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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/32 20060101AFI20221118BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01T13/32
H01T13/20 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020190911
(22)【出願日】2020-11-17
(62)【分割の表示】P 2019217461の分割
【原出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086831
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】関澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 智克
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】東松 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 雄大
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-077838(JP,A)
【文献】特開昭61-045583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/32
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、
前記中心電極を絶縁保持する主体金具と、
前記主体金具に一端部が接続された母材と、前記母材の他端部に接合されたチップと、を備える接地電極と、を備え、
前記チップは、前記中心電極と火花ギャップを介して対向する放電面を備えるスパークプラグであって、
前記放電面は四角形状であって4辺には面取りが施されており、前記4辺のうち相対する2辺にはC面が形成され、前記4辺のうち相対する他の2辺にはR面が形成されたスパークプラグ。
【請求項2】
前記チップは、溶融部を介して前記母材に接合され、
前記溶融部は、前記他端部の端面と同じ方向を向く前記チップの側面から前記チップの反対側の側面へ向かって設けられ、
前記放電面に垂直な方向の前記溶融部の厚さは、前記放電面に沿って前記端面から離れるにつれて薄くなり、
前記放電面の2つの前記C面の大きさは異なり、小さい方のC面が、前記端面の側に配置されている請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記チップは、溶融部を介して前記母材に接合され、
前記溶融部は、前記他端部の端面と同じ方向を向く前記チップの側面から前記チップの反対側の側面へ向かって設けられ、
前記放電面に垂直な方向の前記溶融部の厚さは、前記放電面に沿って前記端面から離れるにつれて薄くなり、
前記放電面の2つの前記R面は、片方のR面が、前記端面の側に配置されている請求項1記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグに関し、特に母材にチップが接合された接地電極を備えるスパークプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
接地電極のチップと中心電極との間に火花ギャップが形成されるスパークプラグにおいて、特許文献1には、放電面が四角形状のチップを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、接地電極と中心電極との間に電位差が生じると、チップの放電面の辺の付近に電界が集中するので、放電面の辺の付近と中心電極との間に放電が生じ易い。チップの放電面の4辺のうちいずれか1辺の付近に放電が集中すると、チップの特定の1辺の付近が発熱する。発熱によって局所的な熱応力が大きくなると、チップの破壊や剥離の原因となるおそれがある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、熱応力によるチップの破壊や剥離を抑制できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、中心電極と、中心電極を絶縁保持する主体金具と、主体金具に一端部が接続された母材と、母材の他端部に接合されたチップと、を備える接地電極と、を備えている。チップは、中心電極と火花ギャップを介して対向する放電面を備え、放電面は四角形状であって4辺には面取りが施されており、4辺のうち相対する2辺にはC面が形成され、4辺のうち相対する他の2辺にはR面が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のスパークプラグによれば、チップの放電面は四角形状であって4辺には面取りが施されている。4辺のうち相対する2辺にはC面が形成され、4辺のうち相対する他の2辺にはR面が形成されている。接地電極と中心電極との間に電位差が生じると、チップの放電面の4辺のうち、R面が形成された2辺の付近に比べて、C面が形成された2辺の付近に電界が集中し易くなる。その結果、相対する2辺のC面の付近に放電が生じ易くなる。C面が形成された2辺の両方に放電が分散し易くなるので、特定の1辺の付近に放電が集中することがなくなり、チップの熱応力が局所的に大きくならないようにできる。よって、熱応力によるチップの破壊や剥離を抑制できる。
【0008】
請求項2記載のスパークプラグによれば、チップの放電面の2つのC面の大きさは異なり、小さい方のC面が、母材の端面の側に配置されている。接地電極と中心電極との間に電位差が生じると、小さい方のC面に電界が集中し易くなるので、母材の端面の側に配置されたC面の付近に放電が生じ易くなる。母材の端面近くのC面の付近の放電によって生じる火炎核は、エネルギーが母材に奪われ難いので、火炎核が成長し易くなり、着火性を向上できる。
【0009】
一方、チップのうち母材の端面の側に配置されたC面の付近は、放電の頻度が高くなり発熱し易くなるので、熱応力が大きくなり易い。母材にチップを接合する溶融部は、母材の端面から放電面に沿って設けられ、放電面に垂直な方向の溶融部の厚さは、放電面に沿って母材の端面から離れるにつれて薄くなる。よって、チップのうち母材の端面に近い部位の熱応力は溶融部によって緩和され易くなる。従って、請求項1の効果に加え、熱応力に起因する溶融部の破壊やチップの剥離を抑制できる。
【0010】
請求項3記載のスパークプラグによれば、C面に比べて放電の頻度が低い2つのR面は、片方のR面が母材の端面に最も近い位置にあり、もう片方のR面が母材の端面から最も遠い位置にある。R面に比べて放電の頻度が高くなるチップのC面は、母材の他端部から一端部へ向かう方向に沿って配置されている。C面の付近の放電によって生じる火炎核はエネルギーが母材に奪われ難いので、火炎核が成長し易くなり、着火性を向上できる。
【0011】
また、チップを母材に接合する溶融部は、母材の端面から放電面に沿って設けられる。放電面に垂直な方向の溶融部の厚さは、放電面に沿って端面から離れるにつれて薄くなるので、それに伴い、チップの熱応力は緩和され難くなる。しかし、母材の端面から最も遠い位置に、放電の頻度が低いチップのR面があるので、チップのうち母材の端面から最も遠い部位の、放電によって生じる熱応力を小さくできる。よって、請求項1の効果に加え、熱応力に起因する溶融部の破壊やチップの剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
図2】接地電極の平面図である。
図3図2のIII-III線における接地電極の断面図である。
図4図2のIV-IV線における接地電極の断面図である。
図5】第2実施の形態におけるスパークプラグの接地電極の平面図である。
図6図5のVI-VI線における接地電極の断面図である。
図7図5のVII-VII線における接地電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極15、主体金具20及び接地電極30を備えている。
【0014】
絶縁体11は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材である。絶縁体11には、軸線Oに沿って延びる軸孔12が形成されている。絶縁体11の軸線方向のほぼ中央には、径方向の外側へ向かって張り出す円環状の張出部13が形成されている。絶縁体11は、張出部13よりも先端側に、軸線方向の先端側に向かうにつれて外径が小さくなる段部14が設けられている。絶縁体11の軸孔12の先端側に、中心電極15が配置されている。
【0015】
中心電極15は、軸線Oに沿って絶縁体11に保持される棒状の電極である。中心電極15は、熱伝導性に優れる芯材が母材16に埋設されている。母材は、Niを主体とする合金またはNiからなる金属材料で形成されている。芯材は、銅または銅を主成分とする合金で形成されている。芯材は省略できる。母材16の先端に、貴金属を含有するチップ17が接合されている。チップ17は省略できる。
【0016】
中心電極15は、絶縁体11の軸孔12の中で端子金具18と電気的に接続されている。端子金具18は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。
【0017】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された、軸線Oに沿って延びる略円筒状の部材である。主体金具20は、絶縁体11の張出部13よりも先端側の部分を囲む先端部21と、先端部21の後端側に連なる座部23と、座部23の後端側に設けられた工具係合部24と、工具係合部24の後端側に連なる後端部25と、を備えている。先端部21の外周面には、先端部21の軸線方向のほぼ全長に亘って、エンジン(図示せず)のねじ穴に螺合するおねじ22が形成されている。先端部21の内周には、軸線方向の先端側に向かうにつれて内径が小さくなる棚部26が設けられている。
【0018】
座部23は、エンジンに対するおねじ22のねじ込み量を規制すると共に、おねじ22とねじ穴との隙間を塞ぐための部位である。工具係合部24は、エンジンのねじ穴におねじ22をねじ込むときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。後端部25は、径方向の内側へ向けて屈曲する円環状の部位である。後端部25は、絶縁体11の張出部13よりも後端側に位置する。
【0019】
絶縁体11の張出部13と主体金具20の後端部25との間に、タルク等の粉末が充填されたシール部27が全周に亘って設けられている。絶縁体11の段部14と主体金具20の棚部26との間に、金属製の円環状のパッキン(図示せず)が介在する。主体金具20の先端部21には接地電極30が接続されている。
【0020】
接地電極30は、導電性を有する金属材料(例えばNi基合金等)によって形成された母材31と、母材31に接合されたチップ34と、を備えている。母材31は、主体金具20に接合された一端部32と、チップ34が接合された他端部33と、を備える棒状の部材である。チップ34は、例えばPt,Rh,Ir,Ru等の貴金属のうちの1種または2種以上を含む化学組成を有する。貴金属を含有するチップ34は、溶融部35を介して母材31に接合されている。接地電極30のチップ34の放電面36と中心電極15との間に火花ギャップ37が形成される。
【0021】
スパークプラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、中心電極15を絶縁体11の軸孔12に配置する。次いで、中心電極15と端子金具18との導通を確保しながら、絶縁体11の軸孔12に端子金具18を挿入する。次に、予め接地電極30が接続された主体金具20に絶縁体11を挿入し、主体金具20の棚部26から後端部25までの部分が、絶縁体11の段部14から張出部13までの部分に、シール部27及びパッキン(図示せず)を介して軸線方向の圧縮荷重を加える。これにより絶縁体11は主体金具20に保持される。次いで、接地電極30の母材31を屈曲して火花ギャップ37を形成し、スパークプラグ10を得る。
【0022】
図2は接地電極30の平面図である。図2は母材31の他端部33(図1参照)が図示されており、一端部32(図1参照)の図示が省略されている。図3図2のIII-III線における接地電極30の断面図である。図4図2のIV-IV線における接地電極30の断面図である。
【0023】
図2から図4に示すように、母材31の他端部33(図1参照)は、中心電極15の側を向く第1面38と、第1面38に接続され他端部33側から一端部32(図1参照)側へ延びる一対の第2面39と、第1面38及び第2面39に接続される端面40と、第2面39及び端面40に接続される第3面41と、を備えている。第3面41は第1面38の反対側に位置する。
【0024】
母材31の第1面38には、母材31の端面40につながる凹み31aが形成されている。チップ34は凹み31aの中に配置されている。チップ34を母材31に接合する溶融部35は、チップ34の放電面36の裏面34aにおいて、母材31の端面40から放電面36に沿って設けられている。
【0025】
チップ34の放電面36は、4辺に囲まれた四角形状である。放電面36は、チップ34の側面42,43,44,45につながっている。チップ34の側面42は、母材31の端面40と同じ方向を向いている。チップ34の側面43,45は、それぞれ母材31の第2面39と同じ方向を向いている。チップ34の側面44は、チップ34の側面42の反対側に位置する。
【0026】
放電面36の4辺は、側面42,43,44,45と放電面36との交線である。本実施形態では、チップ34の放電面36の面積は中心電極15の放電面15aの面積よりも大きく、中心電極15の放電面15aの全体が、チップ34の放電面36と軸線方向に対向している。チップ34の放電面36は、本実施形態では長方形であるが、放電面36を正方形、平行四辺形、ひし形、台形などの他の四角形にすることは当然可能である。放電面36の4辺には、面取りが施されている。
【0027】
放電面36の4辺のうち相対する2辺にはC面46,47が形成されている。4辺のうち相対する他の2辺にはR面48,49が形成されている。C面46は、放電面36と側面42とをつなぐ角面である。C面46は、放電面36や側面42に交わる角度が45°であるものに限られない。C面47は、放電面36と側面44とをつなぐ角面である。C面47は、放電面36や側面44に交わる角度が45°であるものに限られない。それらの角度は0°より大きく90°より小さい任意の角度に設定される。
【0028】
本実施形態では、チップ34は、母材31の端面40に最も近い位置に片方のC面46が配置されており、母材31の端面40から最も遠い位置にもう片方のC面47が配置されている。2つのC面46,47の大きさは異なる。C面46,47の大きさは、放電面36に平行な方向における、C面46,47が形成されている辺に垂直な方向の幅のことをいう。母材31の端面40に近いC面46の大きさW1は、母材31の端面40から遠いC面47の大きさW2に比べて小さい。
【0029】
R面48,49は、母材31の第2面39に沿って配置されている。R面48は、放電面36と側面43とをつなぐ丸面または楕円面である。R面49は、放電面36と側面45とをつなぐ丸面または楕円面である。R面48,49の大きさは、R面48,49の曲率半径のことをいう。2つのR面48,49の大きさはほぼ同じであるが、異なっていても良い。
【0030】
チップ34の放電面36に垂直な方向の溶融部35の厚さは、放電面36に沿って母材31の端面40から離れるにつれて、即ち母材31の一端部32(図1参照)に近づくにつれて、薄くなっている。溶融部35のうちチップ34の側面42に接する部位の厚さは、溶融部35のうちチップ34の側面44に接する部位よりも厚い。
【0031】
溶融部35は、母材31の凹み31aの中にチップ34を配置した後、母材31の端面40の側から放電面36とほぼ平行にレーザ光を照射し、チップ34の側面42の端から端までレーザ光を走査することにより得られる。レーザ媒質は、例えばファイバーレーザ、ディスクレーザ等が挙げられるが、これに限られるものではない。溶融部35は、チップ34と母材31とが溶け合ってなる。
【0032】
スパークプラグ10の端子金具18(図1参照)と主体金具20との間に電圧を印加すると、接地電極30では、チップ34の放電面36の4辺のうち、R面48,49が形成された2辺の付近に比べて、C面46,47が形成された2辺の付近に電界が集中し易くなる。その結果、相対する2辺のC面46,47の付近に放電が生じ易くなる。C面46,47が形成された2辺の両方に放電が分散し易くなるので、チップ34の特定の1辺の付近に放電が集中することがなくなる。その結果、チップ34の特定の1辺の付近だけが発熱しないようにできる。これにより、母材31の線膨張係数とチップ34の線膨張係数との差によって生じるチップ34の熱応力が、局所的に大きくならないようにできる。よって、熱応力によるチップ34の破壊や剥離を抑制できる。
【0033】
チップ34の放電面36の2つのC面46,47のうち、小さい方のC面46が、母材31の端面40の側に配置されている。大きさが異なる2つのC面46,47を比較すると、小さい方のC面46に電界が集中し易くなるので、母材31の端面40の側に配置されたC面46の付近に放電が生じ易くなる。母材31の端面40近くに配置されたC面46の付近は、C面46に相対するC面47の付近に比べて開放されているので、C面46の付近の放電によって生じる火炎核は、エネルギーが母材31に奪われ難くなる。火炎核が成長し易くなるので、着火性を向上できる。
【0034】
一方、C面46の付近の放電の頻度が高くなると、C面46の付近が発熱し易くなるので、チップ34のC面46の付近の熱応力が大きくなり易い。しかし、放電面36に垂直な方向の溶融部35の厚さは、放電面に沿って母材31の端面40に近づくにつれて厚くなっており、溶融部35のうちチップ34の側面42に接する部位の厚さは、溶融部35のうちチップ34の側面44に接する部位よりも厚いので、チップ34のC面46の付近の熱応力は溶融部35によって緩和され易くなる。従って、熱応力に起因する溶融部35の破壊やチップ34の剥離を抑制できる。
【0035】
図5から図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、チップ34の相対する2つのC面46,47が、母材31の端面40に最も近い位置および端面40から最も遠い位置に配置される場合について説明した。これに対し第2実施形態では、チップ51の相対する2つのR面53,54が、母材31の端面40に最も近い位置および端面40から最も遠い位置に配置される場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0036】
図5は第2実施の形態におけるスパークプラグの接地電極50の平面図である。図6図5のVI-VI線における接地電極50の断面図である。図7図5のVII-VII線における接地電極50の断面図である。接地電極50は、第1実施形態におけるスパークプラグ10の接地電極30に代えて、主体金具20に接続される。図5は接地電極50の母材31の他端部33(図1参照)が図示されており、一端部32(図1参照)の図示が省略されている。
【0037】
図5から図7に示すように接地電極50のチップ51は、母材31に形成された凹み31aの中に配置されている。チップ51を母材31に接合する溶融部35は、チップ51の放電面52の裏面51aにおいて、母材31の端面40から放電面52に沿って設けられている。
【0038】
チップ51の放電面52は、4辺に囲まれた四角形状である。放電面52の4辺は、チップ51の側面42,43,44,45と放電面52との交線である。本実施形態では、チップ51の放電面52の面積は中心電極15の放電面15aの面積よりも大きく、中心電極15の放電面15aの全体が、チップ51の放電面52と軸線方向に対向している。放電面52の4辺には、面取りが施されている。
【0039】
放電面52の4辺のうち相対する2辺にはR面53,54が形成されている。4辺のうち相対する他の2辺にはC面55,56が形成されている。本実施形態では、チップ51は、母材31の端面40に最も近い位置に片方のR面53が配置されており、母材31の端面40から最も遠い位置にもう片方のR面54が配置されている。2つのR面53,54の大きさは、ほぼ同じである。R面53は、放電面52と側面42とをつなぐ丸面または楕円面である。R面54は、放電面52と側面44とをつなぐ丸面または楕円面である。
【0040】
C面55,56は、母材31の第2面39に沿って配置されている。C面55は、放電面52と側面43とをつなぐ角面である。C面55は、放電面52や側面43に交わる角度が45°であるものに限られない。C面56は、放電面52と側面45とをつなぐ角面である。C面56は、放電面52や側面45に交わる角度が45°であるものに限られない。それらの角度は0°より大きく90°より小さい任意の角度に設定される。本実施形態では、C面55,56の、放電面52に平行な方向における大きさはほぼ同じであるが、異なっていても良い。
【0041】
スパークプラグ10の端子金具18(図1参照)と主体金具20との間に電圧を印加すると、接地電極50では、チップ51の放電面52の4辺のうち、R面53,54が形成された2辺の付近に比べて、C面55,56が形成された2辺の付近に電界が集中し易くなる。その結果、相対する2辺のC面55,56の付近に放電が生じ易くなる。C面55,56が形成された2辺の両方に放電が分散し易くなるので、チップ51の特定の1辺の付近に放電が集中することがなくなる。その結果、チップ51の特定の1辺の付近だけが発熱しないようにできる。これにより、母材31の線膨張係数とチップ51の線膨張係数との差によって生じるチップ51の熱応力が、局所的に大きくならないようにできる。よって、熱応力によるチップ51の破壊や剥離を抑制できる。
【0042】
C面55,56に比べて放電の頻度が低い2つのR面53,54は、片方のR面53が母材31の端面40に最も近い位置にあり、もう片方のR面54が母材31の端面40から最も遠い位置にある。R面53,54に比べて放電の頻度が高くなるチップ51のC面55,56は、母材31の第2面39に沿って配置されている。母材31の第2面39は開放されているので、C面55,56の付近の放電によって生じる火炎核は、エネルギーが母材31に奪われ難くなる。火炎核が成長し易くなるので、着火性を向上できる。
【0043】
また、放電面52に垂直な方向の溶融部35の厚さは、放電面52に沿って母材31の端面40から離れるにつれて薄くなるので、それに伴い、チップ51の熱応力は緩和され難くなる。しかし、母材31の端面40から最も遠い位置に、放電の頻度が低いチップ51のR面54が配置されているので、チップ51のうち母材31の端面40から最も遠い部位の、放電によって生じる熱応力を小さくできる。よって、チップ51の熱応力に起因する溶融部35の破壊やチップ51の剥離を抑制できる。
【0044】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0045】
実施形態では、接地電極30,50の母材31の凹み31aにチップ34,51が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。母材31に凹み31aを形成することなく、母材31の第1面38にチップ34,51を配置し接合することは当然可能である。
【0046】
実施形態では、接地電極30,50の母材31の端面40側からレーザ光を照射して溶融部35を形成し、チップ34,51を接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、母材31の第2面39の側からレーザ光を照射したり母材31の第3面41の側からレーザ光を照射したりして溶融部を形成し、チップ34,51を母材31に接合することは当然可能である。また、レーザ溶接によって母材31にチップ34,51が接合されるものに限られない。抵抗溶接によって母材31にチップ34,51を接合することは当然可能である。
【0047】
実施形態では、チップ34,51の放電面36,52が中心電極15の放電面15aより大きい場合について説明したが、これに限られるものではない。チップ34,51の放電面36,52を中心電極15の放電面15aより小さくすることは当然可能である。この場合、中心電極15の放電面15aの一部が、チップ34,51の放電面36,52と軸線方向に対向している。
【0048】
第2実施形態では、チップ51の放電面52の相対する2辺に形成されたR面53,54の大きさがほぼ等しい場合について説明したが、これに限られるものではない。R面53,54の大きさを異ならせることは当然可能である。R面53,54の大きさが異なる場合には、R面が小さい方(曲率半径が小さい方)に放電が生じ易くなるので、放電面52の4辺の付近の放電の頻度を任意に設定できる。R面53,54の大きさを異ならせる場合には、母材31の端面40の側に配置されたR面53を小さくすることが好ましい。R面53の付近の放電の頻度が高まりチップ51の熱応力が局所的に大きくなっても、厚い溶融部35によって熱応力が緩和されるからである。
【符号の説明】
【0049】
10 スパークプラグ
15 中心電極
20 主体金具
30,50 接地電極
31 母材
32 母材の一端部
33 母材の他端部
34,51 チップ
35 溶融部
36,52 放電面
37 火花ギャップ
40 母材の端面
46,47,55,56 C面
48,49,53,54 R面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7