(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】摩擦に基づく保持力および使用不可機能を持つ安全な静脈カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
A61M25/06 512
A61M25/06 500
A61M25/06 514
(21)【出願番号】P 2020186485
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2017535421の分割
【原出願日】2015-12-30
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2015-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エス.レイ イサクソン
(72)【発明者】
【氏名】シッダールタ シェヴゴーア
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ オブライアン
(72)【発明者】
【氏名】イーピン マー
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6974901(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0204681(US,A1)
【文献】特表2010-510035(JP,A)
【文献】特表2012-517326(JP,A)
【文献】特開昭53-61187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルおよび導入針アセンブリーであって、
カテーテルと、
カテーテルと流体連通しているカテーテルハブであって、外面部分と、前記外面部分の近位に配置されたフランジと、および前記フランジから円周方向に離間し、前記カテーテルハブの近位部分から半径方向外向きに延びる使用不可機能と、を有するカテーテルハブと、
前記カテーテルに配される導入針と、
針シールドと、
爪を持った片持ちアームを有し、第1の位置と第2の位置との間を曲がるようになっている弾性クリップと、を具え、
前記第1の位置にて、前記弾性クリップの前記片持ちアームは、前記爪が前記カテーテルハブの外面部に摩擦接触して前記針シールドを前記カテーテルハブと共に保持するように曲げられ、前記第2の位置にて、前記爪は、前記外面部に摩擦接触せず、それによって前記カテーテルハブに対する前記針シールドの移動を可能にし、
前記使用不可機能は、前記弾性クリップが前記第1の位置にあるときに、前記爪と整列し、および前記爪から離れて配置される、アセンブリー。
【請求項2】
前記導入針の末端が前記弾性クリップを通り越して末端側に突き出ている場合、前記弾性クリップは前記導入針の一方側の付勢位置に保持され、
前記導入針の末端が前記弾性クリップを通り越して基端側に引っ込められると、前記弾性クリップは、これが前記針シールドを前記カテーテルハブと共に摩擦保持しない非付勢またはより少ない付勢位置へと曲がることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項3】
前記弾性クリップは、その少なくとも一部が前記針シールド内に移動可能に配される傾斜クリップを具え、この傾斜クリップは、そこから突出する片持ちアームを持った傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項4】
前記弾性クリップは、そこから突出する針ブロッカーを有する傾斜部を具え、
前記弾性クリップが前記非付勢またはより少ない付勢位置へと曲がった場合、前記針ブロッカーは前記導入針の末端の、前記針ブロッカーを超える末端側移動を阻止するように配されていることを特徴とする請求項2に記載のアセンブリー。
【請求項5】
前記カテーテルハブは、前記カテーテルと流体連通するようになっている基端側ポートと、ルアーコネクターとの結合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項6】
前記基端側ポートが使用中の場合、前記カテーテルハブは、前記カテーテルと流体連通するようになっている第2の側面ポートを具えていることを特徴とする請求項5に記載のアセンブリー。
【請求項7】
前記導入針の基端に配される針ハブと、
前記針シールドおよび前記針ハブを結合する可撓性テザーと
をさらに具えていることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項8】
前記針シールドから前記針シールドの中心軸線に向けて径方向に突出する可撓性の片持ちフィンをさらに具え、
この片持ちフィンは、前記導入針と前記弾性クリップとの間に配されていることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項9】
前記カテーテルハブ内に配される隔膜およびアクチュエーターをさらに具え、
前記隔膜はアクチュエーターの移動によって突き刺し可能であり、
前記弾性クリップは、前記隔膜に対して基端側に配されていることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項10】
前記爪によって前記カテーテルハブの前記外面部に加えられる垂直力が0.4から1.4ニュートンまでの範囲にあり、
前記爪と前記カテーテルハブの外面部との間の摩擦係数が0.25から0.4までの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリー。
【請求項11】
前記カテーテルハブの前記外面部が、連続した外面部分を備えた、請求項1に記載のアセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈カテーテル、より詳細にはカテーテルハブと針シールドとの間の摩擦に基づく保持力を持った静脈カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル、特に静脈(IV)カテーテルは、流体(例えば生理食塩水および種々の薬剤および完全非経口栄養など)を患者へと注入するか、血液を患者から採取するか、あるいは患者の血管系のさまざまな特性を測定するために用いられている。末梢IVカテーテルは相対的に短い傾向にあり、一般的におよそ2インチ程度か、それよりも長さが短い。最も一般的な種類のIVカテーテルは、套管針末梢IVカテーテルである。套管針カテーテルは、その名前が暗示するように、鋭い末端側尖端を有する中空の導入針を覆って装着される。カテーテルの少なくとも末端部は、針の外面にしっかりと嵌合してカテーテルのまくれを阻止し、それによって血管へのカテーテルの挿入を容易にする。導入針の鋭い末端側尖端がカテーテルの末端側尖端を越えて突出すると同時にこの針の斜面が上を向けて患者の皮膚から離れるように、カテーテルと導入針とが組み立てられる。
【0003】
作業中、カテーテルおよび導入針アセンブリーは、浅い角度にて患者の皮膚を通って血管へと射し込まれる。このようなカテーテルおよび導入針アセンブリーを患者に挿入するための多くの技術がある。一挿入技術において、導入針およびカテーテルは、相互に完全に血管に挿入される。他の技術において、導入針は血管への最初の挿入後、その一部がカテーテルへと引き戻される。そして、針を覆ったカテーテルが刺し込まれ、血管へと完全に挿入される。
【0004】
血管内でのカテーテルの適切な配置を確かめるため、臨床医は逆流チャンバに血液の逆流があることを確認する。この逆流チャンバは、導入針ハブの一部として一般的に形成されている。ひとたび血管へのカテーテルの適切な配置が確認されると、臨床医は血管を覆う患者の皮膚に導入針およびカテーテルの末端側を押し込むことによって血管に圧力を加える。この指の圧力は、導入針およびカテーテルを通るさらなる血流を遮るか、少なくとも最小にする。次に、臨床医は導入針を引き抜き、カテーテルを適当な位置に導き、適切な器具をカテーテルに装着する。このような器具は、流体送出器具か、PRN(pro re nata:すなわち「必要とすることができる状況のような」)器具か、端末カバーか、あるいは血圧監視プローブを含むことができる。ひとたび導入針がカテーテルから引き抜かれると、この導入針は血液によって汚染された針であり、適切に処理され、かつ処分されなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、患者の血液を原因とした臨床医の感染に関する大きな懸念と、血液で汚染された針が適切に処理され、偶発的な針刺しを回避するために処分されなくてはならないという認識とがある。この懸念は、感染者から他の人への体液のやり取りによって伝染する可能性があるHIVおよび肝炎の如き疾患のために生じている。感染者の体液との接触が回避されなくてはならない。カテーテルを感染者の血管に配置するために導入針が用いられる場合、この導入針は、その鋭い末端側尖端を介した疾患の伝達のための媒体である。臨床医は、血液で汚染された針を適切に取り扱う必要性を知っているけれども、残念ながら緊急事態の如き特定の医療環境において、または不注意または怠慢のため、汚染された導入針での針刺しが起こる可能性がある。
【0007】
血液で汚染された針による偶発的な針刺しの問題のため、種々の種類の針シールドが開発されて来ている。概ね、このような針シールドはその意図した目的のために働くけれども、改善されることができる。例えば、いくつかの針シールドは、大きくて使うのが困難であるか、操作するために特別な機能または技術を必要とするか、あるいは使用後に臨床医が針シールドを手作業で作動させるまで、鋭い末端側尖端が露出したままになっている可能性がある。
【0008】
本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照することによってその全体がここに組み込まれる特許文献1は、このような問題に対する多くの解決法を示しているけれども、他の解決法もまた望まれる。いくつかの解決法は、針シールドがカテーテルハブで保持されるようにしておくための連動装置をもたらすため、凹部または切り欠きに係合する突起を用いているが、これらの解決法は、複雑多岐または入り組んだ成型または製造を必要とする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
カテーテルハブと針シールドとの間の摩擦に基づく保持力を静脈カテーテルに与えることが本発明の一形態である。
【0010】
本発明の前述および/または他の形態は、基端および末端を有する可撓性のカテーテルと、このカテーテルの基端と流体連通状態にあって当該カテーテルの基端に結合される末端を有するカテーテルハブであって、連続した外面部およびルアー結合機能を有するカテーテルハブとを含むカテーテルおよび導入針アセンブリーを提供することによって達成される。このアセンブリーはまた、カテーテル内に配されて基端および末端と、これら基端から末端まで延在する軸線とを有する導入針と、基端部および末端部を有する針シールドとを含む。該アセンブリーは、導入針の軸線に直交する平面にて第1の位置と第2の位置との間で曲がるようになっている弾性クリップをさらに含み、この弾性クリップは、爪を持った片持ちアームと、カテーテルハブの基端部から径方向外側に突出し、弾性クリップが第1の位置にある場合に爪から空間をあけられて軸線方向に一直線状に整列する使用不可機能とを有する。弾性クリップの第1の位置にて、爪がカテーテルハブの連続した外面部に摩擦接触し、それによって針シールドをカテーテルハブと共に摩擦保持し、弾性クリップの第2の位置にて、爪はもはや連続した外面部に摩擦接触せず、それによってカテーテルハブに対する針シールドの移動を可能にするように、弾性クリップの片持ちアームが曲げられる。
【0011】
導入針の末端が弾性クリップを通って末端側に突出する場合、弾性クリップは、導入針の一方側の付勢位置に保持されることが好ましい。導入針の鋭い末端が可撓性クリップを通って基端側に引き戻されると、可撓性クリップは、これがもはや針シールドをカテーテルハブと共に摩擦保持しない非付勢またはより少ない付勢位置へと曲がる。
【0012】
弾性クリップは傾斜クリップを具えることができ、その少なくとも一部が針シールド内で動けるように配される。この傾斜クリップは、そこから突出する片持ちアームを持つ傾斜部を有することができる。代わりに、またはこれに加え、弾性クリップは、そこから突出する針ブロッカーを有する傾斜部を具えることができ、可撓性クリップが非付勢またはより少ない付勢位置に曲げられている場合、針ブロッカーは針シールドの末端外側への導入針の末端の末端側移動を阻止するように配される。
【0013】
特定の実施形態において、カテーテルハブは、カテーテルおよびルアーコネクターを持つ結合部と流体連通するようになっている基端側ポートを含む。このカテーテルハブは、基端側ポートが使用中の場合、カテーテルと流体連通するようになっている第2の側面ポートをさらに具えることができる。
【0014】
このアセンブリーは、導入針の基端に配された針ハブをさらに具えることができる。可撓性テザーが設けられて針シールドと針ハブとを結合することができる。
【0015】
このアセンブリーは、針シールドから針シールドの中心軸線に向けて径方向に突出する可撓性の片持ちフィンをさらに具えることができる。このフィンは、導入針と弾性クリップとの間に配されることが好ましい。
【0016】
特定の実施形態において、このアセンブリーは、カテーテルハブ内に配された隔膜とアクチュエーターとをさらに具え、隔膜はアクチュエーターの移動によって突き刺し可能であり、弾性クリップは、隔膜に対して基端側に配されている。
【0017】
好ましい実施形態において、爪によってカテーテルハブの連続した外面部に加えられる垂直力が0.4から1.4ニュートンまでの範囲にある。さらに、また別に、爪とカテーテルハブの連続した外面部との間の摩擦係数は0.25から0.4までの範囲にある。
【0018】
本発明の前述および/または他の形態はまた、第1の流体通路および連続した外面部およびカテーテルハブの基端部から径方向外側に突出する使用不可機能を有するカテーテルハブと、第1の流体通路と連通するカテーテルと、導入針アセンブリーとを含むカテーテルおよび導入針アセンブリーを提供することによっても達成される。導入針アセンブリーは、導入針と、この導入針の基端に固定して配される針ハブと、カテーテルハブに選択的に配されて針ハブと結合される針シールドと、弾性クリップとを含む。この弾性クリップは、針シールド内で動けるように配され、そこから突出する片持ちアームをこの片持ちアームの自由端にある爪と共に有する。この片持ちアームは、爪が連続した外面部に摩擦接触して導入針をカテーテルハブと共に摩擦保持するように曲げられる。使用不可機能は、爪から空間をあけて軸線方向に一直線状に整列する。
【0019】
ハブは、ルアー結合機能をさらに具えることができる。
【0020】
好ましくは、導入針は、この導入針の鋭い末端が弾性クリップの基端側を通過するまで、弾性クリップを第1の圧縮位置に保持し、この導入針の末端が弾性クリップの基端側を通過することに続き、弾性クリップは、爪が連続した外面部にもはや摩擦接触せず、かつ弾性クリップが針シールドをカテーテルハブと共にもはや摩擦保持しない非付勢またはより少ない付勢位置へと横に広がる。
【0021】
この弾性クリップは、傾斜部をそこから突出する片持ちアームと共に有する傾斜クリップを具えることができる。
【0022】
特定の実施形態において、カテーテルハブは、カテーテルと流体連通するようになっている基端側ポートと、ルアーコネクターに関する結合部とを含む。また好ましくは、カテーテルハブは、基端側ポートが使用中の場合、カテーテルと流体連通するようになっている第2の側面ポートを具えている。
【0023】
好ましくは、可撓性テザーが針シールドと針ハブとを結合する。
【0024】
このアセンブリーは、針シールドからこの針シールドの中心軸線に向けて径方向に突出する可撓性の片持ちフィンをさらに具えることができる。このフィンは、導入針と弾性クリップとの間に好ましくは配される。
【0025】
特定の実施形態において、このアセンブリーは、カテーテルハブ内に配された隔膜とアクチュエーターとをさらに具えており、隔膜はアクチュエーターの移動によって突き刺し可能である。このような実施形態において、弾性クリップを隔膜に対して基端側に配することができる。
【0026】
好ましくは、爪によって連続した外面部に加えられる垂直力が0.4から1.4ニュートンまでの範囲にある。代わりに、または加えて、爪と連続した外面部との間の摩擦係数が0.25から0.4までの範囲にある。
【0027】
本発明の前述および/または他の形態はまた、基端および末端を有する可撓性のカテーテルと、このカテーテルの基端に結合される末端を持ったカテーテルハブとを含むカテーテルおよび導入針アセンブリーを提供することによって達成される。カテーテルハブは、連続した外面部と、このカテーテルハブを患者に対して安定状態に支援するための少なくとも1つのウイングと、カテーテルの基端と流体連通状態の基端側ポートと、カテーテルの基端との選択的な流体連通のためにそこに配された弁を持つ第2の側面ポートと、ルアー結合機能と、カテーテルハブの基端部から径方向外側に突出する使用不可機能とを含む。このアセンブリーはまた、基端および鋭い末端ならびに基端から末端まで延在する軸線を有する導入針と、この導入針の基端に固定して配された針ハブと、基端部および末端部を有し、針シールドの中心軸線に向けて突出する可撓性の片持ちフィンをも有する針シールドと、針シールドの基端部を針ハブの末端部と結合する膨張可能なテザーと、軸線に直交する平面にて第1の位置と第2の位置との間を導入針に対して曲がるようになっている弾性クリップとを含む。この弾性クリップは、弾性クリップを針シールドに固定する固定部と、この固定部から突出し、またそこから突出する針ブロッカーを有する傾斜部と、この傾斜部から末端側に突出する片持ちアームと、この片持ちアームの末端に配されてカテーテルハブに向けて突出する爪とを含む。
【0028】
初期のアセンブリー形態において、導入針は、この導入針の鋭い末端がカテーテルの末端を越えて突出するように、針シールドとカテーテルハブとカテーテルとを通って配され、針シールドは、カテーテルハブの基端に配されると共にこの針シールドの少なくとも一部が針ハブ内に配され、テザーは折り畳んだ状態にあり、弾性クリップは、導入針によって第1の位置へと曲げられ、同時に針シールドのフィンが導入針と弾性クリップの傾斜部との間に配され、弾性クリップの針ブロッカーは導入針の通路を横切って配されず、爪は使用不可機能から空間をあけて軸線方向に一直線状に整列し、弾性クリップの片持ちアームは、爪が使用不可機能から所定間隔にてカテーテルハブの連続した外面部に摩擦接触し、針シールドをカテーテルハブと共に摩擦保持するように曲げられる。弾性クリップの基端側を通過した導入針の鋭い末端の引き戻しに続き、配置されたアセンブリー形態において、テザーが突出し、針ブロッカーが導入針の通路を横切って配されると共に爪が連続した外面部にもはや摩擦接触しない第2の位置へと弾性クリップを配し、それによってカテーテルハブに対する針シールドの移動を可能にすると共に弾性クリップを通過した導入針の鋭い末端側尖端の末端側への移動を阻止する。
【0029】
上述した種々の実施形態の好ましいまたは任意の機能のそれぞれを他の好ましいまたは任意の機能と組み合わせることができることが理解されよう。さらに、1つの特定な実施形態と組み合わせて記述された機能を他の実施形態の1つと組み合わせることもまた可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の追加および/または他の形態および利点は、続く説明にて述べられるか、この説明から明らかとなるか、本発明の実施により習得されることができる。
【0031】
本発明の実施形態の上のおよび/または他の形態ならびに利点は、添付図面と関連付けて書き留められた次の詳細な説明から、より容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施形態による安全な静脈カテーテルアセンブリーの上からの立体投影図である。
【
図2】
図1のカテーテルアセンブリーの一部を破断した下からの立体投影図である。
【
図3】第1の付勢位置にて
図1のカテーテルアセンブリーの弾性クリップの下からの立体投影図である。
【
図4】第2の非付勢またはより少ない付勢位置にて
図3の弾性クリップの下からの立体投影図である。
【
図5】
図1のカテーテルアセンブリーの一部を破断した下からの拡大立体投影図である。
【
図6】
図1のカテーテルアセンブリーの一部の後方からの拡大立体投影断面図である。
【
図7】弾性クリップが作動した後の
図1のカテーテルアセンブリーの一部を破断した下後方からの拡大立体投影図である。
【
図8】弾性クリップが作動した後の
図1のカテーテルアセンブリーの一部を破断した下後方からの他の拡大立体投影図である。
【
図9】針シールドをカテーテルハブから取り外した後の
図1のカテーテルアセンブリーの下からの立体投影図である。
【
図10】他の実施形態によるカテーテルアセンブリーの一部を破断した下からの拡大立体投影図である。
【
図11】また他の実施形態によるカテーテルアセンブリーの一部を破断した下からの拡大立体投影図である。
【
図12】また他の実施形態によるカテーテルアセンブリーの一部を破断した下からの拡大立体投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
さて、全体を通して類似の参照符号が類似の要素を指示する添付図面に例示された本発明の実施形態に対して参照が詳細になされよう。限定しないけれども、ここに記述された実施形態は、図面を参照することによって本発明を例示する。
【0034】
この開示が次の説明または図面に描かれた部品の構成および配置の詳細に対し、その用途に限定されないことを当業者によって理解されよう。ここにある実施形態は、他の実施形態の余地があり、種々の方法で実践または達成されることができる。また、ここで用いた言い回しおよび術語は、説明の目的のためであって、限定として見なされるべきではないことを理解されよう。「含む」や「具えている」または「有する」およびこれらの変化形の使用は、これらの後に記載された物品およびそれらの均等物と同様に追加の物品をも包含する。特に限定されない限り、「結合される」や「接続される」および「取り付けられる」という用語およびこれらの変化形は概括的に用いられ、直接的および間接的に結合器や接続具および取り付け具を包含する。加えて、「結合される」および「接続される」という用語およびこれらの変化形は、物理的または機械的な結合器または接続具に制限されない。さらに、上方や下方、下および上の如き用語は、相対的であって説明を助けるために用いられているが、限定されない。
【0035】
図1は、すぐ使える状態にある安全な静脈カテーテルアセンブリー100の実施形態を上から見た立体投影図であり、
図2はこのカテーテルアセンブリー100の一部を破断して下から見た立体投影図である。カテーテルアセンブリー100は、カテーテルハブ104を固定したプラスチック製の可撓性カテーテル102を含む。カテーテル102およびカテーテルハブ104には、カテーテル102の長手方向軸線に沿って延在し、例えばルアー突起部、すなわちねじ山部128を用いた基端側のルアー継手との結合のために適合した基端側ポート103(
図9に最も良く示されている)にて終わる第1の流体通路が形成されている。
【0036】
従って、一実施形態によると、カテーテルハブ104は、カテーテルを差し込んだ後、例えばテープでウイング107を皮膚に固定することによって皮膚装着を容易にする安定化ウイング107を含むことができる。カテーテルハブ104はまた、第1の流体通路に連通する第2の流体通路が形成された第2の側面ポート105を含むことができる。参照することによってその全体がここに組み込まれる米国特許第4231367号に記述されるように、第2の側面ポート105は、内側筒状弁の如きバリアを好ましくは含む。基端側ポート103がすでに使用中の場合、例えば追加の流体または薬剤を患者に導入するため、この第2の側面ポート105を用いることができる。この実施形態において、カテーテルハブ104の基端はほぼ円筒状である。他の実施形態によると、カテーテルハブ104は安定化ウイングや第2の側面ポートを含まない。
【0037】
可撓性のカテーテル102のための適当な材料は、限定されないけれども、フッ素化エチレンプロピレン(FEP),ポリ四フッ化エチレン(PTFE),ポリウレタンなどの如き熱可塑性樹脂を含む。好ましくは、カテーテル102は、患者の体にある生理的状況にさらされて柔らかくなる熱可塑性の親水性ポリウレタンから形成されている。カテーテルハブ104のための適当な材料は、限定されないけれども、ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリプロピレンなどの如き熱可塑性の高分子樹脂を含む。
【0038】
カテーテルアセンブリー100はまた、上方を向く斜面によって画成された鋭い末端側尖端と、取手部、すなわち針ハブ108に固定状態で結合されてカテーテル102内に配される基端とを有する中空の導入針106を含む。この導入針106は、ステンレス鋼から好ましくは形成され、カテーテルおよび導入針アセンブリー100の長手方向軸線に概ね平行な長手方向軸線を有している。カテーテルハブ104を形成するのに用いられる同じ種類の材料から取手部108を形成することができるが、他の材料もまた、取手部108を形成するために用いることができる。
【0039】
このカテーテルアセンブリー100は、針シールド110および弾性クリップ112を付加的に含む。一実施形態によると、弾性クリップ112は、V字形状か、W字形状のクリップ112であってよい。弾性クリップ112は、記憶特性を有するステンレス鋼から好ましくは形成される。しかしながら、ニチノール,共重合ポリエステル,ポリプロピレンまたは他の延伸性プラスチックの如き他の可撓性で強い弾性材料もまた、弾性クリップ112を形成するために使用できることを当業者によって理解されよう。カテーテルハブ104を形成するのに用いられる同じ種類の材料から針シールド110を形成することができるが、他の材料もまた、針シールド110を形成するために用いることができる。針シールド110は、末端開口111および基端開口113(
図6および
図7にそれぞれ最も良く示される)を有し、これらを通って導入針106が配されている。
【0040】
初めに、例示したすぐ使える状態において、針シールド110は取手部108内に置かれると共にこの針シールド110の末端131がカテーテルハブ104内に置かれ、針シールド110をカテーテルハブ104に対して中心に置くのを助ける。この末端131はまた、アセンブリー100が患者に挿入されている時、導入針106のための安定性と、カテーテルハブ104のための血液保持とを与える。
【0041】
一実施形態によると、可撓性テザー134は取手部108と針シールド110とを結合する。しかしながら、
図9以外のすべてにおいて、テザー134は明瞭性のために図面から省略されている。この後、より詳しく詳細に論じられるように、当業者は、取手部108と針シールド110とを結合するための他の手段、例えば導入針106にある隆起部および弾性クリップ112の対応する掛け金機能か、針シールド110におけるワッシャ型の機能が本発明の範囲から逸脱することなく用いられ得ることを認識しよう。
図7に最も良く示されるように、針シールド110における溝130は、カテーテルハブ104のルアー突起部128と協力し、カテーテルハブ104に対する針シールド110の回転を阻止する。
【0042】
カテーテルアセンブリー100の作業に関し、この後、より詳しく詳細に記述されるように、
図3および
図4は、第1の付勢位置および第2の非付勢またはより少ない付勢位置における弾性クリップ112をそれぞれ例示している。一実施形態によると、弾性クリップは第2の位置では付勢されない。
図3および
図4に示されるように、弾性クリップ112は、針シールド110の弾性クリップ112を固定するための固定部114を含み、弾性クリップが動く場合、これが導入針106およびカテーテル102の長手方向に対してほぼ直交する方向に動くようになっている。
【0043】
弾性クリップ112はまた、 傾斜部116に対してほぼ直角に突出する針ブロッカー、すなわち横断バリア118を持った傾斜部116を含む。一実施形態によると、この傾斜部116はV字形状である。図示した実施形態によると、針ブロッカー118は、傾斜部116の末端部から突出している。他の実施形態によると、針ブロッカー118は、傾斜部116の基端部から突出する。
図3および
図4に示されるように、針ブロッカーはV字形状の傾斜部の一方側(すなわちV字形状の一方のアーム)からのみ突出している。また他の実施形態によると、針ブロッカー118は、傾斜部118の両側から傾斜部118の中央に向けて突出する。片持ちアーム120はまた、傾斜部116から突出し、フィンガー、すなわち爪122は、この片持ちアーム120の自由な末端から径方向内側に突出している。弾性クリップ112はまた、片持ちアーム120を強化するための強化または補強リブ121をも含む。同様な弾性クリップのさらなる詳細を前述の特許文献1にて見いだすことができる。
【0044】
例示されたすぐ使える状態における
図2,
図5および
図6を参照すると、針シールド110はカテーテルハブ104の基端部に配されている。固定部114は、針シールド110のキャビティ124内に固定して配されている。一実施形態によると、導入針106は傾斜部116の側面に直接接触し、弾性クリップ112を第1の、すなわち付勢位置に保持している。
【0045】
導入針106と弾性クリップ112の傾斜部116との間の接触は、その境界面にて垂直力を発生させる。この垂直力は、導入針106と、針シールド110の末端開口および基端開口との間の結果として生ずる垂直力によって阻まれる。使用中、導入針106が基端側に引っ込められると、これら3つの境界面(すなわち導入針106と末端開口111および基端開口113との間ならびに導入針106と傾斜部116との間)での摩擦力があり、これらの反作用的摩擦力は基端側の方向に向けられよう。これらの摩擦力は、3つの境界面での垂直力および摩擦係数に対して比例する。針シールド110と針ハブ108との間の直接的接触摩擦(もしあれば)と、針ハブ108が基端方向に動く時にテザー134によって作り出される基端側の力とに加え、これらの摩擦力は、針シールド110を基端側の方向に引っ張るように作用する。この後、より詳しく詳細に記述されるように、導入針106の引き込み中での針シールド110に対する基端方向への力の総和は、(爪122とカテーテルハブ104の連続した外面部126との間の相互作用によって主に作り出される)針シールド110に対する末端方向の力の総和よりも小さく、これによって弾性クリップ112が作動するまで針シールド110をカテーテルハブ104と接触状態に保持し、導入針106の鋭い末端の意図しない露出が回避される。
【0046】
図6に最も良く示されるように、他の実施形態によると、肉薄で可撓性の片持ち延長部、すなわちフィン123は、針シールド110から針シールド110の中心軸線に向けて径方向内側に突出して傾斜部116の側面に対して支えられ、傾斜部116と導入針106との間に介在する。金属と金属との間の摩擦係数は、金属と針シールド110およびフィン123を形成するために用いられる材料または材料群、例えばポリカーボネートやポリスチレンおよびポリプロピレンなどの如き熱可塑性高分子樹脂との間の摩擦係数よりも大きい。従って、(およそ0.5~0.6の摩擦係数を持つ)傾斜部116に直接接触する導入針106との比較において、フィン123は導入針106との摩擦接触をおよそ0.25~0.4の摩擦係数へと低減させる。導入針106は、弾性クリップ112を第1の、すなわち付勢位置にフィン123を介して保持する。
【0047】
他の実施形態によると、フィン123と導入針106との間の摩擦をさらに減らすため、シリコーン潤滑剤の如き潤滑剤がフィン123に配されている。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の潤滑油が用いられ得ることを理解しよう。加えて、
図6に示すように、導入針は開口111を通って導入針106に接触してこれを案内する針シールド110の末端部125に突出している。針シールド110の基端部にある(
図7で見ることができる)開口113はまた、導入針106に接触してこれを案内する。一実施形態によると、潤滑剤を導入針106および/または針シールド110(例えば2つの開口111および113に)に用いることができ、針シールド110と導入針106との間の摩擦を低減する。
【0048】
片持ちアーム120は、カテーテルハブ104に向けて径方向に突出する爪122が撓められるか、曲げられ、カテーテルハブ104の連続した外面部126に摩擦接触するようになっており、これによって針シールド110をカテーテルハブ104と共に摩擦保持する。加えて、針シールド110の末端131とカテーテルハブ104との間の接触は、ルアー突起部128と針シールド110との間の接触と同様に、針シールド110をカテーテルハブ104と共に摩擦保持する役割を果たすことができる。これらの保持力の合計は、針シールド110をカテーテルハブ104から分離する傾向のある前述した力(例えば基端側に動く導入針106に起因するもの)の合計よりも大きくなるように選択される。
【0049】
連続した外面部126は連続して実質的に単調である。換言すれば、連続した外面部126上にはキャビティや凹部または突起が存在せず、連続した外面部126が途切れていないようになっている。連続した外面部126が滑らかであってよく、あるいは摩擦を強めるために表面網模様を与えることができる。一実施形態によると、連続した外面部126が配されたカテーテルハブ104の部分はほぼ円筒状である。
【0050】
使用中、医者や看護師や他の医療専門家または他の使用者(以下、簡潔にするために「使用者」)は、カテーテルアセンブリー100を把持し、導入針106およびカテーテル102を患者の静脈に挿入する。カテーテルを患者の静脈に配置した後、使用者は、針ハブ108を用いて導入針を基端側に引っ込め始めると同時にカテーテル102を所定位置に保持する。従って、導入針106はカテーテルハブに対して動く。連続した外面部126と相互に作用する爪122のより大きな摩擦力と、弾性クリップ112および針シールド110と相互作用する導入針106のより小さな摩擦力およびテザー134の基端側の力の合計との間の差のため、爪122は針シールド110をカテーテルハブ104と共に保持する。簡単に言うと、爪122と連続した外面部126との間の接触によって発生する摩擦力は、導入針106に対する抵抗力に打ち勝つために必要とされる力よりも大きい。換言すれば、爪122と連続した外面部126との間の摩擦抵抗は、導入針106と針シールド110との間および導入針106と弾性クリップ112との間の摩擦抵抗と、テザーの基端側の力との合計よりも大きいので、使用者が導入針106を基端側に引っ込めると、爪122は針シールド110をカテーテルハブ104と共に保持する。言い換えると、爪122と連続した外面部126との間の相互作用に起因する解除可能な保持力は、単に摩擦のみであり、この解除可能な摩擦力は、導入針が基端方向に引っ込められた場合に生ずる基端方向の力に対し、針シールド110をカテーテルハブ104と共に摩擦保持する。
【0051】
図7に示すように、一度使用者が導入針106の鋭い末端を弾性クリップ112の基端縁を通して基端側へと引っ込めると、導入針106は第1の付勢位置にある弾性クリップ112をもはや圧縮せずに保持する。結果として、弾性クリップ112が作動して導入針106の長手方向軸線に対してほぼ直交する方向へと第2の非付勢またはより少ない付勢位置(
図4に最も良好に例示される)まで横に広がり、爪122が連続した外面部126と接触せずに横に動くことをもたらす。
図8に示すように、針ブロッカー118は、導入針106の長手方向軸線を横切った位置へと動き、それによって使用者は導入針106が針ブロッカー118を通って末端側に移動することと、導入針106の鋭い末端側尖端が潜在的に再露出することとを阻止する。従って、一度弾性クリップ112が作動すると、この弾性クリップ112は、弾性クリップ112はもはや針シールド110をカテーテルハブ104と共に摩擦保持せず、弾性クリップ112は導入針がこの弾性クリップ112を通って末端側に移動するのを阻止する。
【0052】
前述したように、可撓性のテザー134は、針ハブ108と共に針シールド110に結合している。使用者が導入針を
図1に例示したすぐ使える状態から、
図7に例示したクリップ作動状態へと基端側に移動させると、テザー134はほぼその全長まで広がり、針シールド110に対する導入針106のさらなる基端側への移動を阻止する。導入針106の鋭い末端側尖端が針シールド110内に安全に収められているので、針ブロッカー118は導入針106が針シールド110に対して末端側に移動するのを阻止する。
【0053】
弾性クリップが針シールド110をカテーテルハブ104と共にもはや摩擦保持していないので、使用者が導入針106を基端側に移動させ続けると、
図9に示すように、完全に広がったテザーによって加えられる基端側の力が残っている全ての摩擦を克服して針シールド110をカテーテルハブ104から分離し、それによって薬剤または他の流体との結合のために基端側ポート103を露出させる。
【0054】
本発明の実施形態において、望ましい作業を与えるための力の釣り合いがある。例えば、爪122と連続した外面部126との間の接触摩擦力は、導入針106の初期引っ込み中に針シールド110をカテーテルハブ104と共に摩擦保持するため、導入針106および針シールド110に作用する残りの力を超えるように選択される。従って、目標は、爪とカテーテルハブとの界面の摩擦力を増大させることと、器具の他の構成部品の相互作用の摩擦力を減少させることである。弾性クリップ112の作動前にカテーテルハブ104を針シールド110と共に保持するため、カテーテルハブ104に凹部または切欠きを用いることなく、望ましい力の釣り合いを達成することによって、このアセンブリー100の製造を単純化させることができる。
【0055】
爪122と連続した外面部126との間の接触摩擦力(Ff)は、μNと等しいものとして規定され、ここでμは摩擦係数であり、Nは「垂直力」、すなわち連続した外面部126に対して垂直に(直角に)加えられる力である。従って、爪122により加えられる垂直力を増大させることにより、または連続した外面部126の摩擦係数を増大させることにより、あるいはこれらの両方により、摩擦力を増大させることができる。
【0056】
図3および
図4に示した実施形態によると、連続した外面部126に接触する爪122の端縁はほぼ直線状である。しかしながら、この接触を最適化するために爪端縁の形状を変更することができる。接触領域は摩擦方程式での用語ではないけれども、この接触領域を最適化することは、2つの部材間のより良好な機械的接触面を与えるのに役立つことができる。これは、連続した外面部126の曲率に合うように爪端を形作ることによって達成可能である。しかしながら、異なるゲージの挿入針は弾性クリップ112の傾斜部116を異なる角度へと圧縮し、従って爪122の位置決めに影響を与えよう。従って、
図3および
図4に例示された爪122の直線形状は、異なるゲージの様々な導入針と組み合わせて望ましい垂直力を与えるために最適化された形状を表している。
【0057】
爪アーム端縁条件をもまた、最適化させることができる。例えば、爪端縁を鋭利にすることができ、これはより柔らかいプラスチック材料のカテーテルハブ104に食い込むか、食い付くことで役立つことができる。加えて、片持ちアーム120が曲げられ、それで全体の摩擦力が増大するように、より大きな垂直力を連続した外面部126に与える付加的な強化リブまたはガセットの如き機能を用い、片持ちアーム120を強化することができる。さらに、より大きな爪アーム偏倚角がもたらされるように、爪122の高さ、すなわち長さを調整することができる。爪がより高い場合、片持ちアーム120はさらに曲がらなければならず、それによってより大きな垂直力、従ってより大きな摩擦力をもたらす。
【0058】
片持ちアーム120の曲げを増大するため、連続した外面部でのカテーテルハブ104の径を増大させることができ、これによって垂直力および結果として生ずる摩擦力を増大させる。爪122の尖端をもまた、金属のみで与えられるものよりも高い摩擦係数を有する材料、例えばゴム配合物によって被覆することができる。加えて、摩擦係数および結果として生ずる摩擦力を増大させることができるより大きな表面粗さを与えるように、連続した外面部126を形成するか、処理するか、または加工する(例えば機械加工する)ことができる。さらにまた、連続した外面部126は、2段成型作業にてカテーテルハブ104のプラスチックを覆って射出されるコーティング、すなわち第2の材料を有することができる。例えば、このようなコーティング、すなわち第2の材料は、ゴムまたは軟質プラスチックコーティングであってよい。ゴムと金属との間の摩擦係数を1に近づけることができ、それによって垂直力をより高い摩擦保持力へとより効率的に転換する。
【0059】
金属とプラスチックとの間の摩擦係数は、0.25と0.4との間で変動する可能性がある。連続した外面部126に対する爪122の予測垂直力は、おおよそ0.4ニュートンから1.4ニュートンであり、平均で大体0.8ニュートンから1ニュートンである。上述した要因に加え、他の要因もまた、これらの予測に含まれる。例えば、導入針106とカテーテル102との間の初期摩擦(尖端凝着力およびカテーテル抵抗力)と、作業中における片持ちアーム120の屈曲と、他の材料の変形と、爪122が連続した外面部126に食い付くことと、爪122と連続した外面部126との間のびびりとは、爪-カテーテルハブ保持力を与えるため、すべて相互に算入する。
【0060】
他の器具の構成部品の相互作用の摩擦力を減少させるため、いくつかの方法がある。例えば、フィン123に対して前述したようなものである。器具の構成部品が相互作用するところに注油を行うことができる。静止乾燥状態でのプラスチックとプラスチックとの間の摩擦係数は、0.3と0.4との間で変動する可能性がある。注油があれば、この量をほとんど排除することができる。このようなプラスチック-プラスチック潤滑の良好な候補は、針シールド110と針ハブ108との間である。
【0061】
加えて、テザー134に代わるものがある場合、ワッシャ(他の実施形態に関して引き続き記述されるように)が針シールド110を針ハブ108と共に保持するための機構として用いられる。摩擦を低減するため、注油およびワッシャ端縁の仕上げレベルおよび導入針106の仕上げをすべて最適化することができる。さらに、弾性クリップ112を導入針の特定のゲージ寸法に対して最適化させることができる。例えば、より小さなゲージの導入針106に対し、より大きな導入針ほど弾性クリップ112が圧縮されない。従って、より小さなゲージの導入針に対して適切な降伏力を与えるため、弾性クリップ112をより薄く作ることができる。より薄い弾性クリップ112は、より小さな垂直力を導入針106に与えよう。より太いゲージの導入針に対し、弾性クリップ112は、より大きな横移動に耐える。材料の厚みおよび弾性クリップ112の硬さは、適切な復元力を与える一翼を担うが、結果として針に加えられる力が増大する。
【0062】
図10は、他のカテーテルアセンブリーの実施形態の底面を拡大して一部を破断した立体投影図である。この実施形態およびその後に記述される他の実施形態のため、これら実施形態の対応する部材を示すすべての参照符号は、これらが異なる系列、例えば100番台または200番台にあることを除き、
図1~
図9の実施形態におけるそれらの参照符号と同じである。第1の実施形態に対する第2実施形態の相違がこれから記述されよう。
【0063】
すでに述べたように、偶然の針刺しからの使用者の保護は関心事である。それで、径方向に突出する一体的な突起の形態での使用不可機能232は、作動していない弾性クリップ212を結果として生ずるように使用者が器具を不適切に使用した場合、カテーテルハブ204の基端に配される。他方、この使用不可機能232は、針シールド210およびカテーテルハブ204が分離することを阻止できない。十分な力を加えることにより、使用不可機能232にもかかわらず、針シールド210をカテーテルハブ204から分離することが実際に可能であり、この場合、クリップ212が作動していないので、針尖端(図示せず)が針ブロッカー218によって捕捉されない。
【0064】
初めに、爪222は、弾性クリップ112が第1の付勢位置にある時、爪222と軸線方向に整列する使用不可機能232から或る距離にて連続した外面部226と接触する。導入針206の引き戻し中の場合、使用者が針ハブ208の代わりに針シールド210を間違って把持し、カテーテルハブに対して針シールド210を爪222が使用不可機能232と接触するような十分遠い距離に動かし、使用不可機能232は、カテーテルハブ204に対する針シールド210のさらなる運動に抵抗することによって器具200を使用不可にしよう。第1の実施形態の場合のように、針シールド210の溝230が突出部228と協力し、カテーテルハブ204に対する針シールド210の回転を阻止する。
【0065】
しかしながら、十分な力がある場合、爪222は使用不可機能232を通って基端側に押し付けられ、弾性クリップが作動しないので、鋭い末端の針尖端の意図しない露出を結果として生ずる可能性がある。一実施形態によると、このように使用不可機能232を乗り越えるか、無効にするために必要とされる力は14~17ニュートン(3.1~3.8重量ポンド)の間である。この力は、導入針206をカテーテルハブ204から適切に引き戻すために要する力よりも実質的に大きく、それはおよそ0.03~0.06ニュートン(0.007~0.013重量ポンド)である。従って、使用不可機能232を無効にすることが可能であるけれども、これは、このような誤った使用に対する妨害と同様、使用者に対して誤った使用の触覚および/または可聴指標としても機能する。前述した実施形態の場合のように、カテーテル202から引き戻される導入針206によって引き起こされる力に対し、針シールド210をカテーテルハブ204と共に保持する爪222と使用不可機能232との間の何らかの相互作用と言うよりはむしろ、爪222と連続した外面部226との間の相互作用に主として起因する摩擦力である。
【0066】
図1~
図10の実施形態において、カテーテルハブの基端の形状はほぼ円筒状である。しかしながら、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく他の形状を用いることができることを認識しよう。例えば、
図11に示すように、静脈カテーテルアセンブリー300は、円筒状の中央部304Aと基端側で先細となる基端部304Bとを持ったカテーテルハブ304を含む。一実施形態によると、このテーパーは、カテーテルハブ304の中央長手方向軸線から測っておよそ1.3°(およそ2.6°の合計角度)である。
図11に示した実施形態において、連続した外面部326は先細にされた基端部304Bに配されている。一実施形態によると、カテーテルハブ304の中央長手方向軸線に対し、この軸線の上方の使用不可機能332の高さは、円筒状の中央部304Aのそれとほぼ同じである。
【0067】
他の形状もまた、カテーテルハブの基端のために用いることができる。例えば、この基端を逆方向に先細にする(基端に向けてより大きくなった直径を持つ)ことができ、あるいは基端は円筒状であるが、カテーテルハブの中央部に対して減少した径を有することができる。さらに、断面において、カテーテルハブの基端は三角形か、四角形か、五角形か、六角形か、あるいは他の任意の規則的または不規則な幾何学的形状を有することができる。加えて、弾性クリップの片持ちアームの形状および長さおよび厚みならびに位置は、爪の形状および厚さならびにカテーテルハブの表面模様と同様に、爪とカテーテルハブとの間の望ましい摩擦の相互作用を与えるため、さまざまであってよい。一実施形態によると、連続した外面部の模様は、放電加工(EDM)された表面模様仕上げである。
【0068】
図12に示した実施形態において、カテーテルハブ404は安定化ウイングを含まないが、静脈カテーテルアセンブリー400での流体流れの動作を選択的に制御するための血液制御機構440を含む。血液制御機構440は隔膜442および中空のアクチュエーター444を含む。手短に言うと、隔膜442は、例えば使用者がルアーコネクターをカテーテルハブ404と結合することにより、アクチュエーター444を末端側に移動させるまで、カテーテルハブ404をシールする。このような移動は、隔膜442を開いてカテーテルハブ404を通る流体の流れを可能にする。さらに、この隔膜は軸線方向の通路446を含み、これは流体ではなく空気の通過を可能にする所定の大きさに作られている。血液制御機構は、例えば本出願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第8388583号により詳しく詳細に記述され、その全体を参照することによってここに組み入れられる。
【0069】
図12に示した実施形態において、弾性クリップは、隔膜442に対して基端側に配されている。加えて、このアセンブリー400において、テザーよりはむしろワッシャ450をアセンブリー400は含み、導入針406は、径方向突起(図示せず)をその末端側尖端の近傍に含み、これは針引き抜き中に弾性クリップ412を基端側に通過する導入針406の末端側尖端に続くワッシャ450に係合している。ワッシャ450の貫通孔は、ここを通る径方向突起の通過を可能にするのに十分大きくない。従って、導入針406の鋭い末端側尖端が弾性クリップ412を基端側に通過した後、弾性クリップ412が作動して第2の位置へと横に移動して針ブロッカー418を導入針の通路に配し、針シールド412に対する導入針406の末端側への引き続きの移動を阻止する。ワッシャ450が針シールド412に対する導入針406のさらなる基端側への移動を阻止するので、針シールドは、導入針406の鋭い末端側尖端を取り囲み、過失による針刺しに対して保護する。
【0070】
本発明のごくわずかな実施形態のみを示して記述したけれども、本発明は記述した実施形態に限定されない。それよりはむしろ、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に対して変更を行うことができることは当業者らによって認識されよう。上述した種々の典型的な実施形態の種々の構成要素の種々の技術的な形態を多くの別な方法にて当業者らが容易に組み合わせることができ、そのすべてが本発明の範囲内にあって、添付した特許請求の範囲およびそれらの均等物によって規定されることを特に言及しておく。