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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】空間光変調器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20221118BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20221118BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20221118BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
G09G3/36
G02F1/133 510
G02F1/133 550
G03H1/22
G09G3/20 623H
G09G3/20 624B
G09G3/20 642K
G09G3/20 680C
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021127717
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2022036014
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】2013099.3
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517080957
【氏名又は名称】デュアリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0097673(US,A1)
【文献】特開2019-204087(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G03H 1/12
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶オンシリコン空間光変調器であって、
それぞれが液晶を備える光変調ピクセルの配列であって、各光変調ピクセルがそれぞれのフリップフロップと関連付けられたものと、
画像のホログラムを受けるように構成されたコントローラであって、前記ホログラムはそれぞれがnビットホログラムピクセル値を備える複数のホログラムピクセルを備え、前記nは整数であり、ピクセルグループを隣接するn個の光変調ピクセルの集合としたときに、前記ホログラムと前記光変調ピクセルとの間に1対nピクセル相関が存在するように、前記ホログラムのそれぞれのホログラムピクセル値にしたがって、前記ピクセルグループに含まれる各光変調ピクセルを駆動するように構成されたものと、を備え、
前記ピクセルグループにおける前記n個の光変調ピクセルの前記フリップフロップは、シフトレジスタを形成するように直列に接続され、それにより、前記シフトレジスタの動作中、前記ピクセルグループにおける前記n個の光変調ピクセルと関連付けられる前記nビットホログラムピクセル値が、少なくともn個のクロックサイクルにわたって前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルに対して一度に1ビットずつ与えられ、
前記nビットホログラムピクセル値、前記1対nピクセル相関、前記n個の光変調ピクセル、及び前記n個のクロックサイクルにおけるnは同じである、
液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項2】
前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルがそれぞれの1ビットメモリと更に関連付けられ、前記コントローラは、前記シフトレジスタの動作前に前記それぞれのnビットホログラムピクセル値の異なるビットを前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルに与えるように構成されている
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項3】
前記シフトレジスタは、前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルの前記液晶が前記それぞれのnビットホログラムピクセル値に対応するRMS電圧に応答するように動作される
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項4】
nが波長に依存し、前記コントローラは、前記ホログラムと関連付けられる波長に基づいてnを選択するように構成されている
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項5】
nが波長に伴って増大する
請求項4に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項6】
各フリップフロップが第1の出力「Q」及び第2の出力「Qバー」を備え、前記第1の出力が前記第2の出力と反対であり、前記コントローラは、フレーム反転を達成するために少なくともn個のクロックサイクルにわたって前記フリップフロップの前記第1の出力を使用して、前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルを駆動させた後、少なくともn個のクロックサイクルにわたって前記フリップフロップの前記第2の出力を使用して、前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルを駆動するように構成されている
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項7】
前記ピクセルグループにおける前記n個の光変調ピクセルは、実質的に正方形の配列又は実質的に長方形の光変調ピクセルによる配列を形成する
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項8】
前記シフトレジスタの前記クロックは、25KHzよりも大きい周波数で動作される
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項9】
少なくとも10,000×10,000個の光変調ピクセルを備え、各ピクセルのサイズが2×2μm未満である
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器。
【請求項10】
請求項1に記載の液晶オンシリコン空間光変調器と光源とを備えるホログラフィックプロジェクタであって、
前記光源は、前記画像のホログラフィック再構成が再生平面上に投影されるように前記空間光変調器を照らすように構成されている
ホログラフィックプロジェクタ。
【請求項11】
第1の波長の光を含む第1のホログラフィック再構成と、第2の波長の光を含む第2のホログラフィック再構成とが再生平面上に形成され、前記第1のホログラフィック再構成と関連付けられるnの値は、前記第2のホログラフィック再構成と関連付けられるnの値とは異なる
請求項10に記載のホログラフィックプロジェクタ。
【請求項12】
前記第1の波長が前記第2の波長よりも大きく、前記第1のホログラフィック再構成と関連付けられるnの値が前記第2のホログラフィック再構成と関連付けられるnの値よりも大きい
請求項11に記載のホログラフィックプロジェクタ。
【請求項13】
前記第1のホログラフィック再構成は、n=nの値を使用して動作する請求項1に記載の第1の液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成され、前記第2のホログラフィック再構成は、n=nの値を使用して動作する請求項1に記載の第2の液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成され、nがnに等しくない
請求項10に記載のホログラフィックプロジェクタ。
【請求項14】
前記第1のホログラフィック再構成及び前記第2のホログラフィック再構成は、請求項1に記載の同じ液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成され、前記コントローラは、前記第1のホログラフィック再構成がn=n1の値を使用して形成されるとともに前記第2のホログラフィック再構成がn=n2の値を使用して形成されるように前記光変調ピクセルを再構成するように構成されており、n1がn2に等しくない
請求項10に記載のホログラフィックプロジェクタ。
【請求項15】
液晶を備える液晶オンシリコン空間光変調器を動作させる方法であって、
各光変調ピクセルがそれぞれのフリップフロップと関連付けられており、
前記方法は、
画像のホログラムを受けるステップであって、前記ホログラムは、それぞれがnビットホログラムピクセル値を備える複数のホログラムピクセルを備え、前記nは整数である、ステップと、
ピクセルグループを隣接するn個の光変調ピクセルの集合としたときに、前記ホログラムと前記光変調ピクセルとの間に1対nピクセル相関が存在するように、前記ホログラムのそれぞれのホログラムピクセル値にしたがって、前記ピクセルグループに含まれる各光変調ピクセルを駆動するステップと、を含み、
前記ピクセルグループにおける前記n個の光変調ピクセルの前記フリップフロップは、シフトレジスタを形成するように直列に接続され、
前記方法は、前記ピクセルグループにおける前記n個の光変調ピクセルと関連付けられる前記nビットホログラムピクセル値が少なくともn個のクロックサイクルにわたって前記ピクセルグループにおける各光変調ピクセルに対して一度に1ビットずつ与えられるように前記シフトレジスタを動作させるステップ、を更に含み、
前記nビットホログラムピクセル値、前記1対nピクセル相関、前記n個の光変調ピクセル、及び前記n個のクロックサイクルにおけるnは同じである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示デバイスに関する。具体的には、本開示は、空間光変調器及び位相変調器に関する。より具体的には、本開示は、液晶オンシリコン(Liquid crystal on silicon)空間光変調器に関する。また、本開示は、空間光変調器を動作、駆動、又は、制御する方法、並びに、ホログラムを表示する方法に関する。また、本開示は、光変調ピクセルをホログラムピクセルに割り当てる方法、及び、液晶オンシリコン空間光変調器のピクセルなどの複数の光変調ピクセルにホログラムを表示する方法に関する。また、本開示は、ホログラフィック再構成のサイズを変更するとともに、ホログラフィック再構成の分解能を波長に応じて変更する方法に関する。更に、本開示は、第1のカラーホログラフィック再構成のサイズを第2のカラーホログラフィック再構成のサイズに適合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱された光は、振幅情報及び位相情報の両方を含む。この振幅情報及び位相情報は、例えば、干渉縞を備えるホログラフィック記録又は「ホログラム」を形成するべく周知の干渉技術によって感光板上に捕捉され得る。ホログラムは、当初の物体を表わす2次元又は3次元ホログラフィック再構成或いは再生画像を形成するべく適切な光による照明によって再構成され得る。
【0003】
計算機合成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートすることができる。計算機合成ホログラムは、フレネル変換又はフーリエ変換などの数学的変換に基づく技術によって計算され得る。これらのタイプのホログラムは、フレネル/フーリエ変換ホログラム又は単にフレネル/フーリエホログラムと称される場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域/平面表示又は物体の周波数領域/平面表示と見なされ得る。また、計算機合成ホログラムは、例えば、コヒーレントレイトレーシング又はポイントクラウド技術によって計算され得る。
【0004】
計算機合成ホログラムは、入射光の振幅及び/又は位相を変調するようになっている空間光変調器でエンコードされ得る。光変調は、電気的にアドレス可能な液晶又は光学的にアドレス可能な液晶を使用して達成され得る。
【0005】
空間光変調器は、一般に、セル又は素子とも称され得る複数の個別にアドレス可能なピクセルを備える。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、又は、連続であってもよい。或いは、デバイスが連続的(すなわち、ピクセルから構成されない)であってもよく、したがって、光変調がデバイス全体にわたって連続的であってもよい。空間光変調器は、変調光が反射して出力されることを意味する反射型であってもよい。空間光変調器は、同様に、変調光が透過して出力されることを意味する透過型であってもよい。
【0006】
多色ホログラフィック再構成をもたらすための2つの手法、すなわち、空間分離カラー「SSC」及びフレームシーケンシャルカラー「FSC」が知られている。両方の手法は、本開示に適合する。
【0007】
SSCの方法は、それぞれが異なる単色と関連付けられるそれぞれの複数のホログラムを表示するために、光変調ピクセルの複数の空間的に分離された配列-或いは更には複数の異なる空間光変調器-を使用する。複数の単一色は、赤色、緑色、及び、青色を含んでもよい。各ホログラムは、対応する単一色画像/ホログラフィック再構成を生じさせる。複数の単一色画像は、例えばフルカラー画像の外観を与えるために、ほぼ同時に起こってもよい。SSC方法の利点は、3つの全てのホログラフィック再構成が同時に形成され得るため、画像が非常に明るくなり得ることである。
【0008】
FSCの方法は、共通の空間光変調器の全てのピクセルを使用して、3つの単一色ホログラムを順に表示することができる。単一色再構成は、人間の観察者が3つの単一色画像の統合から多色画像を知覚するように十分な速さで周期的に繰り返される(例えば、赤色、緑色、青色、赤色、緑色、青色など)。FSCの利点は、SLM全体が各色ごとに使用される点である。このことは、SLMの全てのピクセルがそれぞれのカラー画像ごとに使用されるため、生成される3つのカラー画像の品質が最適であることを意味する。
【0009】
カラーホログラフィックプロジェクタに伴う1つの問題は、回折がホログラフィックプロセスに必須であり、回折が波長に依存することである。具体的には、ホログラフィック再構成のサイズが波長に依存する。合成カラー方式において、これは、2つの不一致、すなわち、(1)単一色ホログラフィック再構成の全体サイズの不一致、及び、(2)ホログラフィック再構成における画像ピクセルの位置間の不一致があるため、知覚される合成カラー再構成の品質の低下をもたらす。本発明者は、それぞれのカラーチャネルごとに異なる長さのフーリエ経路を使用することを含むこれらの不一致に対処するための技術を既に開示した-例えば、英国特許第2,547,929号明細書を参照。また、本発明者は、それぞれのホログラムピクセルを表わすために表示デバイスのピクセルのグループ(本明細書中では「サブピクセル」と称される)を使用してこれらの不一致に対処するための他の技術も既に開示してしまっており、この場合、グループ当たりのピクセルの数は波長に基づいて選択される-例えば、英国特許第2,569,206号明細書を参照。本開示は、後者の技術に基づいている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の態様は、添付の独立請求項に規定される。
【0011】
本明細書中では、光変調ピクセルの配列とコントローラとを備える液晶オンシリコン空間光変調器が開示される。配列の各光変調ピクセルは、光変調用の液晶を備える。各光変調ピクセルはそれぞれのフリップフロップと関連付けられる。コントローラは、画像のホログラムを受けるようになっている。ホログラムは複数のホログラムピクセルを備える。各ホログラムピクセルはそれぞれのnビットホログラムピクセル値を含む。ホログラムピクセル値は、光変調ピクセルの液晶セルに印加される電圧を決定する。ホログラムピクセル値は、グレーレベルを表わす。グレーレベルは、実施形態では、受けた光に作用する位相遅延又は位相変調値-例えば、π/2-などの光変調値である。複数の位相遅延値は、位相遅延分布又は配列を形成する。誤解を避けるために、位相遅延分布はホログラムを表わす。簡単に言えば、位相遅延分布はホログラムであると言える。コントローラは、更に、ホログラムのそれぞれのホログラムピクセル値にしたがってn個の光変調ピクセルの隣接するグループの各光変調ピクセルを駆動するようになっている。したがって、ホログラムと光変調ピクセルとの間には1対nのピクセル相関がある。n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループのフリップフロップは、直列に接続されてシフトレジスタを形成する。シフトレジスタの動作中、n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループと関連付けられるnビットホログラムピクセル値は、少なくともn個のクロックサイクルにわたって一度に1ビットずつ隣接するグループの各光変調ピクセルに与えられる。例えば、nビットホログラムピクセル値は、2n個のクロックサイクルにわたって又はn個のクロックサイクルの他の整数倍にわたって隣接するグループの光変調ピクセルに対して1ビットずつ一度に与えられてもよい。
【0012】
液晶オンシリコン空間光変調器は、デジタルバックプレーンを有する。コントローラは、ホログラムピクセル値のデジタル表示を受けて、デジタルパルスを使用して液晶を駆動するようになっている。各デジタルパルスは、4又は5Vなどの電圧と関連付けられてもよい。本明細書中に開示されるように、各ピクセルをデジタルで駆動させることにより、ピクセルドライバが縮小でき、それにより、より小さいピクセルが可能となる。液晶駆動信号は、シフトレジスタを用いてピクセルのグループ間で分配されるビットパターンである。ピクセルの各グループ(本明細書中では各ピクセルが「サブピクセル」と称される)は、表示用のホログラムのそれぞれのピクセル値と関連付けられる。「サブピクセル」という用語は、サブピクセルの各グループが表示用のホログラムの1つのピクセルに対応することを反映するために使用される。事実上、液晶電圧は、サブピクセルのグループ下に、-例えば、サブピクセルのグループに対応するシリコンバックプレーンのサブエリアに蓄えられる。
【0013】
本明細書中に開示される手法は、液晶オンシリコン空間光変調器と関連付けられる波長依存回折角を緩和する。シリコンバックプレーン-個々のアドレス可能なピクセルで構成されるのではなく-は、遥かに小さいサブピクセルで構成される。サブピクセルのグループをプログラムでグループ化して「通常の」ピクセルを作成することができ、該ピクセルは、その後、各ホログラムピクセル値を表示するために使用される。サブピクセルのグループ化は、波長及び所望の回折角によって決定されてもよい。
【0014】
各光変調ピクセルは、それぞれの1ビットメモリと更に関連付けられてもよい。コントローラは、シフトレジスタの動作前に、隣接するグループの各光変調ピクセルに対して、それぞれのnビットホログラムピクセル値の異なるビットを与えるようになっていてもよい。
【0015】
第1のステップでは、ホログラムピクセル値を表わすnビット数がサブピクセルのグループに供給される。各サブピクセルは、nビットのうちの1つのそれぞれのビットを受ける。その後、シフトレジスタは、nビット数のビットを全てのサブピクセルにわたって循環する。第1のステップにおいて、サブピクセルの各グループは、それらのホログラムピクセル値を同時に受けてもよい。特に、ピクセル当たり1ビットのメモリのみを使用すると、サイズに大きく影響し、ホログラムピクセル当たりのサブピクセルの概念を可能にするのに役立つ。任意の数の異なる電子構成を使用して、シフトレジスタを動作させる前の適切な時間にサブピクセルの各グループにビットパターンを選択的にダウンロードすることができる。
【0016】
シフトレジスタは、各光変調ピクセルの液晶がそれぞれのnビットホログラムピクセル値に対応するRMS電圧に応答するように動作されてもよい。サブピクセルは、当業者によく知られている態様で、液晶がRMS電圧に応答する高速クロックによって十分に高速に駆動される。幾つかの実施形態では、シフトレジスタのクロックが、50KHzを超えるなど、25KHzを超えて動作される。シフトレジスタは、任意の所定の表示方式にしたがって次のビットパターンが与えられるまでシーケンスにわたってサイクルしてもよい。幾つかの実施形態において、ビットパターンは、0~5ボルトなど、0~少なくとも3ボルトの任意の電圧を与えることができる。
【0017】
nの値は波長に依存してもよく、また、コントローラは、ホログラムに関連する波長に基づいてnを選択するようになっていてもよい。nの値は、波長に伴って増大してもよい。nの値は、波長にほぼ比例してもよい。
【0018】
ホログラフィック再生場のサイズは、ホログラフィックプロセスが回折に基づくため、波長の関数である。したがって、複数の単一色ホログラフィック再構成が再生平面上で必要とされる場合には、単一色ホログラフィック再構成が異なるサイズを有する場合があり、それにより、低品質の画像がもたらされる。実施形態によれば、サブピクセルの配置(例えば、グループ当たりのサブピクセルの数)が波長の関数である。幾つかの実施形態において、デバイスは、異なる波長に関連するホログラムで動作するように再構成可能である。サブピクセルグループ化は、例えば、波長を示す入力に基づいてプログラム可能であると言える。シフトレジスタパターンは、例えば波長に基づいて又は性能を最適化するために自動的に構成されてもよい。
【0019】
したがって、表示されるようになっている任意の個々のホログラムに関して、各ホログラムピクセル値におけるビットの数「n」は、各グループ内に含まれるサブピクセルの数にしたがって選択されてもよく、この場合、各グループには異なるそれぞれのホログラムピクセル値が割り当てられ、また、グループのサイズ、-すなわち、グループ内のサブピクセルの数-は波長に依存し得る。したがって、実施形態によれば、第1の波長の光を使用して照らされるようになっている第1のホログラムのホログラムピクセル値は、第1のビット数を有してもよく、また、第2の異なる波長の光を使用して照らされるようになっている第2のホログラムのホログラムピクセル値は、第2の異なるビット数を有してもよい。実施形態によれば、第1及び第2のホログラムは、ホログラフィック再構成されるようになっている共通の「目標画像」に対応してもよい。第1及び第2のホログラムは、照らされた時点で、共通のホログラフィック再生平面上にそれぞれのホログラフィック再構成を形成するようになっていてもよい。したがって、例えば第1及び第2の異なる光の色によって照らされるべき第1及び第2の異なるホログラムによって目標画像が表わされるようになっている場合、ホログラムピクセル値のビット数は、それらの第1及び第2の異なるホログラム間で異なってもよい。
【0020】
更なる改良において、D型フリップフロップのQ出力及びQバー出力は、DC平衡化に必要なフレーム反転をもたらすために利用される。この更なる改善において、各フリップフロップは、第1の出力「Q」及び第2の出力「Qバー」を備える。第1の出力は、当業者によく知られている態様で第2の出力の論理反転(例えば、1及び0が互いの論理反転である)である。コントローラは、フレーム反転を達成するために、少なくともn個のクロックサイクルにわたってフリップフロップの第1の出力を使用してそれぞれの隣接するグループの各サブピクセルを駆動させた後、少なくともn個のクロックサイクルにわたってフリップフロップの第2の出力を使用してそれぞれの隣接するグループの各サブピクセルを駆動させるようになっていてもよい。例えば、コントローラ又はピクセルドライバは、DC平衡化を達成するために受信した信号に応じてQ又はQバーから選択するようになっていてもよい。或いは、データは、それがグループの周囲にわたって循環される際に反転されてもよい。
【0021】
ピクセルのそれぞれの隣接するグループは、実質的に正方形の配列又は実質的に長方形の配列を形成する。幾つかの構成では、サブピクセルの長方形の配列が有利な場合がある。例えば、空間光変調器は、少なくとも10,000×10,000個の光変調ピクセルを備えてもよい。各ピクセルのサイズは、2×2μm未満、例えば1×1μm以下であってもよい。
【0022】
本明細書中では、液晶オンシリコン空間光変調器を備えるホログラフィックプロジェクタも開示される。ホログラフィックプロジェクタは、表示されたホログラムを照らすようになっている-レーザダイオードなどの-光源を更に備えてもよい。ホログラムに対応する画像のホログラフィック再構成は、空間光変調器から空間的に分離される再生平面上に形成される。
【0023】
第1の波長の光を含む第1のホログラフィック再構成及び第2の波長の光を含む第2のホログラフィック再構成が再生平面上に形成されてもよい。第1のホログラフィック再構成に関連するnの値は、第2のホログラフィック再構成に関連するnの値とは異なってもよい。第1の波長が第2の波長より大きくてもよい。第1のホログラフィック再構成に関連するnの値は、第2のホログラフィック再構成に関連するnの値より大きくてもよい。
【0024】
本開示は、空間分離カラー表示方式及びフレームシーケンシャルカラー表示方式の両方に適合する。第1のホログラフィック再構成は、n=nの値を使用して動作する第1の液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成されてもよく、また、第2のホログラフィック再構成は、n=nの値を使用して動作する第2の液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成されてもよく、nはnに等しくない。或いは、第1のホログラフィック再構成及び第2のホログラフィック再構成が同じ液晶オンシリコン空間光変調器を使用して形成されてもよい。その場合、コントローラは、第1のホログラフィック再構成がn=nの値を使用して形成されるとともに第2のホログラフィック再構成がn=nの値を使用して形成されるように、光変調ピクセルを再構成するようになっていてもよく、nはnに等しくない。
【0025】
本明細書中では、液晶を備える液晶オンシリコン空間光変調器を動作させる方法も開示される。各光変調ピクセルはそれぞれのフリップフロップと関連付けられる。方法は、画像のホログラムを受ける第1のステップを含む。ホログラムは複数のホログラムピクセルを備える。各ホログラムピクセルはそれぞれのnビットホログラムピクセル値を含む。方法は、ホログラムのそれぞれのホログラムピクセル値にしたがってn個の光変調ピクセルの隣接するグループの各光変調ピクセルを駆動する第2のステップを含む。したがって、ホログラムと光変調ピクセルとの間には1対nのピクセル相関がある。n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループのフリップフロップは、直列に接続されてシフトレジスタを形成する。方法は、n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループと関連付けられるnビットホログラムピクセル値が少なくともn個のクロックサイクルにわたって一度に1ビットずつ隣接するグループの各光変調ピクセルに与えられるようにシフトレジスタを動作させる第3のステップを含む。方法は、nビットホログラムピクセル値の1ビットをグループのそれぞれの各サブピクセルに与える第0のステップを含んでもよい。方法は、第0のステップの前又は第1のステップの前に、ホログラムのための各ホログラムピクセル値に含まれるようになっているビット数nを決定するステップを更に含んでもよい。方法は、nビットホログラムピクセル値を決定する或いはさもなければ取得することを更に含んでもよい。
【0026】
より一般的には、本明細書中には、ホログラムを表示する方法が開示される。方法は、ホログラムを受けて、複数の光変調ピクセルにホログラムを表示することを含む。ホログラムは、それぞれが対応するホログラムピクセル値を有する複数のホログラムピクセルを備える。ホログラムを表示することは、ホログラムと複数の光変調ピクセルとの間に一対多のピクセル相関があるように複数の光変調ピクセルの隣接する光変調ピクセルのグループに各ホログラムピクセル値を表示することを含む。光変調ピクセルのそれぞれの隣接グループは、より大きな光変調ピクセルとして効果的に機能する複数の個々の光変調ピクセルを備える。言い換えると、各ホログラムピクセルを表示するために隣接するグループで2つ以上の光変調ピクセルを使用することによって、各光変調領域のサイズが増大される。他のホログラムピクセルのそれぞれに対する各ホログラムピクセルの位置は、一対多のピクセルマッピング方式を使用して保存される。したがって、ホログラフィック再構成は、より大きなピクセルを使用して完全に形成され得る。有効ピクセルのサイズは回折角を決定し、したがって、これによりホログラフィック再生場のサイズが決定される。したがって、ソフトウェアによって制御可能な再構成可能ピクセルマッピング方式を使用してホログラフィック再生場のサイズが変更されるシステムが提供される。本明細書中に開示される方法は、利用可能な空間光変調器のピクセルサイズが減少し続けるため、特に有効である。複数の光変調ピクセルの各光変調ピクセルは、2000nm未満、随意的に500nm未満又は250nm未満などの1000nm未満のピクセルサイズ(例えば、幅)を有してもよい。方法は、第1のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第1の数の光変調ピクセルを使用することを更に含んでもよい。方法は、第2のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第2の数の光変調ピクセルを使用することを更に含んでもよい。ホログラフィック再生場のサイズは、それぞれの隣接するグループ内のピクセル数を変更することによってソフトウェアで動的に変更されてもよい。したがって、ホログラフィック再生場のサイズをオンザフライで変更することができる。特に、少なくとも2つのフレームを備える表示事象中にホログラフィック再生場のサイズを変更するためにハードウェアを変更する必要がない。例えば、記載された一対多ピクセルマッピング方式は、FSC方式において第1のフレームと第2のフレームとの間又は第1のサブフレームと第2のサブフレームとの間で変更されてもよい。
【0027】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報又は位相情報又はそれらの何らかの組み合わせを含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照らすことによって形成される物体の光学的再構成を指すために使用される。ホログラフィック再構成は実像であってホログラムから空間的に分離されるため、本明細書中に開示されるシステムは「ホログラフィックプロジェクタ」として説明される。「再生場」という用語は、ホログラフィック再構成が形成されて完全に合焦される2D領域を指すために使用される。ホログラムがピクセルを備える空間光変調器に表示される場合、再生場は複数の回折次数の形態で繰り返され、この場合、各回折次数は0次再生場の複製である。0次再生場は、それが最も明るい再生場であるため、一般に、好ましい又は一次の再生場に対応する。別段に明記されなければ、「再生場」という用語は、0次再生場を指すと解釈されるべきである。「再生平面」という用語は、全ての再生場を含む空間内の平面を指すために使用される。「画像」、「再生画像」、及び、「画像領域」という用語は、ホログラフィック再構成の光によって照らされる再生場の領域を指す。幾つかの実施形態において、「画像」は、「画像スポット」又は便宜的にのみ「画像ピクセル」と称され得る別個のスポットを含み得る。
【0028】
「エンコーディング」、「書き込み」、又は、「アドレス指定」という用語は、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定するそれぞれの複数の制御値をSLMの複数のピクセルに与えるプロセスを説明するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応じて光変調分布を「表示」するように構成されると言える。したがって、SLMはホログラムを「表示する」と言うことができ、ホログラムは光変調値又はレベルの配列と見なすことができる。
【0029】
許容可能な品質のホログラフィック再構成を当初の物体のフーリエ変換に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成できることが分かってきた。そのようなホログラフィック記録は、位相限定ホログラムと称される場合がある。実施形態は位相限定ホログラムに関するが、本開示は振幅限定ホログラフィにも等しく適用可能である。
【0030】
また、本開示は、当初の物体のフーリエ変換に関連する振幅及び位相情報を使用してホログラフィック再構成を形成することにも同様に適用可能である。幾つかの実施形態において、これは、当初の物体に関する振幅情報及び位相情報の両方を含むいわゆる完全複素ホログラムを使用した複素変調によって達成される。そのようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分及び位相成分を有するため、完全複素ホログラムと称される場合がある。各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分及び位相成分の両方を有する複素数として表わされてもよい。幾つかの実施形態では、完全複素計算機合成ホログラムが計算される。
【0031】
「位相遅延」の省略表現として、位相値、位相成分、位相情報、又は、単に、計算機合成ホログラム又は空間光変調器のピクセルの位相を参照することができる。すなわち、記載される任意の位相値は、実際には、そのピクセルによって与えられる位相遅延の量を表わす数(例えば、0~2πの範囲内)である。例えば、π/2の位相値を有すると記載された空間光変調器のピクセルは、受けた光の位相をπ/2ラジアンだけ遅延させる。幾つかの実施形態において、空間光変調器の各ピクセルは、複数の想定し得る変調値(例えば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指すために使用され得る。例えば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーの影をもたらさない場合であっても、位相限定変調器において複数の利用可能な位相レベルを指すために便宜上使用され得る。また、「グレーレベル」という用語は、複素変調器における複数の利用可能な複素変調レベルを指すために便宜上使用され得る。
【0032】
したがって、ホログラムは、グレーレベルの配列-すなわち、位相遅延値又は複素変調値の配列などの光変調値の配列を含む。ホログラムは、空間光変調器に表示され、空間光変調器のピクセルピッチに匹敵する、一般にそれ未満の波長を有する光で照射されたときに回折を引き起こすパターンであるため、回折パターンとも考えられる。本明細書では、ホログラムを、レンズ又は格子として機能する回折パターンなどの他の回折パターンと組み合わせることについて言及する。例えば、格子として機能する回折パターンは、再生場を再生平面上で並進させるためにホログラムと組み合わされてもよく、又は、レンズとして機能する回折パターンは、ホログラフィック再構成を近接場の再生平面上に集束させるためにホログラムと組み合わされてもよい。
【0033】
以下の詳細な説明では、異なる実施形態及び実施形態のグループが別々に開示される場合があるが、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の特徴が、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の他の特徴又は特徴の組み合わせと組み合わされてもよい。すなわち、本開示に開示される特徴の全ての想定し得る組み合わせ及び置換が想定される。
【0034】
以下の図を参照して、特定の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】スクリーン上にホログラフィック再構成を生成する反射型SLMを示す概略図である。
図2A】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの一例の第1の反復を示す。
図2B】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の2回目以降の反復を示す。
図2C】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の別の2回目以降の反復を示す。
図3】反射型LCOS SLMの概略図である。
図4A】[4×4]配列を成して配置された16個のホログラムピクセルを備えるホログラムの一例を示す。
図4B】[4×4]配列を成して配置された16個の光変調ピクセルを備える空間光変調器の一例を示し、隣り合う光変調ピクセルはピクセル間ギャップによって空間的に分離される。
図5】幾つかの実施形態に係る第1のホログラムマッピング方式を示す。
図6】幾つかの実施形態に係る第2のホログラムマッピング方式を示す。
図7】幾つかの実施形態に係る第3のホログラムマッピング方式を示す。
図8】幾つかの実施形態に係る第4のホログラムマッピング方式を示す。
図9A】赤、緑、及び、青の光がフレームシーケンシャルカラー方式の空間光変調器に順に表示されたそれぞれのホログラムから回折されるときの、青色再生場900Bに対応するカラーオーバーラップ領域を示す。
図9B】赤、緑、及び、青の光がフレームシーケンシャルカラー方式の空間光変調器に順に表示されたそれぞれのホログラムから回折されるときの、青色再生場900Bに対応するカラーオーバーラップ領域を示す。
図10A】ホログラムピクセルごとに4つの光変調ピクセルを使用して形成された青色のホログラムを照らすために使用される青色光エンジンを示す。
図10B】ホログラムピクセルごとに5つの光変調ピクセルを使用して形成された緑色のホログラムを照らすために使用される緑色光エンジンを示す。
図10C】ホログラムピクセルごとに6つの光変調ピクセルを使用して形成された赤色のホログラムを照らすために使用される赤色光エンジンを示す。
図11】本開示に係る液晶セルと1ビットのメモリとを備えるピクセル形態を示す。
図12A】単一ビットのデータに関するサブピクセルのグループを伴うデータ経路を示す。
図12B】本開示に係るサブピクセルのグループを伴うシフトレジスタを示す。
図13A】9ビットホログラムピクセル値の一例を示す。
図13B】9ビットホログラムピクセル値のビット値を一度に1ビットずつサブピクセルのグループの周りで循環させ得る方法を示す。
図14】DC平衡化のためのフレーム反転の概念を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
同じ又は同様の部分を指すために図面の全体にわたって同じ参照番号が使用される。
【0037】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、異なる形態で具体化されてもよく、例示目的で提示される記載された実施形態に限定されると解釈されるべきでない。
【0038】
他の構造の上部/下部又は他の構造上/下に形成されると記載された構造は、構造が互いに接触する場合、更には、構造間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0039】
時間関係を説明する際、例えば、事象の時間的順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などとして説明される場合に、本開示は、別段に明記されなければ、連続的及び非連続的な事象を含むように解釈されるべきである。例えば、「ちょうど」、「即時」、又は、「直接」などの表現が使用されなければ、説明は連続的でない場合を含むように解釈されるべきである。
【0040】
本明細書中では、「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な要素を説明する場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、単にある要素を別の要素から区別するために使用されるにすぎない。例えば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。
【0041】
異なる実施形態の特徴は、部分的又は全体的に互いに結合又は組み合わせられてもよく、互いに様々に相互動作されてもよい。幾つかの実施形態は、互いに独立して行なわれてもよく、或いは、共依存関係で一緒に行なわれてもよい。
【0042】
光学形態
図1は、計算機合成ホログラムが単一の空間光変調器でエンコードされる実施形態を示す。計算機合成ホログラムは、再構成のための物体のフーリエ変換である。したがって、ホログラムは、物体のフーリエ領域又は周波数領域又はスペクトル領域表示であると言える。この実施形態では、空間光変調器が反射型液晶オンシリコン(Liquid crystal on silicon)「LCOS」デバイスである。ホログラムは空間光変調器でエンコードされ、また、ホログラフィック再構成が、再生場で、例えばスクリーン又はディフューザなどの受光面で形成される。
【0043】
光源110、例えばレーザ又はレーザダイオードが、コリメートレンズ111を介してSLM 140を照らすように配置される。コリメートレンズは、光の略平面状の波面をSLMに入射させる。図1では、波面の方向が法線方向ではない(例えば、透明層の平面に対して正確に直交している状態から2度又は3度ずれている)。しかしながら、他の実施形態では、ほぼ平坦な波面が垂直入射でもたらされ、入力光路と出力光路とを分離するためにビームスプリッタ構成が使用される。図1に示される実施形態において、構成は、光源からの光がSLMの鏡映後面から反射されて光変調層と相互作用して出口波面112を形成するようになっている。出口波面112は、スクリーン125にその焦点を有するフーリエ変換レンズ120を含む光学素子に適用される。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM 140から変調光のビームを受けて、周波数空間変換を実行し、スクリーン125でホログラフィック再構成を生成する。
【0044】
特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが全体の再構成に寄与する。再生場上の特定の点(又は画像ピクセル)と特定の光変調素子(又はホログラムピクセル)との間に一対一の相関はない。言い換えると、光変調層から出る変調光は、再生場にわたって分布される。
【0045】
これらの実施形態において、空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズの屈折力(集束力)によって決定される。図1に示される実施形態では、フーリエ変換レンズが物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズが光フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換が光学的に行なわれる。任意のレンズはフーリエ変換レンズとして作用することができるが、レンズの性能は、それが実行するフーリエ変換の精度を制限する。当業者は、レンズを使用して光フーリエ変換を実行する方法を理解している。
【0046】
ホログラム計算
幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、フーリエ変換ホログラム、又は、単にフーリエホログラム又はフーリエベースのホログラムであり、この場合、正レンズのフーリエ変換特性を利用することによって遠隔場で画像が再構成される。フーリエホログラムは、再生平面内の所望の光照射野を元のレンズ平面にフーリエ変換することによって計算される。計算機合成フーリエホログラムは、フーリエ変換を使用して計算されてもよい。
【0047】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して計算されてもよい。更に、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムを使用して、空間領域内の振幅限定情報(写真など)からフーリエ領域内のホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算してもよい。物体に関する位相情報は、空間領域における振幅限定情報から効果的に「検索」される。幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム又はその変形を使用して振幅限定情報から計算される。
【0048】
Gerchberg Saxtonアルゴリズムは、平面A及びBにおける光ビームの強度断面I(x、y)及びI(x、y)がそれぞれ既知であり、I(x、y)及びI(x、y)が単一のフーリエ変換によって関連付けられるときの状況を考慮する。所定の強度断面を用いて、平面A及びBにおける位相分布Ψ(x、y)及びΨ(x、y)に対する近似がそれぞれ見出される。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従うことによってこの問題の解を見つける。より具体的には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、I(x、y)及びI(x、y)を表わすデータセット(振幅及び位相)を空間領域とフーリエ(スペクトル又は周波数)領域との間で繰り返し転送しながら、空間的制約及びスペクトル制約を繰り返し適用する。スペクトル領域内の対応する計算機合成ホログラムは、アルゴリズムの少なくとも1回の反復によって得られる。アルゴリズムは、収束的であり、入力画像を表わすホログラムを生成するように構成される。ホログラムは、振幅限定ホログラム、位相限定ホログラム、又は、完全複素ホログラムであってもよい。
【0049】
幾つかの実施形態において、位相限定ホログラムは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる英国特許第2,498,170号又は第2,501,112号に記載されるようなGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して計算される。しかしながら、本明細書中に開示される実施形態は、単なる一例として位相限定ホログラムを計算することを記載する。これらの実施形態において、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x、y]をもたらすデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を検索し、この場合、振幅情報T[x、y]は目標画像(例えば写真)を表わす。大きさ及び位相はフーリエ変換において本質的に組み合わされるため、変換された大きさ及び位相は、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報及び位相情報の両方に関するフィードバックとともに反復的に使用され得る。しかしながら、これらの実施形態では、画像平面で目標画像を表わすホログラフィックを形成するために位相情報Ψ[u,v]のみがホログラムとして使用される。ホログラムは、位相値のデータセット(例えば2D配列)である。
【0050】
他の実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して、完全複素ホログラムを計算する。完全複素ホログラムは、大きさ成分と位相成分とを有するホログラムである。ホログラムは、複素データ値の配列を含むデータセット(例えば2D配列)であり、この場合、各複素データ値は、大きさ成分及び位相成分を含む。
【0051】
幾つかの実施形態では、アルゴリズムが複素データを処理し、フーリエ変換が複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分及び虚数成分、又は、(ii)大きさ成分及び位相成分を含むと見なされ得る。幾つかの実施形態において、複素データの2つの成分は、アルゴリズムの様々な段階で異なるように処理される。
【0052】
図2Aは、位相限定ホログラムを計算するための幾つかの実施形態に係るアルゴリズムの最初の反復を示す。アルゴリズムへの入力は、ピクセル又はデータ値の2D配列を含む入力画像210であり、この場合、各ピクセル又はデータ値は、大きさ又は振幅の値である。すなわち、入力画像210の各ピクセル又はデータ値は、位相成分を有さない。したがって、入力画像210は、大きさ限定又は振幅限定又は強度限定分布と見なされ得る。そのような入力画像210の一例は、写真、又は、フレームの時系列を含むビデオの1フレームである。アルゴリズムの最初の反復は、開始複素データセットを形成するために、ランダム位相分布(又はランダム位相シード)230を使用して、入力画像の各ピクセルにランダム位相値を割り当てることを含むデータ形成ステップ202Aから始まり、この場合、セットの各データ要素は、大きさ及び位相を含む。開始複素データセットは、空間領域における入力画像を表わすと言える。
【0053】
第1の処理ブロック250は、開始複素データセットを受けて、フーリエ変換複素データセットを形成するべく複素フーリエ変換を実行する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受けて、ホログラム280Aを出力する。幾つかの実施形態では、ホログラム280Aが位相限定ホログラムである。これらの実施形態において、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために各位相値を量子化し、各振幅値を1に設定する。各位相値は、位相限定ホログラムを「表示」するために使用される空間光変調器のピクセル上に表わされ得る位相レベルにしたがって量子化される。例えば、空間光変調器の各ピクセルが256個の異なる位相レベルを与える場合、ホログラムの各位相値は、256個の想定し得る位相レベルのうちの1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表わす位相限定フーリエホログラムである。他の実施形態において、ホログラム280Aは、受けられたフーリエ変換複素データセットから導き出される複素データ値(それぞれが振幅成分及び位相成分を含む)の配列を含む完全複素ホログラムである。幾つかの実施形態において、第2の処理ブロック253は、各複素データ値を複数の許容可能な複素変調レベルのうちの1つに制約してホログラム280Aを形成する。制約するステップは、各複素データ値を複素平面内の最も近い許容可能な複素変調レベルに設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域又はフーリエ領域又は周波数領域における入力画像を表わすと言える。幾つかの実施形態では、アルゴリズムがこの時点で停止する。
【0054】
しかしながら、他の実施形態において、アルゴリズムは、図2Aの破線矢印によって表わされるように継続する。言い換えると、図2Aの破線矢印に続くステップは随意的である(すなわち、全ての実施形態に必須ではない)。
【0055】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正複素データセットを受けて、逆フーリエ変換を実行し、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域における入力画像を表わすと言える。
【0056】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受けて、大きさ値の分布211A及び位相値の分布213Aを抽出する。随意的に、第4の処理ブロック259は、大きさ値の分布211Aを評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの大きさ値の分布211Aを、それ自体が勿論大きさ値の分布である入力画像510と比較してもよい。大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが許容可能であると決定することができる。すなわち、大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を十分に正確に表わすと決定することができる。幾つかの実施形態において、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値の分布213Aは、比較の目的のために無視される。大きさ値の分布211Aと入力画像210とを比較するための任意の数の異なる方法を使用することができ、また、本開示が任意の特定の方法に限定されないことが分かる。幾つかの実施形態では、平均二乗差が計算され、また、平均二乗差が閾値未満である場合、ホログラム280Aは許容可能であると考えられる。ホログラム280Aが許容できないと第4の処理ブロック259が決定する場合には、アルゴリズムの更なる反復が実行されてもよい。しかしながら、この比較ステップは必須ではなく、他の実施形態では、実行されるアルゴリズムの反復回数が、予め決定され又は予め設定され或いはユーザ定義である。
【0057】
図2Bは、アルゴリズムの第2の反復及びアルゴリズムの任意の更なる反復を表わす。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、入力画像210の大きさ値の分布を支持して拒絶される。最初の反復において、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の大きさ値の分布とランダム位相分布230とを組み合わせることによって最初の複素データセットを形成した。しかしながら、2回目以降の反復において、データ形成ステップ202Bは、(i)アルゴリズムの前回の反復からの位相値の分布213Aと、(ii)入力画像210の大きさ値の分布とを組み合わせることによって複素データセットを形成することを含む。
【0058】
その後、図2Bのデータ形成ステップ202Bによって形成された複素データセットは、第2の反復ホログラム280Bを形成するべく図2Aに関連して説明したのと同じ方法で処理される。したがって、プロセスの説明はここでは繰り返さない。アルゴリズムは、第2の反復ホログラム280Bが計算されたときに停止してもよい。しかしながら、アルゴリズムの任意の数の更なる反復が実行されてもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされる又は更なる反復が必要とされる場合にのみ必要とされることが理解される。出力されたホログラム280Bは、一般に、反復ごとに良好になる。しかしながら、実際には、通常、測定可能な改善が観察されない又は更なる反復を実行するプラスの利益が追加の処理時間のマイナスの効果によって相殺されるポイントに達する。したがって、アルゴリズムは、反復的且つ収束的であるとして説明される。
【0059】
図2Cは、2回目以降の反復の別の実施形態を表わす。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、大きさ値の別の分布を支持して拒絶される。この別の実施形態において、大きさ値の別の分布は、前回の反復の大きさ値の分布211から導き出される。具体的には、処理ブロック258は、前回の反復の大きさ値の分布211から入力画像210の大きさ値の分布を減算し、その差を利得係数αでスケーリングして、スケーリングされた差を入力画像210から減算する。これは、以下の式によって数学的に表わされ、この場合、下付き文字及び数字は反復回数を示す。
n+1[x,y]=F’{exp(iΨ[u,v])}
Ψ[u,v]=∠F{η・exp(i∠R[x,y]}
η=T[x,y]-α(|R[x,y]|-T[x,y])ここで、
F’は、逆フーリエ変換;
Fは、順フーリエ変換;
R[x、y]は、第3の処理ブロック256によって出力される複素データセットであり、
T[x、y]は、入力又は目標画像であり、
∠は位相成分であり、
Ψは位相限定ホログラム280Bであり、
ηは、大きさ値の新たな分布211Bであり、及び
αは利得係数である。
【0060】
利得係数αは固定であっても可変であってもよい。幾つかの実施形態において、利得係数αは、入ってくる目標画像データのサイズ及びレートに基づいて決定される。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数に依存する。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数の単なる関数である。
【0061】
図2Cの実施形態は、他の全ての点で図2A及び図2Bの実施形態と同じである。位相限定ホログラムΨ(u,v)は、周波数領域又はフーリエ領域における位相分布を含むと言える。
【0062】
幾つかの実施形態では、フーリエ変換が空間光変調器を使用して実行される。具体的には、ホログラムデータは、光パワーを与える第2のデータと組み合わされる。すなわち、空間光変調に書き込まれるデータは、物体を表わすホログラムデータと、レンズを表わすレンズデータとを含む。空間光変調器に表示されて光で照らされると、レンズデータは、物理レンズをエミュレートし-すなわち、対応する物理光学素子と同じ方法で光を焦点に至らせる。したがって、レンズデータは、光パワー又は集束力を与える。これらの実施形態では、図1の物理フーリエ変換レンズ120が省かれてもよい。計算機合成ホログラフィの分野では、レンズを表わすデータを計算する方法が知られている。レンズを表わすデータは、ソフトウェアレンズと称される場合がある。例えば、位相限定レンズは、その屈折率及び空間的に変化する光路長に起因してレンズの各点によって引き起こされる位相遅延を計算することによって形成されてもよい。例えば、凸レンズの中心における光路長は、レンズの縁における光路長よりも大きい。振幅限定レンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。計算機合成ホログラフィの技術分野では、物理的なフーリエレンズを必要とせずにホログラムのフーリエ変換を実行できるように、レンズを表わすデータをホログラムと組み合わせる方法も知られている。幾つかの実施形態において、レンズデータは、単純なベクトル加算などの単純な加算によってホログラムと組み合わされる。幾つかの実施形態では、フーリエ変換を実行するために、物理レンズがソフトウェアレンズとともに使用される。或いは、他の実施形態では、ホログラフィック再構成が遠隔場で行なわれるように、フーリエ変換レンズが完全に省かれる。更なる実施形態において、ホログラムは、格子データ、すなわち、ビームステアリングなどの格子の機能を果たすようになっているデータと同じ方法で組み合わされてもよい。ここでも、そのようなデータを計算する方法は、計算機合成ホログラフィの分野で知られている。例えば、位相限定格子は、ブレーズド格子の表面上の各点によって引き起こされる位相遅延をモデル化することによって形成されてもよい。振幅限定格子は、ホログラフィック再構成の角度ステアリングをもたらすべく、振幅限定ホログラムと単純に重ね合わされてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態において、フーリエ変換は、物理フーリエ変換レンズとソフトウェアレンズとによって一緒に実行される。すなわち、フーリエ変換に寄与する一部の光パワーがソフトウェアレンズによって与えられ、また、フーリエ変換に寄与する光パワーの残りが1つ又は複数の物理光学素子によって与えられる。
【0064】
幾つかの実施形態では、画像データを受けるとともにアルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するようになっているリアルタイムエンジンが設けられる。幾つかの実施形態において、画像データは、画像フレームのシーケンスを含むビデオである。他の実施形態において、ホログラムは、予め計算され、コンピュータメモリに記憶されるとともに、SLMに表示するために必要に応じて呼び出される。すなわち、幾つかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが与えられる。
【0065】
実施形態は、単なる一例として、フーリエホログラフィ及びGerchberg-Saxton型アルゴリズムに関する。本開示は、フレネルホログラフィ、及び、点群法に基づくものなどの他の技術によって計算されるホログラムにも同様に適用可能である。
【0066】
光変調
空間光変調器を使用して、計算機合成ホログラムを含む回折パターンを表示してもよい。ホログラムが位相限定ホログラムである場合には、位相を変調する空間光変調器が必要とされる。ホログラムが完全複素ホログラムである場合には、位相及び振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、又は、位相を変調する第1の空間光変調器及び振幅を変調する第2の空間光変調器が使用されてもよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、空間光変調器の光変調素子(すなわち、ピクセル)が液晶を含むセルである。すなわち、幾つかの実施形態において、空間光変調器は、光学活性要素が液晶である液晶デバイスである。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に与えるように構成される。すなわち、各液晶セルは、複数の想定し得る光変調レベルから選択される1つの光変調レベルで動作するように常に構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルとは異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器であるが、本開示の態様は、他のタイプの表示デバイスにより広く適用可能である。
【0068】
LCOSデバイスは、小さな開口(例えば、数センチメートル幅)内に光変調素子又はピクセルの高密度配列をもたらす。ピクセルは一般に約10ミクロン以下であり、その結果、回折角が数度になり、そのため、光学系をコンパクトにすることができる。LCOS SLMの小さな開口を適切に照らすことは、他の液晶デバイスの大きな開口よりも容易である。LCOSデバイスは反射型であり、そのため、LCOS SLMのピクセルを駆動する回路を反射面下に埋め込むことができる。その結果、開口率が高くなる。言い換えると、ピクセルは密集しており、そのため、ピクセル間にデッドスペースが殆どない。これは、それによって再生場における光学的ノイズが低減するため有利である。LCOS SLMは、ピクセルが光学的に平坦であるという利点を有するシリコンバックプレーンを使用する。これは、位相変調デバイスにとって特に重要である。
【0069】
以下、図3を参照して、適切なLCOS SLMを単なる一例として説明する。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を用いて形成される。LCOSデバイスは、基板の上面に配置される、ギャップ301aだけ離間された正方形の平面アルミニウム電極301の2D配列を有する。電極301のそれぞれは、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレス指定され得る。各電極はそれぞれの平面ミラーを形成する。電極の配列上に配向層303が配置され、また、配向層303上に液晶層304が配置される。第2の配向層305が例えばガラスの平面透明層306上に配置される。例えばITOの単一の透明電極307が、透明層306と第2の配向層305との間に配置される。
【0070】
正方形電極301のそれぞれは、透明電極307の上層領域及び介在する液晶材料とともに、しばしばピクセルと称される制御可能な位相変調素子308を画定する。有効ピクセル面積又はフィルファクタは、ピクセル301a間の空間を考慮して、光学的に活性な全ピクセルの割合である。透明電極307に対して各電極301に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性を変化させることができ、それにより、液晶材料に入射する光に可変遅延をもたらすことができる。効果は、波面に位相限定変調をもたらすことであり、すなわち、振幅効果が生じない。
【0071】
記載されたLCOS SLMは、反射において空間的に変調された光を出力する。反射型LCOS SLMは、信号線、ゲート線、及び、トランジスタが鏡面の下にあるという利点を有し、その結果、フィルファクタが高く(通常は90%を超える)、分解能が高くなる。反射型LCOS空間光変調器を使用する別の利点は、液晶層の厚さを、透過型デバイスを使用した場合に必要となる厚さの半分にすることができることである。これにより、液晶のスイッチング速度が大幅に向上する(動画像の投影にとって重要な利点)。しかしながら、本開示の教示内容は、透過型LCOS SLMを使用して同様に実施することができる。
【0072】
ホログラムマッピング方式
単なる例として、図4Aは、4行及び4列を含む規則的な[4×4]配列を成して配置される16個のホログラムピクセルを含むホログラムを表わす。各ピクセルに関してこれ以降使用される2桁の番号付け方式は、行番号とそれに続く列番号とを含む。1桁目は行番号を表わし、2桁目は列番号を表わす。例えば、「23」は、2行3列のホログラムピクセル値を表わす。読者は、実際には、各ホログラムが任意の数のピクセル、例えば1024行及び512列のピクセルを含み得ることを理解し得る。
【0073】
以上から分かるように、各ホログラムピクセルは、振幅値、位相値、又は、振幅値及び位相値を有する複素数となり得るホログラムピクセル値を有する。例えば、各ホログラムピクセル値は、0~2πラジアンの範囲の位相遅延値を表わし得る。例えば、ホログラムピクセル「23」は、π/2のホログラムピクセル値を有してもよい。ホログラムピクセル「23」に入射する光は、π/2だけ遅延される。各ホログラムピクセルは、対応するホログラムピクセル値を「表示」するように個別に制御される。全体として、ホログラムは、入射光波面に位相遅延分布を適用する。
【0074】
この開示によれば、表示デバイスに供給される各ホログラムピクセル値は、複数のビットを含むデジタル番号によって表わされる。言い換えると、表示デバイスのシリコンバックプレーンはデジタルである。
【0075】
ホログラムは、空間光変調器に表示されてもよい。従来の形態では、ホログラムピクセルと空間光変調器の光変調ピクセルとの間に一対一の相関(又はマッピング)がある。したがって、図4Aは、[4×4]ホログラムを表示するために使用可能な空間光変調器の[4×4]光変調ピクセルの配列を等しく表わしている。例えば、ホログラムピクセル「23」のホログラムピクセル値(すなわち、前の例ではπ/2である)が、[4×4]の光変調ピクセルを含む空間光変調器の光変調ピクセル「23」に書き込まれてもよい。より具体的には、光変調ピクセル「23」は、空間光変調器のピクセル「23」の領域に入射する光がπ/2ラジアンだけ遅延されるように局所的な液晶を駆動するべくアドレス指定される。液晶セルを駆動することは、電圧を液晶セルにわたって印加することを含み、これは、局所的な液晶の傾斜及び/又はねじれを引き起こすとともに、液晶の複屈折をうまく利用して、その液晶セルを通じた光の伝搬をソフトウェア制御量だけ遅延させる電圧制御屈折率を効果的に与える。
【0076】
図4Bは、光変調ピクセルの規則的な配列を含む空間光変調器における、光変調ピクセル400などの光変調ピクセルの配置を示す。各光変調ピクセルはピクセルサイズ410を有する。隣り合う光変調ピクセルは、規則的なピクセル間ギャップ420だけ分離される。配列の周期430及び光変調ピクセルの配列を照らすために使用される光の波長は、配列の周期性、したがって、空間光変調器から距離を隔てたホログラフィック再生場のサイズに起因して、回折角を決定する。
【0077】
ホログラフィック再生場のサイズIは、以下によって決定される。
【数1】
この場合、Lは、空間光変調器からホログラフィック再生平面までの距離であり、θは、
【数2】
によって規定される回折角であり、
ここで、δはピクセル周期(図4Bの参照符号430参照)であり、λはホログラフィック再構成を形成するために使用される光の波長である。
【0078】
再生場に形成され得る最小の特徴は、「分解能要素」、「画像スポット」、又は、「画像ピクセル」と呼ばれる場合がある。四角形の開口のフーリエ変換はsinc関数であり、したがって、空間光変調器の開口は各画像ピクセルをsinc関数として規定する。より具体的には、再生場上の各画像ピクセルの空間強度分布はsinc関数である。各sinc関数は、ピーク強度の一次回折次数と、一次次数から径方向に離れて延びる一連の強度が減少するより高い回折次数とを含むと見なされ得る。各sinc関数のサイズ(すなわち、各sinc関数の物理的又は空間的範囲)は、空間光変調器のサイズ(すなわち、光変調素子又は空間光変調ピクセルの配列によって形成される開口の物理的又は空間的範囲)によって決定される。具体的には、光変調ピクセルの配列によって形成される開口が大きいほど、画像ピクセルは小さくなる。
【0079】
異なるカラーホログラフィック再構成のサイズ間の任意の差は、(1)異なるホログラフィック再構成の全体サイズの一般的な不一致、及び、(2)各ホログラフィック再構成における画像スポットの位置間の不一致に起因して、知覚される色再構成の品質を著しく低下させる。
【0080】
図5図8はそれぞれ、本開示の幾つかの実施形態に係る第1、第2、第3、及び、第4のホログラムマッピング方式を示す。記載された手法は、利用可能な光変調ピクセルの数及び各ホログラムピクセルに割り当てられる光変調ピクセルの最大数に応じて、任意の数のホログラムマッピング方式にまで及び得ることが分かる。ホログラムマッピング方式は、不一致問題に対する別の解決策の一部として、又はより広範には、ホログラフィック再生場のサイズを動的に、切り替え可能に、又は、選択的に変更する方法の一部として使用されてもよい。各方法及び各実施形態で説明される個々の光変調ピクセルは、同じ/一定のサイズである。幾つかの実施形態において、光変調ピクセルは、2000nm未満、随意的に1000nm未満、例えば500nm未満又は250nm未満のピクセルサイズ(例えば、幅)を有する。
【0081】
図5は、図4Aに示される[4×4]ホログラムを表示するために[16×16]光変調ピクセルの配列が使用される第1のホログラムマッピング方式の一例を示す。各ホログラムピクセル値は、[4×4]グループ又はセットを形成する16個の光変調ピクセルに表示される。例えば、ホログラムピクセル「11」のホログラムピクセル値は、[4×4]光変調ピクセルの最上段左端にあるグループに表示される。例えば、ホログラムピクセル「44」のホログラムピクセル値は、[4×4]光変調ピクセルの最下段右端にあるグループの16個の光変調ピクセル全てによって表示される。光変調ピクセルの配列を最大限に利用する。すなわち、利用可能な全ての光変調ピクセルがホログラムの表示に使用される。
【0082】
図6は、[4×4]ホログラムを表示するために[16×16]光変調ピクセルを代替的に使用する第2のホログラムマッピング方式の一例を示す。第2のホログラムマッピング方式は、各ホログラムピクセル値を表示するために、第1のホログラムマッピング方式よりも少ない光変調ピクセルを使用する。各ホログラムピクセル値は、[3×3]グループ又はセットを形成する9つの光変調ピクセルに表示される。例えば、ホログラムピクセル「11」のホログラムピクセル値は、[3×3]光変調ピクセルの最上段左端にあるグループの9個の光変調ピクセル全てによって表示される。
【0083】
図7は、[4×4]ホログラムを表示するために[16×16]光変調ピクセルを代替的に使用する第3のホログラムマッピング方式の一例を示す。第3のホログラムマッピング方式は、各ホログラムピクセル値を表示するために、第2及び第1のホログラムマッピング方式よりも少ない光変調ピクセルを使用する。各ホログラムピクセル値は、[2×2]のグループ又はセットを形成する4つの光変調ピクセルに表示される。例えば、ホログラムピクセル「11」のホログラムピクセル値は、[2×2]光変調ピクセルの最上段左端にあるグループの4個の光変調ピクセル全てによって表示される。
【0084】
図8は、[4×4]ホログラムを表示するために[16×16]光変調ピクセルを代替的に使用する第4のホログラムマッピング方式の一例を示す。第4のホログラムマッピング方式は、各ホログラムピクセル値を表示するために、第3、第2、及び、第1のホログラムマッピング方式よりも少ない光変調ピクセルを使用する。各ホログラムピクセル値は、1つの光変調ピクセルに表示される。例えば、ホログラムピクセル「11」のホログラムピクセル値は、最上段左端にある光変調ピクセルによって表示される。第4のホログラムマッピング方式は、従来の一対一のマッピング方式である。
【0085】
第1、第2、及び、第3のホログラムマッピング方式では、各ホログラムピクセルのホログラムピクセル値がそれぞれの複数の光変調ピクセルに表示され又は書き込まれる。したがって、光変調ピクセルの数は、第1、第2、及び、第3のホログラムマッピング方式のそれぞれにおいて、ホログラムピクセルの数よりも多い。しかしながら、各ホログラムピクセル値が表示される光変調ピクセルの数は、図5図7に示されるように、それぞれのマッピング方式間で異なる。各ホログラムピクセル値を表示する複数の光変調ピクセルは、配列上に連続領域を形成する。言い換えると、各ホログラムピクセル値を表示する複数の光変調ピクセルは、隣接するグループを形成する。任意の個々のマッピング方式内では、各ホログラムピクセル値が、それぞれの他の各ホログラムピクセル値と同じ数の光変調ピクセルに表示される。光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループは、より大きな単一の光変調ピクセルとして効果的に機能する。すなわち、各ホログラムピクセルには、より大きな光変調領域が割り当てられる。第1、第2、及び、第3のホログラムマッピング方式は、より大きなピクセルにホログラムを表示することに類似している。光変調ピクセルの隣接するグループ内の各光変調ピクセルは、「サブピクセル」と称される場合がある。幾つかの実施形態において、光変調ピクセルの隣接するグループのアスペクト比は、単一の光変調ピクセルのアスペクト比と同じであるが、他の実施形態では、アスペクト比が異なる。好適には、再生場のより好ましい形状を与えるために、異なるアスペクト比が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、光変調ピクセルの隣接するグループが長方形を形成する。すなわち、それらは長方形の光変調領域を形成する。例えば、隣接するグループは、[y×x]のアスペクト比を有する長方形再生場を与えるために、x≠yである[x×y]光変調ピクセルを含むことができる。
【0086】
第1、第2、第3、及び、第4のホログラムマッピング方式では、ホログラムピクセルが再配置又はシャッフルされていないことが分かる。各光変調ピクセル又は光変調ピクセルのグループの相対位置は、ホログラムピクセルの配列内の対応するホログラムピクセルの相対位置と空間的に対応する。言い換えると、各ホログラムピクセル値の相対的な行及び列の位置は、表示中に維持される。各ホログラムピクセルの空間的な配置又は相対的な位置情報は、ホログラムマッピング方式によって保存されると言える。したがって、マッピング方式は、ホログラムの「スケーリングされた」バージョンをもたらす効果を有し、この場合、スケールは、第4のマッピング方式のように1:1、又は、第3のマッピング方式のように1:2、又は、第2のマッピング方式のように1:3、又は、第1のマッピング方式のように1:4などとなり得る。
【0087】
示される第2、第3、及び、第4のホログラムマッピング方式の例では、空間光変調器の全てのピクセルがホログラムの表示に使用されるわけではない。光変調ピクセルの利用可能な配列は、完全には利用されていないと言える。しかしながら、図面に示されない他の実施形態において、未使用の光変調ピクセルは、ホログラムの少なくとも一部が繰り返される後述するタイリング方式で使用されてもよい。タイリングは、ホログラム全体のスケーリングされたバージョンをもたらさないが、ホログラムの選択された部分(又は、実施形態では、全て)を空間光変調器で繰り返す(すなわち、複製する)ことを含むため、タイリングはマッピングとは異なる。
【0088】
第1、第2、及び、第3のホログラムマッピング方式は、ホログラムピクセルと複数の光変調ピクセルとの間に一対多のピクセル相関があるように、複数の光変調ピクセルの隣接する光変調ピクセルのグループに各ホログラムピクセル値を表示することによって、複数の光変調ピクセルにホログラムを表示する例を提供する。
【0089】
一対多ピクセル相関を含む少なくとも1つのホログラムマッピング方式を含む異なるホログラムマッピング方式の使用は、例示的な赤色、緑色、及び、青色のホログラフィック再構成(又は画像)のサイズが式1及び2を使用して計算された以下の例を考慮して更に理解され得る。
【0090】
空間光変調器は、光変調素子又はピクセルの2D配列を備える。再生平面上にホログラフィック投影された画像は2D画像である。以下の例では、単一のサブピクセル数及び距離が、2つの寸法のうちの1つにおけるサブピクセル数又は距離に対して参照される。記載されたパラメータが2つの寸法(例えば、幅及び高さ)に及ぶことが理解され得る。例えば、n個のサブピクセルを使用するマッピング方式への言及は、[n×n]個のサブピクセルを備えるサブピクセルの領域の省略表現として使用される。同様に、本明細書中におけるymmの画像サイズへの言及は、[y×y]mmのサイズを有する2D画像の省略表現として使用される。
【0091】
例1
以下の表1は、赤色(630nm)、緑色(532nm)、及び、青色(450nm)のホログラフィック再構成のサイズが、それぞれの対応するホログラムピクセルを表示するために使用されるサブピクセルの数にどのように依存するかを示す。
【表1】
【0092】
表1の列1は、グループ当たりの光変調ピクセル(又はサブピクセル)の数を表わす。この例では、各光変調ピクセルが750nmのピクセルサイズを有し、また、空間光変調器から再生平面までの距離Lが100mmである。したがって、グループの全体のサイズは、グループごとのサブピクセルの数及びピクセルサイズの倍数である。全体のサイズは、各ホログラムピクセル値に割り当てられた各光変調領域のサイズに相当し、回折角を決定する。表1の第4、第5、及び、第6の列は、表示されたホログラムが赤色光、緑色光、及び、青色光でそれぞれ照らされるときの計算された画像サイズを示す。
【0093】
赤色、緑色、及び、青色ホログラフィック再構成(すなわち、画像)に関して4つのサブピクセル(より具体的には、[4×4]サブピクセル)が使用される場合、最大画像(赤色)と最小画像(青色)との間のサイズ不一致は、6.074mm(幅及び高さ)である。しかしながら、青色画像に関して3つのサブピクセル(すなわち、[3×3])のみが使用される場合には、青色画像のサイズが(各方向に)1.947mm~19.033mm増大してこのときに緑色画像が最小画像になるため、サイズ不一致は3.313mmまで減少する。画像スポットの数はホログラムマッピング方式によって影響されないため、画像スポットの位置間の不一致における対応する改善も達成される。例えば、画像サイズの増大は、隣り合う画像スポット間の間隔の増大をもたらす(すなわち、画像スポットの濃度の低下)。したがって、カラー画像間の不一致が低減されるため、改善された合成カラー画像が達成される。この方法は、不一致を許容可能なレベルまで低減するために使用されてもよく、又は、不一致を許容可能なレベルまで低減するために併用される他の方法に対する要求を低減するために使用されてもよい。したがって、第1のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第1の数の光変調ピクセルを使用するとともに、第2のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第2の数の光変調ピクセルを使用することを含む方法が提供される。
【0094】
表1の例では、赤色、緑色、及び、青色の画像に関して1対多のピクセル相関が使用される。しかしながら、他の例では、対応する第1の画像と第2の画像との間の不一致を低減するために、第1のホログラムが一対多ピクセル相関を使用して光変調ピクセルにマッピングされてもよく(例えば、図5図6又は図7)、第2のホログラムが一対一ピクセル相関を使用して光変調ピクセルにマッピングされてもよい(例えば、図8)ことが分かる。したがって、方法は、(i)ホログラムと複数の光変調ピクセルとの間に一対多のピクセル相関が存在するように、複数の光変調ピクセルの隣接した光変調ピクセルのグループに各ホログラムピクセル値を表示することによって複数の光変調ピクセルに第1のホログラムを表示するステップと、(ii)第2のホログラムと複数の光変調ピクセルとの間に一対一相関が存在するように対応する光変調ピクセルにそれぞれの第2のホログラムピクセル値を表示することによって複数の光変調ピクセルに第2のホログラムを表示するステップとを含んでもよい。
【0095】
例2
第2の例では、各光変調ピクセルが1000nmのピクセルサイズを有し、ピクセル間ギャップが100nmであり、また、空間光変調器から再生平面までの距離Lが300mmである。
【表2】
【0096】
表2から分かるように、赤色、緑色、及び、青色のホログラムのそれぞれに関して4つのサブピクセルが使用される場合、サイズの不一致(再生平面での最大画像と最小画像との間のサイズの差)は13.423mmである。しかしながら、それぞれの色ごとに異なる数の光変調ピクセルが使用される場合には、サイズの不一致を低減することができる。この例では、6つのサブピクセルが赤色に関して使用され、5つのサブピクセルが緑色に関して使用され、4つのサブピクセルが青色に関して使用される場合、サイズ不一致(青色画像と赤色画像との間のサイズの差)は33.385-31.282mm=2.103まで低減され、これは6倍を超える改善である。
【0097】
実施形態において、各ホログラムピクセルを表示するために使用されるサブピクセルの数は、ホログラフィック再生平面でのサイズ不一致を減少させるために波長に伴って増大する。実施形態において、赤色ホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために使用されるサブピクセルの数は、緑色ホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために使用されるサブピクセルの数よりも多く、また、随意的に、緑色ホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために使用されるサブピクセルの数は、青色ホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために使用されるサブピクセルの数よりも多い。
【0098】
本開示に係るサブピクセルグループの使用は、図9A及び図9Bを参照して理解され得るように、多波長プロジェクタにおけるホログラフィック形成された画像ピクセルの数もより良好に利用する。具体的には、図9Aは、FSC方式でホログラムを表示するようになっている空間光変調器920を示す。赤色再生場900Rが、空間光変調器920に表示された対応するホログラムによって回折される赤色光930Rを使用して再生平面940に形成される。再生平面940には、緑色光930Gを用いて同様に緑色再生場900Gが形成される。青色光930Bを用いて再生平面940に青色再生場900Bが形成される。式1及び式2によれば、赤色再生場900Rは緑色再生場900Gよりも大きく、緑色再生場900Gは青色再生場900Bよりも大きい。これが図9Bに更に示される。
【0099】
以上から分かるように、赤色画像は赤色再生場900R内でホログラフィック再構成され、緑色画像は緑色再生場900G内でホログラフィック再構成され、青色画像は青色再生場900B内でホログラフィック再構成される。
【0100】
各ピクセルが赤色光、緑色光、及び、青色光を含むことができる合成カラー画像は、再生平面におけるオーバーラップ領域を使用してのみ表示され得る。それは、赤色、緑色、及び、青色の画像コンテンツが表示され得る領域である。オーバーラップ領域は、当然ながら、最小再生場、すなわち、青色再生場900Bの領域である。オーバーラップ領域がFSC方式でフルカラー画像を表示するために使用される場合、一部の赤色ピクセル及び緑色ピクセルがオーバーラップ領域の外側にあるため、赤色画像及び緑色画像は青色画像よりも少ないピクセルを備える。
【0101】
以下の表3は、青色画像が1024×1024画像ピクセルを備える例を示す。具体的には、表3は、第1のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第1の数の光変調ピクセルを使用するとともに、第2のホログラムの各ホログラムピクセル値を表示するために第2の数の光変調ピクセルを使用する概念が、画像ピクセルの数、したがって、画像の品質をより良く最適化するためにどのように使用され得るかを示す。赤色、緑色、及び、青色に関して異なる数のサブピクセルを使用することが、より多くの赤色及び緑色のピクセルがオーバーラップ領域内に形成されることをどのように意味するかが分かる。
【表3】
【0102】
表3から分かるように、赤色及び緑色に関して各ホログラムピクセルを表示するために増加したサブピクセル数を使用することにより、オーバーラップ領域内の赤色及び緑色の画像ピクセルの数がそれぞれ増大される。具体的には、オーバーラップ領域内の赤色ピクセルの数は、959-730ピクセル=292ピクセルだけ増大され、また、オーバーラップ領域内の緑色ピクセルの数は、970-865ピクセル=105ピクセルだけ増大される。これは、オーバーラップ領域内の赤色画像ピクセルの数が40%増大し、オーバーラップ領域内の緑色画像ピクセルの数が12%増大することに相当する。
【0103】
各ホログラムピクセル値の表示に使用されるサブピクセルの数は、ホログラムの表示に必要な光変調ピクセルの総数を決定する。ホログラムを表示するために必要な光変調ピクセルの総数は、空間光変調器上の光変調領域を画定する。各計算機合成ホログラム(赤色、緑色又は青色)は、例えば、1024×1024ホログラムピクセル値を備えてもよい。1μmのピクセルピッチ(ピクセルサイズ+ピクセル間ギャップ)を有する6つの光変調ピクセルを使用して各赤色ホログラムピクセル値を表示する(すなわち、赤色ホログラムピクセルごとに6×6サブピクセルが使用される)場合、赤色ホログラムを表示するために必要な光変調領域は、幅及び高さが6×1000×1024=6.1mmになる。1μmのサイズを有する4つの光変調ピクセルを使用して各青色ホログラムピクセル値を表示する場合、青色ホログラムの表示に必要な光変調領域は4.1×4.1mmになる。したがって、例2などの幾つかの実施形態において、赤色光変調領域(すなわち、赤色ホログラムを表示するために使用される光変調領域)は、緑色光変調領域よりもサイズが大きく(例えば、幅及び/又は面積)、緑色光変調領域は青色光変調領域よりも大きい。
【0104】
幾つかの実施形態において、空間光変調器を照らす光スポットの直径は、対応するホログラムを表示するために使用される光変調領域の物理的サイズ(例えば、ミリメートル単位の幅及び/又はミリメートル平方単位の面積)に基づいて決定される。幾つかの実施形態において、光スポットの1つの寸法は、対応するホログラムの1つの寸法に実質的に適合する。例えば、光スポットの直径は、対応するホログラムを表示するために使用される光変調領域の幅に適合されてもよい。幾つかの実施形態において、光変調領域の形状は、光システムからの光スポットの形状と実質的に同じであり、この実施形態では、光スポットのサイズが光変調領域のサイズと実質的に等しくてもよい。他の実施形態では、光変調領域及び光スポットが異なる形状を有してもよいが、それらは依然として適合され得る。適合は、光変調領域内の各光変調ピクセルが、光変調領域の外側を照らすことによって過度に多くの光エネルギーを浪費することなく、良質のホログラフィック再構成のために十分な光を受けるようにすることを含む。幾つかの実施形態では、光変調領域が四辺形(例えば正方形又は長方形)であり、また、各光システムによって出力される光スポットが楕円形又は円形である。光スポットのサイズは、光変調領域が若干過剰に満たされるようになっていてもよい。すなわち、照らされる面積は、光変調領域の面積よりも僅かに大きい。光スポットのサイズは、光を受ける光変調領域の外側の領域が最小限に抑えられるようになっていてもよい。光スポットのサイズは、浪費される光エネルギーの量が最小限に抑えられるようになっていてもよい。光スポットの強度は、断面において不均一であってもよい。例えば、光スポットの空間強度はガウスであってもよい。光スポットのサイズは、光変調領域を照らす光スポットの強度が光変調領域内の全ての点における最大強度の少なくとも1/eであるように選択されてもよい。或いは、光スポットのサイズは、光スポットの強度が光変調領域の四隅又は光変調領域を画定する4つのそれぞれの辺の4つの中間点などの光変調領域上の選択された点において最大値の1/eであるように選択されてもよい。幾つかの実施形態において、光スポットの直径は、光変調領域のサイズに伴って増大する。
【0105】
図10A図10B、及び、図10Cは、空間光変調器を照らす光スポットの直径が照明光の波長に依存する又はその関数である実施形態を示す。図10Aは、ホログラムピクセルごとに4つのサブピクセル(より具体的には、[4×4])を備える青色ホログラムを照らすのに適した青色光を出力するようになっている第1の光システムを示す。より詳細には、図10Aは、半角θを有する発散する青色光を放射する青色レーザダイオード1010Bを示す。ビーム直径D1を有するコリメートされた青色光がレンズ1020Bの下流側に形成されるように、レンズ1020Bが青色レーザダイオード1010Bからその焦点距離F1で位置される。図10Bは、ホログラムピクセルごとに5つのサブピクセルを備える緑色ホログラムを照らすのに適した緑色光を出力するようになっている第2の光システムを示す。より具体的には、図10Bは、半角θを有する発散する緑色光を放射する緑色レーザダイオード1010Gを示す。ビーム直径D2を有するコリメートされた緑色光がレンズ1020Gの下流側に形成されるように、レンズ1020Gが緑色レーザダイオード1010Gからその焦点距離F2で位置される。図10Cは、ホログラムピクセルごとに6つのサブピクセルを備える赤色ホログラムを照らすのに適した赤色光を出力するようになっている第3の光システムを示す。より具体的には、図10Cは、半角θを有する発散する赤色光を放射する赤色レーザダイオード1010Rを示す。ビーム直径D3を有するコリメートされた赤色光がレンズ1020Rの下流側に形成されるように、レンズ1020Rが赤色レーザダイオード1010Rからその焦点距離F3で位置される。青色レーザダイオード1010Bによって放射される青色光の発散角は、緑色レーザダイオード1010Gによって放射される緑色光の発散角と同じであり、緑色レーザダイオード1010Gによって放射される緑色光の発散角は、赤色レーザダイオード1010Rによって放射される赤色光の発散角と同じである。言い換えると、青色光システム(図10A)における半角θは、緑色光システム(図10B)における半角θと同じであり、緑色光システムにおける半角θは、赤色照明システム(図10C)における半角θと同じである。この実施形態において、青色照明システムの開口数は、緑色照明システムの開口数に実質的に等しく、緑色照明システムの開口数は、赤色照明システムの開口数に実質的に等しいと言える。図10は、コリメートレンズが完全に照らされている(すなわち、その全直径にわたって照らされている)ことを示すが、本開示は、コリメートレンズを不十分に満たすことにも等しく適用可能であり、その場合、3つの照明システムの動作開口数は同じであると言える。幾つかの実施形態において、赤色ホログラムを照らすために使用される赤色光スポットの直径D3は、緑色ホログラムを照たすために使用される緑色光スポットの直径D2よりも大きく、緑色光スポットの直径D2は、青色ホログラムを照らすために使用される青色光スポットの直径D1よりも大きい。
【0106】
光変調領域のサイズが縮小される場合には、対応する照明システムからの必要なビーム直径Dが縮小される。ひいては、対応する照明システムのコリメートレンズの必要な焦点距離Fが減少される。したがって、緑色ホログラム及び青色ホログラムを表示するために使用されるサブピクセルが、赤色ホログラムを表示するために使用されるサブピクセルよりも少ない場合、緑色照明システムのサイズ及び青色照明システムのサイズは、赤色照明システムのサイズより小さくてもよい。したがって、緑色光及び青色光システムによって必要とされる空間の物理的体積を(赤色照明システムと比較して)低減することができ、よりコンパクトなプロジェクタを提供できる。
【0107】
図5図8の実施形態では、4つの異なるホログラムアドレス指定方式を使用して、[4×4]ホログラムが同じ空間光変調器に表示される。幾つかの実施形態では、これがFSC方式で実施される。第1のフレームにおいて、第1のホログラムは、第1のホログラムアドレス指定方式を使用して空間光変調器にマッピングされてもよく、また、第2のフレームにおいて、第2のホログラムは、第2のホログラムアドレス指定方式を使用して同じ空間光変調器にマッピングされてもよい。第1のフレーム及び第2のフレームは、異なる時間に表示されてもよい。第1及び第2のフレームは、フレームのビデオレートシーケンスなどのフレームのシーケンスの連続フレームであってもよい。
【0108】
表1に関連する上記の例では、図5のホログラムアドレス指定方式が赤色及び緑色ホログラムを表示するために使用され、図6のホログラムアドレス指定方式が青色ホログラムを表示するために使用される。ここでも、幾つかの実施形態では、これがFSC方式で実施される。この場合、少なくとも1つの光変調ピクセルは、第1の時間における第1のホログラムのホログラムピクセル値及び第1の時間とは異なる第2の時間における第2のホログラムのホログラムピクセル値を表示するために使用される。
【0109】
或いは、異なる第1及び第2のアドレス指定方式がSSC方式で使用されてもよい。そのような実施形態では、第1のホログラムが第1の空間光変調器に表示され、第2のホログラムが第2の空間光変調器に表示される。これは、参照により本願に組み入れられる英国特許第2,547,929号明細書に開示されているように、3つの別個のカラーチャネルが使用される際に好ましい場合がある。換言すれば、本明細書中に開示される方法は、不一致を低減するために英国特許第2,547,929号明細書の方法と併せて使用されてもよい。
【0110】
幾つかの実施形態において、方法は、領域を有するホログラフィック再生場を投影するために波長を有する光で表示されたホログラムを照らすステップと、第2の領域を有する第2のホログラフィック再生場を投影するために第2の波長を有する光で第2の表示されたホログラムを照らすステップとを更に含む。ホログラム及び第2のホログラムを表示するために使用される異なる数の光変調ピクセルは、領域及び第2の領域が実質的に同じサイズであるようになっていてもよいのが分かる。領域と第2の領域とを重ね合わせて、異なる色成分間の不一致が低減された合成カラー再生場を形成してもよい。
【0111】
他の実施形態において、方法は、領域を有するホログラフィック再生場を投影するために波長を有する光で表示されたホログラムを照らすステップと、第2の領域を有する第2のホログラフィック再生場を投影するために波長を有する光で第2の表示されたホログラムを照らすステップとを更に含む。ホログラム及び第2のホログラムを表示するために使用される異なる数の光変調ピクセルは、ホログラフィック再構成のサイズが動的に変更されるようになっていてもよいことが理解され得る。したがって、サブピクセルの数を変更することを含む、画像サイズを変更する方法が提供される。
【0112】
図5の実施形態では、ホログラムが空間光変調器を満たす。すなわち、ホログラムは、空間光変調器の全ピクセルを使用する。他の実施形態(例えば、図6図7、及び、図8)では、ホログラムのサイズが空間光変調器のサイズよりも小さい。これらの他の実施形態の幾つかでは、ホログラムの一部(すなわち、ホログラムのピクセルの隣接するサブセット)が未使用ピクセルで繰り返される。この技術は「タイリング」と称されてもよく、この「タイリング」では、空間光変調器の表面積が幾つかの「タイル」に分割され、そのそれぞれがホログラムの少なくともサブセットを表わす。したがって、各タイルは、空間光変調器よりも小さいサイズを有する。幾つかの実施形態では、画質を高めるために「タイリング」の技術が実施される。具体的には、幾つかの実施形態は、ホログラフィック再構成に入る信号コンテンツの量を最大化しながら画像ピクセルのサイズを最小限に抑えるべくタイリングの技術を実施する。幾つかの実施形態において、空間光変調器に書き込まれるホログラフィックパターンは、少なくとも1つのタイル全体(すなわち、完全なホログラム)と、タイルの少なくとも1つの部分(すなわち、ホログラムのピクセルの連続するサブセット)とを備える。
【0113】
デジタル駆動方式
発明者は、本明細書中で、図11に示されるように、空間光変調器の各光変調ピクセル1100が液晶セル1110及びただ1ビットのメモリ1120を備える前述した概念の高速デジタル実装を開示する。各ピクセルの1ビットメモリは、表示デバイスのシリコンバックプレーンに埋め込まれてもよい。
【0114】
図12A及び図12Bは、サブピクセルのそれぞれの隣接するグループの各サブピクセルの1ビットメモリがどのように互いにデイジーチェーン接続されて(すなわち、直列に接続される)シフトレジスタを形成するかを示す。
【0115】
より具体的には、図12Aは、本開示に係るホログラムの同じデジタルホログラムピクセル値を受けるようになっているサブピクセルP11~P33の隣接するグループを示す。各サブピクセルP11~P33は液晶セルを備える。各サブピクセルは、1ビットのメモリ及びフリップフロップのみを更に備える。メモリ及びフリップフロップは、表示デバイスのシリコンバックプレーンに埋め込まれてもよい。図12Bは、グループのフリップフロップが共通クロック「CLK」上でどのように直列に接続されるかを示す。フリップフロップは、D型フリップフロップであってもよい。各フリップフロップのQ出力は、チェーン内の次のフリップフロップのD入力に接続される。したがって、クロックの各サイクルに関しては、当業者によく知られている態様で、1つのサブピクセルから次のサブピクセルに1ビットのデータが渡される。フリップフロップのチェーンは、1つのホログラムピクセルのデータ用のシフトレジスタを形成する。バイナリ値(例えば9ビット)は、各サブピクセルを介して高速でクロックされる。各フリップフロップのいわゆるQ出力は、液晶のパッドに直接結び付けられて、液晶ディスプレイの当業者によく知られている態様で液晶を駆動する。各サブピクセルに与えられるビットパターンは、液晶に印加される電圧を決定し、この電圧は、例えば液晶の傾斜又はねじれを引き起こす。各サブピクセルは、時間内に全9ビット値を受ける。クロックは、受信したビットパターンに関連する二乗平均平方根「RMS」電圧に液晶が応答するのに十分に速い。図12Aにおける矢印は、ビットパターンのビットがピクセルのグループの周囲にわたって通過される方向を示す。サブピクセルは、任意の直線状のチェーンを成して接続されてもよい。データの各ビットは、液晶により受けられる電圧に対して同じ貢献度を成す。各サブピクセルは、液晶を駆動するRMS電圧を生じさせるビットパターンを受ける。ビットパターンの最小サイズは、各ホログラムピクセル値を表わすために使用されるビット数に等しい。
【0116】
したがって、光変調ピクセルの配列とコントローラとを備える液晶オンシリコン空間光変調器が提供されるのが分かる。配列の各光変調ピクセルは、光変調用の液晶を備える。各光変調ピクセルはそれぞれのフリップフロップと関連付けられる。コントローラは、画像のホログラムを受けるようになっている。ホログラムは複数のホログラムピクセルを備える。各ホログラムピクセルはそれぞれのnビットホログラムピクセル値を含む。コントローラは、更に、ホログラムのそれぞれのホログラムピクセル値にしたがってn個の光変調ピクセルの隣接するグループの各光変調ピクセルを駆動するようになっている。したがって、ホログラムと光変調ピクセルとの間には1対nのピクセル相関がある。n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループのフリップフロップは、直列に接続されてシフトレジスタを形成する。シフトレジスタの動作中、n個の光変調ピクセルのそれぞれの隣接するグループと関連付けられるnビットホログラムピクセル値は、2n個のクロックサイクルなどの少なくともn個のクロックサイクルにわたって一度に1ビットずつ隣接するグループの各光変調ピクセルに与えられる。
【0117】
図13Aは、図12Aに示されるサブピクセルの3×3グループに関する9ビットホログラムピクセル値の例を示す。実施形態において、各ピクセル値を表わすために使用されるビットの数は、それぞれの隣接するグループ内のサブピクセルの数に等しい。図13Bは、この例において18個のクロックサイクルにわたって9ビットの各ビットが各サブピクセルに一度に1ビットずつどのように与えられるかを示す。各ビットは、各サブピクセルに少なくとも1回与えられる。この例では、9ビットピクセル値が各サブピクセルに2回フルで与えられる。各時点(図13Bの各クロックサイクル/ビット列)において、サブピクセルは、9ビット数の異なるビットでそれぞれ駆動される(図13A)。チェーンの隣り合うサブピクセルは、事実上1ビット位相がずれている。例えば、クロックサイクル1において、サブピクセルP11は9ビットピクセル値の第1ビットを受け、サブピクセルP22は第5ビットを受け、サブピクセルP33は第9ビットを受ける。例えば、クロックサイクル12において、サブピクセルP11は第3のビットを受け、サブピクセルP22は第6のビットを受け、サブピクセルP33は第2のビットを受ける。
【0118】
当業者であれば分かるように、シフトレジスタを使用してピクセル値の単一ビットを分配する前に、nビットピクセル値を各グループにダウンロードしなければならない。シフトレジスタを動作させる前に、ピクセル値の1ビットを各サブピクセルに(実質的に同時に又は順次に)ダウンロードするために、任意の数の異なる構成が使用されてもよく、したがって、これ以上の説明は必要ない。同様に、当業者は、液晶が適切に整列されるまでホログラムの照明が発生しないようにするために光源をシフトレジスタと同期させる方法を理解し得る。実施されるタイミング及び駆動方式は、デバイス要件に基づいて選択されてもよく、本明細書中に開示される核心原理にとって不可欠ではない。
【0119】
一般的に言えば、この方式は、構成段階、データダウンロード段階、照明前駆動段階、照明段階、及び、リセット段階を含んでもよい。構成段階は、前述したように、グループごとのサブピクセルの数、したがって、ディスプレイのサブピクセル間の相互接続性を決定する信号を受信するコントローラを備えてもよい。データダウンロード段階は、ホログラムピクセル値を受けて、前述の方式のように各サブピクセルのメモリに1ビットを書き込むことを含んでもよい。照明前段階は、シフトレジスタの動作と同時であってもよく、所定の時間にわたって(例えば、液晶の粗配向を達成するために)継続してもよい。照明段階は、光源による照明の開始によるシフトレジスタの継続的な動作を含んでもよい。光源はゲートされてもよい。照明段階中、場反転が、所定の複数のサブフレームにしたがって、-例えばフリップフロップのQ出力とQバー出力との間を交互に入れ替えることによって起こり得る。リセット段階は、フレームの終わりを表わし得る。
【0120】
実施形態において、デバイスは、前述の説明から理解されるように、波長を補償するように再構成可能である。例えば、デバイスは、赤色光で照らされるホログラムに関してグループ当たり6×6サブピクセル、緑色光で照らされるホログラムに関して5×5ピクセル、青色光で照らされるホログラムに関してグループ当たり4×4サブピクセルを伴って構成されてもよい。当業者であれば分かるように、例えばスイッチを含む様々な電子構成がそのような再構成可能性を達成するために実装されてもよい。サブピクセルグループ化は、波長を反映する制御信号に応じてプログラム可能である。例えば、当業者であれば分かるように、コントローラには、必要とされる波長(例えば、赤色、緑色又は青色)を表わす入力が与えられてもよく、それに応じて、コントローラは、グループごとのサブピクセルの数を変更する及び/又はシフトレジスタのサブピクセル及び/又はスイッチイン又はスイッチアウトユニットセル間の相互接続性を変更するように作用してもよい。これらの実装選択は決まり切った設計の問題であり、本開示はいずれか1つの設計に限定されない。幾つかの実施形態において、光変調ピクセルの配列の異なるサブ領域は、異なるグループ化を伴って利用される。
【0121】
一実施形態では、ピクセルサイズが400+/-100nmであり、また、グループ当たり16×16サブピクセルが赤色光で使用され、グループ当たり13×13サブピクセルが緑色光で使用され、グループ当たり11×11サブピクセルが青色光で使用される。
【0122】
更なる改良において、各フリップフロップのいわゆるQバー出力(図12Bに示されない)は、デバイスを単純化して以下に説明するように重要な機能を組み込むために都合良く利用される。
【0123】
液晶は、直視ディスプレイ、投影ディスプレイ、及び、フォトニクスデバイスに関して広く使用される。液晶の安定性が主な関心事であり、また、液晶表示デバイスには長い動作寿命を有することが求められる。しかしながら、液晶表示デバイスにわたる不平衡場の存在は、媒体を分極させる傾向がある。一方向の正味の電場は、イオン蓄積を引き起こす。イオン電荷のこの蓄積は、印加される電界と干渉して表示デバイスの性能を低下させる傾向がある。電場を連続的に反転させることによって液晶表示デバイスをDC平衡化することは、当該技術分野において知られている。このプロセスは、場反転と称される場合がある。
【0124】
図14は、DC平衡化のプロセスを説明するのに役立つべく液晶表示デバイスのピクセル配列を駆動するための方式を示す。x軸は時間であり、また、y軸は、液晶の両端間の電位差、すなわち、共通電極とピクセル電極との間の電位差である。電位差は、正(本明細書中ではx軸よりも上方の電圧によって表わされる)又は負(本明細書中ではx軸よりも下方の電圧によって表わされる)となり得る。4つのフレームが示されており、各フレームは6つのサブフレームを備える。各フレームは、投影用の一連の画像のうちの1つの画像に対応する。画像のシーケンスは、動画像を形成する画像のビデオレートシーケンスであってもよい。図14のハッチングされた各長方形は、表示事象を表わす。各表示事象は、表示デバイスのピクセル上に画像を表示することを含む。したがって、各表示事象は、表示デバイスの各ピクセルに個別のピクセル電圧を印加することを含む。各ピクセル電圧は、液晶の局所的な挙動-例えば、配向-を決定する。液晶は複屈折性であるため、各ピクセル電圧は位相変調値などの光変調値に対応する。同じフレームのサブフレーム間よりも大きなフレーム間のギャップが、単なる例示のために図14に示される。実際には、サブフレーム間の時間ギャップは均一であり得る。
【0125】
この例では、各フレームが6つの表示事象、すなわち、6つのサブフレームを備える。フレームの各サブフレームは、投影用の同じ画像に対応する。実際には、フレーム間隔内に同じ画像が6回表示される。表示デバイスのピクセルは、1フレーム当たり5回リフレッシュされて、画像当たり(又はフレーム当たり)合計6つの表示事象を形成すると言える。電位差の極性が各フレーム内で交互に入れ替わることに留意されたい。この例において、各フレームは、負の電位差を使用する3つの表示事象と交互配置される正の電位差を使用する3つの表示事象を備える。誤解を避けるために、サブフレーム中にピクセル配列の各ピクセルにわたって印加される電位差の極性は同じである。すなわち、サブフレーム中、全てのピクセルが正の電位差に晒される或いは全てのピクセルが負の電位差に晒される。正及び負という用語は、本明細書中では、電位差の方向が反転されることを反映するために主に使用される。電位差の極性、したがって、電場が連続的に反転されることは必須ではない。例えば、各フレームは、3つの正電場表示事象を連続して備えるとともに、それに続く3つの負電場表示事象を連続して備えてもよい。当該技術分野において受け入れられる重要な原理は、各フレーム内の正電場表示事象の数が、フレーム内の正電場表示事象及び負電場表示事象の順序にかかわらず、各フレーム内の負電場表示事象の数に等しくなければならないということである。これは、いわゆるDC平衡化を確保し、液晶が固着するのを防止する。
【0126】
幾つかの実施形態において、各グループのフリップフロップのQバー出力は、選択された駆動方式にしたがって必要に応じてホログラムのフレーム反転をもたらすべく連鎖的に接続される。したがって、本明細書中に開示されるフリップフロップ構成とDC平衡化との間に相乗効果が存在するのが分かる。
【0127】
より具体的には、各フリップフロップは、第1の出力「Q」及び第2の出力「Qバー」を備える。第1の出力は第2の出力と反対である。コントローラは、少なくともn個のクロックサイクルにわたって、フリップフロップの第1の出力を使用してそれぞれの隣接するグループの各光変調ピクセルを駆動し、その後、少なくともn個のクロックサイクルにわたって、フリップフロップの第2の出力を使用してそれぞれの隣接するグループの各光変調ピクセルを駆動するようになっている。コントローラは、サブフレームSFごとにフリップフロップのQ出力とQバー出力との間を切り替えるようになっていてもよい。
【0128】
更なる特徴
例は可視光でSLMを照らすことを説明するが、当業者であれば分かるように、例えば本明細書中に開示されるように、光源及びSLMを等しく使用して赤外線又は紫外線を方向付けることができる。例えば、当業者は、情報をユーザに提供する目的で赤外光及び紫外光を可視光に変換するための技術を認識し得る。例えば、本開示は、この目的のために蛍光体及び/又は量子ドット技術を使用することに及ぶ。
【0129】
幾つかの実施形態は、単なる一例として2Dホログラフィック再構成について記載する。他の実施形態では、ホログラフィック再構成が3Dホログラフィック再構成である。すなわち、幾つかの実施形態では、各計算機合成ホログラムが3Dホログラフィック再構成を形成する。
【0130】
本開示に係るホログラフィックプロジェクタは、ヘッドアップディスプレイ又はニアアイデバイスなどのヘッドマウントディスプレイの画像生成ユニットとして使用されてもよい。すなわち、本開示に係るホログラフィックプロジェクタを含むヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、及び、ニアアイデバイスが提供される。幾つかの実施形態では、ホログラフィックプロジェクタを含む画像生成ユニットを有するヘッドアップディスプレイを備える車両が提供される。車両は、自動車、トラック、バン、大型トラック、オートバイ、電車、飛行機、ボート、又は、船などの自動車両であってもよい。
【0131】
本明細書中に記載される方法及びプロセスは、コンピュータ可読媒体で具現化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、及び、キャッシュメモリなど、データを一時的又は恒久的に記憶するようになっている媒体を含む。また、「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令が、1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、本明細書中に記載される方法論のうちの任意の1つ以上を全体的又は部分的に機械に実行させるように、機械による実行のための命令を記憶できる任意の媒体又は複数の媒体の組み合わせを含むように解釈されるものとする。
【0132】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースのストレージシステムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、又は、それらの任意の適切な組み合わせの例示的な形態を成す1つ以上の有形且つ持続性のデータリポジトリ(例えば、データ量)を含むが、これらに限定されない。実施形態の幾つかの例では、実行のための命令がキャリア媒体によって通信されてもよい。そのようなキャリア媒体の例としては、トランジェント媒体(例えば、命令を通信する伝搬信号)が挙げられる。
【0133】
当業者であれば分かるように、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行なうことができる。本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の全ての修正及び変形を包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14