IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

特許7179085コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物及び液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物及び液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/66 20060101AFI20221118BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A23L2/66
A23L2/52
A23L2/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020557847
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046712
(87)【国際公開番号】W WO2020111216
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018226087
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田口 若奈
(72)【発明者】
【氏名】今尾 孝子
(72)【発明者】
【氏名】笠島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恵
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081418(JP,A)
【文献】特開2011-103822(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050922(WO,A1)
【文献】特開2018-183106(JP,A)
【文献】特開2009-120512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156246(WO,A1)
【文献】特開2010-106003(JP,A)
【文献】特開2018-039751(JP,A)
【文献】INOUE N. et al.,Ingestion of bioactive collagen hydrolysates enhance facial skin moisture and elasticity and reduce,J Sci Food Agric,2016年,96,pp.4077-4081
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドを含有し、Pro-Hypの含有量が1.0~180mg/100mLである液状経口用組成物。
【請求項2】
前記Pro-Hypの含有量が10~180mg/100mLである請求項1に記載の液状経口用組成物。
【請求項3】
容器詰め飲料である請求項1又は2に記載の液状経口用組成物。
【請求項4】
コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量を1.0~180mg/100mLに調整する、液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物に関する。本発明はまた、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法に関する。また、本発明は、液状経口用組成物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして、食品分野で従来から広く用いられているタンパク質である。一般に高分子量のコラーゲンを経口で摂取しても、摂取したコラーゲンを体内で効率的に利用することが難しいとされ、近年では、体内でも摂取に適するよう、高分子量のコラーゲンを低分子量化したコラーゲンペプチドが開発されており、コラーゲンペプチドを配合した飲料も開発されている。
【0003】
ところでタンパク質は、一般的に泡立ちやすい性質を有することが知られている。例えば特許文献1には、ダイズホエータンパク質を含んでなる発泡剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-528703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物は、振とう等により泡立ちやすいという問題がある。このため例えばコラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物を容器詰め飲料(容器入り飲料)とする場合には、容器への充填工程において泡が発生する。液状経口用組成物を容器に充填する際に泡立ちが起こると、容器に所定量を充填する前に泡が噴出してしまい、充填作業に支障が生じる。また、コラーゲンペプチドを含有する容器詰め飲料が運搬等で振とうされて相当量の泡が発生すると、開栓時に泡が噴き出して消費者に不快感を与える場合がある。また、飲料等が泡立っていると、品質には影響がなくても、消費者が品質に対して懸念を感じるおそれがある。従ってコラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制することができる技術は、コラーゲンペプチド含有飲料の製造等において有用である。
【0006】
本発明は、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはコラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制することができる技術について研究を重ねたところ、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物中のPro-Hyp(プロリルヒドロキシプロリン、以下POともいう)の量を特定量とすると泡立ちが抑制されることを見出した。ヒドロキシプロリン(Hyp)を含むジペプチドであるPro-Hypの泡立ち抑制の効果はこれまで報告されていない。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の液状経口用組成物及び液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法に関する。
〔1〕Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドを含有し、Pro-Hypの含有量が1.0~180mg/100mLである液状経口用組成物。
〔2〕上記Pro-Hypの含有量が10~180mg/100mLである上記〔1〕に記載の液状経口用組成物。
〔3〕容器詰め飲料である上記〔1〕又は〔2〕に記載の液状経口用組成物。
〔4〕コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量を1.0~180mg/100mLに調整する、液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法。
〔5〕コラーゲンペプチドと水性媒体とを混合する工程を含み、液状経口用組成物中にPro-Hypを1.0~180mg/100mL配合する液状経口用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<液状経口用組成物>
本発明の液状経口用組成物は、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドを含有し、Pro-Hypの含有量が1.0~180mg/100mLである。
本発明において、Pro-Hyp(PO)は、プロリン-ヒドロキシプロリンで表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ジペプチド)を示す。本明細書におけるペプチドの表記は、ペプチド表記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明において、Pro-Hypは、好ましくは直鎖状ジペプチドである。
【0011】
本発明の液状経口用組成物は、コラーゲンペプチドを含有する。本発明の液状経口用組成物は、Pro-Hypの含有量が1.0~180mg/100mLである。
コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量(濃度)が1.0~180mg/100mLであると、該液状経口用組成物は泡立ち(起泡)が抑制されたものとなる。泡立ち抑制の観点から、液状経口用組成物のPro-Hypの含有量は、5.0mg/100mL以上が好ましく、10mg/100mL以上がより好ましい。液状経口用組成物のPro-Hypの含有量は、40mg/100mL以上であることも好ましい。また、一態様において、液状経口用組成物のPro-Hypの含有量は、150mg/100mL以下が好ましく、100mg/100mL以下がより好ましく、80mg/100mL以下がさらに好ましく、70mg/100mL以下が特に好ましい。上限及び下限は、いずれの組み合わせによる範囲としてもよい。一態様において、液状経口用組成物中のPOの含有量は、5.0~180mg/100mLが好ましく、10~180mg/100mLがより好ましく、10~150mg/100mLであることがさらに好ましく、10~100mg/100mLがさらにより好ましく、10~80mg/100mLが特に好ましく、10~70mg/100mLが最も好ましい。また別の一態様において、液状経口用組成物中のPOの含有量は、5.0~150mg/100mLが好ましく、40~150mg/100mLがより好ましい。
【0012】
本発明の液状経口用組成物は、例えば、液状経口用組成物のPro-Hyp含有量が上記範囲となるように、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドを使用して調製されてもよく、コラーゲンペプチドにPro-Hypを添加して調製されてもよい。Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドは、Pro-Hypのみからなるものであってよいが、通常はPro-Hyp以外のペプチドを含む。本発明においては、Pro-Hypの由来は特に限定されない。Pro-Hypは当該分野で公知の方法で調製することができ、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドを適宜精製して調製してもよい。Pro-Hypは、化学合成法で製造することもできる。本発明においては、Pro-Hypは、その由来に依らず、コラーゲンペプチドに含める。
【0013】
Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドは、例えば、コラーゲン、又は、ゼラチン等の変性コラーゲンを酵素、酸、アルカリ等で加水分解処理することで得ることができる。コラーゲンペプチドの由来及び製法は特に限定されるものではない。人工的に合成したコラーゲンペプチドを用いることもできる。コラーゲンペプチドは1種のコラーゲンペプチドを単独で用いてもよく、2種以上のコラーゲンペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
コラーゲンペプチドの原料となるコラーゲン又はゼラチンは、ウシ、ブタ、ニワトリ、魚類等に由来するものでよく、これらの1種又は2種以上を原材料として用いることができる。一態様において、魚類由来のコラーゲンが好ましい。魚類は、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ、ナマズ等が挙げられる。
【0015】
コラーゲンペプチドの調製に用いる酵素としては、コラーゲン又はゼラチンのペプチド結合を切断することができるものであればよく、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等が挙げられる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
【0016】
本発明においては、加水分解されたコラーゲンペプチドの水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥等により粉末化したものを用いてもよい。また、当該水溶液に通常用いられる精製処理を施したものを、水溶液や粉末等の形態として用いてもよい。
コラーゲンペプチドは市販品を用いてもよい。コラーゲンペプチド中のPro-Hyp含有量が特定の量に満たない場合等には、Pro-Hypを適宜追加して用いることもできる。
【0017】
Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドの平均分子量は特に限定されない。一態様において、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは300以上であり、より好ましくは350以上であり、さらに好ましくは400以上であり、さらにより好ましくは450以上であり、また、好ましくは5000以下であり、より好ましくは4000以下であり、さらに好ましくは3000以下であり、さらにより好ましくは2000以下であり、特に好ましくは1000以下である。好ましくは300~5000であり、より好ましくは300~4000であり、さらに好ましくは300~3000であり、さらにより好ましくは350~2000であり、特に好ましくは400~2000であり、特に好ましくは400~1000であり、最も好ましくは450~1000である。コラーゲンペプチドの平均分子量が上記範囲であると、本発明の効果をより充分に発揮することができる。
【0018】
本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、重量平均分子量である。本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、中国国家標準規格(GB規格)GB/T 22729-2008 フィッシュオリゴペプチドパウダーに関する相対分子質量測定法にて測定した値を意味する。ただし、M,451及びM,189の試薬については、代替品を用いる。
本法での平均分子量は、あらかじめ分子量が既知である細胞色素C(cytochrome,M,6500)、トラジロール(aprotinin, M,12500)、バシラス菌(bacitracin, M,1450)、グリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(M,451)、グリシン-グリシン-グリシン(M,189)を同条件で測定して得られたリテンションタイムと相対分子量の対数の関係の相対分子質量較正曲線を元に算出する。本発明における平均分子量とは、この手法に従って各標準品換算で算出した重量平均分子量を言う。
【0019】
液状経口用組成物又はコラーゲンペプチド中のPro-Hypの含有量は、LC/MS/MSを用いて、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0020】
液状経口用組成物中のコラーゲンペプチドの含有量は、泡立ち抑制の観点から600mg/100mL以上が好ましく、1000mg/100mL以上がより好ましく、2000mg/100mL以上がさらに好ましく、また、110000mg/100mL以下が好ましく、20000mg/100mL以下がより好ましく、11000mg/100mL以下がさらに好ましく、10000mg/100mL以下がさらにより好ましく、7500mg/100mL以下が特に好ましい。一態様において、液状経口用組成物中のコラーゲンペプチドの含有量は、600~110000mg/100mLが好ましく、600~20000mg/100mLがより好ましく、1000~11000mg/100mLがさらに好ましく、1000~10000mg/100mLがさらにより好ましく、2000~7500mg/100mLが特に好ましい。上記含有量は、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドの含有量、つまり、Pro-Hyp及びこれ以外のコラーゲンペプチドの合計含有量である。コラーゲンペプチドの含有量は公知の方法で測定することができ、例えば、LC/MS/MSなどの装置を用いて測定することができる。
【0021】
泡立ち抑制の観点から、液状経口用組成物に含まれるコラーゲンペプチド中のPro-Hypの含有量は、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.20重量%以上がさらに好ましく、0.50重量%以上が特に好ましく、また、4.0重量%以下が好ましく、3.5重量%以下がより好ましい。一態様において、コラーゲンペプチド中のPro-Hypの含有量は、泡立ち抑制の観点から0.01~4.0重量%が好ましく、0.05~3.5重量%がより好ましく、0.20~3.5重量%がさらに好ましく、0.50~3.5重量%が特に好ましい。コラーゲンペプチド中のPro-Hypの含有量が上記範囲であると、本発明の効果をより充分に発揮することができる。
【0022】
本発明の液状経口用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、コラーゲンペプチド以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
本発明の液状経口用組成物は、例えば、甘味料(エリスリトール、アセスルファムK、スクラロース等)、酸味料(クエン酸等)、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤、増粘剤(ウェランガム、キサンタンガム等)等の添加剤を1又は2以上含んでいてもよい。また、本発明の液状経口用組成物は、Pro-Hypに加えて、その他の生体内機能性を有する素材、例えば、皮膚改善効果が知られている素材を1又は2以上含んでもよい。皮膚改善効果が知られている素材として、例えば、プロテオグリカン、エラスチンペプチド、セラミド、植物エキス、コンドロイチン硫酸、グルコサミン類、ミネラル類(カルシウム等)、ビタミン類(ビタミンC等)等が挙げられる。
【0023】
本発明の液状経口用組成物は水性媒体、通常水を含む。本発明の液状経口用組成物は、好ましくは水を媒体とする液状経口用組成物(水性液状経口用組成物)である。
【0024】
本発明の液状経口用組成物は、防腐性の観点から、pHが6以下であることが好ましく、pHはより好ましくは2~6、さらに好ましくは3~4.5である。本明細書中、pHは、25℃におけるpHである。pHの調整には、飲食品に使用可能な酸又は塩を使用することができる。酸又はその塩は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の液状経口用組成物は、飲料(飲料組成物)として好ましく用いられる。
本発明の液状経口用組成物は、非炭酸飲料又は炭酸飲料であってよいが、好ましくは非炭酸飲料である。炭酸飲料とは、炭酸ガスを圧入した飲料である。非炭酸飲料は、炭酸ガスを圧入していない飲料である。
本発明の液状経口用組成物は、容器詰めとすることができる。一態様において、本発明の液状経口用組成物は、好ましくは容器詰め飲料である。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器詰め飲料等とすることができる。
【0026】
本発明の液状経口用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を混合する混合工程を含むことが好ましい。混合工程では、成分に、水性媒体(通常水)を加えて混合することが好ましい。各成分を混合する順番は特に限定されず、各成分が均一に混合されればよい。液状経口用組成物の製造においては、液状経口用組成物のpHを調整するpH調整工程を行ってもよい。pH調整工程は、混合工程と同時に行ってもよく、混合工程の後で行ってもよい。必要に応じて適宜ろ過、希釈、殺菌等の工程を行ってもよい。液状経口用組成物を容器詰め飲料とする場合は、液状経口用組成物を容器に充填する工程を行ってよい。
【0027】
本発明の液状経口用組成物は、例えば、コラーゲンペプチドと水性媒体とを混合する工程を含み、液状経口用組成物中にPro-Hypを1.0~180mg/100mL配合する液状経口用組成物の製造方法により製造することができる。本発明は、上記液状経口用組成物の製造方法も包含する。上記製造方法において、好ましくは、水性媒体(好ましくは水)100mLに対してコラーゲンペプチドを600~110000mg(好ましくは600~20000mg、より好ましくは1000~11000mg、さらに好ましくは1000~10000mg、特に好ましくは2000~7500mg)配合することが好ましい。このコラーゲンペプチドの配合量は、Pro-Hypを含むコラーゲンペプチドの配合量である。コラーゲンペプチド及びその好ましい態様などは、上記と同じである。
液状経口用組成物中にPro-Hypを1.0~180mg/100mLを配合する方法は、特に限定されない。例えば、Pro-Hypを添加する方法、液状経口用組成物の調製に用いるコラーゲンペプチド中のPro-Hyp含有量を調整する方法等を採用することができる。一態様において、Pro-Hypの配合量は、液状経口用組成物中に5.0~180mg/100mLが好ましく、10~180mg/100mLがより好ましく、10~150mg/100mLがさらに好ましく、40~150mg/100mLが特に好ましい。上記製造方法は、上記のpH調整工程、液状経口用組成物を容器に充填する工程等の混合工程以外の工程を含んでよい。
【0028】
本発明の液状経口用組成物は、泡立ちが抑制されたものであり、例えば、振とうされた場合に起泡しにくいものである。
本発明における泡立ちの抑制は、例えば、液状経口用組成物を激しく振とうし、振とう後一定時間後における液面からの泡の高さ(起泡距離)によって評価することができる。
【0029】
本発明においては、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物中のPro-Hyp含有量を特定範囲とすることにより、泡立ち、例えば振とうによる泡立ちを抑制することができる。本発明の液状経口用組成物は、泡立ちが抑制されたものであることから、容器に充填して容器詰め飲料とする際に有利である。また本発明の液状経口用組成物は、車等による運搬等において振とうされた場合でも、泡立ちが抑制される。
【0030】
<コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法>
本発明の別の態様は、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量を1.0~180mg/100mLに調整する、液状経口用組成物の泡立ちを抑制する方法である。
コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量を上記範囲に調整することにより、該組成物の泡立ちを抑制することが可能となる。
液状経口用組成物中のPro-Hypの含有量を調整する方法は特に限定されず、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物が、最終的にPro-Hypを上記量含有するものとなればよい。例えば、コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物にPro-Hypを添加して調整する方法、液状経口用組成物の調製に用いるコラーゲンペプチド中のPro-Hyp含有量を調整する方法等が挙げられる。
コラーゲンペプチド及びその好ましい態様、Pro-Hypの含有量等は、上述した本発明の液状経口用組成物におけるものと同じである。液状経口用組成物には、上述した他の成分を配合してもよい。
【実施例
【0031】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
実施例1~8及び比較例1では、コラーゲンペプチドとして、Pro-Hyp(PO)含有量が0.01重量%(100ppm)、平均分子量が1000のコラーゲンペプチド(以下、コラーゲンペプチド(I)と記載する)を使用した。コラーゲンペプチド(I)は魚由来のコラーゲンペプチドである。実施例1~8では、コラーゲンペプチド(I)に加えて、Pro-Hyp(PO)を使用して液状経口用組成物を調製した。Pro-Hyp(PO)はBACHEM社製のものを使用した。実施例中、POは、直鎖状のPOである。
【0033】
コラーゲンペプチド(I)のPO含有量の分析方法を以下に示す。
(分析用試料の調製)
コラーゲンペプチド(I)5000mgを水100mLに混合してサンプルを調製した。サンプルをよく振とうし、液を均一化した後、100μLを1.5mL容eppen tubeにとった。1%ギ酸水溶液900μLを加えボルテックスミキサーでよく混和して、サンプルの10倍希釈液を得た。得られた10倍希釈液から100μLを別のeppen tubeにとり、1%ギ酸水溶液900μLを加えた。ボルテックスミキサーでよく混和してサンプルの100倍希釈溶液を得た。このサンプルの100倍希釈液を0.45μmメンブランフィルターでろ過し、以下のLC/MS/MS分析条件で分析した。
【0034】
(分析装置)
以下の装置を使用した。
LC/MS/MS:(株)島津製作所製 LCMS-8050、ポンプ:(株)島津製作所製 LC-30AD、カラムオーブン:(株)島津製作所製 CTO-20AC
(LC分析条件)
カラム:Intrada Amino Acid(インタクト社製、Prod No.WAA34, Ser No.PE09HQF)3μm,3.0mmI.D.×100mm
カラム温度:35℃
流速:0.6mL/min
溶離液A:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
溶離液B:100mMギ酸アンモニウム水溶液
グラジェント:B液(体積%) 14%(0分)-14%(6分)-100%(20分)-14%(20.1分)-14%(24分)
LC終了時間:24分
注入量:1μL
平衡化後初期圧力:Pump A:6.3MPa、Pump B:6.4MPa
(MS分析条件)
イオン化モード:ESI Positive
ネブライザーガス流量:3L/min
ドライングガス流量:10L/min
DL温度:250℃
ブロックヒーター温度:400℃
インターフェイス温度:300℃
ヒーティングガス流量:10L/min
分析モード:
POの分析:MRM (+) 229.10>70.05
Q1 Pre Bias (V):-30.0, CE:-24.0,
Q3 Pre Bias (V):-30.0
【0035】
<実施例1>
PO(0.5mg)及びコラーゲンペプチド(I)(5000mg)を水100mLに混合して、液状経口用組成物を調製した。
【0036】
<実施例2、3、4及び5>
POの配合量を表1に示す量としたこと以外は、実施例1と同じ方法で液状経口用組成物を調製した。実施例2ではPOを39.5mg、実施例3ではPOを79.5mg、実施例4ではPOを99.5mg、実施例5ではPOを179.5mg使用した。
【0037】
<実施例6>
PO及びコラーゲンペプチド(I)の配合量を表1に示す量としたこと以外は、実施例1と同じ方法で液状経口用組成物を調製した。
【0038】
<比較例1>
コラーゲンペプチド(I)5000mgを水100mLに混合して、液状経口用組成物を調製した。
【0039】
表1に、液状経口用組成物の調製に使用した原料(PO及びコラーゲンペプチド(I))の配合量、並びに、液状経口用組成物中のPOの含有量(濃度)を示す。表1のコラーゲンペプチド(I)の配合量の括弧内に、コラーゲンペプチド(I)中(コラーゲンペプチド(I)由来)のPO量を示した。PO含有量は、液状経口用組成物に含まれるPOの量(mg/100mL)であり、組成物の調製に使用したPOと、コラーゲンペプチド(I)中のPOの合計量である。例えば実施例1の液状経口用組成物を例に挙げて説明すると、POを0.5mg、及び、コラーゲンペプチド(I)を5000mg使用し、コラーゲンペプチド(I)5000mg中に含まれるPOが0.5mgであることから、液状経口用組成物のPO含有量は、合計で1.0mg/100mLである。
なお、液状経口用組成物に含まれるコラーゲンペプチド(PO及びコラーゲンペプチド(I)の合計)中のPO含有量は、実施例1が0.02重量%、実施例2が0.79重量%、実施例3が1.57重量%、実施例4が1.96重量%、実施例5が3.48重量%、実施例6が0.18重量%であった。
【0040】
実施例及び比較例で得られた液状経口用組成物の泡立ちについて、以下の方法で振とうによる起泡のしやすさを評価した。結果を表1に示す。
<泡立ちの評価>
液状経口用組成物50mLを、100mLの共栓比色管(東京、(株)三商製、目盛付き(内径2.5cmの円柱状))に入れ、栓をした。なお使用したガラス瓶の目盛は、1目盛が1mLであった。
これを上下に20回激しく振とうし、振とう後3分の時点における液面からの泡の高さ(起泡距離)(目盛)を目視によって測定した。液面の高さ及び起泡距離について、測定したガラス瓶の目盛の数値(底面が目盛0)を表1の評価結果に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1において、液面の高さは、振とう後3分の時点における、ガラス瓶の底面から液面までの距離(高さ)(測定した目盛の数値)である。起泡距離は、振とう後3分の時点における、液面からの泡の高さ(測定した目盛の数値)である。例えば実施例1では、振とう後3分の時点における、ガラス瓶の底面から液面までの距離(高さ)が50目盛で、液面からの泡の高さが44目盛であった。つまり実施例1では、振とう後3分の時点における泡の最上部の高さは、ガラス瓶の底面から94目盛分であった。
【0043】
<実施例7及び8>
Pro-Hyp(PO)及びコラーゲンペプチド(I)の配合量を表2に示す量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で液状経口用組成物を調製した。実施例7ではPOを9.5mg、実施例8ではPOを149.5mg使用した。液状経口用組成物に含まれるコラーゲンペプチド(PO及びコラーゲンペプチド(I)の合計)中のPO含有量は、実施例7が0.20重量%、実施例8が2.91重量%であった。
【0044】
実施例9~10では、後記のコラーゲンペプチド(II)又は(III)と、上記のPO(BACHEM社製)とを使用して液状経口用組成物を調製した。コラーゲンペプチド(II)及び(III)のPO含有量は、上記のコラーゲンペプチド(I)と同じ方法で分析した。
【0045】
<実施例9>
Pro-Hyp(PO)含有量が1重量%、平均分子量が約500のコラーゲンペプチド(コラーゲンペプチド(II)と記載する)を使用した。コラーゲンペプチド(II)は魚由来のコラーゲンペプチドである。PO(BACHEM社製)(30.0mg)及びコラーゲンペプチド(II)(5000mg)を水100mLに混合して、液状経口用組成物を調製した。液状経口用組成物に含まれるコラーゲンペプチド(PO及びコラーゲンペプチド(II)の合計)中のPO含有量は、1.59重量%であった。
【0046】
<実施例10>
Pro-Hyp(PO)含有量が0.0015重量%、平均分子量が約2000のコラーゲンペプチド(コラーゲンペプチド(III)と記載する)を使用した。コラーゲンペプチド(III)はブタ由来のコラーゲンペプチドである。PO(BACHEM社製)(49.93mg)及びコラーゲンペプチド(III)(5000mg)を水100mLに混合して、液状経口用組成物を調製した。液状経口用組成物に含まれるコラーゲンペプチド(PO及びコラーゲンペプチド(III)の合計)中のPO含有量は、0.99重量%であった。
【0047】
実施例7~10で得られた液状経口用組成物の泡立ちについて、上記の方法で振とうによる起泡のしやすさを評価した。結果を表2に示す。
表2のコラーゲンペプチド(I)~(III)の配合量の括弧内に、コラーゲンペプチド(I)~(III)中(コラーゲンペプチド(I)~(III)由来)のPO量を示した。表2に記載のPO含有量は、液状経口用組成物に含まれるPOの量(mg/100mL)であり、組成物の調製に使用したPOと、コラーゲンペプチド(I)~(III)に含まれるPOの合計量である。例えば実施例9の液状経口用組成物を例に挙げて説明すると、POを30.0mg、及び、コラーゲンペプチド(II)を5000mg使用し、コラーゲンペプチド(II)5000mg中に含まれるPOが50.0mgであることから、液状経口用組成物のPO含有量は、合計で80.0mg/100mLである。
【0048】
【表2】
【0049】
表1と同様に、表2において、液面の高さは、振とう後3分の時点における、ガラス瓶の底面から液面までの距離(高さ)(測定した目盛の数値)である。起泡距離は、振とう後3分の時点における、液面からの泡の高さ(測定した目盛の数値)である。
POの含有量が1.0~180.0mg/100mLであると、液状経口用組成物の泡立ちが抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、飲食品分野等において有用である。