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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ポリカーボネート共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/16 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
C08G64/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020133894
(22)【出願日】2020-08-06
(62)【分割の表示】P 2019527622の分割
【原出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2020186406
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017133704
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017170163
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】常守 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-292031(JP,A)
【文献】特開2002-308982(JP,A)
【文献】特公昭39-001546(JP,B1)
【文献】特開平11-240945(JP,A)
【文献】特開2017-082131(JP,A)
【文献】IJANTKAR, Ashwini S., et al.,Conformational analysis, RIS models and modeling chain properties of substituted homopolycarbonates,MACRO 2004, International Conference on Polymers for Advanced Technologies, Thiruvananthapuram, Indi,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00-64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから誘導される単位(A)と、下記式(3)で表される単位(B)とを、全カーボネート構成単位100モル%中70モル%以上含み、単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)が3/97~60/40である、ポリカーボネート共重合体:
【化1】
(式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。)。
【請求項2】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算による数平均分子量が、10,000~100,000の範囲であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が、1.5~3.5の範囲である、請求項1に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項3】
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物が、シス-トランス異性体混合物であり、混合物中のシス異性体比率が50%以上である、請求項1又は2に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項4】
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物を220℃で窒素雰囲気下で溶融させた際のハーゼン色数(APHA)が、100以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
粘度平均分子量が10,000~40,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
単位(B)として、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールから誘導される単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項7】
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、環状アセタール構造を有するジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項8】
位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)が5/95~50/50である、請求項1に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を含む、樹脂成形品。
【請求項10】
請求項に記載の樹脂成形品を含む、自動車内装部品又は自動車外装部品。
【請求項11】
アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒の存在下で行われるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応を含み、前記アルカリ金属触媒及び/又は前記アルカリ土類金属触媒の使用量が、前記ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.1μモル~500μモルの範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ディスプレイ、カーナビ、カーオーディオ、コンソールパネル、ダッシュボード又はドアトリム用部品等の自動車内装部品、ヘッドランプレンズ、バックドア、バンパー、フェンダー、ドアハンドル、エンブレム、グレージング及びオートバイの外板等外装部品の製造に好適なポリカーボネート共重合体およびポリカーボネート樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明は、表面硬度、耐熱性、耐侯性、耐溶剤性に優れ、且つ低比重である新規なポリカーボネート共重合体およびポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野において、炭酸ガス排出量の削減及び燃費向上を目的に、自動車部品の軽量化が必須となりつつある。特に、ガラスを代替する樹脂グレージングは、優れた透明性、耐熱性、耐衝撃性を有するポリカーボネート樹脂が使用されており、ガラスに比べて比重が低く、射出成形等加工方法を選択することで形状の自由度が高く、複数部品の一体化が可能なことから車体の軽量化、車体デザインや生産性の向上が期待されている。
【0003】
一方、ポリカーボネート樹脂を用いて成形加工した成形品は、表面が柔らかいため傷が付きやすく、長期間屋外で使用すると太陽光線によって黄変しやすく、ガソリン等の有機溶剤に対する耐薬品性が劣るといった欠点を併せ持っていた。
【0004】
そこで、自動車の更なる軽量化に伴い、従来のポリカーボネート樹脂が有する優れた透明性、耐熱性を維持しつつ、表面硬度、耐侯性、耐薬品性に優れた低比重のポリカーボネート樹脂が要求されるようになった。
【0005】
なお、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(以下、TMCBと称す)と脂肪族ジオール、もしくはビスフェノール類とのポリカーボネート共重合体が報告されている(特許文献1~5)。TMCBから誘導される構造単位を有するポリカーボネートは耐熱性、表面硬度に優れるものの、ビスフェノール類を共重合した場合には耐侯性、耐溶剤性に難点があった。また、脂肪族ジオールと共重合した場合には耐侯性に優れるものの、耐熱性、表面硬度が劣ることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭38-26798号公報
【文献】特開昭63-92644号公報
【文献】特開平2-222416号公報
【文献】特開平11-240945号公報
【文献】特開2015-137355号公報
【文献】特公昭39-1546号公報
【文献】国際公開第2004/111106号
【文献】国際公開第2011/021720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表面硬度、耐熱性、耐侯性、耐溶剤性に優れ、且つ低比重であるポリカーボネート共重合体、及びポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、殊に自動車内外装部品に好適なポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた結果、驚くべきことにポリカーボネート樹脂であっても、特定の構造単位を含有するポリカーボネート共重合体を用いることにより、上記目的を達成することを見出した。かかる知見に基づき検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、下記(構成1)~(構成15)が提供される。
【0010】
(構成1)
下記式(1-1)又は(1-2)で表される単位(A)と、下記式(3)で表される単位(B)とを含む、ポリカーボネート共重合体:
【化1】
(式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Yは下記式(2)からなる二価の有機残基を示す。)
【化2】
(式中、Cはシクロアルキレン基を表し、mは3~20の整数を示す。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは1~10の整数を示す。)
【化3】
(式中、R’およびR’は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Wは単結合、炭素原子、酸素原子または硫黄原子を示す。)
【化4】
(式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。)。
(構成2)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算による数平均分子量が、10,000~100,000の範囲であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が、1.5~3.5の範囲である、構成1に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成3)
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物が、シス-トランス異性体混合物であり、混合物中のシス異性体比率が50%以上である、構成1又は2に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成4)
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物を220℃で窒素雰囲気下で溶融させた際のハーゼン色数(APHA)が、100以下である、構成1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成5)
粘度平均分子量が10,000~40,000である、構成1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成6)
単位(A)として、下記式(4)で表される単位を含む、構成1~5のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
【化5】
(式中、R、Rは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、またはハロゲン原子を示す。R10は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、pは1~10の整数を示す。)
(構成7)
単位(A)として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから誘導される単位を含む、構成1~6のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
(構成8)
単位(A)として、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンから誘導される単位を含む、構成1~5のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
(構成9)
単位(B)として、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールから誘導される単位を含む、構成1~8のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
(構成10)
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、環状アセタール構造を有するジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位をさらに含む、構成1~9のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
(構成11)
式(1-1)で表される単位(A)と、式(2)で表される単位(B)とを、主たる構成単位として含み、単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)が5/95~50/50である、構成1に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成12)
式(1-2)で表される単位(A)と、式(2)で表される単位(B)とを、主たる構成単位として含み、ガラス転移温度が126~175℃であり、JIS 7112に記載の方法で測定した比重が1.10以下である、構成1に記載のポリカーボネート共重合体。
(構成13)
構成1~12のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を含む、樹脂成形品。
(構成14)
構成13に記載の樹脂成形品を含む、自動車内装部品又は自動車外装部品。
(構成15)
アルカリ金属触媒及び/又はアルカリ土類金属触媒の存在下で行われるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応を含み、前記アルカリ金属触媒及び/又は前記アルカリ土類金属触媒の使用量が、前記ジヒドロキシ化合物1モル当たり0.1μモル~500μモルの範囲である、構成1~12のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネート共重合体は、表面硬度、耐熱性、耐侯性、耐溶剤性に優れ、且つ低比重であるため、自動車用内装部品または自動車外装部品に好適に用いられる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0013】
<ポリカーボネート共重合体>
本発明のポリカーボネート共重合体は、下記式(1-1)又は(1-2)で表される単位(A)と、下記式(3)で表される単位(B)とを含む:
【化6】
(式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Yは下記式(2)からなる二価の有機残基を示す。)
【化7】
(式中、Cはシクロアルキレン基を表し、mは3~20の整数を示す。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは1~10の整数を示す。)
【化8】
(式中、R’およびR’は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Wは単結合、炭素原子、酸素原子または硫黄原子を示す。)
【化9】
(式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。)。
【0014】
本発明者らは、上位式(1-1)又は式(1-2)を有する単位(A)と上記式(3)で表される単位(B)を含むポリカーボネート共重合体が、表面硬度、耐熱性、耐侯性、耐溶剤性に優れ、且つ低比重であることを見出した。このような特性のポリカーボネート共重合体は、従来技術においては得られておらず、本発明のポリカーボネート共重合体は、非常に有用である。
【0015】
従来から、単位(B)を含むポリカーボネート共重合体は知られていたものの、ポリカーボネート共重合体が、単位(B)を含む場合に、低比重になるという点は、知られていなかった。したがって、単位(B)を含む本発明のポリカーボネート共重合体が低比重になるという点は、予想外であった。
【0016】
また、一般的に、脂肪族部分を多く含むポリカーボネート共重合体は、耐候性に優れるものの耐熱性が低くなり、芳香族部分を多く含むポリカーボネート共重合体は、耐熱性に優れるものの耐候性が低くなることが知られていた。さらに、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート共重合体は、2つのフェノール間を連結する構造が脂肪族である場合に耐溶剤性が悪化する傾向にあることが知られていた。
【0017】
しかし、単位(A)と単位(B)とを含むポリカーボネート共重合体であれば、耐候性、耐熱性及び耐溶剤性のバランスに優れるという点は予想外であり、そしてこのような本発明のポリカーボネート共重合体が、高い表面硬度を有するという点も予想外であった。
【0018】
第1の態様において、本発明のポリカーボネート共重合体は、主たる構成単位として、下記式(1-1)で表される単位(A)と、下記式(3)で表される単位(B)とを含む:
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Yは、単結合または下記式(2)からなる二価の有機残基を示す。)
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、Cはシクロアルキレン基を表し、mは3~20の整数を示す。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは1~10の整数を示す。)
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。)。
【0025】
第2の態様において、本発明のポリカーボネート共重合体は、主たる構成単位として、下記式(1-2)で表される単位(A)と、下記式(3)で表される単位(B)とを含む:
【0026】
【化13】
【0027】
(式中、R’およびR’は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。Wは単結合、炭素原子、酸素原子または硫黄原子を示す。)
【0028】
【化14】
【0029】
(式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。)。
【0030】
第3の態様において、本発明のポリカーボネート共重合体は、主たる構成単位として、上記の式(1-1)で表される単位(A)と、上記の式(1-2)で表される単位(A)と、式(3)で表される単位(B)とを含む。これらの構成単位については、以下の第1の態様及び第2の態様についての記載を参照することができる。
【0031】
ここで、“主たる”とは、末端を除く全カーボネート構成単位100モル%中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%であることを示す。
【0032】
(単位(A))
式(1-1)で表される単位(A)は、その式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。RおよびRは、夫々独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、さらに水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0033】
前記式(2)において、式中、Cは炭素数3~20のシクロアルキレン基を表す。好ましくは炭素数3~15のシクロアルキレン基、より好ましくは炭素数3~12のシクロアルキレン基、さらに好ましくは炭素数4~8のシクロアルキレン基、最も好ましくは炭素数6のシクロヘキシレン基である。
【0034】
前記式(2)において、式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、nは1~10の整数を示す。Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。nは1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0035】
式(1-1)で表される単位(A)としては、前記式(4)で表される単位が好ましく、式中、RおよびRは、夫々独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、さらに水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0036】
式(1-1)で表される単位(A)を誘導する二価フェノールとしては、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、および1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。最も好適な二価フェノールは、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。これらの二価フェノールは2種類以上併用して用いてもよい。
【0037】
式(1-2)で表される単位(A)は、その式中、R’およびR’は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。炭化水素基として、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数1~10のアルケニル基が挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。R’およびR’は、夫々独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、さらに水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。Wは単結合、炭素原子、酸素原子または硫黄原子を示し、単結合であることがより好ましい。
【0038】
第2の態様に関する単位(A)を誘導するジヒドロキシ化合物としては、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、スピロビクロマンであることが好ましく、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンであることが最も好ましい。
【0039】
(単位(B))
単位(B)は、前記式(3)において、式中、R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数3~20のシクロアルキル基を示す。R、R、R、Rは夫々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
【0040】
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物としては、2-メチル-1,3-シクロブタジオール、2,4-ジメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2-エチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジエチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラブチル-1,3-シクロブタンジオール等が挙げられる。最も好適なジヒドロキシ化合物は、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールである。これらのジヒドロキシ化合物は2種類以上併用して用いてもよい。
【0041】
単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物は、通常シス-トランス異性体混合物である。その比率は限定されるものではないけれども、シス異性体比率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。シス異性体比率が前記比率以上の場合、得られるポリカーボネート共重合体の耐衝撃性が良好となり、耐衝撃性の必要な用途に好ましく使用される。特公昭39-1546号公報によれば、トランス異性体が50%以下の場合に、成形加工の際に分解が生じにくく、優れた樹脂成形品が得られやすいことが記載されている。シス-トランス異性体比率は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出することができる。
【0042】
また、単位(B)を誘導するジヒドロキシ化合物は、220℃、窒素雰囲気下で溶融させた際のハーゼン色数(APHA)が100以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、60以下であることがさらに好ましい。ハーゼン色数が前記値以下であると重合体の色相が良好で透明性に優れるため好ましい。
【0043】
なお、その他の共重合構成単位を誘導するジオール化合物としては、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物のいずれでも良く、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類や環状アセタール構造を有するジオール類が挙げられる。
【0044】
前記脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。これらの二価フェノールは2種類以上併用して用いてもよい。
【0045】
前記脂環式ジオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。これらの二価フェノールは2種類以上併用して用いてもよい。
【0046】
前記オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記環状アセタール構造を有するジオール類としては、例えば、スピログリコール、ジオキサングルコール等が挙げられる。
【0048】
なお、前記例示化合物は、本発明でポリカーボネート共重合体の構成単位として使用し得るジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。
【0049】
(組成)
本発明のポリカーボネート共重合体は、単位(A)と単位(B)とを含み、それらのモル比(A/B)は5/95~50/50であってもよい。モル比(A/B)が5/95~50/50の範囲では、耐熱性、耐侯性等について好ましい。単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)は、10/80~50/50が好ましく、20/80~50/50がより好ましい。また、単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)は、10/90~40/60がより好ましく、15/85~35/65がさらに好ましい。単位(A)がこのような範囲では、耐熱性、表面硬度、耐侯性、耐薬品性等のバランスが好ましい傾向となる。モル比(A/B)は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出することができる。
【0050】
第3の態様において、式(1-1)で表される単位(A)と、式(1-2)で表される単位(A)とのモル比は、特に限定されないが、5/95~95/5、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、又は40/60~60/40であってもよい。
【0051】
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、環状アセタール構造を有するジオールをさらに共重合する場合、これらの各ジヒドロキシ化合物の共重合比率は特に限定されず、任意の割合で選択できる。これらの共重合単位は、末端を除く全カーボネート構成単位100モル%中、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
【0052】
(ポリカーボネート共重合体の製造方法)
本発明のポリカーボネート共重合体は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0053】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0054】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97~1.10モル、より好ましは1.00~1.06モルである。
【0055】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
【0056】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0057】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0058】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
【0059】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0060】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
【0061】
これらの重合触媒の使用量は、ジヒドロキシ成分1モルに対し好ましくは0.1μモル~500μモル、より好ましくは0.5μモル~300μモル、さらに好ましくは1μモル~100μモルである。
【0062】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0063】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0064】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5~50モルの割合で、より好ましくは0.5~10モルの割合で、更に好ましくは0.8~5モルの割合で使用することができる。
【0065】
(数平均分子量)
本発明のポリカーボネート共重合体の数平均分子量(Mn)は、10,000以上、15,000以上、18,000以上、又は20,000以上であってもよく、100,000以下、80,000以下、50,000以下、30,000以下、20,000以下、18,000以下であってもよい。また、同様に、重量平均分子量(Mw)は、15,000以上、20,000以上、30,000以上、又は50,000以上であってもよく、200,000以下、150,000以下、100,000以下、80,000以下、50,000以下、30,000以下であってもよい。さらにその分子量分布(Mw/Mn)は、1.5以上、1.8以上、2.0以上、又は2.3以上であってもよく、3.5以下、3.0以下、2.5以下、又は2.3以下であってもよい。ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で得られる値である。具体的には、以下の測定装置及び測定条件が採用される:
測定機種:東ソー製 HLC-8220GPC
カラム:Shodex KF-G+KF-805L×2本+KF-800D
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:1.0mL/min
濃度:0.1wt/vol%
注入量:100μL
前処理:0.2μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0066】
(粘度平均分子量)
本発明のポリカーボネート共重合体は、その粘度平均分子量(Mv)が、好ましくは10,000~40,000であり、より好ましくは12,000~35,000であり、さらに好ましくは15,000~30,000である。粘度平均分子量が上記下限値以上である場合、十分な靭性及び耐衝撃性が得られる傾向にある。また、粘度平均分子量が上記上限値以下である場合、高い成形加工温度を必要とせず、また特殊な成形方法も必要としないため、汎用性に優れる傾向にある。更に溶融粘度の低下により、射出速度依存性もなくなりやすく、外観不良等による歩留まりが向上することがある。
【0067】
本発明におけるポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0068】
(ガラス転移温度)
本発明のポリカーボネート共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度(以下、Tgと略す)を示す。Tgは、好ましくは125~175℃、より好ましくは130~160℃である。また、Tgは126~175℃であってもよく、好ましくは128~170℃であり、より好ましくは130~160℃である。ガラス転移温度(Tg)が、上記下限値以上であると耐熱性が十分となり、また、上記上限値以下であると成形加工性が良好となり好ましい。
Tgはティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定することができる。
【0069】
(比重)
本発明のポリカーボネート共重合体の比重は、1.10以下が好ましく、1.08以下がより好ましく、1.06以下がさらに好ましい。比重は、JIS 7112 プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法(C法 浮沈法)に準拠し測定した。比重が小さいほど軽量化の観点で好ましい。
【0070】
(鉛筆硬度)
本発明のポリカーボネート共重合体は、鉛筆硬度がHB以上又はF以上であることが好ましい。耐傷性に優れるという点で、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。なお、鉛筆硬度は4H以下で充分な機能を有する。鉛筆硬度は全カーボネート単位を基準として単位(B)の組成比率を増加させることで硬くすることができる。本発明において、鉛筆硬度とは、本発明の共重合体を板状に加工し、特定の鉛筆硬度を有する鉛筆(三菱鉛筆製Hi-uniを使用)で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことであり、JIS K-5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いる鉛筆硬度を指標とすることが好ましい。鉛筆硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
【0071】
(耐薬品性)
本発明のポリカーボネート共重合体は、レギュラーガソリンを用いた耐薬品性試験において、ソルベントクラックが発生する限界歪みが0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましい。限界歪みが上記値以上であると、耐ガソリン性が良好であり好ましい。耐薬品性試験は、各部で曲率の異なるベンゲン1/4楕円体冶具に試験片(厚み1mmの角板)を取り付けて、レギュラーガソリン中に浸漬し、1時間後の亀裂発生の終点の歪みを測定するものである。
【0072】
(耐衝撃性)
本発明のポリカーボネート共重合体は、JIS K7211-2に即して測定された高速面衝撃試験による衝撃エネルギーが25J以上であることが好ましく、30J以上であることがより好ましい。さらに、破壊形態が延性破壊であることが好ましい。衝撃エネルギーが上記値以上であると、耐衝撃性が良好であるとともに破壊形態が延性破壊となるため好ましい。
【0073】
(芳香族モノヒドロキシ化合物含有量)
本発明のポリカーボネート共重合体中の芳香族モノヒドロキシ化合物含有量は好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは1200ppm以下であり、さらに好ましくは1000ppm以下である。芳香族モノヒドロキシ化合物含有量は少ないほどポリカーボネート共重合体の色調が良好であり好ましい。なお、特に下限値は限定されないが通常5ppm以上含まれる。
【0074】
<ポリカーボネート共重合体以外の成分>
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、流動改質剤および帯電防止剤などのそれ自体公知の機能剤を含有できる。
(i)離型剤
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤を併用しても良い。離型剤としては、例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体などであり、酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。離型剤を含有させる割合は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対して、好ましくは0.001~2重量部、より好ましくは0.005~1重量部、さらに好ましくは0.007~0.5重量部、特に好ましくは0.01~0.3重量部である。含有量が上記範囲の下限以上では、離型性の改良効果が明確に発揮され、上限以下の場合、成形時の金型汚染などの悪影響が低減され好ましい。
【0075】
上記の中でも好ましい離型剤として用いられる脂肪酸エステルについて、さらに詳述する。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0076】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3~15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0077】
前述の脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよいが、より良好な離型性および耐久性の点で部分エステルが好ましく、特にグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。そのような場合でも、脂肪酸エステル中のグリセリンモノエステルの割合は60重量%以上であることが好ましい。
【0078】
なお、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
【0079】
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120~150℃、真空度0.01~0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160~230℃、真空度0.01~0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
(ii)リン系安定剤
本発明のポリカーボネート共重合体には、その成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系安定剤は第3級ホスフィンを含む。
【0080】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0081】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0082】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0083】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0084】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0085】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0086】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
【0087】
(iii)ヒンダードフェノール系安定剤(酸化防止剤)
本発明のポリカーボネート共重合体には、その成形加工時の熱安定性、および耐熱老化性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤を配合することができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
上記(ii)リン系安定剤および/または(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対して、好ましくは0.0001~1重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部、さらに好ましくは0.005~0.1重量部である。安定剤が上記範囲以上の場合には良好な安定化効果を得ることができ、上記範囲以下の場合は、材料の物性低下や、成形時の金型汚染を起こし難く好ましい。
【0089】
本発明のポリカーボネート共重合体には、適宜上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することもできる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対して0.001~0.05重量部が好ましい。
【0090】
(iv)紫外線吸収剤
本発明に使用されるポリカーボネート共重合体は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明の紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0091】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0092】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0093】
紫外線吸収剤としては、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
【0094】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0095】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0096】
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
【0097】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対して0.01~2重量部、好ましくは0.03~2重量部、より好ましくは0.04~1重量部、更に好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0098】
(v)流動改質剤
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、流動改質剤を含むことができる。かかる流動改質剤としては、スチレン系オリゴマー、ポリカーボネートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)、ポリアルキレンテレフタレートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)高度分岐型およびハイパーブランチ型の脂肪族ポリエステルオリゴマー、テルペン樹脂、並びにポリカプロラクトン等が好適に例示される。かかる流動改質剤は、ポリカーボネート共重合体100重量部当たり、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~20重量部、さらに好ましくは2~15重量部である。特にポリカプロラクトンが好適であり、組成割合はポリカーボネート共重合体100重量部あたり、特に好ましくは2~7重量部である。ポリカプロラクトンの分子量は数平均分子量で表して1,000~70,000であり、1,500~40,000が好ましく、2,000~30,000がより好ましく、2,500~15,000が更に好ましい。
【0099】
(vi)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート共重合体は、帯電防止性を向上させることを主たる目的として帯電防止剤を配合することができる。帯電防止剤としては、スルホン酸ホスホニウム塩、亜リン酸エステル、カプロラクトン系重合体等を使用することができ、スルホン酸ホスホニウム塩が好ましく使用される。かかるスルホン酸ホスホニウム塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルオクチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム、ジブチルベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム、ジブチルナフチルスルホン酸トリフェニルホスホニウム、ジイソプロピルナフチルスルホン酸トリオクチルメチルホスホニウム等が挙げられる。中でも、ポリカーボネートとの相溶性及び入手が容易な点で、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムが好ましい。帯電防止剤の量は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対し、好ましくは0.1~5.0重量部、より好ましくは0.2~3.0重量部、さらに好ましくは0.3~2.0重量部、特に好ましくは0.5~1.8重量部配合される。0.1重量部以上では、帯電防止の効果が得られ、5.0重量部以下であると透明性や機械的強度に優れ、成形品表面にシルバーや剥離が生じず外観不良を引き起こし難い。
【0100】
本発明のポリカーボネート共重合体は、他にも、ブルーイング剤、蛍光染料、難燃剤、および染顔料などの各種の添加剤を含有することができる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択して含有することができる。
【0101】
ブルーイング剤は、ポリカーボネート共重合体中0.05~3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
【0102】
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、ポリカーボネート共重合体100重量部に対して0.0001~0.1重量部が好ましい。
【0103】
難燃剤としては、例えば、スルホン酸金属塩系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、燐含有化合物系難燃剤、および珪素含有化合物系難燃剤などを挙げることができる。これらの中でも、スルホン酸金属塩系難燃剤が好ましい。難燃剤の配合量は、通常、ポリカーボネート共重合体100重量部に対し、0.01~1重量部が好ましく、0.05~1重量部の範囲がより好ましい。
【0104】
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、適宜、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート共重合体以外の樹脂が挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン共重合体(COP)樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);等が挙げられる。
【0105】
本発明のポリカーボネート共重合体に添加剤等を配合させる方法は、特に限定されるものではなく公知の方法が利用できる。最も汎用される方法として、ポリカーボネート共重合体および添加剤を予備混合した後、押出機に投入して溶融混練を行い、押出されたスレッドを冷却し、ペレタイザーにより切断して、ペレット状の成形材料を製造する方法が挙げられる。
【0106】
上記方法における押出機は単軸押出機、および二軸押出機のいずれもが利用できるが、生産性や混練性の観点からは二軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部手前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0107】
更に添加剤は、独立して押出機に供給することもできるが、前述のとおり樹脂原料と予備混合することが好ましい。かかる予備混合の手段には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。より好適な方法は、例えば原料樹脂の一部と添加剤とをヘンシェルミキサーの如き高速攪拌機で混合してマスター剤を作成した後、かかるマスター剤物を残る全量の樹脂原料とナウターミキサーの如き高速でない攪拌機で混合する方法である。
【0108】
押出機より押出されたポリカーボネート樹脂組成物は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を行うことが好ましい。ミスカットの低減には、ペレタイザーでの切断時のスレッドの温度管理、切断時のイオン風の吹き付け、ペレタイザーのすくい角の適正化、および離型剤の適切な配合などの手段、並びに切断されたペレットと水との混合物を濾過してペレットと水およびミスカットとを分離する方法などが挙げられる。その測定方法の一例は例えば特開2003-200421号公報に開示されている。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。
【0109】
成形材料(ペレット)におけるミスカット量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。ここで、ミスカットとは、目開き1.0mmのJIS標準篩を通過する所望の大きさのペレットより細かい粉粒体を意味する。ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)であり、かかる円柱の直径は好ましくは1.5~4mm、より好ましくは2~3.5mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは2~4mm、より好ましくは2.5~3.5mmである。
【0110】
<ポリカーボネート樹脂成形品>
本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物からなる成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【0111】
また、本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物は、溶融押出法、溶液キャスティング法(流延法)等などの方法によりシート状、フィルム状の成形品を得ることもできる。溶融押出法の具体的な方法は、例えば、ポリカーボネート共重合体または樹脂組成物を押出機に定量供給して、加熱溶融し、Tダイの先端部から溶融樹脂をシート状に鏡面ロール上に押出し、複数のロールにて冷却しながら引き取り、固化した時点で適当な大きさにカットするか巻き取る方式が用いられる。溶液キャスティング法の具体的な方法は、例えば、ポリカーボネート共重合体または樹脂組成物を塩化メチレンに溶解した溶液(濃度5%~40%)を鏡面研磨されたステンレス板上にTダイから流延し、段階的に温度制御されたオーブンを通過させながらシートを剥離し、溶媒を除去した後、冷却して巻き取る方式が用いられる。
【0112】
さらに、本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物は、成形して積層体とすることもできる。積層体の製法としては、任意の方法を用いればよく、特に熱圧着法または共押出法で行うことが好ましい。熱圧着法としては任意の方法が採用されるが、例えばポリカーボネート共重合体または樹脂組成物のシートをラミネート機やプレス機で熱圧着する方法、押出し直後に熱圧着する方法が好ましく、特に押出し直後のシートに連続して熱圧着する方法が工業的に有利である。
【0113】
<自動車内装部品、自動車外装部品>
本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物は、表面硬度、耐熱性、耐侯性、耐溶剤性に優れ、且つ低比重であることから、例えば、インストルメントパネル、センターコンソールパネル、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチ類、ディスプレイ前面板、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品等の自動車内装部品、ヘッドランプレンズ、バックドアパネル、ドアハンドル、エンブレム、グレージング、フェンダー、バンパー、フェーシャ、ドアパネル、サイドガーニッシュ、ピラー、ラジエータグリル、サイドプロテクター、サイドモール、リアプロテクター、リアモール、各種スポイラー、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッド、デタッチャブルトップ、ウインドリフレクター、ミラーハウジング、アウタードアハンドル等の自動車用外装部品に好適に適用できる。
【実施例
【0114】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例、および比較例において、各特性の測定法は次のとおりである。
(1)シス-トランス比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し、シス-トランス異性体比率(モル比)を算出した。
原料 50mg
溶媒 重DMSO 0.6mL
積算回数:512回
(2)ハーゼン色数(APHA)
試験管に試料15gを秤量し、窒素雰囲気下にて、220℃に加熱したアルミブロックバスヒーターに投入した。15分後、溶融した試料のハーゼン色数(APHA)を日本電飾製色差計TZ6000にて測定した。
【0115】
(3)ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
ポリマー量 40mg
溶媒 重クロロホルム(TMS0.05%入り) 0.6mL
積算回数:256回
【0116】
(4)粘度平均分子量
樹脂組成物の粘度平均分子量を、以下の方法で測定した。ポリカーボネート共重合体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。そして、下記式により算出されるMvを粘度平均分子量とした。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
Mv:粘度平均分子量
【0117】
(5)ガラス転移温度
樹脂組成物のガラス転移温度をTAインスツルメント社製の熱分析システムDSC-2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
(6)比重
3段型板(厚み2mm分)を400mm×100mmに切削し、JIS 7112記載の方法(浮沈法)にて比重を測定した。
【0118】
(7)表面硬度
3段型板(厚み2mm分)を用いて、JIS K 5600に準拠し、鉛筆硬度を測定した。
荷重 750g
測定速度 50mm/min
測定距離 7mm
鉛筆 三菱鉛筆製Hi-uni
【0119】
(8)耐薬品性試験
樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製EC100NII-2Y)により100mm×100mm×1mmの成形板を成形した。120℃で24時間放置後、23℃50%RH環境下でさらに24時間放置した。その後、ベンゲン1/4楕円体冶具に試験片を取り付け、レギュラーガソリン中に1時間浸漬し、取り出し後の亀裂発生終点の歪みを測定し、限界歪みとした。
(9)耐侯性試験
スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーターを用いて、63℃、相対湿度50%の条件で、3段型板(2mm厚部)を試験し、1000時間後の色相変化をX-Rite社製積分球分光光度計CE-7000Aにて測定し、色差(ΔE CIE L*a*b*)を算出した。
【0120】
(10)耐衝撃性試験
樹脂組成物を射出成形機 日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型板を成形した。島津ハイドロショットHTM-1を用いて下記条件にて試験を行い、衝撃エネルギー及び試験後の外観を目視観察した。
試験速度 7m/sec
撃芯径 半径6.4mm半球状
受台径 半径12.8mm円状
試験位置 試験片2mm厚部
【0121】
(11)ポリカーボネートペレット中のフェノール含有量
ポリカーボネートペレット試料1.25gを塩化メチレン7mLに溶解後、総量が25mlとなるようにアセトンを添加して再沈澱処理を行った。次いで、該処理液を0.2μmディスクフィルターでろ過し、液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
【0122】
(12)数平均分子量及び分子量分布
数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC法によるポリスチレン換算で得られる値であり、以下の測定装置及び測定条件を採用した:
測定機種:東ソー製 HLC-8220GPC
カラム:Shodex KF-G+KF-805L×2本+KF-800D
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:1.0mL/min
濃度:0.1wt/vol%
注入量:100μL
前処理:0.2μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0123】
[実施例1]
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下BPTMCと略す、本州化学製)383部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1600部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)2641部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.33部と水酸化ナトリウム0.025部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、2時間をかけて240℃まで昇温を行い、副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を101.3kPaから13.4kPaまで減圧した。続いて、応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。内圧を絶対圧で13.3kPaから2kPaまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。内圧を絶対圧で13.3kPaから2kPaまで減圧し、さらに260℃まで温度を上げ、留出するフェノールを系外に除去した。1時間かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。さらに、内圧が0.3Pa以下に到達後、内圧を保持し、重縮合反応を行った。反応器内の最終的な内部温度は260℃とした。予め定めた所定の攪拌動力となったときに重縮合反応を終了した。
【0124】
次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を触媒量の2倍量(モル比)添加して260℃、10Torr以下で10分間反応を継続し、得られたポリマーをギアポンプでベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX-46]に送った。押出機の途中で、ポリマー100重量部に対して、離型剤:リケスターEW400(ペンタエリスリトールスフステアレート、理研ビタミン製)0.1重量部、リン系酸化防止剤:ホスタノックスP-EPQ(テトラキス(2,4-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、クラリアントジャパン製)0.05重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1076(3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクタデシル、BASF製)0.03重量部を加え、入口のバレル温度230℃、出口のバレル温度280℃、ポリマー出口温度295℃で、脱気しながら溶融混錬押出し、2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネートペレットを得た。ポリカーボネートペレット中のフェノール含有量は325ppmであった。該ペレットを用いて各種評価した結果を表1に記載した。
【0125】
[実施例2]
BPTMC776部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率80%、APHA70)1442部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表1に記載した。
【0126】
[実施例3]
BPTMC1914部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)889部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表1に記載した。
【0127】
[実施例4]
BPTMCを1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、BPZと略す、本州化学製)991部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1245部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表1に記載した。
【0128】
[実施例5]
BPTMCを1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(以下、BPOCZと略す、本州化学製)1825部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)889部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表1に記載した。
【0129】
[実施例6]
BPTMCを1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-シクロヘキサン(以下、BPOCTMCと略す、本州化学製)835部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1422部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表1に記載した。
【0130】
[実施例7]
TMCBを東京化成工業製、シス異性体比率45%(APHA50)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表2に記載した。
【0131】
[実施例8]
TMCBを東京化成工業製、シス異性体比率48%(APHA150)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表2に記載した。
【0132】
[実施例9]
触媒として、水酸化ナトリウムの代わりにステアリン酸バリウム0.44部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表2に記載した。
【0133】
[実施例10]
BPTMC115部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1725部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表2に記載した。
【0134】
[実施例11]
BPTMC2297部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)711部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表2に記載した。
【0135】
[実施例12]
BPTMC383部及びTMCB1600部の代わりに、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(以下BPSBIと略す、本州化学製)382部及びTMCB1608部を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表3に記載した。
【0136】
[実施例13]
BPSBI764部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率80%、APHA70)1429部とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表3に記載した。
【0137】
[実施例14]
BPSBI1911部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)893部とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表3に記載した。
【0138】
[実施例15]
BPSBIをスピロビクロマン(以下、BPSBCと略す、東京化成工業製)1685部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1072部に変更した以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表3に記載した。
【0139】
[実施例16]
TMCBを東京化成工業製、シス異性体比率45%、APHA50とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表4に記載した。
【0140】
[実施例17]
TMCBを東京化成工業製、シス異性体比率48%、APHA150とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表4に記載した。
【0141】
[実施例18]
触媒として、水酸化ナトリウムの代わりにステアリン酸バリウム0.44部とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表4に記載した。
【0142】
[実施例19]
BPSBI114部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)1733部とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表4に記載した。
【0143】
[実施例20]
BPSBI2290部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)715部とした以外は実施例12と同様の操作を行い、結果を表4に記載した。
【0144】
[比較例1]
BPTMCを使用せず、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率45%、APHA50)1778部とした以外は実施例1と同様の操作を行ったが、重合反応中に結晶化が生じたため、押出しを中止した。
【0145】
[比較例2]
BPTMCの代わりにビスフェノールA281部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表5に記載した。
【0146】
[比較例3]
BPTMCの代わりにビスフェノールA1406部、TMCB(東京化成工業製、シス異性体比率60%、APHA80)889部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、結果を表5に記載した。
【0147】
[比較例4]
ビスフェノールAを原料として得られたポリカーボネート樹脂(帝人製パンライトL-1225Y)を用いて各種評価を行った。結果を表5に記載した。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【0153】
これらの結果から、実施例1~20によるポリカーボネート共重合体は、比重が低く、かつ高い表面硬度を有していることがわかる。また、実施例1~20によるポリカーボネート共重合体は、十分な耐熱性、耐候性及び耐溶剤性を有していることもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物は、室内照明用ランプレンズ、表示用メーターカバー、メーター文字板、各種スイッチカバー、ディスプレイカバー、ヒートコントロールパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、センターパネル、ルームランプレンズ、ヘッドアップディスプレイ等の各種表示装置、保護部品、透光部品車載用ディスプレイ、カーナビ、カーオーディオ、コンソールパネル、ダッシュボード又はドアトリム用部品等の自動車用内装部品、ヘッドランプレンズ、バックドア、バンパー、フェンダー、ドアハンドル、エンブレム、グレージング等の自動車用外装部品及びオートバイの外板等に利用できる。