(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 61/00 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
A01D61/00 301K
(21)【出願番号】P 2021185724
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2017176380の分割
【原出願日】2017-09-14
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】小郷 浩行
(72)【発明者】
【氏名】河内 一人
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦康
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大介
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150781(JP,A)
【文献】特開2008-271822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈取部から脱穀部へと搬送するフィードチェーンを備え、
前記フィードチェーンの搬送始端部に、前記穀稈をフィードチェーン側に案内する案内部材を設け、
前記案内部材は、
後方に向かって下方に傾斜したスロープと、
前記スロープの前方に設けられる台座と、
を有し、
前記台座の上方に延長部材を取り付けて、前記スロープ
を上方に
向けて延長させていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記案内部材は、補助搬送装置の機体幅方向外側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記台座は、前記刈取部のフレームに支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記フィードチェーンの搬送始端部側に、穀稈を押さえて前記フィードチェーンに案内する穀稈ガイドを設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手扱ぎ作業時に穀稈を押さえる穀稈ガイドを備えたコンバインが記載されている。穀稈ガイドは、フィードチェーンから離間した離間位置と、フィードチェーンに接近した接近位置との間で回動可能に構成されている。穀稈ガイドは、穀稈ガイドが接近位置にあるときにフィードチェーンに対して穀稈を押し付ける押付部材(特許文献1における案内部)を有する。押付部材は、上述した離間位置と接近位置との間で穀稈ガイドと一体的に回動する。
【0003】
押付部材は、穀稈ガイドが離間位置から接近位置に向かって回動する過程で、その穀稈ガイドの回動の支点に近い側からフィードチェーンに接近する。それ故、フィードチェーンに載置された穀稈の嵩高によって穀稈ガイドが十分に下がっていない状態では、押付部材とフィードチェーンの搬送面との間隔が穀稈ガイドの回動の支点に向かって次第に小さくなる。このため、手扱ぎ作業時には、穀稈の搬送詰まりや押し付け不足を引き起こして、穀稈の搬送効率が低下する恐れがあった。また、手扱ぎ作業時には、穀稈の落下の可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、手扱ぎ作業時における穀稈の搬送効率を向上できるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインは、穀稈を刈取部から脱穀部へと搬送するフィードチェーンを備え、前記フィードチェーンの搬送始端部に、前記穀稈をフィードチェーン側に案内する案内部材を設けた構成となっている。
【0007】
上記構成のコンバインにおいて、前記案内部材は、後方に向かって下方に傾斜したスロープで構成されてよい。
【0008】
上記構成のコンバインにおいて、前記案内部材は、補助搬送装置の機体幅方向外側に設けられてよい。
【0009】
上記構成のコンバインにおいて、前記案内部材は、前記刈取部のフレームに支持されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】接近位置にある穀稈ガイドとその周辺構造を示す左側面図
【
図3】離間位置にある穀稈ガイドとその周辺構造を示す左側面図
【
図4】接近位置にある穀稈ガイドとその周辺構造を示す平面図
【
図7】(A)穀稈ガイドが十分に下がっている状態を示す左側面図、(B)穀稈ガイドが完全に下がり切っていない状態を示す左側面図、及び、(B)穀稈ガイドに対して押付部材が回動した状態を示す左側面図
【
図8】スイッチの配置を変更した別実施形態を示す左側面図
【
図9】コンバインの制御システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るコンバインの一例について説明する。
【0012】
[コンバインの全体構造]
まずは、
図1を参照して、コンバインの全体構造について簡単に説明する。
図1は、本実施形態のコンバイン1の左側面を示す。図中には、コンバイン1の前後方向及び上下方向を矢印で示している。左右方向は、機体幅方向に相当する。なお、本明細書において「機体」はコンバイン1と同義である。
【0013】
コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8及び操縦部9を備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しながら、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8は、これらの走行部2や刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力を供給する。作業者は、操縦部9においてコンバイン1を操縦する。
【0014】
走行部2は、機体フレーム20の下方に設けられている。走行部2は、不図示のトランスミッションと、左右一対のクローラ式走行装置22とを備える。トランスミッションは、動力部8のエンジン8aの動力をクローラ式走行装置22に伝達する。クローラ式走行装置22は、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。走行部2の前方には、刈取部3が設けられている。
【0015】
刈取部3は、デバイダ31と、引起装置32と、切断装置33と、搬送装置34とを備える。デバイダ31は、圃場の穀稈を引起装置32へ案内する。引起装置32は、デバイダ31によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置33は、引起装置32によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置34は、切断装置33によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
図1には、搬送装置34として、縦搬送装置134と補助搬送装置135とを示す。縦搬送装置134は、上下方向に沿って移動可能に構成されており、図示の状態では最も下方に位置している。稼働時には、穀稈の長さに合わせて縦搬送装置134の位置を変えることで、最適な搬送姿勢を保つことができる。刈取部3は、機体フレーム20の前端部に連結された油圧シリンダ35によって昇降自在に構成されている。
【0016】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェーン41と、扱胴42とを備える。フィードチェーン41は、刈取部3及び脱穀部4の機体幅方向外側(左側方)に設けられている。フィードチェーン41は、穀稈を刈取部3から脱穀部4へと搬送し、脱穀部4から排藁処理部7へと搬送する。扱胴42は、フィードチェーン41によって搬送される穀稈を脱穀する。また、脱穀部4は、フィードチェーン41によって搬送される穀稈をフィードチェーン41に向かって押し付ける挟扼装置46を備える(
図2参照)。穀稈の根本側をフィードチェーン41と挟扼装置46とで挟持することにより、穀稈の先端側を扱胴42によって脱穀する際に穀稈の姿勢を保持することができる。
【0017】
サイドカバー43は、コンバイン1の機体幅方向外側となる左側からフィードチェーン41を覆っている。サイドカバー43の上方に設けられた藁押え台カバー44は、同じく機体幅方向外側から扱胴42や挟扼装置46などを覆っている。藁押え台カバー44の上方には、緊急停止スイッチSw0が設置されている。緊急停止スイッチSw0は、作業者の押圧操作によってオン/オフが切り替えられる押圧式のスイッチである。緊急停止スイッチSw0をオンに切り替えると、エンジン8aの駆動が強制的に停止され、フィードチェーン41を含む各部の駆動が停止する。
【0018】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置51と、風選別装置52とを備える。揺動選別装置51は、脱穀部4から落下した脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置52は、揺動選別装置51に選別風を供給し、揺動選別装置51と共に脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された穀粒は、図示しない穀粒回収機構により回収されて貯留部6へと搬送される。揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された藁屑等は、排藁処理部7を介して機外に排出される。
【0019】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられている。貯留部6は、グレンタンク61と、排出装置62とを備える。グレンタンク61は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置62は、後端部(穀粒の搬送上流側の基端部)を中心として前端部(穀粒の搬送下流側の先端部)を上下左右方向に回動自在に構成されており、グレンタンク61に貯留されている穀粒を任意の場所に排出できる。
【0020】
排藁処理部7は、脱穀部4及び選別部5の後方に設けられている。排藁処理部7は、フィードチェーン41により搬送された穀稈を切断して排出する。
【0021】
動力部8は、操縦部9の下方、且つ、貯留部6の前方に設けられている。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン8aを備える。エンジン8aが発生させた回転動力は、刈取部3や脱穀部4、選別部5などに伝達される。
【0022】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、運転席91と、ハンドル92を含む複数の操作具とを備える。運転席91は、作業者が座る座席である。ハンドル92は、コンバイン1の進行方向を変更する操向ハンドルである。作業者は、運転席91に着座した状態でハンドル92などの複数の操作具を操作することにより、コンバイン1を操縦できる。
【0023】
また、コンバイン1は、穀稈ガイド40を備える。穀稈ガイド40は、手扱ぎ作業時に穀稈を押さえてフィードチェーン41に案内する。穀稈ガイド40は、コンバイン1の左側部に設けられている。本実施形態のコンバイン1は、更に、案内部材45と、押圧部材48とを備える(
図2~4参照)。案内部材45は、穀稈ガイド40と共に穀稈をフィードチェーン41に案内する。案内部材45は、補助搬送装置135の機体幅方向外側となる左側に配置されている。押圧部材48は、刈取部3で刈り取った穀稈を脱穀する作業(以下、「非手扱ぎ作業」と呼ぶ)において、フィードチェーン41に対して穀稈を押圧する。つまり、穀稈ガイド40と案内部材45は、手扱ぎ作業時に穀稈に作用する(穀稈をフィードチェーン41に押さえつける)部材であり、押圧部材48は、非手扱ぎ作業時に穀稈に作用する(穀稈をフィードチェーン41に押さえつける)部材である。
【0024】
[穀稈ガイド]
次に、
図2~7を参照して、穀稈ガイド40について説明する。穀稈ガイド40は、フィードチェーン41から離間した離間位置と、フィードチェーン41に接近した接近位置との間で回動可能に構成されている。
図2は、離間位置にある穀稈ガイド40を鎖線で示し、接近位置にある穀稈ガイド40を実線で示している。
図3は、離間位置にある穀稈ガイド40を示している。矢印Rは、穀稈ガイド40の回動方向を示す。以下、穀稈ガイド40が接近位置にある状態を「接近状態」と称し、穀稈ガイド40が離間位置にある状態を「離間状態」と称する。
【0025】
穀稈ガイド40は、穀稈ガイド40が接近位置にあるときにフィードチェーン41に対して穀稈を押し付ける押付部材403を有する。穀稈ガイド40は、更に、フィードチェーン41の駆動を許可する第一スイッチSw1(
図4~6参照)と、穀稈ガイド40を操作するための操作部としての操作レバー401と、操作レバー401を回動自在に支持するフレーム板402とを有する。第一スイッチSw1のオン/オフの切り替えは、操作レバー401の回動操作によって行われる。操作レバー401は、穀稈ガイド40の回動を操作するための取っ手となる。
【0026】
穀稈ガイド40は、回転軸40aを支点として回動する。回転軸40aは、フレーム板402に対して一体的に固定されている。
図4~6のように、回転軸40aは、筒部材405に相対回転自在に挿入されている。筒部材405は、脱穀部4のフレーム116に固定されている。かかる構成により、穀稈ガイド40は、フレーム116に対して相対回転自在に支持されている。フレーム116は、機体フレーム20に支持されており、挟扼装置46が有する複数のバネ部材464を懸架している。挟扼装置46は、フィードチェーン41の往路の上方に配置されている。
【0027】
本実施形態において、穀稈ガイド40は、脱穀部4側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されている。穀稈ガイド40は、脱穀部4側に設けられた回転軸40aを支点として回動し、左側面視にて反時計回りに回動することによりフィードチェーン41に接近する。回転軸40aは、フレーム板402の後方部に設定されている。このように穀稈ガイド40の回動の支点が脱穀部4側に設けられている構成は、刈取部3が機体幅方向にスライドする機種に対しても特に問題なく適用できる、という利点を有する。
【0028】
穀稈ガイド40には、付勢部材としての引張バネ40bが係合されている。引張バネ40bの一端は、第一係合部としての第一係合ピン407に係合し、引張バネ40bの他端は、フレーム116に固定された係合冶具115に係合している。第一係合ピン407は、回転軸40aの近傍に設けられている。第一係合ピン407は、フレーム板402から機体幅方向外側となる左側に向けて突出しているが、反対側(右側)に向けて突出していてもよい。第一係合ピン407は、
図2に示す接近状態において、回転軸40aの前方で且つ回転軸40aに対して水平に位置している。
【0029】
引張バネ40bは、フィードチェーン41から引き離すように穀稈ガイド40を引っ張り、離間状態における穀稈ガイド40は離間位置で保持される。作業者は、離間位置にある穀稈ガイド40の操作レバー401を把持し、引張バネ40bの引張力(付勢力)に抗して穀稈ガイド40を回動させることで、穀稈ガイド40を接近位置に移動できる。引張バネ40bは、穀稈ガイド40を離間位置に向けて後方に引っ張るものの、
図2に示した接近状態では第一係合ピン407が回転軸40aの前方で水平に位置することから接近位置にある穀稈ガイド40を離間位置に向けて回動させることはなく、接近状態にある穀稈ガイド40はそのまま接近位置で保持される。
【0030】
変形例として、穀稈ガイド40に第二係合部としての第二係合ピン(不図示)を設けて、第一係合ピン407と第二係合ピンとに択一的に引張バネ40bを係合できるように構成してもよい。その場合、第二係合ピンに引張バネ40bを係合することにより、接近位置にある穀稈ガイド40が引張バネ40bの作用によって離間位置に移動するように構成することが好ましい。これによって、作業者が穀稈ガイド40を操作しないときは離間状態となるため、手扱ぎ作業時に作業者が穀稈ガイド40を離間位置に移動させる手間を省いて作業効率を向上できる。第二係合ピンは、例えば、接近状態において回転軸40aの上方で且つ回転軸40aよりもやや前方の位置に設定される。
【0031】
図2に示すように、押付部材403は、穀稈ガイド40がフィードチェーン41に接近した接近位置にあるときにフィードチェーン41の搬送面に対面する対面部403aを含む。押付部材403は、更に、対面部403aの前方に位置してフィードチェーン41から離れる方向に湾曲した前端部403bと、対面部403aの後方に位置してフィードチェーン41から離れる方向に湾曲した後端部403cと、押付部材403の回動の支点となる支点軸40eを支持する支持部403dと、後述する付勢機構47の軸472に接続される接続部403eとを有する。対面部403a、前端部403b及び後端部403cは、断面円形状の棒材を折り曲げることで形成されている。支持部403d及び接続部403eは、それぞれ板材で形成されている。
【0032】
穀稈ガイド40が接近位置にある状態では、フィードチェーン41の上方に対面部403aが配置され、この対面部403aによって穀稈がフィードチェーン41に押し付けられる。また、前端部403bが湾曲していることにより、前方で待機する穀稈の搬送抵抗を軽減し、穀稈の搬送姿勢を安定させることができる。更に、後端部403cが湾曲しているので、穀稈ガイド40が穀稈の搬送を妨げず、穀稈の姿勢を安定させて、フィードチェーン41により穀稈を扱胴42へ送り込むことができる。支持部403dは、対面部403aと前端部403bとの間を筋交い状に連結している。接続部403eは、対面部403aの後方部からフレーム板402に向けて突出している。
【0033】
押付部材403は、穀稈ガイド40に対して回動可能に取り付けられている。押付部材403は、支点軸40eを支点として回動する。支点軸40eは、支持部403dに固定されている。また、支点軸40eは、フレーム板402の前方部に設定されている。
図4~6に示すように、支点軸40eは、支持部403dから機体幅方向内側となる右側に突出し、フレーム板402を貫通して筒体409に相対回転自在に挿入されている。筒体409は、フレーム板402に一体的に固定されている。かかる構成により、押付部材403は、フレーム板402に対して相対的に回動することができる。
【0034】
押付部材403は、穀稈ガイド40に設けられた付勢機構47によりフィードチェーン41に向けて付勢されている。本実施形態において、付勢機構47は、
図5,7に示すように、コイルバネ471と、コイルバネ471に挿入された軸472と、コイルバネ471の下方に配置された下バネ台473と、コイルバネ471の上方に配置された上バネ台474とを有する。コイルバネ471は、下バネ台473と上バネ台474との間で伸縮する。下バネ台473の下方では、固定具475が軸472に固定されている。
【0035】
軸472は、その軸方向への移動が可能な状態でブラケット476に支持されている。ブラケット476は、フレーム板402に固定されている。ブラケット476は、上バネ台474の上方への移動を規制する上方規制部477を有する。また、ブラケット476は、固定具475の下方への移動を規制し、延いては軸472及び下バネ台473の下方への移動を規制する下方規制部478を有する。上方規制部477は上バネ台474の上方に形成され、下方規制部478は下バネ台473の下方に形成されている。
【0036】
軸472の下端部には押付部材403の接続部403eが接続されている。軸472は、回転軸479を支点として接続部403eに対して相対回動可能に構成されている。これにより、支点軸40eを支点とした押付部材403の回動と、軸472の軸方向への移動とが円滑に連動する。押付部材403は、フレーム板402から離間する方向(接近状態では下方)に付勢されていて、その下方での回動範囲の限界は、下方規制部478によって固定具475の下方への移動が規制される位置となる。フレーム板402に接近するように支点軸40eを支点として押付部材403を回動させると、軸472が上方へ移動し、それに伴って固定具475と下バネ台473とが上方へ移動し、コイルバネ471が圧縮される。
【0037】
このように、本実施形態のコンバイン1では、押付部材403が、穀稈ガイド40に対して回動可能に取り付けられているとともに、その穀稈ガイド40に設けられた付勢機構47によりフィードチェーン41に向けて付勢されている。かかる構成により、手扱ぎ作業時には、穀稈の搬送詰まりを抑制しつつ、フィードチェーン41に対して穀稈を適切に押し付けて、穀稈の搬送効率を向上することができる。
【0038】
本実施形態において、穀稈ガイド40は、搬送方向下流側となる脱穀部4側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されており、押付部材403は、搬送方向上流側となる刈取部3側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されている。押付部材403は、接近状態において、左側面視にて時計回りに回動することによりフィードチェーン41に接近する。このように、押付部材403の回動の支点は、フィードチェーン41の搬送方向に関して穀稈ガイド40の回動の支点とは反対側に設定されている。
【0039】
図7は、手扱ぎ作業時に穀稈ガイド40が穀稈Gを押さえる様子を模式的に示している。フィードチェーン41に載置された穀稈Gは、
図7では不図示の案内部材45によって支持されているため、前方に落下することはない。通常は、
図7(A)のように、穀稈ガイド40が十分に下がった(フィードチェーン41に近付けられた)状態となり、フィードチェーン41に載置された穀稈Gが押付部材403により押し付けられる。対面部403aは、フィードチェーン41に沿った姿勢となるため、その対面部403aの全域に亘って穀稈Gが均等に接触しやすい。
【0040】
ところが、穀稈Gの嵩高等に起因して穀稈ガイド40が十分に下がらない状況では、
図7(B)のように対面部403aがフィードチェーン41に対して傾斜した状態となる。この状態では、押付部材403とフィードチェーン41の搬送面との間隔が脱穀部4側に向かって次第に小さくなるため、搬送方向下流側となる脱穀部4側での穀稈Gの搬送詰まりが懸念される。また、穀稈Gに対して押付部材403が均等に接触しづらくなるため、押し付け不足が懸念される。
【0041】
このような状況において、本実施形態のコンバイン1では、
図7(C)のように穀稈ガイド40に対して押付部材403が回動することによりフィードチェーン41に対する押付部材403の姿勢が変化し、それによって穀稈Gの搬送詰まりを防止できる。押付部材403は、脱穀部4側においてフィードチェーン41から離間する方向に回動しうるが、付勢機構47が押付部材403をフィードチェーン41に向けて付勢しているので、穀稈Gは適切に押し付けられる。対面部403aは、フィードチェーン41に沿った姿勢に近付き、その対面部403aの全域に亘って穀稈Gが均等に接触しやすい。穀稈ガイド40に対して押付部材403を回動させるうえで特別な操作は必要なく、穀稈ガイド40がフィードチェーン41に接近するように操作レバー401を操作するだけでよい。このようにして、手扱ぎ作業時における穀稈の搬送効率を向上できる。
【0042】
本実施形態では、付勢機構47が脱穀部4側に設けられている。即ち、付勢機構47は、押付部材403の脱穀部4側を付勢するように構成されている。これにより、刈取部3側に設けた支点を中心にして回動する押付部材403の回動幅を大きくすることができ、穀稈の嵩高に応じてフィードチェーン41に対して穀稈Gを適切に押し付けることができる。付勢機構47は、フィードチェーン41の搬送方向において、穀稈ガイド40の回転軸40aと押付部材403の支点軸40eとの間に配置されている。付勢機構47は、回転軸40aの近傍に設けられている。
【0043】
本実施形態では、操作レバー401が刈取部3側に設けられている。このため、手扱ぎ作業において、穀稈ガイド40を接近位置に向けて回動させるように作業者が操作レバー401を操作した際、その操作に伴って刈取部3側の穀稈に押付部材403を押し付けやすい。その結果、付勢機構47が押付部材403の脱穀部4側を付勢する構成とも協働して、対面部403aの全域に亘って穀稈Gが均等に接触しやすくなる。
【0044】
操作レバー401は、穀稈ガイド40に対して回動可能に取り付けられている。操作レバー401は、操作中心軸40cを回動の支点としてフレーム板402に相対回転自在に支持されている。押付部材403の回動の支点となる支点軸40eは、操作レバー401の回動の支点となる操作中心軸40cよりも刈取部3側(即ち、前方)に位置している。これにより、穀稈ガイド40が下がり切っていない
図7(B)の状態において、押付部材403を刈取部3側の穀稈Gに押し付けやすくなり、対面部403aの全域に亘って穀稈Gを押し付けるうえで有用である。操作中心軸40cは、フレーム板402の前方部に設定されている。
【0045】
本実施形態では、穀稈ガイド40が、脱穀部4側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されている例を示すが、これに限定されず、刈取部3側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されてもよい。その場合、穀稈ガイドは、刈取部3側に設けられた回転軸を支点として回動し、左側面視にて時計回りに回動することによりフィードチェーン41に接近する。また、その穀稈ガイドの回転軸は、後述する刈取部3のフレーム114で支持することが考えられる。かかる構成においても、穀稈ガイドが十分に下がっていない状態では押付部材による穀稈の押し付け不足を引き起こす恐れがあるため、穀稈ガイドに対して押付部材を回動可能に取り付けるとともに、穀稈ガイドに設けた付勢機構により押付部材をフィードチェーンに向けて付勢することが有効である。
【0046】
[案内部材及び押圧部材]
次に、案内部材45と押圧部材48について簡単に説明する。
図3に示すように、案内部材45は、フレーム114に支持される台座45aと、後方に向かって下方に傾斜したスロープ45bとを有する。台座45aは、ブラケット418を介してフレーム114に支持されている。台座45aは、スロープ45bの前方に設けられている。スロープ45bは、フィードチェーン41の搬送方向に沿って延びている。スロープ45bの下端部(後方の先端部)45cは、フィードチェーン41の上方に位置している。
【0047】
案内部材45は、スロープ45bによって穀稈をフィードチェーン41に案内する。また、スロープ45bは、フィードチェーン41の搬送面に載置された穀稈が前方に落下しないように穀稈を支持する。
図3に示すように、スロープ45bは、左側面視において、フィードチェーン41の前部で搬送面に対して略垂直方向または少し傾斜した方向に延び、換言すれば、フィードチェーン41の搬送面に対して略V字状をなす位置関係にある。案内部材45を設けていることにより、手扱ぎ作業時に穀稈を支持し、穀稈ガイド40とともに穀稈をフィードチェーン41に案内できる。案内された穀稈は、押圧部材48の上を通ってフィードチェーン41により搬送される。即ち、手扱ぎ作業では、押圧部材48は、穀稈をフィードチェーン41に押圧する作用を発揮しない。
【0048】
本実施形態では、より多くの穀稈を支持できるように、台座45aの上方に延長部材451を取り付けてスロープ45bを上方に向けて延長させている。但し、このような延長部材451を備えていない構成でも構わない。あるいは、案内部材45自体をこのような形状にしておくことも可能である。案内部材45は、板材を折り曲げて形成されているが、これに限定されるものではない。
【0049】
押圧部材48は、非手扱ぎ作業時に刈取部3の搬送装置34によって搬送されてきた穀稈をフィードチェーン41に向けて押さえる。押圧部材48は、断面円形状の棒材を折り曲げて形成されているが、これに限られず、例えば板材で形成してもよい。押圧部材48は、フィードチェーン41の搬送面に対面する対面部48aと、ブラケット49に対して相対回転自在に支持された支持部48bとを含む。支持部48bは、ブラケット49の筒部491に相対回転自在に挿入されている。ブラケット49は、刈取部3のフレーム114に固定されている。かかる構成により、押圧部材48は、フレーム114に対して相対回転自在に構成されている。
【0050】
押圧部材48は、スロープ45bよりも下方に配置されている。非手扱ぎ作業時には、コンバイン1の振動や穀稈の嵩高などに起因して、支持部48bを支点として押圧部材48が回動し、スロープ45bの下端縁を超えて上方へ移動することが考えられる。そのような状態では、フィードチェーン41に対して穀稈を適切に押さえられないため、穀稈の詰まりや搬送効率の低下を生じる恐れがある。そこで、本実施形態では、
図4のようにスロープ45bを下端部45cにおいて部分的に幅広に形成し、そのような押圧部材48の上方への移動を防止している。
【0051】
[手扱ぎ安全装置]
次に、手扱ぎ作業時の安全性を向上させる手扱ぎ安全装置について説明する。コンバイン1は、上述した第一スイッチSw1に加えて、フィードチェーン41の駆動を許可する第二スイッチSw2を備える(
図3参照)。第一スイッチSw1は、操作レバー401の回動操作に応じてオン/オフが切り替え可能である。第二スイッチSw2は、作業者の押圧操作によってオン/オフが切り替えられる。第二スイッチSw2は、常時オフであり、作業者が押している間のみオンとなる。フィードチェーン41は、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2の両方がオンに切り替えられた場合に駆動される。これにより、作業者の意図に反してフィードチェーン41が駆動することを防ぎ、安全性を向上できる。
【0052】
第一スイッチSw1は、操作レバー401の回動操作に応じてオンとオフとが切り替えられる。
図6に示すように、第一スイッチSw1は穀稈ガイド40に支持されている。フレーム板402の機体幅方向内側(右側)にはブラケット404が固定されており、そのブラケット404に第一スイッチSw1が取り付けられている。押圧操作によってオンに切り替えられる第一スイッチSw1のボタンは、ブラケット404を貫通して前方へ向けて突出している。操作レバー401には、その第一スイッチSw1のボタンを押圧するための押圧板415が設けられている。押圧板415は、L字状に折り曲げた板材で形成されている。また、フレーム板402には、左側面視で反時計回り(
図6の右側面視では時計回り)となる操作レバー401の回動を規制する規制板411が取り付けられている。
規制板411は、L字状に折り曲げた板材で形成されている。
【0053】
離間状態から操作レバー401を左側面視で反時計回りに動かすと、穀稈ガイド40が回動してフィードチェーン41に接近し、押付部材403によって穀稈がフィードチェーン41に押し付けられる。その状態から操作レバー401を更に回動させると、フレーム板402に対して操作レバー401が相対回転し、それに応じた押圧板415の回転により第一スイッチSw1のボタンが押圧され、第一スイッチSw1がオンに切り替えられる。
【0054】
第一スイッチSw1がオンに切り替えられた状態において、操作レバー401は、捩りコイルバネ410によって左側面視で反時計回りに付勢される。フレーム板402に対して相対回転させた操作レバー401は、この捩りコイルバネ410の付勢力により元の位置に復帰できる。捩りコイルバネ410の付勢力は、穀稈ガイド40を離間位置から接近位置に移動させるために操作レバー401を操作した際に操作レバー401が操作中心軸40cを中心に回動しない程度の付勢力とされる。つまり、操作レバー401は、穀稈ガイド40が接近位置とされた後に、穀稈ガイド40を接近位置に移動させるための力よりも強い力を操作レバー401に加えることによって、操作中心軸40cを中心に回動する。
【0055】
かかる構成により、作業者は、第一スイッチSw1のオンとオフとを切り替えることができる。即ち、操作レバー401を操作して穀稈ガイド40を接近位置に配置した後、更に操作レバー401をフィードチェーン41に向けて回動操作することにより、第一スイッチSw1をオンに切り替えることができる。そして、その操作レバー401をフィードチェーン41から離すように回動操作することにより、第一スイッチSw1をオフに切り替えることができる。
【0056】
上記の通り、本実施形態では、第一スイッチSw1が穀稈ガイド40に設けられているとともに、リンク機構を介在させずに操作レバー401で直接的に第一スイッチSw1を作動可能に構成されている。このため、そうでない場合(例えば、特許文献1参照)に比べて容易に操作レバー401を下方に設定することができる。操作レバー401の位置を下げることで、作業者の手が届きやすくなり、作業性が向上する。但し、これに限られず、脱穀部4における剛体、例えばフレーム116などの脱穀部4のフレーム部材で第一スイッチを支持する構成にしてもよい。
【0057】
第二スイッチSw2は、穀稈ガイド40よりも前方に配置されている。第二スイッチSw2は、フレーム114に支持されている。作業者は、右手で操作レバー401を押し下げて第一スイッチSw1のオン状態を維持しながら、左手で第二スイッチSw2を押して第二スイッチSw2のオン状態を維持することにより、フィードチェーン41を駆動できる。
【0058】
第二スイッチSw2は、穀稈ガイド40よりも後方に配置されていてもよく、例えば藁押え台カバー44に設置しても構わない。その場合、作業者は、左手で操作レバー401を操作しつつ、右手で第二スイッチSw2を押すことにより、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2をオンに切り替えてフィードチェーン41を駆動できる。更に、穀稈ガイド40の前方と後方の両方に第二スイッチSw2を配置しておき、選択的に使い分けできるように構成しておけば、作業者の利き手が左右どちらであっても対応できる。
【0059】
ところで、手扱ぎ作業時に穀稈が供給過多であると、穀稈の嵩高によって穀稈ガイド40が下がり切らず、フィードチェーン41に対して穀稈ガイド40が十分に接近しない状態となる。かかる状態であっても第一スイッチSw1はオンに切り替わりうるため、フィードチェーン41を駆動して手扱ぎ作業を行うことはできるが、脱穀部4に穀稈が適切に取り込まれないなどの支障を来たす場合がある。そこで、そのような不適切な状態での手扱ぎ作業を避けられるように、本実施形態では、穀稈ガイド40の位置(回動量)、即ち穀稈ガイド40の回転角度を検出する回転角度センサ89を穀稈ガイド40に設け(
図9参照)、その検出結果に基づいて所定の制御が行われる。回転角度センサ89は、例えばポテンショメータによって構成される。
【0060】
第一スイッチSw1と第二スイッチSw2の両方がオンに切り替えられた際、穀稈ガイド40の位置が所定の位置よりも高い場合、即ち穀稈ガイド40の回動量が所定の回動量よりも小さい場合には、警報の出力や、フィードチェーン41の停止または減速といった所定の制御が行われる。これにより、フィードチェーン41に対して穀稈ガイド40が十分に接近していないことが作業者に知らされ、不適切な状態での手扱ぎ作業を回避できる。
【0061】
本実施形態では、作業者が穀稈ガイド40を手動で操作する例を示したが、これに限られず、穀稈ガイド40をモータ等で駆動する構造にしてもよい。但し、そのような構造であっても、作業者には両手を使って操作させることが安全面で好ましい。そのため、例えば
図8に示すような第三スイッチSw3を配置することが考えられる。作業者は、左手で第二スイッチSw2を押しながら、右手で第三スイッチSw3を押すことにより、これらをオンに切り替える。この場合、フィードチェーン41は、第二スイッチSw2と第三スイッチSw3とがオンに切り替えられたときに駆動される。
【0062】
[手扱ぎ作業時の作業者の動作]
次に、手扱ぎ作業時の作業者の動作について簡単に説明する。手扱ぎ作業は、コンバイン1が停止した状態、即ちクローラ式走行装置22が停止し且つフィードチェーン41が停止している状態で開始する。
【0063】
手扱ぎ作業を行う作業者は、コンバイン1の左側において穀稈ガイド40を操作できる位置(以下、「手扱ぎ作業位置」と呼ぶ)に移動し、刈り取った穀稈を所定の場所に載置する。この所定の場所とは、穀稈ガイド40を下方へ回動させたときに押付部材403で穀稈を押さえられる場所を指し、スロープ45bとフィードチェーン41の搬送面とで形成される領域のことである。引張バネ40bの作用によって穀稈ガイド40が予め離間位置にある場合には、穀稈を載置する前に穀稈ガイド40を上方へ回動させる必要がないため、作業効率が高められる。
【0064】
刈取部3が上昇していると、上述した所定の場所が狭くなって穀稈を載置しづらくなるため、手扱ぎ作業は、刈取部3を下降させた状態で行うことが好ましい。刈取部3の昇降は、通常、操縦部9に設けられた操作具によって操作可能に構成されている。それ故、刈取部3を下降させることを忘れて、刈取部3を上昇させた状態のまま手扱ぎ作業位置に移動した場合、作業者は、そこから操縦部9との間を往復して刈取部3を下降させる必要があり、作業が煩雑となる。
【0065】
そこで、そのような不都合を解消するために、刈取部3を昇降するための操作具を手扱ぎ作業位置の周辺に配置してもよい。例えば、本実施形態のように、刈取部3の昇降を操作可能なスイッチ36を藁押え台カバー44に設置することが考えられる。藁押え台カバー44に限られず、サイドカバー43や、その他の箇所にスイッチ36を設置しても構わない。スイッチ36は、刈取部3の下降のみを操作できるものでもよい。あるいは、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2の両方がオンに切り替えられた際に、刈取部3が自動的に下降するように構成してもよい。
【0066】
穀稈を所定の場所に載置した後、作業者は、フィードチェーン41に接近するように穀稈ガイド40を回動して穀稈を押さえる。このとき、フィードチェーン41に載置された穀稈の嵩高などに起因して、穀稈ガイド40が十分に下がっていない状態となる場合がある。しかし、上述のように、本実施形態では、穀稈ガイド40に対して押付部材403が相対的に回動し、それにより押付部材403が穀稈を適切に押し付けることができるので(
図7(C)参照)、穀稈の搬送詰まりや押し付け不足は防止される。
【0067】
そして、穀稈ガイド40が穀稈を押さえている状態から、操作レバー401をフィードチェーン41に向かって回動させて、第一スイッチSw1をオンに切り替える。第一スイッチSw1をオンに切り替える操作は、操作レバー401を把持して穀稈ガイド40をフィードチェーン41に向けて押し下げる回動操作となる。そして、作業者は、操作レバー401を押し下げたまま、第二スイッチSw2を押す。これにより、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2の両方がオンに切り替えられた状態となり、フィードチェーン41が駆動されて手扱ぎ作業が行われる。
【0068】
[制御システム]
次に、
図9を参照して、コンバイン1の制御システムについて簡単に説明する。
図9に示すように、油圧アクチュエータ204は、電磁弁206に制御信号を送信できる制御装置80と接続されている。刈取部3への動力の伝達又は遮断を変更するフィードチェーン停止機構193には、電磁弁206が設けられた油圧アクチュエータ204が接続されている。制御装置80は、電磁弁206に制御信号を送信して油圧アクチュエータ204を伸長または短縮させることによりフィードチェーン停止機構193を制御できる。
【0069】
制御装置80は、制御装置80に入力信号を送信できる緊急停止スイッチSw0と接続されている。制御装置80は、
図9では図示しないエンジン8aに接続されている。制御装置80は、緊急停止スイッチSw0がオン状態になった場合には、エンジン8aの駆動を強制的に停止し、フィードチェーン41の駆動を停止する。
【0070】
制御装置80は、制御装置80に入力信号を送信できる第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2と接続されている。制御装置80は、フィードチェーン停止機構193が接続状態となってフィードチェーン41が停止した後、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2の両方が同時にオン状態になった場合に、フィードチェーン停止機構193を切断状態としてフィードチェーン41を駆動させる。なお、制御装置80は、クローラ式走行装置22の駆動状態を把握することが可能であり、クローラ式走行装置22が停止している場合のみ、第一スイッチSw1の操作を有効とする。
【0071】
制御装置80は、回転角度センサ89と接続されており、穀稈ガイド40の位置(回動量)を把握することが可能である。制御装置80は、手扱ぎ作業時においてフィードチェーン41を駆動させる際、穀稈ガイド40の位置が所定の位置よりも高い場合、即ち穀稈ガイド40の回動量が所定の回動量よりも小さい場合に、警報装置270に信号を送って警報を発したり、電磁弁206に信号を送ってフィードチェーン41を停止したり、または、モータ310の回転方向及び回転角度を制御してフィードチェーン41を減速したりできる。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0073】
[付記]
本発明に係るコンバインは、穀稈を刈取部から脱穀部へと搬送するフィードチェーンと、前記フィードチェーンから離間した離間位置と、前記フィードチェーンに接近した接近位置との間で回動可能な穀稈ガイドとを備え、前記穀稈ガイドは、前記穀稈ガイドが接近位置にあるときに前記フィードチェーンに対して穀稈を押し付ける押付部材を有し、前記押付部材が、前記穀稈ガイドに対して回動可能に取り付けられているとともに、前記穀稈ガイドに設けられた付勢機構により前記フィードチェーンに向けて付勢されている。かかる構成によれば、押付部材が、搬送される穀稈の嵩高に応じて、穀稈ガイドに対して回動することにより穀稈の搬送詰まりを抑制しつつ、付勢機構が押付部材を付勢することにより穀稈を適切に押し付けられるので、手扱ぎ作業時における穀稈の搬送効率を向上できる。
【0074】
前記穀稈ガイドは、前記脱穀部側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されており、前記押付部材は、前記刈取部側に設けられた支点を中心にして回動可能に構成されていることが好ましい。この場合、穀稈ガイドが十分に下がっていない状態では、押付部材とフィードチェーンの搬送面との間隔が搬送方向下流側となる脱穀部側に向かって小さくなるものの、刈取部側に設けた支点を中心にして押付部材を回動させることにより、穀稈の搬送詰まりを効果的に抑制できる。
【0075】
前記付勢機構が前記脱穀部側に設けられていることが好ましい。これにより、刈取部側に設けた支点を中心にして回動する押付部材の回動幅を大きくすることができ、穀稈の嵩高に応じてフィードチェーンに対して穀稈を適切に押し付けることができる。
【0076】
前記穀稈ガイドを操作するための操作部が前記刈取部側に設けられていることが好ましい。これにより、搬送方向上流側となる刈取部側では、作業者による操作部の操作に伴って押付部材が穀稈に押し付けられる。
【0077】
前記操作部が、前記穀稈ガイドに対して回動可能に取り付けられており、前記押付部材の回動の支点が、前記操作部の回動の支点よりも前記刈取部側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、刈取部側にある穀稈に押付部材を押し付けやすくなり、穀稈をより適切に押し付けることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
4 脱穀部
40 穀稈ガイド
40a 回転軸
40b 引張バネ
40e 支点軸
41 フィードチェーン
45 案内部材
47 付勢機構
48 押圧部材
401 操作レバー(操作部の一例)
402 フレーム板
403 押付部材
407 第一係合ピン
471 コイルバネ
472 軸
Sw1 第一スイッチ
Sw2 第二スイッチ