(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】被験者に振動の感覚を提供するための装置、及びこのような装置を医療装置として治療、特に被験者の癌治療に使用するための使用
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
A61H23/02 340
(21)【出願番号】P 2020537124
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 NL2018050614
(87)【国際公開番号】W WO2019054877
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-03-23
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520093621
【氏名又は名称】ソヌス ヘルス ベスローテン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】SONUS HEALTH B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】ベイブレン、アテ、リツマ
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-168600(JP,A)
【文献】特開平07-255808(JP,A)
【文献】特開2001-293057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に被験者の身体において振動の感覚を提供するための装置であって、
前記装置は、椅子、ベッド、又は他のタイプの家具であり、
前記装置は、被験者の身体の少なくとも一部分を支持する支持面を有する支持部材を備え、
前記支持部材は枕であり、前記支持部材は剛性フレーム上に載置され、
前記支持部材は、波動を生成して前記支持面を介して被験者の身体に伝播させるための手段を有する、装置であって、
前記波動生成伝播手段は、音波を生成して被験者の身体に支持面の各位置において伝播させ得る複数の音響トランスデューサを備え、前記各位置のそれぞれは、複数の前記トランスデューサの1つに関連付けられ、
複数の前記トランスデューサのそれぞれは独立して制御可能であり、これにより、音波を生成して複数の前記トランスデューサの1つに関連付けられた前記支持面の各位置へ伝播させることが独立してなされ得て、
前記支持部材は、複数の前記音響トランスデューサのそれぞれと前記支持面との間において材料層を備え、
前記材料層は、音波を通過させて被験者の身体に到達することを許容しつつ、前記音響トランスデューサから前記材料層へ伝播される振動を吸収するように適合され
、
前記支持部材に設けられた前記音響トランスデューサのそれぞれは、前記音響トランスデューサの、前記音響トランスデューサから前記材料層へ伝播される振動を吸収するように適合された材料層により、前記フレームから離間し、
前記音響トランスデューサのそれぞれは、前記音響トランスデューサの、前記音響トランスデューサから前記材料層へ伝播される振動を吸収するように適合された材料により、全方向において包囲される、装置。
【請求項2】
前記材料は、発泡ゴム又はポリエーテルである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記音響トランスデューサを備える前記波動生成伝播手段が、25‐120Hzの周波数範囲の音波を生成して伝播させ得る、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
複数の前記トランスデューサのそれぞれについて、音波を通過させて被験者の身体に到達することを許容しつつ前記音響トランスデューサから前記材料層へ伝播される振動を吸収するように適合された前記材料層の厚さは、複数の前記トランスデューサのそれぞれの前記各位置に応じて適合される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記支持部材に設けられた前記少なくとも1つのトランスデューサの音波出力を制御するように適合された制御手段を備える、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、プロセッサ、データメモリ、電源、通信ユニット、インターフェース、及びディスプレイのうちの1つ以上を備える、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に被験者の身体において振動の感覚を提供するための装置に関する。装置は、被験者の身体の少なくとも一部分を支持するための支持面を有する支持部材を備える。支持部材は、波動を生成して支持面を介して被験者の身体に伝播させるための手段を有する。
【背景技術】
【0002】
身体に感じられる振動の経験は、被験者や人に有益な効果をもたらす可能性があることが示されている。例えば、振動の感覚は、被験者の身体に緩和状態又は興奮状態を引き起こし得る。したがって、被験者の身体に振動を提供する多くの装置が開発されてきた。例えば、振動要素を設けたベッドや椅子がよく知られており、知覚可能な振動は、振動要素によりベッドや椅子の支持面に寝ている又は座っている被験者の身体に伝達される。振動要素は、マッサージチェアやベッドのように、被験者にくつろいだ感覚や心地良い感覚を提供するものとして知覚され得る機械的振動を提供し得る。しかしながら、多くの用途、特に治療用途において、そのような機械的振動は、被験者に悪影響を及ぼし得ることがわかっている。例えば、被験者は、振動する支持面上で、乗り物酔いやストレスの増加を感じる場合がある。
【0003】
動いている又は揺れている支持面からの機械的振動に代えて、音波発生手段から身体に伝播させた音波から、被験者は被験者の身体に振動の感覚を体験することもある。音波は、長年治癒や治療に役立つと考えられている。音波が身体に及ぼす影響は広く調査され、多くの点で身体に影響を与え得る振動エネルギーの潜在的な発生源とみなされている。研究によれば、ユーザの身体の各臓器や器官は、特定の理想的な周波数を有している。音波療法は、臓器や器官のこのような周波数と共鳴する音波の利用に基づいている。音波を利用する装置の既知の例は、ベッド又は椅子の支持面に寝ている又は座っている人又は被験者に音波を伝播させるための単数又は複数のトランスデューサ又はスピーカーを備えた椅子又はベッドである。トランスデューサ又はスピーカーは、被験者の臓器や器官との共振周波数で音波を伝播させるように適合され得る、又は制御され得る。このような既知の装置を用いた実験により、とりわけ音波療法が、被験者のストレスや不安を軽減し、血圧を低下させるとともに全体的な健康状態を改善するのに有効な役割を果たしているようであり、ユーザの身体の多くの特定の状態及び/又は特定の臓器又は器官の治療に使用できる可能性があることが示されている。
【発明の概要】
【0004】
既知の装置の欠点は、装置に取り付けられたトランスデューサ又はスピーカーが、多くの場合必要とされる主に低周波数の音波を生成する際に、スピーカー又はトランスデューサのハウジングに物理的振動を生成し、この振動が支持面を通ってユーザの身体に伝達されることである。このため、ユーザは、被験者に悪影響を及ぼし得るこのような物理的振動をやはり感じるかもしれない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、この欠点を克服することを目指す装置を提供することである。
【0006】
この目的のために、本発明は、添付の単数又は複数の請求項で定義した装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に、本発明によれば、被験者に被験者の身体において振動の感覚を提供するための装置であって、前記装置は、被験者の身体の少なくとも一部分を支持する支持面を有する支持部材を備え、前記支持部材は、波動を生成して前記支持面を介して被験者の身体に伝播させるための手段を有する、装置であって、前記波動生成伝播手段は、音波を生成して被験者の身体に伝播させ得る少なくとも1つの音響トランスデューサを備え、前記支持部材は、物理的な振動を吸収するように適合された材料層を備えることを特徴とする装置が提供される。このような材料層を特に少なくとも1つの音響トランスデューサと支持部材の支持面との間に設けることにより、前記トランスデューサにより生成される物理的振動は、支持面において大幅に除去されるであろう。したがって、装置のユーザが感じる物理的振動は、低減されるか又は存在しなくなることにより、物理的振動を原因としてユーザに及ぼされ得る悪影響を最小限にすることができる。少なくとも1つの音響トランスデューサと前記支持面との間の材料層は、特に、少なくとも1つの音響トランスデューサの物理的振動を、前記トランスデューサによる出力、例えば、放出される音波の周波数及び振幅又は音量に関係なく吸収するように適合され得る。このため、一定の又は交互の音波周波数、振幅、音量等を有する任意の所望の音波プログラムを、装置の支持面が振動することなく、例えば、震えたり、揺れたり、その他の態様で動いたりすることなく、採用することができる。したがって、本発明の装置を、多くの用途に、特に、治療用の医療装置として使用することができる。
【0008】
良好な振動吸収又は減衰特性を有する任意の材料を、該層に使用することができる。材料の種類の他に、材料層の厚さを、層の最適な振動吸収又は減衰特性を得るように適合させ得る。好適な実施形態において、本発明による装置によれば、前記材料層は、前記音響トランスデューサと前記支持面との間に、前記音響トランスデューサにより生成された音波を通過させて被験者の身体に到達することを許容しつつ、前記音響トランスデューサにより生成された物理的振動の前記支持面への伝達を最小にして、前記支持面上に支持されている被験者の身体の一部分の最小感知レベルよりも低いレベルにするように適合される厚さを有する。本発明による装置の更なる好適な実施形態において、層の厚さは、10‐300mmの間で変化し得るが、これはトランスデューサのサイズやタイプ、並びに層に使用される材料の種類に依存し得る。
【0009】
更なる好適な実施形態において、本発明による装置によれば、前記材料は、発泡体、特に発泡ゴム、より具体的には非音響発泡体、又は比較的低密度の発泡体、又は比較的高度な開放気泡構造を有する発泡体である。このような材料は、音波を通過させつつ、良好な振動又は衝撃吸収又は減衰特性を提供し得る。好適には、層を通過する音波は、材料で吸収されたり減衰されたりしないため、層及び支持面を介してユーザの身体に伝播させる際に、少なくとも1つのトランスデューサを制御することにより、これが生成して伝播させる音波の所望の特性、例えば、周波数及び振幅が少なくとも実質的に維持される。好適には、材料は、枕、椅子の一部、又はベッドやマットの一部等の支持部材の充填材として適当であるように選択される。層の材料は、支持部材の充填に使用される残りの材料と同じであってもよい。或いは、支持部材を主に1種の材料で充填し、層の材料は異なる材料であってもよい。
【0010】
本発明による装置の更なる好適な実施形態において、前記音響トランスデューサは、低周波スペクトル、特に25‐120Hzの周波数範囲の音波を生成して伝播させ得るとともにそのように適合される。低周波スペクトルは、ほとんどの音波療法において使用される。なぜならば、このような周波数は、ほとんどの身体部分、臓器、及び器官の共振周波数に相当するからである。装置は、聴覚スペクトルにおける音波、及び/又は被験者に聞こえる音波を生成して伝播させ得る。しかしながら、場合により及び特定の用途により、生成されて被験者に伝播させる音波は、ユーザの聴覚系で検知できない、すなわち聞こえないことが好適な場合もある。
【0011】
本発明による装置の更なる好適な実施形態において、音波を生成してユーザの身体に前記支持面の各位置において伝播させるためのトランスデューサが、前記支持部材に設けられ、前記各位置のそれぞれは、複数の前記トランスデューサの1つに関連付けられる。したがって、複数のトランスデューサのうちのいずれか又は全てを作動させることにより、装置の所望の複数の位置において、支持面を介して音波が伝播され得る。
【0012】
本発明による装置の特定の実施形態において、複数の前記トランスデューサのそれぞれは独立して制御可能であり、これにより、音波を生成して複数の前記トランスデューサの1つに関連付けられた前記支持面の各位置へ伝播させることが独立してなされ得る。したがって、複数のトランスデューサの各トランスデューサが、音波を生成して支持面の関連付けられた位置に支持されているユーザの身体の各部分に伝播させ、例えば、このような身体の部分を独立して治療できるように制御され得る、又は適合され得る。例えば、トランスデューサは、異なる周波数及び/又は振幅を有する音波を生成して伝播させるように、及び/又は開始時間、間隔、持続時間等を変更するように操作され得る、又は制御され得る。複数のトランスデューサのそれぞれは、装置の支持部材の関連付けられた支持面上で支持されたユーザの身体の部分に適合させた音波プログラムを提供し得る。また、トランスデューサを複数のトランスデューサグループにグループ分けして、1つのグループ内の各トランスデューサが同一の音波を生成してユーザの身体に伝播させてもよい。グループが、ユーザの身体の特定の部分に関連付けられてもよい。例えば、第1グループのトランスデューサがユーザの頭部に関連付けられ、第2グループのトランスデューサがユーザの胴体に関連付けられ、第3グループのトランスデューサがユーザの単数又は複数の四肢に関連付けられる。また、複数のトランスデューサは、単一の音波プログラムを、複数のトランスデューサのそれぞれが同一の音波を生成してユーザの身体に伝播させることで提供してもよい。
【0013】
本発明による装置の更なる特定の実施形態において、複数の前記トランスデューサのそれぞれについて音波を通過させて被験者の身体に到達することを許容しつつ物理的な振動を吸収するように適合された前記材料層の厚さは、複数の前記トランスデューサのそれぞれの前記各位置に応じて適合される。特に、層の厚さは、支持部材の支持面上に支持されたユーザの身体の部分から受ける圧力のレベルに応じて異なり得る。例えば、枕、椅子のマット、ソファ又はベッド等の支持部材上に横たわるユーザの身体は、支持面上での身体の位置や向きに応じて、支持面に身体の異なる部分で異なる負荷をかける。特に、ユーザの頭部、肩、肘、臀部、及び/又は足は、身体の他の部分と比較して比較的高い負荷を支持面にかけることがある。したがって、このような高い荷重をかける身体部分に関連する支持部材の各部分は、より低い荷重しかかけない身体部分に関連する支持部材の部分と比較して、当該部分に設けられたトランスデューサと支持面との間においてより厚い材料層を備え得る。代替的に又は追加的に、複数のトランスデューサの1つに関連付けられた各層について、これを形成する材料は、支持面に対して関連付けられたトランスデューサの特定の位置に適合され得る。例えば、高付加をかける身体部分に関連する支持部材の一部分に配置される層は、低負荷をかける身体部分に関連する支持部材の他の部分に配置される層とは異なる材料から構成され得る。これは、各層を介してユーザの身体に伝播させる音波の音波プロファイルを同一に維持するように、各層にかかる負荷が異なることにより層の圧縮が異なることを補償するためである。装置が、ユーザの身体の各部分に伝播させる音波の制御及び精度を最適化できることにより、ユーザの各身体部分、例えば臓器や器官に、音波の共振周波数を提供し維持できることが重要である。
【0014】
他の好適な実施形態において、本発明による装置は支持部材が枕(pillow)である。枕は、ユーザが横たわるための枕等のユーザの身体全てを支持するための枕、例えばマットであっても、例えば頭部を載せるための頭部用枕のようなユーザの身体の一部分を支持するための枕であってもよい。特に、装置は、支持面上に被験者の身体の少なくとも一部分を支持するための家具、例えば椅子又はベッドであり得る。
【0015】
本発明による装置の更なる特定の実施形態において、前記支持部材は、剛性フレーム上に載置され、前記支持部材に設けられた前記少なくとも1つの音響トランスデューサは、前記少なくとも1つの音響トランスデューサの物理的振動を吸収するように適合された材料層により、前記フレームから離間する。音響トランスデューサを、装置内の剛性部品から離間して設けることにより、使用中にトランスデューサにより生成される振動は、周囲の材料層に吸収されるため、剛性部品を介して支持面に伝達されることがないであろう。
【0016】
更なる特定の実施形態において、本発明による装置によれば、前記少なくとも1つの音響トランスデューサは、前記少なくとも1つの音響トランスデューサの物理的振動を吸収するように適合された前記材料により、全方向において包囲される。少なくとも1つのトランスデューサは、例えば、支持部材を充填する材料層の間の空間に設けても、1つの一体材料の本体に設けられたキャビティに設けてもよい。
【0017】
更なる特定の実施形態において、本発明による装置は、前記装置は、被験者の身体の少なくとも一部分を支持するための椅子、ベッド、又は他のタイプの家具である。
【0018】
本発明による装置は、装置内の少なくとも1つのトランスデューサが別の手段を介して制御されて音波を生成して伝播させるシステムの一部であり得る。しかしながら、本発明による装置の更なる特定の実施形態において、前記装置は、前記支持部材に設けられた前記少なくとも1つのトランスデューサの音波出力を制御するように適合された制御手段を備える。したがって、制御手段は装置の一部であるため、追加の別個の手段を必要とせずに、独立したユニットとして、例えば、治療用椅子又はベッド等の完全な医療装置として使用できる。
【0019】
更なる特定の実施形態において、本発明による装置は、前記装置は、プロセッサ、データメモリ、電源、通信ユニット、及びインターフェース、特にディスプレイのうちの1つ以上を備える。装置は、所望の音波治療プログラムをユーザに提供するようにプログラミングされ得る。例えば、特定の音波プログラムに関するデータを、装置のデータメモリに保存して、プロセッサで処理することにより、各所望のプログラムに応じて装置の単数又は複数のトランスデューサを作動させてもよい。音波プログラムに関するデータは、特定の状態及び/又は身体の部分のうちの特定の部分についての特定の治療に関するデータ、並びに特定のユーザに関するデータ、例えば患者データを含み得る。通信ユニットは、装置とネットワーク、例えば医療施設で使用されるようなイントラネット、又はインターネットとの間で、データの通信を可能とすることにより、例えば装置の音波プログラムデータ等のソフトウエアを自動的に又は非自動的に更新することを可能にするように装置に設けられ得る。インターフェース又はディスプレイは、ユーザ又は他の人が装置に入力するため、及び/又は任意の起動中の音波プログラムに関する情報等の出力をユーザ又は他の人に出力するための手段として設けられ得る。
【0020】
本発明による装置には多くの適切な用途があり、例えば支持面にユーザが座る又は横たわることで休憩できるベッドや椅子等の家具として使用され得る。装置は、支持面をユーザの身体に対して例えば快適な支持位置に適合させるように調節可能である、及び/又は調節可能な支持面を有する。本発明は、特に、医療装置としての使用のための本発明による装置に関する。具体的には、本発明による装置は、クラスIIAの医療装置である。より具体的には、本発明による装置は、クラスIIA認定の治療用椅子である。本発明による治療用椅子は、ヘルスケアセンター、病院、(民間の)クリニック等の医療環境又は施設で専用に使用され得る。
【0021】
特に、本発明による装置は化学療法での使用のためのものであり、前記装置は、化学療法による治療を受ける被験者、人間の患者を支持し、治療中に、前記装置は前記少なくとも1つのトランスデューサを用いて、被験者に音波療法を施すように制御される。装置により提供される音波療法は、化学療法が誘発する抹消神経障害を防止するように、被験者の抹消神経を刺激する音波を伝播させることに特に向けられ得る。
【0022】
本発明による装置は、特に、化学療法による被験者の癌治療での使用のためのものであり、前記装置は、化学療法による治療を受ける被験者を支持し、治療中に、前記装置は前記少なくとも1つのトランスデューサを用いて、被験者に音波療法を施すように制御される。装置により提供される音波療法は、化学療法が誘発する抹消神経障害を防止するように、被験者の抹消神経を刺激する音波を伝播させることに特に向けられ得る。
【0023】
本発明による装置の使用の好適な態様において、前記少なくとも1つのトランスデューサは、25‐120Hzの範囲の低周波音波を被験者の身体の少なくとも一部に伝播させるステップを備える音波療法を被験者に施すように適合される。
【0024】
本発明による装置の更なる好適な態様において、前記少なくとも1つのトランスデューサは、被験者の身体の神経系に影響を及ぼす音波を伝播させるように適合され、特に、被験者の抹消神経を刺激する音波を伝播させるように適合される。これにより、治療を受ける被験者の化学療法が誘発する抹消神経障害が防止され得る、又は少なくとも低減され得る。
【0025】
また、本発明は、特に化学療法剤を被験者に投与することにより、被験者に化学療法を施すステップを備える被験者の癌を治療する方法であって、被験者は、被験者の身体の神経系に影響を及ぼす、特に被験者の抹消神経を刺激する、音波を被験者の身体に伝播させる音波療法による治療を受ける方法に関する。好適には、本方法は、化学療法の少なくとも一部において、被験者を音波療法で治療するステップを含む。例えば、化学療法の化学療法剤を被験者に投与しつつ、被験者を本発明による装置で支持し得る。本発明による方法は、音波治療が、被験者(患者)の神経障害、特に化学療法を原因とする神経障害を防止する、又は少なくとも低減するという点において、化学療法による癌治療を改善する。特に、重度の神経障害を原因として化学療法プログラムを中断してしまう、又は早期に終了させてしまうという事態が、本発明による方法により防止され得る。
【0026】
本発明は、特に、被験者を本発明の装置に支持しつつ、特に化学療法剤を被験者に投与することにより、被験者に化学療法を施すステップを備える被験者の癌を治療する方法であって、前記化学療法の少なくとも一部において、前記装置の前記少なくとも1つのトランスデューサは、被験者の身体の神経系に影響を及ぼす、特に被験者の抹消神経を刺激する、音波を被験者の身体に伝播させる音波療法を被験者に施す方法に関する。
【0027】
本発明による方法の好適な実施形態において、前記少なくとも1つのトランスデューサにより伝播させる音波は、化学療法が誘発する抹消神経障害を防止するように適合される。
【0028】
本発明は、上述の実施形態及び態様に限定されない。
【0029】
明確性及び簡潔な説明を期して、本明細書において、特徴は同一又は別個の実施形態の一部として説明されるが、本発明の範囲は、本出願全体において説明される特徴の全部又は一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることを理解されたい。当業者には、本発明が本明細書に記載されたいかなる実施形態にも限定されないこと、及び添付の特許請求の範囲にあるとみなされ得る変更が可能であることが明らかであろう。当業者の範囲内での付加、削除、及び変更は、特許請求の範囲により決定される本発明の範囲を逸脱することなく全体としてなされ得る。
【実施例】
【0030】
実験
2016年4月14日に、セントラルジョージア医療機関委員会(「IRB」)の医療センターで承認されたディープ音波療法(「DSWT」)試験において、神経毒性化学療法による新しい治療を開始した患者が、化学療法受診の間に行われるディープ音波療法椅子(「Chair」)を用いた治療の被験者となった。2017年1月に試験の設計が変更され、既に化学療法を受け得た人が登録できるようになった。このプロトコルは、2017年1月19日に承認された。
【0031】
試験は、25人の被験者の発生目標(accrual goal)に近づいている。被験者は全て女性である。年齢範囲は34歳乃至82歳で、平均年齢は63歳9か月15日である。ほとんど全ての被験者は、化学療法としてクルボプラチンとタキソールを受ける予定であった。
【0032】
試験療法は、忍容性が高くDSWT中にほとんど問題は発生しなかった。既存の状態を理由として早期に治療から離脱したものが2名いた。
【0033】
DSWTプログラムでは、およそ3×30分サイクルと断続的な休憩時間、及び約3時間の合計治療時間の初期治療中に被験者の治療が進むにつれて、治療の強度と時間を増加させた。その後の治療は5-6時間に達する。被験者は問題が発生すれば報告するように求められ、看護スタッフはプログラムの強度を低下させたり中止したりできる。中断された治療はほとんどなく、中断のほとんどはトイレ休憩であった。強度を調整した治療はない。ほとんどの被験者は、より長い時間の治療に進んだ。
【0034】
各治療の前に、神経障害のアンケートが完了した。13の状態を、「全くない(Not at all)」から「非常に多い(Very Much)」までのスケールでランク付けする。可能な最大スコアは52、最小は0である。記録された最高スコアは44で、これは化学療法、すなわちDSWT前に記録された。この被験者は、既存状態により治療処置を完遂できなかったため、最初のラウンド後に治療から外した。2番目の被験者は、予期せぬ出来事のために数回の治療ラウンドから除外された。この被験者は、その後治療を再開した。この2名の特殊な例外を除き、全ての被験者は予定通りの治療を受けた。治療は、忍容性が良好であった。末梢神経障害による治療の遅延は報告されなかった。これは、化学療法誘発性末梢神経障害に対する保護における科学療法中のDSWTの正の相関を示す可能性がある。