(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】複数の発射体追跡のためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/72 20060101AFI20221118BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20221118BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20221118BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G01S13/72
G01S13/87
A63B69/36 522Z
A63B71/06 U
(21)【出願番号】P 2021063824
(22)【出願日】2021-04-02
(62)【分割の表示】P 2019501493の分割
【原出願日】2017-06-27
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507002457
【氏名又は名称】トラックマン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】TRACKMAN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク トゥクセン
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-101294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059072(US,A1)
【文献】特開2005-052501(JP,A)
【文献】特表2017-525521(JP,A)
【文献】特開平08-266701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021651(US,A1)
【文献】特表2018-502688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0107078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
A63B 69/36
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レーダ装置と第2レーダ装置とプロセッサとを備え、複数の発射体を追跡するシステムにおいて、
前記第1レーダ装置は、当該第1レーダ装置の第1視野が、発射される発射体が向かう目標領域の少なくとも一部を覆うように向けられており、
前記第2レーダ装置は、当該第2レーダ装置の第2視野が、前記第1視野の外側であって、かつ、前記目標領域の少なくとも一部を覆うように向けられており、
前記プロセッサは、前記第1レーダ装置及び前記第2レーダ装置からデータを受信し、前記第1レーダ装置から受信したデータに基づいて前記第1視野を
同時に通る第1群の発射体のそれぞれの第1軌道を特定し、前記第2レーダ装置から受信したデータに基づいて前記第2視野を
同時に通る第2群の発射体のそれぞれの第2軌道を特定し、
前記プロセッサは、前記第2軌道の少なくとも1つに対して、当該第2軌道に
関連する前記第1軌道を特定し
、1組の前記第1軌道と前記第2軌道を
関連付けて、前記第1視野と前記第2視野を通る1つの
完全な軌道を作成することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
更に、それぞれの前記第1軌道を時間的に遡ることで、発射体に対応する発射位置を推定することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記目標領域に隣接する所定の発射領域は、複数の個別発射領域に分割されており、それぞれの個別発射領域には、発射領域と関連付けられた装置が予め設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1視野と前記第2視野は、重複領域において互いに重なっていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、
個別発射領域はゴルフ練習場の打出区画であり、発射体はゴルフボールであり、発射位置が軌道に関連付けられ、当該発射位置は対応する1つの個別発射領域に割り当てられることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、
予め設けられたそれぞれの前記装置は、ゴルフボールの軌道と、当該軌道に関連する飛行情報と、を表示するためのスクリーンを有することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、打出区画に予め設けられた前記装置に軌道データを提供し、提供される当該軌道データは、当該打出区画から打ち出されたゴルフボールの軌道に対応していることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
ユーザがシステムへの登録を行い、ユーザが自身の装置のGPS機能を利用可能にした場合に、前記プロセッサはユーザと当該ユーザの位置とを関連付けることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、
複数のユーザが対応する自身の装置にそれぞれ関連付けられた場合において、第1軌道の発射位置が他のユーザの装置の位置と比較して第1のユーザの装置の位置に近いときは、前記プロセッサは、当該第1軌道を第1のユーザの装置に関連付けることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、それぞれのユーザの装置に、直近で発射された一群の発射体の何れかをユーザが発射したか否かを問い合わせることを特徴とするシステム。
【請求項11】
複数の発射体を追跡する方法において、
発射される発射体が向かう目標領域の少なくとも一部を覆う第1視野を有するように向けられた第1レーダ装置からデータを受信し、
前記第1視野の外側であって、かつ、前記目標領域の少なくとも一部を覆う第2視野を有するように向けられた第2レーダ装置からデータを受信し、
前記第1レーダ装置及び前記第2レーダ装置からデータを受信し、前記第1レーダ装置から受信したデータに基づいて前記第1視野を
同時に通る第1群の発射体のそれぞれの第1軌道を特定し、前記第2レーダ装置から受信したデータに基づいて前記第2視野を
同時に通る第2群の発射体のそれぞれの第2軌道を特定し、
前記第2軌道の少なくとも1つに対して、当該第2軌道に対応するとともに当該第2軌道に
関連する前記第1軌道を特定し
、1組の前記第1軌道と前記第2軌道を
関連付けて、前記第1視野と前記第2視野を通る1つの
完全な軌道を作成することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
更に、それぞれの前記第1軌道を時間的に遡ることで、発射体に対応する発射位置を推定することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記目標領域に隣接する所定の発射領域は、複数の個別発射領域に分割されており、それぞれの個別発射領域には、発射領域と関連付けられた装置が予め設けられていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記第1視野と前記第2視野は、重複領域において互いに重なっていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
それぞれの軌道に関連付けられる発射位置は、複数の個別発射領域の1つに対応付けられることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、
個別発射領域はゴルフ練習場の打出区画であり、発射体はゴルフボールであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、
予め設けられたそれぞれの前記装置は、ゴルフボールの軌道と、当該軌道に関連する飛行情報と、を表示するためのスクリーンを有することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
打出区画に予め設けられた前記装置に軌道データを提供し、提供される当該軌道データは、当該打出区画から打ち出されたゴルフボールの軌道に対応していることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
ユーザがシステムへの登録を行い、ユーザが自身の装置のGPS機能を利用可能にした場合に、ユーザと当該ユーザの位置とを関連付けることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
複数のユーザが対応する自身の装置にそれぞれ関連付けられた場合において、第1軌道の発射位置が他のユーザの装置の位置と比較して第1のユーザの装置の位置に近いときは、当該第1軌道を第1のユーザの装置に関連付けることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ゴルフボール等のような単体の発射体の飛行を追跡するためのシステムが知られている。しかし、複数の発射位置から複数の発射体が共通の目標位置へと発射されるような場合の追跡は非常に困難となる。それぞれの発射位置に特定の追跡システムを設けることは可能であるが、発射位置の数によりその設置の費用は非常に高価となり得る。更に、予測不能の間隔で多くの発射体が打ち出される場所では、発射体の軌道が交差(若しくは殆ど交差)する可能性がある。それぞれの発射体について全体の軌道を正確に確認するため、システムには、交差後のそれぞれの軌道部分と、以前の(交差前の)軌道と、を関連付けることが要求される。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、複数の発射体を追跡するシステムに関し、第1レーダ装置は、当該第1レーダ装置の第1視野が、複数の発射位置から発射される発射体が向かう目標領域の少なくとも一部を覆うように向けられており、プロセッサは、第1レーダ装置からデータを受信し、当該データから複数の発射体の軌道を特定し、プロセッサは、それぞれの発射体の軌道に対して、発射体が発射した発射位置を特定し、発射位置に関連付けられた装置に、対応する発射体の軌道を提供する。
【0003】
例示的実施形態によれば、システムは、第2レーダ装置を更に備え、第2レーダ装置は、当該第2レーダ装置の第2視野が、第1視野の外側かつ目標領域の一部、及び、第1視野に含まれる目標領域と重複する部分を少なくとも覆うように向けられる。
【0004】
例示的実施形態によれば、発射位置に関連付けられた装置は、データ表示用の画面を含む。
【0005】
例示的実施形態によれば、複数の時間枠のそれぞれにおいて、プロセッサは、第1レーダ装置からレーダ信号を受信し、各発射体の位置及び速度の値を含む発射体データをレーダ信号から計算する。
【0006】
例示的実施形態によれば、時間枠毎に、プロセッサは、少なくとも1つ前の時間枠からのデータを参照し、特定された各発射体について、発射体データが既存の軌道と相関するかどうかを決定し、発射体データが既存の軌道と相関するとき、プロセッサは、現在の発射体データに相関する既存の軌道を、現在の発射体データで更新する。
【0007】
例示的実施形態によれば、特定された発射体についての現在の発射体データが既存の軌道と相関しないとき、新しい軌道としての処理を開始する。
【0008】
例示的実施形態によれば、各軌道について、プロセッサは発射体の最初の位置を既知の発射位置と比較し、発射体の最初の位置が既知の発射位置と一致する場合、プロセッサはこの発射位置を軌道に割り当てる。
【0009】
例示的実施形態によれば、軌道についての発射体の最初の位置が既知の発射位置と一致しない場合、プロセッサは、軌道に基づいて、発射体の最初の位置から発射体の発射位置まで時間的に逆方向に推定する。
【0010】
例示的実施形態によれば、複数の発射体はゴルフ練習場で打ち上げられるゴルフボールであり、プロセッサは、発射位置と、ゴルフボールがゴルフ練習場へ打ち出される場所である複数の打出区画の既知の位置と、を比較する。各打出区画はプロセッサによって単一の発射位置として識別されることで、打出区画内の任意の場所から打ち出された任意のゴルフボールは、該当する打出区画から発生したものとして特定される。プロセッサは、該当する打出区画に関連する装置に発射体の軌道に対応するデータを提供する。
【0011】
例示的実施形態によれば、システムは第3レーダ装置を更に備え、第3レーダ装置は、当該第3レーダ装置の第3視野が、第1視野及び第2視野の外側かつ目標領域の一部、及び、第1視野及び第2視野の一方に含まれる目標領域と重複する部分を少なくとも覆うように向けられる。
【0012】
例示的実施形態によれば、第1レーダ装置は、目標領域のうち発射位置が配置されている側の端部である第1端部に配置され、第1視野は、発射位置から目標領域の遠端部に向かって目標領域内に延びる。第2レーダ装置は第1側面に配置されており、第1側面は、目標領域の第1端部に面するとともに発射位置の第1部分(当該発射位置のうち第1側面の近傍にある第1位置を含む部分)を含む。第3レーダ装置は第2側面に配置されており、第2側面は、目標領域の第1端部に面するとともに発射位置の第2部分(当該発射位置のうち第2側面の近傍にある第2位置を含む部分)を含む。
【0013】
目標領域の第1端部全体が、第2視野及び第3視野のうちの少なくとも一方の内側にあるように、第2視野及び第3視野が重複している。
【0014】
例示的実施形態によれば、プロセッサは、プロセッサは、ユーザに関連付けられた装置から位置データを受信し、当該装置の位置を既知の発射位置として特定する。
【0015】
例示的実施形態によれば、プロセッサによって受信される位置データは、モバイル機器からのGPSデータである。
【0016】
例示的実施形態によれば、プロセッサは、システムにログインしている複数のユーザの複数の装置のそれぞれを既知の発射位置として特定する。
【0017】
例示的実施形態によれば、プロセッサは、ある発射体が既知の発射位置に関連する可能性があると特定した場合、この既知の発射位置に関連する装置に、軌道に関する情報と、この発射体とこの既知の発射位置が関連するかの確認についての当該装置のユーザへの要求と、を送信する。
【0018】
例示的実施形態によれば、第1レーダ装置は連続波ドップラーレーダである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的第一実施形態に関するレーダ追跡システムを備えるゴルフ練習場の斜視図。
【
図3a】例示的実施形態に関する個々のレーダのコンピュータの動作方法のフローチャート。
【
図3b】ドップラー周波数スペクトルのサンプルを表示するグラフ。
【
図4】例示的実施形態に関する複数の物体を追跡する方法のフローチャート。
【
図5】新規又は既存の何れの軌道にピークを置くかどうかを決定する方法のフローチャート。
【
図6】打出区画を軌道に関連付け、いつ軌道が完了するかを決定する方法のフローチャート。
【
図7】レーダによって検出された、交差する2つの軌道T1及びT2を含む信号のグラフ(ドップラー周波数と時間)。
【
図8】
図8a、
図8b、及び
図8cは、
図7の信号を2つのボールの3次元空間における成分を示すように分解したデータを示すグラフ。
【
図9】4つのレーダ装置を使用するシステムを含む、本発明の一実施形態に関するシステムの斜視図。
【
図11】2つのレーダ装置を使用するシステムを含む本発明の一実施形態に関するシステムの斜視図。
【
図13】単一のレーダ装置を使用するシステムを含む、本発明の一実施形態に関するシステムの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的実施形態は、以下の説明及び関連する添付の図面を参照して更に理解することができ、ここで同様の要素には同じ参照番号が与えられている。例示的実施形態は、発射体が領域を通って移動するときに複数の発射位置から発射される複数の発射体を追跡し、各発射体が発射された発射位置を識別するためのレーダを使用する装置、システム、及び方法に関する。発射エリアの物理的なサイズと第1レーダ装置の視線遮断のような実際的な問題に応じて、システムによってカバーされる範囲を拡大するため、システム内に1つ以上の追加のレーダ装置を有することが望ましい。発射体の軌道及び関連データを個々の発射位置に関連付けることを可能にするために、かつ、発射された発射体が発射直後にシステムによって取得され得るように、発射領域の全範囲を網羅することが好ましい。本明細書に詳述される例示的実施形態はゴルフボールの追跡を説明するが、当業者は、任意のスポーツボール又はスポーツに関連しない発射物でも同じ方法のシステムを用いて追跡され得ることを理解するであろう。
【0021】
図1は、例示的実施形態による物体を追跡するための第1システム100を示す。第1システム100は、発射体が発射されるべき目標領域の周りに分散して配置された3つのレーダ装置102、102´、102´´を含む。
図1の実施形態では、システム100は、ゴルフ練習場104の第1端部108に沿って分散された複数の打上げ位置(打出区画106)から目標領域(ゴルフ練習場104)に打たれたゴルフボールを追跡するためのシステムである。各レーダユニットは、例えば、約500ミリワットのEIRP(等価等方放射電力)を放射するXバンド(10.5-10.6GHz)でマイクロ波を放射する連続波ドップラーレーダであり得る。従って、このレーダは、短距離の指向性アンテナに対するFCC及びCEの規制を満たすために好適である。位相変調又は周波数変調方式のCWレーダ、多周波数のCWレーダ、又は単一周波数のCWレーダを含む任意のタイプの連続波(CW)ドップラーレーダを使用し得る。現在のパルスレーダシステムは、レーダ装置の近くにある物体を追跡する能力に限界がある。しかしながら、時が経過するに連れて、これらのパルスレーダシステムから物体が離れるべき距離も減少しており、また、今後も減少し続けると予想される。従って、これらのタイプのレーダは、以下に説明する本発明のシステムの稼動及び用途として、すぐに有効になる可能性がある。本出願を通して、物体の追跡はドップラー周波数スペクトルの使用に基づくと説明される。これらのドップラー周波数スペクトルは連続波ドップラーレーダからのデータを指すと理解される。パルスレーダシステムが用いられた場合、物体から反射した後にパルスがレーダに戻るのに必要な時間に基づいて同様のデータが計算されるだろう。本明細書に記載されたものと同様の物体を3次元的に追跡することが可能な他の任意の種類のレーダも使用され得る。
【0022】
図1及び
図2に示すように、第1レーダ装置102は、目標領域108に面する打出区画106の後方に配置されている。レーダ装置102は、打出区画106から発射された発射体軌道の大部分が建物及び他の構造物からの如何なる妨害なしに装置102の視野110(ビーム範囲)内となるような位置に配置される。つまり、異なる高さの打出区画106を有する多数階施設の場合、通常、レーダ装置102は、a)打出区画のフロア間の正面の中央か、あるいは、b)打出区画の屋根の何れかに配置される。水平方向の打出区画の数と視野110に応じて、レーダ装置102は、b)の代替として、打出区画106の前部から約0-25m後方で最も高い打出区画の床上約3mに配置することも好ましいかもしれない。この例示的実施形態では、レーダ102の視野110は、打出区画106から外側に広がり、レーダ装置102´、102´´を包囲し、更に、レーダ装置102´、102´´を超えて、ゴルフ練習場104の全体部分にまで広がる(104の一部は、レーダユニット102´、102´´よりも打出区画から更に離れている)。レーダ装置102´は、ゴルフ練習場104の右側にあり(打出区画106に向かって見た場合)、レーダ装置102に向かって内向きに向けられている。このように配置することで、レーダ装置102´の視野112は、打出区画106の第1部分(第1レーダ装置102の右側の全ての打出区画106を含む部分)、及び、ゴルフ練習場104のうち、レーダ装置102´の前方であって、右方限界114から中心線116まで延びる部分を含む。この例示的実施形態では、レーダ装置102´及び102´´は、それぞれ、打出区画106から約75メートルの右側及び左側の限界114、120に配置されている。しかしながら、軌道データが得られないような死角を回避するように視野110、112、118が目標領域の全体をカバーする限り、レーダ装置102、102´、102´´は、他の位置が選択されてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0023】
同様に、レーダ装置102´´は、ゴルフ練習場104の左側にあり(打出区画106に向かって見た場合)、レーダ装置102に向かって内向きに向けられている。このように配置することで、レーダ装置102´´の視野118は、打出区画106の第2部分(第1レーダ装置102の左側の全ての打出区画106を含む部分)、及び、ゴルフ練習場104のうち、レーダ装置102´´の前方であって、左方限界120から中心線116まで延びる部分を含む。当業者によって理解されるように、レーダ102´、102´´のうちの1つのアンテナの視野112及び118は、全ての打出区画106が視野112、118内にあることを保証するために、打出区画106のうちの中央の1つを含む領域122内で重なり合う。加えて、この配置は、各発射体がその全軌道にわたって追跡されることが可能になるように、ゴルフ練習場104の全領域(ゴルフ練習場104内にある軌道の部分に限る)が視野110、112、118のうちの1つの中にあることを保証する。
【0024】
当業者によって理解されるように、発射体は、飛行中に異なる領域を通って移動し得る。即ち、発射体は、例えば、視野110、112、118のうちの1つのみの範囲内にある第1領域から、視野110、112、118の一つ以上によって覆われる領域(例えば、重複領域122)まで移動し、そして、視野110、112、118のうちの異なる1つのみの領域に入る。発射体が、ある視野から別の視野に移動するにつれて、システム100は、対応する視野110、112、118に関連付けられたレーダ装置102、102´、102´´のうちの第1のものから得られた軌道前段部分に対応する追跡データを、発射体が入った視野110、112、118に対応するレーダ装置102、102´、102´´のうちの第2のものから得られた軌道後段部分に対応する追跡データと、連続的に関連付けなければならない。例えば、右方限界114から4番目の打出区画106から軌道線Tに沿って中心線116に向かって発射されたゴルフボールは、まずレーダ装置102´の視野112に入る。ボールは次に重複領域122に入り、そこからレーダ装置102の視野110内にのみあるゴルフ練習場104の一部に入る。軌道の最初の部分では、システム100はレーダ装置102´からの軌道に対応するデータのみを有する。軌道の第2部分については、システム100はレーダ装置102、102´及び102´´からのこの軌道に対応するデータを有し得る。その後、ボールは、視野110と視野118とが重なる領域を通過する前に、視野110内にのみ入ることができる。システム100が様々なレーダ装置102、102´、102´´からの軌道データを相関させて(例えば、発射から着陸まで)完全な軌道を生成する方法は、以下により詳細に説明される。
【0025】
当業者によって理解されるように、システム100は、有線又は無線接続のどちらかを介してレーダ装置102、102´及び102´´に結合された1つ以上のコンピュータを含み得るデータ処理システム200を含む。一実施形態で、データ処理システム200は、レーダ装置102、102´、102´´のうちの対応する1つとそれぞれ関連付けられている別々のコンピュータ202、202´、及び202´´と、3台のコンピュータ202、202´、202´´からデータを調整する中央コンピュータ204とを含む。しかしながら、当業者は、以下に説明される全ての動作が、単一のコンピュータによって、又は、様々なタスクを任意の所望の方法で分散した任意の数のコンピュータによって、実行し得ることを理解するだろう。
【0026】
例示的な一実施形態では、コンピュータ202、202´、及び202´´のそれぞれは、対応するレーダ装置からのデータに関連する自らの3次元レーダ座標系を定める。次に、中央コンピュータ204は、各コンピュータ202、202´、202´´から得られたデータである、それぞれのレーダ座標系の形式での追跡データを変換するための一般座標系を定める。これにより、中央コンピュータ204は、視野110、112、及び118内の空間を通って移動する全ての物体を追跡し、ゴルフ練習場104に対してこれらの物体の軌道を描くことが可能となる。当業者は、計算を簡易とするため、一般座標系をレーダ座標系の1つと同一にし得ることを理解するだろう。しかし、視野110、112、118のうちの1つに常時存在する物理的特徴に基づいて一般座標系を定め、システム100がこれらの物理的特徴を参照し再較正されるようにすることが望ましい場合がある。例えば、一般座標系は、中央の打出区画106の中心からゴルフ練習場104の終点の中心まで延びる水平第1軸と、第1軸に垂直な水平第2軸と、第1及び第2軸の交点を通って垂直に延びる第3軸と、に基づくことができる。
【0027】
中央コンピュータ204は、各物体の軌道を後方にたどり、各物体が発射された打出区画106を特定する。従って、ゴルフ練習場104の場合、各ショットはその打出区画106にリンクされることが可能であり、また、ボールが複数の打出区画106からほぼ同時に発射されているときでも、個々のゴルファーには(例えば、各打出区画106にある画面を介して)彼らのショットに関するデータを提供し得る。加えて、中央コンピュータ204は、各レーダ装置102、102´、102´´が既知の位置(即ち、現在の軌道が視野110、112、118のうちの1つに入る位置)にあるそれぞれの視野110、112、118に入る物体を検索できるように、追跡されている全ての物体に関する全てのデータを各コンピュータ202、202´、202´´に提供する。次に、各コンピュータ202、202´、及び202´´は、中央コンピュータ204からのデータを自らのレーダ特有の座標系システムに変換して、これらの物体が異なる視野110、112、118を通過しても各物体を連続的に追跡することができる。また、当業者は、中央コンピュータ204は変換を実行し、それぞれの座標系で各コンピュータ202、202´、202´´にデータを提供してもよいことを理解するだろう。
【0028】
図3aのフローチャートは、コンピュータ202、202´、202´´によって実施される動作方法300を示し、この方法は、測定が行われるそれぞれの時間間隔(時間枠)で繰り返される。例えば、例示的なシステムでは、各コンピュータ202、202´、202´´は、10ms毎に(又は毎秒100回)
図3aの方法を実行することができる。この方法はコンピュータ202及びレーダ装置102に関してのみ説明されるが、当業者は、レーダ装置102´及び102´´からのデータに関して同じ工程がコンピュータ202´、202´´によって実行されることを理解するだろう。
【0029】
この時間間隔毎に、ステップ310においてコンピュータ202はレーダ装置102からデータを受信し、ステップ320においてドップラー周波数スペクトルを計算する(
図3b参照)。例えば、ドップラー周波数スペクトルは、既知の方法でレーダ装置102の全てのチャネルに対して高速フーリエ変換を使用することで計算される。ステップ330において、コンピュータ202は、レーダ装置102の視野110を通って移動する物体を表すピークを生成する極大値を、ドップラー周波数スペクトルから特定するために、既知の技術を用いる。当業者は、それぞれのドップラー周波数のピークに対して、レーダデータ内に表されている物体についての3次元位置及び他のデータ(速度、信号対雑音比等)が計算されることを理解するだろう。以下では、ピークは、その時点での所与の対象物に対応する3次元位置、速度、信号対雑音比、及び他の特性を含むと考えられる。ステップ340において、コンピュータ202は、レーダ装置102の座標系で表される識別されたピークに対応するデータを中央コンピュータ204に転送する。当業者に理解されるように、代替の実施形態では、コンピュータは、このデータを中央コンピュータ204に転送する前に、識別されたピークに対応するデータを一般座標系に変換し得る。
【0030】
上記の時間間隔毎に、中央コンピュータ204は、各コンピュータ202、202´、202´´が生成したデータをステップ340で受信し、
図4の方法400を実行することで、関連性があると判定された視野110、112、118内の全ての発射体(例えば、ゴルフ練習場で飛行中のゴルフボールと判定された全ての発射体)を追跡する。例えば、当業者に理解されるように、弾道飛行に関連したパターンに従わずに動くもの(例えば、鳥)は、分析で検出されて排除され得る。ステップ410において、中央コンピュータ204は、現在の時間間隔について各コンピュータ202、202´、202´´からデータを受信し、ステップ420において、このデータを一般座標系に変換する。ステップ430において、中央コンピュータ204は、データに表されている各ピークを既存の軌道に割り当てることができるかどうか、又は新しい軌道を生成すべきかどうかを判定する。このプロセスは方法500によってより明確に示される。
【0031】
図5に示すように、上記の各時間間隔について、中央コンピュータ204は、レーダ102、102´、102´´の全てから受信した各ピークを分析して、ピークNが既存の軌道Mと一致するかどうかを判定する。当業者に理解されるように、軌道とは、動いている物体に関連する3次元位置とその他の軌道データの時系列である。ステップ510において、中央コンピュータ204は、ピークNを既存の各軌道と比較し、ピークNが既存の軌道の何れと一致するかどうかを判定する。当業者に理解されるように、中央コンピュータは、新しい位置及び速度データを既存の軌道からのデータと比較して(例えば、ピークからのデータと1つ又は複数の前の時間間隔からの各軌道のデータを比較して)、新しいデータが何れかの軌道の以前の速度及び位置データと一致するかどうかを判定することによって、ピークが既存の軌道上の新しい点を表すかどうかを判定し得る。即ち、中央コンピュータ204が、前のボール位置と新しいピークとの間の距離が、その前の速度で既存の軌道Mのボールが移動した距離に等しい(ある許容範囲内)と判断すると、この距離は前の速度の方向と整合し、このピークはこの前の軌道Mに割り当てられる。ピークNが既存の軌道Mと一致する場合、方法は600に進む。新しいピークNが既存のどの軌道とも一致しない場合、それは新しい軌道の初期点として割り当てられ、方法は600に進む。
【0032】
図6に示すように、方法600では、中央コンピュータ204は、軌道M毎に、その軌道が打出区画106のうちの特定の1つと関連付けられているかどうかを判定する。ステップ610において、軌道Mが打出区画106と関連付けられていない場合、ステップ620において、中央コンピュータ204は、例えば、軌道Mに沿って、ある打出区画106と同じ位置にある初期点まで時間的に後退することによって、軌道Mを打出区画106と関連付ける。あるいは、軌道Mの初期点が打出区画106の1つにない場合(例えば、ボールが打ち上げから距離を移動するまで捉えられなかった場合)、特定の打出区画106は、軌道Mが打出区画106のうちの1つに到達するまで時間をさかのぼって推定すること(例えば、後の軌道と一致する経路に沿って軌道Mを時間的に戻すこと)によって識別することができる。次に、ステップ630において、中央コンピュータ204は、軌道Mに関連付けられたボールの発射データを計算し、この軌道Mに関連付けられた打出区画Q106にデータを転送する。次いで、方法はステップ640に進む。当業者によって理解されるように、軌道Mの発射位置に関連する打出区画106(又は他の位置)に転送されたデータは、1つ又は複数の視点からのボールの飛行経路を示すグラフィックデータ、発射速度、平均速度、水平に対する発射角度、スピン速度、スピン軸、飛行距離、最大高さ等の変数に関する表データを含み得る。加えて、このデータは発射位置に関連する打出区画Q106(又は他の場所)に関連する装置に提供されてもよい。例えば、この装置は、データを表示する画面、打ち上げ場所にいるユーザに関連付けられたモバイル機器等であり得る。
【0033】
ステップ610において、軌道Mが特定の打出区画Q106に関連付けられている場合、方法はステップ640に進む。ステップ640において、中央コンピュータ204はボールが着地したかどうかを判定する。例えば、軌道Mが弧を描くように上向きに進み、ピークに達した後、弧を描くように下降し続け、現在の時間区画でのボールの高さが前の時間区画と同じかそれより高い場合、中央コンピュータ204はボールが着地したと決定する。あるいは、コンピュータ204は、ボールの高さとボールの現在位置における表面の既知の高さとの間の比較に基づき、この決定を行うことができる。ステップ640でボールが着地したと中央コンピュータ204が判断した場合、ステップ650で軌道Mが終了し、ステップ660で最終データが計算され、識別された打出区画Q106でユーザに転送される。ステップ640において、ボールがまだ着地していないと中央コンピュータ204が判断した場合、ステップ670において軌道Mが平滑化され(例えば、ノイズを減らすためにフィルタ処理が行われ)、ステップ680において更新されて平滑化された軌道Mがその軌道Mに関連する打出区画Q106においてユーザに提供される。当業者は、この情報が必要に応じて任意の数の打出区画106に転送されてもよいことを理解するだろう。例えば、複数の打出区画106が競技に関わる場合、これらの打出区画106に関連する全ての軌道は、これら全ての打出区画106に提供されてもよい。終了していない軌道Mについては、次の時間間隔(時間枠)でプロセスが繰り返される。
【0034】
図7及び
図8a-
図8cは、2つ以上のボールが時間及びドップラー周波数において十分に近く、1つ以上の軌道が他の軌道によって覆い隠される状況に対処するための方法を示す。具体的には、
図7に見られるように、この例では、ボール1の軌道T1はボール2の軌道T2と交差し、T1の軌道は
図7及び
図8のそれぞれの曖昧な(グレーな)領域710によって表される期間において軌道T2に割り込む。軌道T1及びT2は、時間範囲710について
図7の見地で重なり合うので、2つの軌道がこの重なり部分710の後に分岐するとき、データを生成する個別のレーダのコンピュータは、後の軌道部分a及びbのどちらがT1、そして、T2に関連するかを直ちに決定することができないかもしれない。しかしながら、軌道T1及びT2に含まれるデータが、
図8a-8cに示すように、ボール1及び2の軌道を経時的に示すため分割された場合、部分aが軌道T1の続きであり、部分bが軌道T2の続きであることは明らかである。即ち、部分a及びbによって表される移動と軌道T1及びT2の当初の部分との比較は、どの軌道に部分a及びbが割り当てられるべきかを明確にする。当業者によって理解されるように、また、システムは、例えば、軌道T1及びT2の当初の部分によって表される速度等の他のパラメータを、部分a及びbに表される速度と比較し、選択の精度を高めることができる。
【0035】
図9及び
図10は、更なる例示的実施形態による複数の物体を追跡するためのシステム900を示す。システム900は、4つのレーダ装置902、902´、902´´、902´´´を含む。システム100と同様に、各レーダ装置902、902´、902´´、902´´´はそれぞれ対応するコンピュータ905、905´、905´´、905´´´に結合され、これらの各レーダコンピュータはシステム100に関して上述したのと同じ方法で中央コンピュータ907に接続されている。レーダ装置902´´及び902´´´はシステム100のレーダ装置102´及び102´´と同じ方法で配置され、一方、レーダ装置102はシステム900において2つのレーダ装置902,902´に置き換えられる。各レーダは、ゴルフ練習場906の打出区画908の後ろに配置され、ゴルフ練習場906の中心線910上に配置されるのを除き、レーダ102と同様に配置される。レーダ装置902は中心線910からゴルフ練習場906の右端部912に向かってオフセットされ、一方、レーダ装置902´は中心線910から左端部914に向かってオフセットされる。従って、レーダ装置902、902´、902´´、902´´´の視野916、918、920、922は、システム100のそれぞれのレーダ装置102、102´、102´´の視野110、112、118と同様にそれぞれ重なる。システム900の中央コンピュータ907は、様々な物体間を移動する発射体を追跡するため、コンピュータ202、202´、202´´と通信する中央コンピュータ204と同じ方法で、コンピュータ905、905´、905´´、905´´´と連携する。システム900の4つのレーダ装置の配置は、システム100よりもゴルフ練習場906及び打出区画908の領域をより完全に覆うが、それ以外は同様に動作する。
【0036】
図11及び
図12は、更なる例示的実施形態による複数の物体を追跡するためのシステム1100を示す。システム1100は、2つのレーダ装置1102、1102´を含む。システム1100は、レーダ装置1102及び1102´がゴルフ練習場1106の打出区画1108の後ろのレーダ装置902、902´と実質的に同様に配置されている点において、システム900と同様である。しかしながら、システム1100では、レーダ装置902´´、902´´´のように、打出区画1108の前に追加のレーダ装置が配置されていない。当業者は、システム1100が、システム100のコンピュータと同様の方法で動作する任意の中央コンピュータに結合されたレーダコンピュータと同様の構成を含み得ることを理解するだろう。
図11及び
図12に見られるように、レーダ装置1102、1102´の視野1110、1112はそれぞれ、ゴルフ練習場1106の特定の部分が覆われていない状態で重なる。システム1300に関して以下に説明するように、ゴルフ練習場1106のこれらの覆われていない部分を通過する軌道部分は、レーダ装置1102、1102´によって検出された軌道部分に基づいてシステム1100によって推定され、着地点までの各ボールの軌道を完成させるため、各ボールが発射された特定の打出区画1108を特定する。システム1100は、単一の高さの打出位置のみを有するゴルフ練習場に非常に適している。この場合、ボールの軌道は、多数階層の打出施設のような場合の建物のように視線が遮られることなく、迅速に視野1110内又は1120内に入る。システム1100は、特定の幅の発射領域をカバーする必要性に応じて、及び、打出区画1108から後方にレーダ装置1102及び1102´を配置することができるかに応じて、1つ、2つ、又はそれ以上のレーダ1102で構成され得る。
【0037】
図13及び
図14に見られるように、システム1300は、複数の物体を追跡するための更なる例示的実施形態である。システム1300は、単一のレーダ装置1302を含み、このレーダ装置1302は、視野1304が発射体が発射されるべき実質的に全ての目標領域を含むように配置されている。
図13及び
図14の実施形態では、システム1300は、ゴルフ練習場1306の第1端部1310に沿って区画された複数の打上領域(打出区画1308)から目標エリア(ゴルフ練習場1306)に打たれたゴルフボールを追跡するためのシステムである。本実施形態の視野1304は打出区画1308の全てを含む。例えば、
図13及び14に見られるように、レーダ1302は、所望の距離だけ持ち上げられたゴルフ練習場1306の終点線1312を実質的に中心として置かれる。このタイプの設定は、十分な信号雑音比及び位置精度が打出区画1308の近傍の発射体軌道上で達成できる場合に望ましく、そのため、システムは依然として各軌道を打出領域の打出区画に正確に関連付けることができる。これがゴルフ練習場であった場合、これは通常、レーダ1302が打出区画1308の約60-250m前方に配置されるべきであることが要求される。このタイプの設定は、ゴルフボールの飛距離が制限されたゴルフ練習場等に非常に適している。なぜなら、この種のゴルフ練習場では、ゴルフボールがネットで止めるためである。
【0038】
この実施形態のレーダユニット1302は、例えば、発射体軌道と打出区画との正確な関連付けを確実にするため、十分に高い位置測定精度を有するXバンドでマイクロ波を放射する、より高出力のドップラーレーダとし得る。従って、システム1300は、各ボールがレーダ装置1302からのデータのみに基づいて追跡されることを除いて、システム100と実質的に同様に動作し、システム100を用いた場合のように、2つ以上の座標系を必要とすることも、レーダ装置から別のレーダ装置へ追跡を引き継ぐ必要もない。視野1304の外側にある任意のボールの一部において、コンピュータ1305は、打出しから着地までのボールの全軌道を推定するため、前後の時間の軌道を推定することができる(例えば、ボールが打ち上げられてから、打出区画1308を特定する)。当業者であれば、システム1300は、システム100について上述したのと同じ方法で、ゴルフ練習場1306内の識別可能な物理的目印に基づく一般座標系を依然使用してもよいことを理解するだろう。この場合、レーダ装置1302の座標系は、もともと一般座標系と完全に一致するように設定することができる。しかしながら、装置1302が常時移動する場合、装置1302からの測定値をゴルフ練習場1306上の位置に正確に関連付けるため、システム1300は、(装置1302用の)新しいレーダ固有の座標系を一般座標系に変換することによって、システム1300の動きが測定され、位置又は照準の変化が考慮され得る。
【0039】
図14に示すように、ゴルフボールの例示的な軌道T1は、時間T0で視野1304の外側にある打出区画1308を離れ、時間Tiでの打上げ直後に視野1304に入る。レーダ装置1302は、ボールが視野1304に入るとボールを捉え、時間Tfでボールが視野1304を離れるまでボールを追跡する。コンピュータ1305は、レーダ装置1302からのデータに基づいて、TiからTfまでの全時間をカバーするボールの軌道を生成する。そして、この軌道に基づいて、T0からTiまで伸びる軌道T1
0の初期部分を推定し、ボールが発射された打出区画1308を特定する。次に、コンピュータ1305は、時間Tfから、ボールが着地した時間である時間T1へ延びる軌道Tlを構成する部分Tliを推定する。次に、コンピュータ1305は、全ての軌道T1を組み立て、この軌道T1に対応するデータをボールの発射位置として識別された打出区画108に送信する。当業者であれば、ボールがレーダの視野を離れる間の任意の時間、又は何らかの理由でシステムがボールの軌道を見失う任意の時間を、明らかにするため、上述の何れのシステムにおいても、これと同じ推定処理を使用し得ると理解するだろう。
【0040】
当業者は、前述の実施形態は個別の打出区画106を説明しているが、システム100(又は本明細書に開示される他のシステムの何れか)は、検出された発射体軌道のそれぞれに関連する打出位置を識別し得ることを理解するだろう。そして、これらの打出位置は、各発射体と関連付けられたシステムのユーザと関連付けられてもよい。ゴルフ練習場の場合、ユーザは広い打出領域内のどこからでも打出しが許されるかもしれない。そして、各ユーザは、位置特定機能を備えた電子装置を使用してシステムにログインすることにより、ボールが打たれる特定の位置と関連付けられる。そして、各ユーザは、ロケーション機能を備えた電子装置を使用しシステムにログインすることによって(例えば、WiFi又は他の無線ネットワークを介して)、ボールが打たれている特定の位置に関連付けられる。例えば、ユーザは、GPS又は任意の他の電子ロケーションシステムを有する携帯電話を使用してシステムにログオンすることができ、システムは、他のログインデバイスよりもこのデバイスの現在地に近い場所からヒットした全てのショットをこのデバイスと関連付けることができる。あるいは、又はそれに加えて、システムは1つ、又は、それ以上のショットを関連付けることを検討しているデバイスに問い合わせ、そのデバイスのユーザに、実際にショットの何れか、又は、示された全てのショット(軌道)を行ったのかを示すよう要求することができる。ユーザの応答に基づいて、システムは与えられた場所からの将来の軌道を、このユーザ(ユーザ装置)と関連付けることができる。当業者はこのバリエーションを前述のシステムの何れか、又は全てに使用し得ることを理解するだろう。
【0041】
当業者は、上述の例示的実施形態は、任意の適切なソフトウェア若しくはハードウェア構成、又はそれらの組み合わせで実施され得ることを理解するだろう。例示的実施形態を実施するための例示的なハードウェアプラットフォームは、以下を含み得る。例えば、互換性のあるオペレーティングシステムを備えたIntel x86ベースのプラットフォーム、Windowsプラットフォーム、Linuxプラットフォーム、Macプラットフォーム、及びMAC OS、iOS、Android等のオペレーティングシステムを備えたモバイルデバイス。更なる例では、上述の方法の例示的実施形態は、プロセッサ又はマイクロプロセッサ上で実行可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコード行を含むプログラムとして実施することができる。
【0042】
発明の様々な変更は、本発明の意図及び範囲から逸脱することなくなされ得るべきであることは明らかである。従って、本発明は、添付の請求項及びそれらと同等の範囲内において、変更と変化を包含することが意図される。