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特許7179041三官能性T細胞-抗原カプラ及び方法並びにこれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】三官能性T細胞-抗原カプラ及び方法並びにこれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221118BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221118BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20221118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221118BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17 Z
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/04
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
【請求項の数】 46
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020137529
(22)【出願日】2020-08-17
(62)【分割の表示】P 2016549468の分割
【原出願日】2015-02-06
(65)【公開番号】P2021000095
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】61/936,906
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515297881
【氏名又は名称】マクマスター ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ブラムソン ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルセン クリストファー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】デニソヴァ ガリナ
(72)【発明者】
【氏名】ギリ ラジャニシュ
(72)【発明者】
【氏名】ムワワシ ケネス アンソニー
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/011988(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/123061(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のT細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドと、
を含み、
前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合して単一のTACポリペプチドをコードし、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記核酸は、共刺激ドメインをコードせず、かつ、
(iii)抗原とTACの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
核酸。
【請求項2】
単一のT細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドと、
を含み、
前記第三のポリヌクレオチドは、配列番号17と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合して単一のTACポリペプチドをコードし、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記核酸は、共刺激ドメインをコードせず、かつ、
(iii)抗原とTACの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
核酸。
【請求項3】
単一のT細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドと、
を含み、
前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と少なくとも90%の配列同一性を有し、
前記第三のポリヌクレオチドは、配列番号17と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合して単一のTACポリペプチドをコードし、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記核酸は、共刺激ドメインをコードせず、かつ、
(iii)抗原とTACの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
核酸。
【請求項4】
前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1から3のいずれかに記載の核酸。
【請求項5】
前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と100%の配列同一性を有する、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記第三のポリヌクレオチドは、配列番号17と100%の配列同一性を有する、請求項1から5のいずれかに記載の核酸。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインは、HER2又はBCMAに結合する、請求項1から6のいずれかに記載の核酸。
【請求項8】
前記第一のポリヌクレオチドは、配列番号7と100%の配列同一性を有する、請求項1から7のいずれかに記載の核酸。
【請求項9】
単一のT細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、
(a)HER2抗原結合ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドと、
を含み、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合して単一のTACポリペプチドをコードし、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記核酸は共刺激ドメインをコードせず、かつ、
(iii)HER2とTACの前記HER2抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
核酸。
【請求項10】
(i)前記第一のポリヌクレオチドは、配列番号7又は配列番号22と100%の配列同一性を有し、
(ii)前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ/又は、
(iii)前記第三のポリヌクレオチドは、配列番号17と100%の配列同一性を有する、
請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
単一のT細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドをコードする核酸であって、前記核酸は、
(a)BCMA抗原結合ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドと、
を含み、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合して単一のTACポリペプチドをコードし、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記核酸は、共刺激ドメインをコードせず、かつ、
(iii)BCMAとTACの前記BCMA抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
核酸。
【請求項12】
(i)前記第二のポリヌクレオチドは、配列番号13又は配列番号24と少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ/又は、
(ii)前記第三のポリヌクレオチドは、配列番号17と100%の配列同一性を有する、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記核酸は活性化ドメインをコードしない、請求項1から12のいずれかに記載の核酸。
【請求項14】
前記抗原結合ドメインは設計されたアンキリン・リピート(ダルピン)ポリペプチド又はscFvである、請求項1から13のいずれかに記載の核酸。
【請求項15】
T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合する前記リガンドは、単鎖抗体である、請求項1から14のいずれかに記載の核酸。
【請求項16】
T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合する前記リガンドは、UCHT1である、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
(i)構成要素(a)及び構成要素(c)は、構成要素(b)に直接連結する、請求項1から16のいずれかに記載の核酸。
【請求項18】
請求項1から8又は13から17のいずれかに記載の核酸を含む、T細胞。
【請求項19】
請求項9、10又は13から17のいずれかに記載の核酸を含む、T細胞。
【請求項20】
請求項11から17のいずれかに記載の核酸を含む、T細胞。
【請求項21】
T細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインと、
を含み、
前記リガンドは、配列番号14又は配列番号25と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合しており、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記TACポリペプチドは、共刺激ドメインを有さず、かつ、
(iii)抗原とTACポリペプチドの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
ポリペプチド。
【請求項22】
T細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインと、
を含み、
前記T細胞共受容体ドメインは、配列番号18と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合しており、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記TACポリペプチドは、共刺激ドメインを有さず、かつ、
(iii)抗原とTACポリペプチドの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
ポリペプチド。
【請求項23】
T細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、
(a)腫瘍抗原に結合する抗原結合ドメインと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインと、
を含み、
前記リガンドは、配列番号14又は配列番号25と少なくとも90%の配列同一性を有し、
前記T細胞共受容体ドメインは、配列番号18と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合しており、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記TACポリペプチドは、共刺激ドメインを有さず、かつ、
(iii)抗原とTACポリペプチドの前記抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
ポリペプチド。
【請求項24】
CD3タンパク質に結合する前記リガンドは、配列番号14又は配列番号25と少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項21から23のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項25】
CD3タンパク質に結合する前記リガンドは、配列番号14又は配列番号25と100%の配列同一性を有する、請求項24に記載のTACポリペプチド。
【請求項26】
前記T細胞共受容体ドメインは、配列番号18と100%の配列同一性を有する、請求項21から25のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項27】
前記抗原結合ドメインは、HER2又はBCMAに結合する、請求項21から26のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項28】
前記抗原結合ドメインは、配列番号8と100%の配列同一性を有する、請求項21から27のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項29】
T細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、
(a)HER2抗原結合ドメインと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインと、
を含み、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合しており、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記TACポリペプチドは、共刺激ドメインを有さず、かつ、
(iii)HER2とTACポリペプチドの前記HER2抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
ポリペプチド。
【請求項30】
(i)前記HER2抗原結合ドメインは、配列番号8又は配列番号23と100%の配列同一性を有し、
(ii)前記CD3タンパク質に結合するリガンドは、配列番号14又は配列番号25と少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ/又は、
(iii)前記T細胞共受容体ドメインは、配列番号18と100%の配列同一性を有する、
請求項29に記載のTACポリペプチド。
【請求項31】
T細胞抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、
(a)BCMA抗原結合ドメインと、
(b)T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合するリガンドと、
(c)CD4細胞質ドメイン及びCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインと、
を含み、
(i)構成要素(a)、(b)及び(c)の全てが、互いに直接連結するか、かつ/又は、少なくとも1つのリンカーによって結合しており、かつ、
(a)、(b)及び(c)の順で互いに直接連結するか、又は、(a)、(b)及び(c)の順、若しくは(b)、(a)及び(c)の順で少なくとも1つのリンカーによって結合しており、
(ii)前記TACポリペプチドは、共刺激ドメインを有さず、かつ、
(iii)BCMAとTACポリペプチドの前記BCMA抗原結合ドメインとの結合、及び前記リガンドとT細胞上のTCR複合体と会合する前記CD3タンパク質との結合は、前記T細胞の活性化を促進する、
ポリペプチド。
【請求項32】
(i)前記CD3タンパク質に結合するリガンドは、配列番号14又は配列番号25と少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ/又は、
(ii)前記T細胞共受容体ドメインは、配列番号18と100%の配列同一性を有する、
請求項31に記載のTACポリペプチド。
【請求項33】
前記TACポリペプチドは活性化ドメインを有さない、請求項21から32のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項34】
前記抗原結合ドメインは設計されたアンキリン・リピート(ダルピン)ポリペプチド又はscFvである、請求項21から33のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項35】
T細胞上のTCR複合体と会合するCD3タンパク質に結合する前記リガンドは、UCHT1である、請求項21から34のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項36】
(i)構成要素(a)及び構成要素(c)は、構成要素(b)に直接連結する、請求項21から35のいずれかに記載のTACポリペプチド。
【請求項37】
請求項21から28又は33から36のいずれかに記載のTACポリペプチドを含む、T細胞。
【請求項38】
請求項29、30又は33から36のいずれかに記載のTACポリペプチドを含む、T細胞。
【請求項39】
請求項31から36のいずれかに記載のTACポリペプチドを含む、T細胞。
【請求項40】
(a)請求項18から20又は37から39のいずれかに記載のT細胞と、(b)賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項41】
癌の処置のための医薬組成物の製造における、請求項18又は37に記載のT細胞の使用。
【請求項42】
前記癌は、癌腫、肉腫、芽細胞腫、リンパ腫、又は悪性黒色腫である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記癌は、乳癌、又は肺癌である、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記癌は、白血病(MLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、又は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
HER2を発現する癌の処置のための医薬組成物の製造における、請求項19又は38に記載のT細胞の使用。
【請求項46】
BCMAを発現する癌の処置のための医薬組成物の製造における、請求項20又は39に記載のT細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年2月7日付出願の米国特許仮出願第61/936,906号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は全文引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、特定の標的細胞に対して高い細胞毒性を有し、標的外の毒性が低下したT細胞を操作することにより癌を処置する方法に関する。特に、本開示は、自然に起こるT細胞活性化過程を模倣する新規生物学的因子を発現するようにT細胞を操作することに関する。
【背景技術】
【0003】
癌は健康面の深刻な課題であり、カナダでは2013年だけでも150,000症例を超える癌が診断されると見込まれている。疾患が早期の患者は従来の治療法(手術、放射線療法、化学療法)によって効果的に処置することができるが、疾患が進行した患者には利用可能な選択肢は少なく、またこうした選択肢は通常本質的に姑息的なものである。能動免疫療法は、腫瘍沈着物を取り除くために患者の免疫系を利用しようとし、従来の療法の役に立たなかった患者に心躍る選択肢を提供している(非特許文献1)。実際、いくつかの臨床研究はT細胞を用いた免疫療法が進行性黒色腫患者に対して治癒的であり得ることを明らかにしており、このアプローチの有用性が裏付けられている(非特許文献1)。さらに、慢性リンパ球性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)及び急性リンパ芽球性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)に罹患している患者もT細胞免疫療法で効果的に処置され、治癒されている(非特許文献2)(非特許文献3)。いくつかの免疫療法アプローチがあるが、キメラ受容体を用いてT細胞を操作することにより、どの患者の免疫細胞も主要組織適合遺伝子複合体(MHC:major histocompatibility complex)非依存性に任意の所望の標的を標的とすることが可能となる。これまでのところ、T細胞を操作するために用いられるキメラ受容体は、標的ドメイン、通常単鎖可変断片(scFv:single-chain fragment variable);膜貫通ドメイン;並びにT細胞受容体及び関連タンパク質からのシグナル伝達要素を含む細胞質ドメインで構成されている(非特許文献4)。このようなキメラ受容体は、「Tボディ(T-body)」、「キメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)」もしくは「キメラ免疫受容体(CIR:Chimeric Immune Receptor)」と呼ばれてきた―現在では、多くの研究者は用語「CAR」を使用している(非特許文献4)。こうしたCARは、要素の観点から考慮されており、科学者はCARの機能に対する種々の細胞質シグナル伝達ドメインの影響を調査するのにかなりの時間を費やしてきた。第一世代のCARはCD3ζもしくはFcεRIγからの単一シグナル伝達ドメインを用いた。第二世代のCARは、CD3ζのシグナル伝達ドメインと受容体のCD28もしくはTNFRファミリからの共刺激受容体の細胞質ドメインとを合わせ持っていた(非特許文献4)。第三世代のCARは複数の共刺激ドメインを合わせ持ったが、第三世代CARは抗原特異性を失う懸念がある(非特許文献5)。臨床で試験されつつある多くのCAR操作T細胞は、CD3ζがCD28もしくはCD137の細胞質ドメインにカップリングされている第二世代CARを用いている(非特許文献5)(非特許文献6)(非特許文献7)。
【0004】
CAR操作T細胞は、臨床応用においてかなりの将来性を示してきたが、T細胞受容体(TCR:T cell receptor)によってもたらされる活性化シグナルを置換するための合成方法に依存している。この合成受容体はTCRと会合するシグナル伝達成分(例えば、CD3イプシロン、Lck)の全てを送達するわけではないので、T細胞がCARによって最適に活性化されるかどうか、又はCAR活性化がT細胞の分化(例えば、発達乃至記憶)にどのように影響するかは未だ不明である。さらに、CARシグナル伝達ドメインがCAR構造の本質そのものによってその天然の調節相手から切り離されているので、CARが標的外の毒性をもたらす恐れがある低レベルの構成的活性化につながり得る固有のリスクもある。
【0005】
こうした制約を考えると、天然のTCRを介して腫瘍を攻撃するようにT細胞を再誘導することが好ましい。そのために、「二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE:Bispecific T-cell Engager)」と呼ばれる部類の組換えタンパク質が作製されている(非特許文献8)(非特許文献9)。これらのタンパク質は、T細胞TCR受容体を標的抗原と架橋させるために二重特異性抗体断片を用いている。このことが効率的なT細胞活性化をもたらし、細胞毒性を引き起こす。同様に、この目標を達成する二重特異性抗体が作製されており、一部の科学者は、単純に化学結合を用いて抗CD3抗体を腫瘍特異的抗体に連結させている(非特許文献8)。こうした二重特異性タンパク質は生体外(in vitro)である程度の活性を示したが、癌処置においてこれらの分子の使用に成功するにはGMP製造、短い生物学的半減期及びバイオアベイラビリティが大きな課題を投げかけている。さらに、これらの分子は、TCR共受容体(CD8及びCD4)に係合しないため、自然に起こるTCRシグナル伝達を適正に反復することもできない。
【0006】
従って、在来型CARと比較して活性及び安全性を高めたT細胞-抗原カプラに対する要望が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】ハンフリーズ(Humphries)、C.(2013年)、「養子細胞療法:その殺傷能の洗練(Adoptive cell therapy:Honing that killer instinct.)」、ネイチャー(Nature)504:S13-5。
【文献】フライ(Fry)、T.J.、マッコール(Mackall)、C.L.(2013年)、「急性リンパ芽球性白血病に対する養子T細胞療法(T-cell adoptive immunotherapy for acute lymphoblastic leukemia)」、ヘマトロジー・アメリカン・ソサエティ・ヘマトロジー・エデュケーション・プログラム(Hematology Am.Soc.Hematol.Educ.Program)2013、348-353。
【文献】コヘンデルファー(Kochenderfer)、J.N.、ローゼンベルク(Rosenberg)、S.A.(2013年)、「抗CD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞によるB細胞癌の処置(Treating B-cell cancer with T cells expressing anti-CD19 chimeric antigen receptors)」、ネイチャー・レビューズ・クリニカル・オンコロジー(Nat.Rev.Clin.Oncol.)、10:267-276。
【文献】ドッティ(Dotti)、G.、サヴォルド(Savoldo)、B.、ブレナー(Brenner)、M.(2009年)、「キメラ抗原受容体に基づく遺伝子療法の15年:”まだ目標に近づいていない?”(Fifteen years of gene therapy based on chimeric antigen receptors: “are we nearly there yet?”)」、ヒューマン・ジーン・セラピー(Hum. Gene Ther.)20:1229-1239。
【文献】ハン(Han)、E.Q.、リー(Li)、X.及びハン、S.(2013年)、「癌免疫療法のためのキメラ抗原受容体操作T細胞:プロセス及び課題(Chimeric antigen receptor-engineered T cells for cancer immunotherapy: progress and challenges)」、ジャーナル・オブ・ヘマトロジー・アンド・オンコロジー(J.Hematol.Oncol.)、6:47。
【文献】フィニー(Finney)、H.M.、アクバル(Akbar)、A.N.、ローソン(Lawson)、A.D.G.(2004年)、「キメラ受容体を有する静止ヒト一次T細胞の活性化:TCRゼータ鎖からのシグナルと連続したCD28、誘導性共刺激因子、CD134及びCD137からの共刺激(Activation of resting human primary T cells with chimeric receptors:costimulation from CD28, inducible costimulator, CD134, and CD137 in series with signals from the TCR zeta chain)」、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)172:104-113。
【文献】ミローヌ(Milone)、M.C.、フィッシュ(Fish)、J.D.、カルペニート(Carpenito)、C.、キャロル(Carroll)、R.G.、ビンダー(Binder)、G.K.、ティーチェイ(Teachey)、D.、サマンタ(Samanta)、M.、ラハル(Lakhal)、M.、グロス(Gloss)、B.ダネット デスノイヤーズ(Danet-Desnoyers)、G.ほか(2009年)、「CD137シグナル伝達ドメインを含有するキメラ受容体は生体内(in vivo)におけるT細胞の生存上昇及び抗白血病効果の増強を媒介する。(Chimeric receptors containing CD137 signal transduction domains mediate enhanced survival of T cells and increased antileukemic efficacy in vivo).」、モレキュラー・セラピー(Mol.Ther.)17:1453-1464。
【文献】チャメス(Chames)P.及びバティ(Baty)、D.(2009年)、「癌療法のための二重特異性抗体:トンネルの終わりに見える明かり?(Bispecific antibodies for cancer therapy: the light at the end of the tunnel?)」、モノクロナール・アンティボディズ(MAbs)1:539-547。
【文献】ポーテル(Portell)、C.a.、ウェンゼル(Wenzell)、C.M.、アドバニ(Advani)、A.S.(2013年)、「B細胞急性リンパ性白血病の処置におけるブリナツモマブの臨床的及び薬理学的側面(Clinical and pharmacologic aspects of blinatumomab in the treatment of B-cell acute lymphoblastic leukemia)」、クリニカル・ファーマコロジー(Clin.Pharmacol.)5:5-11。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、主組織適合複合体に拘束されない標的指向性を維持しながらT細胞受容体(TCR)を介して自然に起こるシグナル伝達をよりよく模倣する三官能性T細胞-抗原カプラが在来型キメラ抗原受容体と比較して高い活性及び安全性を示すことを明らかにした。
【0009】
そこで、本開示の一態様は、
a.標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、
b.TCR複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチド及び
c.T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド
を含む核酸を提供する。
【0010】
本開示の別の態様は、上記の核酸によってコードされるポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
本開示の別の態様は、上記の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、上記の核酸を発現するT細胞を提供する。本開示の別の態様は、上記T細胞及び担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
また、本開示は、癌を処置するためのT細胞のこれを必要とする対象における使用であって、前記T細胞は
a.標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、
b.TCR複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチド及び
c.T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド
を含む核酸を発現する、使用を提供する。
【0014】
一実施態様において、前記標的特異的リガンドは癌性細胞上の抗原に結合する。
【0015】
別の実施態様において、前記標的特異的リガンドは、設計されたアンキリン・リピート(ダルピン(DARPin:designed ankyrin repeat))ポリペプチド又はscFvである。
【0016】
別の実施態様において、前記TCR複合体と会合するタンパク質はCD3である。
【0017】
別の実施態様において、前記TCR複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドは単鎖抗体である。
【0018】
別の実施態様において、前記TCR複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドはUCHT1又はその変異体である。
【0019】
別の実施態様において、前記T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインを含む。
【0020】
別の実施態様において、前記細胞質ドメインはCD4細胞質ドメインであり、前膜貫通ドメインはCD4膜貫通ドメインである。
【0021】
別の実施態様において、前記第一のポリヌクレオチド及び第三のポリヌクレオチドは前記第二のポリヌクレオチドに融合している。
【0022】
別の実施態様において、前記第二のポリヌクレオチド及び第三のポリヌクレオチドは前記第一のポリヌクレオチドに融合している。
【0023】
また、本開示は、
a.標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、
b.TCR複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチド、
c.T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド及び
d.哺乳動物細胞において機能できるプロモータ
を含むベクター構築物を提供する。
【0024】
一実施態様において、前記第一のポリヌクレオチド及び前記第三のポリヌクレオチドは前記第二のポリヌクレオチドと融合してT細胞抗原カプラ融合体を形成し、前記T細胞抗原カプラ融合体のコーディング配列は前記プロモータと動作可能に結合している。
【0025】
別の実施態様において、前記第二のポリヌクレオチド及び前記第三のポリヌクレオチドは前記第一のポリヌクレオチドと融合してT細胞抗原カプラ融合体を形成し、前記T細胞抗原カプラ融合体のコーディング配列は前記プロモータと動作可能に結合している。
【0026】
また、本開示は、前記ベクター構築物を形質移入した単離T細胞を提供する。
【0027】
本開示の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明から明らかになろう。しかしながら、本開示の精神及び範囲内で様々な変更や修正を加えることができることはこの詳細な説明から当業者に明瞭に理解されるであろうから、詳細な説明及び具体例は、本開示の好ましい実施態様を示すものではあるが、もっぱら例証として示されるものであることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の第二世代CARと比較した三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC:trifunctional T cell-antigen coupler)の図式的概要図である。
図2】Tri-TAC変異体及び古典的CARの表面発現分析の結果を示す図である。
図3】種々のマーカIFN-γ、TNF-α及びCD107aに着目した細胞活性化の分析結果を示す図である。
図4】古典的CAR及びTri-TACの分子標的である(D2F2E2)を発現するか(D2F2)を発現しない2種の異なる細胞株の殺傷を分析した結果を示す図である。
図5】自然に起こるT細胞活性化開始(A)、現在用いられているT細胞活性化の人為的方法(B及びC)並びにTAC活性化技術(D)を示す図である。
図6】(A)TAC分子の形態1及び(B)TAC分子の形態2を示す図である。
図7】scFv CD4 TACの機能性を示す図である。(A)は空のベクターと比較したscFv CD4 TAC受容体の表面発現を示すヒストグラムであり、(B)はscFv CD4 TAC(上段)又はscFV CAR(下段)を発現するT細胞の抗原特異的活性化を示し、(C)はscFv CD4 TAC及びscFv CARによるMCF-7ヒト腫瘍細胞株(Her2陽性)の同程度の殺傷を示す。
図8】CD4-TAC形態2の特性を示す図である。(A)は空のベクターと比較したダルピンCD4 TAC受容体の表面発現を示すヒストグラムであり、(B)はHer2抗原に暴露したダルピンTAC形態2で操作したT細胞のサイトカイン産生及び脱顆粒を示し、(C)は空ベクターの対照と比較したCD4 TAC形態2の増殖を示す。
図9】ダルピンCD4 TAC形態1の機能性を示す図である。(A)はダルピンCAR及び対照のNGFRのみと比較したダルピンCD4 YACの表面発現を示し、(B)はCD4 TAC構造1の増殖を示し、(C)及び(D)は種々の活性化及び脱顆粒マーカについて陽性の細胞のパーセンテージを示す。
図10】TAC及びCARの細胞毒性及び全般的活性を示す図である。TAC、CAR又は空のベクター対照で操作した細胞を種々のヒト腫瘍細胞株中でインキュベートした。
図11】種々のTAC対照の受容体表面発現及び活性化を示す図である。(A)は細胞表面発現(左)、脱顆粒(中央)及びサイトカイン産生(右)を示し、(B)は完全長のCD4-TACのみが細胞毒性反応を惹起することができるのを示す。
図12】種々の膜貫通TAC変異体の性質を示す図である。(A)は種々の膜貫通ドメイン構築物の全体像であり、(B)はCD8精製T細胞において操作された種々の構築物の発現の表面を示し、(C)は脱顆粒及びサイトカイン産生についての種々の変異体の試験結果を示す。
図13】LckのTAC変異体との相互作用を示す図である。(A)は完全長TAC及び細胞質欠損のLck破壊能力を示し、(B)は(A)のペレットにおいて検出されたLckのデンシトメトリー分析である。
図14】BiTE様変異体と比較したCD4 TAC表面発現及び活性を示す図である。(A)は対照であるNGFRのみ、CD4 TAC及びBiTE様変異体の表面発現を示し、(B)は各種細胞株における細胞毒性の比較である。
図15】UCHT1のランダム突然変異原ライブラリと比較した野生型CD4 TACを示す図である。(A)は突然変異体の模式図を示し、(B)はライブラリの表面発現を示すヒストグラムであり、(C)はライブラリのT細胞活性化及びサイトカイン産生能を示す。
図16】A85V、T161P突然変異体の表面発現の増強を示す図である。(A)はCD4 TAC及びA85V、T161P突然変異体間における最終的CD/CD8集団の比較であり、(B)はA85V、T161P突然変異体の表面発現の増強を示し、(C)はA85V、T161P突然変異体においてサイトカイン産生が減少することを示す。
図17】A85V、T161P突然変異体の細胞毒性及び増殖を示す図である。(A)は種々の細胞株におけるA85V、T161P突然変異体の細胞毒性を示し、(B)は2週間にわたる培養における細胞増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(i)定義
本明細書で用いている「細胞」という用語は、単一の細胞及び複数の細胞を含む。
【0030】
本明細書で用いている「T細胞」という用語は、細胞性免疫において中心的な役割を果たす1種のリンパ球のことを指している。Tリンパ球とも呼ばれるT細胞は、細胞表面にT細胞受容体(TCR)が存在することで、B細胞及びナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球と区別することができる。T細胞にははっきりと異なる機能を有するいくつかのサブセットがあり、これらサブセットとしては、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、調節性T細胞及びナチュラルキラーT細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本明細書で用いている「T細胞抗原カプラ」という用語は、T細胞上に発現された場合に特定の抗原を標的にしてこのT細胞を送達する操作された核酸構築物又はポリペプチドのことを指している。
【0032】
本明細書で用いている「ポリヌクレオチド」及び/又は「核酸配列」及び/又は「核酸」という用語は、塩基、糖及び糖間(主鎖)結合からなる一連のヌクレオシド又はヌクレオチドモノマーのことを指している。また、この用語には、非天然型モノマーを含む修飾もしくは置換された配列又はそれらの部分が含まれる。本願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)又はリボ核酸配列(RNA)とすることができ、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン及びウラシルを含む天然型の塩基を含むことができる。また、こうした配列は修飾塩基を含むこともできる。そのような修飾塩基としては、例えば、アザ及びデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジン及びウラシル並びにキサンチン及びヒポキサンチンが挙げられる。本開示の核酸は、遺伝子組換えの実験室的方法によって形成された、又は核酸を作製するための化学合成もしくは他の既知のプロトコルによって得られた生物有機体から単離することができる。
【0033】
本明細書で用いている「単離ポリヌクレオチド」又は「単離核酸配列」という用語は、組換えDNA技術で製造された場合の細胞物質もしくは培養培地、又は化学的に合成された場合の化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸のことを指している。また、単離核酸は、その核酸が由来する、もともとその核酸を挟んでいる配列(即ち、その核酸の5’及び3’末端にある配列)を実質的に含まない。「核酸」という用語は、DNA及びRNAを含むものとし、2本鎖又は1本鎖とすることができ、センス鎖又はアンチセンス鎖を表す。さらに、「核酸」という用語は、その相補性核酸配列を含む。
【0034】
本明細書で用いている「組換え核酸」又は「操作核酸」という用語は、生物有機体には存在しない核酸又はポリヌクレオチドのことを指している。例えば、組換え核酸は、(分子クローニングなどの)遺伝子組換えの実験室的方法により形成され、そうでなければ自然界には存在しないはずである配列をもたらすことができる。また、組換え核酸は、化学合成又は核酸を作製するための他の既知のプロトコルによって作製することもできる。
【0035】
本明細書で用いている「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、核酸によってコードされるアミノ酸に相当するアミノ酸の鎖を言い表している。本開示のポリペプチド又はタンパク質は、通常2乃至約30個のアミノ酸のアミノ酸の鎖を言い表しているペプチドとすることができる。また、本明細書で用いている用語タンパク質は、30個を超えるアミノ酸を有するアミノ酸鎖を言い表しており、タンパク質の断片もしくはドメイン又は完全長のタンパク質とすることができる。さらに、本明細書で用いている用語タンパク質は、アミノ酸の線状鎖のことを指すことができ、又はこれは機能性タンパク質へと加工もしくは折りたたまれたアミノ酸の鎖のことを指すことができる。但し、30はペプチドとタンパク質を区別することに関する任意数であり、これらの用語はアミノ酸鎖に関して同じ意味で用いることができるものとする。本開示のタンパク質は、これが酵素的(タンパク質分解的)切断により天然に及び/又は本開示のタンパク質もしくは断片をコードする核酸の発現によって組み換え技術により産生される細胞からのタンパク質の単離及び精製によって得ることができる。また、本開示のタンパク質及び/又は断片は、化学合成又はタンパク質及び断片を製造するための他の既知のプロトコルによって得ることもできる。
【0036】
「単離ポリペプチド」という用語は、組換えDNA技術によって製造する場合の細胞物質もしくは培養培地又は化学的に合成する場合の化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないポリペプチドのことを指している。
【0037】
本明細書で用いている「抗体」という用語は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、単鎖抗体、キメラ抗体及び抗体融合体を含むものである。この抗体は、組換え供給源からのものとすることができ、及び/又は遺伝子導入動物において産生させることができる。本明細書で用いている「抗体断片」という用語は、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ダイアボディ及びこれらのマルチマー、多特異的抗体断片並びにドメイン抗体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で用いている「ベクター」という用語は、細胞の内部に核酸を送達するために用いることができるポリヌクレオチドのことを指している。一実施態様において、ベクターは、細胞内発現対象の核酸に動作可能なように連結させた発現制御配列(例えば、プロモータ)を含む発現ベクターである。当該分野で知られているベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド及びウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
(ii)組成物
本発明者らは、MHCに拘束されない標的指向性を維持しながらT細胞受容体(TCR)を介して自然に起こるシグナル伝達をよりよく模倣する三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を開発した。具体的には、本発明者らは、それぞれ、脂質ラフトへ局在化し、Lckに結合する、CD4共受容体の膜貫通及び細胞内領域がCD3に結合する単鎖抗体に融合した分子を作製した。この構築物は、自然に起こるMHC結合と同様に、脂質ラフトの領域にCD3分子及びTCRを引き込み、TCRの近傍にLckを持ち込むように設計されている。このキメラ受容体を標的にするために、設計されたアンキリン・リピート(ダルピン)をCD4-UCHT1キメラに連結させて三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を作製した。
【0040】
実験的に、ヒトT細胞を操作して同じダルピンを有するプロトタイプTri-TAC又は従来型CARを発現させた。その結果、あらゆる面で、Tri-TACで操作したT細胞は従来型CARと同等の機能性を示すことが明らかとなった。2つのパラメータ(TNF-α産生及びCD107a動員)に関しては、Tri-TACは従来型CARよりも活性であることが認められた。さらに、データから、1分子当たりのTri-TACは有意な活性の増強を示すことが分かる。さらに、Tri-TACは、活性化ドメインがこのタンパク質の一部ではないので、在来型CARと比較して安全性の向上を示す。
【0041】
そこで、本開示は、
標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、
TCR複合体に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチド、及び
T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド
を含む核酸に関する。
【0042】
一実施態様において、核酸は組換え、即ち、操作核酸である。別の実施態様において、第一、第二及び/又は第三のポリヌクレオチドは組換え、即ち、操作ポリヌクレオチドである。
【0043】
また、本開示は、核酸によってコードされるポリペプチド及びこの核酸を含む組成物に関する。
【0044】
第一、第二及び第三のポリヌクレオチドの各々を含む核酸並びにこの核酸によってコードされるポリペプチドを本明細書では三官能性T細胞-抗原カプラ又はTri-TACとも言う。
【0045】
標的特異的リガンド
標的特異的リガンドはT細胞-抗原カプラを標的細胞へ誘導する。従って、標的特異的リガンドは直接的又は間接的に標的細胞に結合する任意の物質のことを指している。標的細胞は、癌を含むがこれに限定されない疾病状態に関連する任意の細胞とすることができる。一実施態様において、標的特異的リガンドは標的細胞上の抗原(免疫反応を惹起することができる細胞によって産生されるタンパク質)に結合する。この標的特異的リガンドは抗原結合ドメインと呼ぶこともできる。
【0046】
一実施態様において、標的細胞は腫瘍細胞である。この場合、標的特異的リガンドは、腫瘍細胞上の腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原に結合することができる。腫瘍抗原は当該分野では周知のものである。本明細書で用いている「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」という用語は、(例えば、MHC複合体によって表すことができる)宿主において免疫反応を引き起こす腫瘍細胞中で産生される任意の抗原性物質を意味している。タンパク性である場合の腫瘍抗原は、例えば、8個以上のアミノ酸から最大完全なタンパク質、及びMHC複合体として表すことができる完全長のタンパク質の少なくとも1つの抗原性断片を含む8個と完全長タンパク質との間の任意のアミノ酸数の配列とすることができる。腫瘍抗原としては、例えば、HER2(erbB-2)、B細胞成熟抗原(BCMA:B-cell maturation antigen)、アルファフェトプロテイン(AFP:alphafetoprotein)、癌胎児性抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA:epithelial tumor antigen)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE:melanoma-associated antigen)、前立腺特異抗原(PSA:prostate-specific antigen)、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、スルビビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1:prostate-carcinoma tumor antigen-1)、ELF2M、好中球エラスターゼ、CD22、インスリン成長因子(IGF:insulin growth factor)-I、IGF-II、IGF-I受容体並びにメソテリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
標的特異的リガンドとしては、例えば、抗体及びその断片、例えば、scFvなどの単鎖抗体、あるいは標的細胞及び/又は抗原に結合する低分子タンパク質が挙げられる。
【0048】
標的特異的リガンドの1例は、特定の細胞及び/又は抗原を標的とする設計アンキリン・リピート(ダルピン)である。一実施態様において、標的特異的リガンドはHER2(erbB-2)を標的とするダルピンである。HER2(erB-2)を標的とするダルピンの1例は、本明細書に配列番号7及び8として示されている。
【0049】
標的特異的リガンドの別の例は、特定の細胞及び/又は抗原を標的としたscFvである。一実施態様において、標的特異的リガンドは、HER2(erB-2)に結合するscFvである。HER2(erB-2)に結合するscFvの1例は、本明細書に配列番号22及び23として示されている。
【0050】
TCR複合体に結合するリガンド
T細胞-抗原カプラは、共受容体刺激との組合せでT細胞受容体(TCR)を動員するように設計されている。従って、このT細胞-抗原カプラは、T細胞受容体複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドを含む。
【0051】
TCR(T細胞受容体)は、抗原の結合に反応してT細胞の活性化に関与する内在性膜タンパク質の複合体である。このTCRは、通常、不変のCD3(分化抗原群3:cluster of differentiation 3)鎖分子との複合体の一部として発現される高度に可変性のアルファ(α)及びベータ(β)鎖からなるジスルフィド結合膜固定ヘテロダイマーである。この受容体を発現するT細胞はα:β(又はαβ)T細胞と呼ばれるが、少数のT細胞は、γδT細胞と呼ばれる可変性のガンマ(γ)及びデルタ(δ)鎖によって形成される代替受容体を発現する。CD3は、4つの区別できる鎖で構成されるタンパク質複合体である。哺乳動物では、この複合体はCD3γ鎖、CD3δ鎖及び2つのCD3ε鎖を含む。
【0052】
本明細書で用いている「T細胞受容体複合体と会合するタンパク質に結合するリガンド」という用語は、直接的又は間接的にTCRのタンパク質に結合する任意の物質を含む。TCRと会合するタンパク質としては、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様において、T細胞受容体複合体と会合するタンパク質に結合するリガンドは、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖及び/又はCD3ε鎖に対する抗体である。
【0053】
一実施態様において、リガンドは、CD3に結合する抗体又はその断片である。CD3抗体の例は当該分野では周知されている(例えば、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ及びビジリズマブ)。一実施態様において、CD3に結合する抗体は、単鎖抗体、例えば、単鎖可変断片(scFv)である。
【0054】
CD3抗体の別の例は、CD3εを標的にするUCHT1である。UCHT1の配列は、本明細書に配列番号13及び14として示されている。
【0055】
T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチド
T細胞-抗原カプラは、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドを含む。本明細書で用いている「T細胞受容体シグナル伝達ドメイン」という用語は、(a)脂質ラフトへ局在化し、及び/又は(b)Lckに結合するポリペプチドのことを指している。T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、細胞質ドメイン及び/又は膜貫通ドメインを含むがこれらに限定されない1つ以上のタンパク質ドメインを含むことができる。本明細書で用いている「タンパク質ドメイン」とは、このタンパク質鎖の残りの部分とは独立に機能し、存在することができる所与のタンパク質配列構造の保存部分のことを指している。一実施態様において、前記T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、細胞質ドメインを含む。別の実施態様において、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインを含む。別の実施態様では、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインのいずれをも含む。
【0056】
T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドとしては、TCR共受容体及び共刺激因子並びにTCR共受容体及び共刺激因子タンパク質ドメインが挙げられる。
【0057】
「TCR共受容体」とは、抗原提示細胞とやりとりする際にT細胞受容体(TCR)を支援する分子のことを指している。TCR共受容体としては、例えば、CD4、CD8、CD28、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CDt37及びCD154が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
「TCR共刺激因子」とは、抗原に対するT細胞の反応に必要とされる分子のことを指している。TCR共刺激因子としては、例えば、PD-1、ICOS、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、リンパ球フィクション関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
一実施態様において、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体又は共刺激因子タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインの両方を含む。これら細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、同じ共受容体又は共刺激因子由来あるいは異なる共受容体又は共刺激因子由来のものとすることができる。これら細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、任意選択的にリンカーによって連結される。
【0060】
一実施態様において、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、CD4共受容体の膜貫通及び細胞質ドメイン(例えば、配列番号17及び18参照)を含む。
【0061】
別の実施態様において、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、CD8α共受容体の膜貫通及び細胞質ドメインを含む。
【0062】
他の実施態様において、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドの細胞質及び/又は膜貫通ドメインは合成したものである。例えば、この膜貫通ドメインは、任意選択的に合成の高度疎水性膜ドメインである。
【0063】
別の例では、膜貫通ドメインは、グリコホリン膜貫通ドメインである。さらに別の例では、T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは、T細胞抗原カプラをGPIアンカーを用いて膜に付着させるためのCD48 GPIシグナル伝達配列を含む。
【0064】
本明細書に記載したT細胞抗原カプラの3成分(標的特異的リガンド、TCR複合体に結合するリガンド及びT細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチド)の他に、他のポリペプチドも含めることができるかもしれないと考えられる。例えば、T細胞抗原カプラは、T細胞を直接又は間接的に標的にし、あるいは活性化する働きをする追加のポリペプチドを任意選択的に含む。
【0065】
リンカー
前記T細胞抗原カプラの種々の成分は互いに直接融合させることができ、又はこれらは、少なくとも1つのリンカー、必要に応じてペプチドリンカー、によって連結させることができる。このペプチドリンカーは、個々の結合成分の機能を妨げない限り、任意の大きさとすることができる。一実施態様において、このペプチドリンカーは、長さが約1乃至15アミノ酸、より具体的には約1乃至約10アミノ酸、最も具体的には約1乃至約6アミノ酸である。
【0066】
T細胞抗原カプラにおいて有用なリンカーとしては、例えば、Gリンカーが挙げられる。リンカーの他の例は、配列番号11、12、15、16、19、20及び21に相当するペプチド並びにこれらの変異体及び断片である。
【0067】
形態
T細胞-抗原カプラは、当業者であれば容易に理解されることであるが、種々の形態で存在することがでる。
【0068】
一実施態様において、標的特異的リガンド及びT細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは共にTCR複合体に結合するリガンドに融合させる。例えば、本明細書に記載した(形態1とも称する、配列番号1及び2の)N-ダルピンTACは、順序を追って、
i)N-ダルピン Tri TACリーダー配列(分泌シグナル)(配列番号5及び6)
ii)Her2抗原に特異的なダルピン(配列番号7及び8)
iii)Mycタグ(配列番号9及び10)
iv)リンカー1(配列番号11及び12)
v)UCHT1(配列番号13及び14)
vi)リンカー2(配列番号15及び16)
vii)CD4(配列番号17及び18)
を含む。
【0069】
別の実施態様において、ダルピンはHer2抗原に特異的なscFV ScFv(配列番号22及び23)で置換する。
【0070】
別の実施態様において、TCR複合体に結合するリガンド及びT細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは共に(形態1とも称する、配列番号3及び4の)標的特異的リガンドに融合させる。別の形態については当業者には容易に明らかなはずである。
【0071】
ベクター構築物
さまざまな送達ベクター及び発現ベクターを用いて本明細書に記載した核酸を細胞内に導入することができる。従って、上記のポリヌクレオチドを任意選択的にベクターに含有させることによって、本明細書ではベクターと称することもあるベクター構築物が得られる。
【0072】
従って、本開示は、
a.標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、
b.CD3に結合する抗体をコードする第二のポリヌクレオチド及び
c.T細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチド
及び、任意選択的に、哺乳動物細胞において機能できるプロモータを含むベクターにも関する。
【0073】
特定の核酸配列の転写を開始させるDNAの領域であるプロモータについては当該分野では周知されている。「哺乳動物細胞において機能できるプロモータ」とは、哺乳動物細胞において関連する核酸配列の発現を駆動するプロモータのことを指している。核酸配列の発現を駆動するプロモータは、その核酸配列に「動作可能なように結合される」ということができる。
【0074】
一実施態様において、第一のポリヌクレオチド及び第三のポリヌクレオチドは前記第二のポリヌクレオチドと融合してT細胞抗原カプラ融合体を形成し、T細胞抗原カプラ融合体のコーディング配列はプロモータと動作可能に結合している。
【0075】
別の実施態様において、第二のポリヌクレオチド及び第三のポリヌクレオチドは第一のポリヌクレオチドと融合してT細胞抗原カプラ融合体を形成し、T細胞抗原カプラ融合体のコーディング配列はプロモータと動作可能に結合している。
【0076】
任意選択的に、ベクターは、T細胞などの哺乳動物細胞において発現されるように設計される。一実施態様において、このベクターは、ウイルスベクター、必要に応じてレトロウイルスベクター、である。
【0077】
有用であるベクターは、レンチウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV: Murine Stem Cell Viruses)、ポックスウイルス、オンコレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス由来のベクターを含む。有用である他の送達ウイルスは、単純ヘルペスウイルス、トランスポゾン、ワクシニアウイルス、ヒトパピローマウイルス、サル免疫不全ウイルス、HTLV、ヒト泡沫状ウイルス及びこれらの変異体由来のベクターを含む。有用であるさらなるベクターは、スプマウイルス、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動物C型レトロウイルス、鳥C型レトロウイルス、哺乳動物D型レトロウイルス及びHTLV/BLV型レトロウイルス由来のベクターを含む。本開示の組成物及び方法において有用なレンチウイルスベクターの1例はpCCLベクターである。
【0078】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドの変更
ベクター配列を初めとするポリヌクレオチド配列及び本願において開示されたポリペプチド配列に対して多くの修飾を行うことができ、こうしたことは当業者には明らかであろう。修飾としては、ヌクレオチドもしくはアミノ酸の置換、挿入もしくは削除又はヌクレオチドもしくはアミノ酸の相対的位置もしくは順序の変更が挙げられる。
【0079】
一実施態様において、本明細書に記載したポリヌクレオチドは、修飾又は突然変異させてそのコードされるポリペプチドの機能及び/又はそのT細胞抗原カプラの機能、活性及び/又は発現を最適化することができる。
【0080】
本明細書には、TACの表面発現の増強をもたらすUCHT1突然変異体を作製することができることが示されている(図15乃至17)。そこで、一実施態様では、TACは、TCR複合体に結合する修飾又は突然変異リガンドであって、その修飾又は突然変異抗体を含むTACはTCR複合体に結合する野生型、即ち非修飾もしくは突然変異型リガンドを含むTACと比較して表面発現及び/又は活性が増加しているリガンドを含む。CD3に結合する突然変異又は修飾抗体の1例は本明細書に記載したUCHT1 A85V、T161P突然変異体である(配列番号24及び25)。
【0081】
配列同一性
本願のポリヌクレオチドは、本願の核酸分子に対して少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性又は少なくとも99%もしくは99.5%の同一性を有する核酸分子(又はそれらの断片)をも含む。また、「本願のポリペプチド類は、本願の或るポリペプチドに対して少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性又は少なくとも99%もしくは99.5%の同一性を有するポリペプチド類(又はそれらの断片)をも含む。」同一性とは、最高の順序一致が得られるように位置合わせした2つのヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の類似性のことを指している。同一性は当該分野で既知の方法に従って計算する。例えば、あるヌクレオチド配列(「配列A」と呼ぶ)が配列番号1のある部分に対して90%の同一性を有するとすれば、配列Aは、配列番号1の基準となるこの部分の100個のヌクレオチド当たり最大10ポイントの(他のヌクレオチドでの置換などの)突然変異を含むことができる点を除けば、配列番号1の基準となるその部分と同一であることになる。
【0082】
好ましくは、配列同一性は、本明細書に示したヌクレオチド配列及び/又はその相補性配列に対して少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は最も好ましい少なくとも99%もしくは99.5%の同一性に設定する。また、配列同一性は、好ましくは、本明細書に示したポリペプチド配列に対して少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は最も好ましい少なくとも99%もしくは99.5%の同一性に設定する。配列同一性は、好ましくは、バイオインフォマティクス社(Bioinformatics)(ウィスコンシン大学)製のGCGプログラムを用いて算出する。また、Clustal Wプログラム(好ましくはデフォルトパラメータを用いる;トンプソン(Thompson)、JDほか、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Res.)22:4673-4680)などの配列同一性を計算するための他のプログラムも利用できる。
【0083】
ハイブリダイゼーション
本願は、本願に記載した核酸分子に対して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするのに十分な同一性(ハイブリダイゼーション技術は当該分野では周知のものである)を有する配列を有するDNAを含む。また、本願は、本明細書に記載した配列及び/又はその相補性配列の1つ以上にハイブリダイズする核酸分子を含む。そのような核酸分子は、好ましくは高ストリンジェント条件(サンブルック(Sambrook)ほか、分子クローニング:実習マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、最新版(Most Recent Edition)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー、N.Y.)下でハイブリダイズさせる。高ストリンジェント洗浄は、好ましくは低塩(好ましくは約0.2%SSC)及び温度約50乃至65℃であり、任意選択的に約15分間実施する。
【0084】
T細胞における発現
T細胞抗原カプラは、T細胞において発現するように設計されている。従って、本開示の一態様は、T細胞抗原カプラを発現するT細胞を提供する。本開示の別の態様は、T細胞抗原カプラ又はT細胞抗原カプラを含むベクターを形質導入又は形質移入したT細胞に関する。任意選択的に、このT細胞は単離T細胞である。
【0085】
T細胞は、多くの供給源から得ることができ、これらの供給源としては血液(例えば、末梢血単核細胞)、骨髄、胸腺組織、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、脾臓組織及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様において、このT細胞は自己T細胞である。別の実施態様において、このT細胞はT細胞の細胞株から得る。T細胞を生体外(in vitro)で培養し、維持する方法は当該分野で周知されている。
【0086】
得られたT細胞は、すぐに任意選択的に生体外(in vitro)で濃縮する。当該分野で周知されているように、細胞集団は陽性又は陰性選択によって濃縮することができる。さらに、このT細胞は、任意選択的に氷結又は凍結した後、後日解凍する。
【0087】
T細胞抗原カプラをT細胞に導入する前後に、このT細胞を任意選択的に当該分野で周知されている方法を用いて活性化及び/又は増殖させる。例えば、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞表面上の共刺激因子分子を刺激するリガンドをそれに結合させた表面と接触させることで増殖させることができる。
【0088】
核酸配列をT細胞に形質導入又は形質移入し、このT細胞に形質導入核酸を発現させる方法は、当該分野では周知されている。例えば、核酸は物理的、化学的又は生物学的手段によって細胞に導入することができる。物理的手段としては、(微量注入、電気穿孔、粒子衝突、リポフェクション及びリン酸カルシウム沈殿)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生物学的手段としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。
【0089】
一実施態様において、レトロウイルスベクターを初めとするウイルスベクターは核酸をT細胞に導入し、発現させるのに用いる。ウイルスベクターとしては、レンチウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス由来のベクターが挙げられる。このベクターは、任意選択的に、T細胞における形質導入核酸分子の発現を駆動するプロモータを含む。
【0090】
T細胞における形質導入核酸配列及び/又はこの核酸によってコードされたポリペプチドの存在及び/又は発現を確認するために種々のアッセイを用いることができる。アッセイとしては、サザン及びノーザンブロット法、RT-PCR及びPCR法、ELISA法並びにウエスタンブロット法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
一実施態様において、T細胞抗原カプラを発現するT細胞は、T細胞抗原カプラを発現しないT細胞に比し、及び/又は、在来型CARを発現するT細胞に比し、抗原の存在下でのT細胞活性化が増強される。T細胞活性化の増強は、多数の方法によって確認することができ、こうした方法としては腫瘍細胞株殺傷の増加、サイトカイン産生の増加、細胞崩壊の増加、脱顆粒の増加及び/又はCD107α、IFNγ、IL2もしくはTNFαなどの活性化マーカの発現増加が挙げられるが、これらに限定されるものではない。増加は個々の細胞において、又は細胞集団において測定することができる。
【0092】
本明細書に用いている「増加した」又は「増加する」という用語は、T細胞抗原カプラを発現しないT細胞もしくはT細胞集団との比較、及び/又は在来型CARを発現するT細胞もしくはT細胞集団との比較で、T細胞抗原カプラを発現するT細胞もしくはT細胞集団では少なくとも2%、5%、10%、25%、50%、100%もしくは200%の増加であることを指している。
【0093】
T細胞抗原カプラを発現するT細胞、必要に応じて自己T細胞、はこれを必要とする対象に投与することができる。従って、T細胞抗原カプラを形質導入した、及び/又はこれを発現するT細胞は、医薬組成物として製剤化することができる。好ましくは、こうしたT細胞は、静脈内投与用に製剤化される。
【0094】
医薬組成物は、有効量のこうしたT細胞を医薬用として許容可能な担体と混合物として組み合わせるような、対象に投与できる医薬用として許容可能な組成物を調製するそれ自体既知の方法によって調製することができる。好適な担体については、例えば、レミングトンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(レミングトンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第20版、マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company)、イーストン(Easton)、ペンシルベニア州、米国、2000年)に記載されている。これをもとに、こうした組成物としては、好適なpHを有し、生理液と等浸透圧の緩衝溶液に1種以上の医薬用として許容可能な担体もしくは希釈剤と共にこれらの物質を含む溶液が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0095】
好適な医薬用として許容可能な担体としては、医薬組成物の生物活性の有効性を損なわない本来化学的に不活性で非毒性の組成物が挙げられる。好適な医薬用担体としては、例えば、水、食塩溶液、グリセロール溶液、エタノール、塩酸N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA)、ジオレシルホスホチジル-エタノールアミン(DOPE)及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような組成物は、患者へ直接投与するための形態を提供するように、治療的に有効量の化合物を好適な量の担体と共に含有するものとする。
【0096】
また、医薬組成物としては、限定はされないが、凍結粉末又は水性もしくは非水性滅菌注射用溶液もしくは懸濁液が挙げられ、これらはさらに、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及びこうした組成物を対象のレシピエントの組織又は血液に対して実質的に適合性にする溶質を含有することができる。このような組成物に存在させることができる他の成分としては、例えば、水、(Tweenなどの)界面活性剤、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油が挙げられる。用時調製注射用溶液及び懸濁液は、滅菌粉末剤、顆粒剤、錠剤又は濃縮溶液もしくは懸濁液から調製することができる。
【0097】
(iii)方法及び使用
本開示の一態様は、T細胞を特定の抗原へ誘導するための三官能性T細胞抗原カプラの使用を提供する。
【0098】
従って、また、本開示は、修飾T細胞の、これを必要とする対象において癌を処置するための使用であって、修飾T細胞は標的特異的リガンドをコードする第一のポリヌクレオチド、TCR複合体に結合するリガンドをコードする第二のポリヌクレオチド及びT細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第三のポリヌクレオチドを発現する、使用に関する。また、本開示は癌を処置するための方法であって、有効量の修飾T細胞をこれを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。また、有効量の修飾T細胞の、これを必要とする対象において癌を処置するための使用も開示する。さらに、修飾T細胞の、これを必要とする対象において癌を処置する薬剤の調製における使用を開示する。さらに、修飾T細胞であって、これを必要とする対象において癌を処置するのに用いるための修飾T細胞を開示する。一実施態様において、標的特異的リガンドは、癌性細胞上の抗原に結合し、それによってこの癌性細胞を標的にして修飾T細胞が送達される。
【0099】
処置することができる癌としては、任意の種類の腫瘍性疾患が挙げられる。処置することができる癌の例としては、乳癌、肺癌及び白血病、例えば、混合系統白血病(MLL:mixed lineage leukemia)、慢性リンパ球性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の癌としては、上皮性悪性腫瘍、芽細胞腫、悪性黒色腫、非上皮性悪性腫瘍、血液癌、リンパ性悪性疾患、良性及び悪性腫瘍、並びに悪性疾患が挙げられる。この癌は、非固形腫瘍及び固形腫瘍を含む。処置することができる癌としては、血管が発達していないか、まだ実質的に血管が発達していない腫瘍、及び血管が発達した腫瘍が挙げられる。
【0100】
本明細書に記載した修飾T細胞及び/又は医薬組成物は、ヒト及び動物を含む生命体に投与又は使用することができる。本明細書で用いている「対象」という用語は、動物界の任意の一員、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトのことを指している。
【0101】
T細胞を単離し、遺伝子を組換え、これを必要としている対象に投与する手順は当該分野では既知である。具体的には、T細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離し、必要に応じて本明細書に記載したようにして増殖及び/又は活性化させ、本開示の核酸分子を用いて形質導入又は形質移入する。このT細胞は、対象に対して自己由来とすることができる。別の実施態様において、この細胞は、対象に対して同種異系、同系又は異種とすることができる。
【0102】
上記修飾T細胞は、本明細書に記載したように、単独で、又は医薬組成物として投与することができる。本開示の組成物は、好ましくは静脈内投与用に製剤化する。
【0103】
「有効量」の修飾T細胞及び/又は医薬組成物の投与とは、所望の結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量と定義される。例えば、ある物質の有効量は、個体の病状、年齢、性及び体重並びに個体において所望の反応を惹起する組換えタンパク質の能力に応じて変化させることができる。用法-用量は、最適の治療反応が得られるように調整することができる。例えば、用量は1日数回に分割して投与することができ、又は治療状況の緊急性によって示される場合、用量は比例的に低下させることができる。
【0104】
例えば、本明細書に記載した修飾T細胞及び/又は医薬組成物は、kg体重当たり10乃至10個の細胞、必要に応じてkg体重当たり10乃至10個の細胞又はkg体重当たり10乃至10個の細胞の用量で投与することができる。この用量は、単回又は複数回投与することができる。
【0105】
修飾T細胞及び/又は医薬組成物は、当該分野で既知の任意の方法によって投与することができ、このような方法としてはエアロゾル吸入、注射、摂取、注入、埋設又は移植が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この修飾T細胞及び/又は医薬組成物は、対象に対し皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄腔内もしくは筋肉内に、静脈内(i.v.:intravenous)注射により、又は腹腔内に投与することができる。こうした修飾T細胞及び/又は医薬組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注射することができる。
【0106】
本明細書で用いていて、当該分野でよく理解されている「処置する」又は「処置」とは、臨床結果を初めとする有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であれ検出不能であれ、1つ以上の症状又は状態の緩和(alleviation)又は改善、疾患の程度の減少、病状の安定化(即ち、悪化ではない)、疾患の蔓延予防、疾患進行の遅延又は減速、病状の改善又は緩和(palliation)及び(部分的であれ全般的であれ)寛解が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、「処置」は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存を延長させることを意味することもできる。一実施態様において、「処置」は、疾患又は状態を予防することを含む。
【表1】
【0107】
以上の開示は、本願を大まかに記載したものである。以下の特定の実施例を参照することにより、より一層の理解が得られよう。これらの実施例はもっぱら説明のために記載したものであり、本願の範囲を限定するものではない。状況により方策が示唆または提供されることがあるので、形態の変更と等価物の代用が想定されている。本明細書で特定の用語を使用したが、そのような用語は、説明的な意味であり、限定するためのものではない。
【0108】
以下の限定されない実施例は、本願を例示するものである。
【実施例
【0109】
実施例1
背景及び概要
三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)は、MHCに拘束されない標的指向性を維持しながらTCRを介して自然に起こるシグナル伝達をよりよく反復させるために開発した。T細胞の活性化は、T細胞上のTCR及び共受容体(CD4又はCD8)がMHCに結合し、同時にMHC分子内の保存領域に結合した後に起こる(イン(Yin)ほか、2012年)(クーンズ(Kuhns)及びデービス(Davis)、2012年)。共受容体は、TCRシグナル複合体の形成に特に重要な膜ミクロドメイン(ヒー(He)及びマルゲット(Marguet)、2008年)である「脂質ラフト」(フラゴソ(Fragoso)ほか、2003年)(アーキャロ(Arcaro)ほか、2000年)内に特異的に局在化されている。TCR活性化複合体の正確なミクロドメイン局在化を確実にすることに加えて、こうした共受容体は、T細胞活性化に重要なタンパク質キナーゼであるLck(キム(Kim)ほか、2003年)にも直接結合する(メチ(Methi)ほか、2005年)(アクト(Acuto)及びキャントレル(Cantrell)、2000年)。これまでに述べたように、既存のキメラ受容体又は二官能性タンパク質のどれも共受容体分子又はLckに係合しない。脂質ラフトに局在化し、Lckに結合するCD4共受容体の膜貫通及び細胞内領域を、CD3に結合する単鎖抗体(UCHT1;配列番号13及び14;パブリックドメインにもある配列)に融合させた分子を作製した。この構築物は、自然に起こるMHC結合と同様に、脂質ラフトの領域にCD3分子及びTCRを引き込み、TCRの近傍にLckを持ち込むように設計されている。このキメラ受容体を標的にするために、設計されたアンキリン・リピート(ダルピン)をCD4-UCHT1キメラに連結させて三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を作製した。この具体的な事例では、ダルピンは癌原遺伝子erbB-2に特異的であった。
【0110】
ヒトT細胞を操作して同じダルピンを有するプロトタイプTri-TAC又は従来型CARを発現させた。その結果、あらゆる面で、Tri-TACで操作したT細胞は従来型CARと同等の機能性を示すことが明らかとなった。興味深いことに、2つのパラメータ(TNF-α産生及びCD107a動員)に関しては、Tri-TACは従来型CARよりも活性であることが認められた。さらに、データから、1分子当たりのTri-TACは有意な活性の増強を示すことが分かる。さらに、Tri-TACは、活性化ドメインがこのタンパク質の一部ではないので、在来型CARと比較して安全性の向上を示す。
【0111】
在来型CARは、いくつかのシグナル伝達ドメインを合わせ持つことでT細胞を刺激するのに有効である(図1C)。ちなみに、Tri-TAC(図1A/B)は、それ自体のシグナル伝達ドメインを一切含有していない。それは、(灰色で示されている)他のキープレーヤー間の提案されている相互作用を抗原依存性に促進することにかかっている。この設計仮説を検証するために、完全長のN-ダルピンTri-TACのいくつかの変異体を作製した(図1D)。
【0112】
これまでの研究によりCAR分子の一貫した有意な細胞表面発現は立証されている。ダルピンCARは強い表面発現を示すことが分かった(図2)。これに対して、Tri-TACは、はるかに低い表面発現を示した。このことは、UCHT1ドメインを有する全ての変異体で認められた。しかしながら、UCHT1ドメインを欠くTri-TAC変異体はダルピンCARと同様な表面発現を示した。
【0113】
Tri-TAC、Tri-TAC変異体又はダルピンCARを発現するように操作したT細胞をプレートに結合させた抗原で刺激した。その結果、Tri-TAC及びダルピンCARを発現するように操作したT細胞は、測定された全ての機能(TNF-α産生、IFN-γ産生及びCD107a動員)を発現することができた(図3A及び3B)。Tri-TACがCD3及び標的抗原のいずれにも結合することは、T細胞がその機能を発現するのに重要であることが分かった。図3には、CD3への結合を無効にするUCHT1の除去によりTri-TACの機能が無効になることが示された。他のデータでは、Tri-TACからダルピンを除去しても機能が無効になることが明らかとなった。
【0114】
予想されたことだが、こうしたT細胞の細胞毒性を調べた時、Tri-TAC-UCHT1-ダルピンは抗原発現細胞を殺傷する能力を示さなかった(図4)。N-ダルピンTri-TACは、古典的なダルピンCARと極めて類似した高レベルの選択的細胞毒性を示した。興味深いことに、ダルピンCARを発現するT細胞は高いT細胞:標的細胞比で標的外の殺傷を示すように思われる(図4のD2F2に対する殺傷を参照されたい)のに対して、Tri-TACを発現するT細胞はこうした効果を示さなかった。
【0115】
実験例
図1は図式的概観である。(A)はN-ダルピンTri-TACを図示する。Her2を標的とするアンキリン・リピート・ドメインを(GS)リンカーを用いて単鎖断片可変(scFv)UCHT1に融合させる。次に、scFvをCD4分子に連結させる。CD4はリンカー領域及び膜貫通領域並びに細胞質アンカー領域を含有する。可能な相互作用がぼやけた灰色で示されている。(B)はC-ダルピンTri-TACを図示する。この構築物では、scFv UCHT1はダルピンドメインと取り替えられている。この場合も、可能な相互作用はぼやけた灰色で示されている。(C)は古典的な第二世代CARのモデルである。ダルピン標的ドメインを、CD8αリンカーを介してCD28膜貫通ドメインに連結させる。次いで、3つの活性化ITAMモチーフを有するCD3ゼータドメインをCD28の細胞質部分に結合させる。(D)はダルピン標的ドメイン、CD3結合scFv部分又はCD4ドメインの細胞質部分を欠く種々のTri-TAC対照の概観である。
【0116】
図2は、それぞれのTri-TAC変異体のヒストグラムによる形質導入T細胞の表現型表面発現解析の結果を示す。T細胞は、後にフローサイトメトリーにより検出したHer2Fcと共にインキュベートした。提示データはCD8+リンパ球に関してゲート(gate)した。図示したゲートは未形質導入対照を基準として選んだ。
【0117】
図3は、操作T細胞の機能解析の結果である。(A)では、細胞は、ゴルジプラグ(GolgiPlug)(商標)を含有する培地中プレート結合Her2Fcで4時間刺激した。先ず、細胞をCD8+について染色した後、透過処理し、TNF-α及びIFN-γ産生について解析した。初期ゲートは、シングレットCD8+リンパ球について設定した。図示したゲートは未形質導入対照を基準として設定した。B)では、前の場合と同様に、細胞はプレート結合Her2Fcで刺激した。培地にはゴルジプラグ(商標)及び抗CD107a抗体を含めた。活発に脱顆粒している細胞は、より高いCD107aリサイクル率を有し、その後、抗CD107aのより高いシグナルを示すと予想された。
【0118】
図4は操作T細胞の細胞毒性を示す。2種の異なる付着性マウス腫瘍株をT細胞添加の24時間前に平板培養した。D2F2/E2はヒトHer2を発現するように操作されているが、D2F2はされていない。示した割合のT細胞を腫瘍を含むウェルに添加した。腫瘍細胞はT細胞と共に6時間インキュベートした。その後、洗浄によってT細胞を除去した。各ウェルに10%アラマーブルー含有培地を3時間にわたって添加した。細胞生存の指標として代謝活性をエンドポイント分析により求めた。T細胞を含まないウェルを最大生存性/代謝活性と定義して100%とし、これに対して細胞を加えずにインキュベートした培地を0%代謝活性として設定した。提示したデータは3回の反復実験の平均である。
【0119】
考察
T細胞をMHC非依存性に特定標的に再誘導するためのキメラ受容体の使用は癌を処置するための魅力的な方法であり、病原菌由来の抗原が細胞質膜に見出される感染性疾患にも適用可能であろう。キメラ受容体は、(1)標的細胞に対する特異的な細胞毒性及び(2)最小限の標的外の毒性をもたらすことになる。従来のCARは、この点で不十分である。何故なら、こうしたCARは、シグナル伝達ドメインが適切な調節を受けない恐れがあり、従って特定活性の細胞制御が低下する不自然な位置にある合成構造に依存しているからである。
【0120】
Tri-TACは、シグナル伝達ドメインの異所性局在化を用いないで自然のTCRのシグナル伝達成分を再誘導するように設計した。Tri-TACの設計は以下の原則によって行った:(1)キメラ受容体は相互作用して主要な活性化タンパク質複合体の秩序ある構築を促進しなければならない;(2)キメラ受容体はミクロドメイン環境などの既存の細胞順応を活用しなければならない;及び(3)キメラ受容体は活性化ドメインを一切有してはならない。Tri-TACは、効率的に、そしてデータが示すように、第二世代CARより良くはないが等しい活性化速度でこれを達成することができる。
【0121】
従って、このTri-TACは、さらにT細胞活性化を微調整するための追加的な設計共受容体とのさらなる一体化に理想的に適している。最終的には、これは、目標となる細胞毒性に関して損なうことなく標的外の効果の相当な低下をもたらすはずである。Tri-TACは、既存のCARよりも毒性が低いようである。ダルピンCARは、高い細胞対標的比で軽度の標的外の殺傷を示し、治療に用いると問題となる恐れがある。しかしながら、Tri-TACは、在来型CARと同程度に機能的であるが、標的外の効果を示さなかった。ダルピンは高親和性で標的に結合するので、ダルピンを用いる高レベルのキメラ受容体を発現する細胞に対する標的外の効果は起こりやすい。従って、理論にとらわれるまでもなく、Tri-TACの表面発現が低いことは、そのような標的外の効果を生じる可能性を低下させるので有利であろう。
【0122】
結局のところ、Tri-TAC技術がモジュール方式を採用していることにより、T細胞活性化過程のはるかに精巧な微調整が可能となる。例えば、TCR複合体の動員は、より低いCD3親和性を有するTri-TAC分子を操作することによって調節することができた。これを用いることにより、癌標的を検出するための高親和性標的ドメインを維持しながら自然の低いTCR親和性(チェルビン(Chervin)ほか、2009年)を模倣することができた。古典的なCARと異なり、Tri-TAC技術はこれによりよく類似するように操作することができる。
【0123】
結論として、提示したTri-TAC技術は、(1)T細胞の活性化及び細胞毒性を効率的にもたらすことができ、(2)自然に起こるT細胞活性化を模倣することによってこれを為すことができ、(3)それ自体の活性化ドメインを必要としない、極めて効率的な分子ツールである。
【0124】
実施例2:Tri-TAC技術の特性化
図5にTri-TAC技術の概観を示した。
【0125】
図5Aは、種々の受容体とそれらの関連相手タンパク質の共集合に基づいたCD8 T細胞活性化の例を示す。最初に、主組織適合複合体Iが抗原(らせん状物)を提示している。これはその抗原に結合できるT細胞受容体(TCR)複合体によって認識される。このTCR複合体はいくつかの個々のサブユニットを含有する。そのα/βドメインはMHC-I上に提示された抗原と直接相互作用することができる。次いで、α/βドメインは、他のいくつかのドメイン(ε、γ、δ及びζ)と相互作用し、これらのドメインの全てが種々の細胞内活性化ドメインを介するT細胞活性化に関与する。TCR複合体は、CD8共受容体と同時にMHC-Iと相互作用する。このCD8共受容体は抗原依存性にMHC-Iに結合する。CD8は、TCR受容体複合体を活性化するための重要なタンパク質キナーゼであるLckと直接相互作用する。また、CD8とLckとの相互作用は、それらの脂質ラフト(膜部分)ミクロドメインとの会合を確実なものにし、こうしたドメインは他の関連シグナル伝達部分(暗色球形)を組織化し、封じ込めると想定されている。その後、後期の活性化がCD28の動員をもたらす。この相互作用カスケードが並行して数回起こるならば、T細胞は活性化され、それらの細胞毒性を発揮することができる。
【0126】
図5Bは、キメラ抗原受容体(CAR)の概観を示す。CARは、ζ及びCD28などのいくつかの重要な活性化ドメインを単一の合成操作分子として結合させることによりT細胞活性化の複雑な機序を再現しようとするものである。次いで、CARは特定の結合ドメインを用いて最適の抗原と直接相互作用する。ここに示したのはアンキリン・リピートタンパク質(ダルピン)である。並行して起こるいくつかのそのような相互作用がT細胞活性化をもたらすと考えられる。
【0127】
図5Cは、TCR複合体を最適の抗原に直接架橋させることによってT細胞に係合する二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)様分子を示す。ここに示したBiTE様分子は、2つの結合ドメインを含有する。ダルピン部分は標的抗原と相互作用する。単鎖可変断片ドメイン(scFv)はそのイプシロンドメインを介してTCR複合体に結合する。並行して起こるいくつかのそのような架橋がT細胞活性化をもたらす。
【0128】
図5Dは、自然に起こる活性化過程を模倣するTAC技術の概観である。T細胞抗原カプラ(TAC)はダルピン結合ドメインを介してその抗原に結合することができる。次いで、ダルピンはTCR複合体のイプシロンドメインに結合することができるscFvに連結する。次に、TACは、CD4膜貫通及び細胞質ドメインと会合する。CD8と同様、CD4はLckと相互作用し、脂質ラフト内に位置する。このように、TACはTCR動員を共受容体刺激と組み合わせる。理論にとらわれるまでもなく、並行して起こるいくつかのそのような相互作用がT細胞活性化をもたらすと考えられる。
【0129】
TAC分子は種々の形態が考えられる。図6Aは、形態1のTAC分子のモデルを示す。CD4-尾部、膜貫通及びリンカードメインは、TCR-イプシロン特異的scFv(UCHT1)と結合する。次いで、scFvは抗原結合ドメインに連結される。このドメインは交換可能である。この提案では、使用される抗原結合ドメインは、Her2抗原に特異的なscFv又はダルピンドメインである。図6Bは、形態2のTAC分子を示す。この場合、CD4ドメインは先ず抗原結合ドメインと相互作用する。次いで、このドメインはTCR動員scFv(UCHT1)ドメインに連結される。
【0130】
図7はscFv CD4 TACの機能性を示す。図7Aは、空のベクターとの比較でscFv CD4 TAC受容体の表面発現を示すヒストグラムである。細胞はFcHer2抗原を用いて染色し、この抗原は蛍光標識抗体を用いて検出した。図7Bは、scFv CD4 TAC(上段)又はscFv CAR(下段)を発現するT細胞の抗原特異的活性化を示す。scFv CD4 TAC(上段)又はscFv CAR(下段)を発現するT細胞は、プレート結合Her2抗原と共にインキュベートした。両修飾細胞は、抗原特異的活性化を示した。DMSO陰性対照は活性を示さなかった(データは示されていない)。図7Cは、scFv CD4 TAC及びscFv CARによるMCF-7ヒト腫瘍細胞株(Her2陽性)の同等な殺傷を示す。scFv CD4 TAC及びscFv CARは、いずれもMCF-7ヒト腫瘍細胞株(Her2陽性)と共にインキュベートし、空のベクター対照と比較した。
【0131】
図8は、CD4-TAC形態2の特性化である。図8Aはベクター対照との比較におけるダルピンCD4-TAC形態2のヒストグラムである。表面発現はFcHer2修飾抗原を用いて調べた。CD4-TAC形態2を発現する細胞は受容体の高い表面発現を示すFcHer2結合の明確な増加を示している。判りやすくするために、CD4 TAC形態2のモデルを示した。図8Bは、プレート結合Her2抗原に暴露したダルピンTAC形態2で操作したT細胞を示す。サイトカイン産生及び脱顆粒を測定した。データは、ダルピンTAC形態2が機能的受容体であることを示している。抗原を用いない処置ではT細胞の活性化は認められなかった(データは示されていない)。図8Cは、空のベクター対照との比較におけるCD4-TAC形態2の増殖を示す。細胞は100u/ml IL2 10ng/ml IL7中で増殖させた。100,000個の細胞から始めて、増殖を所定の間隔で培養試料をカウントすることによりモニターした。形態2は、対照との比較において増殖速度が著しく低い。
【0132】
図9は、ダルピンCD4 TAC形態1の機能性を示す。図9Aは、ダルピンCAR(緑色)及びNGFRのみの対照(青色)との比較におけるダルピンCD4 TAC(赤色)の表面発現を示す。細胞は受容体特異的抗原FcHer2を用いて調べた。ヒストグラムは、ダルピンCD4 TACが表面に十分発現されることを示している。しかしながら、その最大表面発現は、CAR構築物との比較において低い。図9Bは、CD4-TAC形態1の増殖を示す。2週間の培養において、細胞をサンプリングし、手動でカウントすることにより増殖をモニターした。空のベクターは、ダルピンCARと同様の増殖を示している。しかしながら、TACの場合、比較すると増殖が低下している。図9C及び図9Dは、種々の活性化及び脱顆粒マーカについて陽性の細胞の割合を示す。空のベクター、ダルピンCD4及びダルピンCARをプレート結合抗原Her2又はDMSO対照と共にインキュベートした。3回の別々の実験の結果を統計解析ソフトウェアSPICEを用いてまとめた。散布図は、1組の活性化マーカについて陽性の細胞の割合を示す。CD4-TACは、脱顆粒マーカ陽性細胞の割合が比較的高い。ダルピンCAR細胞は様々な活性化マーカについて陽性であるが、有意に豊富な脱顆粒マーカの集団はない。円グラフは同じデータを示す。これは、CD4-TACが脱顆粒に焦点を当てた著しく多い細胞集団を有することを示す。CD4-TACは、種々のレベルのサイトカイン産生と共に脱顆粒する大多数の活性化細胞を有する。しかしながら、CARは、集団全体の50%未満を構成する脱顆粒による活性化のよりランダムな分布パターンを示す。このパターンは、CARによる制御性の低いT細胞活性化を示すものであろう。
【0133】
図10は、TAC及びCARの細胞毒性及び全般的活性を示す。TAC、CAR又は空のベクター対照を用いて操作した細胞を種々のヒト腫瘍細胞株と共にインキュベートした。MDA MB 231、SK OV 3及びA549は全てHer2抗原を発現する。LOXIMVIはHer2陰性である。全ての場合において、TACは細胞毒性の増強を示すことが認められた。抗原陰性細胞株LOCIMVIは、標的とされておらず、細胞毒性は抗原特異的であることを裏付けている。
【0134】
図11は、種々のTAC対照の受容体表面発現及び活性化を示す。図11Aには細胞表面発現(左)、脱顆粒(中央)及びサイトカイン産生(右)を示した。特定のドメインを欠く構築物を作製してこうしたドメインの意義を明らかにした。以下のドメイン、即ちダルピン抗原結合ドメイン及びUCHT1 TCR結合ドメインを完全に除去したが、下段には完全長のTACを示した。UCHT1ドメインを含有しないTACの表面発現は、完全長CD4 TACとの比較において表面発現の増強をもたらした。ダルピン陰性突然変異体は、FcHer2抗原を用いて検出できなかった。脱顆粒(中央)は完全長のTACでのみ認められた。UCHT1及びダルピンの両方の削除は脱顆粒をもたらさなかった。同様に、サイトカイン産生は完全長のTACにおいてのみ認められた。図11Bは、マウス細胞株D2F2がヒトHer2抗原(D2F2/E2)を発現するように操作されたことを示す。いずれの細胞株も完全長CD4-TAC又はその欠損変異体を用いて操作したT細胞と共にインキュベートした。データは、エフェクター対ターゲット比4:1エンドポイントを示している。完全長のCD4-TACのみが細胞毒性反応を惹起することができた。このことは、ダルピン及びUCHT1ドメインが受容体機能に関与していることを証明するものである。
【0135】
図12は、種々の膜貫通TAC変異体の性質を示す。図12Aは、そうした種々の膜貫通構築物の概観である。最初の組の変異体は細胞質ドメインを欠いている。CD4 TAC-cytosolは細胞質ドメイン全体が除去されている。この合成構築物は、CD4 TMが設計された高度に疎水性の膜ドメインによって置換されている。グリコホリン変異体はCD4膜貫通ドメインをグリコホリン膜貫通ドメインで置換している。GPIアンカー変異体は、GPIアンカーを用いて膜にTACを付着させるように配列したCD48 GPIシグナルを用いる。CD8A TAC変異体は膜貫通及び細胞質CD4ドメインをCD8α対応物で置換した。図12Bは、CD8精製T細胞が種々の構築物で操作されたことを示している。完全長TACとの比較における種々の受容体の表面発現が示されている。全てのデータは、対照の蛍光強度の中央値と比較したものである。全ての変異体は、完全長CD4-TACとの比較において有意に低い受容体表面発現を示す。GPIアンカーTAC変異体は、バックグラウンドを超えて検出可能ではない。図12Cは、脱顆粒及びサイトカイン産生について種々の変異体を調べた結果を示す。細胞は、プレートパウンドHer2抗原と共にインキュベートした。活性は、脱顆粒マーカCD107a陽性細胞のパーセント(左棒グラフ)又はまとめて取られた全てのサイトカイン(TNFa、IFNg及びTNFa/IFNg、右棒グラフ)産生細胞のパーセントとして提示した。GPI固定又はCD8a変異体はバックグラウンドレベルの脱顆粒及びサイトカイン産生を示している。グリコホリン、合成及び-細胞質ゾルのTAC変異体は、適度なレベルの脱顆粒及び低レベルのサイトカイン産生を示している。全ての場合において、活性は完全長CD4-TACより十分低い。総合すると、このことから、その細胞質ドメインを含まないTACを固定すると、活性の低い機能的受容体をもたらすことが分かる。
【0136】
図13は、LckのTAC変異体との相互作用を示す。図13Aでは、Her2抗原は磁気ビーズに共有結合で付着させた。293TM細胞は、TAC及びTAC細胞質欠損変異体の両者並びにLckを発現するように操作した。ビーズは細胞溶解物と共に一夜インキュベートし、次いで洗浄し、ウエスタンブロットに供した。LckはLck抗体を用いて検出し、TACはMyc抗体によって検出した。対照としてB-アクチンを使用した。B-アクチンは、沈降されず、単に上清(S)において検出した。しかしながら、完全長TAC及び細胞質削除の場合、効率的に沈降され、ペレット画分(B)において検出された。ベクター対照及び細胞質ドメインを含有しないTACは、同等レベルのバックグラウンドLckシグナルを示している。しかしながら、完全長CD4-TACは、全量に対して有意なレベルのLckを示している。図13Bは、ペレット中に検出されたLckのデンシトメトリー分析の結果を示す。シグナルは陰性対照に対して補正した。このデータは、Lckが完全長CD4-TACと相互作用することができることを裏付けている。
【0137】
図14では、CD4 TAC表面発現及び活性がBiTE様変異体の場合と比較されている。図14Aは、NGFRのみの対照(左)、CD4-TAC(中央)及びBiTE様変異体(右)を示す。表面発現は、形質導入マーカNGFR及びHer2抗原を用いて調べた。TACは、BiTEと比較してはるかに低い表面発現を示している。中でも注目すべきは、BiTEは、形質導入陰性細胞(NGFR-)が強い受容体発現を示すのを可能にするのに十分な結合抗体を分泌するようであることである。TAC操作細胞と比較してBiTE様細胞ではサイトカイン産生及び脱顆粒が共に高い。図14Bは、種々のHer2陽性細胞株(MDA MB 231、SK OV 3、A549)において細胞毒性を比較したものである。サイトカイン産生とは対照的に、TAC操作細胞は細胞毒性活性の有意な増強を示している。
【0138】
図15は、UCHT1のランダム突然変異原ライブラリに対するCD4 TAC WTの比較を示す。TACの性質を変化させる能力を調べるために、UCHT1及びTCRイプシロンの結合表面に存在する24個のアミノ酸を個々に突然変異させた。これによって理論的に480種の特有のクローンがもたらされ、それらの全てがこのランダムライブラリ中に示されているはずである。図15Aは、突然変異体の模式図である。マーキングは、全てがscFv-イプシロン境界面にある突然変異を示す。図5Bは、表面発現のヒストグラムである。操作細胞をFcHer2抗原を用いて調べることにより表面発現受容体を検出した。ライブラリはこの受容体の表面発現のかなりの増強を示している。図15Cは、プレート結合抗原と共にインキュベートされたWT及びライブラリCD4 TAC細胞を示す。これらの活性化及びサイトカイン産生能力が提示されている。このライブラリはWTと比較して同様な活性を有する。理論にとらわれるまでもなく、このことは、scFvドメインを変更することによって元の機能的プロフィルを維持しながらTACの発現特性を改善することができるという概念を裏付けるものである。
【0139】
図16は、A85V、T161P突然変異体の表面発現増強を示す。WTに対して有利な増殖を示す突然変異体を選ぶために長期間にわたってライブラリを増殖させた。選んだ突然変異体(A85V、T161P;番号付けはUCHT1ドメイン断片に基づいている)を分析した。図16Aは、末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)がWT CD4-TAC又はA85V、T161P突然変異体で操作されたことを示す。CD4 TAC(左)及びA85V、T161P突然変異体(右)間で最終的なCD4/CD8集団を比較した。特に、WT CD4-TACは、CD4陽性細胞の集団の減少をもたらす。この効果は突然変異体細胞では認められない。図16Bは、NGFR形質導入マーカ及びFcHer2陽性によって測定される表面発現を示し、A85V、T161P突然変異体の表面発現の増強を示している。図16Cは、A85V、T161P突然変異体のサイトカイン産生が低減することを示している(DMSO対照は活性を示さず、データは示されていない)。WT TAC及びA85V、T161P突然変異体間で脱顆粒は同程度である。
【0140】
図17は、A85V、T161P突然変異体の細胞毒性及び増殖を示す。図17Aでは、WT CD4 TAC及びA85V、T161P突然変異体で操作したT細胞をHer2抗原陽性細胞株SK OV 3、MDA MB 231及びA549と共にインキュベートした。全ての場合において、突然変異体は細胞毒性レベルの低下を示し、A549の場合では、細胞毒性は検出されなかった。図17Bでは、100,000個の細胞から始める培養において細胞増殖を2週間にわたってモニターした。定期的に、サンプルを採取し、手動で細胞をカウントした。A85V、T161P突然変異体は、WT変異体との比較で増殖の著しい向上を示している。総合すると、このことから、ライブラリはいくつかのTAC機能の修飾及び最適化を可能にする種々の突然変異体を含む可能性が高いことが分かる。従って、UCHT1は機能的調節因子として用いることができる。
【0141】
本願を現在好ましい実施例であると考えられるものに関して説明してきたが、本願をこれらの開示された実施例に限定するものでないことは言うまでもない。これとは逆に、本願は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる種々の修正及び同等のアレンジメントを保護しようとするものである。
【0142】
全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許もしくは特許出願がそれぞれ全体として引用により本明細書に組み込まれていることが具体的、かつ個別に示されている場合と同程度に、全文引用により本明細書に組み込まれている。
【0143】
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