(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】給電制御方法及び給電装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20221118BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20221118BHJP
G06F 1/28 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H02M3/00 K
H02J1/00 306G
G06F1/28
(21)【出願番号】P 2021113951
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】舩戸 良
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198218(JP,A)
【文献】特開2007-151247(JP,A)
【文献】特開2005-224011(JP,A)
【文献】特開2020-036491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H02J 1/00
G06F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から端末機器に対する給電制御方法であって、
前記電源からの入力電圧を監視し、予め設定された所定入出力関係に基づいて前記端末機器に対して供給可能な最大供給可能電力値を決定する監視ステップであって、前記所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されており、前記第1から前記第Nの入力電圧範囲に対して前記第1から前記第Nの出力電力値が夫々対応付けられており、前記電源からの前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲に対応する前記出力電力値を前記最大供給可能電力値とする、監視ステップと、
前記端末機器に対して前記最大供給可能電力値以下の出力電力を供給するよう制御する制御ステップと
を備える給電制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の給電制御方法であって、
規定電流を、第Nの出力電力値を第Nの入力電圧範囲の最小電圧で除算した値とし、
前記電源からの前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲に対応する前記出力電力値は、式:前記出力電力値÷前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲の最小電圧≦前記規定電流、を満たす
給電制御方法。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2記載の給電制御方法であって、
前記端末機器から、前記端末機器の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を取得する取得ステップを更に備えており、
前記制御ステップにおいて、前記端末機器に対する出力電力を前記最大供給可能電力値以下且つ前記要求電力値以下とする
給電制御方法。
【請求項4】
請求項1
から請求項3までのいずれかに記載の給電制御方法であって、
前記制御ステップは、前記電源からの入力電圧が前記第Nの入力電圧範囲よりも大きい場合には、前記端末機器に対して前記第Nの出力電力値よりも小さい出力電力を供給するよう制御する
給電制御方法。
【請求項5】
制御信号に基づいて、電源からの入力電圧を端末機器への供給電圧に変換する電圧コンバータと、
前記電源からの前記入力電圧を監視して、予め設定された所定入出力関係に基づいて前記端末機器に対して供給可能な最大供給可能電力値を決定する電源電圧モニタであって、前記所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されており、前記第1から前記第Nの入力電圧範囲に対して前記第1から前記第Nの出力電力値が夫々対応付けられており、前記電源からの前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲に対応する前記出力電力値を前記最大供給可能電力値とする電源電圧モニタと、
前記制御信号を生成して、前記最大供給可能電力以下の電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御するPD(Power Delivery)コントローラと
を備える給電装置。
【請求項6】
請求項5記載の給電装置であって、
前記PDコントローラは、前記端末機器の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を前記端末機器から取得し、前記最大供給可能電力以下且つ前記要求電力値以下の電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御する
給電装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の給電装置であって、
前記電源電圧モニタは、前記PDコントローラ内に設けられている
給電装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれかに記載の給電装置であって、
前記PDコントローラは、前記電源からの入力電圧が前記第Nの入力電圧範囲よりも大きい場合には、前記第Nの出力電力値よりも小さい電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御する
給電装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8までのいずれかに記載の給電装置であって、
USB(Universal Serial Bus)コネクタを更に備えており、
前記USBコネクタは、前記PDコントローラに接続されており、前記端末機器の接続用インタフェースとして用いられる
給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から端末機器に対する給電制御方法及び給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠する給電装置の一例を開示している。この給電装置は、車載用給電装置である。
【0003】
図4に示されるように、特許文献1に開示された給電装置90は、車載装置92と、ユーザ開放部94とを備えている。車載装置92とユーザ開放部94との間は、ケーブル96で接続されている。車載装置92は、入力電源としての車載用バッテリーに接続され、ユーザ開放部94に接続された端末機器に電力を供給する。ユーザ開放部94は、端末機器の接続用インタフェースとしてUSBコネクタを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車載用のバッテリーでは自動車の走行状態により負荷が変動して電圧が低下することがあり、それによって、給電装置に流れる入力電流が増加することがある。このように、給電装置に流れる入力電流が増加すると、様々な問題が発生する虞がある。例えば、給電装置への入力電流の増加は、バッテリーの消耗を早めたり、バッテリーから給電装置への電源供給経路にダメージを与えたりする可能性がある。また、給電装置に含まれる電圧コンバータによっては、給電装置への入力電流の増加により過度に発熱する可能性もある。なお、入力電流の増加による電源供給経路へのダメージ及び過度の発熱の問題は、入力電源がバッテリーの場合に限られたことではない。
【0006】
そこで、本発明は、給電装置に対する好ましくない入力電流の増加を抑制することのできる給電制御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その給電制御方法に基づく制御を行う給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の給電制御方法として、電源から端末機器に対する給電制御方法であって、
前記電源からの入力電圧を監視し、予め設定された所定入出力関係に基づいて前記端末機器に対して供給可能な最大供給可能電力値を決定する監視ステップであって、前記所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されており、前記第1から前記第Nの入力電圧範囲に対して前記第1から前記第Nの出力電力値が夫々対応付けられており、前記電源からの前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲に対応する前記出力電力値を前記最大供給可能電力値とする、監視ステップと、
前記端末機器に対して前記最大供給可能電力値以下の出力電力を供給するよう制御する制御ステップと
を備える給電制御方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、第2の給電制御方法として、第1の給電制御方法であって、
前記端末機器から、前記端末機器の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を取得する取得ステップを更に備えており、
前記制御ステップにおいて、前記端末機器に対する出力電力を前記最大供給可能電力値以下且つ前記要求電力値以下とする
給電制御方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、第3の給電制御方法として、第1又は第2の給電制御方法であって、
前記制御ステップは、前記電源からの入力電圧が前記第Nの入力電圧範囲よりも大きい場合には、前記端末機器に対して前記第Nの出力電力値よりも小さい出力電力を供給するよう制御する
給電制御方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は、第1の給電装置として、
制御信号に基づいて、電源からの入力電圧を端末機器への供給電圧に変換する電圧コンバータと、
前記電源からの前記入力電圧を監視して、予め設定された所定入出力関係に基づいて前記端末機器に対して供給可能な最大供給可能電力値を決定する電源電圧モニタであって、前記所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されており、前記第1から前記第Nの入力電圧範囲に対して前記第1から前記第Nの出力電力値が夫々対応付けられており、前記電源からの前記入力電圧の属する前記入力電圧範囲に対応する前記出力電力値を前記最大供給可能電力値とする電源電圧モニタと、
前記制御信号を生成して、前記最大供給可能電力以下の電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御するPD(Power Delivery)コントローラと
を備える給電装置を提供する。
ここでPDコントローラとは、PD(Power Delivery)制御機能を有するIC(Integrated Circuit)全般を含んでおり、たとえば汎用マイコンであってもよい。
【0011】
また、本発明は、第2の給電装置として、第1の給電装置であって、
前記PDコントローラは、前記端末機器の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を前記端末機器から取得し、前記最大供給可能電力以下且つ前記要求電力値以下の電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御する
給電装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、第3の給電装置として、第1又は第2の給電装置であって、
前記電源電圧モニタは、前記PDコントローラ内に設けられている
給電装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、第4の給電装置として、第1から第3までのいずれかの給電装置であって、
前記PDコントローラは、前記電源からの入力電圧が前記第Nの入力電圧範囲よりも大きい場合には、前記第Nの出力電力値よりも小さい電力値に前記供給電圧が対応するように前記電圧コンバータを制御する
給電装置を提供する。
【0014】
更に、本発明は、第5の給電装置として、第1から第4までのいずれかの給電装置であって、
USB(Universal Serial Bus)コネクタを更に備えており、
前記USBコネクタは、前記PDコントローラに接続されており、前記端末機器の接続用インタフェースとして用いられる
給電装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
電源からの入力電圧が下がった場合に、電圧が下がる前と同じ電力を供給しようとすると、給電装置に流れ込む電流が増加する。これに対して、本発明によれば、電源からの入力電圧を監視して、入力電圧が下がった場合には端末機器に供給する電力を下げることとしたことから、入力電流の好ましくない増加を抑制することができる。
【0016】
加えて、複数の入力電圧の範囲に対して夫々一定の出力電力値を対応させることとしたため、入力電圧に応じた出力電力値を生成する部分を予め対応関係を設定したレジスタなどの簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態による給電システムを示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態による給電制御方法の説明に用いられる図である。
【
図3】
図1に示される給電装置の変形例を示す概略図である。
【
図4】特許文献1に記載された給電装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態による電源から端末機器に対する給電制御方法は、電源からの入力電圧を監視して最大供給可能電力を決定する監視ステップと、端末機器に対して最大供給可能電力以下の出力電力を供給するよう制御する制御ステップとを備えている。
【0019】
詳しくは、監視ステップにおける最大供給可能電力の決定は、予め設定された所定入出力関係に基づいて行われる。所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されている。また、第1から第Nの入力電圧範囲に対して第1から第Nの出力電力値が夫々対応付けられている。このような所定入出力関係に基づいて、監視ステップにおいては、電源からの入力電圧の属する入力電圧範囲に対応する出力電力値を最大供給可能電力値として決定する。このようにすると、入力電圧が下がった場合には、最大供給可能電力自体が下がるので、端末機器に供給される出力電力も下がることから、入力電流の望ましくない増加を避けることができる。
【0020】
ここで、制御ステップにおいて、電源からの入力電圧が第Nの入力電圧範囲よりも大きい場合には、端末機器に対して第Nの出力電力値よりも小さい出力電力を供給するよう制御する。これにより、電源がバッテリーなどである場合に、過電圧状態からバッテリーの保護を図ることができる。
【0021】
上述した給電制御方法は、端末機器から、端末機器の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を取得する取得ステップを更に備えていてもよい。この場合、制御ステップにおいて、端末機器に対する出力電力を最大供給可能電力値以下且つ要求電力値以下とする。これにより、端末機器に応じた給電制御を行うことができる。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施の形態による給電システムは、上述した本発明の実施の形態による給電制御方法に基づいた給電制御を行う給電装置10と、電源としてのバッテリー70と、端末機器80とを備えている。
【0023】
詳しくは、
図1の給電装置10は、PD(Power Delivery)コントローラ20と、電圧コンバータ30と、電源コネクタ50と、USBコネクタ60とを備えている。電源コネクタ50は、電源としてのバッテリー70に接続されている。USBコネクタ60は、端末機器80の接続用インタフェースとして用いられるものである。このUSBコネクタ60に端末機器80が接続されると、給電装置10は、電源としてのバッテリー70から端末機器80に対する給電を制御しつつ行う。なお、電源は、バッテリー70には限られない。給電装置10に対して電圧を供給できるものであれば、その構成は問わない。
【0024】
電圧コンバータ30は、電源コネクタ50及びUSBコネクタ60に接続されている。本実施の形態の電圧コンバータ30は、DC/DCコンバータである。また、電圧コンバータ30は、PDコントローラ20に接続されており、後述するように、PDコントローラ20により生成された制御信号に基づいて、バッテリー70からの入力電圧を端末機器80への供給電圧に変換する。
【0025】
本実施の形態のPDコントローラ20は、電源電圧モニタ40と、制御部24とを備えている。電源電圧モニタ40は、電源コネクタ50と電圧コンバータ30との間を接続するラインに接続されており、制御部24は、電源電圧モニタ40、USBコネクタ60及び電圧コンバータ30に接続されている。
【0026】
電源電圧モニタ40は、バッテリー70からの入力電圧を監視して、予め設定された所定入出力関係に基づいて端末機器80に対して供給可能な最大供給可能電力値を決定する。詳しくは、所定入出力関係においては、入力電圧範囲として小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲が規定されており(Nは2以上の整数)、出力電力値として小さい方から順に離散的な値を有する第1から第Nの出力電力値が規定されている。また、第1から第Nの入力電圧範囲に対して第1から第Nの出力電力値が夫々対応付けられている。電源電圧モニタ40は、このような所定入出力関係に基づいて、バッテリー70からの入力電圧の属する入力電圧範囲に対応する出力電力値を最大供給可能電力値として決定し、制御部24に通知する。
【0027】
図2を更に参照すると、本実施の形態においては、入力電圧の範囲が通常動作範囲NRと、通常動作範囲NRよりも低い電圧であるアンダー範囲URと、通常動作範囲NRよりも高い電圧であるオーバー範囲ORの3つの領域に大別されている。このうち通常動作範囲NRは、上述した所定入出力関係の対象となる範囲であり、小さい方から順に第1から第3の入力電圧範囲IR1~IR3に分けられている。一方、出力電圧値としては、小さい方から順に離散的な値を有する第1から第3の出力電力値OP1~OP3が規定されており、夫々、第1から第3の入力電圧範囲IR1~IR3に対応付けられている。
【0028】
電源電圧モニタ40は、バッテリー70から電圧コンバータ30に入力される電圧を監視して、入力電圧値が第1の入力電圧範囲IR1に属する際には端末機器80に対して供給可能な最大供給可能電力値を第1の出力電力値OP1とする。同様に、電源電圧モニタ40は、入力電圧値が第2の入力電圧範囲IR2に属する際には端末機器80に対して供給可能な最大供給可能電力値を第2の出力電力値OP2とし、入力電圧値が第3の入力電圧範囲IR3に属する際には端末機器80に対して供給可能な最大供給可能電力値を第3の出力電力値OP3とする。
【0029】
加えて、本実施の形態の電源電圧モニタ40は、バッテリー70からの入力電圧が通常動作範囲NRよりも低いアンダー範囲URに属するような場合には、最大供給可能電力を0Wとする。一方、本実施の形態の電源電圧モニタ40は、バッテリー70からの入力電圧が通常動作範囲NRよりも高いオーバー範囲ORに属するような場合、即ち、入力電圧が過電圧だった場合には、最大供給可能電力を最も高い第3の出力電力値OP3よりも低い電力値とする。このときの電源電圧モニタ40の決定した電力値も一定値である。このように、本実施の形態においては、複数の入力電圧の範囲に対して夫々一定の電力値を対応させることとしたため、入力電圧に応じた最大供給可能電力を決定する電源電圧モニタ40を例えばレジスタなどの簡易な構成で実現することができる。
【0030】
PDコントローラ20の制御部24は、電源電圧モニタ40の決定した最大供給可能電力以下の電力が端末機器80に供給されるように、制御信号を生成して、電圧コンバータ30に出力する。電圧コンバータ30は、この制御信号を受けて、入力電圧を適切な供給電圧に変換して、端末機器80に供給する。このように、PDコントローラ20の制御部24は、制御信号を生成して、電圧コンバータ30から端末機器80に供給される電圧が最大供給可能電力以下の電力値に対応するように電圧コンバータ30を制御している。
【0031】
例えば、入力電圧が当初第3の入力電圧範囲IR3に属しており、ある端末機器80に対して出力電力値OP3相当の電力が供給されていたとする。その後に入力電圧が下がって第1の入力電圧範囲IR1に属するような値になった場合に、何の制御も行わずに、端末機器80に対して出力電力値OP3相当の電力を供給し続けようとすると、給電装置10に対する(具体的には電圧コンバータ30に対する)入力電流が過度に増加してしまう。これに対して、本実施の形態によれば、入力電圧が下がって第1の入力電圧範囲IR1に属するような値になった場合には、最大供給可能電力を第1の出力電力値OP1まで下げる。即ち、端末機器80に対して実際に供給される電力は、第1の出力電力値OP1以下の電力となる。これにより、給電装置10に対する(具体的には電圧コンバータ30に対する)入力電流が望ましくない値まで増加してしまうことを避けることができる。
【0032】
特に、本実施の形態のPDコントローラ20の制御部24は、USB規格に準拠したものである。具体的には、PDコントローラ20の制御部24は、USBコネクタ60にも接続されており、端末機器80の要求する最大電力値である要求電力値を含む端末情報を端末機器80から取得する。これにより、制御部24は、電圧コンバータ30への制御信号を生成する際に、電源電圧モニタ40の決定した最大供給可能電力のみならず、要求電力値を考慮して、端末機器80に対する供給電力を決定することができる。例えば、入力電圧に基づいて決定された最大供給可能電力が第3の出力電力値OP3であったとしても、端末機器80の要求する電力が第2の出力電力値OP2相当の電力であったならば、本実施の形態の制御部24は、端末機器80に対する供給電力を第2の出力電力値OP2相当の電力とする。これにより、端末機器80に応じた適切な供給電力制御を行うことができる。
【0033】
上述したように、本実施の形態の電源電圧モニタ40は、バッテリー70からの入力電圧が通常動作範囲NRよりも低いアンダー範囲URに属するような場合には、最大供給可能電力を0Wとする。即ち、制御部24の制御により、端末機器80に対して供給される電力はオフになり、給電装置10に対する入力電流もゼロになる。このように、本実施の形態においては、入力電圧が最も低い範囲において入力電流が増加しすぎてしまう問題が生じないようにして給電装置10の保護が図られている。
【0034】
また、上述したように、本実施の形態の電源電圧モニタ40は、入力電圧が過電圧だった場合には、最大供給可能電力を最も高い第3の出力電力値OP3よりも低い電力値とする。
図2に示されるように、本実施の形態においては、オーバー範囲ORに対応する最大供給可能電力を第1の出力電力値OP1よりは大きく且つ第2の出力電力値OP2よりは小さい値に設定している。入力電圧が過電圧の状態であるにもかかわらず、端末機器80に対して大きな電力を供給し続けようとすると、バッテリー70がダメージを受ける虞がある。一方で、最低限の電力を供給して例えば端末機器80の充電をし続けたいという要求もある。本実施の形態においては、これらを両立させるような電力値が過電圧に対する最大供給可能電力として設定されている。
【0035】
上述した給電装置10によれば、電源からの入力電圧が下がった場合でも入力電流が増加しすぎて問題が生じる虞を回避することができる。これにより、例えば電源としてのバッテリー70の保護や、バッテリー70から電源コネクタ50を介して電圧コンバータ30に至る経路の保護を図ることができる。また、電圧コンバータ30が入力電流の増加により発熱するものであった場合には、電圧コンバータ30における発熱を抑制することができる。但し、これは、電圧コンバータ30として、入力電流の増加により発熱するもののみを対象としていることを意味しない。
【0036】
以上、本実施の形態による給電装置10について
図1を用いて説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。
【0037】
例えば、上述した実施の形態において、PDコントローラ20及びその制御部24は、USB規格に準拠したものであったが、本発明はこれに限定されない。PDコントローラ20及びその制御部24は、USB規格に準拠したものに限られない。その場合、PDコントローラ20の制御部24は、USBコネクタ60に接続されていなくてよい。
【0038】
また、上述した実施の形態において、電源電圧モニタ40は、PDコントローラ20内に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図3に示される給電装置10Aのように、電源電圧モニタ40は、PDコントローラ20Aの外に設けられていてもよい。なお、
図3においては、
図2に示される要素と同じ要素に対して同じ参照符号を付してある。
【0039】
更に、上述した実施の形態において、PDコントローラ20の制御部24は、端末機器80から端末情報を取得する機能を備えていたが、端末情報を取得する機能を制御部24から切り離して独立の要素(端末情報取得部)として設けてもよい。その場合、端末情報取得部は、USBコネクタ60に接続され、端末機器80から端末情報を取得して、制御部24に通知する。制御部24は、端末情報取得部で取得した端末情報に含まれる要求電力値と、電源電圧モニタ40から通知された最大供給可能電力とを比較して、低い方の電力を供給電力とするよう電圧コンバータ30を制御する。
【0040】
一方、端末機器80の要求電力値が一定であるような用途向けの給電装置10の場合、PDコントローラ20の制御部24は、端末機器80から端末情報を取得する機能を有しなくてよい。その場合、PDコントローラ20の制御部24は、USBコネクタ60を介して端末機器80に接続されなくてよい。
【符号の説明】
【0041】
10,10A 給電装置
20,20A PDコントローラ
24 制御部
30 電圧コンバータ
40 電源電圧モニタ
50 電源コネクタ
60 USBコネクタ
70 バッテリー
80 端末機器
【要約】
【課題】給電装置に対する好ましくない入力電流の増加を抑制することのできる給電制御方法を提供すること。
【解決手段】電源から端末機器に対する給電制御方法は、電源からの入力電圧を監視して、予め設定された所定入出力関係に基づいて最大供給可能電力を決定する監視ステップと、端末機器に対して最大供給可能電力以下の出力電力を供給するよう制御する制御ステップとを備えている。所定入出力関係において、入力電圧範囲としては、小さい方から順に第1から第Nの入力電圧範囲IR1~IR3が規定されており、出力電力値としては、小さい方から順に離散的な値を有すると共に第1から第Nの入力電圧範囲に夫々対応付けられた第1から第Nの出力電力値OP1~OP3が規定されている。監視ステップでは、電源からの入力電圧の属する入力電圧範囲に対応する出力電力値を最大供給可能電力値として決定する。
【選択図】
図2