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特許7179025後発酵茶由来の新規なケンペロール系化合物を含む抗炎症組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】後発酵茶由来の新規なケンペロール系化合物を含む抗炎症組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7028 20060101AFI20221118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20221118BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221118BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221118BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61P29/00
A61K36/82
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019566320
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 KR2018006608
(87)【国際公開番号】W WO2018230909
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0073264
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ヨン ドク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン ギ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509636(JP,A)
【文献】特開2010-143893(JP,A)
【文献】特開平10-175874(JP,A)
【文献】Journal of Food and Drug Analysis,2015年,Vol.23,pp.660-670
【文献】Chem.Pharm.Bull.,2008年,Vol.56,No.6,pp.851-853
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 36/00-36/9068
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物を有効成分として含後発酵茶抽出物の分画物を含む抗炎症組成物であって、
前記後発酵茶抽出物の分画物は、緑茶をバチルス・サブチリス株で発酵させた後、発酵茶を熱水、C~Cの低級アルコール、及びこれらの混合溶媒から選ばれた一種以上の溶媒で抽出し、ケトンで分画して得た分画物である、
抗炎症組成物。
【請求項2】
前記低級アルコールはエタノールである、請求項1に記載の抗炎症組成物。
【請求項3】
前記ケトンはアセトンである、請求項1に記載の抗炎症組成物。
【請求項4】
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の含量は、前記組成物の総重量に対し、0.00001重量%~10重量%の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【請求項5】
前記組成物中の後発酵茶抽出物の分画物の含量は、前記組成物の総重量に対し、0.1重量%~90重量%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【請求項6】
前記後発酵茶抽出物の分画物は、ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物が、抽出物の総重量を基準に、0.00001重量%~20重量%の範囲で含まれたものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【請求項7】
前記組成物の投与によるケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の投与量は、0.00001mg/kg/日~100mg/kg/日の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【請求項8】
前記組成物は、PGE(Prostaglandin E)、IL-6(Interleukin 6)及びIL-8(Interleukin 8)からなる群より選ばれる一種以上の生成を抑制する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【請求項9】
前記組成物は、食品組成物、化粧料組成物、又は薬学組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗炎症組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、新規なケンペロール系化合物を含む抗炎症組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、細胞や組織がある原因によって損傷を受けた際にその反応を最小化して損傷を受けた部位を元の状態に回復させようとする一連の防御目的から現われる反応であって、神経及び血管、リンパ管、体液反応、細胞反応を引き起こし、結果的に痛症、むくみ、発赤、発熱などを引き起こして機能障害を誘発するものである。炎症を誘発する原因として、外傷、凍傷、火傷、放射能などによる物理的要因と酸(acid)などといった化学物質による化学的要因及び抗体反応による免疫学的要因などがあり、その他、血管やホルモン不均衡によっても発生する。外部刺激によって損傷された細胞が分泌した種々の化学媒介物質によって血管拡張が起こり、且つ透過性が高まるにつれて、抗体、補体、血漿(plasma)、食菌細胞が炎症部位に集まるようになる。このような現象が紅斑の原因になる。このような炎症は、紫外線や活性酸素、遊離ラジカルなどの酸化的ストレスなどが炎症性因子を活性化させて各種の疾病や肌の老化を引き起こす。炎症の特徴の一つは、プロスタグランジンを生成するシクロオキシゲナーゼ(COX)及びロイコトリエンを生成する5-リポキシゲナーゼ経路によって代謝されるアラキドン酸(arachidonic acid)の酸素添加反応の増加である。プロスタグランジン及びロイコトリエンは、炎症の媒介体である。したがって、シクロオキシゲナーゼ酵素は、シクロオキシゲナーゼ-1及びシクロオキシゲナーゼ-2の2種の形態がある。後者の形態、すなわちシクロオキシゲナーゼ-2は、炎症の進行に重要な役割をするとされている。このため、シクロオキシゲナーゼ-2酵素を抑制することが、非可逆的なシクロオキシゲナーゼ-1の抑制に係る副作用を伴うことなく炎症を軽減させることができる有効な方法であるといえる。
【0003】
緑茶は、葉状態の葉茶形態、又はより深い香臭を感じるために発酵状態の茶で飲用する。発酵緑茶は、緑茶葉に酸化処理を施したものを意味し、茶葉に存在する酸化酵素によって酸化させた発酵茶、茶葉に存在する酵素ではない他の微生物によって発酵させた後発酵茶を含む。発酵の程度に応じて、弱発酵茶、半発酵茶、完全発酵茶などに分けられる。例えば、発酵緑茶は、発酵の形態や度合に応じて、緑茶、ウーロン茶、紅茶、プーアル茶などといった多様な名称で呼ばれる。
【0004】
発酵状態の茶は、葉茶に比べて、香臭において違いを示すだけでなく、具体的発酵工程や微生物の種類などに応じて、有効成分の種類や含量において大きな違いを示すことがある。このように多様な化合物が生成、分離され得るという点のため、緑茶を用いた未知の新規化合物の分離及び同定のための多様な努力が続けられてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国登録特許第10-0975199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一側面において、後発酵茶由来の新規な化合物を抗炎症用途に用いることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一実施例において、下記の化学式1で表される化合物、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その溶媒和物、又はこれを含む後発酵茶抽出物を有効成分として含む抗炎症組成物を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
前記化学式1中、RはC15であってよく、RはC11であってよく、RはCであってよい。
【0010】
また、本発明は、他の側面において、前記組成物は、PGE(Prostaglandin E)、IL-6(Interleukin 6)及びIL-8(Interleukin 8)からなる群より選ばれる一種以上の生成を抑制する組成物であってよい。
【0011】
本発明は、一実施例において、前記化学式1で表される化合物、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その溶媒和物、又はこれを含む後発酵茶抽出物を、これを必要とする対象に投与する段階を含む抗炎症のための方法を提供する。
【0012】
本発明は、一実施例において、抗炎症のための組成物の製造に用いるための前記化学式1で表される化合物、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その溶媒和物、又はこれを含む後発酵茶抽出物の用途を提供する。
【0013】
本発明は、一実施例において、抗炎症に用いるための前記化学式1で表される化合物、その光学異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その溶媒和物、又はこれを含む後発酵茶抽出物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、一側面において、後発酵茶から分離した新規な化合物を抗炎症の分野に用いることができるようにすることで、後発酵茶に関連した産業及び抗炎症に関連した分野などにおいて広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一側面に係る化合物のMSスペクトルを示す図である。
図2】本発明の一側面に係る化合物のH-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
図3】本発明の一側面に係る化合物の13C-NMRスペクトルを示す図である。
図4】本発明の一側面に係る化合物のH-13C HSQC(Heteronuclear Single Quantum Coherence)スペクトルを示す図である。
図5】本発明の一側面に係る化合物のH-13C HMBC(Heteronuclear Multiple-Bond Coherence)スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0017】
本明細書において「後発酵」は、茶葉に存在する酵素ではない他の微生物又は物質によって発酵させることを含む。後発酵茶は、前記方式によって緑茶を発酵させたものを含む。
【0018】
本明細書において「抽出物」とは、天然物からその中の成分を取り出して得られた物質であれば、取り出し方法や成分の種類を問わずいずれも含む。例えば、水や有機溶媒を用いて天然物から溶媒に溶解される成分を抽出したもの、天然物の特定成分、例えば、オイルのような特定成分のみを抽出して得られたもの、そのようにして得られたものを再び特定の溶媒などを用いて分画した分画物などをいずれも含む広義の概念である。
【0019】
本明細書において分画物は、ある溶媒を用いて特定の物質や抽出物を分画して得たもの又は分画して残ったもの、そしてこれらを特定の溶媒で再び抽出して得たものを含む。分画方法や抽出方法は、当業界における通常の技術者に知られたものであればいずれも用いてよい。
【0020】
本明細書において「異性体」は、特に光学異性体(optical isomers)(例えば、本質的に純粋なエナンチオマー(essentially pure enantiomers)、本質的に純粋なジアステレオマー(essentially pure diastereomers)又はそれらの混合物)だけでなく、配座異性体(conformation isomers)(すなわち、1つ以上の化学結合のその角度のみ異なる異性体)、位置異性体(position isomers)(特に、互変異性体(tautomers))、又は幾何異性体(geometric isomers)(例えば、シス-トランス異性体)を含む。
【0021】
本明細書において「本質的に純粋な(essentially pure)」とは、例えば、エナンチオマー又はジアステレオマーと関連して用いた場合、エナンチオマー又はジアステレオマーを例として挙げることのできる具体的な化合物が約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約97%以上、又は約98%以上、さらに好ましくは約99%以上、最も好ましくは約99.5%以上(w/w)存在することを意味する。
【0022】
本明細書において「薬学的に許容可能」とは、通常の医薬的服用量(Medicinal dosage)で用いる際に相当な毒性効果を避けることにより、動物、より具体的には、ヒトに用いることができるという政府又はこれに準ずる規制機構の承認を受けることができ、又は承認を受け、又は一般的な薬局方に列挙され、又はその他一般的な薬局方に記載されたものと認定されることを意味する。
【0023】
本明細書において「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能であり、親化合物(parent compound)の好ましい薬理活性を有する本発明の一側面に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などといった無機酸から形成されるか;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-oct-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸から形成される酸付加塩(acid addition salt);又は、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換されるときに形成される塩を含んでよい。
【0024】
本明細書において「水和物(hydrate)」は、水が結合している化合物を意味し、水と混合物との間に化学的な結合力のない内包化合物を含む広範囲な概念である。
【0025】
本明細書において「溶媒和物」は、溶質の分子やイオンと溶媒の分子やイオンとの間に生じた高次の化合物を意味する。
【0026】
本発明は、一側面において、下記の化学式1で表される化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その溶媒和物、又はこれを含む後発酵茶抽出物を有効成分として含む抗炎症組成物を提供する。
【0027】
【化2】
【0028】
前記化学式1中、RはC15であってよく、RはC11であってよく、RはCであってよい。
【0029】
一具現例によると、前記Rは、下記の化学式2で表される化合物であってよい。
【0030】
【化3】
【0031】
他の具現例によると、前記Rは、下記の化学式3で表される化合物であってよい。
【0032】
【化4】
【0033】
前記Rは、下記の化学式4で表される化合物であってよい。
【0034】
【化5】
【0035】
他の具現例によると、前記化合物は、ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])であってよい。前記化合物は、下記の化学式5のように表し得る。
【0036】
【化6】
【0037】
本発明の一側面によると、前記化合物、その異性体、これらの薬学的に許容可能な塩、これらの水和物又はこれらの溶媒和物を製造する方法は、合成、天然物からの分離などを含んでよい。
【0038】
他の具現例によると、前記後発酵は、菌株接種によるものであってよく、前記菌株は、サッカロマイセス属(Saccharomyces sp.)、バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)及びロイコノストック属(Leuconostoc mesenteroides sp.)から選ばれる菌株であってよく、好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtlis)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgarius)及びロイコノストック・メッセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)から選ばれるものであってよい。また他の具現例によると、前記後発酵茶は、緑茶を後発酵させたものであってよい。
【0039】
本発明は、一側面において、前記化合物は、本発明者らが後発酵茶に対する持続的な研究の末に見出したものであって、当該化合物がPGE(Prostaglandin E)、IL-6(Interleukin 6)及びIL-8(Interleukin 8)からなる群より選ばれる一種以上の生成を抑制する効能があることを確認した。よって、本発明の一側面に係る前記化合物を用いて炎症を抑制、予防、治療、又は改善する用途に前記化合物を用いることができることを立証した。
【0040】
一具現例において、前記抽出は、水、熱水、C~Cの低級アルコール、及びこれらの混合溶媒から選ばれた一種以上の溶媒による抽出であってよく、他の具現例によると、前記低級アルコールは、当業界において一般的に用いられ得るアルコール単独又は混合物であってよく、好ましくは、エタノールであってよい。
【0041】
本発明の他の側面によると、前記抽出物は、抽出後にケトンで分画した分画物であってよい。
【0042】
他の具現例によると、前記ケトンは、アセトン、カルボン(carvon)、プレゴン(pulegone)、イソロンギホラノン(isolongifolanone)、2-ヘプタノン、2-ペンタノン、3-ヘキサノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン、メチルイソプロピルケトン、エチルイソアミルケトン、ブチリデンアセトン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、ファルネシルアセトン、2,3-ペンタジオン、2,3-ヘキサジオン、3,4-ヘキサジオン、2,3-ヘプタジオン、アミルシクロペンタノン、アミルシクロペンテノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、ヘキシルシクロペンタノン、2-n-ヘプチルシクロペンタノン、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、メチルコリロン、2-tert-ブチルシクロヘキサノン、p-tert-ブチルシクロヘキサノン、2-sec-ブチルシクロヘキサノン、セロリーケトン、クリプトン、p-tert-ペンチルシクロヘキサノン、メチルシクロシトロン、ネロン、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、オキサイドケトン、エモキシフロン、メチルナフチルケトン、α-メチルアニサルアセトン、アニシルアセトン、p-メトキシフェニルアセトン、ベンジリデンアセトン、p-メトキシアセトンフェノン、p-メチルアセトフェノン、プロピオフェノン、アセトフェノン、α-ダイナスコン(Dynascone)、イリトーン(lritone)、イオノン(ionone)、プソイドイオノン(Pseudoionone)、メチルイオノン、メチルイリトーン、2,4-ジ-tert-ブチルシクロヘキサノン、アリルイオノン、2-アセチル-3,3-ジメチルノルボルナン、ベルベノン、フェンコン(fenchon)、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノンなどを含んでよく、当業界において一般的に用いられ得る溶媒としてのケトン類及びこれらの混合物をいずれも含んでよく、好ましくは、アセトンであってよい。
【0043】
本発明の一側面によると、前記組成物中の化学式1で表される化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の含量は、前記組成物の総重量に対し、0.00001重量%~10重量%の範囲であってよい。前記含量は、前記組成物の総重量に対し、0.00001重量%以上、0.00005重量%以上、0.0001重量%以上、0.0005重量%以上、0.001重量%以上、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、又は9重量%以上であってよい。また、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、0.001重量%以下、0.0005重量%以下、0.0001重量%以下、0.00005重量%以下、又は0.00003重量%以下であってよい。
【0044】
本発明の他の側面によると、前記組成物中の後発酵茶抽出物の含量は、前記組成物の総重量に対し、0.1重量%~90重量%の範囲であってよい。前記含量は、前記組成物の総重量に対し、0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、又は85重量%以上であってよい。また、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下であってよい。
【0045】
本発明のまた他の側面によると、前記抽出物は、前記化学式1で表される化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物が、抽出物の総重量を基準に、0.00001重量%以上、0.00005重量%以上、0.0001重量%以上、0.0005重量%以上、0.001重量%以上、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、又は18重量%以上含まれたものであってよい。また、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、0.001重量%以下、0.0005重量%以下、0.0003重量%以下、0.00005重量%以下、又は0.00003重量%以下含まれたものであってよい。好ましくは、前記抽出物は、前記化学式1で表される化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物が、抽出物の総重量を基準に、0.00001重量%~20重量%の範囲で含まれたものであってよい。
【0046】
本発明のまた他の側面によると、前記組成物の投与による前記化学式1で表される化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の投与量は、0.00001mg/kg/日~100mg/kg/日の範囲であってよい。前記投与量は、0.00001mg/kg/日以上、0.0001mg/kg/日以上、0.001mg/kg/日以上、0.005mg/kg/日以上、0.01mg/kg/日以上、0.05mg/kg/日以上、0.1mg/kg/日以上、0.5mg/kg/日以上、1mg/kg/日以上、5mg/kg/日以上、10mg/kg/日以上、15mg/kg/日以上、20mg/kg/日以上、25mg/kg/日以上、30mg/kg/日以上、35mg/kg/日以上、40mg/kg/日以上、45mg/kg/日以上、50mg/kg/日以上、55mg/kg/日以上、60mg/kg/日以上、65mg/kg/日以上、7mg/kg/日以上、75mg/kg/日以上、80mg/kg/日以上、85mg/kg/日以上、90mg/kg/日以上、又は95mg/kg/日以上であってよい。また、前記投与量は、100mg/kg/日以下、95mg/kg/日以下、90mg/kg/日以下、85mg/kg/日以下、80mg/kg/日以下、75mg/kg/日以下、70mg/kg/日以下、65mg/kg/日以下、60mg/kg/日以下、55mg/kg/日以下、50mg/kg/日以下、45mg/kg/日以下、40mg/kg/日以下、35mg/kg/日以下、30mg/kg/日以下、25mg/kg/日以下、20mg/kg/日以下、15mg/kg/日以下、10mg/kg/日以下、5mg/kg/日以下、1mg/kg/日以下、0.5mg/kg/日以下、0.1mg/kg/日以下、0.05mg/kg/日以下、0.01mg/kg/日以下、0.005mg/kg/日以下、0.003mg/kg/日以下、0.001mg/kg/日以下、0.0005mg/kg/日以下、0.0001mg/kg/日以下、0.00005mg/kg/日以下であってよい。
【0047】
一具現例によると、前記炎症は、PGE(Prostaglandin E)、IL-6(Interleukin 6)及びIL-8(Interleukin 8)からなる群より選ばれる一種以上の生成や増加に起因するものであってよい。
【0048】
本発明の他の側面によると、前記組成物は、食品組成物、化粧料組成物、又は薬学組成物であってよい。
【0049】
本発明の一側面に係る食品組成物は健康食品組成物であってよく、前記健康食品組成物において、前記化合物の投与量の決定は、当業者の水準内にあり、且つ投与しようとする対象の年齢、健康状態、合併症などの様々な要因に応じて異なり得る。
【0050】
本発明の一側面に係る健康食品組成物は健康機能食品であってよく、それだけでなく、例えば、チューイングガム、キャラメル製品、キャンデー類、氷果子類、お菓子類、パン類などの各種の食品類、清凉飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料などの飲料製品といったように如何なる形態の加工食品も含み、且つビタミンやミネラルなどを含む機能性食品類であってもよい。
【0051】
前記の他、本発明の一側面に係る健康食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含んでよい。その他、本発明の一側面に係る健康食品組成物は、天然果物ジュース並びに果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含んでよい。このような成分は、独立で、或いは組み合わせて用いてよい。このような添加剤の割合はそれほど重要ではないが、本発明の一側面に係る組成物100質量部当たり0~約50重量部の範囲で含まれるのが一般的である。
【0052】
本発明の一側面に係る化粧料組成物は、例えば、皮膚用、手足指の爪用及び/又は毛髪用組成物であって、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、アイクリーム、アイエッセンス、エッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーエッセンス、ボディー洗浄剤、染毛剤、シャンプー、リンス、整髪剤、養毛剤、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、スプレー及び皮膚貼付タイプなどの剤形を有してよいが、これらに限定されない。
【0053】
また、それぞれの剤形において前記した必須成分以外の他の成分は、その他外用剤の種類又は使用目的などに応じて当業者が難なく適宜選定して配合してよい。
【0054】
前記化粧料組成物は、局所適用に適合したあらゆる剤形にて提供されてよい。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、マイクロニードル、泡沫(foam)又はエアロゾル組成物の剤形で提供されてよい。このような剤形の組成物は、当該分野の通常的な方法に従って製造されてよい。
【0055】
本明細書に係る化粧料組成物には、本明細書に係る化合物、抽出物又は分画物の他に機能性添加物及び一般的な化粧料組成物に含まれる成分がさらに含まれてよい。前記機能性添加物としては、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草エキスからなる群より選ばれた成分を含んでよい。本明細書に係る化粧料組成物は、主な効果を損なわない範囲内で、好ましくは、主な効果に相乗効果を与え得る他の成分を含んでよい。また、本明細書に係る化粧料組成物は、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機及び無機顔料、香料、冷感剤又は制汗剤をさらに含んでよい。前記成分の配合量は、本明細書の目的及び効果を損なわない範囲内で当業者が容易に選定可能であり、その配合量は、組成物の全重量を基準に、0.001~10重量%、具体的に、0.01~3重量%の範囲であってよい。
【0056】
また他の具現例によると、前記組成物は、皮膚外用剤組成物であってよい。皮膚外用剤組成物は、化粧料、口腔剤、洗浄剤、薬学及び医薬外品などの組成物とされてよいが、これに限定されるものではない。前記皮膚外用剤は、その剤形において特に限定されるところがない。
【0057】
また、本明細書に係る皮膚外用剤組成物は、特別な目的のための機能性の塩(salt)及びpH調節のためのpH調節剤から選ばれた一種以上をさらに含んでよい。このとき、前記塩は、イオン遮蔽、保湿、紫外線遮断などのための無機塩、有機塩及び/又は有機-無機塩から選ばれるものであってよい。具体的に例を挙げると、前記塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸ナトリウム(NaPO)及び塩化カルシウム(CaCl)などから選ばれるものであってよい。前記pH調節剤は、酸(aicd)や塩基(base)から選ばれ、例えば、塩酸、硫酸、酒石酸、クエン酸、リン酸、酢酸、乳酸、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルキルアミン、アルカノールアミン、及びアンモニアなどからなる群より選ばれるものであってよい。
【0058】
本明細書に係る皮膚外用剤組成物は、化粧料、薬学又は医薬外品組成物であってよく、前記化粧料、薬学又は医薬外品組成物は、防腐剤、安定化剤、水和剤又は乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/又は緩衝剤などの補助剤、並びにその他治療的に有用な物質をさらに含んでよい。前記組成物は、ローション、クリーム、軟膏又はゲルなどに剤形化されてよい。前記皮膚外用剤組成物は、経皮投与されることが好ましい。
【0059】
前記薬学又は医薬外品組成物の有効成分の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重と、治療する特定の疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって異なり得る。このような因子に基づく投与量の決定は、当業者の水準内にある。一般的に前記有効成分の投与量は、0.00001mg/kg/日~15mg/kg/日の範囲であってよいが、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の一側面に係る前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与されてよい。経口投与のための剤形は、錠剤、丸剤、軟質及び硬質カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤、乳濁剤又はペレット剤であってよいが、これらに制限されるものではない。非経口投与のための剤形は、溶液剤、懸濁剤、乳液剤、ゲル、注射剤、点滴剤、坐剤、パッチ又はスプレーであってよいが、これらに制限されるものではない。前記剤形は、当該分野の通常的な方法に従い容易に製造することができ、界面活性剤、賦形剤、水和剤、乳化促進剤、懸濁剤、浸透圧調節のための塩又は緩衝剤、着色剤、香辛料、安定化剤、防腐剤、保存剤又はその他常用する補助剤をさらに含んでよい。
【0061】
本発明の一側面に係る前記薬学組成物の適用量又は投与量は、投与を受ける対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその深刻度、投与経路又は処方者の判断によって異なり得る。このような因子に基づく適用量の決定は当業者の水準内にある。
【0062】
前記食品組成物の剤形は特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、粉末剤、ドリンク剤といった液剤、キャラメル、ゲル、バー、ティーバッグなどに剤形化されてよい。各剤形の食品組成物は、有効成分の他、当該分野において通常的に用いられる成分を剤形又は使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定して配合してよく、他の原料と併せて適用した場合、相乗効果が生じることがある。
【0063】
前記組成物は、単純摂取、飲用、注射投与、スプレー投与又はスクイーズ投与などの様々な方法で投与されてよい。
【0064】
以下、実施例、実験例、及び剤形例を挙げて本明細書の構成及び効果についてより具体的に説明する。なお、これらの例は、本明細書についての理解を助けるための目的から例示したものに過ぎず、本明細書の範疇及び範囲が下記例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]後発酵茶試料の製造
緑茶(Camellia sinensis var. Yabukita)葉で作った緑茶に水を添加して水分含量を40重量%に調整した。これにバチルス・サブチリス(Bacillus subtillis)5×10cfu/gを接種し、50℃で3日間醗酵させた後に80℃で4日間醗酵させた。
【0066】
前記熟成された茶試料を15秒間粉砕し、メッシュサイズ1mmのステンレス篩で篩いわけした。次いで、粉砕された50mgの試料を1.5mlのエッペンドルフ・チューブ(Eppendorf tube)に入れ、1mlの脱イオン水を添加し、60℃の恒温槽で30分間一定の速度で撹拌した後、25℃、13,000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離した醗酵緑茶抽出物から水に溶けない部分だけを分離した。
【0067】
[実施例2]分画物の収得及び化合物の分離
前記後発酵茶試料150gをアセトンで分画してカテキン誘導体及びカフェインを除去し、他の化合物が濃縮された可溶物を収得した。前記アセトン可溶物40gに対し一次的にシリカゲルコラムクロマトグラフィーを利用して、クロロホルム:メタノールの5:1(v/v)混合物を溶媒として分画物を得た。
【0068】
カフェインが除去されたクロロホルム:メタノール5:1(v/v)分画物8.9gを大容量の高性能向流クロマトグラフィー(high-performance countercurrent chromatography、HPCCC、Dynamic Extractions Ltd、UK)を利用して分画した。このときに用いた溶媒はn-hexane-TBME(Methyl tert-butyl ether)-BuOH-MeCN-Water(0.25:3:1:1:5、v/v)とし、流速は25ml/minとした。前記条件を用いて計10個の下位分画を分け、各分画に対し、再び小容量のHPCCC(Dynamic Extractions Ltd、UK)、HPLC(High-performance liquid chromatography)、セファデックス(sephadex)LH-20コラム(GE Healthcare Bio-Sciences、Sweden)などを使用して、各分画に含有された成分を分離した。
【0069】
その結果、前記分画物からこれまで知られていない化合物である、ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](Kaempferol3-O-[2-O’’-(E)-p-coumaroyl][beta-D-glucopyranosyl-(1→3)-O-alpha-L-rhamnopyranosyl-(1→6)-O-beta-D-glucopyranoside])を分離することができ、H、13C-NMR(nuclear magnetic resonace spectroscopy)、UV(ultraviolet spectroscopy)、ESI-MS(Electro Spray Ionization Mass Specroscopy)を用いて構造を同定して、各化合物の構造を究明した。H及び13C核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)の場合、溶媒(solvent)としてmethanol-d3を用い、機器はBruker Advance DPX-500(BRUKER社、USA)を使用した。各化合物のMSスペクトルは、6200 Series Accurate-Mass Time-of-Flight(TOF)LC/MS(Agilent、US)を用いて分析した。
【0070】
分析の結果、前記各化合物は、これまで知られていない新規な化合物であって、C424622の分子量902.2481であるケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](「新規物質33」)であると確認された。
【0071】
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]の化学式及びNMRデータは以下のとおりである。
【0072】
【化7】
【0073】
【表1A】
【0074】
【表1B】
【0075】
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]のMSスペクトルは図1のように示され、H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルはそれぞれ図2及び図3のように示され、HSQC(Heteronuclear Single Quantum Coherence)スペクトルは図4のように示され、HMBC(Heteronuclear Multiple-Bond Coherence)スペクトルは図5のように示された。
【0076】
[実験例]PGE、IL-6及びIL-8の生成抑制実験
ヒト線維芽細胞(fibroblast)(PromoCell、Germany)を6ウェル培養板に1×10細胞の濃度で接種し、24時間、37℃、5%COインキュベーターで培養した。H 500μMをウェルに処理し、24時間刺激を与えた後、前記ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド](「新規物質33」)をそれぞれ100μg/mlの濃度で処理し、48時間反応させた。反応完了後、培養液を収去してELISA分析を行った。このとき、抗炎症及び刺激緩和剤として多用される物質であるα-ビサボロール(α-bisabolol)を対照群として用いた。PGEは、アッセイデザイン(Assay Design)社製のキット、IL-6、IL-8はエンドジェン(Endogen)社製のキットを用い、各会社のマニュアルに明記された方法に従い実験を進行した。抑制効果は下記の数学式1によって求め、その測定結果を下記の表3に表した。(「33」は新規物質33を意味する)
【0077】
【数1】
【0078】
【表2】
【0079】
前記表2のように、新規物質33はHによって増加するPGE、IL-6及びIL-8を低減させる効果があり、これは、新規物質33がそれぞれ抗炎症効果を有することを意味するので、新規物質33をそれぞれ炎症の予防、治療、改善などの用途に用いることができることを確認したわけである。
【0080】
[実験例2]皮膚累積刺激の実験
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]の皮膚累積刺激性の有無を確認し、皮膚に使用できる濃度範囲を算出するために、HRIPT(Human repeated insult patch tests)を実施した。
【0081】
具体的に、健康な成人被験者15人を無作為に選定し、前記化合物が0.5重量%、1重量%、3重量%ずつ含まれた試験用組成物(前記化合物の他、乳化剤、安定化剤、精製水などを含む皮膚用組成物)をチャンバ(IQ chamber、Epitest Ltd、フィンランド)当り20μlずつ滴下し、被験者の背中の右上側部位に貼布してから24時間経過したときに新しい貼布に取り替えた。このような方法で、1週間に3回ずつ計3週間9回の貼布を行いながら毎回貼布の前後の皮膚反応を検査し、最終の貼布を除去してから48時間までの間の皮膚反応を確認し、その平均反応度を求めた。
【0082】
その結果は、下の表3のとおりである。
【0083】
【表3】
【0084】
前記皮膚反応は、国際接触皮膚炎研究班(ICDRG;International Contact Dermatitis RESEARCH Group)の基準に従って判定した。前記表において「新規物質33」は、ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]を示す。すなわち、前記物質は、前記含量範囲でいずれも(-)反応度を示し(±、+、++、又は+++反応度を示した被験者なし)、これより、前記物質が、皮膚累積刺激がなく、皮膚に安全に使用できることが分かった。
【0085】
以下では、本発明の一側面に係る組成物の剤形例を説明するが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0086】
[剤形例1]軟質カプセル剤
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]10mg、L-カルニチン80~140mg、大豆油180mg、パーム油2mg、植物性硬化油8mg、黄蝋4mg及びレシチン6mgを混合し、通常の方法に従い1カプセルに充填して軟質カプセル剤を製造した。
【0087】
[剤形例2]錠剤
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]10mg、ガラクトオリゴ糖200mg、乳糖60mg及び麦芽糖140mgを混合し、流動層乾燥機を用いて顆粒化した後、糖エステル(sugar ester)6mgを添加して、打錠機で打錠して錠剤を製造した。
【0088】
[剤形例3]顆粒剤
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]5mg、無水結晶ブドウ糖250mg及び澱粉550mgを混合し、流動層造粒機を用いて顆粒に成形した後、包に充填して顆粒剤を製造した。
【0089】
[剤形例4]ドリンク剤
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]2mg、ブドウ糖10g、クエン酸0.6g、及び液状オリゴ糖25gを混合した後、精製水300mlを加えて各瓶に200mlずつ充填する。瓶に充填した後、130℃で4~5秒間殺菌してドリンク剤を製造した。
【0090】
[剤形例5]注射剤
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]20mg、適量の注射用滅菌蒸留水、適量のpH調節剤を用いて通常の方法に従い注射剤を製造した。
【0091】
[剤形例6]健康食品
下記の表4に記載された組成にて通常の方法に従い健康食品を製造した。
【0092】
【表4】
【0093】
前記ビタミン及び無機質混合物の組成比は、比較的に健康食品に適合した成分を例にして混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても構わなく、通常の健康食品の製造方法に従い前記成分を混合した後、通常の方法に従い健康食品の組成物の製造に用いてもよい。
【0094】
[剤形例7]健康飲料
【0095】
【表5】
【0096】
前記表5のように総体積900mlになるように残量の精製水を添加して通常の健康飲料の製造方法に従い前記成分を混合してから約1時間85℃で撹拌加熱した後、調製された溶液をろ過して得られたろ液を滅菌された2リットルの容器に入れて密封滅菌した後に冷蔵保管して健康飲料を製造した。
【0097】
[剤形例8]柔軟化粧水(スキンローション)
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]0.2重量%、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム塩1.00重量%、水溶性コラーゲン(1%水溶液)5.00重量%、クエン酸ナトリウム0.10重量%、クエン酸0.05重量%、甘草エキス0.20重量%、1,3-ブチレングリコール3.00重量%、残量として精製水を用いて柔軟化粧水(スキンローション)を製造した。
【0098】
[剤形例9]クリーム状剤形
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]0.2重量%、ポリエチレングリコールモノステアレート2.00重量%、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5.00重量%、プロピレングリコール4.00重量%、スクアレン6.00重量%、トリ2-エチルヘキサングリセリル6.00重量%、スフィンゴ糖脂質1.00重量%、1,3-ブチレングリコール7.00重量%、蜜蝋5.00重量%、残量として精製水を用いてクリーム状製剤を製造した。
【0099】
[剤形例10]パック
ケンペロール3-O-[2-O’’-(E)-p-クマロイル][β-D-グルコピラノシル-(1→3)-O-α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-O-β-D-グルコピラノシド]0.2重量%、ポリビニルアルコール21.00重量%、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム塩3.00重量%、ラウロイルヒドロキシプロリン5.00重量%、水溶性コラーゲン(1%水溶液)8.00重量%、1,3-ブチレングリコール7.00重量%、エタノール7.00重量%、残量として精製水を用いて組成物を製造し、これを用いてパックを製造した。
【0100】
以上、本明細書の特定の実施例などについて詳しく記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これによって本明細書の範囲が制限されるものではないことは明白であろう。したがって、本明細書の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1
図2
図3
図4
図5