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特許7179002改良されたプラスチック分解プロテアーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】改良されたプラスチック分解プロテアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/52 20060101AFI20221118BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221118BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20221118BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C12N15/52 Z
C12N9/50 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N1/00 R
C08J3/22 CFD
C08J11/10
C08L67/04
C08L101/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019532051
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017083091
(87)【国際公開番号】W WO2018109183
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】16306702.8
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥケーヌ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ギシャール,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴュイルマン,マルレーネ
(72)【発明者】
【氏名】ベン・ハレド,マヘル
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/198652(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198650(WO,A1)
【文献】MUNRO G. K. L. et al.,Microbiology,1995年,141,p.1731-1738
【文献】GUPTA R. et al.,Appl Microbiol Biotechnol,2002年,59,p.15-32
【文献】ODA Y. et al.,Journal of Polymers and the Environment,2000年,Vol.8 No.1,p.29-32
【文献】RecName: Full=Extracellular serine proteinase; Flags: Precursor.,Database UniProt [online],Accession No. P80146, entry version 87,2016年10月05日
【文献】peptidase S8 [Meiothermus chliarophilus],Database RefSeq [online],Accession No. WP_027892186,2014年06月12日
【文献】peptidase S8 [Meiothermus timidus],Database RefSeq [online],Accession No. WP_026234785,2014年06月08日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C12N 1/00- 7/08
C08J 3/00- 3/28
C08J 11/00-11/28
C08L 67/00-67/08
C08L 101/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも90%、95%又は99%の同一性を有し、(ii)S104L、N102F、N107I、G132I、G134K及びY167Rから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有するプロテアーゼ変異体であり、
ここで、該位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされ、
(iii)PLA-分解活性を示し、及び(iv)配列番号:1のプロテアーゼと比較して向上したPLA-分解活性を示す、プロテアーゼ変異体。
【請求項2】
前記プロテアーゼが、Y167R、N102F、S104L及びN107Iから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項3】
前記プロテアーゼが、S104L+N107I、S104L+Y167R、D160E+Y167R、N102S+D160E+Y167R、S106T+D160E+Y167R、N107T+D160E+Y167R、N102S+S106T+D160E+Y167R、S106T+N107T+D160E+Y167R、N102S+N107T+D160E+Y167R、N102S+S106T+N107T+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I、N102F+S104L+D160E+Y167R、N102F+S104L+N107I+D160E+Y167R、N102S+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I、N102F+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+Y167R及びN102F+S104L+S106T+N107I+G132I+D160E+Y167Rからなる群より選択される少なくとも1つの置換組み合わせを含み、
ここで、該位置が、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる、請求項1又は2のいずれか一項記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項4】
前記プロテアーゼが、N102F、S104L、N107I、G132I、G134K及びY167Rから選択される1つのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2のいずれか一項記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項5】
前記プロテアーゼがそのN末端に、配列番号:42で示される全長アミノ酸配列と少なくとも100%の同一性を有するアミノ酸配列を更なる配列として含む、請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項6】
更なる配列が、R24、Y75、D106、Q107、E108、V109、R110、A111及びF112から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、
ここで、該位置が、配列番号:42で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる、請求項記載のプロテアーゼ変異体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ変異体をコードする、核酸。
【請求項8】
請求項記載の核酸を含む、発現カセット又はベクター。
【請求項9】
請求項記載の核酸又は請求項記載の発現カセットもしくはベクターを含む、ホスト細胞。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ変異体もしくは請求項記載のホスト細胞又は前記プロテアーゼ変異体を含むその抽出物を含む、組成物。
【請求項11】
プロテアーゼを製造する方法であって、
(a)前記プロテアーゼをコードする核酸を発現させるのに適した条件下で、請求項記載のホスト細胞を培養することと、場合により、
(b)前記プロテアーゼを細胞培養物から回収することとを含む、方法。
【請求項12】
少なくともポリ乳酸(PLA)を含有するプラスチック製品を分解する方法であって、
(a)プラスチック製品を、請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ又は請求項記載のホスト細胞又は請求項10記載の組成物又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼと接触させることと、場合により、
(b)モノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ又は請求項記載のホスト細胞又は前記プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項10記載の組成物又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼと、少なくともポリ乳酸(PLA)を含有する、プラスチックコンパウンド。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ又は請求項記載のホスト細胞又は前記プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項10記載の組成物又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼと、少なくとも1種のポリエステルを含有する、マスターバッチ組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のポリエステルと、請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ又は請求項記載のホスト細胞又は前記プロテアーゼを含むその抽出物又は請求項10記載の組成物又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼとを、ポリエステルが部分的又は全体が溶融状態にある温度で、好ましくは、押出しにより混合する、請求項12もしくは13記載のプラスチックコンパウンド又は請求項14記載のマスターバッチ組成物を製造するための方法。
【請求項16】
ポリ乳酸含有材料を分解するため、請求項1~のいずれか一項記載のプロテアーゼ又は請求項記載のホスト細胞又は請求項10記載の組成物又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なプロテアーゼ、とりわけ、親プロテアーゼと比較して改善された活性を有するプロテアーゼ及びポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するためのその使用に関する。本発明のプロテアーゼは、ポリ乳酸及びポリ乳酸含有材料を分解するのに特に適している。
【0002】
背景
プロテアーゼは、ポリエステルを含む各種のポリマーの加水分解を触媒することができる。この文脈において、プロテアーゼは、食器洗浄及び洗濯用途のための洗剤として、バイオマス及び食品を処理するための分解酵素として、環境汚染物質の無毒化における生物触媒として又は繊維工業におけるポリエステル布地の処理のためのものを含む、多くの工業用途において有望な効果を示している。同様に、ポリ乳酸(PLA)を加水分解するための分解酵素としてのプロテアーゼの使用は特に興味深い。実際に、PLAは、多数の技術分野、例えば、可撓性及び剛性の包装、バッグ、マルチフィルムに並びに衣類及びカーペットの製造に使用されるバイオ系ポリマーである。したがって、埋立地におけるPLAの蓄積により、生態系の問題が大きくなっている。
【0003】
プロテアーゼの中で、セリンプロテアーゼ(EC3.4.21)は、タンパク質におけるペプチドアミド結合を開裂する酵素であり、同タンパク質において、セリンは、酵素活性部位における求核アミノ酸として働く。セリンプロテアーゼは、真核生物及び原核生物の両方に広範に見出される。数多くの細菌性セリンプロテアーゼが、最初に、Bacillusにおいて、より最近では、他の中温性ホストにおいて特定されている。一方、好熱性及び高熱性細菌から、セリンプロテアーゼがますます単離されている。一例として、Thermus aquatic YT-1由来のアクアリシンIが、クローニングされ、配列決定され、Escherichia coli中で発現されている。
【0004】
生物学的分解、とりわけ、酵素的分解は、プラスチック廃棄物の蓄積を減少させるための興味深い解決策と考えられている。実際に、酵素により、ポリエステル含有材料、とりわけ、プラスチック製品の加水分解を、モノマーレベルにまでも加速させることができる。更に、加水分解物(すなわち、モノマー及びオリゴマー)は、新たなポリマーの合成材料として再利用することができる。近年では、プラスチック材料の少なくとも1種のポリマーを分解するのに適した生物学的実体と一体化させ、生分解性プラスチック製品の製造をもたらす、新たなプラスチック材料が開発されている。一例として、PLAから製造され、プロテアーゼを含むプラスチック製品が製造されている。このような生分解性プラスチックにより、埋立地及び自然生息地におけるプラスチック蓄積の問題を少なくとも部分的に解決することができる。
【0005】
これに関して、幾つかのプロテアーゼが、候補分解酵素として特定されている。例えば、Micromonospora sp.(WO第2016/146540号)のプロテアーゼは、ポリエステル、とりわけ、ポリ乳酸を分解するその能力について記載されている。
【0006】
しかしながら、より高効率に分解プロセスを可能にすることにより、生分解性プラスチック製造プロセス、生物学的ポリエステル分解プロセス及び/又は生物学的リサイクルプロセスの競争力を高めるために、改善された活性及び/又は高温での改善された安定性を有するプロテアーゼが依然として必要とされている。
【0007】
発明の概要
本発明は、親又は野生型プロテアーゼの変異体であり、前記野生型プロテアーゼと比較して向上したポリエステル分解活性を示すことができる、新規なプロテアーゼを提供する。とりわけ、本発明は、UniProtKBにおいてP80146と称されるアミノ酸配列のアミノ酸133~410位に対応し、Munro et al, 1995 Jul, Microbiology, 141 (Pt 7):1731-8(Thermus sp.Rt41A株由来のアルカリセリンプロテイナーゼ)に記載され、Munro et al, 1995に70℃で24時間を超える安定性を示すと記載された成熟プロテアーゼのアミノ酸配列に対応する、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する親プロテアーゼの変異体を提供する。野生型プロテアーゼ及び変異体は両方とも、スブチリシン様プロテアーゼとみなされる。本発明のプロテアーゼは、プラスチック材料及び製品、例えば、ポリ乳酸(PLA)を含有するプラスチック材料及び製品を分解するためのプロセスにおいて特に有用である。したがって、本発明は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%の同一性を有し、配列番号:1と比較して、おそらく、特定のアミノ酸における1つ以上の置換を有するプロテアーゼを使用して、ポリ乳酸(PLA)を含有するプラスチック材料及び製品を分解するための方法を更に提供する。
【0008】
この点に関して、本発明の目的は、(i)配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有し、(ii)N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160又はY167から選択される位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を有するプロテアーゼ変異体であり、ここで、該位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる、プロテアーゼ変異体を提供することである。有利には、前記プロテアーゼ変異体は、ポリエステル分解活性を示し、好ましくは、配列番号:1のプロテアーゼと比較して向上したポリエステル分解活性を示す。
【0009】
特定の実施態様では、プロテアーゼは、S104位に少なくとも1つの置換を含む。
【0010】
特定の実施態様によれば、プロテアーゼは、S104L+N107I、S104L+Y167R、D160E+Y167R、N102S+D160E+Y167R、S106T+D160E+Y167R、N107T+D160E+Y167R、N102S+S106T+D160E+Y167R、S106T+N107T+D160E+Y167R、N102S+N107T+D160E+Y167R、N102S+S106T+N107T+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I、N102F+S104L+D160E+Y167R、N102F+S104L+N107I+D160E+Y167R、N102S+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I、N102F+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+Y167R及びN102F+S104L+S106T+N107I+G132I+D160E+Y167Rからなる群より選択される少なくとも1つの置換組み合わせを含むことができ、ここで、該位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる。
【0011】
本発明の別の目的は、本発明のプロテアーゼをコードする核酸を提供することである。また、本発明は、前記核酸を含む発現カセット又は発現ベクター及び前記核酸、発現カセット又はベクターを含むホスト細胞に関する。
【0012】
本発明の更なる目的は、
(a)プロテアーゼをコードする核酸を発現させるのに適した条件下で、本発明のホスト細胞を培養することと、場合により、
(b)前記プロテアーゼを細胞培養物から回収することとを含む、本発明のプロテアーゼを製造する方法を提供することである。
【0013】
また、本発明は、少なくとも1種のポリエステル、好ましくは、PLAを含有するプラスチック製品を分解する方法であって、
(a)プラスチック製品を、本発明のプロテアーゼ又はホスト細胞と接触させることにより、プラスチック製品を分解することと、場合により、
(b)モノマー及び/又はオリゴマー、好ましくは、乳酸(PLA)のモノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法に関する。
【0014】
また、本発明は、本発明のプロテアーゼ又はホスト細胞を含むポリエステル含有材料に関する。本発明は、より好ましくは、本発明のプロテアーゼ又はホスト細胞を含む乳酸(PLA)含有材料に関する。また、本発明は、ポリエステル、好ましくは、PLAと、本発明のプロテアーゼ又はホスト細胞とを混合する工程を含み、ここで、混合工程を、ポリエステルが部分的又は完全に溶融状態にある温度で、好ましくは、押出プロセス中に行う、このようなポリエステル含有材料を製造するための方法も提供する。
【0015】
本発明の更なる目的は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼを含むポリエステル含有材料、より好ましくは、PLA含有材料を提供することである。また、本発明は、ポリエステル、好ましくは、PLAと、配列番号:1で示されたアミノ酸配列を有するプロテアーゼとを混合する工程を含み、ここで、混合工程を、ポリエステルが部分的又は完全に溶融状態にある温度で、好ましくは、押出プロセス中に行う、このようなポリエステル含有材料を製造するための方法も提供する。
【0016】
更に、本発明は、ポリエステル含有材料、より好ましくは、PLA含有材料を分解するための、上記されたプロテアーゼ及び/又は配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼの変異体の使用に関する。
【0017】
発明の詳細な説明
定義
本開示は、下記定義を参照することにより最もよく理解されるのであろう。
【0018】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」という用語は、前記鎖を形成するアミノ酸の数に関わらず、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の鎖を指す。本明細書において、アミノ酸は、下記命名法:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リシン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:スレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)及びY:チロシン(Tyr)に従ったそれらの1文字又は3文字コードにより表わされる。
【0019】
「プロテアーゼ」又は「プロテイナーゼ」という用語は、より短いペプチドを生成するために、ペプチド又はタンパク質におけるペプチド結合の加水分解を触媒する、酵素命名法に従ってEC3.4と分類されるヒドラーゼのクラスに属する酵素を指す。「セリンプロテアーゼ」という用語は、酵素委員会の命名法に従ってEC3.4.21と分類されるプロテアーゼを指す。
【0020】
「野生型タンパク質」又は「親タンパク質」という用語は、互換的に使用され、天然に存在するようなポリペプチドの非変異版を指す。本件では、親プロテアーゼは、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼを指す。
【0021】
したがって、「突然変異体」及び「変異体」という用語は、配列番号:1に由来し、1つ以上の(例えば、幾つかの)位置に修飾又は改変、すなわち、置換、挿入及び/又は欠失を含み、好ましくは、ポリエステル分解活性を有するポリペプチドを指すのに交換可能に使用することができる。変異体は、当技術分野において周知の種々の技術により得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を改変するための技術の例は、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発及び合成オリゴヌクレオチド構築を含むが、これらに限定されない。
【0022】
位置又はアミノ酸に関して本明細書で使用する場合、「修飾」又は「改変」という語は、特定の位置におけるアミノ酸が野生型タンパク質のアミノ酸と比較して修飾されていることを意味する。
【0023】
「置換」は、アミノ酸残基が別のアミノ酸残基により置き換えられることを意味する。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基、稀に天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、6-N-メチルリシン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)及び多くの場合、合成的に製造される非天然アミノ酸残基(例えば、シクロヘキシル-アラニン)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置き換えを指す。好ましくは、「置換」という用語は、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S及びT)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置き換えを指す。符号「+」は、置換の組み合わせを示す。本文書において、下記用語が、置換を指定するのに使用される。Y167Rは、親配列の167位におけるアミノ酸残基チロシン(Y)がアルギニン(R)に変化することを示す。Y167V/I/Mは、親配列の167位におけるアミノ酸残基チロシン(Y)が下記アミノ酸:バリン(V)、イソロイシン(I)又はメチオニン(M)のうちの1つにより置換されることを示す。置換は、保存的置換又は非保存的置換であることができる。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン及びスレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)及び小型アミノ酸(グリシン、アラニン及びセリン)のグループ内である。
【0024】
アミノ酸に関して使用される「欠失」という用語は、アミノ酸が除去されているか又は存在しないことを意味する。
【0025】
「挿入」という用語は、1つ以上のアミノ酸が付加されていることを意味する。
【0026】
特に断りない限り、本願に開示された位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列間の一致(同一アミノ酸残基)の数(又はパーセント%として表される百分率)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小にしながら、重複及び同一性を最大にするようにアライメントされた場合、配列を比較することにより決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、数多くの数学的グローバル又はローカルアライメントアルゴリズムのいずれかを使用して決定することができる。同様の長さの配列を、好ましくは、全長にわたって最適に配列をアライメントさせるグローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman and Wunsch algorithm; Needleman and Wunsch, 1970)を使用してアライメントさせ、一方、実質的に異なる長さの配列を、好ましくは、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith及びWatermanアルゴリズム(Smith and Waterman, 1981)又はAltschulアルゴリズム(Altschul et al., 1997;Altschul et al., 2005))を使用してアライメントさせる。%アミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当技術分野における技術の範囲内の種々の方法で、例えば、インターネットウェブサイト、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/上で入手できる公衆に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書の目的で、%アミノ酸配列同一性値を、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して、2つの配列の最適なグローバルアライメントを生成する、ペアワイズ配列アライメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成された値を指し、ここで、全ての検索パラメーターは、デフォルト値、すなわち、スコアリング行列=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップエクステンド=0.5、エンドギャップペナルティ=偽、エンドギャップオープン=10及びエンドギャップエクステンド=0.5に設定される。
【0028】
「リコンビナント」という用語は、遺伝子工学により産生される核酸構築物、ベクター、ポリペプチド又は細胞を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を指し、同工程は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾及び分泌を含むが、これらに限定されない。
【0030】
「発現カセット」という用語は、コード領域、すなわち、本発明の核酸及びレギュラトリー領域(すなわち、操作可能に連結している1つ以上の制御配列を含む)を含む核酸構築物を示す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「発現ベクター」という用語は、本発明の発現カセットを含むDNA又はRNA分子を意味する。好ましくは、発現ベクターは、直鎖又は環状の二本鎖DNA分子である。
【0032】
「ポリマー」は、構造が共有化学結合により連結されている複数のモノマー(繰返し単位)から構成されている化合物又は化合物の混合物を指す。本発明の文脈において、ポリマーという用語は、単一タイプの繰り返し単位(すなわち、ホモポリマー)又は異なる繰り返し単位の混合物(すなわち、コポリマー又はヘテロポリマー)から構成される天然又は合成ポリマーを含む。本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個のモノマーを含有する分子を指す。
【0033】
本発明の文脈において、「ポリエステル含有材料」又は「ポリエステル含有製品」は、結晶性、半結晶性又は完全に非晶質の形態にある少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品等の製品を指す。特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のプラスチック材料から製造される任意の物品、例えば、プラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、形状、フィルム、塊状ブロック、繊維、織物等を指し、これらは、少なくとも1種のポリエステルと、場合により、他の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、鉱物又は有機充填剤とを含有する。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステル含有繊維を含む織物又は布地を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品を製造するのに適した溶融状態又は固体状態にしたプラスチックコンパウンド又はプラスチック配合物を指す。
【0034】
本説明において、「ポリエステル」は、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)及びこれらのポリマーのブレンド/混合物を包含する。
【0035】
新規なプロテアーゼ
現在入手可能な酵素と比較して改善されたポリエステル分解活性を有する新規なプロテアーゼの開発に取り組むことにより、本発明者らは、配列番号:1のアミノ酸配列を有し、70℃で24時間を超える安定性を示す(Munro et al, 1995)セリンプロテアーゼが、興味深いことに、ポリエステル分解活性も示すことを発見した。本発明者らは、この酵素に更に取り組み、この親タンパク質と比較して改善されたポリエステル分解活性を示すこの酵素の特定の変異体を開発した。とりわけ、本発明者らは、工業的プロセスにおいて使用するための優れた特性を有する新規酵素を設計した。分解性プラスチック製品の工業的生産を行うことができ及び/又はプラスチック製品の環境分解を達成することができる条件下でプロテアーゼの活性を改善することを目的として、本発明者らは、この親プロテアーゼと比較してより高い活性を示す配列番号:1のプロテアーゼに由来する新規なプロテアーゼを開発した。本発明のプロテアーゼは、PLAを含有するプラスチック製品を分解するのに特に適している。本発明のプロテアーゼは、有利には、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、ポリエステル、とりわけ、PLAに対して向上した比分解活性を示す。興味深いことに、本発明者らは、ポリエステル基質のタンパク質との接触を促進することにより、このポリエステルへの酵素の吸着及び/又はタンパク質の分解活性を向上させるように有利に改変することができるタンパク質の構造において、ポリエステル基質と接触することが意図される、特定のアミノ酸残基を特定した。
【0036】
本発明の文脈において、「向上した分解活性」という用語は、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、プラスチック製品又は材料、とりわけ、ポリエステル含有プラスチック製品又は材料、更にとりわけ、PLA含有プラスチック製品又は材料を分解する酵素の向上した能力を示す。このような向上は、典型的には、親プロテアーゼと比較して、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%又はそれ以上である。
【0037】
タンパク質の分解活性は、当業者により、当技術分野においてそれ自体公知の方法に従って評価することができる。例えば、活性は、比プロテアーゼ活性速度の測定、pNA(N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド)の加水分解の測定、ポリエステルの比脱重合活性速度の測定、アガープレート中に分散させた固体ポリエステル化合物を分解する速度の測定、ポリエステルを含有するエマルジョンの濁度の低下の測定又は反応器中のポリエステルの比脱重合活性速度の測定により評価することができる。
【0038】
本発明の文脈において、ターゲットポリエステルについての「比分解活性」という用語は、前記ターゲットポリエステルを含有するプラスチック製品を本発明のプロテアーゼと接触させる場合、温度、pH及びバッファーの適切な条件下で、1時間あたり酵素1mgあたりに放出されるモノマー及び/又はオリゴマーの初速度(mg)を指定する。一例として、PLAについての比分解活性は、加水分解曲線の直線部分で決定された場合、1時間あたり及び酵素1mgあたりに産生される乳酸及び乳酸二量体(mg)又は1分あたり及び酵素1mgあたりに加水分解されるPLA(μmol)に相当する。
【0039】
本発明の実施態様によれば、プロテアーゼは、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有し、N102、S104、S106、N107、G132、G134又はY167から選択される位置において少なくとも1つの置換を有する、配列番号:1のプロテアーゼの変異体であり、ここで、該位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、D160位に更なる置換を更に含む。
【0040】
別の実施態様によれば、プロテアーゼは、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有し、N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160又はY167から選択される位置において少なくとも1つの置換を有する、配列番号:1のプロテアーゼの変異体であり、ここで、該位置は、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる。
【0041】
本発明によれば、ターゲットアミノ酸は、標準的な天然に存在するアミノ酸残基、稀に天然に存在するアミノ酸残基及び非天然アミノ酸残基から選択される他のアミノ酸残基のいずれか1つにより置き換えることができる。好ましくは、ターゲットアミノ酸は、19種の他のアミノ酸のいずれか1つにより置き換えることができる。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号:1と比較して、N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160又はY167から選択される位置に単一の置換を含む。好ましくは、プロテアーゼ変異体は、N102S/F、S104L、S106T、N107T/I、G132I、G134K、D160E及びY167Rから選択され、より好ましくは、N102F、S104L、N107I、G132I、G134K、D160E及びY167Rから選択され、更により好ましくは、S104L及びY167Rから選択される単一の置換を含む。
【0042】
別の特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号:1と比較して1つ以上の置換を含み、少なくとも1つの置換は、N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160及びY167から選択される位置、好ましくは、Y167、S106及びS104から選択される位置にある。
【0043】
有利には、プロテアーゼ変異体は、N102S/F、S104L、S106T、N107T/I、G132I、G134K、D160E及びY167Rから選択され、好ましくは、Y167R、N102F、S104L、S106T及びN107Iから選択され、より好ましくは、Y167R、S106T及びS104Lから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0044】
特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160及びY167から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、N102S/F、S104L、S106T、N107T/I、G132I、G134K、D160E及びY167Rから選択される少なくとも2つの置換を含む。
【0045】
特定の実施態様によれば、変異体は、D160E+Y167R;N102S+Y167R;S106T+Y167R;G134K+Y167R;S104L+G134K;N107T+Y167R;S104L+Y167R;S104L+N107I、好ましくは、D160E+Y167R、S104L+N107I及びS104L+Y167Rから選択される2つの置換組み合わせを少なくとも含む。
【0046】
特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、N102、S104、S106、N107、G132、G134、D160及びY167から選択される位置に少なくとも3つの置換を含む。特定の実施態様では、変異体は、N102S+S106T+Y167R;N102S+N107T+Y167R;N102S+D160E+Y167R;S106T+N107T+Y167R;S106T+D160E+Y167R;N107T+D160E+Y167R;N102F+S104L+Y167R;N102F+S104L+N107I;S104L+G134K+Y167R;G134K+D160E+Y167R;S104L+N107I+G134K;N102F+N107I+Y167R;S104L+N107I+Y167R及びS104L+G132I+Y167Rから選択される3つの置換組み合わせを少なくとも含む。
【0047】
特定の実施態様によれば、変異体は、N102S+S106T+N107T+Y167R、N102S+S106T+D160E+Y167R、N102S+N107T+D160E+Y167R、S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+N107I+G134K;S104L+N107I+G134K+Y167R;N102F+S104L+D160E+Y167R及びN102F+S104L+S106T+N107I、好ましくは、N102F+S104L+S106T+N107I及びN102F+S104L+D160E+Y167R、より好ましくは、N102F+S104L+S106T+N107Iから選択される置換組み合わせを少なくとも含む。
【0048】
特定の実施態様によれば、変異体は、N102S+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S106T+N107T+D160E+Y167R、N102F+S104L+N107I+D160E+Y167R、N102F+S104L+N107I+G134K+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+G134K、S104L+S106T+N107I+G134K+Y167R、N102F+S104L+S106T+N107I+Y167R及びN102F+S104L+S106T+N107I+G132I、好ましくは、N102F+S104L+S106T+N107I+Y167R又はN102F+S104L+S106T+N107I+G132Iから選択される置換組み合わせを少なくとも含む。
【0049】
特定の実施態様によれば、変異体は、N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167R;N102F+S104L+S106T+N107I+G134K+Y167R又はN102F+S104L+S106T+N107I+G132I+Y167R、好ましくは、N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167Rから選択される置換組み合わせを少なくとも含む。
【0050】
特定の実施態様によれば、変異体は、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+D160E+Y167R又はN102F+S104L+S106T+N107I+G134K+D160E+Y167R、好ましくは、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+D160E+Y167Rの置換組み合わせを少なくとも含む。
【0051】
特定の実施態様によれば、変異体は、N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+G134K+D160E+Y167Rの置換組み合わせを少なくとも含む。
【0052】
有利には、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、プロテアーゼの3Dフォールディング及び成熟を少なくとも部分的に担う「プロペプチド」として作用するアミノ酸配列を含む。
【0053】
特に、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、配列番号:42で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
特定の実施態様によれば、プロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、N末端において、配列番号:42で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有し、R24、Y75、D106、Q107、E108、V109、R110、A111及びF112から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、ここで、該位置は、配列番号:42で示されるアミノ酸配列を参照することによりナンバリングされる。本発明によれば、ターゲットアミノ酸は、標準的な天然に存在するアミノ酸残基、稀に天然に存在するアミノ酸残基及び非天然アミノ酸残基から選択される他のアミノ酸残基のいずれか1つにより置き換えることができる。好ましくは、ターゲットアミノ酸は、19種の他のアミノ酸のいずれか1つにより置き換えることができる。
【0055】
変異体のポリエステル分解活性
本発明の目的は、プロテアーゼ活性を有する新規な酵素を提供することである。
【0056】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、ポリエステル分解活性、好ましくは、ポリ乳酸分解活性を有する。また、興味深いことに、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する親プロテアーゼも、ポリエステル分解活性、好ましくは、ポリ乳酸分解活性を有する。好ましくは、本発明のプロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性を示す。
【0057】
有利には、本発明のプロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、少なくとも、10℃~90℃、好ましくは、40℃~80℃、より好ましくは、60℃~80℃、更により好ましくは、70℃~80℃、更により好ましくは、75℃の温度範囲でポリエステル分解活性を示す。別の特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体及び/又は親プロテアーゼは、20℃~80℃、好ましくは、30℃~70℃、より好ましくは、40℃~60℃、更により好ましくは、40℃~50℃、好ましくは、45℃でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、40℃~80℃、好ましくは、40℃~60℃、更により好ましくは、45℃の温度でも測定可能である。別の特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、自然環境における平均温度に相当する、10℃~30℃、好ましくは、15℃~28℃の温度でも測定可能である。
【0058】
特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼのポリエステル分解活性より、少なくとも5%高い、好ましくは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、500%以上高い、45℃でのポリエステル分解活性を有する。
【0059】
別の特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、10℃~90℃、より好ましくは、40℃~80℃、更により好ましくは、60℃~80℃、更により好ましくは、75℃の温度で、向上したポリエステル分解活性を有する。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼのポリエステル分解活性より、少なくとも5%高い、好ましくは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、500%以上高い、75℃でのポリエステル分解活性を有する。
【0060】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、10~30℃、より好ましくは、15℃~30℃、更により好ましくは、20~30℃、更により好ましくは、28℃の温度で、向上したポリエステル分解活性を有する。特定の実施態様では、プロテアーゼ変異体は、配列番号:1のプロテアーゼのポリエステル分解活性より、少なくとも5%高い、好ましくは、少なくとも10%、20%、50%、100%、200%、300%、500%以上高い、28℃でのポリエステル分解活性を有する。
【0061】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、少なくとも、pH5~11の範囲、好ましくは、pH6~10の範囲、より好ましくは、pH6.5~9の範囲、更により好ましくは、pH7~8の範囲で測定可能なポリエステル分解活性を示す。
【0062】
変異体の熱安定性
有利には、変異体の熱安定性は、親プロテアーゼの熱安定性と比較して著しく損なわれていることはない。より有利には、変異体の熱安定性は、配列番号:1の親プロテアーゼの熱安定性と比較して改善されている。本発明の文脈において、「改善された熱安定性」という用語は、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、高温、とりわけ、40℃~90℃の温度において、その化学的及び/又は物理的構造の変化に抵抗する酵素の能力の向上を示す。特に、本発明のプロテアーゼは、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、40℃~90℃の温度における延長した半減期を有することができる。特に、プロテアーゼは、配列番号:1のプロテアーゼと比較して、より高い又は同等の融解温度(Tm)を示すことができる。特に、本発明の変異体は、押出プロセスの間、とりわけ、50℃~250℃、好ましくは、130℃~180℃に含まれる温度で行われる押出プロセスの間、改善された熱安定性を示す。
【0063】
本発明のプロテアーゼは、上記開示された1つ又は幾つかの改変を含むことができる。
【0064】
タンパク質の熱安定性は、当業者により、当技術分野においてそれ自体公知の方法に従って評価することができる。例えば、熱安定性は、種々の温度でのインキュベーション後の酵素の残留プロテアーゼ活性及び/又は残留ポリエステル脱重合活性(すなわち、ポリエステル分解活性)を測定することにより評価することができる。種々の温度で複数回のポリエステルの脱重合アッセイを行う能力も評価することができる。迅速かつ定性的な試験は、ハロー直径測定による、種々の温度でのインキュベーション後にアガープレート中に分散された固体ポリエステル化合物を分解する酵素能力の評価からなることができる。代替的に又は付加的に、示差走査蛍光分析(DSF)を行って、タンパク質/酵素の熱安定性を評価することができる。本発明の文脈において、円二色性は、タンパク質の熱変性温度の変化を定量化することにより、その融解温度(Tm)を決定するのに使用される。本発明の文脈において、所定のタンパク質の「融解温度(Tm)」は、前記タンパク質の50%が変性される温度に相当する。Tmは、実験部で明らかにしたように、円二色性を使用して測定することができる。
【0065】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、70℃超、好ましくは、75℃超の融解温度(Tm)を示す。また、興味深いことに、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する親プロテアーゼも、70℃超、好ましくは、75℃超の融解温度(Tm)を示す。
【0066】
核酸、発現カセット、ベクター、ホスト細胞
本発明の更なる目的は、上記定義されたプロテアーゼをコードする核酸を提供することである。
【0067】
本明細書で使用する場合、「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドの配列を指す。核酸は、DNA(cDNA又はgDNA)、RNA又はこれら2つの混合物であることができる。核酸は、一本鎖形態もしくは二本鎖形態又はこれら2つの混合物であることができる。核酸は、リコンビナント、人工及び/又は合成起源のものであることができ、例えば、修飾された結合、修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基又は修飾された糖を含む、修飾されたヌクレオチドを含むことができる。本発明の核酸は、単離又は精製された形態であることができ、当技術分野においてそれ自体公知の技術、例えば、cDNAライブラリーのクローニング及び発現、増幅、酵素合成又はリコンビナント技術により調製し、単離し及び/又は操作することができる。また、核酸は、例えば、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444に記載されているように、周知の化学合成技術によりin vitroで合成することもできる。
【0068】
また、本発明は、ストリンジェントな条件下で、上記定義されたプロテアーゼをコードする核酸にハイブリダイズする核酸を包含する。好ましくは、このようなストリンジェントな条件は、2×SSC/0.1% SDS中において約42℃で約2.5時間のハイブリダイゼーションフィルターのインキュベーション、続けて、1×SSC/0.1% SDS中において65℃で15分間の4回のフィルター洗浄を含む。使用されるプロトコールは、Sambrook et al.(Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N.Y. (1988))及びAusubel(Current Protocols in Molecular Biology (1989))等の参考文献に記載されている。
【0069】
また、本発明は、本発明のプロテアーゼをコードする核酸も包含し、ここで、前記核酸の配列又は前記配列の少なくとも一部は、最適化コドン利用を使用して操作されている。
【0070】
代替的には、本発明の核酸は、本発明のプロテアーゼの配列から推定することができ、コドン使用頻度を、核酸が転写されるであろうホスト細胞に応じて適合させることができる。これらの工程は、当業者に周知の方法に従って行うことができ、これらの方法の幾つかは、参考マニュアルであるSambrook et al.(Sambrook et al., 2001)に記載されている。
【0071】
本発明の核酸は、更なるヌクレオチド配列、例えば、レギュラトリー領域、すなわち、選択されたホスト細胞又はホスト系においてポリペプチドの発現を引き起こすか又はレギュレーションするのに使用することができる、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、シグナルペプチド等を更に含むことができる。代替的に又は付加的に、本発明の核酸は、ポリペプチドの発現及び/又は溶解性を促進するのに使用することができる、融合タンパク質、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)又はグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)をコードする更なるヌクレオチド配列を更に含むことができる。
【0072】
更に、本発明は、適切なホスト細胞における前記核酸の発現を指令する1つ以上の制御配列に操作可能に連結している本発明の核酸を含む発現カセットに関する。典型的には、発現カセットは、制御配列、例えば、転写プロモーター及び/又は転写ターミネーターに操作可能に連結している本発明の核酸を含み又は同核酸からなる。制御配列は、本発明のプロテアーゼをコードする核酸の発現のためのホスト細胞又はin vitro発現系により認識されるプロモーターを含むことができる。プロモーターは、酵素の発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、突然変異体、切断型及びハイブリッドプロモーターを含むホスト細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであることができ、ホスト細胞に対して同種又は異種のいずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。また、制御配列は、転写を終了させるためにホスト細胞により認識される転写ターミネーターであることもできる。ターミネーターは、プロテアーゼをコードする核酸の3’末端に操作可能に連結している。ホスト細胞において機能的である任意のターミネーターを、本発明において使用することができる。典型的には、発現カセットは、転写プロモーター及び転写ターミネーターに操作可能に連結している本発明の核酸を含み又は同核酸からなる。
【0073】
また、本発明は、上記定義された核酸又は発現カセットを含むベクターに関する。
【0074】
「ベクター」という用語は、リコンビナント遺伝物質をホスト細胞内に移入するための媒体として使用されるDNA分子を指す。ベクターの主な種類は、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、ホスミド、コスミド及び人工染色体である。ベクター自体は、一般的には、インサート(異種核酸配列、導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きい配列からなるDNA配列である。遺伝情報をホストに移入するベクターの目的は、典型的には、ターゲット細胞においてインサートを単離し、増幅させ又は発現させることである。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、ターゲット細胞における異種配列の発現のために特異的に適合され、一般的には、ポリペプチドをコードする異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。一般的には、発現ベクター中に存在するレギュラトリーエレメントは、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター及び場合により存在するオペレーターを含む。また、好ましくは、発現ベクターは、ホスト細胞における自律複製のための複製起点、選択マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位及び高いコピー数の可能性も含有する。発現ベクターの例は、クローニングベクター、修飾クローニングベクター、特に設計されたプラスミド及びウイルスである。異なるホストにおいて適切なレベルのポリペプチド発現を提供する発現ベクターは、当技術分野において周知である。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、ベクターが導入されるホスト細胞との適合性により決まるであろう。
【0075】
本発明の別の目的は、上記された核酸、発現カセット又はベクターを含むホスト細胞を提供することである。このため、本発明は、ホスト細胞をトランスフォーメーションし、トランスフェクションし又は形質導入するための、本発明の核酸、発現カセット又はベクターの使用に関する。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、ベクターが導入されるべきホスト細胞との適合性により決まるであろう。
【0076】
本発明によれば、ホスト細胞を、一過性又は安定な様式で、トランスフォーメーションし、トランスフェクションし又は形質導入することができる。本発明の発現カセット又はベクターは、カセット又はベクターが染色体組込み体として又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、ホスト細胞内に導入される。また、「ホスト細胞」という用語は、複製の間に生じる変異のために親ホスト細胞と同一ではない親ホスト細胞の任意の子孫も包含する。ホスト細胞は、本発明の変異体の調製に有用な任意の細胞、例えば、原核生物又は真核生物であることができる。原核生物ホスト細胞は、任意のグラム陽性又はグラム陰性細菌であることができる。また、ホスト細胞は、真核細胞、例えば、酵母、真菌、ほ乳類、昆虫又は植物細胞であることもできる。特定の実施態様では、ホスト細胞は、Escherichia coli、Bacillus、Streptomyces、Trichoderma、Aspergillus、Saccharomyces、Pichia、Thermus又はYarrowiaの群から選択される。
【0077】
本発明の核酸、発現カセット又は発現ベクターを、当業者に公知の任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、接合、形質導入、コンピテント細胞トランスフォーメーション、プロトプラストトランスフォーメーション、プロトプラスト融合、バイオリスティック「遺伝子銃」トランスフォーメーション、PEG媒介トランスフォーメーション、脂質補助トランスフォーメーション又はトランスフェクション、化学的媒介トランスフェクション、酢酸リチウム媒介トランスフォーメーション、リポソーム媒介トランスフォーメーションにより、ホスト細胞内に導入することができる。
【0078】
場合により、本発明の核酸、カセット又はベクターの1つ以上のコピーを、ホスト細胞内に挿入して、変異体の産生を増加させることができる。
【0079】
特定の実施態様では、ホスト細胞は、リコンビナント微生物である。実際に、本発明により、ポリエステル含有材料を分解する能力が改善された微生物の操作が可能となる。例えば、本発明の配列は、菌株能力を改善し及び/又は増加させるために、ポリエステルを分解可能であると既に知られている真菌又は細菌の野生型菌株を補完するのに使用することができる。
【0080】
プロテアーゼ変異体の生産
本発明の別の目的は、プロテアーゼをコードする核酸を発現させることと、場合により、プロテアーゼを回収することとを含む、本発明のプロテアーゼ変異体の製造方法を提供することである。
【0081】
特に、本発明は、(a)本発明の核酸、カセット又はベクターをin vitro発現系と接触させることと、(b)産生されたプロテアーゼを回収することとを含む、in vitroで本発明のプロテアーゼを製造する方法に関する。in vitro発現系は、当業者に周知であり、市販されている。
【0082】
好ましくは、この製造方法は、
(a)本発明のプロテアーゼをコードする核酸を含むホスト細胞を、核酸を発現させるのに適した条件下で培養することと、場合により、
(b)前記プロテアーゼを細胞培養物から回収することとを含む。
【0083】
有利には、ホスト細胞は、リコンビナントBacillus、リコンビナントE. coli、リコンビナントAspergillus、リコンビナントTrichoderma、リコンビナントStreptomyces、リコンビナントSaccharomyces、リコンビナントPichia、リコンビナントThermus又はリコンビナントYarrowiaである。好ましくは、ホスト細胞は、リコンビナントBacillusである。
【0084】
ホスト細胞を、当技術分野において公知の方法を使用して、ポリペプチドの産生に適した栄養培地中で培養する。例えば、細胞を、振とうフラスコ培養又は小規模もしくは大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ又は固体状発酵を含む)により、適切な培地中において酵素を発現させ及び/又は単離することが可能な条件下で行われる実験室又は工業発酵槽において培養することができる。培養を、商業的供給元からもしくは公開された組成物(例えば、the American Type Culture Collectionのカタログ)に従って調製された適切な栄養培地又は細胞増殖に適した任意の他の培養培地中で行う。
【0085】
プロテアーゼが栄養培地中に分泌された場合、プロテアーゼを、培養上清から直接回収することができる。逆に、プロテアーゼを、細胞ライゼートから又は透過処理後に回収することができる。プロテアーゼは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して回収することができる。例えば、プロテアーゼを、収集、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含む(がこれらに限定されない)従来の手法により栄養培地から回収することができる。場合により、プロテアーゼを、実質的に純粋なポリペプチドを得るために、ヒートショック(thermal chock)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動手法(例えば、調製用等電点電気泳動)、示差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は抽出を含む(がこれらに限定されない)当技術分野において公知の各種の手法により部分的又は全体的に精製することができる。
【0086】
プロテアーゼは、ポリエステル含有材料、例えば、ポリエステルを含有するプラスチック製品の分解及び/又はリサイクルに関与する酵素反応を触媒するために、単独で又は更なる酵素と組み合わせてのいずれかで、精製された形態そのままで使用することができる。プロテアーゼは、可溶性形態又は固相上であることができる。特に、プロテアーゼを、細胞膜もしくは脂質小胞又は合成支持体、例えば、ガラス、プラスチック、ポリマー、フィルター、膜、例えば、ビーズ、カラム、プレート等の形態に結合させることができる。
【0087】
組成物
本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ又はホスト細胞を含む組成物を提供することである。本発明の文脈において、「組成物」という用語は、本発明のプロテアーゼを含む任意の種類の組成物を包含する。特定の実施態様では、プロテアーゼは、単離された形態又は少なくとも部分的に精製された形態にある。
【0088】
組成物は、液状又は乾燥状、例えば、粉末の形態にあることができる。一部の実施態様では、組成物は、凍結乾燥物である。例えば、組成物は、プロテアーゼ及び/もしくは本発明のプロテアーゼをコードするホスト細胞又は前記プロテアーゼを含有するその抽出物と、場合により、賦形剤及び/又は試薬等を含むことができる。適切な賦形剤は、生化学において一般的に使用されるバッファー、pHを調節するための薬剤、保存剤、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウム、保存料、保護剤又は安定化剤、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、塩、糖、例えば、ソルビトール、トレハロース又はラクトース、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリエテングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、二価イオン、例えば、カルシウム、金属イオン封鎖剤、例えば、EDTA、還元剤、アミノ酸、担体、例えば、溶媒又は水溶液等を包含する。本発明の組成物は、プロテアーゼを1つ又は幾つかの賦形剤と混合することにより得ることができる。
【0089】
本発明の組成物は、0.1%~99.9%、好ましくは、0.1重量%~50重量%、より好ましくは、0.1重量%~30重量%、更により好ましくは、0.1重量%~5重量% 本発明のプロテアーゼと、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは、50重量%~99.9重量%、より好ましくは、70重量%~99.9重量%、更により好ましくは、95重量%~99.9重量% 賦形剤とを含むことができる。好ましい組成物は、0.1~5重量% 本発明のプロテアーゼを含む。
【0090】
特定の実施態様では、組成物は、酵素活性を示す更なるポリペプチドを更に含むことができる。当業者であれば、本発明のプロテアーゼの量を、例えば、分解するポリエステル含有材料の性質及び/又は組成物に含まれる更なる酵素/ポリペプチドに応じて、容易に適合させるであろう。
【0091】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼは、1つ又は幾つかの賦形剤、特に、ポリペプチドを安定化し又は分解から保護することができる賦形剤と共に、水性媒体中において可溶化される。例えば、本発明のプロテアーゼは、実際には、更なる成分、例えば、グリセロール、ソルビトール、デキストリン、デンプン、グリコール、例えば、プロパンジオール、塩等を含む水中において可溶化することができる。ついで、得られた混合物を乾燥させて、粉末を得ることができる。このような混合物を乾燥させるための方法は、当業者に周知であり、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥、超臨界乾燥、ダウンドラフト蒸発、薄層蒸発、遠心蒸発、コンベヤー乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0092】
更なる特定の実施態様では、本発明の組成物は、本発明のプロテアーゼを発現する少なくとも1つのホスト細胞又はその抽出物を含む。「細胞の抽出物」は、細胞から得られた任意の画分、例えば、細胞上清、細胞デブリ、細胞壁、DNA抽出物、酵素もしくは酵素調製物又は化学的、物理的及び/もしくは酵素的処理により細胞から得られた任意の調製物を指定し、本質的に生きている細胞を含まない。好ましい抽出物は、酵素活性抽出物である。本発明の組成物は、本発明の1つ又は幾つかのホスト細胞又は本発明のプロテアーゼを含有するその抽出物と、場合により、1つ又は幾つかの更なる細胞とを含むことができる。
【0093】
特定の実施態様では、組成物は、本発明のプロテアーゼを発現し及び/又は分泌するリコンビナント微生物の凍結乾燥培養培地からなり又は同培地を含む。特定の実施態様では、粉末は、本発明のプロテアーゼと、安定化/可溶化量のグリセロール、ソルビトール又はデキストリン、例えば、マルトデキストリン及び/もしくはシクロデキストリン、デンプン、アラビアゴム、グリコール、例えば、プロパンジオール及び/又は塩とを含む。
【0094】
プロテアーゼの使用
また、本発明者らは、驚くべきことに、親タンパク質もポリエステル分解活性、特に、ポリ乳酸分解活性有することも発見した。
【0095】
このため、本発明の別の目的は、ポリエステル含有材料、例えば、ポリエステルから製造され又はポリエステルを含有するプラスチック製品を好気性もしくは嫌気性条件下で分解し及び/又はこれらを再利用し並びに/又はポリエステルを含有する生分解性プラスチック製品を製造するための、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するポリペプチドを使用する方法を提供することである。このようなプロテアーゼは、PLAを含有する生分解性プラスチック製品を製造し及び/又はPLAを含むプラスチック製品を分解するのに特に有用である。
【0096】
本発明の更なる目的は、ポリエステル含有材料、例えば、ポリエステルから製造され又はポリエステルを含有するプラスチック製品を好気性もしくは嫌気性条件下で分解し及び/又はこれらを再利用し並びに/又はポリエステルを含有する生分解性プラスチック製品を製造するための、本発明のプロテアーゼ変異体を使用する方法を提供することである。本発明のプロテアーゼの変異体は、PLAを含有する生分解性プラスチック製品を製造し及び/又はPLAを含むプラスチック製品を分解するのに特に有用である。
【0097】
したがって、本発明の目的は、本発明のプロテアーゼ又はこのようなプロテアーゼを含有する対応するホスト細胞もしくはその抽出物又は組成物又は、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル含有材料、例えば、PLA含有材料の酵素分解のためのポリエステル分解活性を有するプロテアーゼを使用することである。
【0098】
本発明の別の目的は、少なくとも1種のポリエステルを含有するプラスチック製品を分解するための方法であって、プラスチック製品を、本発明のプロテアーゼもしくはホスト細胞もしくは組成物又は、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有することにより、プラスチック製品を分解するプロテアーゼと接触させる、方法を提供することである。有利には、ポリエステル含有材料のポリエステルは、モノマー及び/又はオリゴマーまで脱重合される。分解方法の実施態様では、少なくとも1種のポリエステルが分解されて、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを生成し、これらを、有利には、使用するために回収する。分解方法の好ましい実施態様では、少なくともPLAが分解されて、乳酸(LA)の再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを生成し、これらを、有利には、例えば、PLAの新たなポリマーを製造するのに使用するために回収する。
【0099】
実施態様では、ポリエステル含有材料のポリエステルは、完全に分解される。
【0100】
特定の実施態様では、プラスチック製品は、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)及びこれらの材料のブレンド/混合物、好ましくは、ポリ乳酸から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む。
【0101】
特定の実施態様では、PLAを含有するプラスチック製品を、本発明のプロテアーゼ又は、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼと接触させておき、PLAを、乳酸のモノマー及び/又はオリゴマーに分解させる。好ましい実施態様では、乳酸のモノマー及び/又はオリゴマーを、例えば、再利用し、PLAを重合し又はメタン化(methanisation)するために回収する。
【0102】
また、本発明は、ポリエステル含有材料からモノマー及び/又はオリゴマーを製造する方法であって、ポリエステル含有材料を本発明のプロテアーゼもしくは対応するホスト細胞もしくはその抽出物もしくは組成物又は、配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼに曝すことと、場合により、モノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法に関する。本発明の方法は、PLAを含有するプラスチック製品から乳酸等のモノマーを製造するのに特に有用である。
【0103】
ポリエステル含有材料を分解するのに必要な時間は、ポリエステル含有材料自体(すなわち、プラスチック製品の性質及び起源、その組成、形状等)、使用されるプロテアーゼの種類及び量並びに種々のプロセスパラメータ(すなわち、温度、pH、更なる薬剤等)に応じて変化する場合がある。当業者であれば、プロセスパラメータをポリエステル含有材料に容易に適合させることができる。
【0104】
有利には、分解プロセスを、20℃~90℃、好ましくは、40℃~80℃、より好ましくは、60℃~80℃、より好ましくは、70℃~80℃、更により好ましくは、75℃に含まれる温度で行う。より一般的には、温度を、プロテアーゼが不活性化され及び/又はリコンビナント微生物がもはやプロテアーゼを合成しなくなる温度に相当する不活性化温度未満に維持する。好ましくは、温度を、ポリエステル含有材料中のポリエステルのガラス転移点(Tg)未満に維持する。この実施態様では、分解プロセスを、20℃~80℃、好ましくは、30℃~70℃、より好ましくは、40℃~60℃、より好ましくは、40℃~50℃、更により好ましくは、45℃に含まれる温度で行う。とりわけ、この方法を、プロテアーゼを数回使用し及び/又は再利用することができる温度で、連続的な方法で行う。
【0105】
有利には、分解プロセスを、pH5~11、好ましくは、pH6~10、より好ましくは、pH6.5~9、更により好ましくは、pH7~8で行う。
【0106】
特定の実施態様では、ポリエステル含有材料を、プロテアーゼと接触させる前に、ポリエステルと酵素との間の接触表面を増大させるように、その構造を物理的に変化させるために、前処理することができる。
【0107】
場合により、脱重合により生じるモノマー及び/又はオリゴマーを、逐次的に又は連続的に回収することができる。出発ポリエステル含有材料に応じて、単一の種類のモノマー及び/もしくはオリゴマー又は幾つかの異なる種類のモノマー及び/もしくはオリゴマーを回収することができる。
【0108】
回収されたモノマー及び/又はオリゴマーを、あらゆる適切な精製法を使用して更に精製し、再重合可能な形態に調整することができる。精製法の例は、ストリッピングプロセス、水溶液による分離、水蒸気選択的凝縮、ろ過及びバイオプロセス後の培地の濃縮、分離、蒸留、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈殿、結晶化、濃縮並びに酸添加脱水及び沈殿、ナノろ過、酸触媒処理、半連続モード蒸留又は連続モード蒸留、溶媒抽出、蒸発濃縮、蒸発結晶化、液/液抽出、水素化、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィ、単純な真空蒸留並びに微小ろ過を組み合わせ又は単独で含む。
【0109】
ついで、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを使用して、例えば、ポリエステルを合成することができる。有利には、同じ性質のポリエステルが再重合される。ただし、例えば、新たなコポリマーを合成するために、回収されたモノマー及び/又はオリゴマーを、他のモノマー及び/又はオリゴマーと混合することが可能である。代替的に、回収されたモノマーを、目的の新たな化合物を製造するために、化学中間体として使用することができる。
【0110】
本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は前記プロテアーゼを発現し及び/もしくは分泌するリコンビナント微生物並びに/又はこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物並びに/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼが含まれる、ポリエステル含有材料を提供することである。特定の実施態様では、このようなポリエステル含有材料は、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物及び/又はプラスチック製品であることができる。本発明の文脈において、「マスターバッチ組成物」は、所望の特性を付与するために、プラスチックコンパウンド又は製品に前記成分を導入するのに使用することができる選択された成分(例えば、活性剤、添加剤等)の濃縮混合物を指す。マスターバッチ組成物は、固体又は液体であることができる。好ましくは、本発明のマスターバッチ組成物は、少なくとも10重量% 活性成分、より好ましくは、本発明のプロテアーゼを含有する。
【0111】
このため、本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は前記プロテアーゼを発現し及び/もしくは分泌するリコンビナント微生物又はこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物並びに/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼと、少なくとも1種のポリエステルとを含有する、プラスチックコンパウンドを提供することである。特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、好ましくは、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)又はポリ(DL-乳酸)(PDLLA)である。特定の実施態様では、プラスチックコンパウンドは、好ましくは、ポリエステル、例えば、PBAT、PCL、PET;ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又は天然ポリマー、例えば、デンプン、セルロースもしくは小麦粉;及びそれらのブレンド/混合物から選択される更なるポリマーを含有することができる。とりわけ、プラスチックコンパウンドは、PBAT、小麦粉又はデンプンから選択される更なるポリマーを含有することができる。別の特定の実施態様では、ポリエステルは、好ましくは、ポリカプロラクトン(PCL)である。
【0112】
このため、本発明の更なる目的は、本発明のプロテアーゼ並びに/又は前記プロテアーゼを発現し及び/もしくは分泌するリコンビナント微生物又はこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物並びに/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼと、少なくとも1種のポリエステルとを含有する、マスターバッチ組成物を提供することである。特定の実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、好ましくは、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)又はポリ(DL-乳酸)(PDLLA)である。別の特定の実施態様では、ポリエステルは、好ましくは、ポリカプロラクトン(PCL)である。
【0113】
特に、本発明は、このようなポリエステル含有材料(すなわち、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)を製造するための方法であって、ポリエステルと、ポリエステルが部分的に又は全体的に溶融状態にあるために、プロテアーゼ/微生物がポリエステル含有材料の構造そのものに組み込まれる温度で前記ポリエステルを分解する、本発明のプロテアーゼ並びに/又はリコンビナント微生物又はこのようなプロテアーゼを含有するその抽出物並びに/又は本発明の組成物並びに/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼとを混合する工程を含む、方法に関する。特定の実施態様では、この方法は、押出プロセスである。
【0114】
例えば、本発明のプロテアーゼ及び/もしくは組成物並びに/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼと、ポリエステルとを、ポリエステルのガラス転移点と融点との間の温度で混合することができる。代替的に、本発明のプロテアーゼ/組成物及び/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼと、ポリエステルとを、前記ポリエステルの融点に対応する温度又はそれ以上の温度で混合することができる。特定の実施態様では、該プロテアーゼ/組成物及び/又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ポリエステル分解活性を有するプロテアーゼと、ポリエステルとを、40℃~250℃、好ましくは、50℃~180℃の温度で混合する。代替的に、該ポリペプチド/組成物とポリエステルとを、40℃超、好ましくは、50℃超、更により好ましくは、60℃超の温度で混合する。
【0115】
好ましい実施態様では、ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)から選択され、該プロテアーゼ/組成物とPLAとを、60℃~250℃、好ましくは、100℃~200℃、より好ましくは、130℃~180℃、更により好ましくは、140℃~160℃の温度で混合する。代替的に、該ポリペプチド/組成物とPLAとを、80℃超、好ましくは、100℃超、更により好ましくは、130℃超かつ180℃未満の温度で混合する。
【0116】
別の好ましい実施態様では、ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)から選択され、該プロテアーゼ/組成物とPCLとを、40℃~100℃、好ましくは、50℃~80℃の温度で混合する。代替的に、該ポリペプチド/組成物とPCLとを、40℃超、好ましくは、50℃超、更により好ましくは、55℃超かつ80℃未満の温度で混合する。
【0117】
より好ましくは、混合工程を、押出、二軸押出、一軸押出、射出成形、鋳造、熱成形、回転成形、圧縮、カレンダー加工、アイロン掛け、コーティング、層化、膨張、引抜成形、押出ブロー成形、押出-膨潤、圧縮-造粒、水中油中水型二重エマルジョン蒸発、3D印刷又は当業者に公知の任意の技術を使用して行う。
【0118】
得られたプラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品を、コンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品の塊に埋め込まれた本発明のプロテアーゼ/微生物又は組成物と一体化させる。
【0119】
有利には、このようなプラスチックコンパウンド又はマスターバッチ組成物は、このように本発明のポリペプチドを含むであろうポリエステル含有材料及び/又はプラスチック物品の製造に使用することができる。
【0120】
特定の実施態様では、得られたプラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック物品は、当業者に公知の関連する標準及び/又はラベルの少なくとも1つ、例えば、標準EN 13432、標準ASTM D6400、OK Biodegradation Soil(Label Vincotte)、OK Biodegradation Water(Label Vincotte)、OK Compost(Label Vincotte)、OK Home Compost(Label Vincotte)に準拠する、生分解性プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック物品である。
【0121】
有利には、ポリエステル含有材料(すなわち、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスを、10℃~50℃、好ましくは、15℃~40℃、より好ましくは、20℃~30℃、より好ましくは、28℃+/-2℃に含まれる温度で行う。
【0122】
代替的に、ポリエステル含有材料(すなわち、プラスチックコンパウンド、マスターバッチ組成物又はプラスチック製品)の分解プロセスを、50℃~60℃、より好ましくは、55℃+/-2℃に含まれる温度で行う。
【0123】
古典的には、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを、洗剤、食品、動物飼料及び医薬用途において使用することができる。
【0124】
とりわけ、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを、洗剤組成物の成分として使用することができる。
【0125】
洗剤組成物は、手洗い又は機械洗濯洗剤組成物、例えば、汚れた布地の前処理に適した洗濯添加剤組成物及びすすぎに添加される布地柔軟剤組成物、一般家庭用硬質表面洗浄作業に使用するための洗剤組成物、手洗い又は機械食器洗い作業のための洗剤組成物を含むが、これらに限定されない。
【0126】
特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを、洗剤添加剤として使用することができる。このため、本発明は、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含む洗剤組成物を提供する。
【0127】
また、本発明は、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを動物飼料中で使用するための方法並びに本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含む飼料組成物及び飼料添加物にも向けられる。「飼料」及び「飼料組成物」という用語は、動物による摂取に適した又は同摂取が意図された任意の化合物、調製物、混合物又は組成物を指す。
【0128】
別の特定の実施態様では、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを使用して、タンパク質を加水分解し、ペプチドを含む加水分解物を生成する。このような加水分解物は、飼料組成物又は飼料添加剤として使用することができる。
【0129】
また、本発明は、ポリエステル含有材料の表面加水分解又は表面官能化の方法であって、ポリエステル含有材料を、本発明のプロテアーゼ又は配列番号:1で示される全長アミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むプロテアーゼ又は対応するリコンビナント細胞もしくはその抽出物又は組成物に曝すことを含む、方法に関する。本発明の方法は、ポリエステル材料の親水性又は吸水性を増大させるのに特に有用である。このような親水性の増大は、織物の製造、電子工学及び生物医学的用途に特に関心を有する場合がある。
【0130】
実施例
実施例1:プロテアーゼの構築、発現及び精製
- 構築
Thermus sp.(Rt41A株)由来の親プロテアーゼをコードする遺伝子をプラスミドpET26b(EMD Millipore, Billerica, Massachusetts, USA)にクローニングした。配列番号:1の親プロテアーゼ及びその天然プロペプチド(配列番号:42)をコードする遺伝子(配列番号:2)をこの遺伝子の上流にPelBシグナルペプチド(配列番号:43:MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA)をコードし、この遺伝子の下流に6×ヒスチジンタグ(配列番号:44:LEHHHHHH)をコードする配列とインフレームでプラスミドpET26bに挿入した。E. coli One Shot(登録商標)BL21 DE3(Life technologies, Carlsbad, California, USA)を構築したプラスミドによりトランスフォーメーションした。得られた株は、タンパク質のN末端にPelBシグナル配列及びC末端に6×ヒスチジンタグを有する野生型プロテアーゼを発現する。QuikChange II部位特異的突然変異誘発キットを供給元の推奨に従って使用して、変異体を構築した(Santa Clara, California, USA)。表1に、部位特異的突然変異誘発に使用したフォワード及びリバースプライマーを与える。
【0131】
表1.本発明のプロテアーゼ変異体の産生のための親プロテアーゼをコードする遺伝子の部位特異的突然変異誘発に使用したフォワード及びリバースプライマー
【表1】

【0132】
プロテアーゼの発現及び精製
野生型プロテアーゼ及びその変異体を発現する株のリコンビナント発現をZYM5052自己誘導性培地 50mL中において、23℃で24時間の間に実現した(Studier et al., 2005- Prot. Exp. Pur. 41, 207-234)。培養物をAvanti J-26 XP遠心分離機(Beckman Coulter, Brea, USA)での遠心分離(8000rpm、10℃で20分)により停止させた。細胞を-80℃で少なくとも2.5時間の間凍結させ、ついで、Tris HClバッファー(Tris 0.1M、pH7.5) 10mLに懸濁させた。Lysonase(商標)Bioprocessing Reagent(EMD Millipore)を使用して、供給元の推奨に従って、細胞を溶解した。ついで、細胞懸濁液を11000rpm及び10℃で30分の間遠心分離した。可溶性画分を回収し、Talon(登録商標)Metal Affinity樹脂(Clontech, CA, USA)を使用して、コバルト親和性クロマトグラフィーに供した。タンパク質を20mM Tris-HCl、300mM NaCl、pH8.0中の100mM イミダゾールにより溶出した。イミダゾールを45℃においてpH調節されたTris HClバッファー(Tris 0.1M、5mM CaCl、pH7.5)に対する透析工程後に、精製抽出物から除去した。精製タンパク質を、Bio-Rad Bradfordタンパク質アッセイを使用し、製造メーカーの説明書(Lifescience Bio-Rad、France)に従って定量し、+4℃で保存した。精製の質をTCA沈殿後のSDS-PAGE上で評価した。予想されるタンパク質サイズは、約29kDaである。
【0133】
実施例2-プロテアーゼの比分解活性の評価
野生型プロテアーゼ及び変異体の比分解活性をPLA加水分解の間に決定した。500μmのPLA粉末(PLLA 001-Natureplast)を50mg秤量し、透析チューブに導入した。ついで、酵素サンプルである、固定濃度の酵素(正確な比活性を測定するために、66.7mg/L、30mg/L、10mg/L又は5mg/L)を含有するプロテアーゼ調製物 1.5mLを透析チューブに加え、その後、それを閉じ、この後者を5mM CaClを含有する0.1M Tris-HClバッファーpH7.5(45℃に調節) 25mLを含有するガラスボトルに導入した。野生型プロテアーゼ(配列番号:1)を対照として使用した。
【0134】
各サンプルをMax Q 4450インキュベーター(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)中において、45℃及び150rpmでインキュベーションすることにより、脱重合を開始させた。
【0135】
酵素1g/1時間あたりに生成した乳酸及び乳酸二量体の脱重合反応の初速度(g)を最初の24時間の間に異なる時間で行ったサンプリングにより決定し、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した。必要に応じて、サンプルを0.1M Tris-HClバッファー pH7.5で希釈した。0.45μmシリンジフィルターでろ過した後、サンプルをUHPLCにロードして、乳酸及び乳酸二量体の放出をモニタリングした。使用したクロマトグラフィーシステムをポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン及び210nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)とした。使用したカラムを、Aminex HPX-87H(300mm×7.8mm)とし、プレカラム(Supelco, Bellefonte, USA)を備えた。乳酸及び乳酸二量体を、移動相である5mM HSOを使用して、流速0.5mL.分-1で分離した。インジェクションをサンプル 20μLとした。乳酸及び乳酸二量体を市販の乳酸(Sigma-Aldrich L1750-10G)から作成した検量線に従って測定し、サンプルと同じ条件で乳酸二量体を社内で合成した。PLA加水分解の比分解活性(酵素1gあたり1時間あたりの等量乳酸(g)(すなわち、乳酸及び乳酸二量体(g)))を加水分解曲線の直線部分で決定した。
【0136】
異なる実験の結果を表2に示す。
【0137】
表2:野生型プロテアーゼ(配列番号:1)及び変異体の比分解活性
【表2】
【0138】
実施例3-本発明のプロテアーゼの比分解活性の評価
本発明のプロテアーゼの比分解活性を測定し、配列番号:1の野生型プロテアーゼの比分解活性と比較した。
【0139】
比活性を評価するための複数の方法論を使用した。
(1)pNA加水分解に基づく比分解活性
(2)固体状態でのポリエステル(PLA)の分解に基づく比分解活性
(3)PLA含有エマルジョンの濁度の低下に基づく比分解活性
(4)反応器中のPLA加水分解に基づく比分解活性
【0140】
3.1 pNA加水分解
溶液中のタンパク質 20μLをTris HClバッファー、0.1M pH7.5(30℃で調節)中の5mM N-スクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド(pNA) 180μLに合わせた。酵素反応を反応中のpNA放出を定量するために、30℃において攪拌下で少なくとも15分間行い、405nmでの吸光度をマイクロプレート分光光度計(Versamax, Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)により取得した。比活性(1分あたり酵素1gあたりに405nmでの吸光度(A405nm)で表した初速度)を加水分解曲線の直線部分で測定し、野生型プロテアーゼ又は変異体のプロテアーゼ活性をアッセイするのに使用した。酵素を含有しない0.1M Tris HClバッファー(pH7.5) 20μLの溶液をネガティブ対照反応として使用した。
【0141】
変異体V18の比活性を21.5A405nm.分-1.mg-1で評価した。これにより、プロテアーゼ変異体V18はpNAを分解可能であり、このため、そのプロテアーゼ活性を保存することを示されている。
【0142】
3.2 固体状態でのポリエステル分解
酵素調製物 20μLを、PLAを含有するアガロースプレートに作製したウェルに堆積させた。アガロースプレートの調製は、ジクロロメタン(DCM) 10mL中の450mg PLAを可溶化し、ボルテックスでホモジナイズすることにより実現した。0.1M Tris HClバッファー(pH7~9) 90mLを加え、続けて、超音波処理工程(Fisher Scientific(商標)モデル705 Sonic Dismembrator、最大出力の30%)を行った後、DCMを50℃で蒸発させた。得られた溶液をろ過して、未溶解残留物を除去した。最後に、0.5% PLAエマルジョン 12mLを1M Tris HClバッファー(pH7.5)(45℃で調整) 3mL及び2% アガロース 15mLと混合し、各omnitrayを調製した(4℃で保存)。
【0143】
野生型プロテアーゼ及び変異体によるポリエステル分解により形成されたハローの直径を測定し、45℃で4~24時間後に比較した。
【0144】
3.3 PLAを含むエマルジョンの濁度の低下に基づく比活性
PLA分解酵素活性を100mM Tris-HClバッファー(pH7.5)中に最終濃度0.1%(w/v)で乳化させたPLAにより、波長630nmでの濁度の低下に基づいて、45℃及びpH7.5(45℃で調節)で30分間アッセイした(Sonic Dismembratorを使用、最大出力の30%)。PLA分解活性の1単位を、記載されたアッセイ条件下での1分あたりの光学密度の1単位減少として定義した。
【0145】
反応器中でのPLA加水分解
Minibio 500バイオリアクター(Applikon Biotechnology B.V., Delft, The Netherlands)をPLA 5g及び2.5~10mg プロテアーゼを含有する100mM Tris-HClバッファーpH7.5(45℃で調節) 100mLで開始した。撹拌を、マリンインペラーを使用して250rpmに設定した。バイオリアクターを外部水浴に浸漬することにより45℃で温度調節した。pHを3M KOHの添加により、7.5に調節した。種々のパラメーター(pH、温度、撹拌、塩基の添加)をBioXpertソフトウェアV2.95によりモニタリングした。反応媒体 500μLを定期的にサンプリングした。
【0146】
LA及びLA二量体の量を実施例2に記載されたように、HPLCにより決定した。
【0147】
比活性は分解の比速度に相当し、1時間あたり及び酵素1mgあたりの放出されたLA及びLA二量体の総量(mg)で計算する。
【0148】
実施例4-プロテアーゼ変異体の熱安定性の評価
異なる方法論を使用して、熱安定性を推定した。
(1)温度、時間及びバッファーの所定の条件下でタンパク質をインキュベーションした後の残存ポリエステルの脱重合活性
(2)溶液中のタンパク質の円二色性
【0149】
4.1 残存ポリエステル分解活性
本発明の野生型プロテアーゼ及び変異体の熱安定性をヒートショック後に回収された残存比分解活性(実施例2で記載されたPLA加水分解)の測定により決定した。ヒートショックを下記のように行った。0.1M Tris-HClバッファーpH7.5(45℃で調節)、20mM CaCl中に固定酵素濃度(0.2又は0.1g/L)を含有する酵素サンプルを所定の時間の間(5、30、45、60又は240分)、固定温度(70℃、75℃、85℃又は98℃)に調節された水浴に浸した。ヒートショック後に、サンプルを直ちに氷上に置いた。酵素の希釈工程(0.03g/L又は0.01g/Lまで)後、ヒートショックサンプル及び非ヒートショックサンプルの後に回収された比分解活性(PLA加水分解)を実施例2に詳述されたように測定した(バッファー:Tris-HCl 0.1M pH7.5;CaCl濃度:5mM)。残存分解活性の結果を非ヒートショックサンプルに対応する参照条件の比活性の割合として表わす。
【0150】
a.野生型プロテアーゼ(配列番号:1)及び変異体V14(N102F+S106T+N107T+D160E+Y167R)の熱安定性
ヒートショック条件及びヒートショック後の残存分解活性の結果を表3に示す。これらの実験では、比分解活性を酵素濃度0.03g/Lで評価した。
【0151】
表3.ヒートショック後の本発明の野生型プロテアーゼ及び変異体V14の残存分解活性
【表3】
【0152】
表3に、プロテアーゼ変異体V14が、高温での処理後に分解活性を保持していることを示す。特に、本発明のプロテアーゼ変異体は、70℃超の温度でのヒートショック後にポリエステル分解活性を保持している。
【0153】
b.プロテアーゼ変異体V14(N102F+S106T+N107T+D160E+Y167R)、V16(N102F+S104L+S106T+N107I)及びV15(N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167R)の熱安定性
ヒートショック条件及びヒートショック後の残存分解活性の結果を以下の表4に示す。これらの実験では、比活性を酵素濃度0.01g/Lで評価した。
【0154】
表4.ヒートショック後の本発明のプロテアーゼ変異体の残存分解活性
【表4】
【0155】
表4に、本発明のプロテアーゼ変異体が、高温での処理後にポリエステル分解活性を保持していることを示す。特に、本発明のプロテアーゼ変異体は、70℃で60分後に、約100%の残存活性を保持している。
【0156】
4.2 円二色性
円二色性(CD)をJ-815 CD分光計(JASCO)において行い、本発明の配列番号:1のプロテアーゼ及びプロテアーゼ変異体の融解温度(Tm)を決定し、比較した。Tmは、50% タンパク質が変性する温度に相当する。
【0157】
タンパク質サンプルを、100mM Tris-HCl pH7.5(45℃で調節)を含有するバッファー中において0.2mg/mLで調製した。実験を1mm光路石英キュベット(Starna Scientific Ltd, UK)中において行い、まず、遠UV(195~260)CDスペクトルを測定して、タンパク質の正しいフォールディングに対応するCDの2つの最大強度を決定した。
【0158】
タンパク質の熱変性曲線を上温させながら、220nmでのCD値の変化をモニタリングすることにより得た。昇温速度を1.5℃.分-1とした。転移の中間点の温度Tを、Sigmaplotバージョン11.0ソフトウェアを使用して最小二乗分析に基づいて、得られたCD値対温度データの曲線当て嵌めにより計算した。
【0159】
得られたTは、所定のタンパク質の熱安定性を反映している。Tが高いほど、変異体は、高温でより安定である。配列番号:1の野生型プロテアーゼのTを82.4℃+/-0.2℃と評価した。
【0160】
本発明のプロテアーゼ変異体の比較した熱安定性をTm値で表わし、以下の表5に示す。100%と考えられる野生型プロテアーゼのTmと比較したTmの損失又は獲得を括弧内に示す。
【0161】
表5.本発明のプロテアーゼ変異体のTm
【表5】
【0162】
結果から、これらの変異体のTmが野生型プロテアーゼのTmの95%超に相当するため、プロテアーゼ変異体V15(N102F+S104L+S106T+N107I+D160E+Y167R)、V17(N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+D160E+Y167R)及びV18(N102F+S104L+S106T+N107I+Y167R)のTmがわずかに損なわれることが示される。本発明の変異体V26(N102F+S104L+S106T+N107I+G132I+Y167R)のTmは、野生型プロテアーゼと比較して改善され、野生型プロテアーゼのTmの104%に相当する。
【0163】
実施例5-本発明のプロテアーゼを含む生分解性ポリエステル材料
- 押出プロセスによるプラスチックコンパウンドの調製
本発明のプロテアーゼ変異体を含むプラスチックコンパウンド配合物を調製し、市販の酵素(Savinase(登録商標))を含むプラスチックコンパウンド配合物と比較した。両配合物を表6に列記する。%は、配合物の総重量に基づいて重量で与えられる。
【0164】
表6:プラスチックコンパウンド配合物
【表6】
【0165】
配合物Bは、本発明の変異体V16(N102F+S104L+S106T+N107I)を含有するプラスチックコンパウンドに相当する。
【0166】
配合物Aは、市販の酵素を含有する対照に相当する。本実験では、市販の酵素は、NovozymeからのSavinase(登録商標)16L(固体状)であり、PLAを分解することが知られている(Degradation of Polylactide by commercial proteases; Y.Oda et al. 2000)。
【0167】
結果を比較するために、各酵素配合物は、同量の純粋な酵素(酵素配合物の総重量に基づいて2.1重量%)を含有する。
【0168】
配合物を、以下を使用して調製した。
- 液体窒素に浸漬し、Ultra Centrifugal Mill ZM 200システムを使用して微粉化したPLAペレットから得られた、粉末状(<1mm)のPLA(ポリ乳酸ポリマー、NatureWorksからのPLA 4043D)、
- 3.5kDa膜での限外ろ過、透析ろ過、アラビアゴム(Nexira)の添加及び凍結乾燥による乾燥により、市販の液体形態から得られた、固体状のSavinase(登録商標)16L、
- 発酵プロセス、続けて、コバルトカラムでの精製、透析ろ過、アラビアゴムの添加及び凍結乾燥による乾燥から得られた、固体状の変異体V16
【0169】
これらの配合物に基づいて、生分解性ポリ乳酸系プラスチック組成物を押出プロセスにより調製した。コンパウンディングマシン又は同時回転二軸押出機を使用した(「Haake MiniLab II ThermoFisher」)。このコンパウンディングマシンは、手動供給要素と、2つの共回転軸と、二軸のヘッドとを連続的に備えた。
【0170】
全ての粉末をコンパウンディングマシンに導入する前に、手作業で振とうすることにより共に混合した。ついで、混合物を供給ゾーンに導入し、手作業で圧力を加えてスクリュー押出機に押し込んだ。混合物を、80RPMの二軸の回転速度を使用して、同時回転スクリューを通過させた。押出温度を165℃に固定した。ついで、PLAとプロテアーゼとの混合物を、直径0.4mmの1つの孔を備えるスクリューヘッドに到達させ、ここで、この混合物を押して、ストリップ形状を形成した。ついで、この押出物を切断プライヤーにより切断して、顆粒状のプラスチック組成物、すなわち、プラスチックコンパウンドを得た。
【0171】
- プラスチック組成物の生分解性試験
上記得られたプラスチックコンパウンドの生分解性を評価した。
【0172】
100mg 各顆粒状サンプルA及びBを秤量し、透析チューブに導入した。0.1M Tris-HClバッファーpH8 3mLを透析チューブに加え、その後、それを閉じた。ついで、透析チューブを0.1M Tris-HClバッファーpH8 50mLを含有するプラスチックボトルに導入した。
【0173】
脱重合を、各サンプルを28℃又は45℃、150rpmで、Infors HT Multitron Proインキュベーションシェーカーにおいてインキュベーションすることにより開始した。バッファーの1mLアリコートを定期的にサンプリングし、0.22μmシリンジフィルターでろ過し、Aminex HPX-87Hカラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して、乳酸(LA)及び乳酸二量体(DP2)の放出をモニタリングした。使用したクロマトグラフィーシステムをポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン及び220nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)とした。溶出液を5mM HSOとした。インジェクションをサンプル 20μLとした。乳酸及び乳酸二量体を市販の乳酸(Sigma-Aldrich L1750-10G)から作成した検量線に従って測定し、サンプルと同じ条件で乳酸二量体を社内で合成した。
【0174】
プラスチック物品の加水分解を放出されたLA及びLA二量体に基づいて計算した。%分解を、プラスチック組成物中のPLAに最初に含まれるLAに対する、所定時間におけるLAのモル比+LA二量体に含まれるLAのモル比により計算した。28℃で10日間反応させた後又は45℃で24時間反応させた後の脱重合の結果を表7に示す。
【0175】
表7:28℃で10日間反応させた後及び45℃で24時間反応させた後の、Savinase(登録商標)16L又は本発明の変異体V16を含むプラスチックコンパウンドの脱重合
【表7】
【0176】
結果から、市販の酵素を含有するものと比較して、プロテアーゼ変異体V16を含有するプラスチック組成物のより高い分解が示される。これらの結果から、本発明の変異体のより高いPLA分解活性及び/又はより高い熱安定性が示される。
【配列表】
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