのそれらの変形は、記載された整数または整数のグループを含むことを意味するが、他の整数または整数のグループを除外することを意味するものではないことが理解され得る。
【0184】
本明細書で言及された全ての文献および他の参考文献は、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる。本明細書では多数の文書が引用されているが、この引用はこれらの文書のいずれもが当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することを承認するものではない。
【0185】
本発明をよりよく理解することができるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、説明を目的とするのみであって、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0186】
実施例
実施例1.抗PD-1抗体レパートリーの産生およびスクリーニング
材料および方法
ヒト抗体を産生することが可能なOMT(Open monoclonal Technology、Inc.)由来の遺伝子操作されたラット系統であるOmniRat(登録商標)ラット(Osborn et al., J Immunol. 2013, 190(4):1481-90)を、ヒト、カニクイザルまたはマウスPD-1抗原で免疫化した。該ラットに由来するシングルセル(1細胞)選別抗体分泌B細胞(ASC)からの抗体遺伝子のクローニングは、Symplex(商標)抗体発掘技術(Meijer et al., J Mol Biol 2006, 358(3):764-72;米国特許第7,749,697号;WO2008/104184)を用いて実施した。
【0187】
Symplex(商標)抗体ライブラリーを、免疫化されたOMTラットからのシングルセル選別B細胞から調製され、ライブラリーは、各選別されたB細胞について同種のVHおよびVLをコードする対を含む。抗体レパートリー発現構築物は、IgG1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させることが知られている2つの変異(L234A/L235A)を有するIgG1フォーマットの完全ヒト免疫グロブリンをコードしていた(Hezareh et al., J Virol. 75(24): 12161-8 (2001))。
【0188】
CHO-S細胞を384ウェルフォーマット中で発現構築物を用いてトランスフェクトして、FreeStyle(商標)MAX試薬(Invitrogen)を用いて、ヒト、カニクイザルまたはマウスPD-1を表示させた。さらに、別の細胞集団を、無関係のタンパク質ヒトVEGFR2をコードする対照ベクターでトランスフェクトし、その後陰性対照として用いた。多重スクリーニング設定を可能にするために、中強度カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSEinter)で標識した対照細胞、高強度CFSE(CFSEhigh)で標識したカニクイザルPD-1トランスフェクト細胞、および非標識ヒトPD-1-トランスフェクト細胞を、1ml当たり1×106個の細胞の密度で、1:1:1の比で混合した。384ウェルプレートにおいて、40μlのこの細胞混合物を10μlの抗体含有上清と混合し、そして細胞結合抗体を、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)AF647二次抗体(Molecular Probes、カタログ番号A21445)を添加することにより顕示化した。並行して、抗体を,ヒト(CFSEpos)およびマウスPD-1(CFSEneg)への結合について同様の設定でスクリーニングした。ハイスループットフローサイトメトリー(iQue(登録商標)Screener、Intellicyt)を用いてサンプルを取得し、CFSE 対 IgG結合(AF647)をプロットすることにより、ForeCyt(登録商標)ソフトウェアを用いてデータを分析した。PD-1特異的一次ヒットを、ヒト(CSFEneg)およびカニクイザルPD-1トランスフェクト細胞(CFSEhigh)の両方に結合するが、対照細胞(CFSEinter)に結合しない抗体クローンとして同定し、ヒットピッキングのためにプレート番号およびプレート座標を集め、次いで配列分析を行った。第二のスクリーニングにおいてマウスPD-1に対してさらなる反応性を示す多数の一次ヒット(CFSEneg)もまたさらなる分析のために選択した。
【0189】
結果
図1(A)-1(D)は、PD-1オーソログに対して異なる反応性を示す4つの抗体クローンについての代表的なフローサイトメトリードットプロットを示す:
(A)CHO-S細胞に非特異的に結合する抗体クローン、
(B)ヒトPD-1トランスフェクト細胞のみに特異的に結合する抗体クローン、
(C)ヒトおよびカニクイザルPD-1に特異的に結合する抗体クローン、および
(D)スクリーニングにおいて試験した3つ全てのPD-1種に結合する抗体クローン。
【0190】
(A)、(B)、(C)および(D)それぞれにおける上のドットプロットは、ヒトPD-1(huPD1)およびカニクイザルPD-1(cynoPD1)への結合について、陰性対照細胞(neg)と比較して、抗体を試験する最初のスクリーニングラウンドを示す。下のドットプロットは、マウスPD-1(moPD1)およびヒトPD-1(huPD1)への結合について抗体を試験する2回目のスクリーニングラウンドを示す。x軸(水平方向)はCFSEを示し、y軸(垂直方向)はヒトIgG結合を示す。
【0191】
実施例2.抗体配列
スクリーニングヒットをDNA配列決定により分析し、抗体をコードするDNA配列を抽出した。ヒトおよびカニクイザルPD-1の両方に対して交差反応性を示す488個の一次ヒットを配列決定した。これは、抗PD-1ヒットレパートリーが、140個の遺伝子クラスターを表す254個のユニークな抗体を含むことを明らかにした。選択された抗体クローンを個々に発現させ、下記のように機能的に試験した。インビトロアッセイにおいて機能的活性を示す12個の抗体を以下に記載する。12個の抗体のVHおよびVLドメインのタンパク質配列の番号を表1に示す。可変VHおよびVL遺伝子をクローニングするのに用いた免疫グロブリン定常領域(L234A/L235A変異を有するIg重鎖(IgHC)およびIgカッパ軽鎖(IgKV))の配列番号を、表2に示す。12個の機能的抗体のCDRの配列番号を表3に示す。本明細書中のCDR配列は、CDR1およびCDR2についてのIMGT(登録商標)の定義に従って決定された。重鎖および軽鎖CDR3について、本明細書中の定義は、IMGT-CDR3のアミノ末端に1つのさらなるアミノ酸残基(Cys)を含む。
【0192】
【0193】
実施例3.抗体配列におけるフレームワーク変異
実施例2のVHおよびVLアミノ酸配列のヒト生殖細胞系列配列へのアラインメントを実施して、そのVHおよびVL配列が由来する生殖細胞系列遺伝子を明らかにした。表4は、各クローンのVHおよびVLに対する最も近いVおよびJ生殖細胞系遺伝子の割り当て、ならびに以下に記載するようなフレームワーク変異に関する情報を示す。
【0194】
抗体遺伝子は、縮重プライマーを用いたSymplex(商標)抗体発掘技術(Mejier et al., J Mol Biol 358:764-772 (2006);WO2005/042774)を用いたRT-PCRにより単離されたため、最初の6アミノ酸は、抗体配列の成熟中に生じない変異を起こしやすい。従って、これらのプライマー由来の変異は、結合親和性が低下するリスクなしに生殖細胞系列配列に戻すことができる。これらの“Symplex-補正された”変異配列におけるVHおよびVLのアミノ酸置換数および特定のアミノ酸置換を表4に示す。さらに、可変ドメインのフレームワーク領域における体細胞超変異、すなわち、CDRの外側のVHまたはVLにおける変異を有する抗体は、最も近いVまたはJ生殖細胞系列の配列に戻すことができる。これらの“生殖細胞系列”バリアント配列における生殖細胞系列のものに変更され得る抗体フレームワーク中のアミノ酸置換数および特定のアミノ酸置換もまた表4に示す。 表4に示される“生殖細胞系列化”変異配列(カラム“生殖細胞系列バリアント配列におけるVHフレームワーク変異の数”および“生殖細胞系列バリアント配列におけるVHフレームワーク変異”を参照のこと)には、“Symplex-補正された”変異ならびに最初の6アミノ酸位置以外の変異が含まれることが明らかである。
【0195】
上記のように、各VHまたはVL配列中の最初の6アミノ酸における縮重プライマー由来の変異の改変は、元の抗体と比較して結合特性を悪化させるとは予想されない。従って、本発明の抗PD-1抗体は、以下の表に示される“Symplex-補正された”変異を含むことが好ましい。
【0196】
各配列の最初の6アミノ酸位置以外の“生殖細胞系列バリアント”変異に関しては、これらの変異のいずれか1つ以上を選択することができる。個々の変異が抗体の抗原結合特性に悪影響を及ぼすかどうかの決定は、指示された変異を有する生殖細胞系列バリアントVHおよびVL配列を調製し、親の変異を有する抗体の抗原結合特性を対応する元の配列またはSymplex補正された配列と比較することにより、実施することができる。結合親和性の低下または他の変化した結合特性が観察される場合、変異体は、例えば、各抗体の重鎖および軽鎖のSymplex補正された変異体および生殖細胞系列バリアント、すなわち、この場合、各抗体について4つの組合せを用いて、2x2 VH/VLマトリックスを用いて試験され得る。これは、生殖細胞系列化されたVHおよびVL配列の一方または他方または両方が、観察された任意の変化した結合特性に寄与しているかどうかの決定を可能にする。あるいはまたはさらに、単一の生殖細胞系列バリアントの変異が回避されている一連の対応する抗体を試験して、列挙されたすべての変異を有する生殖細胞系列バリアントの結合に影響を及ぼしている特定の変異を決定することができる。
【0197】
表5は、元の配列ならびに対応するSymplex補正された変異体および生殖細胞系列バリアントについてのVHおよびVL配列番号を示す。表5の数字から明らかなように、ある場合には、元の配列とSymplex補正された配列との間、またはSymplex補正された配列と生殖細胞系列化配列との間に差がない。生殖細胞系フレームワーク残基への変異は、IMGT定義に基づいている。添付の配列表において、得られたアミノ酸置換に下線を引き、太字で示している。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
実施例4.PD-L1遮断活性についての抗PD-1抗体のフローサイトメトリー分析
本実施例は、フローサイトメトリーによるPD-L1遮断活性についての抗PD-1抗体の試験を記載する。
【0202】
方法
PD-L1リガンド遮断活性を、細胞アッセイにおいて、ヒトPD-1をCHO-S細胞にて組換え的に発現させ、R-PE(R-フィコエリトリン)標識したヒトPD-L1-Fcキメラタンパク質の結合をフローサイトメトリーによって分析することにより、試験した。市販の組換えPD-L1-Fcキメラタンパク質(R&D Systems、USA)を、Lightning-Link(登録商標)R-フィコエリスリン結合キット(Innova Biosciences、UK)を用いてR-PEに結合させた。CHO-S細胞を一過性にトランスフェクトしてヒトPD-1を発現させた。その後、細胞を氷上で20μg/mlの抗PD-1抗体(50μl)と共にインキュベートし、次いで約3.4μg/mlのR-PE-標識したPD-L1-Fc(50μl)(終濃度16.4nM)を添加して、さらに20分間インキュベートした(抗PD-1抗体の終濃度:10μg/ml)。結合抗体を、APC(アロフィコシアニン)結合抗ヒトIgG軽鎖抗体を用いて検出した。PD-L1および抗PD-1抗体の結合を、R-PEおよびAPC蛍光それぞれを検出するフローサイトメトリーによって定量した。
【0203】
結果
競合実験の結果を
図2(a)-2(h)に示す(図中、X軸(水平方向)はPD-L1結合を示し、Y軸(垂直方向)はヒトIgG結合を示す)。試験した全ての抗PD-1抗体は、10μg/mlの最終抗体濃度でPD-1とPD-L1との相互作用を阻害することができた。非特異的抗体の存在下でのPD-L1のPD-1発現細胞への結合を、PD-L1遮断の陰性対照として用いた。さらに、さらに、非ブロッキング抗体の存在下でのPD-L1の結合についての代表的なプロットが示されている。
【0204】
実施例5.ヒトおよびカニクイザルPD-1 ECD抗原に対するPD-1抗体親和性の測定
この実施例は、KDが低nMから中pMの範囲で、12個の機能的抗PD-1抗体がヒトPD-1に対してどの程度強い結合親和性を示すかを実証する。同じ抗体はまた、中または低nMの範囲のKDでカニクイザルPD-1と交差反応する。抗体18201および18400もまた、中または低nMの範囲のKDでマウスPD-1と交差反応する。
【0205】
方法
動的結合分析を、Ibis MX96 SPR装置(IBIS Technologies、オランダ)と組み合わせたContinuous Flow Microspotter(CFM、Wasatch Microfluidics、米国)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって行った。表面プラズモン共鳴イメージング分析を、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標) SPRセンサー(Ssens BV、オランダ)で行った。IgG1 LALAフォーマット(すなわち、変異L234A/L235Aを有する)で発現された抗PD-1抗体を、PBS-T(0.05% Tween 20を含む1xPBS、pH 7.4)中2.5nMに希釈した。抗体を、Continuous Flow Microspotter(CFM、Wasatch Microfluidics、ソルトレイクシティ、米国)を用いて15分間、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)上にスポットした。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサー内に配置し、抗体を、Fix It Kit(Ssens BV、オランダ)を用いてセンサー表面に化学的に固定した。速度論的滴定シリーズ(Karlsson et. al., Anal. Biochem. 349(1):136-47 (2006))を適用することにより速度論的分析を行い、ここで、単量体PD-1抗原を、2nMから100nMまで漸増濃度で、各抗原注射後に表面再生工程を行うことなく、注射した。結合を、ヒトPD-1 ECD(Acro Biosystems カタログ番号PD1-H52219)、マウスPD-1 ECD(Sino Biological. カタログ番号50124-M08H)およびカニクイザルPD-1 ECD(Acro Biosystems カタログ番号PD1-C5223)について3つの別個の実験で試験した。抗原結合を15分間行い、抗原解離を60分間行った。速度論的分析を25℃で行った。完了後、記録された結合応答を、結合速度(on-rate)(konまたはka)、解離速度(off-rate)(koffまたはkd)および親和性(KD)定数の計算のために、Scrubber 2ソフトウェアを用いて簡単なLangmuir 1:1結合モデルに適合させた。
【0206】
結果
表面プラズモン共鳴(SPR)の結果を下の表6に示す。一般的に、抗体は高親和性であり、試験した全ての抗体は、カニクイザルPD-1と交差反応した。抗体18201および18400もまた、マウスPD-1と交差反応し、これら2つの抗体によって認識されるエピトープは、マウスPD-1と交差反応しなかった対照抗体、ペムブロリズマブおよびニボルマブを含む他のPD-1抗体と比較してユニークであることを示した。これらの特性は、ヒト対象における試験の前に抗体を非ヒト霊長動物またはマウスモデルにおいて直接試験することを可能にするので有利である。
【0207】
【0208】
実施例6.抗PD-1モノクローナル抗体のインビトロ機能評価
本実施例は、12個の抗PD-1抗体が2つの異なる機能アッセイ:すなわち、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)全血アッセイおよび一方向混合リンパ球反応(MLR)においてどのように作用するかを実証する。12個の抗PD-1 mAbの、SEB処理した全血アッセイにおけるIL-2産生または一方向MLRアッセイにおけるインターフェロン-γ(IFN-γ)産生を刺激する能力を、以下に記載するように評価した。
【0209】
方法
SEBは、MHCクラスII分子およびT細胞受容体(TCR)の特異的Vβ領域に結合し、T細胞の非特異的刺激を駆動する、スーパー抗原である。これは、結果として、IL-2およびIFN-γを含む、ポリクローナルT細胞活性化/増殖およびサイトカイン放出をもたらす。SEBを、全血に1μg/ml添加し、2日間培養した後、上清を採取し、IL-2レベルを通常のELISAによって決定した。
【0210】
一方向MLRアッセイにおいて、2人の異なる健康なドナーから単離された樹状細胞(DC)およびCD4陽性(CD4+)T細胞を共培養して、同種抗原特異的反応を誘導し、その結果サイトカイン産生およびT細胞活性化/増殖を生じた。樹状細胞を、20ng/mlの顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および20ng/mlのインターロイキン-4(IL-4)と共に6日間培養することによってCD14+ 単球から分化させ、そして健康なドナー材料からの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたCD4+ T細胞と1:10比で混合した。5日間培養後、上清を採取し、Meso Scale 電気化学発光(MSD)サイトカインアッセイを用いてIFN-γレベルを決定した。
【0211】
用量反応曲線を、50μg/mlの開始濃度で抗体を2倍希釈することによって作製した。
【0212】
結果
SEB全血アッセイおよび一方向MLRアッセイにおける12個の抗体の用量反応曲線を、
図3(a)-3(f)および
図4(a)-4(f)にそれぞれ示す。グラフ上の各点は3回の繰り返しの平均を表し、エラーバーはSEMを表す。全ての抗体が、SEB全血アッセイにおけるIL-2産生およびMLRアッセイにおけるIFN-γ産生の用量依存的増加を誘導することが見出された。
【0213】
実施例7.抗PD-1モノクローナル抗体のエピトープビニング
本実施例は、ペア競合パターンに基づいて、抗PD-1抗体がエピトープビンにどのように分類されたかを示す。異なるエピトープビンに属する抗体は、PD-1 ECD上の異なるエピトープを認識する。
【0214】
方法
ペア抗体競合の試験を、IBIS MX96 SPR装置(IBIS Technologies、オランダ)と組み合わせたContinuous Flow Microspotter(CFM)(Wasatch Microfluidics、米国)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)分析によって行った。表面プラズモン共鳴イメージング分析を、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)SPRセンサー(Ssens BV、オランダ)で行った。合計18の抗PD-1抗体(ヒト、IgG1)を、0.05% Tween 20(PBS-T)、pH 7.0を含むPBS緩衝液中で10μg/mLに希釈した。Continuous Flow Microspotterを用いて15分間スポッティングすることにより、抗体を抗Fcセンサー表面上に捕捉した。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサーに配置し、残りの抗Fc部位を30μg/mLの非特異的ヒトIgG1の注入でブロックした。捕捉された抗体を、FixItキット(Ssens BV、オランダ)を用いて表面に結合した。センサー調製後、古典的サンドイッチアッセイを用いて抗体競合分析を行った。一価のPD-1 ECD抗原(Sino Biological、中国)をHBS-EP泳動緩衝液で希釈し、50nM濃度で注入し、抗PD-1抗体のコンジュゲートアレイによって捕捉した。次いで、HBS-EP泳動緩衝液中で100nMに希釈した18個のPD-1抗体の各々の個々の注入により、抗体競合パターンを確立した。各競合サイクルの後、センサー表面を、10mM グリシン HCl緩衝液、pH2.0で再生した。
【0215】
結果
18個の抗PD-1抗体の競合パターンを
図5に示す。抗体12866および12807は、細胞ベースのアッセイにおいて機能的活性を有することは見出されなかったが(データ示さず)、それらは、他のエピトープビンの特徴付けに有用な異なるエピトープを認識するため同図に含ませた。試験した抗PD-1抗体を、2つの主要な非重複エピトープビンに割り当てることができた。エピトープビン1に属する機能的抗体は全て、相互にブロックし合い、抗体12866および12807の遮断に基づいてサブビンにさらに分けることができた。例えば、mAb12866および12807の両方をブロックする抗体は、エピトープビン1Cに分類された。エピトープビン1Cは、抗体18366、18483、18113、18247、18040および18250を含む。エピトープビン1Dの抗体は、ニボルマブ類縁体(“Nivo”)および18049を含み、mAb12866をブロックするが12807はブロックしないことを特徴とした。エピトープビン1Eに属する抗体は、mAb 12807をフロックすることのみで特徴付けられた。エピトープビン1Eは、ペムブロリズマブ類縁体(“Pembro”)および抗体18098、18201、18400、18413および18325を含む。
【0216】
抗体12760および13112は、PD-L1およびPD-L2リガンドをブロックせず、それらは互いに交差ブロックするがエピトープビン1からの抗体のいずれの結合もブロックしなかったため、別々のエピトープビン2に割り当てられた。抗体12760および13112は、PD-L1およびPD-L2リガンド結合部位と重ならない、PD-1上の部位に結合する可能性が高い。
【0217】
配列表
配列番号1
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMXWIRQAPGKGLEWVSYISSTGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMXSLRAEDTAVYYCARATNWGSDYWGQGTLVTVSS
位置35のXは、NまたはSである
位置84のXは、DまたはNである
配列番号2
XIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLXWYQQKPGQPPKLLIXWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKVEIK
位置1のXは、EまたはDである
位置40のXは、FまたはAである
位置55のXは、FまたはYである
配列番号3
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSDKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAGGGNYYGDFWGQGTLVTVSS
配列番号4
XIXMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYVASXLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPWTFGQGTKVEIK
位置1のXは、EまたはDである
位置3のXは、VまたはQである
位置53のXは、NまたはSである
配列番号5
XVQLXESGGGLVXPGGSLRLSCAASGFTFSSFAMXWVRQAPGKGLXWVSXITGGGTTSYYADSVKGRFTISRDNSKXTLXLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTXVTVSS
位置1のXは、QまたはEである
位置5のXは、QまたはVである
位置13のXは、RまたはQである
位置35のXは、NまたはSである
位置46のXは、VまたはEである
位置50のXは、TまたはAである
位置77のXは、SまたはNである
位置80のXは、FまたはYである
位置115のXは、TまたはMである
配列番号6
DIQXTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPWTFGQGTKVEIK
位置4のXは、LまたはMである
配列番号7
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSXKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWAFDYWGQGTLVTVSS
位置64のXは、AまたはVである
配列番号8
DIXXTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSANNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWTSTRESGVPDRFXGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
位置3のXは、QまたはVである
位置4のXは、LまたはMである
位置69のXは、RまたはSである
配列番号9
QVQLXESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSNNWWSWVRQPPGKGLEWIGEIYHDGTTXYNPSLKSRVTISVDKSXNQFSLKXSSVTAADTAVYYCARGDWGSGAFDIWGQGTMVTVSS
位置5のXは、VまたはQである
位置59のXは、TまたはNである
位置76のXは、RまたはKである
位置83のXは、MまたはLである
【0218】
配列番号10
XIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPRTFGQGTKVEIK
位置1のXは、DまたはAである
配列番号11
QVQLVESGGXLVKPGXSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWAFDYWGQGTLVTVSS
位置10のXは、DまたはGである
位置16のXは、RまたはGである
配列番号12
XIVXTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIXWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYXCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
位置1のXは、EまたはDである
位置4のXは、LまたはMである
位置55のXは、FまたはYである
位置93のXは、FまたはYである
配列番号13
QVQLXESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFRDYYMSWIRQAPGKGLEWVSXISSSGSIIXYXDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWALDYWGQGTLVTVSS
位置5のXは、QまたはVである
位置50のXは、HまたはYである
位置59のXは、DまたはYである
位置61のXは、VまたはAである
配列番号14
DIXXTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIXWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
位置3のXは、QまたはVである
位置4のXは、LまたはMである
位置55のXは、SまたはYである
配列番号15
XVQLXXSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSHVMXWVRQAPGKGLEWVXXISGSGVDTYYADSVKGRFTISRXNSKNXLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTMVTVSS
位置1のXは、QまたはEである
位置5のXは、QまたはVである
位置6のXは、QまたはEである
位置35のXは、NまたはSである
位置49のXは、AまたはSである
位置50のXは、TまたはAである
位置73のXは、GまたはDである
位置78のXは、MまたはTである
配列番号16
XIXXTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPWTFGQGTKVEIK
位置1のXは、EまたはDである
位置3のXは、VまたはQである
位置4のXは、LまたはMである
配列番号17
XVQLVXSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWGFDNWGQGTLVTVSS
位置1のXは、QまたはEである
位置6のXは、QまたはEである
配列番号18
XIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLXWYQQKPGQPPKLLIXWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
位置1のXは、EまたはDである
位置40のXは、LまたはAである
位置55のXは、FまたはYである
配列番号19
QXQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSSNWWSWVRQPPXKGLEWXGEIFHDGTTXYNPSLKSRVTXSVDKSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGNWGSGALDIWGXGTMVTVSS
位置2のXは、LまたはVである
位置43のXは、KまたはGである
位置49のXは、VまたはIである
位置59のXは、SまたはNである
位置70のXは、MまたはIである
位置111のXは、PまたはQである
【0219】
配列番号20
XIXMTQSPSXLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPRTFGQGTKVEIK
位置1のXは、EまたはAである
位置3のXは、VまたはQである
位置10のXは、PまたはSである
配列番号21
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFVMSWVRQAPGKGLEWXSXISGGGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDWDLYYFDYWGQGTLVTVSS
位置48のXは、LまたはVである
位置50のXは、TまたはAである
配列番号22
DIQXTQSPSSVXASVGDRVTITCRASQGISNWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPLTFGGGTKVEIK
位置4のXは、LまたはMである
位置12のXは、PまたはSである
配列番号23
XVQLXXSGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYWMXWVRQAPGKGLEWVANIKEDGNEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWGSDYWGQGTLVTVSS
位置1のXは、QまたはEである
位置5のXは、QまたはVである
位置6のXは、QまたはEである
位置35のXは、NまたはSである
配列番号24
DIXMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLXWYQQKPGQPPKLLIXWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
位置3のXは、QまたはVである
位置40のXは、LまたはAである
位置55のXは、FまたはYである
定常抗体配列
配列番号25 (IgHC DNA配列)
GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAAGCCGCCGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCCCCGGGTAAA
配列番号26 (IgHC タンパク質配列)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号27 (IgKC DNA配列)
CGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT
配列番号28 (IgKC タンパク質配列)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0220】
配列番号29 (18040/18113/18247 H-CDR1)
GFTFSDYY
配列番号30 (18040 H-CDR2)
ISSTGSTI
配列番号31 (18040 H-CDR3)
CARATNWGSDY
配列番号32 (18040/18366 L-CDR1)
QSVLYSSNNKNY
配列番号33 (18040/18247/18250/18366/18483 L-CDR2)
WAS
配列番号34 (18040/18250/18366/18483 L-CDR3)
CQQYYSTPYT
配列番号35 (18049 H-CDR1)
GFTFSNYG
配列番号36 (18049 H-CDR2)
IWYDGSDK
配列番号37 (18049 H-CDR3)
CAGGGNYYGDF
配列番号38 (18049/18201/18400 L-CDR1)
QGIRND
配列番号39 (18049 L-CDR2)
VAS
配列番号40 (18049 L-CDR3)
CLQYNSYPWT
配列番号41 (18098 H-CDR1)
GFTFSSFA
配列番号42 (18098 H-CDR2)
ITGGGTTS
配列番号43 (18098/18325 H-CDR3)
CAKWGSWSAGAFDI
【0221】
配列番号44 (18098/18325 L-CDR1)
QGISSW
配列番号45 (18098/18201/18325/18400/18413 L-CDR2)
AAS
配列番号46 (18098/18325 L-CDR3)
CQQANSFPWT
配列番号47 (18113 H-CDR2)
ISSSGSTI
配列番号48 (18113/18247 H-CDR3)
CARDTNWAFDY
配列番号49 (18113 L-CDR1)
QSVFYSANNKNY
配列番号50 (18113 L-CDR2)
WTS
配列番号51 (18113/18247 L-CDR3)
CQQFYSTPRT
配列番号52 (18201 H-CDR1)
GGSISSNNW
配列番号53 (18201 H-CDR2)
IYHDGTT
配列番号54 (18201 H-CDR3)
CARGDWGSGAFDI
配列番号55 (18201/18400 L-CDR3)
CLQDYNYPRT
配列番号56 (18247 H-CDR2)
ISSSSSTI
配列番号57 (18247/18250/18483 L-CDR1)
QSVFYSSNNKNY
配列番号58 (18250 H-CDR1)
GFTFRDYY
配列番号59 (18250 H-CDR2)
ISSSGSII
配列番号60 (18250 H-CDR3)
CARDTNWALDY
配列番号61 (18325 H-CDR1)
GFTFSSHV
配列番号62 (18325 H-CDR2)
ISGSGVDT
配列番号63 (18366 H-CDR1)
GFTFSSYW
【0222】
配列番号64 (18366 H-CDR2)
IKQDGSEK
配列番号65 (18366 H-CDR3)
CARDTNWGFDN
配列番号66 (18400 H-CDR1)
GGSISSSNW
配列番号67 (18400 H-CDR2)
IFHDGTT
配列番号68 (18400 H-CDR3)
CARGNWGSGALDI
配列番号69 (18413 H-CDR1)
GFTFSSFV
配列番号70 (18413 H-CDR2)
ISGGGGST
配列番号71 (18413 H-CDR3)
CAKDWDLYYFDY
配列番号72 (18413 L-CDR1)
QGISNW
配列番号73 (18413 L-CDR3)
CQQANSFPLT
配列番号74 (18483 H-CDR1)
GFTFSDYW
配列番号75 (18483 H-CDR2)
IKEDGNEK
配列番号76 (18483 H-CDR3)
CARDTNWGSDY
【0223】
配列番号77
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFAMSWVRQAPGKGLVWVSTITGGGTTSYY
ADSVKGRFTISRDNSKSTLFLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTTVTVSS
配列番号78
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSNNWWSWVRQPPGKGLEWIGEIYHDGTTTY
NPSLKSRVTISVDKSRNQFSLKMSSVTAADTAVYYCARGDWGSGAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号79
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFRDYYMSWIRQAPGKGLEWVSHISSSGSIIDY
VDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWALDYWGQGTLVTVSS
配列番号80
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSHVMNWVRQAPGKGLEWVATISGSGVDTYY
ADSVKGRFTISRGNSKNMLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号81
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYY
VDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWGFDNWGQGTLVTVSS
配列番号82
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSSNWWSWVRQPPKKGLEWVGEIFHDGTTSY
NPSLKSRVTMSVDKSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGNWGSGALDIWGPGTMVTVSS
配列番号83
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYWMNWVRQAPGKGLEWVANIKEDGNEKYY
VDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWGSDYWGQGTLVTVSS
配列番号84
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLFWYQQKPGQPPKLLIFWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKVEIK
配列番号85
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYVASNLQSGVPS
RFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPWTFGQGTKVEIK
配列番号86
DIQLTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPWTFGQGTKVEIK
配列番号87
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSANNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWTSTR
ESGVPDRFRGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
配列番号88
AIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPRTFGQGTKVEIK
配列番号89
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIFWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYFCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
【0224】
配列番号90
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLISWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号91
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPWTFGQGTKVEIK
配列番号92
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLLWYQQKPGQPPKLLIFWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号93
AIQMTQSPSPLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPRTFGQGTKVEIK
配列番号94
DIQLTQSPSSVPASVGDRVTITCRASQGISNWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPLTFGGGTKVEIK
配列番号95
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLLWYQQKPGQPPKLLIFWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号96
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSTGSTIYY
ADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARATNWGSDYWGQGTLVTVSS
配列番号97
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAITGGGTTSYY
ADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号98
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYY
ADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWAFDYWGQGTLVTVSS
配列番号99
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSNNWWSWVRQPPGKGLEWIGEIYHDGTTNY
NPSLKSRVTISVDKSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGDWGSGAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号100
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYY
ADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWAFDYWGQGTLVTVSS
配列番号101
QVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFRDYYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSIIYY
ADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWALDYWGQGTLVTVSS
配列番号102
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSHVMNWVRQAPGKGLEWVSAISGSGVDTYY
ADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGSWSAGAFDIWGQGTMVTVSS
【0225】
配列番号103
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGGSISSSNWWSWVRQPPGKGLEWIGEIFHDGTTNY
NPSLKSRVTISVDKSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGNWGSGALDIWGQGTMVTVSS
配列番号104
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFVMSWVRQAPGKGLEWVSAISGGGGSTYY
ADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDWDLYYFDYWGQGTLVTVSS
配列番号105
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKEDGNEKYY
VDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTNWGSDYWGQGTLVTVSS
配列番号106
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKVEIK
配列番号107
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYVASSLQSGVPS
RFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPWTFGQGTKVEIK
配列番号108
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSANNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWTSTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
配列番号109
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSTPRTFGQGTKVEIK
配列番号110
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号111
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号112
AIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPRTFGQGTKVEIK
配列番号113
DIQLTQSPSSVPASVGDRVTITCRASQGISNWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPLTFGGGTKVEIK
配列番号114
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVFYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTR
ESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPYTFGQGTKLEIK
配列番号115
GGGGSGGGGSGGGGS
【配列表】