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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】車両加振装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20221118BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G01M7/02 D
G01M17/007 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021030103
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131250
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 進
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/218251(WO,A1)
【文献】特開2021-025771(JP,A)
【文献】特開2021-025772(JP,A)
【文献】特開2021-025773(JP,A)
【文献】特開2011-163938(JP,A)
【文献】特開昭61-292035(JP,A)
【文献】特開2007-147394(JP,A)
【文献】特開2017-009545(JP,A)
【文献】特開2005-300312(JP,A)
【文献】特開2016-121961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/02- 7/06
G01M 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左右一対の車輪を備える車両に振動を加える車両加振装置において、
前記車輪が夫々載置される複数の加振機本体を備え、
前記加振機本体は、
前記車両の前方向方に間隔を存して前記車輪が載置される前方シャフト及び後方シャフトと、
前記前方シャフト及び前記後方シャフトの少なくとも一方を前後方向に移動させることで前記車輪に振動を加えるアクチュエータと、を備え、
前記前方シャフトの前記車両の左右方向内側の端部が前記前方シャフトの左右方向外側の端部よりも車両前方に位置するように前記前方シャフトが傾斜していることを特徴とする車両加振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両加振装置であって、
前記アクチュエータを前記加振機本体ごとに個別に制御する制御装置を備え、
前記車輪は、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの前輪と、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの後輪と、で構成され、
前記制御装置は、前記車両の左右方向一方の前記前輪及び前記後輪に対応する前記前方シャフトを夫々前方に移動させ、前記車両の左右方向他方の前記前輪及び前記後輪に対応する前記前方シャフトを後方に移動させることで、前記車両を左右方向他方に移動させることができることを特徴とする車両加振装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両加振装置であって、
前記アクチュエータを前記加振機本体ごとに個別に制御する制御装置を備え、
前記車輪は、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの前輪と、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの後輪と、で構成され、
前記制御装置は、前記車両の左右方向一方の前記前輪及び前記車両の左右方向他方の前記後輪に対応する前記前方シャフトを夫々前方に移動させ、前記車両の左右方向他方の前記前輪及び前記車両の左右方向一方の前記後輪に対応する前記前方シャフトを後方に移動させることで、前記車両の前方が左右方向他方に移動するように前記車両を回転させることができることを特徴とする車両加振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に振動を加えて自動車から異音などが発生しないかどうかを検査するための車両加振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバーがテスト走行路で自動車を走行させて自動車から異音などの不具合があるか否かを検査していた。しかしながら、この場合、テスト走行路が必要となるため広い敷地が必要となる。そこで、近年、自動車に振動を加えて自動車から異音などが発生しないかどうかを検査するための車両加振装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。この車両加振装置によれば、テスト走行路のような広い敷地を必要とすることなく自動車の検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/218251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両加振装置では、従来のテスト走行路と同様の振動を自動車に加えられることが望まれる。
本発明は、以上の点に鑑み、従来よりもテスト走行路の振動に近い振動を自動車に加えることができる車両加振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
少なくとも左右一対の車輪(例えば、実施形態の車輪W。以下同一。)を備える車両(例えば、実施形態の車両V。以下同一。)に振動を加える車両加振装置(例えば、実施形態の車両加振装置1。以下同一。)において、
前記車輪が夫々載置される複数の加振機本体(例えば、実施形態の加振機本体10。以下同一。)を備え、
前記加振機本体は、
前記車両の前方向方に間隔を存して前記車輪が載置される前方シャフト(例えば、実施形態の前方シャフト16。以下同一。)及び後方シャフト(例えば、実施形態の後方シャフト17。以下同一。)と、
前記前方シャフト及び前記後方シャフトの少なくとも一方を前後方向に移動させることで前記車輪に振動を加えるアクチュエータ(例えば、実施形態の油圧アクチュエータ12。以下同一。)と、を備え、
前記前方シャフトの前記車両の左右方向内側の端部が前記前方シャフトの左右方向外側の端部よりも車両前方に位置するように前記前方シャフトが傾斜していることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、従来よりもテスト走行路の振動に近い振動を車両に加えることができる。
【0007】
[2]また、本発明においては、
前記アクチュエータを前記加振機本体ごとに個別に制御する制御装置(例えば、実施形態のコントローラ40。以下同一。)を備え、
前記車輪は、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの前輪(例えば、実施形態の前輪W。以下同一。)と、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの後輪(例えば、実施形態の後輪W。以下同一。)と、で構成され、
前記制御装置は、前記車両の左右方向一方の前記前輪及び前記後輪に対応する前記前方シャフトを夫々前方に移動させ、前記車両の左右方向他方の前記前輪及び前記後輪に対応する前記前方シャフトを後方に移動させることで、前記車両を左右方向他方に移動させることができるように構成することが好ましい。
【0008】
本発明によれば、車両加振装置に対して、車両が左右方向にずれて配置されている場合であっても、ドライバーが車両を移動させることなく、アクチュエータを制御することで、車両加振装置の適正箇所に車両が配置されるように車両を移動させることができる。
【0009】
[3]また、本発明においては、
前記アクチュエータを前記加振機本体ごとに個別に制御する制御装置を備え、
前記車輪は、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの前輪と、前記車両の左右に間隔を存して配置された2つの後輪と、で構成され、
前記制御装置は、前記車両の左右方向一方の前記前輪及び前記車両の左右方向他方の前記後輪に対応する前記前方シャフトを夫々前方に移動させ、前記車両の左右方向他方の前記前輪及び前記車両の左右方向一方の前記後輪に対応する前記前方シャフトを後方に移動させることで、前記車両の前方が左右方向他方に移動するように前記車両を回転させることができるように構成することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、車両加振装置に対して、車両が斜めに配置されている場合であっても、ドライバーが車両を移動させることなく、アクチュエータを制御することで、車両加振装置の適正箇所に車両が配置されるように車両を回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発明の実施意形態の車両加振装置を示す説明図。
図2】前載置板部及び加振機の構成を示す斜視図である。
図3】加振機の構成を示す斜視図である。
図4】加振機の構成を示す平面図である。
図5図4のC-C線に沿った断面などを示す図である。
図6】加振装置において車両が加振可能に載置された状態を示す図である。
図7】加振時に車輪に作用する押圧力及びその分力成分を示す説明図である。
図8】本実施形態の軸受を断面で示す説明図である。
図9】発明の他の実施形態の車両加振装置で車両を右に移動させるときの制御を示す説明図である。
図10】他の実施形態の車両を回転させるときの制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、発明の一実施形態に係る車両加振装置について説明する。本実施形態の車両加振装置1は、車両V(図6参照)を検査するために、車輪W(図6参照)を介して車両Vを加振するものであり、4つの加振機本体10を備えている。
【0013】
この加振装置1では、後述するように、4つの加振機本体10によって、検査対象の車両Vにおける4つの車輪Wがそれぞれ加振され、それにより、車両Vにおける異音・騒音などの発生の有無などが検査される。なお、以下の説明では、便宜上、図1の矢印A1-A2のA1側を「前」、A2側を「後」といい、矢印B1-B2のB1側を「右」、B2側を「左」といい、上側を「上」、下側を「下」という。
【0014】
加振装置1は、検査時に車両Vを載置するための載置台2を備えており、この載置台2は、床F(図5,6参照)上に設置されている。この載置台2は、左半部と右半部が面対称に構成されているので、以下、左半部を例にとって説明する。
【0015】
この載置台2の左半部は、前後方向に延びる載置部4と、この載置部4の前後に設けられた前後のスロープ部3,3とを備えている。前スロープ部3は、その表面が載置部4の前端に連続する平面部と、この平面部に連続して前方に斜め下がりに延びる傾斜面とになっている。
【0016】
また、後スロープ部3は、その表面が載置部4の後端に連続する平面部と、この平面部に連続して後方に斜め下がりに延びる傾斜面とになっている。車両Vは、検査を開始する際、床面から後スロープ部3を介して載置部4上に移動するとともに、検査の終了後、載置部4から前スロープ部3を介して床面に移動する。
【0017】
一方、載置部4は、上方から下方に向かって順に、前後の載置板部5,6、天板部7及びベース板部8などを備えている。ベース板部8は、前後方向に延びる平板状のものであり、その前後端部が前後のスロープ部3,3に一体に固定されている。ベース板部8は、床面上に載置され、図示しない固定具(例えばアンカーボルト)を介して、床Fに堅固に固定されている。
【0018】
天板部7は、前後方向に延びており、ベース板部8と平行に配置されている。また、前載置板部5は、前後方向に延びており、その前端部は、前スロープ部3の平面部に載置されているとともに、その左右両端部には、一対の長孔5a,5aが形成されている。前載置板部5の前端部は、この長孔5aの縁部において、油圧クランプ装置9を介して前スロープ部3に固定されている。
【0019】
また、前スロープ部3には、左右方向に延びる長孔3aが形成されており、油圧クランプ装置9は、前載置板部5の長孔5aと前スロープ部3の長孔3aに嵌合した状態で、前載置板部5及び前スロープ部3を上下方向から挟持している。それにより、前載置板部5は、前スロープ部3に固定されている。
【0020】
前載置板部5の中央部には、開口5cが設けられている。この開口5cは、平面視矩形に形成され、前載置板部5を上下方向に貫通している。この開口5cの下方には、加振機本体10(図3参照)が配置されており、この加振機本体10の詳細については後述する。
【0021】
さらに、前載置板部5の後端部及び後載置板部6の前端部には、長孔5b,6bが形成されている。油圧クランプ装置9と同様の油圧クランプ装置9Aが、これらの長孔5b,6bに嵌合した状態で、前載置板部5及び後載置板部6を挟持しており、それにより、前載置板部5及び後載置板部6は油圧クランプ装置9Aによって互いに固定されている。
【0022】
以上の構成により、油圧クランプ装置9,9Aによる固定が解除されている状態では、前載置板部5は、長孔5a,5bの前後方向の長さ分だけ、前スロープ部3に対して相対的に前後方向に移動可能になっている。
【0023】
一方、後載置板部6の後端部は、その上面が前述した前載置板部5の前端部の上面と同じ高さに配置され、前載置板部5の前端部と面対称に構成されている。すなわち、後載置板部6の後端部は、後スロープ部3の平面部に載置されており、その左右両端部には、一対の長孔6a,6aが形成されている。
【0024】
また、後スロープ部3にも、左右方向に延びる長孔3aが形成されており、油圧クランプ装置9は、後載置板部6の長孔6aと、後スロープ部3の長孔(図示省略)に嵌合した状態で、後載置板部6及び後スロープ部3を上下方向から挟持している。それにより、後載置板部6は、後スロープ部3に固定されている。
【0025】
さらに、後載置板部6の中央部には、開口6cが設けられている。この開口6cは、平面視矩形に形成され、後載置板部6を上下方向に貫通しているとともに、前載置板部5の前述した開口5cと同じサイズに構成されている。また、この開口6cの下方には、加振機本体10が配置されている。
【0026】
以上の構成により、油圧クランプ装置9,9Aによる固定が解除されている状態では、後載置板部6は、長孔6a,6bの前後方向の長さ分だけ、後スロープ部3に対して相対的に前後方向に移動可能になっている。
【0027】
次に、図2図7を参照しながら、加振機本体10について説明する。なお、図2は、理解の容易化のために、天板部7を省略した構成を示している。本実施形態の加振装置1では、前載置板部5の開口5cの下方に配置された加振機本体10と、後載置板部6の開口6cの下方に配置された加振機本体10は同様に構成されているので、以下、前載置板部5の開口5cの下方に配置された加振機本体10を例にとって説明する。
【0028】
加振機本体10は、平面視矩形の可動ベース板11上に設けられており、この可動ベース板11は、その底面がベース板部8の上面に面接触した状態で、図示しないマグネットクランプを介して、ベース板部8に固定されている。
【0029】
また、ベース板部8の上面には、4つの位置変更装置30及び多数のフリーベアリング(図示せず)が設けられている。4つの位置変更装置30は、平面視矩形に配置されており、可動ベース板11は、これらの位置変更装置30に取り囲まれるように設けられている。
【0030】
各位置変更装置30は、複数の歯付きプーリと、これらのプーリに巻き掛けられた歯付きベルトと、1つの歯付きプーリを駆動するモータ機構などを備えている(いずれも図示せず)。各位置変更装置30の歯付きベルトの両端部は、可動ベース板11の4つの所定部位に連結されている。また、多数のフリーベアリングは、可動ベース板11の下方の位置に配置されている。
【0031】
以上の構成により、マグネットクランプによる固定が解除された状態では、可動ベース板11は、4つの位置変更装置30におけるプーリの回転動作に伴って、多数のフリーベアリングを転動させながら、ベース板部8上を移動する。すなわち、可動ベース板11は、ベース板部8に対する相対的な位置が変更可能に構成されている。そして、可動ベース板11は、そのように変更された位置において、マグネットクランプを介してベース板部8に固定される。
【0032】
加振機本体10は、図3図5に示すように、油圧アクチュエータ12、加振アーム13、2つのボールジョイント20,20、2つの加振シャフト14,14、2つの静圧軸受15,15、前方シャフト16、後方シャフト17及び通路台18などを備えている。
【0033】
なお、図5などでは、理解の容易化のために、前方シャフト16及び後方シャフト17の断面部分のハッチングが省略されている。また、本実施形態では、油圧アクチュエータ12がアクチュエータに相当し、加振アーム13が第1動力伝達部に相当し、加振シャフト14が第2動力伝達部に相当し、前方シャフト16が加振部に相当する。
【0034】
油圧アクチュエータ12は、油圧シリンダ12a、ピストンロッド12b、ブラケット12c及び油圧制御回路機構12dなどを備えている。油圧シリンダ12aは、ブラケット12cを介して、可動ベース板11及び前載置板部5に固定され、支持されている。
【0035】
この油圧シリンダ12aには、油圧制御回路機構12dが接続されている。この油圧制御回路機構12dからの油圧が供給されることにより、油圧シリンダ12aは、ピストンロッド12bを前後方向に駆動する。
【0036】
この油圧制御回路機構12dは、電磁スプール弁機構及び油圧回路などを組み合わせたものであり、コントローラ40(制御装置。図4参照。)に電気的に接続されている。油圧制御回路機構12dでは、コントローラ40によって電磁スプール弁機構が制御されることにより、油圧シリンダ12aに供給する油圧が制御される。それにより、ピストンロッド12bの移動状態及び往復動状態が制御されることで、前方シャフト16の動作状態が制御される。
【0037】
このコントローラ40は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、加振制御処理を実行する。
【0038】
この加振制御処理では、コントローラ40によって、油圧制御回路機構12dから油圧シリンダ12aに供給される油圧が制御されることで、前方シャフト16による車輪Wの加振状態が制御される。それにより、車両Vが車輪Wを介して加振されることによって、車両Vにおける異音・騒音などの発生の有無が検査される。
【0039】
油圧アクチュエータ12のピストンロッド12bの先端部には、加振アーム13が連結されており、それにより、加振アーム13は、ピストンロッド12bを介して前後方向に駆動/加振されるように構成されている。
【0040】
加振アーム13の左右両端部は、ボールジョイント20,20を介して、加振シャフト14,14の前端部にそれぞれ連結されている。
【0041】
加振シャフト14,14は、左右方向に間隔を存して配置され、互いに平行に前後方向に所定長さで延びている。加振シャフト14,14は、断面円形の棒状の部材であり、静圧軸受15,15によって前後方向に摺動自在に支持されている。
【0042】
各静圧軸受15の内周面には、リセス(図示せず)が所定間隔で前後方向に並べて配置されており、これらのリセスで油圧を発生させることによって、加振シャフト14は摺動自在に支持される。静圧軸受15は、その上面が前載置板部5に、下面が可動ベース板11にそれぞれ固定されている。
【0043】
また、加振シャフト14,14の後端部には、軸受16a,16aがそれぞれ設けられている。前方シャフト16は、可動ベース板11の上面から所定高さの位置で左右方向に延び、その両端部がこれらの軸受16a,16aによってそれぞれ支持されている。
【0044】
以上の構成により、前方シャフト16は、油圧アクチュエータ12によって、加振位置(例えば、図5に示す位置)と押出位置(図示せず)との間で少なくも駆動されるようになっている。さらに、油圧アクチュエータ12が発生した前後方向の振動は、加振アーム13及び加振シャフト14,14を介して、前方シャフト16に入力される。
【0045】
この前方シャフト16には、図示しない駆動機構が内蔵されており、車輪Wの加振時には前方シャフト16は、これが車輪Wに対して回転抵抗とならないように、駆動機構によって回転駆動されたり、自由回転したりするように構成されていてもよい。
【0046】
一方、前方シャフト16の後方には、後方シャフト17が、前方シャフト16に対向するとともに、互いに平行に設けられている。後方シャフト17の左右両端部は、一対の軸受17a,17aによって支持されており、これらの軸受17a,17aは、可動ベース板11上に固定されている。この後方シャフト17は、車輪Wの加振時に、後方シャフト17が車輪Wに対して回転抵抗とならない方向に回転するように構成されていてもよい。
【0047】
さらに、前述した通路台18は、可動ベース板11上の静圧軸受15,15の間に配置され、油圧アクチュエータ(図示せず)が内蔵されている。通路台18は、この油圧アクチュエータによって、待避位置(例えば、図5に示す位置)と、押出位置にある状態の前方シャフト16に当接する当接位置(図示せず)との間で少なくとも前後方向に駆動される。
【0048】
通路台18が当接位置まで移動し、押出位置にある前方シャフト16に当接した場合、通路台18によって前方シャフト16が回転不能に保持される。これは、加振動作の終了後、車両Vの車輪Wが前方シャフト16を乗り越えながら前方に移動する際、前方シャフト16を回転停止状態に保持することで、車輪Wの駆動力が前方シャフト16に伝達され、車輪Wが前方に移動しやすくするためである。図示しない駆動機構が前方シャフトに内蔵されている場合は、駆動機構によって前方シャフト16が回転不能に保持される。
【0049】
以上のように、載置台2の左半部は構成されており、載置台2の右半部も同様に構成されている。
【0050】
次に、以上のように構成された加振装置1において、車両Vを検査する際の動作について説明する。まず、油圧クランプ装置9,9A及びマグネットクランプを緩め、2枚の前載置板部5、2枚の後載置板部6及び4つの可動ベース板11を移動可能な状態に設定する。
【0051】
次いで、4つの可動ベース板11を、4つの位置変更装置30によって検査対象の車両Vのホイールベース及びトレッドに対応する位置にそれぞれ移動させた後、マグネットクランプによってベース板部8に固定する。可動ベース板11の移動に伴い、可動ベース板11と同時に、2枚の前載置板部5及び2枚の後載置板部6がホイールベース及びトレッドに対応する位置に移動する。そして、その位置で、これらの前載置板部5及び後載置板部6を、油圧クランプ装置9Aを介して互いに固定すると同時に、油圧クランプ装置9,9を介して前後のスロープ部3,3に固定する。
【0052】
次いで、各加振機本体10における油圧アクチュエータ12を駆動し、後方シャフト17及び前方シャフト16の間隔を、検査対象の車両Vの車輪Wのサイズに合わせた値に設定する。以上により、検査のための準備動作が終了する。
【0053】
次に、車両Vを後スロープ部3から載置台2に乗り上げるように移動させ、図6に示すように、4つの車輪Wが、前載置板部5の開口5c及び後載置板部6の開口6cに嵌まり込んで下方に移動し、後方シャフト17及び前方シャフト16によって前後方向から挟持された状態にする。
【0054】
この状態で、コントローラ40によって加振制御処理が実行されることにより、油圧アクチュエータ12によって前方シャフト16が前後方向に加振され、それに伴って、車輪Wが加振される。この加振中、前方シャフト16の押圧力Foが車輪Wに作用した際、図7に示すように、押圧力Foの2つの分力成分Fx,Fyが車輪Wに作用することになる。すなわち、前方シャフト16を前後方向に加振することによって、車輪Wは、前後方向及び上下方向に同時に加振されることになる。
【0055】
さらに、前方シャフト16は、上述した加振制御処理では、複数の周期関数の態様の加振入力によって加振されるように構成されており、それにより、左右の車輪W,Wをそれぞれ加振する2つの加振機本体10,10の間において、前方シャフト16への加振入力の位相を互いにずらすことによって、車輪Wは左右方向にも加振されることになる。以上のように、本実施形態の加振装置1の場合、前後方向をx軸方向とし、上下方向をy軸とし、左右方向をz軸として、車輪Wを3次元方向に加振可能に構成されている。
【0056】
以上のように加振動作を実行し、車両Vの検査が終了した場合、油圧アクチュエータ12によって、前方シャフト16を図6に示す検査位置から、それよりも後方シャフト17に近づいた押出位置(図示せず)まで移動させる。これと同時に、油圧アクチュエータによって、通路台18を図6に示す待避位置から前方シャフト16側に移動させる。それにより、通路台18の後端部が押出位置にある前方シャフト16に当接することで、前方シャフト16は回転停止状態に保持される。
【0057】
その状態で、車両Vが前方に移動を開始することにより、車輪Wは、回転停止状態の前前方シャフト16を乗り越えながら、2つのシャフト16,17間から容易に抜け出すことができる。それにより、車両Vは、前方に移動し、前スロープ部3を介して載置台2から降りることができる。
【0058】
また、本実施形態の前方シャフト16の車両Vの左右方向内側の端部が前方シャフト16の左右方向外側の端部よりも車両V前方に位置するように前方シャフト16が傾斜している。車両Vの4つの車輪Wのうち、前輪に接触する前方シャフト16のみに対して、このように傾斜させている。このように、前方シャフト16を傾斜させて車輪Wに加わる振動を検出したところ、テスト走行路で検査した振動に最も近い振動特性データを得ることができた。傾斜角度としては、今回のテストでは1.9度~3.0度が好ましかったが、検査対象の車種などに応じて重量などが異なるため、傾斜角度は車種などに応じて適宜設定することが好ましい。
【0059】
比較例として、前方シャフト16の車両Vの左右方向内側の端部が前方シャフトの左右方向外側の端部よりも車両後方に位置するように前方シャフトを傾斜させて振動を検出してみたが、テスト走行路の振動に近い振動特性データは得ることができなかった。
【0060】
また、前方シャフト16の傾斜角度は、微調整可能に構成してもよい。例えば、図8に断面で示すように、前方シャフト16の端部を軸支する軸受16aを、前方シャフト16の前後方向におけて線接触で接触するように構成し、シムを挟むなどして、加振シャフト14に対する軸受16aの取り付け位置を前後方向で調整することにより、前方シャフト16の傾斜角度を微調整できるように構成することもできる。
【0061】
図9図10は、発明の他の実施形態の車両加振装置1を示している。図9及び図10の車両加振装置1では、車両Vの4つの車輪Wに夫々接触するすべての前方シャフト16が、その車両Vの左右方向内側の端部が前方シャフト16の左右方向外側の端部よりも車両V前方に位置するように傾斜している。図9及び図10の車両加振装置1の他の構成は、図1図8の実施形態の車両加振装置1とすべて同一に構成されている。
【0062】
図9を参照して、この車両加振装置1では、車両Vの停車位置が一点鎖線で示した中心位置よりも左にずれている場合には、右前輪Wの前方シャフト16を実線で示した加振位置から点線で示した押出位置に押し出す。また、これと同時に、左前輪Wの前方シャフト16を実線で示した押出位置から点線で示した加振位置に引き戻す。
【0063】
また、これと同時に、右後輪Wの前方シャフト16を実線で示した加振位置から点線で示した押出位置に押し出す。また、これと同時に、左後輪Wの前方シャフト16を実線で示した押出位置から点線で示した加振位置に引き戻す。
【0064】
これにより、各車輪Wに右方向への力Fb1が発生し、車両Vには合計4Fb1の力が加わって車両Vが右方向へ移動する。従って、図9及び図10の車両加振装置1によれば、ドライバーが車両Vを移動させることなく、車両加振装置1によって、車両Vの停車位置を調整することができる。
【0065】
図10を参照して、この車両加振装置1では、車両Vの停車位置が一点鎖線で示した中心位置に対して左斜めにずれている場合には、右前輪Wの前方シャフト16を実線で示した加振位置から点線で示した押出位置に押し出す。また、これと同時に、左前輪Wの前方シャフト16を実線で示した押出位置から点線で示した加振位置に引き戻す。
【0066】
また、これと同時に、右後輪Wの前方シャフト16を実線で示した押出位置から点線で示した加振位置に引き戻す。また、これと同時に、左後輪Wの前方シャフト16を実線で示した加振位置から点線で示した押出位置に押し出す。
【0067】
これにより、左右の前輪Wでは右方向への力Fb1が発生し、左右の後輪Wでは左方向へのFb2の力が発生し、車両Vには右回りの力が加わって車両Vが右周り方向へ回転する。従って、図9及び図10の車両加振装置1によれば、ドライバーが車両Vを移動させることなく、車両加振装置1によって、車両Vの停車位置を調整することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態においては、いずれも前方シャフト16を進退させるものを説明したが、前方シャフト16と後方シャフト17との相対的な距離が変化すればよい。従って、例えば、後方シャフト17を進退させるように構成してもよく、また、前方シャフト16と後方シャフト17との両方を進退させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 車両加振装置
10 加振機本体
11 稼働ベース板
12 油圧アクチュエータ(アクチュエータ)
13 加振アーム
14 加振シャフト
16 前方シャフト
17 後方シャフト
2 載置台
20 ボールジョイント
3 スロープ部
4 載置部
40 コントローラ(制御装置)
5 前の載置板部
5a 長孔
5b 長孔
5c 開口
6 後の載置板部
6b 長孔
7 天板部
8 ベース板部
9 油圧クランプ装置
9A 油圧クランプ装置
F 床
V 車両
W 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10