(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】スイッチおよびスイッチングアームを制御するためのシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20221118BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20221118BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221118BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H02M1/00 C
H02M1/08 A
H02M7/48 M
H02P27/06
(21)【出願番号】P 2020572787
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2019063804
(87)【国際公開番号】W WO2020001900
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-18
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】ロムアルド、モルバニー
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219874(JP,A)
【文献】特開2004-040470(JP,A)
【文献】特開2015-198549(JP,A)
【文献】特開2013-153603(JP,A)
【文献】特開2011-049741(JP,A)
【文献】特開昭58-051793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0085403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ(222、224)のための制御システムであって、
- 入力制御信号
【数1】
を受信し、 前記入力制御信号
【数2】
を増幅して出力制御信号
【数3】
を取得し、前記スイッチ(222、224)を開放または閉鎖するために前記出力制御信号
【数4】
を前記スイッチ(222、224)に適用するように設計された増幅器(264、266)であって、前記増幅器(264、266)が、供給電圧を受電するように意図された正および負の2つの供給端子を有する、増幅器(264、266)を備える制御システムにおいて、
- 完全抑止制御(INHIB_T)と称されるものを受信すると、前記出力制御信号
【数5】
が前記入力制御信号
【数6】
に関係なく前記スイッチ(222、224)を開放状態のまま維持するよう、前記供給電圧を低下させるように設計された前記増幅器(264、266)のための抑止デバイス(310、314)
と、
前記完全抑止制御(INHIB_T)を前記増幅器(264、266)の前記負の端子とは異なる電圧基準に対する電圧の形態で受信し、前記完全抑止制御(INHIB_T)を前記増幅器(264、266)の前記負の端子に対する電圧の形態で前記抑止デバイス(310、314)へ提供するように設計されたレベルシフタ(312、316)と、
をさらに備えることを特徴とする、制御システム。
【請求項2】
前記抑止デバイス(310、314)が、前記完全抑止制御(INHIB_T)を受信すると、前記増幅器(264、266)の前記供給端子を短絡するように設計されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記抑止デバイス(310、314)が、前記正の供給端子に接続された電流入力端子、前記負の供給端子に接続された電流出力端子、および制御端子を有する、制御可能短絡スイッチを備え、前記完全抑止制御(INHIB_T)が前記制御端子と前記電流出力端子との間の電圧の形態である、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記供給電圧を提供するために前記増幅器の前記正の端子と前記負の端子との間に接続されたキャパシタ(302、304)をさらに備える、請求項1から
3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記キャパシタ(302、304)のための充電デバイス(306、308)をさらに備える、請求項
4に記載の制御システム。
【請求項6】
電圧変換器(106)のためのスイッチングアームシステム(220)であって、
- ハイサイドスイッチ(222)と、
- ローサイドスイッチ(224)と、
- 請求項1から
5のいずれか一項に記載の、前記ハイサイドスイッチ(222)および前記ローサイドスイッチ(224)のうちの一方のための制御システムと、
を備え、
前記ハイサイドスイッチ(222)および前記ローサイドスイッチ(224)が、回転電気機械(104)の1つの相に接続されるように意図された中間点において互いに接続されている、スイッチングアームシステム(220)。
【請求項7】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の、前記ハイサイドスイッチ(222)および前記ローサイドスイッチ(224)のうちの他方のための制御システムをさらに備える、請求項
6に記載のスイッチングアームシステム(220)。
【請求項8】
前記ハイサイドスイッチ(222)のための前記制御システムおよび前記ローサイドスイッチ(224)のための前記制御システムの両方のために意図された完全抑止制御(INHIB_T)のための単一の受信入力(268)を備える、請求項
7に記載のスイッチングアームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチおよびスイッチングアームのための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入力制御信号を受信し、入力制御信号を増幅して出力制御信号を取得し、スイッチを開放または閉鎖するために出力制御信号をスイッチに適用するように設計された増幅器を備える種類の、スイッチのための制御システムを用いることは周知の慣例であり、増幅器は、供給電圧を受信するように意図された正および負の2つの供給端子を有する。
【0003】
上述の種類の制御システムは、例えば、回転電気機械に接続された電圧変換器のスイッチングアームの2つのスイッチを制御するために用いられる。
【0004】
上述の種類の制御システムでは、スイッチの開放または閉鎖状態が入力制御信号によって規定される。
【0005】
それゆえ、入力制御信号を発生するデバイスに障害が起きた場合には、スイッチの状態を制御することがもはや不可能となる。スイッチングアームの場合には、したがって、回転電気機械を安全状態にするために2つのスイッチを開放することがもはや不可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の問題のうちの少なくともいくつかを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、上述の種類の制御システムであって、それが、完全抑止制御と称されるものを受信すると、出力制御信号が入力制御信号に関係なくスイッチを開放状態のまま維持するよう、供給電圧を低下させるように設計された増幅器のための抑止デバイスをさらに備えることを特徴とする、制御システムが提案される。
【0008】
本発明は、スイッチが、増幅器によって受信される入力制御信号とは関わりなく、ひいては、この入力制御信号を供給するデバイスが正しく動作しているか否かとは関わりなく開放されることを可能にする。それゆえ、スイッチングアームの場合には、2つのスイッチを開放することが常に可能である。
【0009】
任意選択的に、抑止デバイスは、完全抑止制御を受信すると、増幅器の供給端子を短絡するように設計されている。
【0010】
また、任意選択的に、抑止デバイスは、正の供給端子に接続された電流入力端子、負の供給端子に接続された電流出力端子、および制御端子を有する、制御可能短絡スイッチを備え、完全抑止制御は制御端子と電流出力端子との間の電圧の形態である。
【0011】
また、任意選択的に、制御システムは、完全抑止制御を増幅器の負の端子とは異なる電圧基準に対する電圧の形態で受信し、完全抑止制御を増幅器の負の端子に対する電圧の形態で抑止デバイスへ提供するように設計されたレベルシフタをさらに備える。
【0012】
また、任意選択的に、制御システムは、供給電圧を提供するために増幅器の正の端子と負の端子との間に接続されたキャパシタをさらに備える。
【0013】
また、任意選択的に、制御システムはキャパシタのための充電デバイスをさらに備える。
【0014】
また、電圧変換器のためのスイッチングアームシステムであって、
- ハイサイドスイッチと、
- ローサイドスイッチと、
- 本発明に係る、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのうちの一方のための制御システムと、
を備え、
ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチが、回転電気機械の1つの相に接続されるように意図された中間点において互いに接続されている、スイッチングアームシステムも提案される。
【0015】
任意選択的に、スイッチングアームシステムは、本発明に係る、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのうちの他方のための制御システムをさらに備える。
【0016】
また、任意選択的に、スイッチングアームシステムは、ハイサイドスイッチのための制御システムおよびローサイドスイッチのための制御システムの両方のために意図された完全抑止制御のための単一の受信入力を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】DC電圧源と、回転電気機械と、それらの間に介在させられた電圧変換器と、を備える本発明に係る電気システム100の簡略回路図である。
【
図2】
図1の電圧変換器のための制御システムのブロック図である。
【
図3】電圧変換器のスイッチが、このスイッチのための制御信号とは関わりなく開放されることを可能にする制御システムの要素を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、これより、本発明に係る電気システム100が説明される。電気システム100は、例えば、自動車において実施されるように意図される。
【0019】
電気システム100は、まず第1に、正の端子および負の端子を含むDC電圧源102を備え、後者は一般的に、自動車のシャーシなどの、図においてGND1と示される、電気的グランドに接続されている。DC電圧源102は、例えば約12Vの値を有する、これらの端子の間のDC入力電圧Eを提供するように設計されている。
【0020】
電気システム100は、それぞれの第1の端部が、説明される例では、同じ中性点Nに接続されている、ステータ相U、V、Wを含む回転電気機械104をさらに備える。説明される例では、回転電気機械104は、自動車の内燃エンジン(図示されず)に結合されたオルタネータ-スタータの部分である。それゆえ、回転電気機械104は、それが内燃エンジンを支援するモータモードと、それが内燃エンジンによって発生された機械エネルギーの一部をDC電圧源102を再充電するための電気エネルギーに変換するオルタネータモードとで交互に動作するように設計されている。
【0021】
電気システム100は、第1にDC電圧源102の端子に接続され、第2に回転電気機械104に接続された電圧変換器106をさらに備える。
【0022】
電圧変換器106は、ステータ相U、V、Wにそれぞれ関連付けられたスイッチングアームを含む。各スイッチングアームは、DC電圧源102の正の端子に接続されたハイサイドスイッチ、およびDC電圧源102の負の端子に接続されたローサイドスイッチを含む。ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチは、さらに、関連ステータ相U、V、Wに接続された中間点において互いに接続されている。各スイッチングアームは、2つの構成の間で切り替わるよう制御されるように意図されている。第1の、ハイと称される構成では、ハイサイドスイッチは閉鎖されており、ローサイドスイッチは開放しており、これにより、入力電圧Eが関連ステータ相U、V、Wの第2の端部に印加される。第2の、ローと称される構成では、ハイサイドスイッチは開放しており、ローサイドスイッチは閉鎖されており、これにより、0電圧が関連ステータ相U、V、Wの第2の端部に印加される。
【0023】
電圧変換器106は、回転電気機械104が、モータモードで動作するよう要求されるときには、電力を回転電気機械104に提供し、回転電気機械104が、オルタネータモードで動作するよう要求されるときには、電力をDC電圧源102に提供するために、各アームをこれらの2つの構成の間で切り替えるよう制御されるように意図されている。
【0024】
それゆえ、電気システム100は、以下において詳細に説明される、電圧変換器106のための制御システム108をさらに備える。
【0025】
図2を参照すると、電気システム100は、電子制御ユニット(ECU)202と、データバス204、説明される例では、電子制御ユニット202および制御システム108を相互接続するCAN(controller area network(コントローラ・エリア・ネットワーク)データバスと、をさらに備える。
【0026】
電気システム100は、図においてGND2と示され、一般的に、自動車のシャーシに接続された電気的グランドに対するDC電圧VBAT1を提供するように設計されたDC電圧源206をさらに備える。説明される例では、DC電圧源206はLiイオン・バッテリを備え、電圧VBAT1は、例えば、約12Vの値を有する。電圧Eを提供する電圧源102は、例えば電圧源206を用い、これにより、電圧Eは電圧VBAT1から得られる。
【0027】
電気システム100は、例えば、内燃エンジンの温度が低すぎるときに、オルタネータ-スタータが始動を行うことができないときに、自動車の内燃エンジンが始動するのを支援するように設計されたスタータ208をさらに備える。
【0028】
電気システム100は、電気的グランドGND2に対するDC電圧VBAT2を提供するように設計されたDC電圧源210をさらに備える。説明される例では、DC電圧源210は鉛酸バッテリを備え、電圧VBAT2は、例えば、約12Vの値を有する。
【0029】
電気システム100は、閉鎖されたときに2つのDC電圧源206、210を互いに接続し、これにより、それらが、スタータ208が動作することができるために十分な電流をスタータ208に提供するために協働するようにすることを意図された制御可能スイッチ212をさらに備える。
【0030】
電気システム100は、電圧VBAT2と実質的に等しく、したがって、説明される例では約12Vの値を有する、電圧VBFTを提供するためにDC電圧源210に接続されたバッテリヒューズ端子(BFT)214をさらに備える。
【0031】
電気システム100は、電圧VBFTを受電し、それゆえ、電力を供給されるためにバッテリヒューズ端子214に接続された電気的コンポーネント216をさらに備える。
【0032】
バッテリヒューズ端子214は、少なくとも1つのヒューズ(図示されず)を含み、このヒューズは、例えば、電気的コンポーネント216のうちの1つにおいて短絡が生じた場合に、このヒューズを通過する電流が大きくなりすぎたときに、DC電圧源210への接続を切断するように意図される。
【0033】
電気システム100は、データバス204上の電圧VBFTの測定値VBFT_CANを提供するように設計された電圧センサ218をさらに備える。
【0034】
次に、制御システム108が、
図1における電圧変換器106のスイッチングアームの制御についてより詳細に説明される。符号220によって示される、このスイッチングアームは、上記で
図1を参照して説明されたように、符号222によって示される、ハイサイドスイッチ、および符号224によって示される、ローサイドスイッチを含む。ハイサイドスイッチ222は、DC電圧源102の正の端子に接続された電流入力端子、およびスイッチングアーム220と制御端子との間の中間点に接続された電流出力端子を有する。ローサイドスイッチ224は、中間点に接続された電流入力端子、電気的グランドGND1に接続された電流出力端子、および制御端子を有する。
【0035】
制御システム108は、まず第1に、電圧VBFTを受電するためにバッテリヒューズ端子214に接続された入力226を備える。
【0036】
制御システム108は、入力226に接続されており、電圧VBFTの2つの測定値VBFT_1、VBFT_2をそれぞれ提供するように設計された2つのセンサ228、230をさらに備える。
【0037】
制御システム108は、電圧VBAT1を受電するためにDC電圧源206に接続された入力232をさらに備える。
【0038】
制御システム108は、入力232に接続されており、電圧VBAT1の2つの測定値VBAT1_1、VBFT1_2をそれぞれ提供するように設計された2つのセンサ234、236をさらに備える。
【0039】
制御システム108は、次に説明される、マイクロコントローラ242およびドライバ260をさらに備える。例として、電圧変換器106のスイッチングアームごとに1つの(ドライバ260と同様の)ドライバ、および全てのドライバのために単一のマイクロコントローラ242が設けられている。
【0040】
公知のとおり、マイクロコントローラ242は、処理ユニットおよび主メモリ(図示されていない)を備えるコンピューティングデバイスである。1つまたは複数のコンピュータプログラムが主メモリ内に記録され、次に説明されるデバイスを実施するために処理ユニットによって実行されるように意図される。
【0041】
それゆえ、マイクロコントローラ242は、まず第1に、制御確立デバイス244を実装する。
【0042】
制御確立デバイス244は、まず第1に、データバス204から、電圧変換器106が制御される必要があるモード、すなわちオルタネータモードまたはさもなければモータモードを指示する、図においてMRと示されるモード要求を受信するように設計されている。それゆえ、制御確立デバイス244は、データバス204から受信されたモード要求MRに従ってモータモードまたはオルタネータモードのいずれかで動作するように設計されている。
【0043】
制御確立デバイス244は、ドライバ260に送信される、図においてcmdと示される、制御を確立するように設計されており、これらの制御cmdは、それが入っているモードのために適合される。より正確には、モータモードでは、制御確立デバイス244は、回転電気機械104のシャフトの端部において所望される目標トルクCから制御cmdを確立するように設計されている。オルタネータモードでは、制御確立デバイス244は、電圧Eのための目標電圧E*に基づいて制御cmdを確立するように設計されている。目標トルクCおよび目標電圧E*は、例えば、データバス204から受信される。
【0044】
制御確立デバイス244は、モード要求MRをドライバ260へ伝送するようにさらに設計されている。受信されるモード要求MRを、伝送されるものと区別するために、後者はモード選択と呼ばれ、図においてMSと示される。
【0045】
制御確立デバイス244は、さらに、それが、ソフトウェア制御と称され、INHIB_Lと示される、抑止制御を受信する限りは、受信された命令(C、E*)とは関わりなくスイッチ222、224を開放させるように意図された制御cmdをドライバ260に提供するように設計されている。
【0046】
マイクロコントローラ242は、さらに、測定値VBFT_CANが既定のしきい値未満であるときにソフトウェア抑止制御INHIB_Lを制御確立デバイス244に提供するように設計された、測定値VBFT_CANのためのウォッチドッグ246を実装する。説明される例では、この既定のしきい値は、8V~11V、例えば、10.8Vである。
【0047】
マイクロコントローラ242は、さらに、測定値VBFT_1が既定のしきい値未満であるときにソフトウェア抑止制御INHIB_Lを制御確立デバイス244に提供するように設計された、測定値VBFT_1のためのウォッチドッグ248を実装する。説明される例では、この既定のしきい値は、8V~11V、例えば、10.8Vである。
【0048】
マイクロコントローラ242は、さらに、測定値VBFT_2が既定のしきい値未満であるときにINHIB_Pと示される部分抑止制御と称されるものをドライバ260に提供するように設計された、測定値VBFT_2のためのウォッチドッグ252を実装する。説明される例では、この既定のしきい値は、8V~11V、例えば、10.8Vである。
【0049】
マイクロコントローラ242は、さらに、測定値VBAT1_1が既定のしきい値未満であるときにINHIB_Tと示される完全抑止制御として知られるものをドライバ260に提供するように設計された、測定値VBAT1_1のためのウォッチドッグ254を実装する。説明される例では、この既定のしきい値は、5V~8V、例えば、5.5Vである。
【0050】
マイクロコントローラ242は、さらに、測定値VBAT1_2が既定のしきい値未満であるときにソフトウェア抑止制御INHIB_Lを制御確立デバイス244に提供するように設計された、測定値VBAT1_2のためのウォッチドッグ256を実装する。説明される例では、この既定のしきい値は、5V~8V、例えば、5.5Vである。
【0051】
電圧VBFTの測定値のための既定のしきい値は電圧VBAT1の測定値のための既定のしきい値よりも高いことは理解されるであろう。実際に、Liイオン・バッテリは、たとえわずかなものでも、不足電圧が生じた場合には、発火し、および/または有毒ガスを放出するリスクがある。他方で、このようなリスクは鉛酸バッテリについては非常に緩やかであり、これにより、より大きな不足電圧が許容され得る。
【0052】
マイクロコントローラ242は、さらに、非意図的始動検出デバイス258を実装する。マイクロコントローラ242において障害が起きた場合には、非意図的始動が発生するリスクがある。この場合には、障害のあるマイクロコントローラ242は、受信されるモード要求MRがオルタネータモードの使用を指示する(自動車が停止されている)間に、モータモードに変化し、モータモードへの変更を指示するモード選択MSをドライバ260へ送信してしまうリスクがある。それゆえ、非意図的始動検出デバイス258は、モード要求MRがオルタネータモードを指示する間に、モード選択MSがモータモードをいつ指示したのかを検出するように設計されている。この場合には、非意図的始動検出デバイス258は、部分抑止制御INHIB_Pをドライバ260へ送信するように設計されている。
【0053】
非意図的始動検出デバイス258が、マイクロコントローラ242によって送信されたモード選択MSを実際に受信したことを確実にするために、非意図的始動検出デバイス258は、ドライバ260に接続されており、モード選択MSを有するマイクロコントローラ242の出力ピンに接続されたマイクロコントローラ242の入力ピンを監視するように設計されている。
【0054】
加えて、説明される例では、マイクロコントローラ242は、機能レベルおよび監視レベルと呼ばれる、少なくとも部分が構造的に分離した、2つの実行レベルを有する。デバイス244、246、248、254は、
図2においてハッチングによって指示されるように、マイクロコントローラ242の機能レベルにおいて実施され、それに対して、デバイス252、256、258は、
図2においてハッチングの不存在によって指示されるように、マイクロコントローラ242の監視レベルにおいて実施される。構造的分離は、(同時に実施され得る)2つの機構を用いることができる。第1の機構によれば、処理ユニットが、それぞれ2つのレベルに専用のものである2つの別個のコアを含む。それゆえ、マイクロコントローラ242は、2つのレベルの各々のデバイスが、このレベルに関連付けられたコアによってもっぱら実行され、他のコアによって実行されないように設計されている。第2の機構によれば、主メモリの2つの既定のメモリ範囲が、それぞれ、2つのレベルに専用のものとなっている。それゆえ、マイクロコントローラ242は、2つのレベルの各々のデバイスが、このレベルに関連付けられたメモリ範囲をもっぱら用い、他のメモリ範囲を用いないように設計されている。
【0055】
制御システム108はマイクロコントローラ242のウォッチドッグ240をさらに備える。このウォッチドッグ240は、マイクロコントローラ242における障害の検出が起きた場合に、完全抑止制御INHIBIT_Tをドライバ260に提供するように設計されている。
【0056】
次に、ドライバ260がより詳細に説明される。説明される例では、ドライバ260の少なくとも部分は特定用途向け集積回路(ASIC)によって実施される。
【0057】
ドライバ260は、制御管理デバイス262、ならびに2つの増幅器、それぞれ、ハイサイド264およびローサイド266を含む。
【0058】
制御管理デバイス262は、マイクロコントローラ242からの制御cmdを受信し、制御cmdから、入力制御信号
【数1】
を2つの増幅器264、266にそれぞれ提供するように設計されている。入力制御信号
【数2】
は互いに実質的に相補的である。入力制御信号
【数3】
は、回転電気機械104が、マイクロコントローラ242が動作するモードに従ってモータモードまたはオルタネータモードで動作することができるよう、スイッチ222、224に提供される出力制御信号
【数4】
をそれぞれ取得するために、増幅器264、266によってそれぞれ増幅される。
【0059】
制御管理デバイス262は、さらに、部分抑止制御INHIB_Pを受信し、部分抑止制御INHIB_Pが受信される限りは、制御管理デバイス262が、増幅器264、266に提供される入力制御信号
【数5】
を、自身で、すなわち、マイクロコントローラ242から受信される制御cmdおよびモード選択MSとは関わりなく確立するように設計されている、劣化オルタネータモードとして知られるもので動作するように設計されている。入力制御信号
【数6】
は、この場合も先と同様に、回転電気機械104がオルタネータモードで動作することができるよう、スイッチ222、224に提供される出力制御信号
【数7】
をそれぞれ取得するために、増幅器264、266によって増幅される。
【0060】
ドライバ260は、これらのデバイス252、258のうちの任意のものによって提供される部分抑止制御INHIB_Pを受信するためにデバイス252、258に接続された部分抑止入力270をさらに備える。この部分抑止入力270は、劣化オルタネータモードに変更するべく、受信された各部分抑止制御INHIB_Pを制御管理デバイス262に提供するために、ドライバ260の制御管理デバイス262にさらに接続されている。
【0061】
ドライバ260は、ウォッチドッグ254、240に、これらのデバイス254、240のうちの任意のものによって提供される完全抑止制御INHIB_Tを受信するために接続された完全抑止入力268をさらに備える。完全抑止制御INHIB_Tが完全抑止入力268上で受信される限りは、ドライバ260は、マイクロコントローラ242から受信される制御cmdとは関わりなく、スイッチ222、224を開放状態のまま維持する出力制御信号
【数8】
を提供するように設計されている。この機能が遂行される仕方が後に
図3を参照して説明される。
【0062】
制御システム108は、データバス204に、および電圧VBAT1を受電するために(例えば、入力232を介して)DC電圧源206に接続されたシステムベーシスチップ(system basis chip、SBC)238をさらに備える。システムベーシスチップ238は、電圧VBAT1からの、特に、マイクロコントローラ242のため、およびドライバ260のための、1つまたは複数の供給電圧を提供すること、データバス204とマイクロコントローラ242との間でメッセージを伝送すること、ならびにマイクロコントローラ242を監視することを含む、いくつかの機能を遂行するように設計されている。後者の機能を遂行するために、システムベーシスチップ238はウォッチドッグ240を含む。
【0063】
電圧VBAT1は、電力をドライバ260およびマイクロコントローラ242に供給するために用いられることは理解されるであろう。それゆえ、電圧VBAT1の不足電圧は制御システム108にとって重大な障害である。これが、ウォッチドッグ254が、スイッチ222、224を常時開放状態のまま維持するように意図された完全抑止制御INHIB_Tを提供する理由である。他方で、電圧VBFTの不足電圧は(いずれにせよ制御システム108にとっては)さほど重大ではなく、このため、劣化オルタネータモードが維持され得る。これが、デバイス252の抑止制御がドライバ260の部分抑止入力270に提供される理由である。
【0064】
次に、完全抑止機能を遂行する要素が
図3を参照して説明される。
【0065】
図3に示されるように、ハイサイド増幅器264、またはローサイド増幅器266は、入力制御信号cmd*、または
【数9】
を受信し、この入力制御信号cmd*、または
【数10】
を増幅して出力制御信号CMD*、または
【数11】
を取得し、出力制御信号CMD*、または
【数12】
を、ハイサイドスイッチ222、またはローサイドスイッチ224に、それを開放または閉鎖するために適用するように設計されている。
【0066】
各増幅器264、266は、この増幅器264、266のための供給電圧を受電するように意図された正の(
図3において+と示される)および負の(
図3において-と示される)供給端子の2つの供給端子を有する。負の供給端子はハイサイド増幅器222またはローサイド増幅器224の電流出力端子に接続されている。
【0067】
ドライバ260は、それぞれの供給電圧を提供するために、それぞれ、増幅器264、266の、正の端子と負の端子との間に接続された2つのブートストラップキャパシタ302、304をさらに含む。
【0068】
ドライバ260は、電圧、説明される例では、電圧VBAT1から2つのブートストラップキャパシタ302、304をそれぞれ充電するための2つの充電デバイス306、308をさらに含む。充電デバイス306は、例えば、電荷ポンプを含む。後者は、例えば、4つのスイッチ3111、3112、3113、3114を介して電圧VBAT1およびキャパシタ302に接続されたキャパシタ309を含む。これらは、キャパシタ309を電圧VBAT1およびブートストラップキャパシタ302に交互に接続するように制御される。充電デバイス308は、例えば、電流が電圧VBAT1からブートストラップキャパシタ304へ流れることを可能にするダイオード313を含む。
【0069】
ドライバ260はハイサイド増幅器264のための抑止デバイス310をさらに含む。抑止デバイス310は、完全抑止制御INHIB_Tを受信するために完全抑止入力268に接続されており、完全抑止制御INHIB_Tを受信すると、出力制御信号CMD*が、受信された入力制御信号cmd*に関係なくハイサイドスイッチ222を開放させるよう、ハイサイド増幅器364の供給端子の間の供給電圧を低下させるように設計されている。
【0070】
説明される例では、抑止デバイス310は、完全抑止制御INHIB_Tを受信すると、ハイサイド増幅器264の供給端子を短絡するように設計されており、これはブートストラップキャパシタ302を放電し、ハイサイド増幅器264のための供給電圧を低下させる。例として、抑止デバイス310は、この供給電圧を解消するように設計されている。供給電圧の低減は、出力制御信号CMD*の低減をもたらし、これにより、一度に、この出力制御信号CMD*は、たとえ、その最大値においても、ハイサイドスイッチ222を閉鎖させるためにもはや十分でなくなる。それゆえ、前記スイッチは開放したままとどまる。
【0071】
より正確には、説明される例では、抑止デバイス310は、正の供給端子に接続された電流入力端子、負の供給端子に接続された電流出力端子、および制御端子を有する、制御可能短絡スイッチを含む。さらに、ドライバ260は、完全抑止入力268と抑止デバイス310との間に接続されたレベルシフタ312を含む。制御可能短絡スイッチは、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0072】
完全抑止入力268に適用される各完全抑止制御INHIB_Tは、電気的グランドGND2に対する電圧の形態である。レベルシフタ312は、この電圧を受電し、それを、完全抑止制御INHIB_Tを制御可能短絡スイッチの制御端子とハイサイド増幅器264の負の端子との間の電圧の形態で提供するためにシフトさせるように設計されている。
【0073】
同様に、ローサイド増幅器266を抑止するために、ドライバ260は抑止デバイス314およびレベルシフタ316を含む。
【0074】
上述のことに基づき、スイッチ222、224の完全抑止機能は、増幅器264、266によって受信される入力制御信号
【数13】
とは関わりないことが明らかである。それゆえ、制御管理デバイス262において障害が起きた場合に、2つのスイッチ222、224を開放することが依然として可能である。さらに、上述された解決策は、より単純な構成要素である、低減された数の構成要素を用い、これにより、抑止が高速である。説明される例では、完全抑止入力268への完全抑止制御INHIB_Tの適用と、増幅器264、266の実効的な抑止との間の時間は、500μs未満、例えば、400μsである。障害の発生とスイッチ222、224の開放との間に一般的に必要とされる遅延は約1msである。それゆえ、抑止制御を実施するための400μsの遅延は、一般的には十分である、600μsを障害の検出のために残す。
【0075】
本発明は、上述された実施形態に限定されない。実際に、これに変更がなされ得ることが当業者には明らかであろう。
【0076】
例として、ウォッチドッグ252、254のうちの少なくとも一方は、マイクロコントローラ242の外部において、1つまたは複数のあらかじめ配線された(すなわち、コンピュータプログラムを実施しない)構成要素において実現され得るであろう。
【0077】
さらに、概して、ウォッチドッグ246、248、252、254、256の各々は、(マイクロコントローラ242がモータモードになっているのか、それともさもなければ、オルタネータモードになっているのかにかかわらず)スイッチ222、224を開放させるために、完全抑止入力268に、またはドライバを劣化オルタネータモードに変更するために、部分抑止入力270に接続され得る。
【0078】
加えて、使用される用語は、上述された実施形態の要素に限定されると理解されるべきでなく、むしろ、当業者が自分の一般知識から推論することができる全ての同等な要素を網羅すると理解されるべきである。