(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ユニバーサルマウント式端部ブロック
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20221118BHJP
H02K 11/00 20160101ALI20221118BHJP
【FI】
C23C14/34 C
H02K11/00
(21)【出願番号】P 2019528494
(86)(22)【出願日】2017-11-23
(86)【国際出願番号】 IB2017057351
(87)【国際公開番号】W WO2018100473
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】505360498
【氏名又は名称】ソレラス・アドヴァンスト・コーティングス・ビーヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】デ・ボスヘル,ウィルマート
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・デ・プッテ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】デウィルデ,ニーク
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510039(JP,A)
【文献】特表2009-513818(JP,A)
【文献】特表2008-517150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01J 37/34
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状消耗性ターゲット(150)を磁気バーによって蒸着装置の外側と接続する、前記蒸着装置で使用するための端部ブロック(100)であって、
前記端部ブロックが、前記円柱状消耗性ターゲットと前記磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段であって、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するため、または、前記磁気バーを駆動するために構成された、モータおよび駆動シャフトを含む、駆動手段を含み、前記端部ブロック(100)を収容する端部ブロックハウジング(160)が、実質的に前記駆動シャフトと軸対称であり、
前記円柱状消耗性ターゲットが取り付けられているとき、前記駆動シャフトは、前記円柱状消耗性ターゲットと同軸であり、
前記端部ブロックが、前記円柱状消耗性ターゲット上の動力伝達装置手段を含む、端部ブロック(100)。
【請求項2】
前記端部ブロックハウジングに外接し、前記駆
動シャフトに垂直な円の直径が、前記円柱状消耗性ターゲット(150)を上に装着することができる継手の直径の2.7倍以下である、請求項1に記載の端部ブロック。
【請求項3】
前記円柱状消耗性ターゲットと前記磁気バーとの間の相対運動を提供する前記駆動手段が、前記モータ(120)、および前記円柱状消耗性ターゲット(150)を駆動する駆動シャフト(126)を含む、請求項1または2に記載の端部ブロック。
【請求項4】
前記駆動シャフト(126)が、少なくとも部分的に導電性材料で作製されている、請求項3に記載の端部ブロック(100)。
【請求項5】
次の部品、(i)前記円柱状消耗性ターゲット(150)上で電力を取得するための回転可能な電気接点、(ii)前記円柱状消耗性ターゲット(150)を、前記円柱状消耗性ターゲットの軸を中心として回転する間、機械的に支持する1つ以上の軸受、(iii)冷却剤および/または真空のための1つ以上の回転可能なシールデバイス、のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項3または4に記載の端部ブロック。
【請求項6】
前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記モータ(120)が、前記端部ブロック(100)の静止部分(110)上に装着されたコイル(122)を含み、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)上に装着された磁石システム(124)を含み、前記コイルおよび前記磁石システム(124)が、前記コイルを通じて電流を送ることによって、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)上で回転モーメントを生成するように装着されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の端部ブロック(100)。
【請求項7】
前記静止部分が、少なくとも1つのシリンダ(112、116)を有するディスク(114)を含み、少なくとも1つの前記シリンダ(112、116)が、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)と同軸であり、前記ディスク(114)が、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)に垂直であり、前記少なくとも1つのシリンダ(112、116)が、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)の周囲またはその中に位置する、請求項6に記載の端部ブロック(100)。
【請求項8】
前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記モータ(120)の前記コイル(122)が、前記シリンダ(112、116)上に装着され、前記動力伝達装置(140)が、前記シリンダ(112、116)と前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)との間に装着されている、請求項7に記載の端部ブロック。
【請求項9】
前記円柱状消耗性ターゲットと前記磁気バーとの間の相対運動を提供する前記駆動手段が、前記モータ(220)および前記磁気バーを前記円柱状消耗性ターゲット内で駆動するための前記駆動シャフト(226)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の端部ブロック。
【請求項10】
2つの駆動手段を含み、前記駆動手段のうちの一方は、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するように構成された前記モータおよび前記駆動シャフトを含み、前記駆動手段のもう一方は、前記磁気バーを駆動するように構成された前記モータおよび前記駆動シャフトを含む、請求項1に記載の端部ブロック(100)。
【請求項11】
前記磁気バーを駆動するための前記モータが、前記端部ブロック(100)の静止部(110)上に装着されたコイル(222)を含み、前記磁気バーを駆動するための前記駆動シャフト(226)上に装着された磁石システム(224)を含み、前記コイル(222)および前記磁石システム(224)が、前記コイルを通じて電流を送ることによって前記磁気バーを駆動するための前記駆動シャフト(226)上で回転モーメントを生成することができるように装着されている、請求項9または10に記載の端部ブロック(100)。
【請求項12】
前記静止部分は、少なくとも1つのシリンダ(112、116)を有するディスク(114)を含み、少なくとも1つの前記シリンダ(112、116)は、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)と同軸であり、前記ディスク(114)は、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)に垂直であり、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフトの周囲または内部に少なくとも1つのシリンダ(112,116)が配置されており、
前記少なくとも1つの元のシリンダ(112、116)が存在するのと反対側で前記ディスク(114)上に存在する少なくとも1つの追加のシリンダ(212、216)を含み、前記追加のシリンダ(212、216)が、前記円柱状消耗性ターゲットを駆動するための前記駆動シャフト(126)と同軸であり、前記磁気バーを駆動するための前記駆動シャフト(226)の一部分が、前記追加のシリンダ(212、216)の周囲またはその中に位置する、請求項11に記載の端部ブロック(100)。
【請求項13】
前記直径は、継手の直径の2.1倍以下である、
請求項2に記載の端部ブロック。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの端部ブロック(100)を含む、蒸着装置(300)。
【請求項15】
前記蒸着装置が、少なくとも1つの端部ブロック(100)を含み、前記蒸着装置(300)が、少なくとも1つの前記端部ブロック(100)上に円柱状消耗性ターゲット(150)を配設することができ、前記円柱状消耗性ターゲット(150)の隣に基材(310)を配置することができるように適応化されている、請求項14に記載の蒸着装置(300)。
【請求項16】
前記蒸着装置が、複数の端部ブロックを含み、これらの端部ブロックが、平行する消耗性ターゲット駆動シャフトと共に二次元構成で配置されている、請求項14または15に記載の蒸着装置(400)。
【請求項17】
基材が、前記円柱状消耗性ターゲット(150)の位置に対して複数の方向にあることができる、請求項14に記載の蒸着装置(400)。
【請求項18】
基材が平坦ではない用途で使用することができる、請求項14に記載の蒸着装置(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の適用分野
本発明は、一般に、動力を消耗性ターゲットに伝送する、蒸着装置で使用するための端部ブロックに関する。より具体的には、本発明は、円柱状消耗性ターゲットを上に装着することができ、エンジンハウジング上の突出部を含まず、ユニバーサルマウント可能な端部ブロックに関する。本発明は、対応する蒸着装置も含む。
【背景技術】
【0002】
端部ブロックは、蒸着装置内の消耗性ターゲットを蒸着装置の外側と接続する。このような端部ブロックは、典型的に、蒸着装置上に部品として装着可能である。端部ブロックの一部では、圧力は、蒸着装置内よりも高くてもよい。例えば、この圧力は、大気圧に近くてもよい。消耗性ターゲットと共に取り外すことができる部品、または着脱可能な磁石構成は、典型的に、端部ブロックに永続的に属するものとはみなされない。
【0003】
端部ブロックの主な機能は、消耗性ターゲットを支持し、回転軸を中心として消耗性ターゲットを潜在的に回転させることである。PVD蒸着は低いガス圧のガスで行われるため、端部ブロックは、消耗性ターゲットのあらゆる起こり得る回転中も真空気密でなければならない。PVD蒸着は、消耗性ターゲットからの材料が、なかんずく、薄層が上に塗布されるべき基材上に蒸着される物理気相蒸着技術を指す。このPVD蒸着は、例えばスパッタリングであってもよく、この場合、消耗性ターゲットは、「ターゲット」または「スパッタリングターゲット」と呼ばれることが多い。PVD蒸着はまた、なかんずく消耗性ターゲットに由来する材料によって近くに位置決めされた表面に薄層を塗布するように、消耗性ターゲットの蒸着または蒸発を含む。
【0004】
消耗性ターゲットのPVD蒸着は消耗性ターゲット表面上で多大な熱を発生させ得るので、消耗性ターゲットは、冷却もしなければならない。これは、典型的に、水または別の好適な冷却剤によってなされる。冷却剤は、端部ブロックを介して供給および排出しなければならない。
【0005】
消耗性ターゲットには、消耗性ターゲットを特定の電位に持ってくるために、電流も供給されるべきである。より具体的には、端部ブロックでは、端部ブロックの静止部からの電力が、端部ブロックの回転部に伝送される。
【0006】
これら全ての機能を組み込むために、各端部ブロックは、次の手段のうち1つ以上を有さなければならない:(i)消耗性ターゲットを回転させる駆動手段、(ii)消耗性ターゲット上で電流を取得するための回転可能な電気接点手段、(iii)消耗性ターゲットを、それがその軸を中心として回転する間、機械的に支持する1つ以上の軸受(または平軸受)、(iv)クーラントのための1つ以上の回転可能なシールデバイス、(v)1つ以上の回転可能な真空シール手段、および(vi)磁石または一連の磁石を位置決めする手段。
【0007】
これらの機能を組み合わせるために、いくつかの端部ブロック配置が、先行技術にすでに存在する。
【0008】
米国特許第5096562号および米国特許出願公開第2003/0136672号に開示されるような「二重の直角端部ブロック」は、軸受、回転、付勢、冷却、および隔離の手段(空気、クーラント、および電気)が、スパッタリングターゲットの両端に位置する2つの端部ブロックに分配されている端部ブロックである。「直角」とは、端部ブロックが、スパッタリングターゲットの回転軸に平行な壁部に装着されていることを意味する。
【0009】
米国特許第5200049号に開示されるような「単一の、直流形端部ブロック」は、軸受、回転、付勢、冷却、および隔離の手段(空気、クーラント、および電気)が、全て1つの端部ブロック内で組み合わされている端部ブロックである。したがって、スパッタリングターゲットは、端部ブロック上に装着される。「直流形」とは、スパッタリングターゲットの回転軸が、端部ブロックが上に装着される壁部に垂直であることを意味する。
【0010】
端部ブロックが設けられたスパッタリングターゲットの端部に対向して位置するスパッタリングターゲットの端部が機械的支持要素によって保持される、ハイブリッドな端部ブロック配置も、米国特許第5620577号に記載されている。
【0011】
異なる機能が端部ブロック内に存在するので、これは、端部ブロックのサイズに対する影響を有する。既知の端部ブロックは、一般に、いくつかの端部ブロックを互いに近接して装着することが問題をもたらさないように、モータの一部が中に収納される突出部を有する。
【0012】
米国特許出願公開第20110147209号は、ただ1つの機能、すなわち駆動シャフトに対する回転モーメントの適用が存在するハウジングに関する。モータは、米国特許出願公開第20110147209号のハウジング内に装着することができる。駆動シャフトは、一方の側部でハウジングの外側からアクセス可能であり、この側部で回転ターゲットに接続されている。ハウジングの内側の他方の側部では、駆動シャフトに回転モーメントを伝達するように、駆動シャフトが電気モータに接続されている。
【0013】
したがって、とりわけ端部ブロックがユニバーサルマウント可能な方法での端部ブロック内の異なる機能の統合に関して、端部ブロックの設計には改善の余地が存在する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の実施形態の目的は、様々な機能に対するサポートを提供する良好な端部ブロックを提供すること、およびそのような端部ブロックを用いた蒸着装置を提供することである。
【0015】
上述の狙いは、本発明によるデバイスおよび配置によって達成される。
【0016】
第1の態様では、本発明は、蒸着装置で使用するための端部ブロックを提供する。端部ブロックは、円柱状消耗性ターゲットを磁気バーによって蒸着装置の外側と接続する機能を有する。端部ブロックは、少なくとも次の機能を含む:(i)消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段であって、駆動されるシャフトを含む、駆動手段、および(ii)電流を消耗性ターゲットに伝達する伝達手段。端部ブロックは、実質的に軸対称であり、駆動されるシャフトと同軸である端部ブロックハウジング内に含まれる。端部ブロックハウジングは、端部ブロックをその機能と共に含むまたは取り囲む構成要素である。
【0017】
特定の実施形態では、端部ブロックハウジングは、一枚岩的な部品であり、例えば鋼またはアルミニウムから作製される。これは、なかんずく、材料の中実ブロックを穿孔または圧延することによって生産することができる。
【0018】
ある実施形態では、端部ブロックハウジングは、真空チャンバの壁部(またはドア、フランジ、もしくは蓋)に接続されており、真空チャンバ内の開口部の真空シールも提供する。
【0019】
端部ブロックハウジングに外接し、駆動されるシャフトに垂直な円の直径は、消耗性ターゲットを上に装着することができる継手の直径の2.7倍以下、好ましくは2.1倍以下、例えば1.6倍以下である。端部ブロックハウジングに外接し、駆動されるシャフトに垂直な円の直径は、消耗性ターゲットを上に装着することができる継手の直径の例えば1.2~2.7倍、好ましくは1.6~2.1倍である。
【0020】
端部ブロックハウジングの軸対称性のため、端部ブロックはユニバーサルマウント可能である。実際、エンジンが端部ブロックの外側に配設されるシステムと比較して、本発明の実施形態による端部ブロックは、エンジン部品が中に収納される隆起を有さず、異なる被膜装置構成において装着することをより容易にする。
【0021】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段は、消耗性ターゲットモータおよび消耗性ターゲットを駆動する消耗性ターゲット駆動シャフトを含んでもよい。その場合、消耗性ターゲット駆動シャフトは、駆動されるシャフトである。
【0022】
本発明の実施形態では、消耗性ターゲット駆動シャフトは、消耗性ターゲットが上に装着されるものと同じである。他の実施形態では、消耗性ターゲット駆動シャフトおよび消耗ターゲットが上に装着されるシャフトは、互いに装着された2つの異なるシャフトであってもよい。消耗性ターゲット駆動シャフトは消耗性ターゲットと同軸であるので、端部ブロックは、隆起を有さず、異なる被膜装置構成においてより容易にユニバーサルマウント可能となる。さらに、本発明の実施形態の利点は、消耗性ターゲット駆動シャフトが、回転モーメントを消耗性ターゲットに伝送する働きをするだけではなく、電力を消耗性ターゲットに伝送するために使用することができることである。例えば、動力は、消耗性ターゲット駆動シャフトから消耗性ターゲットに伝送することができる。例えば、この電力は、プラズマを生成するために印可することができる。本発明の実施形態の利点は、消耗性ターゲット駆動シャフトが消耗性ターゲット回転軸と整列することである(消耗性ターゲットが装着されているとき)。これは、実質的に軸対称な、またはそれどころか軸対称な端部ブロックを作製することを可能にする。これは、エンジンが消耗性ターゲットの回転軸と直列ではない端部ブロックとは対照的である。
【0023】
本発明の実施形態の利点は、端部ブロックが、エネルギーおよび例えばクーラントなどの冷却剤の供給のための可撓性接続部のみと接続されることである。消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段、例えば消耗性ターゲットモータまたは以下に示すような磁気バーモータ、および動力伝達装置が端部ブロック内に統合されているので、大気側と真空中にあり得る端部ブロックとの間に追加の機械的駆動接続部が必要とされない。結果として、端部ブロックは、真空蒸着システム内で自由に位置決めすることができる。端部ブロックは、例えば、真空蒸着システム内のロボットアーム上に装着することができる。
【0024】
消耗性ターゲットが上に装着された本発明の実施形態による端部ブロックは、反応性蒸着プロセスにおいて自己清浄化アノードとして使用することができる。したがって、消耗性ターゲットは、カソードモードで連続使用される他のマグネトロンと一緒に回転して基材を被膜することができる。アノードマグネトロンが、背面で例えばスパッタリングまたは蒸発によるプロセスからの材料を除去する一方、露出した消耗性ターゲット表面は、前面で清浄にとどまる。
【0025】
本発明の実施形態では、電気動力伝達装置の軸は、消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸である。電気動力伝達装置軸を消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸にすることは自明ではない。これは直感に反する。結局、誘導式モータを通じて交流信号を送ることは自明ではない。消耗性ターゲット駆動シャフトは消耗性ターゲットと同軸であるからこそ、端部ブロックの直径を限定することが可能である。もしこの同軸性が存在しなければ、モータは、端部ブロック上で膨れを形成するであろう。膨れを有するそのような端部ブロックは、もはやユニバーサルに適用可能ではなく、本発明の実施形態による端部ブロックには依然として可能であるいくつかの場所に配設することができない。
【0026】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、消耗性ターゲット駆動シャフトは、少なくとも部分的に導電性材料から作製することができる。そのような実施形態では、消耗性ターゲットに電力を伝送するために追加の導体を適用する必要がない。これは、動力伝達装置によって、および導電性消耗性ターゲット駆動シャフトによって可能になる。
【0027】
本発明の実施形態による端部ブロックは、次の構成要素のうち少なくとも1つをさらに含み得る:(i)消耗性ターゲット上で電力を取得するための回転可能な電気接点、(ii)消耗性ターゲットを、その軸を中心として回転する間、機械的に支持する1つ以上の軸受、(iii)冷却剤、例えばクーラント、および/または真空のための1つ以上の回転可能なシールデバイス。
【0028】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、消耗性ターゲットモータは、端部ブロックの静止部分上に装着されたコイル、および消耗性ターゲット駆動シャフト上に装着された磁石システムを含んでもよく、コイルおよび磁石システムは、コイルを通じて電流を送ることよって消耗性ターゲット駆動シャフト上で回転モーメントを生成することができるように装着されている。
【0029】
本発明の実施形態では、端部ブロックの静止部分は、少なくとも1つのシリンダ(「元のシリンダ」と呼ぶ)を有するディスクを含んでもよく、当該シリンダは、消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸であり、ディスクは、消耗性ターゲット駆動シャフトに垂直であり、少なくとも1つのシリンダが、消耗性ターゲット駆動シャフトの周囲またはその中に位置する。本発明の特定の実施形態では、端部ブロックの静止部分は、両方とも消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸である第1のシリンダおよび第2のシリンダを少なくとも有するディスクを含んでもよく、第1のシリンダは、消耗性ターゲット駆動シャフトの周囲に位置し、第2のシリンダは、消耗性ターゲット駆動シャフトの中に位置する。本発明の実施形態の利点は、消耗性ターゲットモータのコイルを第1のシリンダ上に装着することができること、および動力伝達装置を第2のシリンダ上に装着することができることである。特定の実施形態では、消耗性ターゲットモータのコイルは、少なくとも1つのシリンダ上に装着されてもよく、動力伝達装置は、少なくとも1つのシリンダと消耗性ターゲット駆動シャフトとの間に装着されてもよい。
【0030】
本発明の上記の実施形態または代替的な実施形態では、消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段は、磁気バーモータおよび磁気バーを消耗性ターゲット内で運動させる磁気バー駆動シャフトを含んでもよい。ししたがって、本発明は、端部ブロック内の単独の駆動装置として消耗性ターゲットモータのみを有する実施形態、端部ブロック内の単独の駆動装置として磁気バーモータのみを有する実施形態、ならびに端部ブロック内の駆動装置として消耗性ターゲットモータおよび磁気バーモータの両方を有する実施形態を含む。端部ブロック内の駆動装置として磁石バーモータのみが設けられる場合、端部ブロックは、(i)固定電気接点、(ii)磁気バーシステムを、それがその軸を中心として回転する間、機械的に支持する1つ以上の軸受、および(iii)冷却剤のための1つ以上の回転可能なシール、を含む。その場合、動的真空シールは必要とされない。
【0031】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、磁気バーモータおよび消耗性ターゲットモータは、直列に配置されてもよい。磁気バーモータは、端部ブロックの静止部に取り付けることができ、磁気バー駆動シャフトは、消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸に装着することができる。消耗性ターゲットおよび磁気バーの両方は、端部ブロックによって駆動することができる。本発明の実施形態の利点は、直列に配置された2つのモータが存在する場合、端部ブロックの直径が、ただ1つのモータが存在する場合よりも大きくないことであり、両方のモータは、駆動されるシャフト(複数可)の長手方向に前後に配設することができる。本発明の実施形態の利点は、指向性および/または全指向性の材料蒸着が可能であることである。
【0032】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、磁気バーモータは、端部ブロックの静止部上に装着されたコイル、および磁気バー駆動シャフト上に装着された磁石システムを含んでもよく、コイルおよび磁石システムは、コイルを通じて電流を送ることよって磁気バー駆動シャフト上で回転モーメントを生成することができるように装着されている。
【0033】
本発明の実施形態による端部ブロックでは、少なくとも1つの追加のシリンダが、少なくとも1つの元のシリンダが存在するのと反対側でディスク上に存在してもよく、少なくとも1つの追加のシリンダは、消耗性ターゲット駆動シャフトと同軸であり、磁気バー駆動シャフトの一部分は、追加のシリンダの周囲またはその中に位置する。磁気バーモータのコイルは、少なくとも1つの追加のシリンダ上に装着することができる。少なくとも1つの追加のシリンダは、第3のシリンダおよび第4のシリンダとして実装することができる。磁気バー駆動シャフトの一部分は、第3のシリンダと第4のシリンダとの間に位置してもよい。
【0034】
本発明の実施形態による端部ブロックは、個々の磁石または一連の磁石を磁気バー内に位置決めする手段をさらに含んでもよい。
【0035】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の実施形態による少なくとも1つの端部ブロックを含む蒸着装置を提供する。
【0036】
本発明の実施形態による蒸着装置は、少なくとも1つの端部ブロックを含んでもよく、蒸着装置は、少なくとも1つの端部ブロック上に消耗性ターゲットを配設することができ消耗性ターゲットの隣に基材を配置することができるように適応化されている。
【0037】
本発明の実施形態の利点は、例えば円柱状の基材に、内側に沿って、被膜を提供することが可能であることである。実施形態の利点は、その基材の直径が、端部ブロックの外側にモータが配設される端部ブロックが使用される場合よりも小さい内径を有してもよく、依然として端部ブロックの周囲に嵌合することである。本発明の実施形態の利点は、中空基材の内部被膜が可能なことである。これは、例えば大型のリフレクタを作製することを可能にする。これは、反射望遠鏡用ミラーの被膜などの用途で特に有利である。反射望遠鏡は、数メートル、例えば6mもしくは8mまたはそれ以上の直径のミラーを有し得る。現在、そのような大型ミラーを被膜するには、ミラーの半径上に位置決めされ、円形ミラーの中心を中心として回転することができる平坦ターゲットのみが使用されている。ここでは、唯一の駆動装置は、真空チャンバ内にある完全に平坦な磁石の回転である。円柱状ターゲットを有するマグネトロンは、円柱状ターゲットの全ての利点を提供することができるであろうが、回転駆動装置の典型的な雰囲気特性のため、現状の回転円柱状マグネトロンでは可能ではない。この問題は、本発明の実施形態による端部ブロックを、本発明の実施形態による蒸着装置内で使用することによって解決される。
【0038】
本発明の実施形態による蒸着装置は、複数の端部ブロックを含んでもよく、これらの端部ブロックは、例えば平行する消耗性ターゲット駆動シャフトと共に、二次元構成で配置されている。本発明の実施形態の利点は、モータが完全にまたは部分的に端部ブロックハウジングの外側に配設される端部ブロックが使用される場合よりもコンパクトな二次元構成を実現することができることである。
【0039】
本発明の実施形態による蒸着装置では、基材は、消耗性ターゲットの観点から複数の方向にあってもよく、磁気バーモータは、多方向被膜を提供してもよい。そのような配置は、具体的には、例えば静的円柱状消耗性ターゲットと共に使用することができる。基材は、消耗性ターゲットの周囲の遊星システム内に配置することができる。
【0040】
本発明の実施形態による蒸着装置は、基材が平坦ではない用途、および複数の配向を有する表面上に均一な被膜が要求される用途に使用することができる。
【0041】
本発明の具体的な好ましい態様を、添付の独立請求項および従属請求項に記載する。従属請求項の特徴は、単に特許請求の範囲に明示的に記載されているようにではなく、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と適宜組み合わせてもよい。
【0042】
本発明の上記の態様および他の態様は、以下で説明する実施形態(複数可)を参照することから明らかとなり、それによって明瞭化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図2】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図3】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図4】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図5】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図6】本発明の実施形態による、端部ブロックの異なる構成の概略図を長手方向で示す。
【
図7】本発明の実施形態による、消耗性ターゲット軸から見た端部ブロックの図を示す。
【
図8】先行技術による、消耗性ターゲット軸から見た端部ブロックの図を示す。
【
図9a】本発明の実施形態による、蒸着装置の一部分の概略図を示す。
【
図9b】本発明の実施形態による、蒸着装置の一部分の概略図を示す。
【
図10】本発明の実施形態による、複数の端部ブロックを有する蒸着装置の断面の概略図を示す。
【
図11】本発明の実施形態による、複数の端部ブロックを有する蒸着装置の断面の概略図を示す。
【
図12】本発明の実施形態による、磁気バーモータおよび消耗性ターゲットモータを含む端部ブロックの概略図を示す。
【
図13】本発明の実施形態による、磁気バーモータを含む端部ブロック、および静的消耗性ターゲットの概略図を示す。
【
図14】複数の消耗性ターゲットが並んで配置され、各消耗性ターゲットが本発明の実施形態による端部ブロック上に装着されている、蒸着装置の概略図を示す。
【
図15】消耗性ターゲットを遊星システムの中心に静的に配置することができ、被膜されるべき基材が、消耗性ターゲットの周囲に配置された遊星である、本発明の別の実施形態を示す。消耗性ターゲットは、本発明の実施形態による端部ブロック上に装着され、なかんずく、消耗性ターゲット内で磁気バーを駆動する駆動装置に動力を提供する。
【0044】
図面は、単に概略的なものであり、非限定的である。図において、いくつかの要素のサイズは、例示目的のために誇張され、一定の縮尺で描かれていないことがある。
【0045】
特許請求の範囲中の参照記号は、範囲の限定として解釈されないものとする。異なる図面において、同じ参照記号は、同じまたは類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を具体的な実施形態に関連して、かつ特定の図面を参照して説明するが、本発明は、それらには限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。説明する図面は、単に概略的なものであり、非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは、例示目的のために誇張され、一定の縮尺で描かれていないことがある。寸法および相対的な寸法は、本発明の実際の実施には必ずしも対応しない。
【0047】
さらに、明細書および特許請求の範囲中の「第1」、「第2」などの用語は、必ずしも時間、空間、ランキング、または他の任意の様式における順序を説明するためではなく、類似の要素を区別するために使用されている。そのように使用されている用語は適切な状況下では交換可能であること、および本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載または例示する以外の順序で動作することができることが、理解されるべきである。
【0048】
その上、明細書および特許請求の範囲中の「頂部」、「底部」、「上」、「前方」などの用語は、必ずしも相対位置を説明するためではなく、説明目的のために使用されている。そのように使用されている用語は適切な状況下では交換可能であること、および本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載または例示する以外の配向で動作することができることが、理解されるべきである。
【0049】
特許請求の範囲中で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に制限されると解釈されるべきではなく、他の要素またはステップを排除しないことに留意すべきである。したがって、これらは、言及されている記載の特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を明記するものとして解釈されるべきであり、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。したがって、「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスの唯一の重要な構成要素がAおよびBであることを意味する。
【0050】
本明細書の全体にわたって、「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「一実施形態でとは」または「ある実施形態では」という文言が本明細書の全体にわたって様々な箇所で出現することは、必ずしも全て同じ実施形態を指すわけではないが、その可能性もある。さらに、本開示から当業者には明らかであろうが、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な様式で組み合わされてもよい。
【0051】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、開示を合理化し本発明の様々な態様のうち1つ以上の理解を助ける目的のために、本発明の様々な特徴が単一の実施形態、図、またはそれらの説明にまとめられていることがあることが理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求対象の発明が、各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。そうではなく、以下の特許請求の範囲が示すように、進歩性は、前述の単一の開示された実施形態の全てよりも少ない特徴に存する。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、ここに、この詳細な説明中に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別々の実施形態として独立している。
【0052】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴を含まないものの、当業者なら理解するであろうように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意図する。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求対象の実施形態のうち任意のものを任意の組み合わせで使用することができる。
【0053】
本明細書で提供される説明では、多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、本発明の実施形態はこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例において、よく知られている方法、構造、および技術は、本明細書の理解を不明瞭にしないために、詳細には示されていない。
【0054】
本発明の実施形態において消耗性ターゲットモータに言及する場合、回転モーメントを消耗性ターゲットに伝送することができ、そのモータシャフトが消耗性ターゲットの回転軸と同軸であるモータを意味する。そのような消耗性ターゲットは、例えばトルクモータであってもよい。これらは、典型的に、トロイダル構造の誘導モータである。加えて、これらのモータは、中空であってもよいという利点を有し、それらを貫いて1つ以上のシャフトを装着することを可能にする。本発明の実施形態では、モータは、水力タービンであってもよい。
【0055】
本発明の実施形態において「磁気バーモータ」に言及する場合、それによって回転モーメントを磁気バーに伝達することができるモータを意味する。これは、トルクモータまたは水力タービンであってもよい。
【0056】
本発明の文脈において、「軸対称」とは、同じ特徴が、軸を中心とする一定の角回転後に定期的に発生することを意味する。「実質的に軸対称」とは、例えば、必ずしも軸を中心とする一定の角回転後に発生するわけではないが、それによって端部ブロックおよびそのハウジングのユニバーサルマウント可能性に影響を与えることのない、アンテナ、取付手段などの構成要素を適用することによって、厳密な軸対称性からの軽度の逸脱が存在し得ることを意味する。実質的に軸対称なハウジングは、中にモータ部品が収納される、軸対称性を中断する隆起を含まない。
【0057】
第1の態様では、本発明は、円柱状消耗性ターゲットを磁気バーによって蒸着装置の外側と接続する、蒸着装置で使用するための端部ブロックを提供する。端部ブロックは、消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供する駆動手段を少なくとも含み、駆動手段は、駆動されるシャフトを含む。本発明の実施形態では、駆動手段は、磁気バーを中心として消耗性ターゲットを回転駆動するために、消耗性ターゲットモータおよび消耗性ターゲット駆動シャフトを含み得る(磁気バーは、静止していてもよく、または消耗性ターゲットの回転運動とは異なる運動をそれ自体が行ってもよい)。代替的な実施形態では、駆動手段は、磁気バーを静的消耗性ターゲット内で回転駆動するために、磁気バーモータおよび磁気バー駆動シャフトを含んでもよい。さらなる代替的な実施形態では、駆動手段は、消耗性ターゲットおよび磁気バーをそれぞれ回転駆動するために、消耗性ターゲットモータおよび磁気バーモータの両方を含んでもよい。本発明による端部ブロックは、駆動されるシャフトと実質的に軸対称またはそれどころか軸対称である端部ブロックハウジング内に収容されており、駆動されるシャフトは、消耗性ターゲットシャフトまたは磁気バーシャフトであり得る。端部ブロックハウジングに外接し、駆動されるシャフトに垂直な円の直径は、消耗性ターゲットを上に装着することができる継手の直径の2.7倍以下、好ましくは2.1倍以下、例えば1.6倍以下である。端部ブロックの軸対称性のため、端部ブロックはユニバーサルマウント可能である。端部ブロックハウジングは、
図1、
図2、および
図6に例示されるように開口していてもよく、または
図3、
図4、および
図5に例示されるように閉じていてもよい。
【0058】
特定の実施形態では、本発明は、円柱状消耗性ターゲット150を駆動するためのユニバーサルマウント式端部ブロック100を提供する。端部ブロックは、消耗性ターゲットモータ120が取り付けられる静止部110を含む。この消耗性ターゲットモータ120は、消耗性ターゲットが端部ブロック100に装着されているとき、その消耗性ターゲット150に回転モーメントを伝達することができる。回転モーメントを伝達することができるために、消耗性ターゲットモータ120は、消耗性ターゲット150を駆動する消耗性ターゲット駆動シャフト126を含む。この消耗性ターゲット駆動シャフトは、消耗性ターゲットが端部ブロック上に装着されているとき、消耗性ターゲットの回転軸と同軸である。本発明の実施形態では、消耗性ターゲットモータが消耗性ターゲットに対して回転モーメントを及ぼすことができるように、消耗性ターゲット駆動シャフト126は、端部ブロックの動作中、消耗性ターゲットに接続されている。加えて、本発明による端部ブロックは、動力伝達装置140を含む。この動力伝達装置140は、端部ブロック100の外側から消耗性ターゲット駆動シャフト126に電力を伝達するように適応化されている。この目的のために、電源と消耗性ターゲット駆動シャフトとの間に導電性接点を作製することができる。消耗性ターゲット駆動シャフトとの電気接点は、例えば、摺動接点であってもよい。動力伝達装置は、複数の分散要素からなってもよい。本発明の実施形態では、消耗性ターゲット駆動シャフトは、消耗性ターゲット150に電力を伝達するように適応化されている。
【0059】
本発明の実施形態では、消耗性ターゲット駆動シャフト126は中空シャフトである。これは、端部ブロック100の柔軟な構成を可能にする。したがって、端部ブロック110の静止部は、消耗性ターゲット駆動シャフトの内側の部分、および消耗性ターゲット駆動シャフトの外側の部分を有してもよい。以下に見られるように、これは、モータのコイルおよび動力伝達装置の設置に関して様々な可能性を提供する。加えて、中空の消耗性ターゲット駆動シャフトは、例えば磁気バーを消耗性ターゲット内で駆動するために、追加のシャフトにそれを貫通させることができるという利点を有する。
【0060】
本発明の実施形態では、動力伝達装置から来る電力を消耗性ターゲットに伝達することが可能になるように、消耗性ターゲット駆動シャフト126は、完全にまたは部分的に導電性材料から作製されている。
【0061】
本発明の実施形態では、端部ブロック100は、消耗性ターゲット駆動シャフトの回転を可能にするための軸受と、上に端部ブロックが装着される蒸着システム内で真空を可能にするためのシールと、冷却剤による冷蔵を可能にするためのシールとを含む。
【0062】
本発明の実施形態では、端部ブロックの機能に貢献する様々な構成要素が、同じハウジング160内に統合されている。これらの構成要素は、例えば、消耗性ターゲットモータ120、動力伝達装置140、軸受、冷却回路である。消耗性ターゲット駆動シャフト126は消耗性ターゲット150と同軸であるので(装着されているとき)、実質的に軸対称な端部ブロックを構築することが可能である。これは、モータシャフトが消耗性ターゲットの駆動シャフトと同軸ではなく、端部ブロックのハウジング内にないことさえある、先行技術で既知の端部ブロックとは対照的である。本発明の実施形態の利点は、端部ブロックが実質的に軸対称であることである。本発明の実施形態の利点は、ハウジング上に隆起が存在しないことである。ハウジング160は、例えば円柱状であってもよく、または他方で、例えば四角形、六角形、または八角形であってもよい。例えば、ハウジングは、圧延鋼構造体であってもよい。
【0063】
図1は、本発明の実施形態による、端部ブロック100の概略図を示す。この図は、静止部110および消耗性ターゲットモータ120を示す。消耗性ターゲットモータ120は、静止部110に取り付けられ、消耗性ターゲット駆動シャフト126は、消耗性ターゲット150の回転軸と同軸である。消耗性ターゲット駆動シャフト126は、上に消耗性ターゲット150を装着することができる継手130を含む。本発明の実施形態では、駆動シャフトまたは消耗性ターゲット軸を中心とする、端部ブロックハウジング160に外接する円の直径は、継手130の直径の2.7倍以下、例えば2.1倍以下、またはそれどころか継手130の直径の1.6倍以下、またはそれどころか継手130の直径の1.2倍以下である。継手130は、例えば133mmの直径を有してもよく、その場合、端部ブロックハウジング160に外接する円の直径は、例えば212mmの直径を有してもよい(1.6倍の係数の場合)。駆動シャフトに垂直な断面において等しい側部を有するビーム形状ハウジングの場合、これは、各側部が例えば150mm未満の長さを有することになることを意味する。
【0064】
図1では、静止部110は、ディスク114を含む。これは、回転軸に垂直である。第1のシリンダ112および第2のシリンダ116は、このディスクに垂直である。両方とも、消耗性ターゲット駆動シャフト126と同軸である。第1のシリンダ112は消耗性ターゲット駆動シャフト126の周囲に位置し、第2のシリンダ116は消耗性ターゲット駆動シャフトの内側に位置する。
【0065】
本発明の実施形態では、消耗性ターゲットモータ120は、コイル122、磁石システム124、および消耗性ターゲット駆動シャフト126を含む。この例では、コイルは静止部上に装着されており、例えば、第1のシリンダ112および磁石システム124は、可動部、例えば消耗性ターゲット駆動シャフト126上に装着されている。しかしながら、他の実施形態では、これは反対にしてもよく、すなわち、コイル122を可動部の上に、磁石システム124を静止部の上にしもよい。
図1では、端部ブロック100の外側から消耗性ターゲット駆動シャフト126に電力を伝達するように適応化された動力伝達装置140も、概略的に表されている。この図では、動力伝達装置140は、第2のシリンダ116と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に配置されている。
【0066】
本発明の実施形態では、端部ブロック100の外側から消耗性ターゲット駆動シャフト126に電力を伝達するように適応化された動力伝達装置140は、モータと消耗性ターゲットとの間の電磁遮蔽を提供するための1つ以上の要素を追加的に含む。これは、モータと消耗性ターゲットとの間の干渉を防止する。これは、モータのコイルを通る交流電流がプラズマに影響を与えることを防止する利点を有する。
【0067】
図2では、動力伝達装置140は、第1のシリンダ112と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に配置されている。
【0068】
図3では、動力伝達装置140は、第2のシリンダ116と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に配置されている。
図1では、コイルおよび磁石システム124がディスク114により接近して配設されていたが、
図3では、動力伝達装置140がディスク114により接近して配設されている。
【0069】
本発明の実施形態では、モータのコイル122と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に電気接点が存在しない。これは、コイルが消耗性ターゲット電圧に到達することを防止する。加えて、コイルは、消耗性ターゲットに導かれる電力との直接の電気接点から常に隔離されている。
【0070】
図4では、動力伝達装置140は、第1のシリンダ112と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に配置されている。
図2では、コイルおよび磁石システム124がディスク114により接近して配設されていたが、
図4では、動力伝達装置140がディスク114により接近して配設されている。
【0071】
図5に概略的に表されている端部ブロック100では、第2のシリンダ116のみがディスク114上に存在する。このシリンダは、消耗性ターゲット駆動シャフト126と同軸である。この例では、消耗性ターゲット駆動シャフト126は、第2のシリンダ116の周囲に位置決めされている。
図5では、動力伝達装置140は、第1のシリンダ114と消耗性ターゲット駆動シャフト126との間に配置されている。消耗性ターゲットモータ120のコイル122は、静止部上、例えば第2のシリンダ116上に装着されている。磁石システム124は、可動部、例えば消耗性ターゲット駆動シャフト126上に装着されている。代替的な実施形態では、コイル122は可動部上に装着されてもよい一方、磁石システム124は静止部上に装着されている。
【0072】
図6は、
図5と同様に、上に第2のシリンダ116のみを有するディスク114を含む端部ブロックを示す。
図5では、コイルおよび磁石システム124がディスク114により接近して配設されていたが、
図6では、動力伝達装置140がディスク114により接近して配設されている。
【0073】
図7は、本発明の実施形態による、消耗性ターゲット軸から見た端部ブロック100の図を示す。この実施形態では、端部ブロックは、大気側にあり、装着フランジ701の背後に隠れている。隅の凹部は、壁部、蓋、ドア、または他の連絡管もしくはフランジを介して真空チャンバ上に装着することを可能にする。続いて、例えばOリングのために、真空シール手段が提供される702。この図中の他の円703は、なかんずく、ハウジング160内の開口部、消耗性ターゲットの装着のためのインターフェース、冷却剤、例えばクーラントを伝導するための開口部、および磁気バーシャフトを指す。
【0074】
比較のために、
図8では、先行技術による端部ブロックが示されている。
図7では、消耗性ターゲットモータは、本発明の実施形態による端部ブロック内に統合されている。この端部ブロックは、
図8の消耗性ターゲットホルダ812、822と同様のサイズである。しかしながら、
図8の端部ブロックは、モータが位置する隆起部を依然として含む。結果として、これらの端部ブロックは、本発明の実施形態による端部ブロックよりも広い空間を占有する。
図8の左図は、底部に消耗性ターゲットホルダ812があり、頂部にモータ814がある、コンパクトな端部ブロック810を示す。右図は、底部に消耗性ターゲットホルダ822があり、頂部にモータ824がある、軸マグネトロン820を示す。
【0075】
本発明の実施形態では、磁気バーモータ220も、端部ブロック100内に統合されている。この例が、
図12および
図13の図面に示されている。これらの図面は、本発明の実施形態による端部ブロックの長手方向断面を示す。
【0076】
図12は、消耗性ターゲットモータ120および磁気バーモータ220が取り付けられる端部ブロック100の静止部110を示す。静止部110は、上に第1のシリンダ112および第2のシリンダ116を有するディスク114を含む。第1のシリンダ112および第2のシリンダ116は、消耗性ターゲット駆動シャフト126と同軸である。ディスク114は、消耗性ターゲット駆動シャフト126に垂直である。第3のシリンダ212および第4のシリンダ216も、ディスク114上に存在する。これらは、第1のシリンダ112および第2のシリンダ116が位置するのと反対側に位置する。第3のシリンダ212および第4のシリンダ216は、消耗性ターゲット駆動シャフト126と同軸である。本発明の実施形態では、関連付けられたシリンダを含むこのディスク114は、ハウジングの一部を形成する。しかしながら、そのような端部ブロック100はまた、端部ブロックを取り囲むさらに別のハウジング(
図12に図示せず)を含んでもよい。
【0077】
本発明のこの例示的な実施形態では、消耗性ターゲットモータ120は、コイル122、磁石システム124、および消耗性ターゲット駆動シャフト126からなる。この消耗性ターゲット駆動シャフトは中空である。第1のシリンダ112は消耗性ターゲット駆動シャフト126の周囲に位置し、第2のシリンダ116は消耗性ターゲット駆動シャフト126内に位置する。コイル122は、静止部、例えば第2のシリンダ112上に装着されている。磁石システム124は、可動部、例えば消耗性ターゲット駆動シャフト126上に装着されている。代替的な実施形態では、この装着は、実際は反対にすることができ、磁石システム124を静止部、例えば第1のシリンダ112のう上に、コイル122を可動部、例えば消耗性ターゲット駆動シャフト126の上にすることができる。消耗性ターゲット駆動シャフト126は、上に消耗性ターゲット(
図12に図示せず)を装着することができる継手130も含む。コイル122および磁石システム124は、コイルを好適な様式で電気的に付勢することによって消耗性ターゲット駆動シャフト126に回転モーメントを適用することができるように位置決めされている。
【0078】
本発明のこの例示的な実施形態では、磁気バーモータ220は、コイル222、磁石システム224、および磁気バー駆動シャフト226からなる。この磁気バー駆動シャフト226は、中空の消耗性ターゲット駆動シャフト126内に配置されている。磁気バー駆動シャフト226は、磁気バー駆動シャフト226が消耗性ターゲット内で磁気バーを回転させることができるように位置決めされている。磁気バー駆動シャフト226の一部分は、第3のシリンダ212と第4のシリンダ216との間に位置する。例示する例では、磁気システム224は、可動部上に配置されている。コイル222は、静止部、より具体的には、例示する例では第3のシリンダ212上に、装着されている。代替的な実施形態では、磁石システム224は静止部上、例えば第3のシリンダ212上に装着されてもよい一方、コイル222は可動部、例えば磁気バー駆動シャフト226上に装着されてもよい。コイル222および磁石システム224は、コイル222を好適な様式で電気的に付勢することによって磁気バー駆動シャフト226に回転モーメントを適用することができるように位置決めされている。本発明のこの例示的な実施形態では、第3のシリンダ212と第4のシリンダ216との間に位置する磁気バー駆動シャフト226の部分は、磁気バー駆動シャフト226の端部229上に位置する円柱状部分228を含み、磁気バー駆動シャフトの残部を少なくとも部分的に取り囲む。
【0079】
図12は、異なる陰影効果によって、端部ブロック100のどの部分が静的であるか(関連付けられたシリンダ112、116、212、216を含むディスク114)、どの部分が消耗性ターゲットの回転に対応するか(コイル122、磁石システム124、消耗性ターゲット駆動シャフト126、継手130)、およびどの部分が磁気バーの回転に対応するか(コイル222、磁石システム224、磁気バー駆動シャフト226)を示す。
【0080】
この例の蒸着装置の動作中、少なくとも消耗性ターゲット駆動シャフト126は、消耗性ターゲット電圧にある。電流は、プラズマのために、消耗性ターゲット駆動シャフト126を通って消耗性ターゲットへと流れる。本発明のこの例示的な実施形態では、端部ブロック100の外側から消耗性ターゲット駆動シャフト126に電力を伝達するように適応化された動力伝達装置140は、ブラシシステムを含む。
ブラシシステムは、コイルが存在しない静止部の部分114、116、216の電力を、消耗性ターゲットを装着するための継手130に伝達するように適応化されている。
【0081】
図13は、磁気バーの回転を担う構成要素(磁石システム224、磁気バー駆動シャフト226、およびその端部229)が回転配置されている一方、消耗性ターゲットに関する部分が静的である(関連付けられたシリンダ212、216を含むディスク114)、代替的な実施形態を示す。消耗性ターゲットは、ディスク114に取り付けられた接続部品(
図13に図示せず)に取り付けることができる。
【0082】
本発明のこの例示的な実施形態では、磁気バーモータ220は、コイル222、磁石システム224、および磁気バー駆動シャフト226からなる。この磁気バー駆動シャフト226は、中空だが静的な消耗性ターゲット内に配置されている。磁気バー駆動シャフト226は、磁気バー駆動シャフト226が消耗性ターゲット内で磁気バーを回転させることができるように位置決めされている。磁気バー駆動シャフト226の一部分は、第3のシリンダ212と第4のシリンダ216との間に位置する(この実施形態では、第1のシリンダおよび第2のシリンダは必ずしも存在しないが、術語の一貫性のため、前の実施形態と同じ名称を使用する)。可動部上、例えば磁気バー駆動シャフト226上には、磁石システム224が配置されている。コイル222は、静止部上、例えば第3のシリンダ212上に装着されている。代替的な実施形態では、磁石システム224が静止部、例えば第3のシリンダ212上に装着され、コイル222が可動部、例えば磁気バー駆動シャフト226上に装着されるように、コイル222および磁石システム224は、互いに入れ替わってもよい。コイル222および磁石システム224は、コイル222を好適な様式で電気的に付勢することによって磁気バー駆動シャフト226に回転モーメントを適用することができるように位置決めされている。本発明のこの例示的な実施形態では、第3のシリンダ212と第4のシリンダ216との間に位置する磁気バー駆動シャフト226の部分は、磁気バー駆動シャフト226の端部229上に位置する円柱状部分228を含み、磁気バー駆動シャフトの残部を少なくとも部分的に取り囲む。
【0083】
動力伝達装置を消耗性ターゲットに提供するために、動力伝達装置140が提供される。この実施形態では消耗性ターゲットが静的に配置されているため、動力伝達装置140はまた静的な、例えばねじ止めされた電気接続部であってもよいが、それには限定されない。動力伝達装置140は、
図13に例示するように、第3のシリンダ212内にあってもよく、これは、第3のシリンダが軸対称ハウジングとして機能することを可能にする。あるいは(
図13に図示せず)、動力伝達装置はまた、第3のシリンダの外側に、しかしながら端部ブロック100を包囲する軸対称な端部ブロックハウジング内に、設けられてもよい。
【0084】
第2の態様では、本発明は蒸着装置を提供し、蒸着装置は少なくとも1つの本発明の実施形態による端部ブロックを含む。
【0085】
図9aおよび
図9bは、本発明の実施形態による、蒸着装置300の一部分の概略図を示す。消耗性ターゲットの長手方向軸に平行な側面図が示されている。これらの図は、上に消耗性ターゲット150が装着される端部ブロック100を示す。基材310が、消耗性ターゲット150および端部ブロック100の周囲に配設されている。これらの例では、基材は、円柱状基材であり、基材をその内側でスパッタリングすることができるように装着されている。
図9aでは、端部ブロック100は完全に真空チャンバ410内にあり、その軸を中心として同様に回転し得るハウジングまたは円柱状基材310の取付点と干渉するリスクがない。しかしながら、
図9bでは、真空チャンバ410はより小型であり、端部ブロック100は大気側に装着されている。可能な接続フランジ、点検窓、または補強リブ510を真空チャンバの外壁部に取り付けることができ、この場合も、コンパクトな端部ブロック寸法によって干渉を回避することができる。さらに、端部ブロック100が部分的に蒸着装置の大気側に沿って、かつ部分的に真空側に沿って位置するように、
図9aおよび
図9bの特徴間で任意の組み合わせが可能である。そのような混合配置は、
図14にも見ることができる。
【0086】
図10は、本発明の実施形態による、複数の端部ブロックを含む蒸着装置400の概略図を示す。この例では、消耗性ターゲットの回転軸に垂直な図が示されている。この図は、六角形形状を有する真空チャンバ壁部または真空カバープレート410を示す。この内側には異なる端部ブロック100が位置決めされており、各端部ブロック上に消耗性ターゲット150がある。この状況では、モータが消耗性ターゲットと同軸ではない端部ブロックを中間端部ブロックに使用することは可能ではないであろう。結局、中間端部ブロックの周囲の端部ブロックは、位置決めを妨げるであろう。
【0087】
同様の蒸着装置が、
図11に示されている。この場合、蒸着装置の壁部またはカバープレートは、円形である。ここでも、モータが消耗性ターゲットと同軸ではない端部ブロックによって中間消耗性ターゲットを装着することは、可能ではない。
【0088】
図14は、各々が本発明の実施形態による端部ブロック100上に装着された、様々な消耗性ターゲット150が設けられた蒸着装置1500を示す。本本発明の実施形態による端部ブロック100は、それらの軸対称性、および駆動されるシャフトに垂直な端部ブロックに外接する円の小さな直径のため、消耗性ターゲット150が互いに比較的接近して配設されることを可能にする。蒸着システム1500の底部プレート1501もしくは頂部プレート(図示せず)または両方が端部ブロックの下または上に連続するとしても、端部ブロック100の装着は、問題を提起しない。例示される蒸着装置1500では、異なる端部ブロック100、より短いものとより長いものとが示されている。例えば、より短い端部ブロックは、消耗性ターゲットモータのみが設けられた端部ブロックであってもよい一方、より長い端部ブロックは、例えば、消耗性ターゲットモータおよび磁気バーモータの両方が、例えば
図12に示されるように、前後に配設された端部ブロックであってもよい。消耗性ターゲットモータおよび磁気バーモータの両方を同じ端部ブロック内に設けることは、端部ブロックの軸対称性を損ねない。
【0089】
端部ブロック100は、それらの実質的に軸対称な形状のため、所望に応じて、蒸着装置1500の真空チャンバの壁部1502を通してさらに押し込むことも、またはそれほど遠くまで押し込まないこともできる。これは、消耗性ターゲット150を、壁部1502の内側からさらに離れて位置決めすることを可能にする。これは、例えば、スパッタリングされるべき基材がその壁部からさらに離れているまたはさらに離れることになる場合に重要であり得る。消耗性ターゲット150の真空チャンバおよびそれらに対応する端部ブロック100を、
図14の2つの前方の端部ブロック100に例示されるように、より深く挿入することは、
図14の2つの後方の端部ブロック100に例示されるように、スペーサ1503を使用する必要性を回避する。
【0090】
図15は、静的消耗性ターゲットによって回転駆動することができる磁石バーを備えた静的円柱状消耗性ターゲットが、スパッタリングすべき一連の基材の間に設けることができ、静的消耗性ターゲットの周囲の遊星システム内に配置されている、本発明のさらなる実施形態を示す。消耗性ターゲットは、本発明の実施形態による端部ブロック上に装着されている。このようなシステムは、基材上の全指向性PVD蒸着のために使用することができる。基材ホルダ1540をシールする両円形フランジのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの消耗性ターゲットを摺動させることができる開口部を有する。この基材ホルダは、典型的に、より小型の基材ホルダドラム1550の各々を回転させて各構成要素上に均一な被膜を得ることができる、遊星駆動システムを含む。ことによると、総基材ホルダ1540は、その軸を中心として回転することができる。本発明の実施形態による端部ブロック(複数可)100は、蒸着装置の壁部に固定的に装着されてもよく、基材ホルダ1540が、それらの周囲に装着される。
【0091】
様々な態様は容易に互いに組み合わせることができ、したがって、この組み合わせも本発明による実施形態に対応する。
【0092】
本発明の様々な態様は、様々な用途に応用され得る。例えば、上記の用途に加えて、かつそれらに限定されることなしに、本発明の実施形態による端部ブロックは、ある端部ブロック上に別の端部ブロックの位置決めを妨げる隆起がなく様々な端部ブロックを互いに比較的接近して配設することができるだけでなく、互いに独立して消耗性ターゲットと磁気バーとの間の相対運動を提供することができ、例えば互いに独立して消耗性ターゲットを回転運動で駆動することができる駆動手段を端部ブロックに容易に設けることができる、例えば米国特許第8092657号に記載されているような単一の通過による両面被膜のためのシステムで有利に使用されてもよい。
【0093】
本発明の実施形態による端部ブロックはまた、例えば国際出願公開第2016/005476号に記載されるような、運動するカソードを含むシステムにおいて有利に応用され得る。