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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ROR1 CAR T細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221118BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221118BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20221118BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019572402
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 GB2018051915
(87)【国際公開番号】W WO2019008378
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】1710836.6
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505367464
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナスワニ,アミット
(72)【発明者】
【氏名】ゴヒル,サティエン
(72)【発明者】
【氏名】デラ ペルタ,マルコ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/016344(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/187216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00- 7/08
A61K 35/00-35/768
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)に選択的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、
抗原結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1が、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインが、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1が、配列番号60に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
(a)抗原結合ドメインが、配列番号15、29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域(LCFR)1、配列番号17、30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号19、31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号21、32、及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有する、又
(b)抗原結合ドメインが、配列番号29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR1、配列番号30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号32及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有する、
請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
(a)抗原結合ドメインが、配列番号22、33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域(HCFR)1、配列番号24、34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号26、35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号28、37、及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有する、又
(b)抗原結合ドメインが、配列番号33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR1、配列番号34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号37及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有する、
請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項4】
(a)軽鎖可変ドメインが、配列番号3、4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインが、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、
(c)重鎖可変ドメインが、配列番号9、10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、及び/又は
(d)重鎖可変ドメインが、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項5】
(a)軽鎖可変ドメインが、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10、12、及び13のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含み、
(c)軽鎖可変ドメインが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、
(d)軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、
(e)軽鎖可変ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、
(f)軽鎖可変ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、
(g)軽鎖可変ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、又は
(h)軽鎖可変ドメインが、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項6】
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)に選択的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、
(a)軽鎖可変ドメインが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、
(c)軽鎖可変ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、
(d)軽鎖可変ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、
(e)軽鎖可変ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、又は
(f)軽鎖可変ドメインが、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項7】
エンドドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のCARであって、
エンドドメインが、
(a)CD3-ゼータT細胞シグナル伝達ドメイン、
(b)CD28、OX40、及びCD3-ゼータエンドドメイン、又は
(c)41BB及びCD3-ゼータエンドドメイン
を含む、CAR。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のCARをコードする単離された核酸分子であって、任意にプロモーターに作動可能に連結された、核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項10】
(a)請求項8に記載の核酸分子、又は請求項9に記載のベクターによって形質転換された、又は
(b)請求項1~7のいずれか一項に記載のCARを含む、
単離された宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のCARを含むT細胞。
【請求項12】
請求項8に記載の核酸配列、又は請求項9に記載のベクターを細胞に形質導入又はトランスフェクトするステップを含む、請求項10又は11に記載の細胞を作製するための方法。
【請求項13】
対象におけるがんの処置に使用するための請求項10又は11に記載の細胞であって、ROR1選択的CARを含む細胞が対象に投与され、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こす、細胞。
【請求項14】
がんが、白血病、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、又は腎臓がんである、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
対象におけるがんの処置のための医薬であって、前記医薬は、請求項10又は11に記載の細胞を含み、ROR1選択的CARを含む細胞を含む前記医薬が対象に投与されることにより、悪性細胞の選択的枯渇が引き起こされる医薬品
【請求項16】
がんが、白血病、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、又は腎臓がんである、請求項15に記載の医薬品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)に選択的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)(神経栄養性チロシンキナーゼ受容体関連1、NTRKR1としても知られる)は、胚発生中に発現するが、正常な成体組織での発現は限定的であるがん胎児性抗原である。しかし、これは、多数の血液系及び固形の悪性腫瘍:慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、マントル細胞白血病、ヘアリーセル白血病、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、腎臓がんにおいて発現している。更に、ROR1は、一部のがん幹細胞において発現している。
【発明の概要】
【0003】
近年、T細胞は、キメラ抗原受容体又はCARと呼ばれる人工T細胞受容体をその表面に発現するように遺伝子操作されている。CARは、標的となる腫瘍細胞上に見出される特異的な予め選択されたタンパク質又は抗原を、T細胞が認識することを可能とするタンパク質である。CAR-T細胞は、実験室で培養及び増大させた後、患者に再度注入することができる。操作されたT細胞受容体に導かれることによって、CAR-T細胞は、その表面上に特異的抗原を表示するがん細胞を認識して破壊する。2014年に、CTL019として知られる最初のキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞に基づく免疫療法が、米国食品医薬品局から、再発した難治性の急性リンパ芽球性白血病(ALL)の処置に関する画期的治療薬の指定を受け、CLL、リンパ腫、及び骨髄腫での使用が進められている。
【0004】
CD19に基づくCAR-T細胞は、早期臨床試験では臨床で非常に有望であることが示されたが、これらはまた正常なB細胞クローンも標的とし、その結果、ROR1では起こり得ないB細胞形成不全及び持続的な低ガンマグロブリン血症が起こる。更にほとんどのCAR-T細胞は、疾患特異的抗原を標的とし、したがって腫瘍の範囲は限定的であるが、ROR1は、血液系及び固形の両方の広範囲の悪性腫瘍を標的とすることができる。
【0005】
本発明者らは、魅力的な治療標的としてROR1を同定し、ROR1に特異的に結合し、上記のがんを処置するために使用することができるCAR-T細胞を生成した。
【0006】
本発明の第1の態様は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)に選択的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、アミノ酸Gln-261を含むROR1のエピトープに結合する、キメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0007】
第1の実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3は、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列は、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。
【0008】
更に、本発明は、本開示のCARをコードする単離された核酸分子に関する。
【0009】
本発明はまた、本開示のCARを含む細胞、好ましくはT細胞、及びそのような細胞を作製するための方法にも関する。或いは、細胞は、NK細胞、ガンマデルタT細胞、又はiPS細胞であり得る。
【0010】
本発明は更に、対象におけるがんの処置に使用するための本開示のCARを含む細胞であって、ROR1選択的CARを含む細胞が対象に投与され、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こす、細胞に関する。本発明の更なる態様は、がんを処置する方法に関する。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)に選択的に結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインがアミノ酸Gln-261を含むROR1のエピトープに結合する、キメラ抗原受容体(CAR)。
[項目2]
抗原結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1が、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインが、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1が、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列が、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1に記載のCAR。
[項目3]
各々のCDRの配列が、1つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目2に記載のCAR。
[項目4]
LCDR1が、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びにHCDR1が、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む、項目1~3のいずれか一項に記載のCAR。
[項目5]
HCDR3が、配列番号27、36、44、及び49に記載の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~4のいずれか一項に記載のCAR。
[項目6]
抗原結合ドメインが、配列番号15、29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域(LCFR)1、配列番号17、30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号19、31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号21、32、及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有し、各々のフレームワーク領域の配列が最大5つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1~5のいずれか一項に記載のCAR。
[項目7]
抗原結合ドメインが、配列番号29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR1、配列番号30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号32及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有し、各々のフレームワーク領域の配列が最大5つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1~6のいずれか一項に記載のCAR。
[項目8]
抗原結合ドメインが、配列番号22、33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域(HCFR)1、配列番号24、34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号26、35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号28、37、及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有し、各々のフレームワーク領域の配列が最大5つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1~7のいずれか一項に記載のCAR。
[項目9]
抗原結合ドメインが、配列番号33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR1、配列番号34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号37及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有してもよく、各々のフレームワーク領域の配列が最大5つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1~8のいずれか一項に記載のCAR。
[項目10]
軽鎖可変ドメインが、配列番号3、4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1~9のいずれか一項に記載のCAR。
[項目11]
軽鎖可変ドメインが、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1~10のいずれか一項に記載のCAR。
[項目12]
重鎖可変ドメインが、配列番号9、10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1~11のいずれか一項に記載のCAR。
[項目13]
重鎖可変ドメインが、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1~12のいずれか一項に記載のCAR。
[項目14]
軽鎖可変ドメインが、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、かつ
重鎖可変ドメインが、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、
項目1~13のいずれか一項に記載のCAR。
[項目15]
軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10、12、及び13のうちの1つに記載のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1~14のいずれか一項に記載のCAR。
[項目16]
(a)軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、
(c)軽鎖可変ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、
(d)軽鎖可変ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、又は
(e)軽鎖可変ドメインが、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、
上記の各々の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインが、上記のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有していてもよい、
項目1~15のいずれか一項に記載のCAR。
[項目17]
抗原結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1が、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインが、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1が、配列番号60に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列が、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、項目1に記載のCAR。
[項目18]
抗原結合ドメインは:
(a)軽鎖可変ドメインが、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むものであり、
(b)軽鎖可変ドメインが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むものであり、
(c)軽鎖可変ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むものであり、
(d)軽鎖可変ドメインが、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むものであり、
(e)軽鎖可変ドメインが、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むものであり、又は
(f)軽鎖可変ドメインが、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインが、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むものであり、
上記の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインが、上記のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有していてもよい、項目17に記載のCAR。
[項目19]
軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子であって、LCDR1が、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2が、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列が、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい、単離された核酸分子。
[項目20]
重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸分子であって、HCDR1が、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列が、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なってもいてよい、単離された核酸分子。
[項目21]
項目1~18のいずれか一項に記載のCARをコードする単離された核酸分子。
[項目22]
プロモーターに作動可能に連結された、項目21に記載の単離された核酸分子。
[項目23]
項目21又は項目22に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
[項目24]
項目21若しくは22に記載の核酸分子、又は項目23に記載のベクターによって形質転換された単離された宿主細胞。
[項目25]
項目1~18のいずれか一項に記載のCARを含む細胞。
[項目26]
項目25に記載のT細胞。
[項目27]
項目21若しくは22に記載の核酸配列、又は項目23に記載のベクターを細胞に形質導入又はトランスフェクトするステップを含む、項目24~26のいずれか一項に記載の細胞を作製するための方法。
[項目28]
対象におけるがんの処置に使用するための項目25又は26に記載の細胞であって、ROR1選択的CARを含む細胞が対象に投与され、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こす、細胞。
[項目29]
がんが、白血病、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、又は腎臓がんである、項目28に記載の使用のための細胞。
[項目30]
項目25又は26に記載の細胞を対象に投与して、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こすステップを含む、がんを処置するための方法。
[項目31]
がんが、白血病、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、又は腎臓がんである、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】αβT細胞受容体/CD3複合体の図である。T細胞受容体は、6個の異なるタンパク質鎖から形成され、これらは、細胞表面上に発現されるためには小胞体においてアセンブルしなければならない。CD3複合体の4つのタンパク質(CD3ζ、CD3γ、CD3ε、及びCD3δ)が、T細胞受容体(TCR)を覆う。このTCRは、複合体に特定の抗原の特異性を与え、2つの鎖:TCRα及びTCRβで構成される。各々のTCR鎖は、膜に対して遠位の可変構成要素及び膜に対して近位の定常構成要素を有する。
図2】健康なドナーT細胞に、本発明者らが生成した10個の新規ScFv結合体(クローンG5、A、B、F、パイ、ミュー、I、O、V、及びRと呼ぶ)、並びに公表されたR12 ScFv及びCD19fmc63 ScFvを有する第二世代CAR(41BB及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを有する)を発現するように形質導入した。それらを、SKW6.4細胞と共に2:1のエフェクター:標的比で培養した。24時間での生存標的細胞数を、FACSベースの殺滅アッセイによって評価し、非形質導入T細胞による残存生存細胞に対して正規化した。(試験した個々のドナーの数)。エラーバーは、標準誤差を表す。
図3】健康なドナーT細胞に、細胞外スペーサードメインが異なるクローンA及びFの両方に関するCAR構築物を形質導入した。クローンAは、より短いスペーサー、例えばヒンジ及びリンカーによって最適な細胞傷害性を示したが、クローンFは、中等度の長さ、例えばCD8ストーク及びヒンジによってより強い毒性を示した。
図4】CD8αスペーサーを、上記の全てのScFvに基づくCAR構築物に関してヒンジスペーサーに置換して、1人の健康なドナーに由来するT細胞に形質導入してCARを発現させた。T細胞を、SupT1-ROR1陰性及びSupT1-ROR1陽性細胞株と共培養すると(A)、クローンVを例外として、全てのクローンがSupT1-ROR1標的のほぼ完全な消失をもたらすことが示された。SKW6.4細胞について評価すると、全ての構築物が、これまでのCD8スペーサー構築物と比較して改善された細胞毒性を示した。標的及びエフェクター細胞を1:1比で播種した。
図5】FACSベースの殺滅アッセイにおいて1:1のエフェクター:標的比で、クローンA及びFは、SKW6.4細胞株に対してR12、V、及びミューと比較して優れた殺滅を示した。細胞傷害性の差は、同じT細胞がROR1を発現する初代CLL細胞を標的とした場合により小さかったが、細胞傷害性はなおも認められた。
図6】ホタルルシフェラーゼを発現するように形質導入したJeko1細胞を利用するマウスモデルにおける、新たに作製したCARフォーマットのScFv配列のin vivo機能を示す図である。マウスに、尾静脈を介して0.5×106個のJeko1細胞を注射し、5日後に4×106個のCAR T細胞を注射した。生物発光イメージングを、適切な時点でD-ルシフェリンによって行った。
図7-1】ヒトROR1のFzドメインに関して、点突然変異を254及び261位で生成した。使用した特定の変異は、I(254)V及びQ(261)Hであった。Q(261)H置換は、ROR1-Fzドメインに対するクローンF抗体の結合を低減又は停止させることが見出されたが、I(254)V置換は、結合に影響を及ぼさないように思われた。更に、Q(261)HとI(254)Vの組合せもまた、抗体結合を防止した。
図7-2】図7-1の続きである。
図8】ALL(697、Kasumi2)、リンパ腫(Jeko1、Raji)、及びCLL(SKW、PCL12)に対応する、ROR1を恒常的に発現するROR1陽性細胞株のパネルに対する、ROR1 ScFv CD19、R12、及び4A5と比較した、ヒト化クローンF ROR1-CAR T細胞(hF)の細胞傷害性を示す図である。
図9】CFSE標識されており、B-CLL単離キット(Miltenyi Bioscience)を使用して単離した初代CLL細胞と共培養した、hF、CD19fmc63、R12、及び4A5 ROR1 CAR T細胞の、4:1のエフェクター:標的比での細胞傷害性を示す図である。
図10】ROR1陽性神経芽腫細胞株に対する細胞傷害性を示す図である。
図11-1】クローン F ROR1 CAR T細胞は、CD19 CAR T細胞と比較して、ROR1陽性(1643、PANC1、及びNB-7)細胞株に対して、有意なIFNg分泌をもたらす。
図11-2】図11-1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語
特に断りのない限り、技術用語は、通常の使用に従って使用される。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994(ISBN 0-19-854287-9)、Kendrew et al.(eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994(ISBN 0-632-02182-9)、及びRobert A. Meyers(ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995(ISBN 1-56081-569-8)に見出され得る。特に説明していない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0013】
投与:選択された経路による組成物の対象への導入。投与は、局所又は全身であり得る。例えば、選択された経路が静脈内である場合、組成物は、対象の静脈に組成物を導入することによって投与される。例えば、投与は、経口及び非経口経路、腹腔内、静脈内、皮下、経皮、筋肉内、又は例えばカテーテル若しくはステントによる局所送達を介するものであり得る。一部の例では、ROR1ポリペプチドに対して特異的なCARを対象に投与する。通常は、医師は、個々の対象にとって最も適している実際の投与量を決定するが、投与量は、特定の患者の年齢、体重、及び応答によって異なる。投与量は、悪性細胞の数を低減又は枯渇させるために十分な投与量である。
【0014】
薬剤:目的又は結果を達成するために有用である任意の物質又は物質の任意の組合せ、例えばがんを防止又は処置するために有用な物質又は物質の組合せ。薬剤には、タンパク質、核酸分子、化合物、低分子、有機化合物、無機化合物、又は目的の他の分子が挙げられるがこれらに限定されない。薬剤は、治療剤(例えば、抗ウイルス剤)、診断薬、又は医薬品を含み得る。一部の実施形態では、薬剤は、CAR、又はCARを含む細胞である。当業者であれば、特定の薬剤が、1つより多くの結果を達成するために有用であり得ることを理解する。
【0015】
アミノ酸置換:ペプチドにおける1つのアミノ酸の異なるアミノ酸との交換。
【0016】
増幅:核酸分子(例えば、RNA又はDNA)のコピー数を増加させる技術。増幅の例は、プライマーと試料中の核酸鋳型とのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、生物試料に一対のオリゴヌクレオチドプライマーを接触させるポリメラーゼ連鎖反応である。プライマーを適した条件下で伸長させ、鋳型から解離させた後、再度アニールして、伸長させ、解離させて核酸のコピー数を増幅させる。増幅産物を、電気泳動、制限エンドヌクレアーゼ切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション若しくはライゲーション、及び/又は標準的な技術を使用する核酸シークエンシングによって特徴付けることができる。増幅の他の例には、米国特許第5,744,311号に開示される鎖置換増幅、米国特許第6,033,881号に開示される転写フリー等温増幅、PCT国際公開第90/01069号に開示される修復連鎖反応増幅、欧州特許出願公開第EP-A-320 308号に開示されるリガーゼ連鎖反応増幅、米国特許第5,427,930号に開示されるギャップフィリングリガーゼ連鎖反応増幅、及び米国特許第6,025,134号に開示されるNASBA(商標)RNA転写フリー増幅が挙げられる。
【0017】
動物:生きている多細胞脊椎生物、例えば哺乳動物及び鳥類を含むカテゴリー。哺乳動物という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、用語「対象」は、ヒト及び獣医学対象の両方を含む。
【0018】
抗体:分析物(抗原)、例えばROR1ポリペプチド又はその免疫原性断片に特異的に結合して認識する、1つの免疫グロブリン遺伝子、又は複数の免疫グロブリン遺伝子、又はその抗原結合性断片によって実質的にコードされるポリペプチド。免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。
【0019】
抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとして、及び様々なペプチダーゼによる消化によって産生される複数のよく特徴付けられた断片として存在する。例えば、ROR1ポリペプチド又はこのポリペプチドの断片に特異的に結合するFab、Fv、scFvは、特異的結合剤である。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合している融合タンパク質であるが、dsFvでは、鎖が、鎖の会合を安定化させるためにジスルフィド結合を導入するように変異している。この用語はまた、遺伝子操作した形態、例えばキメラ抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、例えば二重特異性抗体も含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)、Kuby, Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997も参照されたい。
【0020】
抗体断片には、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(1)Fab、抗体全体の酵素パパインによる消化によって産生され、インタクトな軽鎖及び1つの重鎖の一部を生じる、抗体分子の一価の抗原結合性断片を含有する断片、(2)Fab'、抗体全体のペプシンによる処理、その後の還元によってインタクトな軽鎖及び重鎖の一部を生じることによって得られる抗体分子の断片、抗体1分子あたり2つのFab'断片が得られる、(3)(Fab')2、抗体全体の酵素ペプシンによる処理の後に還元を行わないことによって得られる抗体の断片、(4)F(ab')2、2つのジスルフィド結合によって結合した2つのFab'断片の二量体、(5)Fv、2つの鎖として発現される、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された断片、並びに(6)一本鎖抗体(「SCA」)、遺伝子融合した一本鎖分子として、適したポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子。
【0021】
抗体の抗原結合性断片は、抗体全体の修飾によって、又は組換えDNA方法論を使用してde novo合成によって、産生することができる。一部の例では、抗体という用語は、足場構造に移植された、抗体に由来する1つ以上のCDRのアミノ酸配列を含む。
【0022】
通常は、天然に存在する免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互に結合した重(H)鎖及び軽(L)鎖を有する。軽鎖には2つのタイプ、すなわちラムダ(λ)及びカッパ(κ)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEが存在する。本開示の抗体は、クラススイッチすることができる。
【0023】
各々の重鎖及び軽鎖は、定常領域及び可変領域(領域はまた、「ドメイン」としても知られる)を含有する。幾つかの実施形態では、重鎖及び軽鎖可変ドメインが組み合わさって、抗原に特異的に結合する。さらなる実施形態では、重鎖可変ドメインのみが必要である。例えば、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は機能的であり、軽鎖が存在しなくても安定である(例えば、Hamers-Casterman et al., Nature, 363:446-448, 1993、Sheriff et al., Nat. Struct. Biol., 3:733-736, 1996を参照されたい)。軽鎖及び重鎖可変ドメインは、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断される「フレームワーク」領域を含有する(例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたい)。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種の中で比較的保存されている。構成要素である軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の組合せである抗体のフレームワーク領域は、三次元空間においてCDRを配置及び整列させる役目を果たす。
【0024】
CDRは、抗原結合に主に関与している。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は種の中で比較的保存されている。構成要素である軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の組合せである抗体のフレームワーク領域は、三次元空間においてCDRを配置及び整列させる役目を果たす。
【0025】
各々の鎖のCDRは、典型的にはCDR1、CDR2、及びCDR3(N末端からC末端に)と呼ばれ、また典型的には特定のCDRが位置する鎖によっても区別される。すなわち、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに存在し、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。軽鎖CDRはまた、CDR L1、CDR L2、及びCDR L3、又はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と呼ぶこともできる。重鎖CDRは、CDR H1、CDR H2、及びCDR H3、又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と呼ぶことができる。
【0026】
「VH」又は「VH」という場合、抗体断片、例えばFv、scFv、dsFv、又はFabの可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」又は「VL」という場合、Fv、scFv、dsFv、又はFabの可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0027】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一のクローンによって、又は単一の抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされている細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法、例えば骨髄腫細胞と免疫脾細胞との融合によってハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって産生される。これらの融合細胞及びその子孫は、「ハイブリドーマ」と呼ばれる。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であり得る。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、キメラ抗体であり得る。一部の例では、モノクローナル抗体は、対象から単離される。そのような単離されたモノクローナル抗体のアミノ酸配列を決定することができる。
【0028】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、チンパンジー、マウス、ラット、又は合成)免疫グロブリンに由来する1つ以上のCDRを含む抗体である。CDRを提供する非ヒト抗体を「ドナー」と呼び、フレームワークを提供するヒト抗体を「アクセプター」と呼ぶ。一実施形態では、ヒト化抗体における全てのCDRがドナー抗体に由来する。定常領域は存在する必要がないが、存在する場合、それらはヒト抗体定常領域と実質的に同一、例えば少なくとも約85~90%、例えば約95%以上同一でなければならない。したがって、おそらくCDRを除くヒト化抗体の全ての部分は、天然のヒト抗体配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖を含み得る。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークに由来するアミノ酸による限定数の置換を有していてもよい。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさないさらなる保存的アミノ酸置換を有することができる。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作手段によって構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。好ましくは、本発明の抗体はヒト化されている。
【0029】
「キメラ」抗体は、典型的には異なる種の、2つの異なる抗体に由来する配列を含む抗体である。例えばキメラ抗体は、第1の種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域、並びに第2の種に由来する重鎖及び軽鎖定常領域を含み得る。軽鎖の可変及び定常領域は、第1の種に由来していてもよく、重鎖の可変領域は第1の種に由来していてもよく、及び重鎖の定常領域は第2の種に由来する。
【0030】
「中和」抗体は、例えばウイルス、細菌、又は腫瘍上の特異的抗原に結合することによって、ウイルス、細菌、又は腫瘍の効果を低減させる抗体である。一部の例では、ROR1に対して特異的な抗体又はCARは、腫瘍の効果を中和する。
【0031】
抗原:動物に注射又は吸収される組成物を含む、動物において抗体産生又はT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物、又は物質。抗原は、異種抗原、例えば本開示の抗原によって誘導されるものを含む、特異的な液性又は細胞性免疫の産物と反応する。「エピトープ」又は「抗原決定基」は、それに対してB及び/又はT細胞が応答する抗原の領域を指す。一実施形態では、エピトープがMHC分子と共に提示される場合、T細胞はエピトープに応答する。エピトープは、連続するアミノ酸、又はタンパク質の三次元フォールディングによって近接する非連続アミノ酸の両方から形成し得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、通常は変性溶媒に暴露されても保持されるが、三次元フォールディングによって形成されるエピトープは、通常は変性溶媒による処理によって失われる。エピトープは、典型的には、ユニークな空間的立体構造において少なくとも3個、より一般的には、少なくとも5個、約9個、又は約8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体構造を決定する方法には、例えばX線結晶学及び核磁気共鳴が挙げられる。
【0032】
抗原の例には、抗原決定基を含有するペプチド、脂質、多糖類、及び核酸、例えば免疫細胞によって認識されるものが挙げられるがこれらに限定されない。抗原は、目的の病原体又はがん性細胞に由来するペプチドを含み得る。例示的な病原体には、細菌、真菌、ウイルス、及び寄生虫が挙げられる。一部の実施形態では、抗原は、がん性細胞、例えば血液系のがん性細胞(慢性リンパ球性白血病-CLL、急性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫)、又は固形悪性腫瘍(乳房、膵臓、黒色腫)に由来する。一部の実施形態では、抗原はROR1ポリペプチド、又はその抗原性断片である。
【0033】
「標的エピトープ」は、目的の抗体、例えばモノクローナル抗体に特異的に結合する抗原上の特異的エピトープである。一部の例では、標的エピトープは、目的の抗体又はCARに接触するアミノ酸残基を含み、抗体又はCARに接触することが分かっているアミノ酸残基によって標的エピトープを選択することができる。
【0034】
結合親和性:抗体、その抗原結合性断片又はCARの抗原に関する親和性。一実施形態では、親和性は、Frankel et al., Mol. Immunol.、16:101-106、1979によって記載されるスキャッチャード法の変法によって計算される。別の実施形態では、結合親和性は、抗原/抗体解離速度によって測定される。さらに別の実施形態では、高い結合親和性は、競合的ラジオイムノアッセイによって測定される。幾つかの例では、高い結合親和性は、少なくとも約1×10-9Mである。他の実施形態では、高い結合親和性は、少なくとも約1.5×10-9、少なくとも約2×10-9、少なくとも約3×10-9、少なくとも約4×10-9、又は少なくとも約5×10-9Mである。
【0035】
細胞:本発明はまた、CARを含む細胞、例えば免疫細胞にも関する。細胞は、本発明の核酸又はベクターを含んでもよい。細胞は、T細胞、又はナチュラルキラー(NK)細胞であってもよい。細胞はまた、iPSにより生成された細胞又はガンマデルタT細胞であってもよい。
【0036】
T細胞は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすある種のリンパ球であるT細胞又はTリンパ球であってもよい。それらは、他のリンパ球、例えばB細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)とは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって識別することができる。以下に概要を述べるように、T細胞には様々なタイプが存在する。
【0037】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞及びメモリーB細胞への成熟、並びに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスにおいて他の白血球を助ける。TH細胞は、その表面上にCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスII分子によりペプチド抗原と共に提示されると活性化される。これらの細胞は、TH1、TH2、TH3、TH17、Th9、又はTFHを含む幾つかのサブタイプの1つに分化することができ、これらは、異なるサイトカインを分泌して、異なるタイプの免疫応答を促進する。
【0038】
細胞溶解性T細胞(TC細胞又はCTL)は、ウイルス感染した細胞及び腫瘍細胞を破壊し、また移植拒絶反応にも関係している。CTLは、その表面にCD8を発現する。これらの細胞は、全ての有核細胞の表面上に存在するMHCクラスIに結合する抗原に結合することによって、その標的を認識する。IL-10、アデノシン、及び制御性T細胞によって分泌される他の分子を通して、CD8+細胞をアネルギー状態へと不活化することができ、これは自己免疫疾患、例えば実験的自己免疫性脳脊髄炎を防止する。
【0039】
メモリーT細胞は、感染症の寛解後長期間持続する抗原特異的T細胞の一部である。それらは、その同種抗原に再度暴露されると多数のエフェクターT細胞へと増大し、これにより過去の感染症に対する「記憶」を免疫系に提供する。メモリーT細胞は、3つのサブタイプ:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、及び2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞及びTEMRA細胞)を含む。メモリー細胞は、CD4+又はCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0040】
過去にはサプレッサーT細胞として知られていた制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持にとって極めて重要である。その主要な役割は、免疫反応の終了に向けてT細胞媒介免疫を終了させること、及び胸腺における負の選択プロセスを逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。CD4+ Treg細胞の2つの主要なクラス、すなわち天然に存在するTreg細胞及び適応性Treg細胞が記述されている。天然に存在するTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+ Treg細胞としても知られる)は、胸腺で発生し、発達中のT細胞と、TSLPによって活性化された骨髄(CD11c+)樹状細胞及び形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方との間の相互作用に関連している。天然に存在するTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在により、他のT細胞と識別することができる。FOXP3遺伝子の変異は、制御性T細胞の発達を防止して、致死性の自己免疫疾患IPEXを引き起こし得る。適応性Treg細胞(Tr1細胞又はTh3細胞としても知られる)は、正常な免疫応答の間に発生し得る。
【0041】
細胞は、ナチュラルキラー細胞(又はNK細胞)であり得る。NK細胞は、自然免疫系の一部を形成する。NK細胞は、MHCに依存しない様式で、ウイルス感染細胞からの自然免疫シグナルに対して迅速な応答を提供する。NK細胞(自然リンパ球系細胞の群に属する)は、大型顆粒リンパ球(LGL)として定義され、B及びTリンパ球を生成する共通のリンパ系前駆細胞から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃、及び胸腺において分化及び成熟することが知られており、そこでそれらはその後に循環中に入る。
【0042】
本発明のCAR細胞は、上記の細胞タイプのいずれであってもよい。
【0043】
本発明のCARを発現するT又はNK細胞は、患者自身の末梢血(第1者)から、又はドナー末梢血からの造血幹細胞移植の状況で(第2者)、又は無関係なドナーからの末梢血(第3者)のいずれからex vivoで作製してもよい。
【0044】
或いは、本発明のCARを発現するT又はNK細胞は、誘導可能な前駆細胞又は胚前駆細胞のT又はNK細胞へのex vivoでの分化に由来するものであってもよい。或いは、その溶解機能を保持し、治療剤として作用することができる不死化T細胞株を使用してもよい。
【0045】
これらの全ての実施形態では、CAR細胞は、ウイルスベクターによる形質導入、DNA又はRNAによるトランスフェクションを含む多くの手段の1つによってCARをコードするDNA又はRNAを導入することによって生成される。
【0046】
本発明のCAR細胞は、対象に由来するex vivo T又はNK細胞であってもよい。T又はNK細胞は、末梢血単核球(PBMC)試料に由来するものであってもよい。T又はNK細胞を、例えば抗CD3モノクローナル抗体による処理によって活性化及び/又は増大した後に、本発明の第1態様のCARをコードする核酸を形質導入してもよい。
【0047】
本発明のT又はNK細胞は:
(i)対象又は上記の他の起源からのT又はNK細胞含有試料の単離、及び
(ii)本発明のCARをコードする核酸配列によるT又はNK細胞の形質導入又はトランスフェクション
によって作製することができる。
【0048】
次に、T又はNK細胞を、精製してもよく、例えば、抗原結合ポリペプチドの抗原結合ドメインの発現に基づいて選択してもよい。
【0049】
本開示はまた、本発明のCARを含むT又はNK細胞を含むキットも提供することができる。
【0050】
キメラ抗原受容体(CAR):キメラ抗原受容体(CAR)はまた、キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体、及びキメラ免疫受容体としても知られており、免疫エフェクター細胞に任意の特異性を移植する操作された受容体である。古典的CARでは、モノクローナル抗体の特異性がT細胞に移植される。CARをコードする核酸を、例えばレトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入してもよい。このように、多数のがん特異的T細胞を、養子細胞移入のために生成することができる。
【0051】
CARの標的抗原結合ドメインは、一般的に、スペーサー及び膜貫通ドメインを介して、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む又はそれと会合するエンドドメインに融合される。CARが標的抗原に結合すると、これにより、それが発現されるT細胞に対して活性化シグナルの伝達が起こる。
【0052】
CARはまた、膜を貫通する膜貫通ドメインも含んでもよい。これは、疎水性アルファヘリックスを含み得る。膜貫通ドメインは、良好な受容体安定性を生じるCD28に由来するものであってもよい。
【0053】
エンドドメインは、シグナル伝達に関係するCARの一部である。エンドドメインは、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むか又はそれと会合する。抗原認識の後、受容体はクラスタを形成し、細胞にシグナルを伝達する。最も一般的に使用されるT細胞シグナル伝達構成要素は、3つのITAM(免疫受容体チロシン活性化モチーフ)を含有するCD3-ゼータのものである。これは、抗原が結合すると活性化シグナルをT細胞に伝達する。CD3-ゼータは、完全にコンピテントな活性化シグナルを提供するのではなく、追加の共刺激シグナル伝達が必要であり得る。例えば、キメラCD28、及びOX40をCD3-ゼータと共に使用して、増殖/生存シグナルを伝達することができ、或いは3つ全てを共に使用することができる。或いは、41BBをCD3-ゼータと共に使用することができる。しかし、当業者であれば、任意の適した共刺激ドメインを使用することができることを認識する。
【0054】
CARのエンドドメインは、CD28エンドドメイン、並びにOX40及びCD3-ゼータエンドドメインを含み得る。或いは、CARのエンドドメインは、41BB及びCD3-ゼータエンドドメインを含み得る。
【0055】
CARは、CARが細胞内、例えばT細胞内で発現されると、新生タンパク質が小胞体、及びその後細胞表面へ向かい、そこで発現されるように、シグナルペプチドを含み得る。
【0056】
CARは、ROR1結合ドメインを膜貫通ドメインと接続し、ROR1結合ドメインをエンドドメインから空間的に離れさせるためにスペーサー配列を含み得る。可動性のスペーサーにより、ROR1結合ドメインが様々な方向に向くことができ、ROR1結合を可能にする。当業者であれば、任意の適したスペーサー配列を使用することができることを理解する。
【0057】
スペーサー配列は、例えば短い可動性リンカー、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、又はCD8ストーク、又はその組合せを含み得る。或いは、リンカーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、又はCD8ストークと類似の長さ及び/又はドメインスペーシング特性を有する代替リンカー配列を含み得る。
【0058】
クローン変異体:生殖系列と比較して同一の変異、同一のVDJ又はVJ遺伝子の使用、並びに同一のD及びJ長を有するV領域の存在下で、1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸が異なる任意の配列。「生殖系列」配列とは、変異、例えば体細胞変異を含まない抗体/免疫グロブリン(又はその任意の断片)をコードする配列であることが意図される。相同性のパーセンテージは、いずれかのタイプの重鎖部分が抗原との接触後に受ける変異事象の指標を表す。
【0059】
コンジュゲート:共に連結された、例えば共有結合によって共に連結された2つの分子の複合体。一実施形態では、CARはエフェクター分子と連結されてもよく、例えばROR1ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインはエフェクター分子又は毒素に共有結合により連結され得る。連結は化学的又は組換え手段によるものであり得る。一実施形態では、連結は化学的であり、抗原結合ドメインとエフェクター分子との間の反応によって、2つの分子の間に形成された共有結合を生じ、1つの分子を形成する。場合により抗原結合ドメイン及びエフェクター分子の間にペプチドリンカー(短いペプチド配列)を含めることができる。コンジュゲートは、個別の機能性を有する2つの分子、例えばCAR及びエフェクター分子から調製され得ることから、それらは時に、「キメラ分子」とも呼ばれる。一実施形態では、エフェクター分子に連結された抗原結合ドメインを、体内でのその半減期を増加させるために脂質又は他の分子、タンパク質又はペプチドに更に連結し得る。
【0060】
接触させる(接触する):直接物理的に付随した状態で配置すること、これはin vivo又はin vitroのいずれかで起こり得る固体及び液体の形態の両方を含む。接触させるとは、1つの分子と別の分子との間の接触、例えば1つのポリペプチド、例えば抗原の表面上のアミノ酸を別のポリペプチド、例えば抗原結合ドメインに接触させることを含む。接触させることはまた、例えば、CARを細胞と直接物理的に付随した状態で配置することによって、細胞に接触させることを含み得る。
【0061】
対照:標準試料。一部の実施形態では、対照は、健康な患者から得た試料である。他の実施形態では、対照は、陽性対照としての役目を果たす、がんと診断された患者から得た組織試料である。さらに他の実施形態では、対照は、過去の対照又は標準的な基準値又は値の範囲(例えば、過去に試験された対照試料、例えば公知の予後又は転帰を有する感染患者の群、又はベースライン若しくは正常値を表す試料の群)である。
【0062】
試験試料と対照との間の差は、増加であり得るか、又は逆に減少であり得る。差は、定性的な差又は定量的な差、例えば統計学的に有意な差であり得る。一部の例では、差は、対照と比較して少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、又は500%より大きい、増加又は減少である。
【0063】
検出可能マーカー:第2の分子、例えば抗体の検出を容易にするために、第2の分子に直接又は間接的にコンジュゲートされた検出可能分子(標識としても知られる)。例えば、検出可能マーカーは、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法、又は診断イメージング技術(例えば、CTスキャン、MRI、超音波、ファイバースコープ検査、及び腹腔鏡検査)による検出が可能であり得る。検出可能マーカーの非制限的な例には、フルオロフォア、蛍光タンパク質、化学発光剤、酵素的連結、放射活性同位体、及び重金属又は化合物(例えば、MRIによる検出のための超常磁性酸化鉄ナノ結晶)が挙げられる。一例では、「標識抗体」は、抗体への別の分子の組み込みを指す。例えば、標識は、検出可能マーカー、例えば放射標識アミノ酸の組み込み、又は標識アビジン(例えば、光学的又は比色測定法によって検出することができる蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドに対する結合である。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野で公知であり、使用することができる。ポリペプチドの標識の例には、放射性同位体又は放射性核種(例えば、35S又は131I)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ランタニドりん光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される既定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、又は磁性剤、例えばガドリニウムキレートが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、起こり得る立体障害を低減するために、標識を様々な長さのスペーサーアームによって結合させる。検出可能マーカーを使用するための方法及び様々な目的にとって適切な検出可能マーカーを選択する指針は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989)及びAusubelら(In Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)において考察されている。本発明の特定の実施形態では、抗原結合ドメイン又はその断片を、検出可能マーカーによって標識することができる。
【0064】
検出する:何かの実在、存在、又は事実を同定すること。一般的な検出方法は、当業者に公知であり(例えば、米国特許第7,635,476号を参照されたい)、本明細書に開示のプロトコール及び試薬によって補うことができる。
【0065】
エピトープ:抗原決定基。これらは、抗原性である、すなわち特異的免疫応答を誘発する分子上の特定の化学基又はペプチド配列である。抗原結合ドメイン又は抗体は、ポリペプチド上の特定の抗原性エピトープに特異的に結合する。一部の例では、開示の抗原結合ドメインは、ROR1の表面上のエピトープに特異的に結合する。
【0066】
フレームワーク領域:CDRの間に介在するアミノ酸配列。この用語は、可変軽鎖及び可変重鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は、抗原結合にとって適切な方向でCDRを保持する役目を果たす。
【0067】
Fcポリペプチド:第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチド。Fc領域は、一般的にIgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指す。Fc領域はまた、これらのドメインに対してN末端側に可動性ヒンジの一部又は全部を含み得る。IgA及びIgMの場合、Fc領域は、テール部分を含んでも含まなくてもよく、J鎖に結合していても結合していなくてもよい。IgGの場合、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)並びにCガンマ1(Cγ1)及びCγ2の間のヒンジの下位部分を含む。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に、残基C226又はP230(ナンバリングはEUインデックスに従う)を含むと定義される。IgAの場合、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCアルファ2及びCアルファ3(Cα2及びCα3)並びにCアルファ1(Cα1)及びCα2の間のヒンジの下位部分を含む。Fc領域の機能的に等価なアナログ及び変異体が、Fc領域の定義に包含される。Fc領域の機能的に等価なアナログは、野生型又は天然に存在するFc領域と比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含む変異体Fc領域であり得る。変異体Fc領域は、天然に存在するFc領域と少なくとも50%相同性、例えば約80%、及び約90%、又は少なくとも約95%の相同性を保有する。Fc領域の機能的に等価なアナログは、タンパク質のN又はC末端に付加されている又はそこから欠失されている1つ以上のアミノ酸残基、例えば30個以下又は10個以下の付加及び/又は欠失を含み得る。Fc領域の機能的に等価なアナログは、融合パートナーに作動可能に連結されたFc領域を含む。Fc領域の機能的に等価なアナログは、上記で定義されたFc領域を構成するIgドメインの全部の大部分(the majority of all)を含まなければならず、例えば本明細書に定義されるIgG及びIgA Fc領域は、CH2をコードする配列の大部分及びCH3をコードする配列の大部分を含まなければならない。このように、CH2ドメイン単独、又はCH3ドメイン単独は、Fc領域と考えられない。Fc領域は、単離されたこの領域、又はFc融合ポリペプチドの状況でのこの領域を指し得る。
【0068】
宿主細胞:ベクターを増やしてそのDNAを発現させることができる細胞、例えば開示されるCARを宿主細胞において発現させることができる。細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。この用語はまた、対象の宿主細胞の任意の子孫も含む。複製の間に変異が起こり得ることから、全ての子孫が親細胞と同一でなくてもよいと理解される。しかし、用語「宿主細胞」を使用する場合には、そのような子孫が包含される。
【0069】
免疫複合体:可溶性抗原に抗体が結合すると、免疫複合体を形成する。免疫複合体の形成は、当業者に公知の従来の方法、例えば免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、ELISA、イムノブロッティング(例えば、ウェスタンブロット)、磁気共鳴イメージング、CTスキャン、X線、及びアフィニティクロマトグラフィーにより検出することができる。選択した抗体の免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を使用して定量され得る。
【0070】
免疫学的反応条件:特定のエピトープに対して産生された抗体又は抗原結合ドメインが、実質的に他の全てのエピトープに対する結合より検出可能に大きい程度に、及び/又はその結合が実質的に排除される程度にそのエピトープに結合することを可能とする条件の意味を含む。免疫学的反応条件は、抗体結合反応のフォーマットに依存し、通常はイムノアッセイプロトコールで利用される条件又はin vivoで遭遇する条件である。イムノアッセイフォーマット及び条件の説明に関しては、Harlow & Lane、前記を参照されたい。本方法で使用される免疫学的反応条件は、生きている哺乳動物又は哺乳動物細胞内で典型的である条件(例えば、温度、浸透圧、pH)への参照を含む「生理的条件」である。一部の臓器は極端な条件に供されると理解されるが、生物内及び細胞内環境は通常、pH 7付近(例えば、pH 6.0~pH 8.0、より典型的にはpH 6.5~7.5)にあり、主要溶媒として水を含有し、かつ0℃より上かつ50℃未満の温度に存在する。浸透圧は、細胞の生存及び増殖を可能とする範囲内である。
【0071】
疾患を阻害又は処置する:例えば、がんのリスクがある対象において疾患又は状態の完全な発生を阻害する。「処置」は、それが発症し始めた後の疾患又は病態の兆候又は症状を改善する治療介入を指す。疾患又は病態に関連する用語「改善する」は、処置のあらゆる観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、感受性がある対象における疾患の臨床症状の発生の遅延、疾患の一部又は全ての臨床症状の重症度の低減、疾患のより遅い進行、腫瘍/がんのサイズの低減、対象の全般的健康若しくは福利の改善、又は特定の疾患に対して特異的である当技術分野で周知の他のパラメータによって示すことができる。「予防的」処置は、病態を発症するリスクを減少させる目的で、疾患の兆候を示さないか、又はごく初期の兆候を示す対象に施される処置である。
【0072】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(例えば細胞、例えばB細胞、核酸、ペプチド、タンパク質、重鎖ドメイン、又は抗体)は、構成要素が天然に存在する生物の細胞における他の生物学的構成要素、例えば他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、並びにタンパク質から実質的に分離され、離れて産生され、又は精製されている。このように「単離」されている核酸、ペプチド、及びタンパク質は、標準的な精製法によって精製された核酸及びタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質並びに化学合成核酸も包含する。
【0073】
Kd:所与の相互作用、例えばポリペプチドリガンド相互作用又は抗体抗原相互作用の解離定数。例えば、抗原結合ドメイン又は抗体(例えば、本明細書に開示の抗原結合ドメインのいずれか)と抗原(例えば、ROR1ポリペプチド)との2分子相互作用の場合、これは、複合体の濃度で除算した2分子相互作用の個々の構成要素の濃度である。
【0074】
標識:別の分子、例えば抗体又はタンパク質に直接又は間接的にコンジュゲートされ、その分子の検出を容易にする検出可能な化合物又は組成物。標識の特定の非制限的な例には、蛍光タグ、酵素連結、及び放射活性同位体が挙げられる。一部の例では、開示されるCARは標識されていてもよい。
【0075】
悪性細胞:用語「悪性」は、本明細書において、その標準的な意味に従って、その成長が自己抑制的ではなく、隣接する組織に浸潤することが可能であり得て、及び遠位組織へと広がることが可能であり得る細胞を指すために使用される。
【0076】
核酸:ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連する天然に存在する構造変異体、及びその天然に存在しない合成アナログ)、関連する天然に存在する構造変異体、及びその天然に存在しない合成アナログで構成されるポリマー。このように、この用語は、ヌクレオチド及びその間の連結が、例えば、限定しないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)等の天然に存在しない合成アナログを含む、ヌクレオチドポリマーを含む。そのようなポリヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機を使用して合成することができる。用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には短いポリヌクレオチド、一般的に約50ヌクレオチド以下のポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって表される場合、これはまた「U」を「T」の代わりに使用するRNA配列(すなわち、A、U、G、C)も含むと理解される。
【0077】
本明細書では、従来の表記法を使用してヌクレオチド配列を記載し、一本鎖ヌクレオチド配列の左側の末端は5'末端であり、二本鎖ヌクレオチド配列の左側の方向を5'方向と呼ぶ。新生RNA転写物に対するヌクレオチドの5'から3'への付加の方向を、転写方向と呼ぶ。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖を「コード鎖」と呼び、そのDNAから転写されたmRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の、RNA転写物の5'末端の5'に位置する配列を「上流配列」と呼び、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の、コードするRNA転写物の3'末端に対して3'である配列を「下流配列」と呼ぶ。
【0078】
「cDNA」は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態である、mRNAと相補的又は同一であるDNAを指す。
【0079】
「コードする」とは、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)の規定の配列、又はアミノ酸の規定の配列のいずれかを有し、それに起因する生物学的特性を有する、生物学的過程における他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型としての役目を果たすポリヌクレオチド、例えば遺伝子、cDNA、又はmRNAにおけるヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。このように、遺伝子は、その遺伝子によって産生されるmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表に提供される、遺伝子又はcDNAのコード鎖、及び転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードするということができる。特に明記していなければ、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを含んでいてもよい。
【0080】
「組換え核酸」とは、天然で互いに結合していないヌクレオチド配列を有する核酸を指す。これは、適した宿主細胞を形質転換するために使用することができる増幅又はアセンブルされた核酸を含む核酸ベクターを含む。組換え核酸を含む宿主細胞を、「組換え宿主細胞」と呼ぶ。次に、遺伝子を組換え宿主細胞において発現させて、例えば「組換えポリペプチド」を産生する。組換え核酸は、非コード機能(例えば、プロモーター、複製開始点、リボソーム結合部位等)の役目も同様に果たし得る。
【0081】
第1の配列は、その配列が第1の配列であるポリヌクレオチドが、その配列が第2の配列であるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする場合、第2の配列に関して「アンチセンス」である。
【0082】
2つ以上のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の配列関係を説明するための用語として、「基準配列」、「から選択される」、「比較ウィンドウ」、「同一」、「配列同一性のパーセンテージ」、「実質的に同一」、「相補的」、及び「実質的に相補的」が挙げられる。
【0083】
核酸配列の配列比較に関して、典型的に1つの配列は、それに対して試験配列を比較する基準配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピューターに入力し、部分配列の座標を必要に応じて指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用する。比較のための配列のアライメント方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970のホモロジーアライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター実装(GAP、BESTFIT、FASTA、及びWisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるTFASTA)によって、又は手作業によるアライメント及び肉眼での検分(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., eds 1995 supplement)を参照されたい)によって実行することができる。
【0084】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、単純化された、Feng & Doolittle、J. Mol. Evol. 35:351-360, 1987のプログレッシブアライメント法を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-153, 1989によって記載される方法と類似である。PILEUPを使用して、基準配列を他の試験配列と比較して、以下のパラメータ:デフォルトギャップ重み(3.00)、デフォルトギャップ長重み(0.10)、及び重み付け末端ギャップを使用して、パーセント配列同一性関係を決定する。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ、例えばバージョン7.0(Devereaux et al., Nuc. Acids Res. 12:387-395, 1984)から得ることができる。
【0085】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの別の例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990、及びAltschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1977に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov)を通して公開されている。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。BLASTPプログラム(アミノ酸配列用)は、デフォルトとしてワード長(W)3、及び期待値(E)10、及びBLOSUM62スコア行列を使用する(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989を参照されたい)。オリゴヌクレオチドは、長さが最長約100ヌクレオチド塩基の直鎖状のポリヌクレオチド配列である。
【0086】
ClustalWは、3つ以上の配列をコンピューターにより効率的に整列させるプログラムである。複数の配列を整列させることにより、他の領域より高度に保存されている特定の特徴に関連し得る類似領域が強調される。このように、このプログラムは、進化の間に起こった置換をモデル化とし、配列間の進化的関係を導き出すことを狙いとする系統学解析のために配列を分類することができる。ClustalWマルチ配列アライメントのウェブ形態は、インターネット上のEMBL-EBI(ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/)から利用可能であり、同様にLarkin et al., Bioinformatics 2007 23(21): 2947-2948も参照されたい。
【0087】
ポリヌクレオチド又は核酸配列とは、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマーの形態を指す。組換えポリヌクレオチドとは、それが由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて直ちに連続する(1つが5'末端で1つが3'末端である)コード配列の両方と直ちに連続しないポリヌクレオチドを含む。したがって、この用語は、例えばベクター、自律複製プラスミド若しくはウイルス、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み入れられている、又は他の配列とは独立な別の分子(例えば、cDNA)として存在する組換えDNAを含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのヌクレオチドの修飾型であり得る。この用語は、DNAの一本鎖及び二本鎖の形態を含む。
【0088】
薬学的に許容される担体:使用される薬学的に許容される担体は、従来通りである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition, 1995は、本明細書に開示される細胞及びCARの薬剤送達にとって適した組成物及び製剤を記載している。
【0089】
一般的に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、水、生理食塩水、緩衝塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロール等が挙げられるがこれらに限定されない、薬学的及び生理学的に許容される液体をビヒクルとして含む注射可能な液体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、又はカプセル剤形)の場合、従来の非毒性の固体担体は、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤、及びpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタンを含み得る。
【0090】
医薬品:対象又は細胞に適切に投与された場合に、所望の治療効果又は予防効果を誘導することが可能である化学化合物又は組成物。一部の例では、医薬品は、本発明のCARを発現する本開示の細胞の1つ以上を含む。
【0091】
ポリペプチド:長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)によらない、アミノ酸の任意の鎖。一実施形態では、ポリペプチドは、ROR1ポリペプチドである。一実施形態では、ポリペプチドは、開示される抗体又はその断片である。「残基」は、アミド結合又はアミド結合模倣体によってポリペプチドに組み込まれたアミノ酸又はアミノ酸模倣体を指す。ポリペプチドは、アミノ末端(N末端)端部及びカルボキシ末端端部を有する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換表は、当業者に周知である。以下の6つの群は、互いに保存的置換であると考えられるアミノ酸の例である:
1) アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4) アルギニン(R)、リジン(K)、
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
【0092】
精製された:精製されたという用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、むしろ相対的用語として意図される。このように、例えば、精製ペプチド調製物は、ペプチド又はタンパク質(例えば、抗体)が細胞内のその天然の環境内に存在する場合より、ペプチド又はタンパク質が濃縮されている調製物である。一実施形態では、調製物は、タンパク質又はペプチドが調製物の総ペプチド又はタンパク質含有量の少なくとも50%に相当するように精製される。
【0093】
組換え体:組換え核酸は、天然に存在しない配列を有する、又は2つのそうでなければ分離されている配列のセグメントを人為的に組合せることによって作製される配列を有する核酸である。この人為的な組合せはしばしば、化学合成によって、又はより一般的には単離された核酸セグメントの人為的操作によって、例えば遺伝子操作技術によって達成される。
【0094】
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表現され、配列同一性とも呼ばれる。配列同一性は、しばしばパーセンテージ同一性(又は類似性若しくは相同性)に関して決定され、パーセンテージがより高ければ、2つの配列はより類似である。ポリペプチドのホモログ又は変異体は、標準的な方法を使用して整列させた場合に、比較的高い程度の配列同一性を保有する。
【0095】
比較のためにポリペプチド配列を整列させる方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラム及びアライメントアルゴリズムが上記のように使用され得る。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アライメント法及び相同性計算の詳細な検討を提示している。NCBIベーシックローカルアライメント検索ツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)及びインターネット上(このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明と共に)を含む幾つかの提供元から利用可能である。
【0096】
ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインのVL又はVHのホモログ及び変異体は、通常、目的のアミノ酸配列と全長にわたって整列させて計数した場合に、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を保有することを特徴とする。基準配列に対して更により高い類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合にさらに高いパーセンテージ同一性、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示す。配列全体より短い配列を比較して配列同一性を求める場合、ホモログ及び変異体は、通常、10~20アミノ酸の短いウィンドウに対して少なくとも80%の配列同一性を保有し、基準配列に対するその類似性に応じて少なくとも85%又は少なくとも90%又は95%の配列同一性を保有し得る。当業者であれば、これらの配列同一性の範囲が、単なる指針として提供され、提供される範囲外で非常に重要なホモログを得ることが全く有り得ることを理解する。
【0097】
「選択的にハイブリダイズする」又は「選択的に結合する」核酸は、無関係なヌクレオチド配列を除外する中等度又は高度にストリンジェントな条件でハイブリダイズ又は結合する。核酸ハイブリダイゼーション反応では、特定のレベルのストリンジェンシーを達成するために使用される条件は、ハイブリダイズする核酸の性質に応じて変化する。例えば、長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、GC対AT含有量)、及びハイブリダイズする核酸領域の核酸のタイプ(例えば、RNA対DNA)を、ハイブリダイゼーション条件を選択する際に考慮することができる。さらなる検討事項は、核酸の1つを例えばフィルター上に固定するか否かである。
【0098】
漸増性の高ストリンジェンシー条件の特定の例は、以下の通りである:ほぼ室温で2×SSC/0.1% SDS(ハイブリダイゼーション条件)、ほぼ室温で0.2×SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシー条件)、約42℃で0.2×SSC/0.1% SDS(中等度のストリンジェンシー条件)、及び約68℃で0.1×SSC(高ストリンジェンシー条件)。当業者であればこれらの条件の変法を容易に決定することができる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。洗浄は、これらの条件の1つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を使用して実行することができ、又は条件の各々を、例えば上記に記載される順で各10~15分間、記載のステップのいずれか又は全てを繰り返すことによって使用することができる。しかし、上記のように、最適な条件は、関係する特定のハイブリダイゼーション反応に応じて変化し、実験に基づいて決定することができる。
【0099】
特異的に結合する:抗体又は抗原結合ドメインについて用いられる場合、タンパク質及び他の生物材料の不均一な集団の存在下で、標的タンパク質、ペプチド、又は多糖類の存在を決定する結合反応を指す。このように、指定された条件では、抗体又は抗原結合ドメインは、特定の標的タンパク質、ペプチド、又は多糖類(例えば、腫瘍の表面に存在する抗原、例えばROR1)に優先的に結合し、試料又は対象に存在する他のタンパク質又は多糖類に有意な量で結合しない。特異的結合は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。抗体抗原複合体に関する場合、抗原及び抗体の特異的結合は、約10-7モル濃度未満、例えば約10-7モル濃度未満、10-8モル濃度、10-9、又は更に約10-10モル濃度未満のKdを有する。
【0100】
T細胞受容体(TCR):T細胞受容体(TCR)は、Tリンパ球の表面に発現され、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する。TCRが抗原性ペプチド及びMHC(ペプチド/MHC)と係合すると、Tリンパ球は、関連する酵素、共受容体、特化したアダプター分子、及び活性化又は放出される転写因子によって媒介される一連の生化学事象を通して活性化される。
【0101】
TCRは、通常、インバリアントCD3鎖分子との複合体の一部として発現される、高度に可変のアルファ(α)及びベータ(β)鎖からなるジスルフィド結合した膜アンカー型固定ヘテロ二量体である。この受容体を発現するT細胞は、α:β(又はaβ)T細胞(全T細胞の約95%)と呼ばれる。少数のT細胞が、可変ガンマ(γ)及びデルタ(δ)鎖によって形成される代替の受容体を発現し、γδ T細胞(全T細胞の約5%)と呼ばれる。
【0102】
各々のα及びβ鎖は、2つの細胞外ドメイン:可変(V)領域及び定常(C)領域で構成され、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインの両方が逆並行βシートを形成する。定常領域は、細胞膜に対して近位であり、その後に膜貫通領域及び短い細胞質テールが続くが、可変領域はペプチド/MHC複合体に結合する(図1を参照されたい)。TCRの定常領域は、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列からなり、これが2つの鎖の間の連結を形成する。
【0103】
TCRα鎖及びβ鎖の両方の可変ドメインは、3つの超可変領域又は相補性決定領域(CDR)を有する。β鎖の可変領域はまた、追加の超可変領域(HV4)も有するが、これは通常、抗原に接触せず、したがってCDRとは考えられない。
【0104】
TCRはまた、最大5個のインバリアント鎖γ、δ、ε(まとめてCD3と呼ぶ)及びζを含む。CD3及びζサブユニットは、αβ又はγδによる抗原の認識後に二次伝達物質及びアダプター分子と相互作用する特異的細胞質ドメインを通してTCRシグナル伝達を媒介する。TCR複合体の細胞表面発現の前に、TCRα及びβ並びにCD3γ及びδの膜貫通ドメイン及び細胞外ドメインの両方が役割を果たすサブユニットのペア毎のアセンブリが起こる。
【0105】
したがって、TCRは、一般的にCD3複合体、並びに可変及び定常領域で構成されるTCRα及びβ鎖で構成される(図1)。
【0106】
治療剤:一般的な意味で使用する場合、これは処置剤、予防剤、及び交換剤(replacement agent)を含む。
【0107】
治療有効量又は有効量:処置される対象において所望の効果を達成するために十分な特定の物質、例えば開示される抗体の量。例えば、これは腫瘍の成長を阻害するために必要な量であり得る。幾つかの実施形態では、治療有効量は、疾患の症状を低減するために必要な量である。対象に投与する場合、一般的に、所望のin vitro効果を達成することが示されている標的組織濃度を達成する投与量を使用する。
【0108】
ベクター:核酸分子はベクターによって宿主細胞に導入され、それによって形質転換宿主細胞を産生し得る。ベクターは、それを宿主細胞において複製させる核酸配列、例えば複製開始点を含み得る。ベクターはまた、1つ以上の選択可能マーカー遺伝子及び当技術分野で公知の他の遺伝的エレメントも含み得る。ベクターは、例えばプラスミド又はウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクター、又はトランスポゾンに基づくベクター、又は合成mRNAであり得る。ベクターは、T細胞又はNK細胞をトランスフェクト又は形質導入することが可能であり得る。
【0109】
単数形「1つの(a)」「1つの(an)」、及び「その」は、本文が明らかにそれ以外であることを示していない限り、複数形を含む。同様に、用語「又は」は、本文が明らかにそれ以外であることを示していない限り、「及び」を含むと意図される。更に、核酸又はポリペプチドに関して与えられる全ての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及び全ての分子量又は分子質量の値は、概算であり、説明のために提供されることが理解されるべきである。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は等価の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、適した方法及び材料を以下に記載する。用語「含む(comprise)」は、「含む(include)」を意味する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、用語の説明を含み、本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は、単に説明するためであり、それらに限定することは意図されない。
【0110】
ROR1に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)
ROR1に選択的に結合する抗原結合ドメインを含む臨床的に有用なCARを、本明細書において開示する。
【0111】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、6nM以下の平衡定数(Kd)でROR1ポリペプチドに特異的に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合ドメインは、約1.6×10-9M以下、約2×10-9M以下、約3×10-9M以下、約4×10-9M以下又は約5×10-9M以下のKDでROR1ポリペプチドに結合する。
【0112】
本明細書に開示の抗原結合ドメインは、ラット抗体に由来し得て、ラットフレームワーク領域を含み得る。一部の好ましい実施形態では、抗原結合ドメインはヒト化されており、このため、1つ以上のヒトフレームワーク領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗原結合ドメインは、キメラである。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、ラット及びヒト領域を含む。
【0113】
抗原結合ドメインは、ROR1ポリペプチドに特異的に結合することができる。好ましくは、抗原結合ドメインは、ヒトROR1ポリペプチドに特異的に結合することができる。抗原結合ドメインは、好ましくは重鎖及び軽鎖を含み、好ましくは、各々のVH及びVLは、上記のようにアミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4で配置された3つのCDR及び4つのFWRで構成される。
【0114】
第1の実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3は、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列は、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。
【0115】
各々のCDRの配列は、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。このことは、CDRが所与の配列と比較して1つ又は2つのアミノ酸置換を含んでもよいことを意味する。しかし、1つ以上のCDRがアミノ酸置換を実際に含有していても、CARはなおもROR1に選択的に結合することができる。好ましくは、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0116】
好ましくは、各々のCDRの配列は、1つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。このことは、CDRが所与の配列と比較して1つのアミノ酸置換を含んでもよいことを意味する。好ましくは、アミノ酸置換は保存的置換である。
【0117】
一部の実施形態では、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)は、配列番号27、36、44、及び49に記載の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、HCDR3は、配列番号36、44、及び49に記載の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0118】
抗原結合ドメインは、配列番号15、29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域(LCFR)1、配列番号17、30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号19、31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号21、32、及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有し得る。
【0119】
好ましくは、抗原結合ドメインは、配列番号29、50、及び53のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR1、配列番号30、38、及び46のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR2、配列番号31、39、47、及び54のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR3、並びに配列番号32及び40のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むLCFR4を含む軽鎖可変ドメインを有する。
【0120】
抗原結合ドメインは、配列番号22、33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域(HCFR)1、配列番号24、34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号26、35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号28、37、及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有し得る。
【0121】
好ましくは、抗原結合ドメインは、配列番号33、41、及び55のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR1、配列番号34、42、及び51のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR2、配列番号35、43、48、52、及び56のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR3、並びに配列番号37及び45のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含むHCFR4を含む重鎖可変ドメインを有し得る。
【0122】
以下に示すように、上記で言及した各々のフレームワーク領域の配列は、所与の配列と異なっていてもよい。例えば、これは最大10個のアミノ酸位置で異なり得るが、最大で9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸置換が存在し得るように10個未満のアミノ酸置換が存在することが好ましい。或いは、各々のフレームワーク領域は、配列表に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0123】
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、配列番号3、4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0124】
好ましくは、重鎖可変ドメインは、配列番号9、10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0125】
配列番号4、5、6、7、及び8は、ヒト化軽鎖可変領域である。配列番号10、11、12、13、及び14は、ヒト化軽鎖可変領域である。本発明者らは、これらの軽鎖及び重鎖領域の全ての組合せを試み、25個の異なる構築物を得た。
【0126】
したがって、一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、12、及び13のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0127】
他の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0128】
更なる実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0129】
代替の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0130】
様々な実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0131】
同様に、一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0132】
他の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0133】
更なる実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0134】
代替の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0135】
様々な実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0136】
特定の実施形態では、
(a)軽鎖可変ドメインは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、
(c)軽鎖可変ドメインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、
(d)軽鎖可変ドメインは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、
(e)軽鎖可変ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、又は
(f)軽鎖可変ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0137】
以下に示すように、上記で言及した各々の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの配列は、所与の配列と異なっていてもよい。例えば、軽鎖/重鎖可変ドメインは、配列表に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含み得る。或いは、軽鎖/重鎖可変ドメイン配列は、最大10個のアミノ酸位置で異なっていてもよいが、最大で9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸置換が存在し得るように10個未満のアミノ酸置換が存在することが好ましい。
【0138】
上記で言及したように、一部の実施形態では、軽鎖フレームワーク領域、重鎖フレームワーク領域、軽鎖可変ドメイン、及び重鎖可変ドメインは、上記のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。例えば、軽鎖フレームワーク領域、重鎖フレームワーク領域、軽鎖可変ドメイン、及び重鎖可変ドメインは、上記のアミノ酸配列において最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸置換を含み得る。軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの配列に変異が存在する場合、好ましくは、CDRには如何なるアミノ酸置換も存在しない。特に、上記の抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域は、上記のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。更に、軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域は、上記のアミノ酸配列において、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸置換を含み得る。好ましくは、アミノ酸置換は上記のように保存的置換である。例えば、フレームワーク領域は、配列をヒト化するためにそのような置換を含み得る。好ましくは、フレームワーク領域はヒト化されている。
【0139】
第2の実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、LCDR1は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3は、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、並びに重鎖可変ドメインは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、HCDR1は、配列番号60に記載のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3は、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含み、各々の相補性決定領域の配列は、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。
【0140】
上記に示すように、各々のCDRの配列は、最大2つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。このことは、CDRが、所与の配列と比較して1つ又は2つのアミノ酸置換を含み得ることを意味する。しかし、1つ以上のCDRがある特定のアミノ酸置換を含んでも、抗原結合ドメインはそれでもなおROR1に選択的に結合することができる。好ましくは、アミノ酸置換は、保存的置換である。
【0141】
好ましくは、各々のCDRの配列は、1つのアミノ酸位置で所与の配列と異なっていてもよい。このことは、CDRが所与の配列と比較して1つのアミノ酸置換を含有し得ることを意味している。好ましくは、アミノ酸置換は保存的置換である。より好ましくは、各々のCDRの配列は、所与の配列と異ならない。
【0142】
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、配列番号3、4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、軽鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、7、及び8のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0143】
好ましくは、重鎖可変ドメインは、配列番号9、10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、重鎖可変ドメインは、配列番号10、11、12、13、及び14のうちの1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0144】
本発明の第1の実施形態に関して上で述べたように、本発明者らは、軽鎖可変ドメイン(配列番号4、5、6、7、及び8)及び重鎖可変ドメイン(配列番号10、11、12、13、及び14)の全ての組合せを試み、25個の異なる構築物を得た。したがって、これらの配列の組合せに関する上記の説明はまた、上記で言及した第2の実施形態にも適用可能である。
【0145】
特定の実施形態では、
(a)軽鎖可変ドメインは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、
(c)軽鎖可変ドメインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み、
(d)軽鎖可変ドメインは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、
(e)軽鎖可変ドメインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、又は
(f)軽鎖可変ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、かつ重鎖可変ドメインは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0146】
上記で言及した各々の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの配列は、所与の配列とは異なっていてもよい。例えば、軽鎖/重鎖可変ドメインは、配列表に記載のアミノ酸配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含み得る。或いは、軽鎖/重鎖可変ドメイン配列は、最大10個のアミノ酸位置で異なっていてもよいが、最大9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個のアミノ酸置換が存在し得るように、10個未満のアミノ酸置換が存在することが好ましい。
【0147】
上記の全ての実施形態に関して、当業者であれば、如何なる置換も、VHとVL領域との間の正確なフォールディング及び安定化にとって必要な重要なアミノ酸残基を保持すること、並びにCARの低いpI及び低い毒性を保存するために残基の電荷特性を保持することを認識する。このように、当業者であれば、周知の分子技術を使用して、上記で示した配列を容易に再検討し、保存的置換を同定し、及び保存的変異体を産生することができる。
【0148】
上記の抗原結合ドメインに関してエピトープマッピングが実施された。一実施形態では、ヒトROR1の残基Gln-261は、抗原結合ドメインにとって必須であることが見出されている。したがって、ROR1のエピトープに結合する抗原結合ドメインであって、該エピトープがアミノ酸Gln-261を含む、抗原結合ドメインもまた提供される。
【0149】
抗原結合ドメインは、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ROR1のエピトープ決定基に結合することが可能である抗体断片、例えばFab、F(ab')2、及びFvの構造を有し得る。これらの抗体断片は、抗原に選択的に結合する能力を保持しており、上記の通りである。これらの断片を作製する方法は、当技術分野で公知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988を参照されたい)。
【0150】
更なる群の実施形態では、抗原結合ドメインは、Fv抗体の構造を有し得て、これは典型的には約25kDaであり、各々の重鎖及び各々の軽鎖当たり3つのCDRを有する完全な抗原結合部位を含有する。これらの抗体を産生するために、VH及びVLを、宿主細胞において2つの個々の核酸構築物から発現させることができる。VH及びVLが不連続に発現される場合、Fv抗体の鎖は、典型的には非共有結合相互作用によって結び付けられる。しかし、これらの鎖は、希釈すると解離する傾向があり、このため、グルタルアルデヒド、分子間ジスルフィド、又はペプチドリンカーを通して鎖を架橋する方法が開発されている。このように、一例では、Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がジスルフィド結合によって化学的に連結されている、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)であり得る。
【0151】
追加の例では、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続されたVH及びVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、その後宿主細胞、例えば大腸菌(E. coli)に導入する。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドによって単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを産生するための方法は、当技術分野で公知である(Whitlow et al., Methods: a Companion to Methods in Enzymology, Vol. 2, page 97, 1991、Bird et al., Science 242:423, 1988、米国特許第4,946,778号、Pack et al., Bio/Technology 11:1271, 1993、及びSandhu、前記を参照されたい)。一本鎖抗体の二量体(scFV2)もまた企図される。
【0152】
抗原結合ドメインを含む抗体断片は、抗体のタンパク質分解加水分解、又は断片をコードするDNAを大腸菌において発現させることによって調製することができる。抗体断片は、従来法による抗体全体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、抗体のペプシンによる酵素的切断によって産生され、F(ab')2と呼ばれる5S断片を提供することができる。この断片を、チオール還元剤、及び場合によりジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基のブロッキング基を使用して更に切断し、3.5S Fab'一価断片を産生することができる。或いは、ペプシンを使用する酵素的切断は、2つの一価Fab'断片及びFc断片を直接産生する(米国特許第4,036,945号、及び米国特許第4,331,647号、及びその中に含まれる参考文献、Nisonhoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89:230, 1960、Porter、Biochem. J. 73:119, 1959、Edelman et al., Methods in Enzymology, Vol. 1, page 422, Academic Press, 1967、及びColigan et al. at sections 2.8.1-2.8.10, and 2.10.1-2.10.4を参照されたい)。
【0153】
抗体を切断する他の方法、例えば重鎖を分離して一価の軽鎖-重鎖断片を形成する方法、断片の更なる切断方法、又は他の酵素的、化学的、若しくは遺伝的技術もまた、断片が、インタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用され得る。
【0154】
本明細書に開示される抗原結合ドメイン、抗体又は抗体断片は、誘導体化することができ、又は別の分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)に連結することができる。一般的に、抗体又はその一部は、ROR1ポリペプチドに対する結合が、誘導体化又は標識化によって有害な影響を受けないように誘導体化される。例えば、抗体は、1つ以上の他の分子実体、例えば別の抗体(例えば、二重特異性抗体又はダイアボディ)、検出剤、医薬品、及び/又は抗体若しくは抗体部分と別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)との会合を媒介することができるタンパク質若しくはペプチドと、例えば化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合会合、又はその他のものによって、機能的に連結することができる。
【0155】
1つのタイプの誘導体化抗体は、2つ以上の抗体(同じタイプ又は異なるタイプの、例えば二重特異性抗体を作製するための)を架橋させることによって産生される。適した架橋剤は、適切なスペーサーによって隔てられた2つの別個の反応基を有するヘテロ二官能性(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、又はホモ二官能性(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)である架橋剤を含む。そのような架橋剤は、Pierce Chemical Company(Rockford、IL)から入手可能である。
【0156】
ROR1ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインは、上記のような検出可能な部分又はマーカーによって標識することができる。
【0157】
抗原結合ドメインはまた、放射標識アミノ酸によっても標識することができる。放射標識の例には、以下の放射性同位体又は放射性核種:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iが挙げられるがこれらに限定されない。放射標識は、診断及び治療目的の両方のために使用され得る。
【0158】
そのような標識を検出する手段は、当業者に周知である。このため、例えば、放射標識を、写真フィルム又はシンチレーションカウンターを使用して検出してもよく、蛍光マーカーを、放射された照度を検出するための光検出器を使用して検出してもよい。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を提供するステップ、及び基質に及ぼす酵素の作用によって産生される反応産物を検出するステップによって検出され、比色分析標識は、着色した標識を単純に可視化することによって検出される。
【0159】
抗原結合ドメインはまた、化学基、例えばポリエチレングリコール(PEG)、メチル若しくはエチル基、又は炭水化物基によっても誘導体化することができる。これらの基は、抗原結合ドメインの生物学的特徴を改善するために、例えば血清中半減期を増加させるために又は組織結合を増加させるために有用であり得る。
【0160】
ポリヌクレオチド及び発現
ROR1ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインをコードするヌクレオチド配列もまた提供される。細胞(例えば、T細胞)におけるその効率的な発現のための発現ベクターもまた提供される。
【0161】
抗原結合ドメインの組換え発現は一般的に、抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。プロモーターに作動可能に連結された、抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン又はその一部、又は重鎖若しくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターが提供される。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、米国特許第5,981,216号、第5,591,639号、第5,658,759号、及び第5,122,464号を参照されたい)を含んでもよく、抗体の可変ドメインを、完全な重鎖、完全な軽鎖、又は完全な重鎖及び完全な軽鎖の両方を発現させるために、そのようなベクターにクローニングしてもよい。
【0162】
本明細書に提供されるポリペプチド(抗原結合ドメインを含むがこれらに限定されない)をコードする核酸分子(ポリヌクレオチドとも呼ばれる)は、当業者によって容易に産生することができる。例えば、これらの核酸は、本明細書に提供されるアミノ酸配列(例えば、CDR配列、重鎖及び軽鎖配列)、当技術分野で利用可能な配列(例えば、フレームワーク配列)、及び遺伝子コードを使用して産生することができる。
【0163】
当業者であれば、遺伝子コードを容易に使用して、多様な機能的に等価の核酸、例えば配列が異なるが同じ抗体配列をコードする、又はVL及び/若しくはVH核酸配列を含むコンジュゲート若しくは融合タンパク質をコードする核酸を構築することができる。
【0164】
ROR1ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインをコードする核酸配列は、例えば適切な配列のクローニングを含む任意の適した方法によって、又はNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979のホスホトリエステル法、Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979のホスホジエステル法、Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862, 1981のジエチルホスホロアミダイト法、例えばNeedham-VanDevanter et al., Nucl. Acids Res. 12:6159-6168, 1984に記載される自動合成機を例えば使用する、Beaucage & Caruthers, Tetra. Letts. 22(20):1859-1862, 1981によって記載される固相ホスホロアミダイトトリエステル法、及び米国特許第4,458,066号の固相支持体法による直接化学合成によって調製することができる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。これを相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は鋳型として一本鎖を使用してDNAポリメラーゼによる重合化によって二本鎖DNAに変換することができる。当業者であれば、DNAの化学合成が一般的に約100塩基の配列に限定されるが、より長い配列はより短い配列のライゲーションによって得られ得ることを認識するであろう。
【0165】
例示的な核酸は、クローニング技術によって調製することができる。適切なクローニング及びシークエンシング技術、並びに多くのクローニング作業の経験を有する当業者にとって十分な説明書の例は、Sambrook et al.、前記、Berger, and Kimmel(eds.)、前記、及びAusubel、前記に見出される。生物学的試薬及び実験機器の製造元からの製品情報もまた、有用な情報を提供する。そのような製造元には、SIGMA Chemical Company(Saint Louis, MO)、R&D Systems(Minneapolis, MN)、Pharmacia Amersham(Piscataway, NJ)、CLONTECH Laboratories, Inc.(Palo Alto, CA)、Chem Genes Corp., Aldrich Chemical Company(Milwaukee, WI)、Glen Research, Inc., GIBCO BRL Life Technologies, Inc.(Gaithersburg, MD)、Fluka Chemica-Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG, Buchs, Switzerland)、Invitrogen(Carlsbad, CA)、及びApplied Biosystems(Foster City, CA)、並びに当業者に公知の他の多くの販売元が挙げられる。
【0166】
核酸はまた、増幅法によっても調製することができる。増幅法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅システム(TAS)、自己継続配列複製システム(self-sustained sequence replication system)(3SR)が挙げられる。極めて多様なクローニング法、宿主細胞、及びin vitro増幅方法論が当業者に周知である。
【0167】
本明細書に開示される抗原結合ドメイン、VH及び/又はVLのいずれか(又はその断片)をコードする如何なる核酸も、組換え操作した細胞、例えば細菌、植物、酵母、昆虫、及び哺乳動物細胞において発現させることができる。これらの抗体は、個々のVH及び/若しくはVL鎖として発現させることができ、又は融合タンパク質として発現させることができる。イムノアドヘシンもまた発現させることができる。このように、一部の例では、VH及びVL並びにイムノアドヘシンをコードする核酸が提供される。核酸配列は、場合によりリーダー配列をコードし得る。
【0168】
一本鎖抗体(scFv)を作製するために、VH及びVLコードDNA断片を、可動性リンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に作動可能に連結させ、それによってVH及びVL配列を、VL及びVHドメインが可動性リンカーによって連結された連続する一本鎖タンパク質として発現させることができる(例えば、Bird et al., Science 242:423-426, 1988、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988、McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990を参照されたい)。場合により、切断部位、例えばフリン切断部位をリンカーに含めることができる。
【0169】
VH及び/又はVLをコードする核酸は、場合によりFcドメイン(イムノアドヘシン)をコードし得る。Fcドメインは、IgA、IgM、又はIgG Fcドメインであり得る。Fcドメインは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20100/093979号に記載されている最適化Fcドメインであり得る。一例では、イムノアドヘシンは、IgG1 Fcである。
【0170】
当業者であれば、大腸菌、他の細菌宿主、酵母、及び様々な高等真核細胞、例えばCOS、CHO、HeLa、及び骨髄腫細胞株を含む、タンパク質の発現に利用可能な多数の発現系に対する知識を有すると予想される。発現ベクターを、従来技術によって宿主細胞に移入した後、トランスフェクトした細胞を、例えば抗体を産生するために従来技術によって培養する。このように、異種プロモーターに作動可能に連結された、抗原結合ドメイン、又はその重鎖若しくは軽鎖、又はその一部をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞が提供される。二本鎖抗原結合ドメインの発現に関するある特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖の両方をコードするベクターを、以下に詳述するように完全な免疫グロブリン分子を発現させるために、宿主細胞において同時発現させてもよい。
【0171】
組換え抗体を発現させるための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野で周知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎293細胞、及び複数の他の細胞株を含むがこれらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾に関して特徴的で特異的な機構を有する。発現される抗体又はその一部の正確な修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。この目的に関して、一次転写物の適当なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を保有する真核宿主細胞を使用してもよい。そのような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O、及びT47D、NS0(如何なる機能的な免疫グロブリン鎖も内因性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3O、及びHsS78Bst細胞が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、ヒト細胞株が有用である。一実施形態では、ヒト細胞株PER.C6.(Crucell、Netherlands)を使用することができる。組換え抗体を発現させるための宿主として使用され得る更なる細胞株には、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni) Bti-Tn5b1-4)、又は酵母細胞(例えば、出芽酵母(S. cerevisiae)、ピキア(Pichia)、米国特許第7,326,681号)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号)、及びニワトリ細胞(PCT出願、国際公開第2008142124号)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0172】
宿主細胞は、バチルス(Bacillus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、腸球菌(Enterococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、ゲオバチルス(Geobacillus)、及びオセアノバチルス(Oceanobacillus)を含むがこれらに限定されないグラム陽性細菌であり得る。グラム陽性細菌、例えばラクトバチルスにおいてタンパク質を発現させる方法は、当技術分野で周知であり、例えば米国特許出願公開第20100/080774号を参照されたい。ラクトバチルスの発現ベクターは、例えば米国特許第6,100,388号及び米国特許第5,728,571号に記載されている。ラクトバチルスにおける発現のためにリーダー配列を含めることができる。グラム陰性細菌には、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、ヘリコバクター(Helicobacter)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、イリオバクター(Ilyobacter)、ナイセリア(Neisseria)、及びウレアプラズマ(Ureaplasma)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0173】
抗原結合ドメイン又はその断片をコードする1つ以上のDNA配列を、適した宿主細胞へのDNA移入によってin vitroで発現させることができる。用語はまた、対象の宿主細胞の任意の子孫も含む。全ての子孫は、複製の際に起こる変異が存在し得ることから、親細胞とは同一でない場合があり得ると理解される。外来DNAが宿主において連続的に維持されることを意味する、安定な移入の方法は、当技術分野で公知である。
【0174】
本明細書に記載される単離されたタンパク質をコードする核酸の発現は、DNAをプロモーター(構成的又は誘導型のいずれかである)に作動可能に連結させた後、発現カセットに組み入れることによって、達成することができる。プロモーターは、サイトメガロウイルスプロモーター及びヒトT細胞リンパ向性ウイルスプロモーター(HTLV)-1を含む、目的の任意のプロモーターであり得る。場合により、エンハンサー、例えばサイトメガロウイルスエンハンサーを構築物に含める。カセットは、原核生物又は真核生物のいずれかにおける複製及び組み込みにとって適し得る。典型的な発現カセットは、タンパク質をコードするDNAの発現の調節にとって有用な特異的配列を含有する。例えば、発現カセットは、適切なプロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、その遺伝子がmRNAの正しい翻訳を可能にするための正確なリーディングフレームを維持するための配列、並びに終止コドンを含み得る。ベクターは、選択可能マーカー、例えば薬物耐性(例えば、アンピシリン又はテトラサイクリン耐性)をコードするマーカーをコードし得る。
【0175】
クローニングした遺伝子の高レベル発現を得るために、少なくとも、転写を指令するための強力なプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位(配列内リボソーム結合配列)、及び転写/翻訳ターミネーターを含有する発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌の場合、これはT7、trp、lac、又はラムダプロモーターなどのプロモーター、リボソーム結合部位、及び好ましくは転写終結シグナルを含む。真核細胞の場合、制御配列は、例えば免疫グロブリン遺伝子、HTLV、SV40、又はサイトメガロウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、並びにポリアデニル化配列を含み得て、更にスプライスドナー及び/又はアクセプター配列(例えば、CMV及び/又はHTLVスプライスアクセプター及びドナー配列)を含み得る。カセットは、周知の方法、例えば大腸菌の場合は形質転換又は電気穿孔、及び哺乳動物の場合は、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、又はリポフェクションによって、選択した宿主細胞に移入することができる。カセットによって形質転換した細胞を、カセットに含有される遺伝子、例えばamp、gpt、neo、及びhyg遺伝子によって付与される抗生物質に対する耐性によって選択することができる。
【0176】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈殿などのDNAのトランスフェクション法、従来法の機械的手順、例えばマイクロインジェクション、電気穿孔、リポソームに封入したプラスミドの挿入、又はウイルスベクターを使用することができる。真核細胞はまた、抗原結合ドメイン、標識抗原結合ドメイン、又はその機能的断片をコードするポリヌクレオチド配列、及び選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子、例えば単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子によって共形質転換することができる。別の方法は、真核生物ウイルスベクター、例えばシミアンウイルス40(SV40)又はウシ乳頭腫ウイルスを使用して真核細胞を一過性に感染又は形質転換し、タンパク質を発現させることである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982を参照されたい)。当業者であれば、高等真核細胞、例えばCOS、CHO、HeLa、及び骨髄腫細胞株を含む細胞におけるタンパク質の産生に使用する発現系、例えばプラスミド及びベクターを容易に使用することができる。
【0177】
本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸に、その生物活性を減損することなく修飾を行うことができる。いくつかの修飾は、標的化分子のクローニング、発現、又は融合タンパク質への組み込みを容易にするために行うことができる。そのような修飾は当業者に周知であり、例えば終止コドン、開始を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、制限部位を好都合な位置に作製するためにいずれかの末端に配置される追加のアミノ酸、又は精製ステップにおいて役立つ追加のアミノ酸(例えば、ポリHis)が挙げられる。組換え法に加えて、本開示の免疫コンジュゲート、エフェクター部分、及び抗原結合ドメインはまた、当技術分野で周知の標準的なペプチド合成を使用して全体的に又は部分的に構築することができる。
【0178】
発現された後、組換え免疫コンジュゲート、抗原結合ドメイン、及び/又はエフェクター分子を、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー等を含む、当技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(一般的に、R. Scopes, PROTEIN PURIFICATION, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。抗原結合ドメイン、免疫コンジュゲート、及びエフェクター分子は、100%純粋である必要はない。部分的又は望ましい均一性まで精製後、治療的に使用する場合には、ポリペプチドは、実質的にエンドトキシンフリーであるべきである。
【0179】
細菌、例えば大腸菌から抗体を発現させる方法、及び/又は一本鎖抗体を含む適切な活性型へのリフォールディング方法が記載されており、周知であり、本明細書に開示の抗原結合ドメインに適用可能である。Buchner et al., Anal. Biochem. 205:263-270, 1992、Pluckthun, Biotechnology 9:545, 1991、Huse et al., Science 246:1275, 1989、及びWard et al., Nature 341:544, 1989を参照されたい。
【0180】
組成物及び治療方法
対象におけるがんの処置に使用するための上記の抗原結合ドメインを含む細胞であって、ROR1選択的CARを含む細胞が、対象に投与され、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こす細胞、並びに上記の抗原結合ドメインを含む細胞を対象に投与し、悪性細胞の選択的枯渇を引き起こすステップを含む、対象におけるがんを処置するための方法もまた開示される。
【0181】
好ましくは、がんは、白血病(例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、マントル細胞白血病、又はヘアリーセル白血病)、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、膠芽腫、精巣がん、子宮がん、副腎がん、乳がん、肺がん、黒色腫、神経芽腫、肉腫、腎臓がんである。更に、ROR1は、一部のがん幹細胞上に発現される。
【0182】
CAR T細胞が有効であるためには、がん又は腫瘍は完全に除去されることを要しない。例えば、CAR T細胞は、腫瘍を所望の量、例えば組成物の非存在下と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は100%低減させることができる。
【0183】
本発明のCAR T細胞の投与によって、悪性細胞の5、10、20、50、75、90、95、又は99%の枯渇、すなわち低減が起こり得る。
【0184】
別の例では、対象にまた、追加の薬剤、例えば化学療法剤の有効量を投与することができる。方法は、当技術分野で公知の1つ以上の追加の薬剤の投与を含み得る。薬剤は、CAR T細胞にコンジュゲートされ得る。薬剤は、化学療法剤(chemotherapeutic entity)であり得る。化学療法剤(chemotherapeutic entity)は、細胞障害薬であり得る。企図される化学療法剤には、アルキル化剤、ニトロソウレア、エチレンイミン/メチルメラミン、アルキルスルホネート、抗代謝剤、ピリミジンアナログ、エピポドフィロトキシン、酵素、例えばL-アスパラギナーゼ;生物応答修飾剤、例えばIFNa、IL-2、G-CSF、及びGM-CSF;白金配座複合体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン、アントラセンジオン、置換ウレア、例えばヒドロキシウレア、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、例えばミトタン(o,p'-DDD)及びアミノグルテチミド;副腎皮質ステロイドアンタゴニスト、例えばプレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドを含むホルモン及びアンタゴニスト;プロゲスチン、例えばヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、及び酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;テストステロンプロピオン酸エステル及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン、例えばフルタミド、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ及びリュープロリド;並びに非ステロイド性抗アンドロゲン、例えばフルタミドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0185】
ROR1特異的CAR T細胞の治療有効量は、疾患の重症度及び患者の健康の全般的な状態に依存する。CAR T細胞の治療有効量は、症状の主観的軽減、又は医師若しくは他の有資格オブザーバーによって認められる客観的に特定可能な改善のいずれかを提供することができる。上記のように、これらの組成物は、別の治療剤と共に同時又は連続的に投与することができる。いずれの用途に関しても、CAR T細胞は、化学療法と組み合わせることができる。
【0186】
本明細書に開示されるCAR T細胞を含む組成物の単回又は複数回投与は、患者によって必要とされ、忍容される投与量及び回数に応じて投与される。いずれにせよ、組成物は、患者を有効に処置するために本明細書に開示の抗体の少なくとも1つの十分な量を提供すべきである。投与量は、1回投与することができるが、治療結果が達成されるまで、又は副作用のために治療を中止するまでのいずれかまで定期的に適用してもよい。一例では、CAR T細胞の用量を、1日おきに30分間注入する。この例では、約1~約10用量、例えば、3又は6用量を1日おきに投与することができる。更なる例では、約5~約10日間の連続注入を投与する。対象を、所望の治療結果が達成されるまで、定期的な間隔、例えば毎月処置することができる。一般的に、用量は、患者に対して許容できない毒性を生じることなく、疾患の症状又は兆候を処置又は改善するために十分なものとする。
【0187】
CAR T細胞を担体中に含む組成物が更に開示される。組成物は、対象に投与するための単位投与剤形で調製することができる。投与の量及び時期は、所望の目的を達成するために処置する医師の裁量に委ねられる。抗体及び/又は核酸は、全身投与又は局所投与のために製剤化することができる。一例では、CAR T細胞は、非経口投与、例えば静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態では、投与は筋肉内である。
【0188】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技術若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルション中で捕捉することができる。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)に開示されている。具体的には、免疫原又は抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688(1985)、Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030(1980)、及び米国特許第4,485,045号、及び第4,544,545号に記載される方法によって調製することができる。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。逆相(everse phase)蒸発法は、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて使用することができる。リポソームを、既定の孔サイズのフィルターの中に押し出すと、所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明のポリペプチドを、例えばジスルフィド交換反応を介して、Martin et al., J. Biol. Chem., 257:286-288(1982)に記載されるようにリポソームにコンジュゲートすることができる。
【0189】
投与のための組成物は、水性担体などの薬学的に許容される担体中に溶解したCAR T細胞の溶液を含み得る。多様な水性担体、例えば緩衝食塩水等を使用することができる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。組成物は、生理的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、毒性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含有し得る。これらの製剤中のCAR T細胞濃度は大きく変わることもあり、選択される特定の投与様式及び対象の必要性に従って、主に液体の体積、粘度、体重等に基づいて選択される。一部の実施形態では、投与は静脈内である。
【0190】
徐放性の非経口製剤をインプラント、油性注射液、又は微粒子システムとして作製することができる。タンパク質送達システムの広い総論に関しては、Banga, A.J., Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA,(1995)を参照されたい。微粒子システムは、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子を含む。マイクロカプセルは、中心コアとして治療タンパク質、例えば細胞毒素又は薬物を含有する。マイクロスフェアでは、治療剤は、粒子全体に分散される。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェア、及びマイクロカプセルは、一般的にそれぞれ、ナノ粒子、ナノスフェア、及びナノカプセルと呼ばれる。毛細血管は、直径およそ5μmを有し、そのためナノ粒子のみが静脈内投与される。マイクロ粒子は、典型的に直径約100μmであり、皮下又は筋肉内に投与される。例えば、Kreuter, J., Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, pp. 219-342(1994)、及びTice & Tabibi, Treatise on Controlled Drug Delivery, A. Kydonieus, ed., Marcel Dekker, Inc. New York, NY, pp. 315-339,(1992)を参照されたい。
【0191】
ポリマーを、本明細書に開示のCAR T細胞のイオン制御放出のために使用することができる。制御された薬物送達に使用するための様々な分解性及び非分解性ポリマーマトリクスが当技術分野で公知である(Langer, Accounts Chem. Res. 26:537-542, 1993)。例えば、ブロックコポリマーであるpolaxamer 407は、低温では、粘性であるが流動性の液体として存在するが、体温では半固体ゲルを形成する。これは組換えインターロイキン-2及びウレアーゼの製剤及び持続的送達にとって有効なビヒクルであることが示されている(Johnston et al., Pharm. Res. 9:425-434, 1992、及びPec et al., J. Parent. Sci. Tech. 44(2):58-65, 1990)。或いは、ヒドロキシアパタイトは、タンパク質の放出制御のための微小担体として使用されている(Ijntema et al., Int. J. Pharm.112:215-224, 1994)。なお別の態様では、リポソームは、脂質カプセル化薬物の放出制御並びに薬物標的化のために使用される(Betageri et al., Liposome Drug Delivery Systems, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA(1993))。
【0192】
静脈内投与のための典型的な医薬組成物は、T細胞約1×106~1×108個/kgを含む。或いは、これは、T細胞約1×106~1×108個/m2であり得る。投与可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか又は明白であり、Remington's Pharmaceutical Science, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA(1995)などの刊行物により詳細に記載されている。
【0193】
以下の実施例は、ある特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載の特定の特徴又は実施形態に限定するものと解釈すべきではない。実施例は、以下の図面と組み合わせて読むべきである。
【実施例
【0194】
[実施例1]
材料及び方法
分子生物学
DNAクローニングを、標準的な実験プロトコールを使用して行った。制限酵素、Phusion Taqポリメラーゼ、Quickligase及びDH5αコンピテント細胞を、New England Biolabから得た。DNAを、予想されるバンドサイズに応じて1~2% TBEアガロースゲルにおいて泳動し、エチジウムブロマイド(Sigma-Aldrich)、SybrSafe Gel Stain(Life Technologies)又はGelstar(Lonza)のいずれかによって染色した。ゲル抽出及びPCRクリーンアップを、SV Wizardゲル精製キット(Promega)によって行った。
【0195】
細菌をLennoxブロス又はTerrificブロス(Fisher Scientific)中で生育させた。Minipreps、Midipreps及びMegaprepsプラスミド精製キットは、Mancherey Nagelから得たが、Maxiprepsは、Qiagenのキットを製造元の説明書通りに使用した。DNA濃度をNanodrop(Thermo Scientific)によって測定し、シークエンシングを、Source Bioscience又はBeckman Coulter Genomicsを通して実施した。オリゴヌクレオチドプライマー及びG-Blockオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologiesから得て、遺伝子合成を、Genscriptによって行った。
【0196】
組織培養
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、及びRoswell Park Memorial Institute(RPMI)を、ウシ胎仔血清(FCS)と共にGibco、Life Technologiesから得た。DMEM、IMDM、及びRPMIには全て、10% FCS及びGlutamaxを補充し、RPMIに、HEPESを補充した。通常の培養には抗生物質を使用しなかったが、フロー選別は、Normocin(Invivogen)を利用した。
【0197】
Nalm-6、SupT1、K562、及びSKW6.4細胞は、実験室において長期間樹立されたものであり、全て、10% FCSを有するRPMI中で生育させた。HEK293T細胞をマスター保存液から融解し、IMDM及び10% FCS中で生育させた。
【0198】
抗原結合能の測定
Qifikitビーズを使用して、製造元(Dako、Agilent Technologies)の説明書を使用して細胞あたりの標的抗原の数を評価した。簡単に説明すると、目的の細胞を、同じ濃度の非コンジュゲートマウス抗ヒトROR1又はCD19抗体と共にインキュベートし、PBSによって2回洗浄した後、FITC又はAPCに連結させた抗マウスFCコンジュゲート抗体によって染色した。既知の結合部位数を有する較正したビーズを同じように染色して、平均蛍光強度の測定値を細胞当たりの絶対抗原に関連させる検量線を作製した。
【0199】
レンチウイルスの産生
第二世代レンチウイルスを、標準的な実験プロトコールを使用して産生した。簡単に説明すると、HEK293T細胞1.7×106個を、1日目に10cm培養皿に播種した後、3日目にGeneJuice試薬(Merck Millipore)を移入ベクター、パッケージングベクターpCMVdR8.74、及びVSVGシュードタイプエンベロープベクターpMD.G2と組み合わせてトランスフェクトした。上清を5日目に収集し、800Gで5分間遠心分離し、混入している細胞材料を除去し、0.2ミクロンPESフィルター(Merck Millipore)を通して濾過した後、形質導入のためにそのまま使用したか、又はその後に使用するために-80℃で凍結保存した。第三世代レンチウイルスベクターは、pMDLg/RRE、pMDG2、及びpRSV/Revプラスミドを使用して産生した。
【0200】
T細胞の形質導入
健康なボランティアの末梢血を、EDTA抗凝固により収集し、末梢血単核球(PBMC)をFicoll-Paque Plus(GE Healthcare)遠心分離によって単離した。PBMCを、2×106個/mlで再浮遊させ、24ウェルプレートあたり1mlを播種し、0.5mg/mlのMACS GMP CD3及びCD28抗体(Miltenyi Biotec)又はCD3/28ビーズ(Invitrogen)によって活性化した。翌日、新しいR10をIL-2と共に最終濃度100IU/ml(抗体が活性化されている場合)で添加し、6時間後に細胞を回収し、計数して0.6×106個/mlで再浮遊させ、0.5mlを、Retronectin(Takara Bio)をコーティングした24ウェルプレートに播種した。レンチウイルス上清1.5mlを各ウェルに添加して、1000Gで40分間遠心分離した。2日後、細胞を回収し、0.5×106個/mlで再浮遊させ、更に2日間増大させた後、共培養及びFACS実験のために使用した。ナチュラルキラー細胞は、CD56ビーズ枯渇(Miltenyi Biotec)により除去した。
【0201】
切断型ROR1細胞株
ROR1の完全な細胞外ドメインを合成し、様々なドメイン(免疫グロブリン、Frizzled、及びクリングル)のPCR増幅を行った。これらのプライマー、並びに完全な細胞外ドメインは、適合性の末端を有し、これをSFG移入プラスミドに挿入し、SupT1細胞に形質導入した。細胞外ドメインを、eGFPに融合した膜貫通ドメインによって膜に係留した。
【0202】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーのための抗体は、CD107a(BD Bioscience)を除き、Biolegend又はeBioscienceから得た。フローサイトメトリーは、BD Accuri、BD Facsverse、BD LRSII Fortessa、又はBeckman Coulter Cyanのいずれかによって実施した。データを、FlowJoソフトウェアによって解析した。蛍光活性化細胞選別(FACS)を、MoFlo(Beckman Coulter)又はFACS Aria(BD Bioscience)において行った。
【0203】
CARの検出
CAR発現を染色するために、マウスIgG2a Fcドメインに融合したキメラROR1タンパク質を利用し、安定に形質導入したK562細胞において産生した。CD19 CAR発現を、ウサギFcに融合したキメラCD19を使用して検出した。二次染色は、Jackson Immunolabsの非交差反応性抗Fc抗体によって行った。
【0204】
FACSベースの殺滅アッセイ
標的細胞に、eGFPを形質導入してマーカーとして作用させ、初代CLL細胞を、標準的なプロトコールを使用してCFSEによって標識し、96ウェルプレートに細胞25,000個/ウェルの密度で播種した。細胞を、最終容量200μl中でエフェクター細胞と共に様々なエフェクター対標的比で培養し、400Gで5分間遠心分離した後、37℃、5% CO2でインキュベートした。翌日、上清100μlを、サイトカインELISAのために採取し、プレートをCD3抗体及びfixable viability dye(eBioscience)によって染色し、試料を、同一量のFlowcheckマイクロスフェアカウントビーズ(Beckman Coulter)を有するFACSチューブに移した。カウントビーズゲートにおいて1000事象でゲート設定したフローサイトメトリーによってデータを得た。
【0205】
5' Rapid Amplification of cDNA ends (RACE)
Aldevron GmBHのオリゴクローン性ハイブリドーマを、限界希釈又は96ウェルプレートでの単細胞選別のいずれかによって単細胞クローンに分離し、コロニーをコンフルエントになるまで(およそ2週間)生育させた。上清をROR1陽性及び陰性細胞株に対してスクリーニングし、特異的抗ROR1抗体の存在を確認し、同様に、ラット免疫グロブリンアイソタイピングキット(eBioscience又はBD Bioscience)を使用するアイソタイピングのために使用した。
【0206】
クローンを、6ウェルプレート又は10cmプレートにおいてコンフルエントになるまで生育させ、RNAlater(Life Technologies)中に沈降させた後、RNAを、RNA MiniPlusキット(Qiagen)を使用して抽出した。RNAを、Quantitect逆転写酵素(Qiagen)を使用してcDNAに逆転写した。このcDNAのアリコートを、ゲノムDNAとcDNAとを識別することができるGAPDHプライマーによって評価し、試料の品質を確認した。cDNAに、ターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabs)によってポリCテールを付加し、nested PCR反応(Phusion Taq、New England Biolabs又はPlatinum Taq High Fidelity:Life Technologies)を実施し、軽鎖アイソタイプ及び重鎖アイソタイプに対して特異的なプライマーを使用して、重鎖及び軽鎖の可変領域を同定した。
【0207】
PCR産物を1%TBEゲル中で泳動し、Gelstar(Lonza)によって後染色した。正確なサイズのバンドを抽出し、直接シークエンシングのために送付したか、又はその後のシークエンシングのためにTopoサブクローニングベクター(Life Technologies)に挿入した。本発明者らがPCR産物を直接シークエンシングできるように、プライマーを、それらが定常領域内で更に結合し、末端の可変領域を省略することなくシークエンシング反応のリードスルーを可能にするように設計し、それによってTopoサブクローニングを不要にした。
【0208】
生産的であり、インフレームのシグナル配列を有する得られた配列データを、ラット生殖系列免疫グロブリン配列及びコンセンサス配列のIMGT V-QUESTデータベース(Brochet et al., 2008、Alamyar et al., 2012)と比較した。重鎖及び軽鎖を増幅するためにオーバーラップ伸長プライマーを設計し、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1)リンカー配列を導入してScFv構築物を生成した。分泌型のScFvは、ScFv配列を、NcoI及びBamHI部位(又は必要に応じて適合性のBglII又はBclI部位)を使用してマウスIgG2a定常領域とインフレームで、SalI及びBamHI部位を使用して細胞外スペーサー、41BB、及びCD3ζを含むpCCL.PGKレンチウイルス骨格にクローニングすることによって産生した。ヒト定常領域とインフレームの重鎖可変配列及びカッパ定常領域を有する軽鎖をクローニングすることによって抗体を生成した。
【0209】
[実施例2]
ROR1は初代CLL細胞において発現される
新たに診断及び処置した患者の末梢血に由来する初代CLL細胞を、フローサイトメトリーによってROR1の発現に関して分析した。ROR1は、分析した全ての試料(Biolegendクローン2A2)において検出可能であった。抗原密度をQifikit(Dako、Agilent Technologies)によって評価した。ROR1の抗原結合能(ABC)の中央値は、2304分子/細胞で、範囲は800~4828であり、CD19は、有意により高レベルで発現され、レベルの中央値は12583(範囲5894~23652)であった。以下の表1を参照されたい。
【0210】
【表1】
【0211】
[実施例3]
ラットの免疫及びROR1抗体の産生
ラット3匹を完全長のヒトROR1タンパク質及びDNAによって免疫後、本発明者らは38個のオリゴクローン性ハイブリドーマを得た。これらのうち17個を5' RACEによって解析し、重鎖及び軽鎖の可変領域を同定した。本発明者らは、13個の新規抗体をコードする配列(クローン4個では、同一の配列が得られた)を得て、そのうち10個は、一本鎖可変断片(ScFv)フォーマットで結合する(RACEによるハイブリドーマcDNAのクローニング、Andrew Bradbury)。以下の表2を参照されたい。
【0212】
【表2】
【0213】
上記で認められ得るように、クローンFは、frizzledドメインに結合する。他のクローン(Vを除く)は全て、免疫グロブリンドメインに結合した。先行技術の抗体R12及び4A5もまた、免疫グロブリンドメインに結合する。したがって、クローンFは、先行技術の抗体R12及び4A5と比較して異なる別個の結合特性を示す。
【0214】
[実施例4]
ハイブリドーマからの抗ROR1抗体配列の単離
抗体配列を、5' Rapid Amplification of cDNA endsによって得た。Aldevron GmBHに由来するオリゴクローン性ハイブリドーマを、希釈によって又は96ウェルプレートでの単細胞選別のいずれかによって単細胞クローンに分離し、コロニーをコンフルエントになるまで(およそ2週間)生育させた。上清をROR1陽性及び陰性細胞株に対してスクリーニングして特異的抗ROR1抗体の存在を確認し、またラット免疫グロブリンアイソタイピングキット(eBioscience又はBD Bioscience)を使用するアイソタイピングのためにも使用した。
【0215】
クローンを6ウェルプレート又は10cmプレートにおいてコンフルエントになるまで生育させ、次にRNAlater(Life Technologies)において沈降させた後、RNAを、RNA MiniPlusキット(Qiagen)を使用して抽出した。RNAを、Quantitect逆転写酵素(Qiagen)を使用してcDNAに逆転写した。このcDNAのアリコートを、ゲノム及びcDNAを識別することができるGAPDHプライマーによって評価し、試料の品質を確認した。cDNAに、ターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabs)によってポリCテールを付加し、nested PCR反応を実施し(Phusion Taq、New England Biolabs、又はPlatinum Taq High Fidelity: Life Technologies)、軽鎖アイソタイプ及び重鎖アイソタイプに対して特異的なプライマーを使用して重鎖及び軽鎖の可変領域を同定した。
【0216】
PCR産物を1%TBEゲル中で泳動し、Gelstar(Lonza)によって後染色した。正確なサイズのバンドを抽出して、直接シークエンシングのために送付したか、又はその後のシークエンシングのためにTopoサブクローニングベクター(Life Technologies)に挿入した。
【0217】
生産的であり、インフレームのシグナル配列を有する得られた配列データを、ラット生殖系列免疫グロブリン配列及びコンセンサス配列のIMGT V-QUESTデータベースと比較した(Brochet et al., 2008、Alamyar et al., 2012)。重鎖及び軽鎖を増幅するためにオーバーラップ伸長プライマーを設計し、リンカー配列を導入してScFv構築物を生成した。
【0218】
分泌型のScFvは、NcoI及びBamHI部位(又は必要に応じて適合性のBglII又はBclI部位)を使用してマウスIgG2a定常領域とインフレームでScFv配列をクローニングすることによって産生した。
【0219】
ROR1抗体は、可変配列をヒト又はマウス重鎖定常領域と、及び軽鎖を対応するヒト又はマウスカッパ定常領域と、インフレームでクローニングすることによって生成した。
【0220】
[実施例5]
ラットscFvのヒト化
優れた細胞傷害性及び機能に基づき、クローンA及びFをヒト化のために選択した。ラットscFvの可変ドメイン配列を、ヒトIgG生殖系列データベースに対して検索した。各々のラット抗体と高い相同性を有する5個のヒトフレームワーク配列を、軽鎖及び重鎖CDRの両方のヒトアクセプターとして選択した。各々のラット抗体のCDRを、ヒトアクセプターフレームワークに直接移植した後に、5個のヒト化VL及びヒト化VHの配列を得た。
【0221】
[実施例6]
新規ScFvに基づくCAR T細胞の細胞傷害性
CARを発現するように形質導入したT細胞を、SupT1-ROR1細胞と共培養すると、使用したScFvによらず有意な細胞傷害性が起こり、これは対応するROR1陰性細胞株では認められなかった。本発明者らは、高レベルのROR1を発現するように形質導入されているSupT1-ROR1細胞株と比較してCLL細胞と類似の低レベルのROR1を発現するSKW6.4細胞に対して、同じT細胞を同時に試験した。この場合、クローンFを有するT細胞のみが、CD19に基づくCAR T細胞と同等な範囲で標的細胞を殺滅することができた。図2を参照されたい。
【0222】
[実施例7]
CD107a脱顆粒アッセイ
共培養データを確証するために、本発明者らは、通常細胞質顆粒膜に存在するが、活性化時にはT細胞活性化後に細胞表面へと移動するリソソーム関連膜タンパク質(LAMP-1)の表面発現を評価するCD107aアッセイを行った。ROR1 high細胞株(SupT1_ROR1)に対して、CD107a脱顆粒は、ScFvによらず同等であった。しかし、SKW細胞(ROR1 Low)細胞に対して、クローンFは、より高レベルのCD07a発現(Fに関して43%対パイに関して14%対UTに関して2%)を一貫して示し、より高レベルの標的殺滅が、細胞傷害性顆粒放出の改善によって部分的に媒介されたことが示唆された。
【0223】
[実施例8]
細胞外スペーサーの最適化
過去に生成された構築物は、CD8αスペーサー(81アミノ酸(AA))を含有したが、細胞表面膜上のScFvの可動性を可能にする試みで、これを、IgGスペーサー(239 AA)、IgG1ヒンジのみのスペーサー(19 AA)又はアミノ酸配列GGGGS(配列番号2)を含む短いリンカー配列(9 AA)に置換した。図3を参照されたい。
【0224】
これらの異なるスペーサー配列を形質導入したT細胞は、標的細胞の殺滅能力に顕著な差を示し、これは高レベル及び低レベルのROR1を発現する細胞株に対して一貫していた。興味深いことに、クローンA及びクローンFは、最も長いIgGスペーサーが、クローンFに対して中等度の有効性をなおも示すがクローンAに関しては乏しい殺滅を示し、最も短いリンカースペーサーではこれが逆転するという逆の関係を示した。これは、明白に、標的細胞抗原エピトープとT細胞CAR構造との間に生成された最適な距離に関係している。
【0225】
スペーサーを変更すると細胞傷害性に差が出たこと、及びヒンジスペーサーがクローンA及びFの両方にとって最適であるようであった知見を考慮して、本発明者らは、ScFv構築物の全てにおいてヒンジスペーサーに置換して、細胞傷害性評価を繰り返した。
【0226】
ヒンジスペーサー構築物を形質導入したT細胞は、SupT1 ROR1陰性細胞に対して細胞傷害性を示さなかったが、クローンVを除き、24時間でSupT1 ROR1陽性細胞のほぼ完全な殺滅を引き起こし、これは実験を繰り返しても一貫していた。
【0227】
興味深いことに、ヒンジスペーサーは、エフェクター対標的比を1:1に低減させても、全てのScFv構築物に関してSKW6.4細胞に対する細胞傷害性を改善した。例えば、R12 ScFvでは、CD8αスペーサーの場合の残存標的細胞の平均パーセンテージは80%であったのに対し、ヒンジスペーサーでは40%であった。図4を参照されたい。
【0228】
[実施例9]
初代CLL細胞に対する細胞傷害性
ヒンジスペーサー及び41BB及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを有するROR1 CAR T細胞を生成して、図5のScFv配列を発現させた。
【0229】
FACSベースの殺滅アッセイにおいて1:1のエフェクター:標的比では、クローンA及びFは、SKW6.4細胞株に対してR12、V、及びミューに対して優れた殺滅を示した。
【0230】
[実施例10]
CD19 ScFvに基づくCARとの比較
ROR1に対する第二世代CARを発現するT細胞(クローンA及びクローンF)を、CD19 ScFv CAR(fmc63 ScFvに基づく)と共に産生した。1:1のエフェクター:標的比のFACSベースの殺滅アッセイは、クローンA及びFが、CD19に基づくScFvと比較して類似のレベルの細胞傷害性を有することを示した。このことは、SKW細胞(並びに初代CLL細胞)では、ROR1が、CD19と比較してかなり低いレベルで発現されることから、重要な知見である。
【0231】
[実施例11]
ROR1 CAR T細胞のin vivoモデリング
本発明者らが新たに開発したCARフォーマットのScFv配列のin vivo機能を評価するために、本発明者らは、ホタルルシフェラーゼを発現するように形質導入したJeko1細胞を利用するマウスモデルを試みた。細胞0.5×106個を、NSGマウスNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJの尾静脈に注射した。7日目に、mCherry形質導入マーカーのみ、R12 ScFv CAR、クローンA ScFv CAR、クローンF ScFv CAR、CD19 fmc63 CAR、又は非特異的GD2 CARのいずれかを発現する形質導入したT細胞4×107個を、尾静脈に注射した。
【0232】
CAR T細胞をクローンA及びFに基づくScFvによって処理すると、R12と一致して腫瘍の進行に対して保護を提供した。図6を参照されたい。
【0233】
[実施例12]
エピトープマッピング
生成した抗体のエピトープを評価するために、本発明者らは、切断型ROR1を有する細胞株を産生した。これらは、完全長のROR1(免疫グロブリンドメイン、Frizzledドメイン、及びクリングルドメイン)を発現するSUPT1細胞、免疫グロブリンのみのSupT1、FrizzledのみのSupT1、KringleのみのSupT1、及びその組合せ(Ig及びFrizzled SupT1、並びにFrizzled及びKringle SupT1)を含んだ。これにより、クローンFがFrizzledドメインに結合し、クローンVがIgとFrizzledドメインの間に結合し、及び他のクローンの全てがIgドメインに結合することが証明された。
【0234】
クローンFが特異的に結合するエピトープを更に特徴付けるために、本発明者らは、ラットROR1をヒトROR1と比較して、これら2つの種の間のアミノ酸の差異を評価した。本発明者らは、これらの抗体が結合することができる推定アミノ酸に対する1アミノ酸置換を含む複数の変異型ヒトROR1構築物を作製し、問題の当該エピトープを更に特徴付けした。
【0235】
クローンFに関しては、ヒトROR1のFzドメインの位置254及び261で点突然変異を生成した。使用した特定の変異は、I(254)V及びQ(261)Hであった。
【0236】
Q(261)H置換は、ROR1-Fzドメインに対するクローンF抗体の結合を低減又は停止させることが見出されたが、I(254)V置換は結合に影響を及ぼさないように思われた。更に、Q(261)H及びI(254)Vの組合せもまた、抗体結合を防止した。したがって、Gln-261は、抗体結合にとって必須である。結果を図7-1及び図7-2に見ることができる。
【0237】
[実施例13]
クローンFは、配列相同性のために、生成された他の抗体(マウス及びウサギ)に対してユニークである
ヒト、マウス、ウサギ、及びラットROR1タンパク質配列を、Uniprot webに基づくソフトウェア(http://www.uniprot.org/align/)を使用して整列させ、異なる種の間の変動を強調した。Uniprot受託番号:ヒト(Q01973)、マウス(Q9Z139)、及びウサギ(G1U5L1)。ラットROR1の場合、対応するUniprot配列が部分的にのみ完全であったために、NCBI基準配列NP_001102141.1を使用した。
【0238】
クローンFは、Q261に結合し、これはこの位置でのラット及びヒトアミノ酸の間の差により可能であった(位置261でのヒトアミノ酸は、グルタミン(Q)であるが、ラットでのこの位置の対応するアミノ酸はヒスチジン(H)である)。ラットをヒトROR1によって免疫すると、このアミノ酸の差異は、ラットROR1配列と比較して免疫原として認識され、それに対して抗体が産生される。
【0239】
公知の抗体R12(ウサギ)及びマウスROR1結合体は、この部位でヒトROR1との相同性を示す(すなわち、それらは全て、この位置でグルタミン(Q)を有する)。その結果、ウサギ又はマウスをヒトROR1によって免疫しても、それが免疫原性ではないことから、この位置に対する抗体産生をもたらさない。このことを考慮すると、クローンFは、このエピトープに結合するその能力においてユニークである。
【0240】
[実施例14]
ヒト化ScFvに基づくCAR T細胞の細胞傷害性
本発明者らは、クローンFのヒト化変異体を生成し、5個の新規ヒト化軽鎖(hVL1-5)及び5個の新規ヒト化重鎖(hVH1-5)を得た。オーバーラップ伸長PCRを使用して、本発明者らは、これらの構築物をScFvフォーマット(シグナルペプチド、重鎖、リンカー、及び軽鎖)にクローニングし、クローンFに関して各々の軽鎖が各々の重鎖と対を形成した25個の構築物を得た。これらのヒト化ScFv配列を、マウスIgG2a定常領域とインフレームでクローニングして、マウスIgG2a定常領域と共にScFvを含む融合タンパク質を生じた。本発明者らは、これをSFGレトロウイルスカセットにクローニングし、クローンFに関するScFv融合タンパク質を含有する上清を生成した。
【0241】
本発明者らは、ROR1のFrizzledドメイン(クローンFが結合する)だけを発現する細胞株に対してScFv融合タンパク質を含有する上清をスクリーニングした。上清を、そのGFPの発現によって識別することができる上記細胞(免疫グロブリン細胞はGFP陰性、及びFrizzled細胞はGFP陽性)の混合物に添加した。上清を30分間放置した後、細胞を洗浄し、APC抗マウスIgGを添加した(融合タンパク質のIgG2a構成要素を検出するため)。
【0242】
25個のヒト化構築物のうち、3つは特に良好に結合した。これらの3つのヒト化構築物、並びに対照を、レンチウイルス骨格にクローニングし、ウイルス上清を産生して、これらの新規ヒト化ScFvを発現するCAR T細胞を生成した。これらのT細胞を、SupT1細胞(ROR1陰性)並びにSupT1-ROR1、SKW、及びJeko1細胞と共培養し、CD107a脱顆粒を評価した。本発明者らは、形質導入細胞のみにおいてCD107a脱顆粒を評価したことを保証するためにmCherryマーカーを利用した。
【0243】
このことは、バックグラウンドより上へのシフトによって示されるように、クローンFに関する3つ全てのヒト化ScFvが、標的細胞に応答して有意な脱顆粒を有したことを示した。本発明者らは、比較対象として親ラットScFv構築物を、並びにROR1に結合しない対照ヒト化構築物を含めた。
【0244】
[実施例15]
固形腫瘍細胞株に対する細胞傷害性
様々な悪性腫瘍に対応するROR1陽性固形腫瘍細胞株を、ROR1 CAR T細胞と共に24時間共培養した。24時間目に細胞傷害性をMTSアッセイによって評価し、IFNγを測定した。クローンF候補体は、標的細胞に対して有意な細胞傷害性を示し、結果としてIFNγを分泌した。更に、PANC-1細胞に対するT細胞のクラスタリング及び増殖が、候補体について認められたが、非形質導入又は対照のCAR T細胞では、認められなかった。
【0245】
CD107a脱顆粒アッセイに基づいて、CD107a脱顆粒をもたらしたScFv構築物を、その全てが既に記載されているようにROR1を発現するSKW6.4、PCL12、Raji、及びJeko1細胞に対する正式な細胞傷害アッセイのために選択した。
【0246】
ヒト化構築物の1つを発現するT細胞の共培養は、親クローンFと比較して類似のレベルの細胞傷害性を示した。細胞傷害性を、対照としてGD2特異的CARを発現するように形質導入したT細胞と比較した。
【0247】
オフターゲット毒性をヒト化Fと比較するために、本発明者らは、PANC1細胞(ROR1陽性)及びMCF7細胞(ROR1陰性)との持続的な共培養を行った。本発明者らは、内部対照としてCD19 fmc63 CARを利用した。hFは、予想されたように、PANC1細胞を殺滅することができた。
【0248】
本発明者らは、本発明者らの最適なヒト化Fクローンを使用してROR1-CAR T細胞を生成し、ALL(697、Kasumi2)、リンパ腫(Jeko1、Raji)、CLL(SKW、PCL12)に対応する、ROR1を恒常的に発現するROR1陽性細胞株のパネルに対する細胞傷害性を比較し、比較のROR1 ScFv(R12及び4A5)と比較して優れた細胞傷害性を示した。図8を参照されたい。
【0249】
CD19fmc63及びhF、R12、4A5 ROR1 CAR T細胞を、既に記載されたように生成した。これらを、CFSE標識されている初代CLL細胞と共培養し、B-CLL単離キット(Miltenyi Bioscience)を使用して4:1のエフェクター対標的比で単離した。細胞傷害性を、共培養中に残っている生存CLL細胞を、対照GD2 CARと共培養したCLLと比較することによって24時間目に評価した。
【0250】
hFは、R12及び4A5 ROR1 CAR T細胞と比較して優れた細胞傷害性をもたらした。細胞傷害性は、CD19 CAR T細胞と比較して低く、CD19と比較してROR1の抗原密度が低いことと一致した。図9を参照されたい。
【0251】
[実施例16]
クローンF ROR-1 CAR T細胞は、ROR1陽性神経芽腫細胞株の有意な細胞傷害性をもたらす
ROR1 CAR T細胞は、24時間及び48時間で、5:1及び10:1の標的対エフェクター比で、NB-1643及びNB-7 ROR1+神経芽腫細胞株の有意な細胞傷害性をもたらしたが、Rh30 ROR1陰性細胞株では細胞傷害性をもたらさなかった(図10を参照されたい)。
【0252】
[実施例17]
CD19 CAR T細胞と比較したクローンF ROR-1 CAR T細胞
クローンF ROR1 CAR T細胞は、対照の非標的化CD19 CAR T細胞と比較して、ROR1陽性(1643、PANC1、及びNB-7)細胞株に対して24時間で有意なIFNg分泌をもたらしたが、Rh30 ROR1陰性細胞(図11-1及び図11-2を参照されたい)では分泌をもたらさなかった。
【0253】
[実施例18]
クローンF CAR T細胞は公知のCAR T細胞と比較して優位性を示す
初めて記載されたROR1を標的とするCARは、2A2 scFv(Hudecek et al.、2010)を利用し、次いでこれをR11及びR12 scFv由来CAR T細胞の両方と比較して、R12が最善であった(Hudecek et al.、2013)。本発明者らは、クローンFが、細胞傷害性に関してこのグループによるR12リード構築物より優れていること及び異なるサイトカイン放出パターンを有することを示した。したがって、クローンF構築物もまた、2A2及びR11より優れている。
【0254】
UCSDグループは、ROR1抗体D10、H10、及び4A5を生成した。そのリード構築物は4A5であり、このデータは公表されている(Deniger et al.、2015)。本発明者らのクローンF CARは、4A5と比較されており、より優れた細胞傷害性及びサイトカイン分泌を示す。このことを考慮すると、クローンF構築物もまた、D10及びH10より優れている。加えて、D10及びH10抗体は、マウス免疫後に生成され、このため、クローンFと同じエピトープに結合しない。
【0255】
[実施例19]
クローンFのヒト化は、非ヒト化比較対照構築物と比較して利点を付与する
CD19ではなくてROR1を標的化する根拠の1つは、正常なROR1陰性B細胞集団の残存である。しかし、同時に、正常なCD19+ B細胞が絶えず存在することにより、ラット由来scFvに対する免疫応答が可能となる。これは、マウスscFvに関して認められており、mRNA改変メソテリンCAR T細胞によるアナフィラキシー(Maus et al., 2013)、又はα葉酸受容体又は炭酸脱水酵素IX特異的CAT T細胞による抗体応答(Lamers et al., 2006、Kershaw et al., 2006)を含む臨床的に重要な結果をもたらす。T細胞媒介免疫応答はまた、MHCにおけるCARの構成要素の交差提示によっても可能である。比較としてのCD19 CAR T細胞は正常なB細胞集団を撲滅することによって、抗体に基づく免疫応答のリスクを本質的に中和し、B細胞の再発はより高い再燃リスクに関連する。
【0256】
クローンFのヒト化を行うことによって、本発明者らは、CARに対する免疫応答の可能性を減少させ、それによって、持続性の増強及び免疫原性の減少をもたらした。
【0257】
配列表
以下に記載のアミノ酸配列は、アミノ酸の標準的な1文字表記を使用して示す。配列は、クローンF及び作製した5個のヒト化可変配列である。
【0258】
上記のクローンFの重鎖及び軽鎖の可変領域並びにこのクローンのヒト化型は以下の通りである:
【0259】
上記の可変領域の各々における3つのCDR配列を下線で示す。これらのCDR配列は、IMGT(国際ImMunoGeneTics情報システム)データベース(www.imgt.orgを参照されたい)からのフレームワーク領域及びCDRに関する情報に基づいて決定されている。
【0260】
上記の配列に関連する更なる配列及びその関連する配列識別番号(配列番号)を以下に示す。
【0261】
【0262】
代替のCDR表記法は、Kabatシステムを使用することであるが、これはわずかに異なる結果を生じ得る。しかし、これは当業者によって容易に決定することができる。紛らわしさを回避するために、Kabatシステムに基づく可変領域のCDR配列は以下の通りであり、Kabat CDRを太字で示す。
【0263】
したがって、Kabatシステムを使用して決定した場合のCDRは以下の通りである:
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
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